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審決分類 審判 全部無効 商4条1項16号品質の誤認 無効としない W33
審判 全部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない W33
管理番号 1334505 
審判番号 無効2016-890052 
総通号数 216 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2017-12-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2016-08-16 
確定日 2017-10-30 
事件の表示 上記当事者間の登録第5752759号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5752759号商標(以下「本件商標」という。)は、「MATUSALEM THE SPIRIT OF CUBA LIBRE」の文字を横書きしてなり、平成25年8月9日に登録出願、第33類「ラムのコーラ割りスピリッツ(飲料)」を指定商品として、平成27年3月27日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、「本件商標の登録を無効とする。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁の理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第81号証(枝番号を含む。なお、枝番号を有する証拠において、枝番号のすべてを引用する場合は、枝番号の記載を省略する。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、商標法第4条第1項第16号及び同項第7号に該当するから、同法第46条第1項第1号により、その登録を無効にすべきものである。
(1)商標法第4条第1項第16号該当性
ア 商標法第4条第1項第16号の趣旨
商標法第4条第1項第16号は、商標の構成要素とその指定商品等との不実関係により、需要者が誤った商品を購入し又は役務の提供を受けるなどの錯誤を防止するために、商品の品質等について誤認を生ずるおそれのある商標は登録できないとして、需要者の保護を図ったものである(甲4ないし甲7)。
したがって、ある商標が商標法第4条第1項第16号に該当するか否かは、需要者等に、品質の誤認を生じるおそれがあるか否かによるべきである。
イ 本件商標
(ア)本件商標は、「MATUSALEM THE SPIRIT OF CUBA LIBRE」の文字を横書きしてなるところ、その構成中の「MATUSALEM」の語は、我が国の一般的需要者には理解できない。
他方、本願商標の構成中の「CUBA」の語は、我が国では「キューバ(共和国)」(以下「キューバ」という。)を意味する語として一般的に使用されおり、ラム酒等との関係では、専らその生産地を表すものとして一般的に認識されている。
したがって、本件商標を、キューバ産ではない商品に使用すれば、需要者に品質(産地)の誤認を生じさせる(甲2及び甲3)。なお、本件商標中の「THE SPIRIT OF」の語からは、「○○産の蒸留酒」の意味が容易に感得されるから、本件商標に接した需要者が、その商品を「キューバ産」と認識する可能性は極めて高い。
(イ)ラム酒は、味や香りの強弱によって、ライト・ラム(Light Rum)、ヘヴィー・ラム(Heavy Rum)、ミディアム・ラム(Medium Rum)に分類され、キューバ産のラム(キューバン・ラム)は、淡泊な味が特徴のドライなライト・ラムの代表とされており(甲8)、我が国においても、広く流通し(甲9及び甲10)、リキュールやカクテルのベースとして用いられている。
(ウ)ラム酒は、キューバの特産品であって、我が国のブログ等でも、「キューバといえばラム酒」というほど、関連付けられて認識されている(甲11ないし甲31)。
(エ)以上のように、「CUBA」の語をラム酒やラム酒を使用したアルコール飲料について使用すれば、一般的な需要者は、これをキューバ産と認識する。
