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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない W44
管理番号 1336240 
審判番号 取消2017-300142 
総通号数 218 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2018-02-23 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2017-03-01 
確定日 2017-11-29 
事件の表示 上記当事者間の登録第5603618号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5603618号商標(以下、「本件商標」という。)は、「Lily」の欧文字を標準文字により表してなり、平成25年2月19日に登録出願、第44類「美容・理容及びこれらに関する指導・助言・情報の提供」を指定役務として、同年6月18日に登録査定、同年8月2日に設定登録されたものである。
なお、本件審判の請求の登録日は、平成29年3月10日である。

第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定役務について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、その登録は商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 弁駁の理由
(1)答弁書「6.理由(1)被請求人の事業」について
いずれも不知。
(2)答弁書「6.理由(2)本件商標」について
本件商標取得の目的については不知だが、その余は認める。
(3)答弁書「6.理由(3)被請求人の使用状況」について
ア 同「ア」について
不知である。
イ 同「イ」について
不知ないし否認する。
被請求人が提示する乙第3号証は、その記載内容からダメージヘアーのケアトリートメント(Care treatment)に関するメニューであることがわかる。しかしながら同号証には、その作成日付や作成者名義について何ら記載されておらず、かかる書面をもって過去3年以内の被請求人による本件商標使用の事実を窺うことはおよそ不可能である。
なお、被請求人は、答弁書のなかで、乙第8号証の料金表記載の金額と乙第3号証の料金表記載の金額との整合性について縷々述べているが、これは乙第3号証記載の料金表のうち、自身の主張に沿うような数字を任意にピックアップして説明に用いているにすぎない。かかる説明について、乙第8号証では何ら説明がなされてもいないことからすれば、乙第3号証は、本件審判において被請求人の主張を裏付ける証拠たりえない。
なお、乙第4号証及び乙第5号証についてみると、同各号証から明らかになるデータと紐づけられた日付は、本審判請求予告登録の日から3年半ほど前の2013年7月25日である。そして同データがその後継続して使用されたと認めるに足りる証拠は乙から何ら提示されておらず、よって乙第4号証及び乙第5号証は、本件商標が過去継続して3年以上使用されたことの根拠となりえない。したがって、被請求人の「平成25年(2013)7月25日に価格表が作成され、以後使用されてきていることが理解できる」との主張は失当である。
ウ 同「ウ」について
被請求人が情報誌「ぱど」に広告を掲載した事実は認めるが、その広告内容その他の主張については不知ないし否認する。その理由は以下のとおりである。
(ア)乙第8号証が被請求人の主張を裏付けているとは考え難い
被請求人は、乙第8号証の説明として、「ぱど首都圏版平成27年(2015)6月5日号において、誌面11ページ左上に被請求人店舗の営業広告が掲載された」と述べる。しかしながら、乙第8号証として当審判に提出された書証は、「ぱど」の表紙と、もう1頁分の計2頁からなる書面のみであって、かかる2枚の書面が同一の雑誌を構成することを裏付ける事実は、被請求人の主張からはうかがえない。また、乙第8号証のどの記載を見ても、1枚目と2枚目とが同一の情報誌誌面であることを示す記載はない。むしろ、本弁駁書作成時点において確認できる被請求人運営サロンのメニュー(甲2?甲4)のいずれにも、乙第8号証2枚目記載の表記と同様の記載はなく、特に2013年に作成された((c)2013との表記がある)甲第3号証のどこにも、本件商標が使用されていたことを示す記載はない。つまりこれらの書証に照らしてみれば、被請求人が主張するケース以外の場合で、被請求人が本件商標を使用していたと認めることはできない。
この点、乙第8号証の2枚目の誌面をみると、「『ぱど見た』でOK!」などの記載があり、確かに2枚目が「ぱど」の誌面であることはうかがえるものの、その誌面が被請求人が出稿したと主張する、2015年6月5日(No.1329)号であるとの表記はどこにもない。上記のとおり、抄本であることを証する記載がない以上、いくら出稿した事実を乙第6号証及び第7号証にて立証したとしても、それだけでは、乙第8号証が2冊の異なる情報誌の別々の頁からなる書証である可能性を払拭することができず、ゆえに乙第8号証を根拠とした被請求人による「過去3年以内に本件商標を使用していた」との主張は認められない。
