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審決分類 審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない Y11
審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない Y11
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない Y11
管理番号 1335229 
審判番号 無効2014-890053 
総通号数 217 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2018-01-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2014-06-24 
確定日 2017-10-30 
事件の表示 上記当事者間の登録第4895484号商標の商標登録無効審判事件についてされた平成27年3月31日付け審決に対し,知的財産高等裁判所において審決取消しの判決(平成27年(行ケ)第10084号,平成27年12月24日判決言渡)があったので,さらに審理のうえ,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4895484号商標(以下「本件商標」という。)は,「エマックス」の片仮名を標準文字で表してなり,平成17年1月25日に登録出願され,第11類「家庭用電気瞬間湯沸器,その他の家庭用電熱用品類」を指定商品として,同年8月30日に登録査定,同年9月16日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は,本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第21号証(枝番を含む。)を提出した。
1 請求人の商品表示「エマックス」,「EemaX」,「Eemax」の広知性,周知性
(1)被請求人が商標登録出願をした日である平成17年1月25日時点において,請求人が,その販売する電子瞬間湯沸器に付していた商品表示「エマックス」,「EemaX」及び「Eemax」(いずれも「エマックス」の称呼を生ずる。)は,請求人が多くの資金を投下してなした広告宣伝活動,これによる販売実績,市場浸透性及びその波及効果等により,既に需要者の間において周知であった。
(2)請求人は,平成6年11月1日,米国コネティカット州モンロー,ペッパー街所在の米国法人エマックス社(以下「エマックス社」という。)との間で,同社製電子瞬間湯沸器「EemaX」(以下「本件電子瞬間湯沸器」という。)の日本国内における独占販売代理店契約を締結し(甲1),エマックス社から本件電子瞬間湯沸器の購入及び日本国内における顧客への販売を目的としたすべての行為に関する一切の権利を委託された。
なお,本件電子瞬間湯沸器は,断熱放射線材による特殊ヒーターを内蔵し,ガスを使用せず,瞬時に温水を給湯することのできる電子タイプの湯沸器として,エマックス社のインスレイ氏により開発されたものであり,同氏は,米国特許を取得している(甲2)。
(3)請求人は,エマックス社との間で本件電子瞬間湯沸器の販売に関する日本国内総販売代理店契約を締結するに際し,この段階から,大々的な広告宣伝活動をなしてきた。
このころの広告宣伝活動の具体例は,日刊新聞の発行会社に対し,請求人の販売商品である,本件電子瞬間湯沸器の性能や既存製品からの優位性を説明し,紙上に取り上げて貰うことを狙ったものである。
請求人による広告宣伝活動の結果,その一例として,日刊建設産業新聞(甲3),日本流通産業新聞(甲4),日刊水産経済新聞(甲5)等に記事(広告ではなく)として取り上げられ,同各紙を購読する各業界関係者の間において,請求人が販売する本件電子瞬間湯沸器は瞬く間に広まった。
(4)請求人は,上記のとおり,本件電子瞬間湯沸器販売開始当初の宣伝活動において一定の成果を得たものの,これに止まらず,さらに宣伝広告活動を継続した。
その例として,日刊紙上の広告枠に本件電子瞬間湯沸器の広告記事を掲載した(甲6,甲7)。
(5)さらに,請求人は,工業製品に関する各種展示会が開催される都度,積極的に本件電子瞬間湯沸器を出展し,湯沸かしの展示実演を行うなどの宣伝活動をし,製品性能の優位性を説明した(甲8,甲9)。
(6)これらの広告宣伝活動はそれぞれ奏功し,また,これらの時点において既に拡大傾向にあった販売実績ともあいまって,平成7年7月28日付け日刊工業技術新聞では,「ハイテク機能を満載した電子瞬間湯沸器『エマックス』が話題 日本建装工業」との見出記事において,「日本建装工業は(括弧内略),九月六日?九日まで神戸国際展示場で開催された『KOBEインターホーム’95』に,米国エマックス社製『電子瞬間湯沸器・エマックス』(中略)などを出展,来場者より話題を呼び好評を博した。」と報道されるなどしている(甲10)。
(7)本件電子瞬間湯沸器は,請求人が日本国内での販売を開始した後,現在に至るまで,その性能において同種製品の追随を許さないレベルを維持しており,性能の優位性に対する需要者の認識が浸透した。その結果,その商品表示「エマックス」,「EemaX」,「Eemax」及びその称呼は,請求人商品を表示するものとして需要者の間に浸透し続けた。
(8)本件電子瞬間湯沸器は,建物建築工事において,建築建物に設置することを目的とした販売実績が最も多いところ,平成8年7月25日時点には,いわゆるスーパーゼネコンの1社である清水建設株式会社購買部発行の社内報(「海外資材ニュース」)にも,「日本でもこの製品の日本仕様機種が発売され,従来のガス炊または電気給湯器に替り,マンション,事務所,病院等で多数(1000台以上)採用され好評を博しています。」と取り上げられ,販売台数はさらに増大した(甲11)。