また、「CUBA」の語は、高い品質と名声を象徴しており、需要者は、「キューバのラム酒は、良質なサトウキビと優秀な技術から19世紀には世界でもっとも美味なラム酒として評価」している。そのため、キューバの国家及びその関係機関は、産地の誤認を生じる虚偽の表示から自国商品の名声と高い品質とを保護することに努めてきた。本件商標は、かかる信用にフリーライドするものであって、かつ、産地について不実を表示する点で、需要者の利益をも損なう。
ウ 特許庁の過去の審査・審判実務について
(ア)特許庁の審査においては、商標中に「CUBA」の語を含み、第33類に分類されるアルコール飲料を指定商品とする商標出願の審査においては、キューバ産の商品(アルコール飲料)以外の商品について使用した場合に商品の品質の誤認を生じるおそれがあるとして、商標法第4条第1項第16号に該当すると判断した(甲32ないし甲38)。
また、特許庁の審判においても、国名・地名は産地表示と判断され、当該国又は地域で産出しない指定商品との関係では、品質の誤認を生じるおそれがあると認定している。特に、酒類については、その地理的環境が風味等に与える影響が大きいことから、商標構成中に国名・地名を含む商標について商標法第4条第1項第16号に該当すると判断した審決等は極めて多い(甲39ないし甲49)。
(イ)上記審査例や審決例では、国名等は一貫して産地表示と判断されてきた。これは、当該国又は地域で産出しない指定商品との関係では、品質の誤認を生じるおそれがあるからである。また、商標法第3条第1項第3号に関する特許庁の商標審査基準では、「国家名・著名な地理的名称」等は、原則として商品の産地等を表すものとする旨を定めており(「商標審査基準」五の3)、上記の審査例や審決例は、かかる審査基準に基づく運用とも整合するから、本件商標のみを例外とする理由はない。
また、判決例においても、国名・地名は、産地表示と判断している(甲50ないし甲54)。
エ 以上のとおり、本件商標は、その構成中にキューバを表す「CUBA」の語を含むことから、本件商標をキューバ産の商品以外の商品について使用した場合には、取引者及び需要者が、その商品があたかもキューバ産の商品であるかのごとく産地について誤認を生ずるおそれがあり、商標法第4条第1項第16号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第7号該当性
ア 商標法第4条第1項第7号の趣旨
商標法第4条第1項第7号は、その商標の構成自体が矯激、卑猥な文字、図形である場合及び商標の構成自体がそうでなくとも、その時代に応じた社会通念に従って検討した場合に、当該商標を採択し使用することが社会公共の利益に反し、または社会の一般的道徳観念に反する場合、あるいは他の法律によってその使用が禁止されている商標、若しくは国際信義に反するような商標である場合も含まれるものとみるのが相当と解されている(甲56及び甲57)。
イ キューバ政府の取組
(ア)命令第184号
キューバ共和国国家評議会は、誤認を生じる産地表示を付した製品に対抗して国際市場のキューバ産ラムを保護するために、輸出用ラムの産地保証印に関する命令(命令第184号)を、1998年5月28日付で可決した(甲74)。この命令では、100%キューバ原材料を使用してキューバ国内で製造されたもののみをキューバ産ラムとすること、キューバ産ラムを識別するために国家が保証印を設けること(甲75)、かかる保証印なしにキューバ産ラムを輸出することはできず、その管理はキューバ共和国商工会議所が行うこと、等が骨子となっている。
(イ)アルコール飲料に関する関連法規と原産地表示
キューバでは、2001年7月に、ラムに関する法令を定め、原材料、生産方法、添加物をはじめ、香り、風味、色合い等に至るまで、厳格な基準を定め(甲76及び甲77)、厳格な規制をクリアして認可を受けたラム酒のみが他国への輸出が認められている。
このように、ラム酒に「CUBA」の文字を使用することは、キューバ政府が定める厳格な基準及び要件を満たす場合にのみ許される。その結果、キューバ産のラムは、キューバを代表する輸出品となり、我が国においてもその名声は確立している。
(ウ)原産地表示と被請求人