(イ)商標としての使用に当たらない
被請求人が主張するように、確かに乙第8号証2枚目左上には、本件商標と同じ文字からなる「Lily」との表記を確認することが可能である。しかしながら、以下で述べるように、万一乙第8号証が真正の書証であったとしても、かかる表記は商標法上商標として使用した(商標的使用)と評価することができない。
乙第8号証2枚目左上の記載を見るに、「Lily」の記載は、「【Lily】はホットスチームや炭酸泉付トリートメント。」との部分にて確認することができる。その前後の表示を見ると、「Lily」の他にも、被請求人が経営するサロン「fika by cottie*」における施術として、【koti】、【miel】、【cielo】、【Lyca】、【Luire】、【nico】なる施術があることがわかる。これらの表示に一貫して認められるのはいずれも、被請求人が経営するサロン「fika by cottie*」における施術手順を説明したものにすぎないという点(Lilyに関していえば、ホットスチームや炭酸泉付のトリートメントを行うとの施術の手順)である。かかる記載は単なる施術の工程を表すものにすぎず、ここから格別自他識別性を見出すことは困難である。よって、かかる記載が本件商標の商標的使用に当たるということはできず、これにより、乙第8号証の存在をもって本件商標が「使用」されたということはできない。
(ウ)本件商標の使用は指定役務についてされていない
本審判における被請求人による商標の使用は、本件商標の指定役務、すなわち「美容・理容及びこれらに関する指導・助言・情報の提供」についてされていなければならない。この点、仮に被請求人による「Lily」の使用が「商標の使用」に該当すると判断される場合であっても、以下で述べるとおり、かかる使用は本件商標の指定役務についてされたものではない。
まず、本件商標の指定役務について使用されなければならない、との趣旨は、使用されている役務と指定役務との間に必ずしも厳格な同一性までは必要とされておらず、社会的通念における同一性の範囲で判断すべきものではある一方、指定役務と類似する役務に使用していたとしても、かかる事実によっては本件商標の取消を免れない。この点、上記指定役務は「美容」、「理容」という役務と「これらに関する指導」、「助言」、「情報の提供」という役務とがそれぞれ「・」で区切られるとともに、前2つと後3つとの間が「及び」との接続詞により結ばれている。この「・」、「及び」はいずれも、前後の役務を並列的に並べるために用いる記号及び語であり、前後の役務を選択的に並べる際に用いる「又は」とは明確にその意味を異にしている。なお、2以上の商品(役務)を指定する場合は、それぞれの指定商品(指定役務)の区切りにコンマ(,)を付さなければならないとされている。
以上の各事実を踏まえると、本件商標の指定役務のように、複数の役務が「,」や「又は」で区切られているのではなく、「・」や「及び」で結ばれている場合には、それら個々の役務一つ一つに権利範囲が及ぶのではなく、全ての役務を包含網羅する一の役務が指定役務としての権利範囲になると解すべきことになる。つまり、「美容・理容及びこれらに関する指導・助言・情報の提供」との指定役務は換言すると、「(a)美容、(b)理容、(c)美容や理容に関する指導、(d)美容や理容に関する助言、(e)美容や理容に関する情報の提供、以上5つの役務全てを提供する役務」ということになる。
ここで乙第8号証の記載に戻ると、同書証において「Lily」は、ホットスチームや炭酸泉付トリートメントといった美容に関連する事項と紐づいて表記されており、かかる表記は上記各役務のうち(a)についての使用ということができる余地はありそうである。しかしながらかかる記載のみでは、(b)ないし(e)につき使用されていると評価することはおよそできない。そして、そのように本来(a)から(e)までを包含網羅することを想定した指定役務のうち一部でしかない(a)のみからなる役務を使用したにすぎない場合には、およそ「社会的通念における同一性の範囲」における使用の事実があったと認めることはできない(むしろ「非同一性」をうかがわせる事情といわざるを得ない。)。
したがって乙第8号証の記載をもって、被請求人が本件商標の指定役務「美容・理容及びこれらに関する指導・助言・情報の提供」について使用をしたということはできない。
(4)結論
以上の(1)ないし(3)において述べたとおり、被請求人の答弁からは、被請求人が過去3年間のうちいずれかの時点において本件商標を使用したとの証明がなされているとはいえない。したがって、審判請求書記載のとおり、本件商標は取り消されるべきである。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第10号証を提出した。