(9)請求人は,本件電子瞬間湯沸器の日本国内総販売代理店として,販売開始の当初より上記のような販売宣伝活動を継続し,本件電子瞬間湯沸器等は,同種製品との比較において,他に例をみないほどの販売実績を達成してきた。
この結果,平成12年7月現在までに,前述した清水建設株式会社のほか,日本全国に支社・支店を多数有する大手企業各社事務所等への販売も加速度的に伸び,その一例は甲第12号証に記載のとおりとなった。
(10)「エマックス」等がその称呼とともに,需要者の間において,遅くとも平成12年7月時点までに広知性,周知性を備えていたことは明らかである。
2 被請求人による「エマックス」表示の使用,不正競争の目的
(1)請求人と被請求人代表者とは,被請求人の法人設立前である平成15年秋以降,エマックス社製の本件電子瞬間湯沸器の日本国内仕様品に関する販売代理店契約の交渉に入ったが,結局,有効な販売代理店契約の締結には至らなかったという関係にある。
(2)被請求人は,当時,既に本件電子瞬間湯沸器の日本国内総販売代理店であった請求人との間で上記販売代理店契約締結交渉をなし,これが決裂する過程において,平成15年11月14日,請求人に対する何らの事前相談等なく,その商号を「株式会社エマックス東京」として設立された株式会社である(甲14,甲15)。
(3)被請求人は,上記のとおり本件電子瞬間湯沸器に関する販売代理店契約締結交渉が決裂した後,被請求人独自の方法で本件電子瞬間湯沸器類似の商品を仕入れ,これに「エマックス」,「EemaX」又は「Eemax」の表示を付して販売を開始し,以後,これを継続した。
なお,被請求人が販売した電子瞬間湯沸器「エマックス」に同梱された取扱説明書(甲16)は,請求人が本件電子瞬間湯沸器のユーザー向けに同梱していた取扱説明書(甲17)を模倣して作成されたものであった。
(4)上記のような事実が発覚するなど,請求人と被請求人との間では,本件電子瞬間湯沸器を販売商品とする販売代理店関係を築くことができないことは確定的になり,平成16年2月ころには,既に請求人と被請求人との間において,被請求人が「エマックス」等の表示を使用することに対する紛争が生じ,請求人は被請求人に対し,被請求人による「エマックス」等表示の使用を禁止する旨催告し続けていた(甲18)。
(5)被請求人は,上記のような経過のなか,電子瞬間湯沸器に「エマックス」,「EemaX」,「Eemax」の表示を付して販売する行為をなおも続け,その過程において,平成17年1月25日,本件商標の登録出願をなし,さらに,同22年3月23日,重ねて同一の称呼を生ずる商標登録をなした(商標登録第5366316号)。
(6)被請求人による本件各商標出願には不正の目的,不正競争の目的ないし請求人への害意が優に認められ,このことは,当事者間の大分地方裁判所平成21年(ワ)第783号不正競争防止法による差止等請求事件判決(甲19)においても,「被告は,被告が標準文字で『エマックス』と標記してなる商標(商標登録第4895484号,以下『乙1商標』という。),『エマックス』を上段に,『EemaX』を下段に標記してなる商標(商標登録第5366316号,以下『乙2商標』という。)の商標権者であるとして,乙1,2を証拠として提出するが,乙1は被告が,原告からエマックス社製の電子瞬間湯沸器(本件電子瞬間湯沸器)の販売代理店契約の締結に向けて話し合い,また紛争も生じていた後の出願にかかるものであり,乙2に至っては本件訴訟提起後のものであるから,これら商標権の存在は原告の本訴請求の当否を判断するに当たっての妨げとなるものではない。」(9?10頁。なお,引用中の「被告」は本件の被請求人を指す。)と判示されているとおりである。
3 被請求人の販売する電子瞬間湯沸器「エマックス」と請求人の本件電子瞬間湯沸器の混同のおそれ
被請求人による商標使用を放置しておくことは,消費者に被請求人の商品と総代理店たる請求人の商品との混同誤認を生じさせるのであり,現に被請求人が販売した電子瞬間湯沸器の不備について,被請求人から購入した顧客からのクレームが請求人に対して相次いで寄せられている(甲20)。
請求人商品表示と被請求人登録商標がいずれも同一の商品区分であり,かつ,商品である電子瞬間湯沸器に付されていることは当事者間において明らかであり,よって両表示には混同のおそれがある。
なお,被請求人は,平成26年5月9日,特許庁に対し,請求人の商品表示「エマックス」を(イ)号標章として,これが本件商標権の効力の範囲に属することの判定請求をなしているから(判定2014-600016事件),請求人商品表示と被請求人登録商標に混同のおそれがあることは実質的に当事者間に争いがないといえる。
4 まとめ
以上のとおり,本件商標は,その登録時点において,商標法第4条1項第10号,第15号及び第19号に反することにより商標登録を受けることができないものであったにもかかわらず登録された商標であり,かつ,被請求人が本件商標を出願した目的には,不正競争の目的が認められるから,その登録は商標法第46条1項1号により無効にすべきである。

第3 被請求人の主張
1 本案前の主張
被請求人は,請求人の業務はエマックス社の業務の一部(代理)であり,本件無効審判はエマックス社がその主体となるべきであり,主体適格を欠く審判事件である旨主張している。
2 本案の主張
被請求人は,結論同旨の審決を求め,答弁の理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第5号証を提出している。
(1)請求人の無効原因の存在の主張に対し,被請求人は,以下のとおり,登録には正当性があるとともに,無効理由の存在しないことを主張,立証する。
