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審決分類 |
審判 一部申立て 登録を維持 W05 審判 一部申立て 登録を維持 W05 審判 一部申立て 登録を維持 W05 審判 一部申立て 登録を維持 W05 審判 一部申立て 登録を維持 W05 審判 一部申立て 登録を維持 W05 |
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管理番号 | 1335299 |
異議申立番号 | 異議2017-900187 |
総通号数 | 217 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2018-01-26 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2017-06-12 |
確定日 | 2017-12-15 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第5929967号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第5929967号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5929967号商標(以下「本件商標」という。)は、「OLEOTEC」の欧文字を標準文字により表してなり、平成28年4月27日に登録出願、第1類「科学用化学剤,化学用試剤,実験室用分析化学剤,工業用化学品,その他の化学品,農業用・園芸用及び林業用農薬(殺菌剤、除草剤、殺虫剤及び寄生生物駆除剤を除く。)」、第5類「薬剤,薬剤(医薬用のもの)及び獣医科用剤,経口薬の投与に用いる薬剤,医療用及び獣医科用化学薬剤及び試薬,医薬用の化学薬剤及び試薬,医療用及び獣医科用の診断剤,医療用薬剤,タイムリリース効果を有する薬剤,時間治療用タブレット状薬剤,鎮痛剤,医療用及び獣医科用のバクテリア調製剤,腸内で薬を放出するために用いるタブレット状薬剤送達用剤,医薬用カプセル(空のもの)」、第10類「医療用機械器具,獣医科用機械器具,外科用機械器具,吸入器,調剤用機械器具」及び第42類「科学的及び技術的な研究開発,科学に関する研究,技術的な研究,工業上の研究及び分析,デザインの考案,受託による医薬品の開発,受託による医療用品の開発及び設計,医学・外科・獣医学・科学及び工業に関する研究・開発・分析」を指定商品及び指定役務として、同29年1月25日に登録査定、同年3月10日に設定登録されたものである。 第2 引用商標及び使用商標 1 登録第4368545号商標(以下「引用商標1」という。)は、「OLMETEC」の欧文字を横書きした構成からなり、平成11年5月14日に登録出願、第5類「薬剤」を指定商品として、同12年3月17日に設定登録され、その後、同22年3月23日に商標権の存続期間の更新登録がされたものであり、現在、有効に存続しているものである。 2 登録第4368544号商標(以下「引用商標2」という。)は、「オルメテック」の片仮名を横書きした構成からなり、平成11年5月14日に登録出願、第5類「薬剤」を指定商品として、同12年3月17日に設定登録され、その後、同22年3月23日に商標権の存続期間の更新登録がされたものであり、現在、有効に存続しているものである。 以下、引用商標1及び引用商標2をまとめていうときは、単に「引用商標」という。 3 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が自社の業務に係る商品「高血圧症治療用薬剤」(以下「申立人製品」という。)について使用している標章(以下「使用商標」という。)は、「OLMETEC」の欧文字及び「オルメテック」の片仮名を横書きした構成からなるものである。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標の指定商品及び指定役務中、第5類「薬剤,薬剤(医薬用のもの)及び獣医科用剤,経口薬の投与に用いる薬剤,医療用及び獣医科用化学薬剤及び試薬,医薬用の化学薬剤及び試薬,医療用及び獣医科用の診断剤,医療用薬剤,タイムリリース効果を有する薬剤,時間治療用タブレット状薬剤,鎮痛剤,医療用及び獣医科用のバクテリア調製剤,腸内で薬を放出するために用いるタブレット状薬剤送達用剤」についての登録は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号、同項第19号及び同項第7号に該当するものであるから、同法第43条の2第1号により取り消されるべきものであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第50号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 申立ての理由1(商標法第4条第1項第11号) (1)本件商標と引用商標1との類否 本件商標は、「OLEOTEC」の欧文字7文字よりなるものであるところ、引用商標1は、「OLMETEC」の欧文字7文字よりなるものであり、本件商標を構成する欧文字「OL-E-O-TEC」と引用商標1を構成する欧文字「OL-M-E-TEC」とは、その構成文字7文字中の6文字「OL-E-TEC」を共通にし、かつ、本件商標第4文字目の「O」にしても、引用商標1の構成に含まれる文字であるから、引用商標1は、本件商標の欧文字全てを含んでおり、引用商標1との差異を特段印象付けるような別異の構成文字を全く含んでいない。