「CUBA」の語は、ラムを識別するためにキューバ政府により許諾された地理的表示であり、当該表示は、「キューバラム」を製造するうえでの要件を満たすあらゆる製造業者に恩恵を与えるものである。他方、被請求人は、キューバ国内には、いかなる事業所、倉庫、蒸留酒製造所、発酵所、熟成所も所有又は賃貸していない。したがって、被請求人名義で「輸出されたキューバ原産の商品(審決注:「原料」の誤記と認める。)又は商品」の記録もない(甲80)。なお、産地保証印(甲75の1)は、パリ条約第6条の3の保護を要請するために、WIPOを通じて、各加盟国に送付されている(甲81)。
ウ 本件商標
前記イのとおり、キューバは、国家を挙げて、ラム酒に関する厳格な基準を設け、品質の向上をはかり、その結果、「ライト・ラムの代表」としての名声を獲得している。
本件商標は、その構成中に「CUBA」の語を含み、かかるキューバの産地表示にフリーライドするものである。のみならず、上記基準に全く準拠しない商品(キューバ産ですらない商品)に、「CUBA」の原産地表示を含む商標を使用するものである。かかる行為は、国際商取引におけるキューバ産ラム酒の流通秩序を慮ったキューバの方針に反するものであり、不正競争行為の一類型である品質誤認惹起行為(不競法第2条第1項第13号)にも該当する。
エ 特許庁の過去の審査・審判実務について
産地表示を含む商標に関し、例えば、「シャンパン」(Champagne)の語は、「フランスのシャンパーニュ地方でつくられているスパークリング・ワイン。」を表す語(産地表示)として我が国で周知であり、「シャンパン」(Champagne)の語を含む商標については、特許庁の審決においても、商標法第4条第1項第7号が適用された(甲58ないし甲71)。
これは、「ボルドー」のような産地表示を含む商標についても、同様である(甲72)。なお、かかる判断は、裁判所においても同様になされている(甲73)。
オ 以上のとおり、本件商標は、不実を表示するものであり、国際信義に反し、公の秩序を害するおそれがあるから商標法第4条第1項第7号にも該当する。かかる行為は、ラムの品質を厳格に管理し、品質を保持してきたキューバ政府の方針に反し、公正な取引秩序を乱すものでもある。したがって、単に指定商品を「ラムのコーラ割りスピリッツ(飲料)」と減縮するだけでは、商標法第4条第1項第7号該当性を脱することはできない。
2 答弁に対する弁駁の理由
(1)商標法第4条第1項第16号について
ア 被請求人は、本件商標の審査時に提出した意見書において、「『CUBA』の文字が先ず第一に西インド諸島の『キューバ国』を直感せしめ」、「本件商標全体として『自由キューバのMATUSALEMスピリット』ほどの意味合いを看取するのが自然」と述べ(甲55)、かかる意見が認容されて、本件商標は登録された。したがって、登録されるや否や、一転して、「本件商標が付された商品に接する需要者・取引者が、その商品を『キューバ産』と認識することは到底ありえない」と主張することは許されない。商標中に「CUBA」の文字があれば、「先ず第一に西インド諸島の『キューバ国』を直感せしめ」るのが一般需要者の感覚である。
イ 被請求人は、需要者が、本件商標に基づいて「『キューバ産』と認識することは到底ありえない」と主張するが、かかる主張は、登録異議申立事件(甲2及び甲3)に徴しても、不合理である。
なお、この点についても、被請求人は、上記意見書において、「我が国において『CUBA LIBRE』の文字から『ラムのコーラ割り』を直感する者はほとんど存在しない。辞典の類を参照して初めて知り得るのが実情である。」と述べている(甲55)。
ウ 被請求人は、商標法第4条第1項第16号に関する審査基準から、本件商標からは「もはや国家名を認識しえない」と主張する。
しかしながら、審査基準「3.」は、被請求人も記載のとおり、「特に、外国の国家名を含む商標である場合には、その外観構成がまとまりよく一体に表されている場合又は観念上の繋がりがある場合(既成語の一部となっている場合等国家名を認識しないことが明らかな場合を除く。)であっても、原則として、商品の産地・販売地又は役務の内容の特質若しくは役務の提供の場所を表すものと認識されるものとして、本号の規定を適用するものとする。」と記載されている。
したがって、本件商標から、全く「CUBA」や「キューバ」という「国家名を認識しえない」ということはできない。
(2)商標法第4条第1項第7号について