なお,本件無効審判請求は,被請求人による判定請求を受けての対抗手段としての無効審判の請求と考えられる。請求人は,本件商標を付した商品の輸入代理人である旨を一方的に主張しており,被請求人の業務を妨害し続けている。請求人及びエマックス社は何れも日本国内で使用する本件商標について登録出願を行っておらず,何等「EemaX」に係る商標権を取得していない。このような無権利状態が継続した場合,被請求人のみならずエマックス社も不都合又は不利益を生じていたと考えられる。すなわち,被請求人は,海外からの本件商品の輸入販売行為が第三者による商標権の取得により商標権侵害を構成することとならぬように当該商標権を取得することで不測の不利益を排除し,自らの営業活動を防衛するとともに被請求人等の業務上の信用を広範に維持する必要があり,それのみを目的として本件商標の登録出願を行い,登録を受けたものである。ちなみに,本件商標は,エマックス社に対して返還する用意がある。
(2)本件商標の特定
本件商標は,片仮名「エマックス」を標準文字で横書きした態様からなり,その文字構成から「エマックス」の称呼が自然に生ずる。また,本件商標は,辞書等に掲載されていない造語と考えられるため,本件商標からは特段の観念は生じないと考えられる。
(3)請求人の使用する標章の特定
請求人の使用する標章は,欧文字と片仮名を併記した「Eemax エマックス」,片仮名「エマックス」及び欧文字「EemaX」と考えられ,これらの文字構成より,「エマックス」の称呼が生ずることになり,また,辞書等に掲載されていない造語と考えられるため,特段の観念は生じないと考えられる。
(4)請求人の使用する標章の周知性
請求人の使用する標章が本件商標の登録出願時及び登録査定時において日本国内で周知であったとは,以下の理由により到底考えられない。
ア 証拠の正当性
甲第3号証ないし甲第7号証及び甲第10号証の新聞記事又は広告と考えられる書面は,記事と掲載日付が明らかに分離されたものであり,これらが分離されて同一紙面に貼付されたものが証拠として信憑性があるとは到底考えられず,証拠力のない提出物件と評価せざるを得ない。
周知性を証明するための証拠について
甲第3号証ないし甲第12号証は,常識的に必要とされている証拠には全く該当せず単に自らの宣伝に関する証拠力に欠ける資料だけである。甲第3号証ないし甲第12号証は何れも請求人の使用する標章の単なる宣伝販売の実績を自ら誇示したものにすぎず,周知性を証明するための証拠とは考えられない。これをもって,請求人の使用する標章が本件商標の登録出願時及び登録査定時において日本国内で簡単に周知であったと証明できているとはいえない。
ウ 記事の内容について
甲第3号証ないし甲第5号証の新聞記事と考えられる書面中の電子瞬間湯沸器に付された標章は極めて不明瞭であり,需要者,取引者が一定の外観,称呼,観念を生じ得る標章と認識できる程度まで明確に表示されていない。また,甲第5号証及び甲第10号証には片仮名「エマックス」が表示されているが,商標的な使用態様とはなっていない。これら甲各号証は,請求人である有限会社日本建装工業の電子瞬間湯沸器に関する情報が掲載されているのみであり,請求人の使用する標章の「エマックス」,「EemaX」,「Eemax」が商品「電子瞬間湯沸器」に使用されて周知になった事実は何ら示されるものではない。
エ 広告的効果について
請求人は,甲第6号証及び甲第7号証により請求人の使用する標章を使用しているが,該広告が新聞のどの位置に掲載されていたか不明であり,また,他の広告がどのようなジャンルのものでありどの程度の数量,大きさで表示されていたのかも重要な要素となると考えられるが,広告の掲載態様が全く明らかにされていない。宣伝回数,配布された地域等が明確となる資料も添付されておらず,周知性を証明する証拠としては全く不十分と評価せざるを得ない。
オ 請求人の主張内容について
請求人は,審判請求書において,「・・・瞬く間に電子瞬間湯沸器『エマックス』は広まった。」,「・・・商品表示『エマックス』,『EemaX』,『Eemax』も称呼とともに,請求人商品を表示するものとして需要者の間に浸透し続けた。」,「・・・販売台数は更に増大した。」「・・・『エマックス』等は,同種製品との比較において,他に例をみないほどの販売実績を達成してきた。」「・・・日本全国に支社・支店を多数有する大手企業各社事務所等への販売も加速度的に伸び,・・・」と述べているが,明細書や発注書など,これら各事実を客観的に証明可能な証拠は何等提出されていない。
甲第6号証は1995年に頒布され,甲第7号証は1999年に頒布され,甲第8号証は1995?1998年,甲第9号証は1998年に展示等行った旨が主張されているが,広告が功を奏した結果と主張する甲第10号証は1995年の日付となっており,時間的な矛盾を包含する主張である。
カ 掲載媒体について
請求人は,各種新聞に記事,広告が掲載されたと主張しその証拠を提出しているが,発行部数,地域についての客観的な証拠を何ら提出していない。広告の掲載回数も提出された証拠からではそれぞれ1回のみと評価せざるを得ない。これらは,読者層,読者数ともに限定されていると考えられるため,これに記事,広告が1回掲載されたことのみにより,直ちに請求人の使用する標章は周知となったと判断することは困難である。
キ まとめ
以上により,請求人の使用する標章が本件商標の登録出願時及び登録査定時において周知性を獲得していたということはできない。
(5)不正の目的及び不正競争の目的について
不正の目的及び不正競争の目的
被請求人は,本件商標の登録出願に当り,エマックス社に対する図利加害目的は一切ない。