しかも、本件商標の「EO」と引用商標1の「ME」の差異も、互いに「E」が共通するほか、相紛れやすい中間に位置することからすれば、当該差異は微少なものにすぎず、両商標は、全体として、外観上彼此相紛らわしい形象よりなる外観類似の商標である。 また、一般に、全て大文字で構成される欧文字よりなる登録商標については、これを語頭のみ大文字として使用することも社会通念上同一の範囲とされるところ、引用商標1は、実際に語頭のみを大文字とする「Olmetec」のように使用されており(甲7)、本件商標が、同様に語頭のみ大文字とする「Oleotec」のように使用される場合があることを考慮すれば、中間における文字の差異は、なおさら判別しづらい微少なものとなり、より外観上彼此相紛らわしい形象となる。 さらに、引用商標1が実際に使用されている医療用医薬品に関してみれば、これを処方する医師が処方する薬剤を英名販売名で記載する場合も多い。そして、医師がカルテや処方箋に薬剤名を筆記体で手書きする場合、本件商標と引用商標1の第3文字目「e」と「m」とは、外観上より近似した形象となり、また、同第4文字目「o」と「e」も、その形象において極めて相紛らわしい外観となる。かような医療用医薬品の分野における実情は、登録後、実際に医療現場での独占的使用を認める登録査定という行政処分をなすための審査においては、十分に考慮されなければならない客観的な取引実情であり、本件商標と引用商標1とは、互いに相紛れるおそれのある外観類似の商標と判断されるべきである。 また、本件商標は、その構成に相応して「オレオテック」と称呼され、引用商標1は、「オルメテック」と称呼されるところ、差異音は、聴取しづらい中間に配されるうえ、語頭に配され明瞭に発音される「オ」の音と、促音(ッ)を伴って強く発音される「テック」の音の間に位置することでより聴取しづらい音となる。また、第2音目の「ル」と「レ」とは、同行音であって、子音が共通することから、「オ」の音に続くことで「OL」の発音までが共通し、かつ、語頭の「オ」が強く発音されることから、その母音は識別しづらい音として発音される。そうとすれば、両商標は、互いに相紛れるおそれのある称呼類似の商標であるといわざるを得ない。 そして、本件商標及び引用商標1は、ともに既成語にはない造語であって、特定の意味合いを有するものではないが、長年にわたり継続的に国内医療用医薬品売上トップ10位内にランクし(甲8?甲16)、高血圧症治療用薬剤あるいはARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)としての売上は第1位である申立人製品(甲16)に用いられてきた引用商標1の著名性に鑑みれば、医療従事者を含む指定商品の需要者、取引者は、引用商標1と外観及び称呼において近似する本件商標から、引用商標1に係る製品を想起する場合もある。 したがって、本件商標は、引用商標1との明確な差異を印象付けるほどの特徴的な構成要素を含んでいないものであって、商標の外観、称呼及び観念等によって与えられる印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、引用商標1と混同を生ずるおそれがある類似の商標であるとみるのが相当である。 (2)本件商標と引用商標2との類否 引用商標2「オルメテック」は、その構成文字に相応して、引用商標1と同様の「オルメテック」の称呼を生じる。また、本件商標及び引用商標2は、ともに既成語にはない造語であって、特定の意味合いを有するものではないが、前記のとおり、長年にわたり継続的に国内医療用医薬品売上トップ10位内にランクし(甲8?甲16)、高血圧症治療用薬剤あるいはARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)としての売上は第1位である申立人製品(甲16)に用いられてきた引用商標2の著名性に鑑みれば、医療従事者を含む指定商品の需要者、取引者は、引用商標2と称呼において近似する本件商標から、引用商標2に係る製品を想起する場合もある。 また、本件商標が片仮名文字で表記された場合、「オレオテック」となるが、その場合、第2文字目の「レ」は引用商標2の第2文字目「ル」に近似した形象となり、本件商標第3文字目「オ」についても、引用商標2の第3文字目「メ」と非常に近似した形象となる。この点は、我が国で医薬品(医療用医薬品及びOTC医薬品の双方)として承認される販売名は和文表記であり、かつ、製品にその和文表記の販売名の記載が必須とされる法規制に基づく客観的な取引の実情がある以上、本件商標が片仮名で表記されることについては、商標の類否判断においても十分に考慮されなければならない。 したがって、本件商標は、引用商標2との明確な差異を印象付けるほどの特徴的な構成要素を含んでいないものであって、商標の外観、称呼及び観念等によって与えられる印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すれば、引用商標2と混同を生ずるおそれがある類似の商標であるとみるのが相当である。 (3)商品の類否 本件商標の指定商品及び指定役務中、申立てに係る指定商品は、引用商標の指定商品「薬剤」と同一又は類似の関係にある。 (4)取引実情 引用商標が、後述のとおり、申立人製品を示す商標として、長年にわたり、取引者、需要者の間に広く親しまれてきた事実が定着しており、また、申立人製品の適応症である高血圧症の患者数自体が非常に多いという事実があるところ、これらの各事実は、商標法第4条第1項第11号の該当性の判断においても十分に参酌されるべき客観的な取引実情に相当する。 この点、日本高血圧学会発行の「高血圧治療ガイドライン2014」によると、国内の「高血圧者数は、約4300万人と推定」され、その患者数は実に日本の人口の3割と非常に多い(甲17)。 また、「高血圧症」は、同じく生活習慣病とされる「肥満」や「高脂血症」などの生活習慣病の中で最も多いとされており、これは、単に、患者数が多いというだけでなく、患者を支援する家族、高血圧症治療に携わる医師、看護師、薬剤師等の医療従事者、あるいは、その治療薬の流通に関わる医療関係者など、高血圧治療用薬剤の需要者、取引者の数は、医療用医薬品の中でも極めて多い分野であることを意味する。 そして、「高血圧治療ガイドライン2014」によれば、高血圧治療は、生活習慣の修正(第1段階)と降圧薬治療(第2段階)により行われるが、生活習慣の修正だけで目標血圧を達成できる患者は少なく、大部分の患者には降圧剤による薬物療法が必要となり、その服用は長期にわたることとなること、また、その際に用いられる降圧剤として、カルシウム(Ca)拮抗薬、ARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)、ACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬、少量利尿薬、交感神経β受容体遮断薬が主要降圧薬とされるほか、積極的適応がない場合の高血圧に対しては、最初に投与すべき降圧薬(第一選択薬)はカルシウム(Ca)拮抗薬、ARB、ACE阻害薬または利尿薬の中から選択されるものの、降圧目標を達成するために、多くの場合、2、3剤の併用が必要となり、異なるクラスの降圧薬の併用は、降圧効果が大きく、降圧目標を達成するために有用であることが示されている。 そして、申立人製品は、発売以降13年間にわたり高血圧症治療用薬剤として売上1位、あるいは、少なくとも高血圧症治療用薬剤のARBのカテゴリーとして売上1位の製品であり、高血圧症の患者及びその家族、高血圧症の治療に係る医療従事者においては、圧倒的な著名性を有していると言わざるを得ない。 また、引用商標が、前述のとおり、高血圧症治療用薬剤以外を含む日本のすべての医療用医薬品としても、長年にわたり常に売上10位内にランクするほどの圧倒的な売上げ規模を有する製品に使用されているという実情に鑑みれば、本件商標に接した取引者・需要者等をして、申立人の製造・販売に係る製品であるかのごとき観念ないし印象を想起せしめる本件商標は、取引者に与える印象、記憶、連想等において、申立人製品を表示するものとして著名な引用商標と自他彼此相紛らしい類似の商標であると言わざるを得ない。 さらに、引用商標は、以上のとおり、現に、全国の医療機関で広く使用されている製品の名称であり、また、本件商標も、医療用医薬品を含む薬剤を指定商品としているものであるから、その類否は、迅速を要する場合のある医療現場の実情に照らした需要者の注意力を基準とすべきであり、特に厳格な基準により判断されるべきである。 よって、前述のとおりの類似性を有する両商標は、以上の取引実情に鑑みても、互いに相紛れるおそれの高い類似の商標と判断して然るべきものである。 (5)まとめ 以上より、本件商標は、その出願日前の商標登録出願に係る引用商標と類似の商標であって、同一又は類似の商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第11号に該当する。 2 申立ての理由2(商標法第4条第1項第15号) (1)使用商標の著名性 申立人製品は、2004年の発売開始以来の13年にわたり、高血圧症に用いる医療用医薬品として、我が国において絶大な定評を得てきたものである。 この点、本件商標の出願日時点で判明していた申立人製品の2015年度の売上高も約739億円に達しており、高血圧治療薬のみならず、我が国すべての医療用医薬品の国内売上高ランキングにおいてトップ8に位置しており(甲15)、かつ、高血圧症治療用薬剤あるいはARBとしての売上は長年にわたり第1位(甲16)であることからすれば、申立人製品が著名な薬剤製品である事実については、医薬品に係る商標を採択しようとする本件商標の出願人においても十分に承知のことと思われ、その著名性に関しても異論はないものと考える。 申立人製品は、甲第18号証の「医薬品インタビューフォーム」(抜粋)、甲第19号証及び甲第20号証の1の添付文書に記載されているとおり、2004年1月の製造販売承認を受け、同5月より「オルメテック錠10mg(OLMETEC TABLETS)」及び「オルメテック錠20mg(OLMETEC TABLETS)」の発売が開始されて以降、2006年8月に「オルメテック錠5mg(OLMETEC TABLETS)」、2010年7月に「オルメテック錠40mg(OLMETEC TABLETS)」、2015年12月に「オルメテックOD錠10mg(OLMETEC OD TABLETS)」、「オルメテックOD錠20mg(OLMETEC OD TABLETS)」及び「オルメテックOD錠40mg(OLMETEC OD TABLETS)」の3種類の発売を開始、さらに2017年6月には、「オルメテックOD錠5mg(OLMETEC OD TABLETS)」の発売が開始され、ラインナップを拡大しつつ、13年の長きにわたり継続的に販売されてきた(甲20の2)。 