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審決分類 |
審判 全部無効 称呼類似 無効としない W0938 審判 全部無効 外観類似 無効としない W0938 審判 全部無効 観念類似 無効としない W0938 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない W0938 審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効としない W0938 |
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管理番号 | 1336336 |
審判番号 | 無効2017-890037 |
総通号数 | 218 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2018-02-23 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2017-06-07 |
確定日 | 2017-12-25 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5762656号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5762656号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成26年9月29日に登録出願、第9類「電子メール・チャット等の通信機能を有する携帯電話用プログラム」及び第38類「オンラインによる利用者間のメッセージの交換のためのチャットルーム形式及び電子掲示板による通信」を指定商品及び指定役務として、同27年4月9日に登録査定され、同年5月1日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 請求人が引用する商標は次のとおりであり(以下、それらをまとめて「引用商標」という場合がある。)、いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。 1 登録第5544081号商標(以下「引用商標1」という。) 商標の態様 別掲2のとおり 指定商品及び指定役務 第9類、第35類及び第36類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務 出願日 平成24年5月16日 設定登録日 平成24年12月21日 2 登録第5544082号商標(以下「引用商標2」という。) 商標の態様 別掲2のとおり 指定商品及び指定役務 第16類、第38類、第41類及び第42類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務 出願日 平成24年5月16日 設定登録日 平成24年12月21日 3 登録第5570784号商標(以下「引用商標3」という。) 商標の態様 別掲3のとおり 指定商品及び指定役務 第9類及び第38類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務 出願日 平成24年7月9日 設定登録日 平成25年3月29日 なお、第35類、第43類及び第44類に属する商標登録原簿に記載の役務について防護標章登録されている。 4 登録第5586010号商標(以下「引用商標4」という。) 商標の態様 「ライン」の文字を標準文字で表してなるもの 指定商品及び指定役務 第9類、第38類、第42類及び第45類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務 出願日 平成24年11月28日 設定登録日 平成25年5月31日 5 登録第5669069号商標(以下「引用商標5」という。) 商標の態様 別掲4のとおり 指定商品及び指定役務 第9類、第38類、第41類及び第42類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務 出願日 平成25年5月28日 設定登録日 平成26年5月9日 6 登録第5768331号商標(以下「引用商標6」という。) 商標の態様 「LINE」の文字を標準文字で表してなるもの 指定商品及び指定役務 第9類、第16類、第28類、第35類、第36類、第38類、第41類及び第42類に属する商標登録原簿に記載の商品及び役務 出願日 平成25年1月31日 設定登録日 平成27年6月5日 第3 請求人の主張 請求人は、本件商標についての登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第50号証を提出した。 1 請求の理由 本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第8号に該当し、同法第46条第1項の規定によりその登録は無効とされるべきである。 2 具体的な理由 (1)引用商標の著名性について 請求人は、平成12年9月に設立されたハンゲームジャパン株式会社を前身として設立され、その後NHNJapan株式会社の名称を経て、平成24年4月1日にLINE株式会社に名称変更を行った(甲10)(審決注:甲9によれば、平成25年4月1日。)。 請求人は、平成23年3月11日に発生した東日本大震災をきっかけに、家族や友人・恋人など、身近な大切な人との関係性を深め、絆を強くするコミュニケーション手段こそが日本のみならず、世界中で求められていると考え、同年6月にモバイルメッセンジャーサービス(ソーシャルネットワークサービス)の「LINE」を開始した。