請求人は,エマックス社との間で電子瞬間湯沸器エマックスの総代理店契約を締結した旨主張しているが,該契約は当事者間で行われたものであり,被請求人に影響を及ぼすものではなく,製品を独自に購入し,輸入販売を行うことには何ら問題は存在していない。また,エマックス社は,我が国において商標権を取得することをせず,そのまま放置していたものである。このような状況下において,被請求人は,仮に,第三者に「EemaX」に係る商標権を取得された場合に,自らの事業に支障が出ることを憂慮し,営業活動を保全するとともに被請求人等の業務上の信用を広範に維持するために,万やむを得ず本件商標の出願を行ったものである。エマックス社からの要望があれば,出願料や登録料等の実費のみを支払う事を条件として商標を返却する意思があり,現に本来的に商標権者であるべきエマックス社に商標権を譲渡して商標権の管理をするように提案すると同時に依頼を行っている(乙2?乙4)。
イ 自ら商標登録出願を行っていない事実について
本来は,エマックス社又は国内総代理店を標榜している請求人が「EemaX」等について自らの費用で商標権を取得して管埋するのが通常あるべき姿であり,本来あるべき商標の管理形態であったと考えられる。しかしながら,エマックス社及び請求人は,本件商標について,代理店契約を締結した1994年以降,商標登録出願を一切することはなく事業を継続してきたものであり,現在もなお商標登録をする努力又は買い戻す努力を一切行っていない。被請求人は,自らの事業を無関係の第三者によって中断されるのをおそれてやむを得ず本件商標を登録出願し,商標権を取得したものである。
ウ まとめ
以上により,被請求人による本件商標の取得には不正の目的不正競争の目的は一切存在しないものと思料する。すなわち,被請求人が本件商標の取得に当たって不正の目的不正競争の目的があるとする請求人の主張は失当である。そもそも,エマックス社が当事者でない本件無効審判において,全くの第三者である請求人から不正の目的を指摘される理由はない。
(6)出所混同の可能性について
上述のように,請求人の使用標章は本件商標の登録出願時及び登録査定時において周知・著名とはなっていなかったものである。周知・著名となっていない請求人の使用する標章と本件商標との間で,出所混同が生ずることになるとは考えらない。ちなみに,出所混同が生じていることを示す証拠(甲20)はいずれも日付が本件商標の登録後である。
(7)商標法第4条第1項第10号該当性について
ア 本件商標は,平成17年9月16日付けで商標登録されてから5年を経過したものであり,また,被請求人による本件商標の登録出願には不正競争の目的は一切存在していないことから(商標法第47条第1項括弧書き参照),請求人による,本件商標が商標法第4条第1項第10号の無効理由を包含する旨の主張は明らかに失当である。
イ なお,商標法第47条第1項を考慮しなくとも,商標法第4条第1項第10号の無効理由を有しないことを,以下のとおり,念のため補足的に主張する。
本件商標と請求人の使用する標章とは,外観上一致している部分が存在していることと,同一の称呼が生ずることから,観念は生じないため比較し得ないとしても,類似の商標と評価できる。
また,本件商標に係る指定商品と請求人の使用する標章に係る使用商品とは類似関係にある。
しかしながら,上述のとおり,請求人の使用する標章が本件商標の登録出願時及び登録査定時において需要者の間に広く認識されていたという事実の存在は証拠によって証明されていない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当しない。
ウ 以上のとおり,本件商標が商標法第4条第1項第10号の無効理由を有するという請求人の主張は,単なる言いがかり的な主張としか考えられず,無効にするための証拠も自らの宣伝広告を提出したにすぎず,周知性があるとは到底認められるものではなく,主張そのものが失当である。また,本件審判の請求は,除斥期間におけるものであり,本件商標の登録出願に不正競争の目的が存在しないことから,請求人の主張は失当である。
(8)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 本件商標は,平成17年9月16日付けで商標登録されてから5年を経過したものであり,また,被請求人による本件商標の登録出願には不正の目的は一切存在していないことから(商標法第47条第1項括弧書き参照),請求人による,本件商標が商標法第4条第1項第15号の無効理由を包含する旨の主張は明らかに失当である。
イ なお,商標法第47条第1項を考慮しなくとも,商標法第4条第1項第15号の無効理由を有しないことを,以下のとおり,念のため補足的に主張する。
上述のとおり,本件商標と請求人の使用する標章とは,類似の商標と評価できる。
しかしながら,上述のとおり,請求人の使用する標章が本件商標の登録出願時及び登録査定時において需要者の間に広く認識されていたという事実は証拠によって証明されていない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
ウ 以上のとおり,本件商標が商標法第4条第1項第15号の無効理由を有するという請求人の主張は,単なる思い込みにすぎず失当である。また,本件審判の請求は,除斥期間におけるものであり,本件登標の登録出願に不正の目的が存在しないことから,請求人の主張は失当である。
(9)商標法第4条第1項第19号該当性について
ア 商標の類似性
上述のとおり,本件商標と請求人の使用する標章とは,類似の商標と評価できる。
イ 請求人の使用する標章の周知性
上述のとおり,請求人の使用する標章が本件商標の登録出願時及び登録査定時において需要者の間に広く認識されていたという事実は証拠によって証明されていない。
不正の目的の存否
被請求人は,商標権を取得しようとしないエマックス社や請求人に代わり,自らの事業の安全性の確保することを目的とし,ひいてはエマックス社の利益にも直結する本件商標の登録出願を行ったものであり,商標権の権利行使を行ってこなかったことや,商標権の返却について現実的に再三に渡り打診していることからも,不正目的があったとはいえない。