ア 被請求人は、本件商標を使用する商品は、「ラム酒を原材料の一つとするものの、ラム酒そのものではないから、おのずと国際信義に反することもない」と主張するが、ラム酒そのものではないから国際信義に反することがなくなる訳ではない。また、前記1(2)イ及びエで挙げたキューバ政府の取組や特許庁の過去の審査・審判実務に鑑みれば、むしろ、ラム酒でないものに本件商標を使用すれば、原産地の誤認はもとより品質の誤認まで生じ、前記キューバ法令の基準をも逸脱し、指定商品との関係で不実を表示するから、国際信義に反する度合いはさらに高くなる。
イ 被請求人は、国名を含む商標が、カクテル類を指定商品として、3件登録されていることを理由に本件商標の登録も支持されると主張する。
しかしながら、商標中の国家名がどのように保護されるべきであるかについては、一様には論じられず、わずか3件の登録例をもって本件商標の登録が商標法第4条第1項第7号に該当しないとはいえない。すなわち、本件審判では、ラム酒という商品の特性、「CUBA」の語を見た需要者等の認識及び当該国における国名の保護の程度・態様が勘案されるべきである。
ウ 被請求人は、請求人が提出した甲第32号証ないし甲第73号証の審査例、審決例及び裁判例について、いずれも「CUBA LIBRE」の文字を含まないばかりか、国家、地域名が既成語の一部として把握されるものですらないから、本件商標とは事案が異なると主張する。
しかしながら、商標法第4条第1項第16号の審査基準では、特に、外国の国家名を含む商標である場合には、その外観構成がまとまりよく一体に表されている場合又は観念上の繋がりがある場合であっても同号の規定が適用されるべきことが示されており、本件商標は「CUBA」の語が明らかに分離して感得されるから、同号の適用も受けるのであり、さらに、同項第7号の射程はより広いと考える。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第9号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第16号について
(1)本件商標は、「MATUSALEM THE SPIRIT OF CUBA LIBRE」の文字を一連に横書してなるものである(甲1)ところ、請求人は、本件商標中、「CUBA」の文字が、ラム酒等との関係では、その生産地である「キューバ」を表すものとして一般的に認識されているため、本件商標に接する需要者は、本件商標を付した商品を「キューバ産」と認識する旨主張する。
しかしながら、以下(2)の理由により、本件商標を付した商品に接する需要者が、その商品を「キューバ産」と認識することは到底あり得ない。
(2)本件商標の構成中、「CUBA LIBRE」の文字は、「ラム酒とコーラで作った飲み物」を意味する英語である(乙1)。
しかも、次に示すインターネット情報からも明らかなように、「CUBA LIBRE」及びその英語読みの「キューバリブレ」の語は、「ラム酒とコーラで作った飲み物」の意味を表すものとして、広く一般に用いられている。
ア 「フリー百科事典ウィキペディア」(乙2)には、「キューバ・リブレ」は、「1898年8月(中略)以来、20世紀に入り現在に至るまで、有名なロングドリンクの一つとして世界中で飲用されている」と掲載されている。
イ 日経電子版2012年7月28日号記事「酒のふるさとで極上の一杯を 続・食を愉しむ旅(3)」(乙3)には、「ラムはさまざまなカクテルのベースにもなる。キューバ・リブレ、モヒート、ロングアイランド・アイスティはその代表格だ。」と掲載されている。
ウ 「食ベログ 菜菜 梅田店」(乙4)に係るドリンクメニュー中に、「キューバリブレ(ラム+コーラ)」の記載がある。
エ 「食ベログ 魔法の国のアリス」(乙5)に係るドリンクメニュー中に、「キューバリブレ ラム+コーラ」の記載がある。
オ 「食ベログ デリー 銀座店」(乙6)に係るドリンクメニュー中に、「キューバリブレ(ラム&コーク)」の記載がある。
以上の事実に徴すれば、「CUBA LIBRE」の語は、「ラム酒とコーラで作った飲み物」を示す普通名称として我が国の商取引上広く用いられている既成語であり、正に本件商標の指定商品そのものを示す語である。
してみれば、本件商標を付した商品に接する需要者が、商品の普通名称たる「CUBA LIBRE」中、「LIBRE」の文字を無視し、あえて「CUBA」の文字部分のみを取り出して、「キューバ」と認識することは到底あり得ない。