製品写真は、甲第7号証に示されるとおりであり、医療従事者、患者等の需要者、取引者が直接接するPTPシートや錠剤そのものにも、使用商標が明示されている。 また、安全情報の追加、包装表示の変更、あるいは、新たなラインナップに係る製品の販売開始の度に、医療機関、薬局等に案内が配布され、その度に、その認知度は更に高められてきた。甲第21号証ないし甲第24号証は、案内の一例であるところ、例えば、甲第22号証「PTPシート等変更のご案内/オルメテック錠5,10,20,40mg」では、「患者さん用説明カード」の変更も記載されており、患者側でも、PTPシートや錠剤自体のほか、当該説明用カードにおいて、使用商標に接することができる。 さらに、申立人製品は医療用医薬品であるため、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」及び「医薬品等適正広告基準」により、医薬関係者以外の一般人を対象とする広告は行うことができないものの、高血圧治療に従事する医師や薬剤師等を対象とした専門誌や学会誌及び学会の要旨集・プログラム等への広告掲載も長期にわたり行ってきている。 以下に、直近3年間(2014年度から2016年度)における一例を示す。 甲第25号証は、一般専門誌及び学会誌への広告掲載実績を示すものであり、65誌へ534回の広告実績が示されている。 甲第26号証は、学会要旨集、抄録集又はプログラムへの広告掲載実績を示すものであり、290回の広告実績が示されている。 甲第27号証は、各都道府県の医師会や薬剤師会の名簿への広告掲載実績を示すものであり、66回の広告実績が示されている。 甲第28号証は、各都道府県の医師会や薬剤師会の会誌への広告掲載実績を示すものであり、647回の広告実績が示されている。 なお、これらの媒体に掲載された実際の広告の幾つかを甲第29号証ないし甲第33号証として提出する。 その他、申立人は、「治療薬マニュアル」や「今日の治療指針」等の単行本への広告も行ってきた。甲第34号証には18冊の単行本への広告実績を掲載するが、いずれも医療従事者必須掲載の単行本であり、「今日の治療指針」等は10万部を超えるといわれている。例えば、「2016年日販医書センター 医学書総合ランキング 年間ベスト100(2015年12月?2016年11月)」によれば、南江堂発行「今日の治療薬2016年版」は、年間ベスト1位、医学書院「治療薬マニュアル 2016」は第11位となっており、いずれも極めて多くの医療従事者に購入されている書籍であることが分かる(甲35)。 申立人製品は、申立人が開発した新規医薬品(いわゆる先発医薬品)であり、2004年の発売以来、申立人の最も主要な製品のひとつとして、多大な売上実績を推移してきた。 甲第36号証は、2004年の発売当時の降圧剤市場を分析したものであるところ、高血圧症に関しては、日本を代表する生活習慣病であって、患者数が最も多い疾患であることが示される中、「一気に売上を拡大している」ことが示されている。 発売以降の売上実績は、甲第37号証ないし甲第48号証のとおりであり、ランキングについては甲第8号証ないし甲第16号証のとおりである。 上記で示したランキングは、我が国の「医療機関等で保険診療に用いられる医療用医薬品として官報に告示されている(薬価基準に収載されている)品目」だけでも「約1万6千程度」存在する(甲49)とされる我が国におけるすべての医療用医薬品におけるランキングであり、約1万6千種類の医療用医薬品の中で、長年にわたり常に売上高10位内にランクし続けてきた申立人製品に使用される使用商標は、当該事実のみをもってしても、我が国有数の薬剤の著名ブランドと評価し得るものである。 また、前述のとおり、その売上高は、高血圧症治療用薬剤あるいはARBとしては首位の金額であり、高血圧症治療用薬剤あるいはARBの市場においては、なおさら確立された著名ブランドと評価されて然るべき実績といえる。 この点、甲第50号証は、厚生労働省が2016年10月に初めて公開した「レセプト情報・特定検診等情報データベース」のオープンデータに基づく「高血圧ARBトップは『オルメテック』」と題する記事であるところ、血圧降下剤の「処方数ランキング」において、「外来(院外処方)」、「外来(院内処方)」ともにトップにランクしている。 なお、申立人の件外製品「ロキソニン」は、医療用医薬品国内売上高ランキング第21位(売上高約481億円)でありながら、特許庁における審決において、その著名性が認定されており(無効2015-890059「ロキソプロフェン」平成28年1月18日無効審決)、また、申立人の件外製品「メバロチン」は、同ランキング第122位(売上高約134億円)でありながら、特許庁における審決並びに裁判所における判決において、その著名性が幾度も認定されており(平成16年(行ケ)第256号東京高裁商標「メバスロリン」事件判決、平成16年(行ケ)129号東京高裁商標「メバロカット」事件判決等)、申立人は、2音ないし3音のみが共通する他社商標すら、混同を生ずるものとして、必ず審判、訴訟を提起して排除してきた実績がある。 このように、売上高約481億円、同ランキング第21位の「ロキソニン」や、約134億円、同ランキング第122位の「メバロチン」が、確固たる著名性を認定されている以上、審決・判決の時期を考慮に入れても、これまでの最高売上高は約823億円で、長年にわたり常に同ランキングトップ10位内にランクし(甲8?