エ まとめ
本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当しない。
(10)その他の請求人の主張について
ア 被請求人が商号「エマックス東京」を採択したこと等について
商号は,所定の管轄内において他に一致する商号が存在しない場合には登録することが可能であり,商号の採択は自由と考えられている。該事実だけを取り上げて不正の目的となるとは到底考えられない。そもそも,「エマックス」商標を付した商品の販売をするための日本法人であり,この名称を採用する事は通常予想されることと考えられる。
イ 大分地方裁判所平成21年(ワ)第783号について
該裁判と本件審判とは全くの別件であり,この裁判で認定された事実関係と本件無効審判で主張する事実関係は異なると評価せざるを得ないため,上記判決文の存在があるから被請求人に不正の目的があるため本件商標を無効理由があるとする請求人の主張は,失当である。
ウ 判定請求事件について
請求人は,被請求人が請求した判定請求事件(判定2014-600016)に対する答弁において,全く予想し得ないような,商標登録の権利範囲に属することを認める主張を行ってきているという事実がある。どのような無効理由が存在しているのかについて整理,理解した上で,本件審判を請求しているのか疑問を感じざるを得ない。本件審判の請求は,内容の伴わないものであって無効審判の体を成しておらず,反論すべきポイントが何であるか不明な審判請求あり,この点からも,被請求人に不正の目的があるため本件商標を無効理由があるとする請求人の主張は,失当と言わざるを得ない。
(11)結語
以上のとおり,請求人の主張はいずれも理由がなく,本件商標は,商標法第4条第1項第10号,同項第15号及び同項第19号に違反して登録されたものではない。

第4 当審の判断
1 1次審決取消判決の拘束力について
商標無効審判事件についての審決の取消訴訟において,審決取消しの判決が確定したときには,審判官は商標法第63条第2項で準用する特許法第181条第2項の規定に従い,当該審判事件についてさらに審理を行い,審決をしなければならないところ,再度の審理ないし判決には行政事件訴訟法第33条第1項の規定により上記取消判決の拘束力が及ぶ。
2 1次審決取消判決の内容について
知的高等裁判所は,1次審決取消判決において,以下のとおり判示した。
「(1)周知性に関係する事情について
下記掲記の証拠及び弁論の全趣旨によれば,本件商標の周知性に関係する事情として,次の事実が認められる。
ア 宣伝広告
(i):(「1の丸囲み」のこと,以下同じ。)平成7年7月28日,被告は,日刊工業新聞紙上に本件電子瞬間湯沸器の宣伝広告を掲載した。同広告中には,『Eemax エマックス』(引用商標3)の表示があるほか,同広告中の本件電子瞬間湯沸器の写真には,『EemaX』との表示が確認できる。(甲6)
(ii)平成11年3月26日,被告は,日経産業新聞紙上に本件電子瞬間湯沸器の宣伝広告を掲載した。同広告中には,『エマックス』(引用商標1)との表示がある。(甲7)
イ 新聞・雑誌記事及びテレビ放送
(i)平成6年10月6日,日刊建設産業新聞に,被告が,エマックス社との間で本件電子瞬間湯沸器の独占販売代理店契約を締結したとの内容の記事が掲載された。同記事中の本件電子瞬間湯沸器の写真には,『EemaX』との表示が確認できる。(甲3)
(ii)平成6年10月20日,日本流通産業新聞に,被告が,エマックス社との間で本件電子瞬間湯沸器の独占販売代理店契約を締結したとの内容の記事が掲載された。同記事中の本件電子瞬間湯沸器の写真には,『EemaX』との表示が確認できる。(甲4)
(iii)平成6年10月31日,日刊水産経済新聞に,被告が,エマックス社との間で本件電子瞬間湯沸器の独占販売代理店契約を締結したとの内容の記事が掲載された。同記事本文中には,『エマックス』(引用商標1)との記載があるほか,同記事中の本件電子瞬間湯沸器の写真には,『EemaX』との表示が確認できる。(甲5)
(iv)平成7年9月30日,旬刊(月3回)の日本工業技術新聞に,被告が出展した本件電子湯沸器が話題を呼び好評を博した旨の記事が掲載された。同記事の見出しや本文には,『エマックス』(引用商標1)の記載がある。(甲10)
(v)平成9年6月ころ,経済誌である『経済界』6月10日号に,被告及び被告代表者の紹介と共に,被告が本件電子瞬間湯沸器のアジア地域における独占販売権を取得した旨の記事が掲載された。同記事中には,『エマックス』(引用商標1)との記載がある。(乙1)
(vi)平成14年4月9日,本件電子瞬間湯沸器が,KRY山口放送『さわやかモーニング』で紹介された。同放送の映像中には,『エマックス EemaX』(引用商標3)との表示が確認できる。(乙4の2の2)
(vii)平成15年11月ころ,専門誌である『建築設備と配管工事』11月号に本件電子瞬間湯沸器を紹介する記事が掲載された。同記事中には,『エマックス』(引用商標1)との記載がある。(乙2)
(viii)平成16年10月22日,大分合同新聞に,被告が中国企業との間で本件電子瞬間湯沸器の販売代理店契約を締結したことを紹介する記事が掲載された。同記事中には,『エマックス』(引用商標1)との記載がある。(乙4の2の4,弁論の全趣旨)
ウ 実演展示
被告は,平成7年5月から平成17年8月までの間,主に,東京都及び西日本各地で31回の本件電子瞬間湯沸器の実演展示をした。この実演展示では,引用商標のいずれかが表示されたものと推認される。(甲8,9,乙4の3)
エ 販売台数等
(i)清水建設株式会社購買本部海外購買部が社内向けに発行した『海外資材ニュース』平成8年7月号(甲11)によれば,日本国内において,本件電子瞬間湯沸器がマンション,事務所,病院等に1000台以上採用されたことが紹介された。(甲11)