したがって、本件商標に接する需要者が、本件商標から「キューバ」を認識し得ない以上、本件商標を付した商品を「キューバ産」と認識することはあり得ず、自ずと本件商標をその指定商品について使用しても、需要者が商品の品質について誤認を生ずるおそれはない。
(3)よって、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当するものではない。
このことは、「商標審査基準改訂第12版」が、十四、商標法第4条第1項第16号の欄中、3.の項(90頁)において、「既成語の一部となっている場合等国家名を認識しないことが明らかな場合を除く。」と明記し、仮に商標に外国の国家名が含まれていても、既成語の一部となって、もはや国家名を認識し得ない場合は、商標法第4条第1項第16号の規定を適用しないとしていることにも合致しており、それ故に、異議2015-900210は、その決定において、本件商標は商標法第4条第1項第16号に該当しないと明確に認定しているのである(乙7)。
2 商標法第4条第1項第7号について
(1)請求人は、本件商標中、「CUBA」の文字部分が商品の産地表示として認識されることを前提として、本件商標は不実を表示し、かつ、キューバ政府の方針に反するものであるため、国際信義に反し、公の秩序を害するおそれがある旨主張する。
(2)しかしながら、前記1で述べたとおり、本件商標中、「CUBA LIBRE」は「ラム酒とコーラで作った飲み物」を示す既成語である以上、本件商標を付した商品に接する需要者が、「LIBRE」の文字を無視し、あえて「CUBA」の欧文字部分のみを取り出し、その商品を「キューバ産」と認識することは到底あり得ない。
したがって、本件商標は産地について不実を表示したものとはいえず、自ずと公の秩序を害するものではない。むしろ、本件商標の指定商品「ラムのコーラ割りスピリッツ(飲料)」に「CUBA LIBRE」の文字を表示することは、需要者に対し、当該商品が「ラム酒とコーラで作った飲み物」であるという「事実」を表示することにほかならず、公共の秩序の維持に資するものである。
(3)また、本件商標の指定商品「ラムのコーラ割りスピリッツ(飲料)」は、ラム酒を原料の一つとするものの、被請求人(審決注:「請求人」の誤記と認める。)が甲第74号証ないし甲第77号証及び甲第79号証ないし甲第81号証を挙げて種々主張する「ラム酒」そのものではない。したがって、キューバ政府のラム酒の製造や輸出に関する方針に何ら反するものではないことは明らかであり、国際信義に反することもない。
(4)以上のとおり、本件商標をその指定商品に使用しても、国際信義に反さず、公の秩序を害するおそれもないため、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものではない。
このことは、異議2015-900210が、その決定において、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当しないと明確に認定している事実からも明らかである(乙7)。
3 先例
(1)以上に説述したところは、国家名をその一部とする既成語を含む商標について、指定商品又は指定役務に産地又は販売地を限定せずに商標登録された以下の登録例によっても支持される。
ア 商標中に、ジン、チェリーブランデー、レモンジュース、砂糖、水をステアして作るカクテルを示す「SINGAPORE SLING」の文字(乙8)が含まれている国際登録第959125号商標及び登録第5297680号商標
イ 商標中に、リキュールをべースとするカクテルを示す「China Blue」の文字(乙9)を一連に横書してなる登録第4902155号商標
(2)なお、請求人は、審査例、審決例及び判決例(甲32ないし甲73及び甲78)を挙げているが、いずれの例における商標も「CUBA LIBRE」の文字を含まないばかりか、国家・地域名が既成語の一部として把握されるものですらなく、本件商標とは明らかに事案が異なる。
4 むすび
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第16号及び同項第7号に違反して登録されたものではない。

第4 当審の判断
請求人が、本件審判を請求する法律上の利益を有することについて、当事者間に争いはなく、また、請求人は、本件審判を請求するにつき、請求人適格を有するものと認められるので、以下、本案に入って審理する。