1 被請求人の事業
被請求人は、平成19年(2007年)3月に東京都墨田区緑に店舗「cottie*」を設立し、現在までの10年間、東京近郊及び近隣の顧客を対象として美容業を営んでおり(乙1)、平成25年(2013年)8月には東京都墨田区江東橋に姉妹店舗「fika」を設立し、同店舗においても美容業を営んでいる(乙2)。
2 被請求人の使用状況
(1)ヘアトリートメントの概要
本件商標をもって指称する被請求人提供のヘアトリートメントサービス「Lily」とは、施術者が施術専用のヘアトリートメント剤を使用しながら、店舗備え付けの機器によるホットスチームや炭酸入り温水シャワーを併用して、顧客の毛髪に油分や栄養成分を補い、傷んだ毛髪を正常に戻したり、傷まないように予防して、美しい毛髪の状態を維持することを目的としたヘアトリートメント美容を意味するものである。当該ヘアトリートメントサービスは「1(1,000円)」、「2(1,500円)」、「3(2,000円)」と、三つの工程と料金に分けられた施術内容から一つあるいは二つを組み合わせて施術を行う。例えばパーマネントやカラーリングメニュー施術の際に補助的に使用する場合は「1」あるいは「2」の単独の施術内容となり、毛髪の補修に重点を置いたヘアトリートメントメニューのみの利用時は「1」あるいは「2」と、「3」を組み合わせて施術する。
(2)被請求人店舗内での使用状況
被請求人は、被請求人店舗において、本件商標登録と同時期である平成25年(2013)7月25日頃から現在に至るまで施術価格表を提示している(乙3?乙5)。乙第3号証の価格表には、ヘアトリートメントの施術内容の概要と料金等が記載されており、被請求人が提供するヘアトリートメント美容「Lily」の表示及びその内容等が記載されている。また、乙第4号証は、乙第3号証の施術価格表を画像編集ソフトにて作成した際の電子データであり、乙第5号証は、乙第4号証の電子データの作成日を示す写真である。乙第5号証の写真で示されているとおり、パソコン上にて操作すると当該ファイルには作成日が平成25年(2013)7月25日と記録されており、読み取りソフトを使用して、乙第4号証の電子データのファイルを開くと、当該ファイルの内容が乙第3号証の価格表であることが確認でき、本件商標の取得と同時期である平成25年(2013)7月25日に価格表が作成され、以後使用されてきていることが理解できる。
(3)広告としての使用状況
被請求人は、上述の被請求人店舗内での価格表としての使用の他、地域の情報誌『ぱど』を運営する株式会社ぱどに対して、広告掲載を依頼し(乙6、乙7)、ぱど首都圏版平成27年(2015)6月5日号において、誌面11ページ左上に被請求人店舗の営業広告が掲載された(乙8)。乙第6号証及び乙第7号証で示されているとおり、被請求人が株式会社ぱどに広告料金を支払い掲載されたものであり、それぞれの証拠に被請求人名、被請求人店舗名称と掲載号数が記載されている。
ぱど首都圏版平成27年(2015)6月5日号(乙8)においては、本件商標が、被請求人店舗において提供する、ヘアトリートメントサービスの名称として「Lily」が使用されている。乙第8号証の広告左側の説明文では、本件商標のサービス内容について「【Lily】はホットスチームや炭酸泉付トリートメント。」と、具体的に記述されている。さらに乙第8号証の広告右側上部の写真下の「MENU」と題した料金一覧の項目の上から3行目の右側に「●Lily・・・¥2,270?」との記載がある。これは、初回来店に際してトリートメントのみの利用を希望する顧客を想定して、「(3)ア Lilyヘアトリートメント」で述べた当該サービスの施術行程のうち「1」と「3」を組み合わせた通常施術料金3,000円から初回特典として30%相当額を割り引いて2,270円と価格設定したものである。
なお、情報誌「ぱど」は、株式会社ぱどによって昭和62年(1987)10月に創刊され、全国190エリア、約1,000万部を発行する地域密着型のフリーペーパーである(乙9、乙10)。誌面には生活情報などに加えて、地域の店舗広告などが有料にて掲載されている。
3 結語
乙第8号証に示すように、本件商標が使用された広告の掲載年月日は、平成27年(2015)6月5日であり、乙第8号証の存在その他各種証拠によれば、乙第3号証の価格表についても、乙第8号証の広告掲載時期と同時期に使用されていたことが優に推認されるものである。これらは商標法第2条第3項第8号にいう「商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」に該当するものであるから、商標権者たる被請求人が、本件審判の請求日前の3年以内に日本国内において、本件商標「Lily」を、使用していたことは明白である。
よって商標法第50条第1項の規定により、本件審判請求は成り立たない。

第4 口頭審尋における陳述
請求人は、乙第8号証の原本は全32頁からなる1冊の冊子であることを確認した。