(ii)被告作成の平成12年7月付けの納入先一覧(甲12)によれば,本件電子瞬間湯沸器の納入先は,国内の157社であったことが認められる。ただし,その販売期間及び販売台数は不明である。(甲12,13の1?3)
(iii)平成15年10月30日付けの大分合同新聞の記事(乙4の2の3)によれば,本件電子瞬間湯沸器の発売以来の累計の納入台数は,約5000台とされる。(乙4の2の3)
(iv)平成6年7月から平成18年6月までの被告の会社全体における広告宣伝費は,おおむね100万円前後?250万円程度であり(ただし,平成14年7月?平成15年6月期は,約330万円である。),同展示会費は,おおむね120万円前後よりは下回る額である(ただし,平成7年7月?平成8年6月期は約510万円である。もっとも,約7万円という年もある。)。(甲36の1?12,乙5)
(2)周知性の有無について
ア 前提
商標法4条1項10号にいう『広く認識されている』とは,業務に係る商品等とこれと競合する商品等とを合わせた市場において,その需要者又は取引者として想定される者に対して,当該業務に係る商品等の出所が周知されていることであり,その周知の程度は,全国的に知られているまでの必要性はないものの,通常,一地方,すなわち,一県の全域及び隣接の数県を含む程度の地理的範囲で知られている必要があると解される。
ところで,前記第3の1及び第4の1によれば,本訴当事者間においては,本件電子瞬間湯沸器の需要者又は取引者として想定すべき者は,電気を熱源とする瞬間湯沸器の需要者又は取引者に限られるものではなく,ガスを熱源とするものも含む家庭用の壁掛型の瞬間湯沸器全体の需要者又は取引者であることで争いがないところ,電気を熱源とする瞬間湯沸器とガスを熱源とする瞬間湯沸器とは,同じ用途に使用され,熱源の相違によって利用者が異なるとする事情は認められないから,上記当事者の主張のとおり解すべきものである。また,本件電子瞬間湯沸器が特定の地方で集中的に又は専属的に販売されるものであるとする事情はないから,引用商標が,全国のいずれかの地域において,上記に説示した地理的範囲において周知であるか否かを考慮することになる。
イ 検討
そこで,上記を前提に検討するところ,上記(1)の認定のとおり,被告が本件電子瞬間湯沸器の販売を開始したと認められる平成7年5月から,本件商標の登録査定がされた平成17年8月までの間においては,(i)被告が,自ら引用商標と共に本件電子瞬間湯沸器の宣伝広告をしたのは,わずかに2回であること,(ii)引用商標と共に本件電子瞬間湯沸器が新聞・雑誌及びテレビ放送に取り上げられたことは8回であって,必ずしも多数といえないばかりか,それらは,平成6年?平成9年と平成14年?平成16年の2つに分かれるなど,離散して取り上げられたにすぎないこと,(iii)被告が引用商標と共に本件電子瞬間湯沸器の実演展示をしたことは31回あるものの,これは,年平均では約3回にすぎず,その場所もおおむね西日本各地に散在していること,(iv)被告による当該期間における本件瞬間湯沸器の販売台数は,全く明らかにされておらず,新聞記事等から推測される販売台数は年間数百台程度であり((1)エ(i)は,被告の取引先の社内報であり,客観的裏付けを欠くものと解される。),需要者又は取引者の範囲を家庭用の壁掛型の瞬間湯沸器の需要者又は取引者とした場合,一見して僅少であること(なお,本件電子瞬間湯沸器には,『EemaX』との引用商標と類似する標章が付されていたことは推認できる。),また,その納入先も全国に散在しているとみられ,特定の傾向はないこと,(v)被告により開示された広告宣伝費及び展示会費は,引用商標を付した本件電子瞬間湯沸器に係る費用に限定されない会社全体としての宣伝広告費及び展示会費である上,金額も,前者は百万円台,後者は百万円以下が多く,壁掛型瞬間湯沸器という全国的な市場において需要者又は取引者に印象を残すための費用としては,明らかに少ないものであること,以上の事実を導くことができる。
そうすると,本件証拠上,被告自身による引用商標に関する宣伝広告等は活発とはいえない上,新聞・雑誌等によりこれが報道された機会も少ないと認められる一方,引用商標を付した本件電子瞬間湯沸器の販売台数等は明らかではなく,全国的規模の市場に対する販売実績は極めて少ないものと推測される。このような宣伝広告及び販売実績等を考慮すると,家庭用の壁掛型の瞬間湯沸器又は電気を熱源とする同瞬間湯沸器の市場規模を子細に確定するまでもなく,いずれの引用商標も,本件商標の登録査定時において周知性を有していたとは認め難い。なお,被告が自社ホームページで宣伝活動をしたことは,ホームページを開設することが誰でも直ちに行える以上,それのみで周知性を裏付けるものとはならない。そのほかるる被告の主張するところも,採用することはできず,上記適示した証拠以外の証拠も,上記認定を左右するものではない。」
3 請求人に無効審判請求人適格があるかについて
被請求人は,請求人が本件審判請求をすることについて主体適格を欠く旨主張している。
被請求人がいう「主体適格」の語は,商標法の分野で広く知られている語ではなく,その内容が必ずしも明確でないが,被請求人の意図は請求人に本件商標登録無効審判請求を請求する資格(請求人適格)がないとする趣旨と解されるので,まずこの点について判断する。
商標登録無効審判請求については,商標法第46条に定められているが,その請求人たる資格については明示するところがない。しかし,商標登録の取消審判請求をすることができる者に関し同法第50条第1項が「何人も」と定めていること,商標登録無効審判請求に類似した制度である特許無効審判請求の請求人に関し特許法第123条第2項も「何人も」と定めていること,商標に関する審判手続を定めた商標法第56条は特許法第148条(参加)を準用しているところ,同審判手続に補助参加人として参加することができる者は「審判の結果について利害関係を有する者」に限られると定めていること,無効審判請求と類似した制度である民訴法の一般原則として,「利益無ければ訴権なし」と考えられること等を考慮すると,商標法第46条に基づき商標登録無効審判請求をする資格を有するのは,同条の解釈としても,審判の結果について法律上の利害関係を有する者に限られると解するのが相当である。(知財高裁平成21年(行ケ)第10226号同22年3月29日判決参照)