1 商標法第4条第1項第16号について
(1)本件商標は、上記第1のとおり、「MATUSALEM THE SPIRIT OF CUBA LIBRE」の文字(各文字の間には、1文字程度の間隔がある。)を横書きしてなるものである。そこで、その語義について検討する。
ア 「MATUSALEM」の文字部分は、一般的な英語の辞書やスペイン語の辞書等に掲載がなく、また、我が国の一般の需要者の間に親しまれた語であるともいえないことから、特定の語義を有しない一種の造語を表したと理解されるものである。
イ 「THE SPIRIT」の文字部分は、そのうちの定冠詞「THE」は、これに続く名詞「SPIRIT」について、特定のものを限定する機能を有するのみで、強いて訳さない場合が多いといえる。また、「スピリッツ【spirit】」は、「酒精、転じてアルコール度の高い酒のこと。広義には蒸留酒全般を指す。ジン・ウォツカ・ラムなど。」(広辞苑第六版)を意味する英単語として、我が国の酒類を取り扱う分野等の需要者の間によく知られているものである。
ウ 「OF」の文字部分は、「?の、?に属する」などを意味する英単語として、我が国の需要者の間においてもよく知られているものである。
エ 「CUBA LIBRE」の文字部分については、以下のとおりである。
(ア)乙第1号証ないし乙第6号証には、以下の記載が認められる。
a.「goo辞書 英和和英」のウェブサイトには、「Cuba libre」について、「(主に米)キューバリブレ:ラム酒とコーラで作った飲み物」の記載がある(乙1)。
b.「フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』」のウェブサイトの「キューバ・リブレ」の項には、「キューバリブレ(Cuba libre)とは、・・・ラム酒をベースとするカクテルの1つである。日本では英語とスペイン語が混ざって『キューバ・リブレ』と呼ばれることもある他、英語風に『キューバ・リバー』、スペイン語風に『クーバ・リブレ』または『クバ・リブレ』と呼ばれることもある。・・・第二次キューバ独立戦争の合い言葉として使われた『Viva Cuba Libre(キューバの自由万歳)』にちなんで作られたカクテル。・・・“キューバの自由”(Cuba Libre)の為に乾杯し、『キューバ・リブレ』と雄叫びを上げたのがこのカクテル誕生の由来と言われる。以来、20世紀に入り現在に至るまで、有名なロングドリンクの一つとして世界中で飲用されている。」の記載がある(乙2)。
c.日経電子版2012年7月28日付けの「酒のふるさとで極上の一杯を 続・食を愉しむ旅(3)」のウェブサイトには、「ラムはさまざまなカクテルのベースにもなる。キューバ・リブレ、モヒート、ロングアイランド・アイスティはその代表格だ。」の記載がある(乙3)。
d.「食ベログ 菜菜 梅田店」のウェブサイト(2016年10月31日更新)には、ドリンクメニューにおけるカクテルの中に、「キューバリブレ(ラム+コーラ)」の記載がある(乙4)。
e.「食ベログ 魔法の国のアリス」のウェブサイト(2014年2月28日更新)には、ドリンクメニューにおけるカクテルの中に、「キューバリブレ/ラム+コーラ」の記載がある(乙5)。
f.「食ベログ デリー 銀座店」のウェブサイト(2015年2月23日更新)には、ドリンクメニューにおけるカクテルの中に、「キューバリブレ(ラム&コーク)」の記載がある(乙6)。
(イ)甲第11号証(2015年5月15日投稿)、甲第16号証(2011年11月16日更新)、甲第19号証(掲載日不明)、甲第22号証(2013年6月19日更新)、甲第25号証及び甲第29号証(いずれも掲載日不明)には、「キューバリブレ」、「キューバ・リブレ」、「クバ・リブレ」又は「クーバ・リブレ」がラム酒をベースとするカクテルの名称として、一般的な需要者のブログを含むウェブサイトにおいて紹介されている。
(ウ)上記(ア)及び(イ)に加え、本件商標の審査手続における平成25年11月12日付け拒絶理由通知書で示した「株式会社小学館 ランダムハウス英和大辞典」等の辞書における「キューバリブレ(Cuba libre)」に関する記載、平成26年5月2日付け拒絶査定で示した新聞記事、インターネット情報等における「キューバリブレ」に関する記載を総合すると、本件商標中の「CUBA LIBRE」の文字部分は、本件商標の拒絶査定不服審判の審決日(平成27年2月24日)には既に、「ラム酒をベースにコーラで割ったカクテルの名称」を表す語として、我が国の酒類を取り扱う分野の取引者、需要者の間において広く知られていたものと認めることができる。