第5 当審の判断
1 被請求人提出の証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1)乙第1号証は、平成29年3月30日付け墨田区保健所長による証明書であるところ、「施設の名称」及び「所在地」の欄に、それぞれ「cottie*(コティエ)」、「東京都墨田区緑・・・」の記載があり、また、「確認」の欄には、「根拠法令 美容師法」、「氏名 金澤 憲顕」、「年月日 平成19年3月6日」、「業種 美容所」の記載がある。
(2)乙第2号証は、平成29年3月30日付け墨田区保健所長による証明書であるところ、「施設の名称」及び「所在地」の欄に、それぞれ「fika」、「東京都墨田区江東橋・・・」の記載があり、また、「確認」の欄には、「根拠法令 美容師法」、「氏名 金澤 憲顕」、「年月日 平成25年8月19日」、「業種 美容所」の記載がある。
(3)乙第6号証は、「請求書」であるところ、その左上部には、「墨田区緑・・・ cottie ご担当:金澤 憲顕 様」の記載があり、右上部には、「株式会社ぱど」、「ご請求日/2015年06月05日」、「ご請求合計金額 68,040円」の記載がある。また、中段の利用明細表の一段目には、「日付」の欄に「0605」、「ご請求額」の欄に「37,800」、「ご利用内容」の欄に「首都圏直営版 1329号 ジャンル キレイ・いやす(ヘアサロン)4色 1/2ヨ cottie」の記載があり、二段目には、「日付」の欄に「0605」、「ご請求額」の欄に「30,240」、「ご利用内容」の欄に、「首都圏直営版 1329号 ジャンル キレイ・いやす(ヘアサロン)4色 1/4タ cottie」の記載がある。
(4)乙第7号証は、「受領書(ご依頼人控)」であるところ、「金額」の欄には、「68,040円」、「受取人」の欄には、「(株)ぱど」、「ご依頼人」の欄には、「cottie」、「請求日」として「2015/06/05」の記載がある。
(5)乙第8号証は、株式会社ぱど発行の「ぱど」と題する情報誌と認められるところ、その表紙には、「No.1329 2015.06.05 毎月1回発行 無料」、「亀戸・大島」、「装いも新たに地域の情報をお届け!」の記載があり、また、当該情報誌の第11頁には、「ヘアサロン」の見出しがあり、同頁の左上には、「お子様カットサービスや豊富なコースをご用意!」、「【Lily】はホットスチームや炭酸泉付トリートメント」、「MENU ●Lily・・・2,270円」、「特典 2015年7月2日迄有効 『ぱど見た』でOK!」、「fika by cottie* 墨田区江東橋・・・」、「cottie* 墨田区緑・・・」の記載がある。
2 判断
(1)使用商標について
乙第8号証の情報誌の第11頁には、「ヘアサロン」の見出しのもと「fika by cottie*」店の紹介記事が掲載されており、その中で当該店舗が提供するメニューの1つである、ホットスチームや炭酸泉付のトリートメントサービスの名称として「Lily」の欧文字(以下「使用商標」という。)が使用されている。
(2)本件商標と使用商標との比較について
本件商標は、前記第1において記載のとおり、「Lily」の欧文字を標準文字により表してなるものであり、また、使用商標は、上記(1)において記載のとおり、本件商標と同じ「Lily」の欧文字からなるものであるから、その外観、称呼及び観念に異なるところはなく、両者は、社会通念上同一と認められる商標といえる。
(3)使用役務について
乙第8号証の情報誌の第11頁に掲載されている美容院「fika by cottie*」店が提供するメニューの1つ「Lily」は、ホットスチームや炭酸泉付のトリートメントサービスであり、美容院が提供するヘアトリートメント美容の一種といえるものであるから、これは、取消請求に係る指定役務中「美容」の範ちゅうに属する役務である。
(4)使用者及び使用時期等について
被請求人が、掲載を依頼した2015年6月5日発行の情報誌「ぱど」の表紙には、「亀戸・大島」、「装いも新たに地域の情報をお届け!」の記載、また、第11頁の「fika by cottie*」店の紹介記事中には、「特典 2015年7月2日迄有効」等の記載があることからすると、当該情報誌は、遅くとも2015年(平成27年)の6月初旬には、東京都「亀戸・大島」地域において頒布されていたものと推認される。
また、同記事中には、「cottie* 墨田区緑・・・」及び「fika by cottie* 墨田区江東橋・・・」の記載があり、これは、被請求人の住所及び乙第1号証の「証明書」に記載された所在地と一致し、さらに、乙第2号証の「証明書」に記載された所在地とも一致することから、使用商標の使用者は、被請求人であるといえる。
(5)小括