甲16)、かつ、高血圧症治療用薬剤あるいはARBとして売上1位(甲16)に位置する申立人製品に使用する使用商標は、特許庁において顕著な事実と認められて然るべき著名性を有するものであり、これを否定するに足る理由はない。 なお、申立人製品は、現在、欧州各国、カナダ、アルゼンチン、メキシコ、ベリーズ、コスタリカ等を含む中南米、韓国、中国、タイ等を含むアジア、カタール、サウジアラビアなどを含む中東、オーストラリア、アフリカなど、実に55力国/機関でも販売されており、いずれも好調な売上となっている。 以上から明らかなように、少なくとも本件商標の出願時点において、使用商標は、取引者及び需要者間で著名となっていたことは明白であり、以降、その著名性が失われたとみるべき事情も見当たらない。 (2)使用商標の独創性の程度 使用商標は、前述のとおり、申立人自ら創造し、使用し始めた商標であり、格別の意味を有しない独創性の高い造語である。そして、高血圧症治療薬及び薬剤の分野のみならず、「OLMETEC」の各文字を名称とする商品は、国際分類のいずれの分野においても存在しないことからも、独創性の高い商標であることは明らかである。また、本件商標のように、使用商標と「OL-E-TEC」の6文字を共通にする他人の商標も存在しない。 (3)本件商標と使用商標との類似性の程度 使用商標は、医療用医薬品の表示に係る法規制等により、承認された和文表記の販売名(オルメテック)と英名販売名(OLMETEC)が併記して表記され使用されている。 本件商標は、申立人製品を想起させる文字として広く需要者及び取引者の間に定着している「OLMETEC」の7文字中6文字「OL-E-TEC」を共通にし、かつ、本件商標の第4文字目の「O」にしても、使用商標の構成に含まれる文字であるから、使用商標は、本件商標の欧文字全てを含んでおり、本件商標は、使用商標との差異を特段印象付けるような別異の構成文字を全く含んでいない。然も、本件商標の「EO」と使用商標の「ME」の差異も、互いに「E」が共通するほか、相紛れやすい中間に位置することからすれば、当該差異は微少なものにすぎず、両商標は、全体として、外観上彼此相紛らわしい形象よりなり、外観における類似の程度は極めて高い。 また、使用商標の英文表記「OLMETEC」は、実際に語頭のみを大文字とする「Olmetec」のように使用されており(甲7)、本件商標が、同様に語頭のみ大文字とする「Oleotec」のように使用される場合があることを考慮すれば、中間における文字の差異は、なおさら判別しづらい微少なものとなり、より外観上彼此相紛らわしい形象となる。 さらに、本件商標は、その構成に相応して「オレオテック」と称呼されるところ、使用商標の英文表記及び和文表記の双方より生ずる称呼とは、差異音が聴取しづらい中間に配されるうえ、語頭に配され明瞭に発音される「オ」の音と、促音(ッ)を伴って強く発音される「テック」の音の間に位置することでより聴取しづらい音となり、称呼における類似性の程度も高い。 この点、平成14年1月30日東京高等裁判所平成13年(行ケ)第277判決は、相違する部分が取引者、需要者に両商標の差異を特段印象付けるほどのものでない場合は出所の混同を生ずるおそれがあるとの趣旨の判断を示しているが、本件商標と使用商標における中間における差異は、需要者に両商標の差異を特段印象付けるほどのものということはできない。 そして、本件商標及び使用商標は、ともに既成語にはない造語であって、特定の意味合いを有するものではないが、長年にわたりすべての国内医療用医薬品の売上トップ10位内にランクし続ける製品に用いられてきた使用商標の著名性に鑑みれば、患者や医療従事者を含む指定商品の需要者、取引者は、使用商標と外観及び称呼において近似する本件商標から、使用商標に係る製品を想起する場合もあるとみて差し支えない。なお、前掲ランキング第21位(売上高約481億円)の「ロキソニン」や、同ランキング第122位(売上高約134億円)の「メバロチン」が排除した他社商標は2?3音のみが共通するものであるが、本件商標は、7文字中6文字とより多くの構成文字が共通し、また、「ロキソニン」及び「メバロチン」よりも上位の売り上げにランクする使用商標と混同を生じないものとみるべき理由も見当たらない。 (4)申立人の業務に係る商品との間の性質、用途又は目的における関連性の程度、商品等の取引者並びに需要者の共通性その他の取引実情 本件商標は、使用商標と指定商品が共通するため、取引者並びに需要者の共通性が明白であるところ、取引者、需要者に広く親しまれた申立人製品に係る使用商標と類似する本件商標が、申立人以外の第三者に使用されるとすれば、取引者、需要者は、恰もそれが申立人又は申立人と何らかの関係を有する者の製造、販売に係る商品であるとの出所の混同を生ずるおそれは極めて高い。 また、とりわけ医療用医薬品については、類似する名称の医薬品の取り違えによる医療事故の発生は大変多く、また、取り違えた医薬品の投与により何度か死亡事故も発生していることから、厚生労働省は、医薬品の販売名の類似性等による医療事故防止対策の強化・徹底について再三再四注意喚起を行い、また、医師会、薬剤師会もそれぞれそのための対策や研修などを行っている。しかし、医療現場での対策には限度があるため、事前に類似する医薬品の名称という要因を排除すべく、医療事故防止のための販売名変更代替新規承認申請における添付資料の簡素化、審査の迅速化による販売名の変更の推奨とともに、新たに承認される医薬品名称に関しては、類似名称の承認を認めないこととし、その使用を排除してきた。そのため、医薬品名称の類似性の判断においては、手書きした場合の類似性や語幹の文字長等、様々な要素が考慮される。 