「LINE」は、スマートフォン、タブレット、パソコンの電子端末で利用できる無料通信アプリケーションであり、災害時に有効とされる既読機能を始め、インターネット電話やテキストチャットなどの機能も有している(甲11、甲26)。 「LINE」は、電子メールにはない手軽さとユニークなキャラクターを利用したスタンプ機能、さらには、容易にできるグループチャット機能により、学生を中心とする若者の間で、瞬く間に爆発的なヒットとなった。我が国を始め、力強い成長を続けるアジア地域の国々を中心に、世界中の人々に利用されるようになり、平成23年末にはダウンロード数1,000万件を突破した。フェイスブックが利用者数1,000万人を超えたのはサービス開始から28か月後であり、ツイッターですら1,000万人突破に26か月を要したのに対し、「LINE」は僅か半年で達成した(甲12)。そして、サービス開始から3年後の平成26年6月には、世界累計のダウンロード数が10億件を突破したのである(甲32)。また、「LINE」の登録者は、サービス開始19か月後の平成25年1月には、世界で1億人を超え、その半年後には2億人、さらにその半年後には3億人、そして、平成26年10月には5億6,000万人突破という驚異的な伸びを記録した(甲31)。 「LINE」のアクティブユーザー数は、平成28年12月時点では、全世界で約2億2,000万人となっており、日本、台湾、タイ及びインドネシアの主要4か国のアクティブユーザー数は約1億7,000万人に及んでいる。特に、我が国における人気・普及度はめざましく、ユーザー数は、平成27年6月には5,800万人、同28年1月には6,600万人を超え、実に我が国総人口の半数を超えるに数に及んでいる(甲16)。そして、世代別の利用率は、10代後半と20代の若者世代では、90%以上が利用しており、これら世代の間では、「LINE」を利用していない人を探すことが難しい状況である。また、全世代における利用率も55%に及んでおり、「LINE」は、老若男女を問わず、あらゆる世代の国民に親しまれ、利用されているのである(甲15、甲17、甲23?甲25、甲28、甲29)。 なお、総務省の平成27年版情報通信白書によれば、代表的なSNSの1年内の利用については、「LINE」が37.5%で、フェイスブック(35.3%)、ツイッター(31.0%)を抑え、第1位となっている(甲14)。また、SNS利用者の利用満足度についても、77.9%と第1位にランキングされ、利用者の高い満足度を獲得している(甲15)。 引用商標は、請求人のハウスマークであると共に、モバイルメッセンジャー事業を表示するものとして、そのサービス開始以来、継続的かつ盛大に使用されてきた。そして、請求人は、メッセンジャーサービス以外に、広告業、携帯電話通信事業、電子マネー・クレジットカードサービス、オンラインゲームの配信、音楽や写真アプリの提供、オンラインニュース配信、オンラインによる漫画や占いの提供、アルバイト情報の提供、さらには、人工知能を利用した製品・サービスの提供等、幅広い事業活動を展開している(甲16)。これらの事業は、6,000万人を超えたLINEユーザーとの「つながり」を利用したものが多く、「LINE」商標と共に、「LINE」を中核・主要部とする「LINE」関連商標が使用されている。例えば、ニュース配信サービスの「LINE NEWS」は、通信アプリ「LINE」内にタブを新設してユーザー数を大きく増やし、平成29年3月には月間ユーザー5,900万人を記録した(甲18、甲27)。また、「LINE」アプリで使用できる電子マネーサービスの「LINE Pay」は、平成26年12月にサービスを開始し、同29年1月にはユーザー数が全世界で1,000万人を突破した(甲22)。さらに、携帯電話通信事業には、「LINE MOBILE」、音楽ライブ配信には、「LINE LIVE」、アルバイト情報の提供には、「LINEバイト」のように、いずれも「LINE」を中核とする「LINE」関連商標が使用されている(甲16)。 請求人の事業に関する売上収益は、平成25年度は395億円、同26年度は864億円、同27年度は1,200億円、同28年度は1,400億円超の売上収益を達成しており、短期間に著しい伸びを記録している(甲44)。なお、平成28年の世界のアプリ収益ランキングにおいて、「LINE」は、第7位にランキングされており、また、国内のゲームを除いたアプリ収益ランキングでは1位を維持している(甲21)。 請求人は、積極的なテレビCMを継続的に展開している(甲41)。サービス開始後の平成23年11月から現在までに、約50本のテレビCMを行っている。請求人のテレビCMは、LINEスタンプのキャラクターが登場するユニークなCMとして注目を浴びたり、復帰したタレントの復帰後初のテレビCMとして話題となった。そして、最近では、人気タレントを起用し、ユニークで訴求力の高いテレビCMとして好評を博している(甲42)。これらテレビCMは、平成23年は4,000GRP、同25年は8,000GRP、同26年は1万5,000GRP、同27年は2万3,000GRP、同28年は1万8,000GRPを記録している(GRPは、「グロス・レイティング・ポイント」の略であり、ある期間中に放映したCMの各巻の世帯視聴率の合計である。)(甲41)。首都圏や大阪・名古屋では、1GRPに要する広告費は約10万円とされており、請求人が「LINE」及びその関連事業に莫大な宣伝広告費をかけてきたことは明らかである。さらに、請求人は、自己のホームページ、ウェブサイト上、雑誌等でも積極的な宣伝広告活動を行っている。 