そこで,請求人に上述した利害関係があるかについてみるに,甲各号証によれば,以下の事実が認められる。
請求人は,米国コネティカット州在のエマックス社との間で,平成6年11月1日,エマックス社の製造販売する電子瞬間湯沸器(本件電子瞬間湯沸器)の日本国内における独占販売契約を締結し(甲1),同12年8月1日にも改めて同趣旨の契約を締結した(甲19)。請求人は,上記独占販売契約に基づき,本件電子瞬間湯沸器を輸入販売しているところ,本件電子瞬間湯沸器には「Eemax」の商標が付されており,また請求人が「エマックス」又は「Eemax」の文字からなる商標などを使用して広告宣伝をしていたと認められる。
本件商標は,「エマックス」の片仮名を標準文字で表してなり,第11類「家庭用電気瞬間湯沸器,その他の家庭用電熱用品類」を指定商品とするものである。
そうすると,本件商標は,請求人の使用していた標章とは,構成文字を共通にしており,その指定商品と請求人の使用する商品とは同一又は類似する商品であるため,商品の出所の混同を生じさせるおそれがあると解されるから,請求人は,本件商標の登録を無効にすることについて法律上の利害関係を有するというべきであり,ひいては本件商標登録無効審判請求を請求する請求人適格をも有するというべきである。
したがって,この点に関する被請求人の主張は,採用することができない。
4 請求人の使用する標章の周知性
(1)請求人の使用する標章について
請求人は,エマックス社との総販売代理店契約を締結する段階から,本件電子瞬間湯沸器について以下の標章を使用しているものである(以下これらをまとめていう場合は「引用商標」という。)。
ア 「エマックス」の片仮名からなる標章(以下「引用商標1」という。)。
イ 「Eemax」の欧文字からなる標章(以下「引用商標2」という。)。
ウ 「エマックス」及び「Eemax」の各文字を同時に表した標章(以下「引用商標3」という。)。
(2)引用商標の周知性の有無について
前記2の判示のとおり,引用商標は,請求人の本件電子瞬間湯沸器を表示するものとして,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,日本国内における家庭用の壁掛け型の瞬間湯沸器又は電気を熱源とする同瞬間湯沸器を取り扱う分野の取引者,需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
また,引用商標が,外国における需要者の間に広く認識されていたものと認めるに足る証拠の提出はない。
5 不正競争又は不正の目的について
本件商標は,設定登録後5年を経過しているため,無効審判請求の理由中,商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当することを理由とする無効審判請求は,それぞれ同法第47条1項かっこ書きが定める「不正競争の目的で商標登録を受けた場合」及び「不正の目的で商標登録を受けた場合」に限られることから,まず,本件商標の登録出願における「不正競争の目的」及び「不正の目的」の有無について検討する。
(1) 引用商標の周知性の有無について
前記4(2)のとおり,引用商標は,日本国内における取引者,需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。
(2)本件商標の登録に至る経緯
請求人の提出した証拠及び同人の主張によれば,本件商標の登録に至る経緯として以下の事実を認める事ができる。
ア 請求人
請求人は,建材,住宅関連機器の施工,販売を行っている法人である(甲5)。
イ 被請求人
被請求人は,平成15年11月14日に設立された電子瞬間湯沸器の販売,設置工事並びに保守等を目的とする法人である(甲14)。
ウ 請求人とエマックス社の関係
請求人は,平成6年11月1日付けで,エマックス社との間で,請求人をエマックス社の製造する本件電子瞬間湯沸器の日本国内における独占販売代理店とする契約を締結した(甲1,甲3,甲4,甲5)。その後,請求人は,平成12年8月1日付けでエマックス社と,改めて上記と同様の趣旨の独占販売代理店契約を締結した(甲19)。
エ 請求人と被請求人との販売代理店契約の交渉等
(ア)請求人と被請求人の代表者は,平成15年秋ごろより本件電子瞬間湯沸器の日本国内販売代理店契約の交渉を行っていたところ,被請求人の代表者は,同年11月14日に「株式会社エマックス東京」を設立した(甲14)。その後,被請求人の代表者より請求人の代表者に宛てた平成15年11月28日付け書簡には,「今般私が貴社の正規代理店となるべく新たに新会社『株式会社エマックス東京』を設立するに際し,池邊社長に事前にご相談を怠りました件につき,まことに不行き届きでありましたこと深くお詫び申し上げます。・・・株式会社エマックス東京を設立致しましたことをお許し願うと共に,誠意を持ってエマックスの販売に努めますので,今後のご指導ご鞭撻をなにとぞ宜しくお願い申し上げる次第です。・・・新会社の最初の仕事は,資金調達ができ次第貴社の代理店となる契約を締結させていただくことであります。・・・万が一,資金手当が不能となった場合は,当然社名を変更しエマックスの名をはずします。」の記載がある(甲15)。