オ 以上によると、本件商標中の「THE SPIRIT OF CUBA LIBRE」の文字部分は、その構成中の「CUBA LIBRE」の文字部分が「ラム酒をベースにコーラで割ったカクテルの名称」を表す語として、我が国の取引者、需要者の間に周知であることからすると、全体として「ラム酒をベースにコーラで割ったスピリッツ」程の意味合いを理解させるものであり、したがって、本件商標は、特定の語義を有しない造語であって、自他商品の識別機能を有する「MATUSALEM」の文字と「ラム酒をベースにコーラで割ったスピリッツ」程の意味合いを理解させる「THE SPIRIT OF CUBA LIBRE」の文字とを結合した商標とみるのが相当である。
(2)商標法第4条第1項第16号は、商品の品質又は役務の質の誤認を生ずるおそれがある商標については、公益に反するとの趣旨から、商標登録を受けることができない旨規定されているところ、同号でいう「商品の品質の誤認を生ずるおそれがある商標」とは、指定商品に係る取引の実情の下で、取引者又は需要者において、当該商標が表示していると通常理解される品質と指定商品が有する品質とが異なるため、商標を付した商品の品質の誤認を生じさせるおそれがある商標を指すというべきである(甲5)。
この観点から本件についてみると、本件商標は、自他商品の識別機能を有する「MATUSALEM」の文字と「ラム酒をベースにコーラで割ったスピリッツ」の意味合いを理解させる「THE SPIRIT OF CUBA LIBRE」の文字からなるものであるから、その構成中の「THE SPIRIT OF CUBA LIBRE」の文字部分は、本件商標の指定商品を表したと認識されるものである。
そうすると、本件商標は、その構成中の「CUBA」の文字部分が、取引者、需要者に、「キューバ」又は「キューバ産」の意味を想起させることはないというのが相当であるから、これをその指定商品について使用しても、商品の品質について誤認を生ずるおそれはないものである。
したがって、本件商標がその構成中に「CUBA」の文字を含むことのみをもって、本件商標を「キューバ産の商品」以外の商品について使用するときは、商品の品質について誤認を生ずるおそれがある旨の請求人の主張は、理由がなく採用することができない。
(3)以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第16号に該当しない。
2 商標法第4条第1項第7号について
(1)商標法第4条第1項第7号は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ」のある商標は商標登録をすることができないと規定しているところ、当該規定に該当する商標とは、その構成自体がきょう激、卑わい、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合のほか、商標の構成自体がそうでなくとも、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するような場合も含まれ、また、他の法律によって、その使用等が禁止されている商標、特定の国若しくはその国民を侮辱する商標又は一般に国際信義に反する商標もこれに当たると解される。
(2)上記(1)の観点から、本件についてみるに、本件商標は、その構成自体に公の秩序又は善良な風俗に反するような構成でないことは明らかである。
次に、本件商標に関し、指定商品について使用することが社会的公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するような場合、他の法律によって、その使用等が禁止されている商標、又は、特定の国若しくはその国民を侮辱する商標又は一般に国際信義に反する商標に当たるか否かについて検討する。