また、請求人は、LINEスタンプのキャラクターを利用した商品化事業を行っており、LINE FRIENDSショップやオンラインサイトを通じて多数の商品を販売している(甲45)。そして、多数の有名企業とのコラボレーションも積極的に展開している(甲46?甲49)。 請求人は、企業のためにLINE公式アカウントやLINE@を提供している。これらサービスは、6,000万人を超えるLINEユーザーに、企業や店舗・施設情報を発信することができ、LINEユーザーとの「つながり」を強めることができるとして、多数の企業や店舗が導入している(甲43)。LINE公式アカウントを通じた情報発信は、企業にとっても重要なマーケティング手法になっている。LINE経由で発信したメッセージはメールと比べて反応速度が早く、買い忘れ防止など、緊急度の高いメッセージの配信に利用され、大手企業や芸能人・著名人の間で広く利用されている。他方、LINE@は、安価に登録できるツールであるため、店舗や施設において利用され、2014年1月の時点で10万を超える登録数を有している。 以上のように、請求人の絶え間ない営業努力と巨額を投じた宣伝広告活動が相まった結果、引用商標「LINE」は、学生を中心とした若者世代のみならず、老若男女を問わず、あらゆる世代の国民の間で広く認知されるに至っており、本件商標の出願時には既に、請求人の業務に係る商品役務を表示する商標として広く認識されるに至っており、本件商標の登録時及びそれ以降、さらにその著名性を高めているのである。 請求人は、引用商標3を原登録商標として、平成26年4月18日に防護標章登録出願を行い、第35類、第43類及び第44類の役務を指定役務として、同27年3月20日に防護標章登録を受けている(甲8)。当該防護標章出願は、平成26年9月以前の証拠資料に基づいて著名性が判断され、そして、登録が認められたものである。してみれば、引用商標3は、本件商標の出願日の時点において、既に著名性を獲得していたということになる。 (2)商標法第4条第1項第11号について 複数の構成部分を組み合わせた結合商標とその構成部分の一部よりなる商標の類否に関する最高裁平成20年9月8日第2小判決に沿って、以下検討する。 本件商標は、黒地の四辺形の中に「B」の白抜き文字を大きく配し、その右横のやや離れた位置に「LINE」の欧文字をやや小さく左横書きに書してなるところ、「B」の文字部分と「LINE」の文字とは、視覚上分離して看取されるものである。そして、「B」の文字部分は、欧文字1文字が商品役務の型式等を表す記号、符号として一般に使用されている一類型であるため、「B」の文字部分は、自他商品役務の識別標識としての機能は有しないか、極めて弱いものである。さらに、本件商標中の「LINE」の文字は、上述のとおり、請求人の業務に係る商品役務を表示するものとして高い著名性を有しており、当該文字部分が、取引者、需要者に対し商品役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであることを総合的に勘案すれば、本件商標からは、「ライン」の称呼が生じ、「請求人の周知・著名商標である『LINE』」の観念が生じるものである。 他方、引用商標からは、構成中の「LINE」の文字部分に相応して、「ライン」の称呼が生じ、「請求人の周知・著名商標『LINE』」の観念が生じるものである。 以上より、本件商標と引用商標とは、称呼及び観念を共通にする類似商標であって、本件商標の指定商品及び指定役務は、引用商標の指定商品及び指定役務である、第9類「ダウンロード可能なスマートフォン及び携帯情報端末用プログラム,電子メール・チャットに関する通信機能を有する電子計算機用プログラム」及び第38類「チャット形式による電子掲示板通信,インターネット利用のチャットルーム形式による電子掲示板通信,コンピュータネットワークを利用したチャット形式による電子掲示板通信」等と同一又は類似するものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。 (3)商標法第4条第1項第15号について 上述したとおり、請求人及び請求人の関連企業による継続的かつ積極的な営業活動及び宣伝広告活動により、引用商標は、本件商標の登録出願日及び登録査定日の両時点において、請求人の業務に係る商品・役務を表すものとして、高い著名性を獲得していた。 本件商標は、請求人の著名商標である「LINE」の文字を構成中顕著に含む態様である。そして、「B」の文字が商品役務の型式等を表す記号、符号として一般に使用されており、自他商品役務の識別標識としての機能は有しないか、極めて弱いものであること、「LINE」の文字部分が外観上分離されて看取されることも考慮すれば、本件商標と引用商標とは高い類似性を有するものである。 そして、本件商標の指定商品及び指定役務は、請求人の中核事業であって、「LINE」商標が高い著名性を有するモバイルメッセンジャーサービス(ソーシャルネットワークサービス)と完全に一致する。 してみれば、本件商標を、その指定商品・役務に使用した場合、これらに接する取引者・需要者をして、あたかも請求人の業務に係る商品役務であると連想させ、商品役務の出所について混同を生じる蓋然性は極めて高いといわざるを得ない。 また、請求人及びその関連企業は、上述のとおり広範かつ多角的な事業展開を行っている。 したがって、本件商標をその指定商品・役務に使用した場合、取引者・需要者は、請求人の関連会社、あるいは請求人と経済的・組織的に関係を有する者が提供する商品役務であるかのように誤認し、商品役務の出所について混同を生じるおそれがあることは必至である。 