そうとすれば、本件商標は、とりわけ使用商標の欧文字表記と、構成文字数(7文字)、一致する文字数(6文字)、前述のとおりの手書き字の類似性等からみて、医療用医薬品に係る商標としての類似性は極めて高い。 また、使用商標が、長年にわたり、常に日本における医療用医薬品の売上トップ10位内にランクし(甲8?甲16)、高血圧症治療用薬剤あるいはARB(アンジオテンシンII受容体拮抗薬)として首位の売上を誇り(甲16)、現に、全国の医療機関で広く使用されている製品の名称であり、また、本件商標も、医療用医薬品を含む薬剤を指定商品としていることからすれば、本件商標をみた取引者、需要者が、より馴染みの深い使用商標と見間違えるおそれは高い。 (5)まとめ 以上よりすれば、本件商標は、これが付された商品に接した需要者・取引者をして、申立人又は申立人と資本関係ないしは業務提携関係にある会社の業務に係る商品と誤認混同を生ぜしめるおそれの高いものであると言わざるを得ない。 以上より、本件商標は、使用商標との関係において、他人の業務に係る商品等と混同を生ずるおそれが極めて高く、商標法第4条第1項第15号に該当する。 3 申立ての理由3(商標法第4条第1項第19号) (1)引用商標の周知性 引用商標は、前述の通り、申立人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内における取引者、需要者の間において広く認識されている。 (2)本件商標と引用商標との類否について 本件商標と引用商標とは、前述の通り、類似するものであり、とりわけ、類似の程度の極めて高い商標である。 (3)不正の目的について 申立人製品が、我が国において著名な製品であることは、申立てに係る指定商品についての使用の意思に基づいて出願を行う本件商標の商標権者(以下「本件商標権者」という。)であれば、当然にちしつしている事実と考えられる。 また、引用商標1とは、「OL-TEC」全ての文字が共通することからみれば、本件商標の中間に位置する「EO」と引用商標1の中間に位置する「ME」との差異は、語順が異なると雖も「E」の文字も共通し、構成文字の差異として微小なものにすぎない。 そうとすれば、本件商標権者が、あえて、申立人の著名な引用商標1において、特に需要者の注意を惹く語頭「OL」の文字及び促音(ッ)を伴い強く発音される「TEC」の文字はそのままに、中間文字の微少と評価される差異のみを加えた本件商標を薬剤の名称として採択し使用することは、結果的に、長年の営業活動によって築き上げた申立人製品に関する営業上の信用や名声にフリーライドした商標であるとの印象を需要者、取引者に与えるものとなり、かつ、「OLMETEC\オルメテック」の出所表示機能を希釈化せしめ、ひいてはブランドとしての価値を損なわせしめることにつながり、申立人にとっては甚だ迷惑な事態を被ることとなる。 したがって、申立人に係る著名な引用商標と明らかに類似する本件商標の登録及び使用は、確実に引用商標の出所表示機能を希釈化し、業務上の信用を棄損することにつながり、申立人並びに取引者、需要者に不利益を与える結果となる。 以上よりすれば、本件商標は、他人の業務に係る商品を表示するためのものとして、日本国内及び外国における取引者・需要者の間に広く認識されている引用商標と同一又は類似の商標であり、その登録及び使用は、引用商標に化体した業務上の信用にフリーライドし、引用商標の出所表示機能を希釈化せしめるものであるから、商標法第4条第1項第19号に該当する。 4 申立ての理由4(商標法第4条第1項第7号) (1)OTC医薬品も、医療用医薬品も、人の健康に影響を与えるものであるから、日用品等に比較して、その類否は厳格に判断されなければならないものであるが、とりわけ医療用医薬品については、症例や効能等に適した製品の選択を妨げ、医療過誤等の極めて深刻な事態を招くことのないようより厳格に判断されるべき事情がある。また、迅速・緊急を要する場合のある医療現場の実情に鑑みて、新しい医療用医薬品の名称は、称呼、外観、観念ともに、それ自体、明確に区別できるものでなければならない。そして、紛らわしい新規承認医薬品名称は、厚生労働省により承認されないことは前述のとおりであるが、その趣旨は、薬剤の取り違え等による医療事故の発生を防止し、医療安全を厳格に確保するためにほかならない。 本件商標の登録及び使用は、申立人製品と、他社製品との区別を困難なものとして、市場における混乱を招くばかりか、症例や効能等に適した製品の選択の妨げとなり、ひいては医療事故等の極めて深刻な事態を招くおそれがある。 (2)また、前述の通り、使用商標が、他に類を見ない独創的な商標であることからすれば、「OLMETEC」の文字のうち、特に需要者の注意を惹く語頭「OL」の文字部分及び促音(ッ)を伴い強く発音される「TEC」の文字部分はそのままに、中間文字の微少と評価される差異のみを加えた本件商標の構成は、使用商標における印象をうまく取り入れた剽窃とも理解され得るものである。そして、長年にわたり我が国医療用医薬品売上ベスト10位内にランクする申立人製品に係る使用商標の剽窃と考えることができる程に相紛らわしい本件商標を、申立人に無断で先取り的に登録出願し、独占的に使用することは、申立人製品を長年使用する多くの高血圧症患者、医療従事者等の需要者感情をも害するおそれがあり、商道徳的にも許されるべきものではない。 (3)そして、著名商標と極めて近似した商標の登録は、国を挙げての日本ブランドを発信し並びに国内外の第三者による安易な模倣品を排除せんとする我が国の国際競争力を低下させるばかりか、商標に化体した業務上の信用を適切に保護し、健全な競業秩序の維持を図ることを目的とする商標法第1条の趣旨に反する事態を招くおそれがある。 また、申立人製品が、世界55力国/機関で販売されている実情において、我が国で申立人製品と相紛らわしい名称の製品が製造され、これらの国に輸出されるとすれば、日本ブランドを信用してきた当該各国に対する国際信義にも反するものとなる。 以上よりすれば、本件商標は、使用商標が付された医薬品と薬剤の取り違え等による公衆の衛生を害するおそれがあり、使用商標の剽窃とも理解できる本件商標は、医療分野ないし一般社会における公の秩序又は善良の風俗に反するものであり、商標法第4条第1項第7号に該当し、同法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきものである。 5 むすび 以上より、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号、同項第19号及び同項第7号に該当する。 第3 当審の判断 1 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標について 本件商標は、前記第1のとおり、「OLEOTEC」の欧文字を横書きした構成からなるところ、該文字は、辞書等に載録のないものであって、特定の意味合いを想起させることのない一種の造語として認識されるものである。 そして、欧文字からなる造語の場合は、我が国で一般に普及したローマ字又は英語の読みに倣って称呼されるのが自然であるから、本件商標からは、該文字に相応して「オレオテック」の称呼を生じるものである。 してみれば、本件商標は、「オレオテック」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 (2)引用商標について 引用商標は、前記第2の1及び2のとおり、「OLMETEC」の欧文字又は「オルメテック」の片仮名を横書きした構成よりなるところ、該文字は、辞書等に載録のないものであって、特定の意味合いを想起させることのない一種の造語として認識されるものである。 そして、欧文字からなる造語の場合は、我が国で一般に普及したローマ字又は英語の読みに倣って称呼されるのが自然であるから、引用商標1からは、該文字に相応して「オルメテック」の称呼を生じるというのが相当ある。また、引用商標2からは、その構成文字どおりに「オルメテック」の称呼を生じるものである。 してみれば、引用商標は、いずれも「オルメテック」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 (3)本件商標と引用商標の類否について まず、本件商標と引用商標1とを比較すると、両者は、外観においては、第3文字目及び第4文字目における「EO」と「ME」の差異を有するものであり、当該2文字の差異が、比較的少ない6文字から構成される両商標全体に及ぼす影響は決して小さいものとはいえず、需要者がたやすく見間違えるものとはいい難いものである。 次に、本件商標と引用商標2とを比較すると、両者は、構成文字が欧文字と片仮名である点に相違がある。 してみると、本件商標と引用商標は、いずれも外観上、判然と区別し得るものというのが相当である。 また、称呼においては、本件商標の「オレオテック」の称呼と引用商標の「オルメテック」の称呼とは、全体で6音という比較的短い称呼にあって、語頭からの「オレオ」と「オルメ」という顕著な差異を有しており、それぞれを一連に称呼するときは、全体の語感、語調が相違し、称呼上、明確に聴別できるものである。 そして、観念においては、両者は、いずれも特定の観念を生じないものであるから、観念上、比較することができない。 したがって、本件商標と引用商標とは、観念において比較できないとしても、外観及び称呼において明らかに区別し得るものであるから、これらを総合的に勘案すれば、取引者、需要者に与える印象、記憶が異なり、両商標を同一又は類似の商品に使用した場合においても、商品の出所について混同を生ずるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきものである。 (4)小括 上記のとおり、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 2 商標法第4条第1項第15号該当性について (1)使用商標の著名性について 申立人の提出に係る証拠によれば、使用商標は、申立人製品「高血圧症治療用薬剤」に使用されて、当該商品について一般専門誌、学会誌及び医師会会誌、医師会等名簿等への宣伝広告も頻繁に行われており、国内売上高は、2008年度より、医療用医薬品の中で常に10位以内にランクしていることが認められる。 しかし、医師、薬剤師等、医療関係者以外の一般人を対象とする広告は行っておらず、また、申立人製品は、高血圧症の治療を目的とした医療用医薬品であって、消費者が薬局で購入する一般用医薬品とは取引の実情が異なり、その取引者、需要者は、疾病の治療等についての専門家である医師や薬剤師等の医療関係者に限られるものである。 そうとすると、使用商標の著名性が認められるとしても、その範囲を超えて、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、本件商標の指定商品の一般消費者を含む取引者、需要者の間で広く認識されているとまではいうことができない。 (2)出所混同の可能性について 本件商標と引用商標は、上記1のとおり、相紛れるおそれのない非類似の商標であり、別異の商標というべきものであるから、引用商標と同一又は類似の使用商標もまた、本件商標とは非類似の商標であるというべきである。 そして、上記(1)のとおり、使用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国及び外国の一般の消費者を含む取引者、需要者の間に広く認識されていたものとは認めることができないものである。 以上を踏まえると、本件商標権者が本件商標をその指定商品に使用しても、これに接する一般の消費者を含む取引者、需要者が、使用商標ないしは申立人を連想、想起するようなことはなく、該商品が申立人又は申立人と経済的、組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとく、その出所について混同を生ずるおそれはないといわざるを得ない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものといえない。 3 商標法第4条第1項第19号該当性について 上記(1)のとおり、使用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国及び外国の一般の消費者を含む取引者、需要者の間に広く認識されていたものとは認めることができないものであるから、使用商標と同一又は類似の引用各商標もまた、その著名性は認められないものである。そして、上記1のとおり、本件商標と引用商標は、相紛れるおそれのない別異の商標というべきものである。 さらに、申立人が提出した証拠をみても、本件商標権者が、不正の目的をもって本件商標の使用をするものと認めるに足る具体的な事実を見いだすことができない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。 4 商標法第4条第1項第7号該当性について 使用商標は、上記2(1)のとおり、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、我が国の一般の消費者を含む取引者、需要者の間に広く認識されていたと認めることはできないものであり、また、本件商標と使用商標とは類似するところのない別異の商標であるから、本件商標権者が剽窃的に本件商標を出願し、登録を受けたものということはできない。 さらに、本件商標は、前記第1のとおりの構成からなるものであるところ、それ自体何らきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるものではなく、また、本件商標をその指定商品について使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するものとすべき事由はなく、加えて、本件商標は、他の法律によって本件商標の使用が禁止されていると認められるものではないから、本件商標は、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標とはいえない。 なお、申立人は、医療用医薬品については、人の健康に影響を与えるものであるから、日用品等に比較して、その類否は厳格に判断されなければならないものである旨主張するが、「商標の類否判断は、諸種の社会的要請をも考慮しなければならないとしても、混同しやすい名前の医薬品から生じるであろう危険を回避し、国民の生命、健康を保護するのは、医薬品の製造承認の権限を有する厚生省の所管に属することであるから、いかなる医薬品に類似した名前を使用した場合に、混同を生じて国民の生命、健康に影響を及ぼすかは、厚生省に判断を委ねるべきであり、商品の出所について誤認混同を生じるおそれを防止すべき商標の登録の当否の判断に、かかる事項までをも考慮し、一般の商標の類否判断とは異なる基準に基づき判断すべきではない(東京高等裁判所 平成2年9月10日判決 平成2年(行ケ)第72号参照)」ことからすれば、請求人の上記主張は採用することはできない。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。 5 むすび 以上のとおり、本件商標の登録は、その指定商品及び指定役務中、本件登録異議の申立てに係る指定商品について、商標法第4条第1項第7号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
異議決定日 | 2017-12-07 |
出願番号 | 商願2016-47890(T2016-47890) |
審決分類 |
T
1
652・
271-
Y
(W05)
T 1 652・ 222- Y (W05) T 1 652・ 261- Y (W05) T 1 652・ 262- Y (W05) T 1 652・ 263- Y (W05) T 1 652・ 22- Y (W05) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 池田 光治 |
特許庁審判長 |
田中 幸一 |
特許庁審判官 |
大森 友子 今田 三男 |
登録日 | 2017-03-10 |
登録番号 | 商標登録第5929967号(T5929967) |
権利者 | ヤゴテック アーゲー |
商標の称呼 | オレオテック |
代理人 | 大貫 進介 |
代理人 | 伊東 忠彦 |
代理人 | 伊東 忠重 |
代理人 | 谷山 尚史 |