以上からすれば、被請求人(商標権者)は、東京都墨田区において施設の名称を「fika by cottie*」とする美容院を営んでおり、本件審判の請求の登録前3年以内(以下「要証期間内」という。)である2015年(平成27年)6月初旬には、ヘアサロン等の店舗情報が掲載されている東京都「亀戸・大島」地域において頒布された情報誌に、その請求に係る指定役務中「美容」の範ちゅうに属する役務についての広告をし、その広告において本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用したものと認めることができる。
そして、被請求人(商標権者)による上記行為は、「商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」(商標法第2条第3項第8号)に該当するものである。
(6)請求人の主張について
ア 請求人は、「Lily」は、ホットスチームや炭酸泉付のトリートメントを行うとの施術の手順であり、かかる記載は単なる施術の工程を表すものにすぎず、ここから格別自他識別性を見出すことは困難であるから、かかる記載が本件商標の商標的使用に当たるということはできず、乙第8号証の存在をもって本件商標が「使用」されたということはできない旨主張している。
しかしながら、美容院が提供するメニューの1つとして「Lily」の表示があり、メニューを選択する際の目印になるといえるから、施術の工程を表すにすぎないという請求人の主張は採用することができない。
そして、上記(5)のとおり、被請求人(商標権者)は、2015年(平成27年)6月初旬には、日本国内において頒布された地域の情報誌に、その請求に係る指定役務中「美容」の範ちゅうに属する役務についての広告をし、その広告において本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用したものと認められ、これは、商標法第2条第3項第8号所定の「商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」に該当するものであるから、商標法第50条所定の「使用」に該当するものである。
イ さらに、請求人は、乙第8号証において、「Lily」の表記は美容についての使用ということができる余地があるとしても、本件商標の指定役務のうち一部でしかない役務を使用したにすぎない場合には、使用の事実があったと認めることはできないから、乙第8号証の記載をもって、被請求人が本件商標の指定役務について使用をしたということはできない旨主張している。
しかしながら、商標法第50条第2項は、「前項の審判の請求があつた場合においては、その審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしていることを被請求人が証明しない限り、商標権者は、その指定商品又は指定役務に係る商標登録の取消しを免れない。」と規定しており、二つ以上の指定商品又は指定役務について同条第1項の規定による商標登録の取消し審判の請求がされた場合には、被請求人は、その請求に係る指定商品又は指定役務のうち、いずれか一つの指定商品又は指定役務についての使用を証明すれば、その余の指定商品又は指定役務を含めたすべての請求に係る指定商品又は指定役務について商標登録の取消しを免れるものである。
そして、本件商標の指定役務は、「美容」と「理容」の役務及びこれらに関する複数の役務を簡潔に指定したものであるといえるところ、被請求人は、これら複数の役務のうち「美容」の範ちゅうに属する役務について、上記(5)のとおり、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしていたことを証明したと認め得るものである。
よって、請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。
3 まとめ
以上のとおり、被請求人は、要証期間内に日本国内において、商標権者が本件審判の請求に係る指定役務中「美容」の範ちゅうに属する役務について、本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)の使用をしていることを証明したと認め得るところである。
したがって、本件商標の登録は、本件審判の請求に係る指定役務について、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2017-09-22 
結審通知日 2017-09-29 
審決日 2017-10-20 
出願番号 商願2013-14623(T2013-14623) 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (W44)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 早川 真規子 
特許庁審判長 大森 健司
特許庁審判官 松浦 裕紀子
小松 里美
登録日 2013-08-02 
登録番号 商標登録第5603618号(T5603618) 
商標の称呼 リリー 
代理人 弁護士法人GVA法律事務所 

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