なお、本号に関する商標審査基準に照らしても、本件商標は、上述のとおり外観において「LINE」の文字が分離して看取され、また、全体としてまとまった観念を生じさせるものでもないため、本号に該当しないとの余地を考えることはできない。 以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。 (4)商標法第4条第1項第8号について 本件商標は、他人すなわち請求人の著名な略称である「LINE」を含む商標であるから、商標法第4条第1項第8号に該当するものである。 本件商標中の「LINE」の文字は、請求人及びその関連会社の略称として、盛大に使用されてきた結果、我が国のあらゆる世代の人々に親しまれ、本号の保護対象たる人格権が多大に化体したものである。実際、請求人の子会社・関連会社の中には、「LINE」を冠した会社名が多数存在する(甲9)。 そして、本件商標の出願日及び登録査定日の両時点において、「LINE」は請求人の略称として著名に至っていたことは明らかであり、本件商標は、請求人の承諾を得ないで出願されたものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に違反して登録されたものである。 第4 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第13号証を提出した。 1 答弁の理由 (1)本件商標について 本件商標は、その構成全体でのみ機能する一体不可分の商標であり、「LInE」(以下「LINE」と記す場合がある。)の文字部分のみが単独で自他商品役務識別標識として機能するものではない。 ア 「LINE」の語の本来的な意味合い 本件商標と引用商標とで共通する「LINE」の文字は、日本語化しているほど我が国で広く親しまれた英単語であるが、特に、第9類の商品及び第38類の役務との関係では、「電線、電信[電話]線、電話」等の意味合いで理解される用語である(乙1)。 したがって、過去の特許庁審査においても、商標「ライン」が識別力がないことを理由に拒絶されており(乙2)、かつ、「インライン」「オフライン」「オンライン」等、「ライン」の語を接尾語的に用いた用語が通信用語として使用されているところでもある(乙3)。 かかる状況に鑑みれば、「LINE」の用語自体は、本件商標の指定商品・指定役務の分野において、本来的に識別力がないか極めて弱い用語であることが明らかであるから、本件商標において、「LINE」の文字部分のみが単独で商標として機能するか否かについては、その点をも踏まえた上で、他の構成要素との関係で総合的に検討されるべきである。 イ 本件商標の構成 本件商標は、角張った黒色吹き出し中に「B」の文字を白抜きで書してなり(以下「B図形」という場合がある。)、その右側に「LINE」の欧文字を配した構成よりなるところ、B図形内の「B」の文字と「LINE」の文字とは文字の大きさを若干異にしているものの、両文字の高さ中央を揃え、外観構成上の一体的緊密性が高い文字部分となっている。 特に、B図形は、圧倒的に看者の注目を集める迫力のある部分であり、このことに、「LINE」の文字が世上一般において接尾語的に用いられていることをも併せ考えれば、B図形を無視して、「LINE」の文字部分のみで認識することは考え難い構成ともいえる。 まして、本件商標から生じる「ビーライン」の称呼は、長音を含めても5音の極めて短い音構成であって、省略称呼を必要とするような冗長な音構成でもない。 ウ まとめ 以上よりすれば、本件商標は、その構成中「LINE」の文字部分のみが単独で商標として機能するものではなく、構成全体でのみ機能する一体不可分の商標であると考えるのが相当である。 (2)引用商標の著名性について ア 「LINE」の語の本来的な意味合い 引用商標を構成する「LINE」の文字自体は比較的平易な英語(外来語)であって独創性もなく、誰しもが容易に採択し得るものである。 特に、「LINE(ライン)」の語は、本件商標の指定商品及び指定役務の分野においては、「電線、電信[電話]線、電話」等の意味合いで理解される用語であることから、従来より「LINE(ライン)」の語を構成中に有する商標が好んで採択されている実情が認められる(乙4)。 このように、「LINE」の語が本来的に識別力がないか極めて弱い用語であることからすれば、「LINE」の文字自体が周知・著名性を獲得するのは極めて困難である。 したがって、仮に請求人の営業活動によって引用商標のいずれかの態様の商標が周知・著名性を獲得しているとしても、それは、請求人が実際に使用しているロゴ態様について限定的にいい得ることであり、そのロゴ態様を離れて、「LINE」の表示自体が請求人の周知・著名な商標といい得るものではない。 イ 請求人による「LINE」標章の使用状況 請求人の「LINE」標章の使用状況を確認すべく、請求人提出の各証拠を確認してみたが、そこには引用商標とは明らかに別異の商標に関するものが相当数含まれており(甲18、甲22、甲42、甲43、甲45?甲49)、また、その他の証拠についても、「LINE」アプリの利用者数等を示す第三者証拠ばかりであり(甲12?甲15、甲17?甲40、甲50)、請求人商標の使用状況を示す資料(甲10、甲11、甲16)は僅かであった。 したがって、これらの証拠のみによっては、引用商標のうち、いずれの態様の商標が請求人の商標として周知・著名であるかを判断することができないことから、請求人のウェブページ等を確認してみたところ、以下の事実が判明した。 (ア)請求人は、緑色の直線的な書体で書された「LINE」標章をハウスマークとして使用している(乙5)。 (イ)甲第10号証によれば、請求人は、2011年6月より、コミュニケーションアプリ「LINE」を提供してきたことが認められるが、そのアイコンは、やや丸みを帯びた緑色の正方形を背景とし、その中央部に白色で丸みを帯びた吹き出し図形が描かれ、さらに、その吹き出し図形の中央に緑色で「LINE」の文字が書された態様よりなるものである(乙6。以下「請求人アプリアイコン」という場合がある。)。 (ウ)アプリ起動時のスマートフォン等モバイル端末での画面には、請求人アプリアイコンと同じく、緑色を背景色とし、その中央部に「LINE」の文字が書された白色吹き出し図形が映し出される(乙7。以下「請求人アプリ画面表示」という場合がある。)。 (エ)甲第41号証によれば、コミュニケーションアプリ「LINE」のテレビCMは、2011年11月から2013年3月まで行われていたが、テレビCMにおいては、請求人アプリ画面表示が映し出されたのみであり(乙8)、それ以外には「LINE」の文字は画面上に一切表示されなかった。 (オ)請求人は、コミュニケーションアプリの他、ゲームアプリをも提供しているが、請求人が提供するゲームアプリには、すべて、丸みを帯びた緑色吹き出し図形内に白抜きで「LINE」の文字を書した表示が付されている(乙9)。 (カ)このように、請求人は、コミュニケーションアプリを浸透させるにあたっては、請求人アプリアイコンを中核とした宣伝広告を行ってきており、そのほとんどが丸みを帯びた吹き出し図形とともに使用されている。かつ、請求人ハウスマークをも含め、常に、緑色で「LINE」の文字を表示するか、あるいは、緑色を背景色としていることが認められる。 ウ まとめ 以上よりすれば、仮に請求人の商標が周知・著名であるとしても、それは請求人が実際に使用している「請求人アプリアイコン」と同一態様よりなる引用商標3及び5程度についてであり、その他の引用商標については周知・著名性を獲得しているとは認めることができない。 特に、「LINE」の語が本来的に識別力がないか極めて弱い用語であることをも併せ考えれば、その周知・著名性は極めて限定的なものと考えるべきであり、請求人が実際に使用する丸みを帯びた吹き出し図形や緑色の色彩を離れて、「LINE」の表示自体が、本件商標の登録出願時に本件指定商品・役務の需要者の間で広く認識されていたとは到底認めることができない。 エ 請求人の主張について (ア)請求人は、「引用商標は、請求人のハウスマークであると共に、モバイルメッセンジャー事業を表示するものとして、そのサービス開始以来、継続的かつ盛大に使用されてきた。」と主張する。 しかしながら、請求人のハウスマークとして使用されているのは、緑色の直線的な書体で書された「LINE」であり(乙5)、引用商標の全てがハウスマークとして使用されているわけではない。 (イ)請求人は、幅広い事業活動を行い、それらの事業において、「LINE」商標と共に、「LINE」を中核・主要部とする「LINE」関連商標が使用されていると主張し、「LINE NEWS」、「LINE Pay」等の使用例を挙げている。 しかしながら、ここで提出されている証拠(甲18、甲22、甲42、甲43、甲45?甲49)は、いずれも「LINE」単独の文字ではなく、引用商標とは異なる商標の使用例を示すものにすぎないから、引用商標の周知・著名性を証するものではない。 (ウ)請求人は、請求人の事業に関する売上収益を甲第44号証で、アプリ収益ランキングを甲第21号証で証しているが、その裏付けがないばかりか、いずれについても請求人会社全体の収益を示すにすぎないものである。 つまり、これらの数値の中には、「LINE」本体の収益のみではなく、「LINE」とは別異の商標を用いて行う事業・アプリに関する収益もが含まれているところ、請求人ホームページに現れているアプリに限ってみても、「LINE POP」、「LINEバブル」等(これ以外にも多数存在する。)、引用商標とは全く別異の商標を用いたアプリが相当数含まれていることから(乙9、乙10)、甲第44号証が引用商標の周知・著名性を証するものではないことは明らかである。 (エ)請求人は、積極的なテレビCMを継続的に展開していると主張し、甲第41号証を提出している。 しかしながら、甲第41号証に示されたCM中、「LINE(サービス本体)」に関するものは、冒頭の5件程度であり、その他は、請求人が他の商標を用いて行っている事業(「ポコパン」、「ツムツム」他)のCMであるから、引用商標の周知・著名性を証明するものではない。 また、「LINE(サービス本体)」のCMに関しても、そのCMを確認する限り、CM内で表示されているのは「請求人アプリ画面表示」のみであるから(乙8)、この点からしても、引用商標の周知・著名性を証明するものではない。 (オ)請求人は、LINEスタンプのキャラクターを利用した商品化事業を行っている旨、また、多数の有名企業とのコラボレーションも積極的に展開している旨を主張し、甲第45号証ないし甲第49号証を提出している。 しかしながら、これらの証拠は、「LINEスタンプのキャラクター」が利用されている事実を示すにすぎず、「LINE」の文字が本件指定商品及び指定役務で使用されている事実を示すものではないから、これらの証拠がいかなる目的で提出された証拠なのか、理解に苦しむところである。 (カ)請求人は、引用商標3が防護標章登録を受けていることを理由に、「引用商標3は、本件商標の出願日の時点において、既に著名性を獲得していたということになる。」旨主張している。 引用商標3がある程度の周知・著名性を獲得していたこと自体、被請求人も否定するところではないが、その周知・著名性は、その特殊な態様についてのみ言い得るものであり、その他の引用商標が、請求人商標として周知・著名性を獲得していることを証明するものではない。 (キ)なお、請求人が提出する著名性立証のための新聞等の各種記事(甲12?甲15、甲17?甲19、甲22?甲40、甲50)については、その頒布数や販売地域について何ら裏付けがある資料ではなく、また請求人による引用商標の使用状況を証明するものでもないから(特に、甲18は「LINE NEWS」、甲22は「LINE Pay」という、引用商標とは別異の商標に関する記事である)、これらによって、引用商標の周知・著名性が立証されているものではない。 (3)商標法第4条第1項第11号について 上述のとおり、本件商標は、構成全体でのみ機能する一体不可分の商標であり、「ビーライン」の称呼のみが生ずるものであるから、引用商標とは、外観・称呼・観念のいずれにおいても非類似の商標である。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものではない。 請求人は、「『B』の文字部分は、欧文字1文字が商品役務の形式等を表す記号、符号として一般に使用されている一類型であるため、『B』の文字部分は、自他商品役務の識別標識としての機能は有しないか、極めて弱いものである。」と主張する。 しかしながら、欧文字1文字が商品・役務の記号・符号表示として使用される場合には、語尾に付されるのが一般的であり、本件商標のごとく、語頭に冠された場合には、この部分を商品・役務の記号・符号表示とは認識し難い(乙11)。 まして、上述のごとく、本件商標は、単なる欧文字1文字を語頭に冠したものではなく、圧倒的に看者の注目を集める迫力のある図形として存在しているものであり、かかる本件商標の構成よりすれば、本件商標に接した取引者・需要者が、「B図形」部分につき、商品・役務の記号・符号を表示したものと理解する事態は想定できず、請求人の上記主張は失当である。 (4)商標法第4条第1項第15号について 商標法第4条第1項第15号に関する最高裁判決(乙12)に沿って以下検討する。 ア 混同を生ずるおそれについて (ア)「当該商標と他人の商標との類似性の程度」について 上述のとおり、本件商標は、構成全体でのみ機能する一体不可分の商標であり、引用商標とは全く類似するところのない別異の商標であるから、本件商標と引用商標との類似性の程度は極めて低いものである。 (イ)「他人の表示の周知著名性及び独創性の程度」について 引用商標を構成する「LINE」の文字自体は比較的平易な英語(外来語)であって独創性もなく、誰しもが容易に採択し得るものである。 特に、「LINE」の語は、本件商標の指定商品及び指定役務の分野においては、「電線、電信[電話]線、電話」等の意味合いで理解される用語であり、本件指定商品及び指定役務の商標中に好んで採択されている用語でもあることからすれば(乙4)、「LINE」の表示自体が周知・著名性を獲得するのは極めて困難であり、その周知・著名性は、請求人が実際に使用する標章の特徴(丸みを帯びた吹き出し図形や緑色の色彩)を離れては獲得し得ていない。 (ウ)以上を総合的に判断すれば、本件商標が指定商品・役務に使用されたとしても、請求人又は請求人と業務上何らかの関係を有する者の取り扱いに係る商品・役務であるかのごとく、商品又は役務の出所の誤認・混同を生ずるおそれはない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する商標ではない。 イ 請求人の主張について 請求人は、審査基準を引用し、本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当する旨主張する。 しかしながら、該基準は、「他人の著名な商標」をそのまま商標構成中に有する商標の取り扱いを規定したにすぎないところ、本件商標の構成中「LInE」の文字(「n」が小文字)は、請求人が使用する商標ではなく、この文字列自体が、請求人の著名な商標とは言えないことが明らかであるから、請求人の主張は失当である。 (5)商標法第4条第1項第8号について 請求人は、本件商標は他人すなわち請求人の著名な略称である「LINE」を含む商標であるから本号にも該当するものである旨主張する。 しかしながら、他人の氏名や略称等を「含む」商標に該当するかどうかを判断するに当たっては、単に物理的に「含む」状態をもって足りるとするのではなく、その部分が他人の略称等として客観的に把握され、当該他人を想起・連想させるものであることを要すると解すべきである(乙13)。 本件商標は、まとまりよく表された本件商標の構成においては、「LInE」の文字部分のみが独立して認識されるとはいい得ないばかりか、「LInE」の文字自体が請求人の著名な略称ではないことからすれば、本件商標に接する者に請求人を想起・連想させるものではなく、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当するものではない。 (6)むすび 以上のように、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同項第11号及び同項第15号に該当するものではない。 第5 当審の判断 1 引用商標の周知性について (1)請求人及び被請求人提出の甲乙各号証及び両人の主張によれば、次の事実を認めることができる。 ア 請求人は、ハンゲームジャパン株式会社として2000年(平成12年)9月に設立され、その後、2003年(平成15年)8月にNHN Japan株式会社に商号変更し、さらに2013年(平成25年)4月1日にLINE株式会社に商号変更した(甲9、甲10、甲16)。 