(イ)被請求人が販売する電子瞬間湯沸器に同梱した取扱説明書(甲16)の表紙は,請求人が本件電子瞬間湯沸器に同梱した取扱説明書(甲17)の表紙から左上の「EemaX/エマックス」の表示,世界各国特許登録済等の表示を除き,構成及びイラストは同一である。また,両取扱説明書は,総ページ数に差異はあるものの,記載内容は,ほぼ同一である。
(ウ)平成16年2月28日付けの,請求人より被請求人の代表者に送信したFAXには,「・・・御社のemailアドレスにおいて,emax-tokyo@topaz.ocn.ne.jpとなっており,以前にも社名使用に関し事前の承認を得ず使用しています。やむを得ず黙認した形になっていますが,今回もまた貴社のE-mailは,商標権に混同するような文字を使用しています。『エマックス』という文字はあくまで表音文字でも商標権の侵害になります。」の記載がある(甲18)。
(エ)被請求人は,前記第1のとおり,平成17年1月25日に本件商標を登録出願し,同年8月30日に登録査定を受けた。
(オ)以上によれば,本件商標の登録出願時には,請求人と被請求人の間に紛争が生じていたことは認められるが,被請求人が,本件商標について商標登録を受けたことを奇貨として,商標を高額で買い取らせようとしたり,請求人又はエマックス社に対し,代理店契約の締結を求めたりする等の不正の目的をもって,登録出願した証拠は認められない。
(3)小括
前記(1)によれば,本件商標の登録出願時には,引用商標が,請求人の本件電子瞬間湯沸器を表示するものとして,需要者の間に広く認識されていたものではないことから,たとえ本件商標と引用商標とが類似する商標であるとしても,本件商標は,引用商標の著名性にフリーライドし,不正の利益を得るなど,不正競争の目的をもって登録出願したということはできず,本件商標の登録によっては,他人の商品の出所又は業務の関連性について混同,誤認を生じさせたものとも認めることはできない。
また,前記(2)の登録出願の経緯をもっては,被請求人による本件商標の出願が,他人に損害を加える目的その他不正の目的で行われたものとは認められず,また,商取引上の信義則に反する行為を行っていたとまでも,認める事はできない。
したがって,被請求人は,不正競争の目的又は不正の目的をもって本件商標の商標登録を受けたものであると認める事はできない。
6 商標法第4条第1項第10号について
本件商標は,前記5のとおり,不正競争の目的で商標登録を受けたものと認める事はできないから,商標法第47条第1項かっこ書きの要件を具備しないものであり,本件商標が商標法第4条第1項第10号に該当するか否かを検討するまでもなく,請求人は,本件商標が同項に該当することを理由として,当該商標登録を無効にすることについての審判を請求することはできない。
7 商標法第4条第1項第15号について
本件商標は,前記5のとおり,不正の目的で商標登録を受けたものと認める事はできないから,商標法第47条第1項かっこ書きの要件を具備しないものであり,本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するか否かを検討するまでもなく,請求人は,本件商標が同項に該当することを理由として,当該商標登録を無効にすることについての審判を請求することはできない。
8 仮に,本件商標が不正競争の目的又は不正の目的で商標登録を受けたものであり,本件商標と引用商標とが類似であって,本件商標の指定商品と引用商標を付して販売している商品が類似であるとしても,前記4(2)のとおり引用商標は,本件商標の登録出願時又は登録査定時に,取引者,需要者において請求人の業務にかかる商品を表すものとして広く認識していたものとは認めることはできないものであって,本件商標をその指定商品に使用しても,商品の出所について混同を生ずるおそれもないものと判断するのが相当であるから,本件商標は商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当しない。
9 商標法第4条第1項第19号該当性について
本件商標は,前記4(2)のとおり,引用商標が日本国内又は外国における需要者において請求人の業務に係る商品を表すものとして広く認識されているということができないものであるから,本件商標と引用商標が類似であり,本件商標の指定商品と引用商標を付して販売している商品とが類似であるとしても,本件商標は,商標法第4条第1項第19号の要件を具備しない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当しない。
10 むすび
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第10号,同項第15号を理由として,商標登録を無効にすることについての審判を請求できないものであり,また,商標法第4条第1項第19号の規定に違反して登録されたものでもないから,同法第46条第1項の規定に基づき,その登録を無効にすることはできない。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2017-08-30 
結審通知日 2017-09-07 
審決日 2017-09-20 
出願番号 商願2005-5101(T2005-5101) 
審決分類 T 1 11・ 25- Y (Y11)
T 1 11・ 222- Y (Y11)
T 1 11・ 271- Y (Y11)
最終処分 不成立 
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官 田中 幸一
大森 友子
登録日 2005-09-16 
登録番号 商標登録第4895484号(T4895484) 
商標の称呼 エマックス 
代理人 広瀬 文彦 
代理人 上野 貴士 
代理人 末岡 秀文 
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