この点に関し、請求人は、「CUBA(キューバ)」は、ラム酒の産地として需要者に周知であり、過去の審決や決定においても、「CUBA」の語は、キューバ産の商品以外に使用されるおそれがある場合には、誤認表示になると認定されているから、「CUBA」の文字を含む本件商標は、不実を表示する商標であり、国際信義に反し、公の秩序を害するおそれがあるばかりか、本件商標をその指定商品に使用する行為は、ラム酒の品質を厳格に管理し、品質を保持してきたキューバ政府の方針に反し、公正な取引秩序を乱すものでもある旨主張する。
しかし、上記1のとおり、本件商標は、その構成中の「CUBA LIBRE」の文字部分が「ラム酒をベースにコーラで割ったカクテルの名称」を表すものとして我が国の取引者、需要者の間に広く知られており、また、「THE SPIRIT OF CUBA LIBRE」の文字全体としても、「ラム酒をベースにコーラで割ったスピリッツ」程の意味合いを理解させることから、「CUBA」の文字部分のみが独立して把握、認識されるものではない。
してみると、キューバ政府が自国で生産されるラム酒について、保証印を用いることなどを定めた命令等により、その品質を厳格に管理し、品質を保持するなどして、原産地表示たる「CUBA」の保護を図ってきたことは認められるとしても、本件商標は、その構成中の「CUBA」の文字が商品の産地表示として認識されることはなく、また、本件商標が使用される指定商品は、ラム酒そのものではないというべきであるから、商標権者が本件商標をその指定商品に使用する行為は、キューバ政府の方針に反するものとはいえず、かつ、公正な取引秩序を乱すものでもない。
したがって、本件商標の構成中の「CUBA」の文字部分が商品の産地を表したものであるとし、これを前提として、本件商標が、不実を表示する商標であるから、公序良俗に反する商標であるとする請求人の主張は、採用できない。
その他、本件商標が、公正な競業秩序を害するものであって、社会公共の利益に反し、さらに、国際信義又は公正な取引秩序に反する場合などに当たると認めるに足りる証拠はない。
(3)以上のとおりであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
3 請求人の挙げた審査例、審決例、判決例等について
請求人は、本件商標が商標法第4条第1項第16号及び同項第7号のいずれにも該当する旨主張し、過去の審査例、審決例、判決例等を示すが、上記のとおり、請求人の主張は、本件商標中の「CUBA」の文字部分が商品の産地表示として認識されることを前提とするものであって、本件商標と異なった前提に基づいて提出された過去の事例は、いずれも本件とは事案を異にするというべきであり、採用できない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第16号及び同項第7号のいずれにも違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、無効とすることはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2017-05-31 
結審通知日 2017-06-05 
審決日 2017-06-19 
出願番号 商願2013-62271(T2013-62271) 
審決分類 T 1 11・ 22- Y (W33)
T 1 11・ 272- Y (W33)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 清川 恵子 
特許庁審判長 半田 正人
特許庁審判官 青木 博文
豊泉 弘貴
登録日 2015-03-27 
登録番号 商標登録第5752759号(T5752759) 
商標の称呼 マツサレムザスピリットオブキューバリブレ、マツサレム、ザスピリットオブキューバリブレ、ザスピリットオブキューバリーブル、スピリットオブキューバリブレ、スピリットオブキューバリーブル、キューバリブレ、キューバリーブル、リブレ、リーブル 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 村田 正樹 
代理人 田中 克郎 
代理人 高野 登志雄 
代理人 小林 彰治 
代理人 佐藤 俊司 
代理人 中嶋 俊夫 
代理人 田中 克郎 
代理人 特許業務法人アルガ特許事務所 
代理人 池田 万美 
代理人 山本 博人 
代理人 小林 彰治 
代理人 佐藤 俊司 
代理人 池田 万美 
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