イ 請求人は、2011年(平成23年)6月に無料通信アプリケーション「LINE」(以下「請求人アプリ」という場合がある。)によるソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)(以下「請求人役務」という場合がある。)の提供を開始した(甲10)。 ウ 我が国における請求人アプリの月間利用者数は、2014年(平成26年)4月には5,000万人、2015年(平成27年)には5,800万人、2016年(平成28年)には6,600万人であった(甲13、甲16)。 エ 請求人は、請求人役務について、引用商標3及び5を請求人アプリのアイコンとして使用するとともに、自社のホームページで引用商標1ないし3、5及び6を使用していることが認められ(いずれも各引用商標と同一と認められる構成の商標を含む。)、かつ、かかる使用は請求人役務の提供開始当初から現在まで継続しているものと推認できる(甲16、乙5、乙6等)。 オ 請求人は、ニュース配信サービス、電子マネーサービス、携帯電話通信事業、音楽ライブ配信等の業務を行い、これらの業務についても引用商標1ないし3、5及び6を使用している(いずれも各引用商標と同一と認められる構成の商標を含む。)(甲16、乙5、乙6等)。 カ 新聞記事やインターネットの記事において、請求人アプリは遅くとも2012年(平成24年)3月から「LINE」と表記され、現在まで継続している(甲40等)。 キ 本件商標の登録出願時において、請求人が「LINE」と略称されていると認められる証左は、甲第32号証及び甲第37号証の3葉目の2件、請求人アプリが「ライン」と表記されていると認められる証左は、甲第39号証の1件のみである。 (2)上記(1)の事実によれば、引用商標1ないし3、5及び6は請求人の業務に係る役務(ソーシャル・ネットワーキング・サービスの提供)を表示するものとして、いずれも本件商標の登録出願時から需要者の間に広く認識されている商標であって、その状況は本件商標の登録査定日はもとより、現在まで継続しているものと判断するのが相当である。 しかしながら、引用商標4は、請求人の業務に係る役務を表示するものとして、また、「LINE」の文字(語)は請求人の著名な略称として、いずれも本件商標の登録出願時に需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。 2 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標 ア 本件商標は、別掲1のとおり、隅丸四角形状の黒色のふきだしの中に「B」の文字を白抜きして表した図形とその右に「LInE」の文字を配してなるものであるから、その構成文字に相応して「ビーライン」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 イ 請求人は、本件商標はその構成中「B」の文字部分が商品、役務の型式等を表す記号、符号として一般に使用されている欧文字一字の一類型であって、自他商品役務の識別標識としての機能を有しないか極めて弱いものであって、本件商標の構成中の「LINE」の文字(審決注:本件商標の構成文字は「LInE」である。以下同じ。)は、請求人の業務に係る商品役務を表示するものとして高い著名性を有しているとして、本件商標は、その構成中「LINE」の文字部分が取引者、需要者に対し、商品役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであるから、これよりは「ライン」の称呼及び「請求人の周知、著名商標である『LINE』」の観念が生じるものである旨主張している。 しかしながら、本件商標の構成中の「B」の文字は、上記アのとおり、隅丸四角形状の黒色のふきだしの中に白抜きして表わされたものであるから、商品又は役務の型式等を表す記号、符号として一般に使用される欧文字一字の一類型と認識されることなく、黒色のふきだしの中に「B」の文字が白抜きで表わされた図形として認識されるものと判断するのが相当である。 そして、「LINE」の文字は、「線、電信線」などの意味を有する我が国で一般に慣れ親しまれた英語であるところ、本件商標の構成中の「LInE」の文字は、3文字目の「n」が小文字で表され他の文字が大文字で表されているものの、一見して「LINE」の文字を普通に用いられる方法の範囲内で表したものと理解し得るものである。 さらに、本件商標の指定商品及び指定役務は、第9類「電子メール・チャット等の通信機能を有する携帯電話用プログラム」及び第38類「オンラインによる利用者間のメッセージの交換のためのチャットルーム形式及び電子掲示板による通信」であるところ、いずれも通信に係るものであって、「線、電信線」などの意味を有する上記英語「LINE」との関連性が強いものといえるから、本件商標の構成中「LInE」文字は、自他商品・役務識別標識としての機能が強いものとはいえない。 そうすると、本件商標は、これに接する取引者、需要者は、その構成中の「LInE」の文字を請求人の商標として理解、認識することなく、英語の「LINE」の文字を書したものとして理解、認識すると判断するのが相当である。 してみると、本件商標は、その構成中の「LInE」の文字部分が取引者、需要者に対し、出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものということはできず、「ライン」の称呼及び「請求人の周知、著名商標である『LINE』」の観念が生じるということもできない。 したがって、請求人の上記主張は、採用することができない。 (2)引用商標 引用商標1及び引用商標2は、別掲2のとおり、「LINE」の文字を緑色で書してなり、引用商標3及び引用商標5は、それぞれ、別掲3及び別掲4のとおり、緑色の隅丸四角形内にふきだしを白抜きし、その中に緑色の「LINE」の文字を配してなり、引用商標4は、上記第2の4のとおり、「ライン」の文字を標準文字で表してなり、引用商標6は、上記第2の6のとおり、「LINE」の文字を標準文字で表してなるものであるから、いずれもそれらの構成文字又は構成中の「LINE」又は「ライン」文字に相応して、「ライン」の称呼を生じるものである。 そして、引用商標1ないし3、5及び6は、上記1のとおり、需要者の間に広く認識されている商標と認められるものであるから、「(請求人の業務に係る役務(ソーシャル・ネットワーキング・サービスの提供)を表示するものとしての)LINE」の観念を生じ、引用商標4は、「ライン(線、電信線)」の観念を生じるものである。 (3)本件商標と引用商標との類否 本件商標と引用商標との類否について検討すると、両者は、外観においては、「B図形」の有無などにより、相紛れるおそれのないこと明らかである。 つぎに、称呼においては、本件商標から生じる「ビーライン」の称呼と引用商標から生じる「ライン」の称呼とは、語頭部の「ビー」の音の有無という明らかな差異を有するから、本件商標と引用商標とは、称呼上、相紛れるおそれはない。 さらに、観念においては、本件商標が特定の観念を生じず、引用商標が「(請求人の業務に係る役務(ソーシャル・ネットワーキング・サービスの提供)を表示するものとしての)LINE」又は「ライン(線、電信線)」の観念を生じるものであるから、本件商標と引用商標とは、観念上、相紛れるおそれはない。 そうすると、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標といわなければならない。 (4)小括 上記(3)のとおり、本件商標と引用商標とは、非類似の商標である。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 3 商標法第4条第1項第15号該当性について 上記1のとおり、引用商標1ないし3、5及び6は、請求人の業務に係る役務を表示するものとして本件商標の登録出願時及び登録査定時において需要者の間に広く認識されている商標と認められるものである。 しかしながら、引用商標4は、請求人の業務に係る役務を表示するものとして本件商標の登録出願時に需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、また、上記2のとおり、本件商標は、引用商標と外観、称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない別異の商標というべきものである。 そうすると、本件商標は、本件商標権者がこれをその指定商品及び指定役務について使用しても、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品及び役務が他人(請求人)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品及び役務の出所について混同を生ずるおそれはない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 4 商標法第4条第1項第8号について 上記1のとおり、「LINE」の文字は、本件商標の登録出願時に請求人の著名な略称として需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、また、上記2(1)イのとおり、本件商標の構成中の「LInE」の文字は、我が国で一般に慣れ親しまれた英語「LINE」として理解、認識されるものである。 そうすると、本件商標は、他人(請求人)の著名な略称を含む商標ということはできない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当しない。 5 むすび 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第8号、同項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、その登録を無効とすべきでない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲1(本件商標) 別掲2(引用商標1、引用商標2)※色彩は原本参照。 別掲3(引用商標3)※色彩は原本参照。 別掲4(引用商標5)※色彩は原本参照。 |
審理終結日 | 2017-10-24 |
結審通知日 | 2017-10-30 |
審決日 | 2017-11-15 |
出願番号 | 商願2014-81773(T2014-81773) |
審決分類 |
T
1
11・
263-
Y
(W0938)
T 1 11・ 23- Y (W0938) T 1 11・ 271- Y (W0938) T 1 11・ 262- Y (W0938) T 1 11・ 261- Y (W0938) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 高橋 謙司 |
特許庁審判長 |
大森 健司 |
特許庁審判官 |
松浦 裕紀子 小松 里美 |
登録日 | 2015-05-01 |
登録番号 | 商標登録第5762656号(T5762656) |
商標の称呼 | ビイライン、ビイ、ライン |
代理人 | 塩谷 信 |
代理人 | 特許業務法人松田特許事務所 |
代理人 | 岩瀬 ひとみ |