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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W33 審判 全部申立て 登録を維持 W33 審判 全部申立て 登録を維持 W33 審判 全部申立て 登録を維持 W33 |
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管理番号 | 1333451 |
異議申立番号 | 異議2016-685022 |
総通号数 | 215 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2017-11-24 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-09-23 |
確定日 | 2017-05-08 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 国際登録第1271728号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 国際登録第1271728号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 国際登録第1271728号商標は、別掲1のとおりの構成からなり、2015年7月21日にFranceにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張し、2015年(平成27年)7月27日に国際商標登録出願、第33類「Alcoholic beverages(except beers).」を指定商品として、平成28年3月14日に登録査定、同年7月15日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録商標は、以下の1から11のとおりであり、いずれも現に有効に存続しているものである。 1 登録第4408069号商標(以下「引用商標1」という。) 商標の構成:「BARON PHILIPPE DE ROTHSCHILD」(標準文字) 登録出願日:平成11年8月18日 設定登録日:平成12年8月11日 最新更新登録日:平成22年6月29日 指定商品 :第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」 2 登録第5714262号商標(以下「引用商標2」という。) 商標の構成:「バロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド」(標準文字) 登録出願日:平成26年6月3日 設定登録日:平成26年10月31日 指定商品 :第33類「アルコール飲料(ビールを除く。),りんご酒,日本酒,洋酒,中国酒,薬味酒,ぶどう酒,スピリッツ(飲料)」 3 登録第3156746号商標(以下「引用商標3」という。) 商標の構成:「COLLECTION BARON PHILIPPE」 登録出願日:平成5年8月5日 設定登録日:平成8年5月31日 最新更新登録日:平成28年5月10日 指定商品 :第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」 4 登録第5453345号商標(以下「引用商標4」という。) 商標の構成:「BARONNE PAULINE」(標準文字) 登録出願日:平成23年5月17日 設定登録日:平成23年11月25日 指定商品 :第33類「ぶどう酒」 5 登録第2363887号商標(以下「引用商標5」という。) 商標の構成:「MOUTON BARONNE」 登録出願日:平成元年1月10日 設定登録日:平成3年12月25日 最新更新登録日:平成23年10月11日 書換登録日:平成16年6月2日 指定商品 :(指定商品の書換登録後)第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」 6 国際登録第1080581号商標(以下「引用商標6」という。) 商標の構成:「BERGER BARON」 国際登録日:2011年(平成23年)5月13日 設定登録日:平成24年4月13日 指定商品 :第33類「Wines,sparkling wines,wines of French origin,namely champagne,cider,brandies,liqueurs,alcohol and spirits.」 7 登録第3320577号商標(以下「引用商標7」という。) 商標の構成:「LA BARONNIE」 登録出願日:平成7年3月2日 設定登録日:平成9年6月6日 最新更新登録日:平成19年2月13日 指定商品 :第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」 8 登録第5453346号商標(以下「引用商標8」という。) 商標の構成:「MISE DE LA BARONNIE」(標準文字) 登録出願日:平成23年5月17日 設定登録日:平成23年11月25日 指定商品 :第33類「ぶどう酒」 9 登録第2363886号商標(以下「引用商標9」という。) 商標の構成:「CHATEAU MOUTON BARONNE」 登録出願日:平成元年1月10日 設定登録日:平成3年12月25日 最新更新登録日:平成23年10月11日 書換登録日:平成15年6月18日 指定商品 :(指定商品の書換登録後)第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」 10 登録第999917号商標(以下「引用商標10」という。) 商標の構成:別掲2のとおり 登録出願日:昭和45年4月24日 設定登録日:昭和48年2月15日 最新更新登録日:平成25年2月5日 書換登録日:平成15年8月6日 指定商品 :(指定商品の書換登録後)第33類「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」 11 登録第2462000号商標(以下「引用商標11」という。) 商標の構成:「BARONESS」 登録出願日:平成2年5月23日 設定登録日:平成4年9月30日 最新更新登録日:平成24年8月21日 書換登録日:平成16年6月9日 指定商品 :(指定商品の書換登録後)第33類「ワイン,その他の果実酒,日本酒,洋酒,中国酒,薬味酒」 なお、引用商標1ないし引用商標11を併せて、以下「引用商標」という場合がある。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第11号に該当するものであるから、その登録は取り消されるべきものである旨申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第17号証を提出した。 1 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)引用商標 ア 引用商標1(甲2)は、欧文字の「BARON PHILIPPE DE ROTHSCHILD」という文字商標であり、「BARON」「PHILIPPE」「DE」「ROTHSCHILD」の間にそれぞれ一文字程度の間隔があるので、各語に分離して観察可能である。また、引用商標1の日本語での全体称呼は10音を超える冗長なものである。したがって、簡易迅速を尊ぶ取引においては、冒頭の語の「BARON」のみが捉えられ、この部分のみをもって「バロン」との称呼が生じることは明らかである。 イ 引用商標2(甲3)は、片仮名の「バロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド」という文字商標であり、「バロン」、「フィリップ」、「ド」、「ロスチャイルド」のそれぞれの語の間にあえて「・」が設けられて記載されていることから、各語は分離して観察されることが自然なものである。また、本件商標の全体称呼は10音を超える冗長なものである。したがって、取引においては冒頭部分の「バロン」のみが捉えられて、この部分をもって「バロン」との称呼が生じることは明らかである。 ウ 引用商標3(甲4)は、欧文字の「COLLECTION BARON PHILIPPE」という文字商標であり、「COLLECTION」、「BARON」、「PHILIPPE」の間にスペースを有しており、各語は明らかに分離できる。また、引用商標3を構成する「COLLECTION」の語には「集めること、収集、収蔵品」の意味があり(甲13)、引用商標3が、例えば指定商品である「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」に用いられた場合、これに接する取引者、需要者は、その商品が「日本酒,洋酒,果実酒,中国酒,薬味酒」に関する特定の収蔵品の一つであると認識するものと認められる。したがって、「COLLECTION」は、商品の品質を表示するものとして認識されるにとどまり、自他商品識別力が極めて弱い。よって、簡易迅速が尊ばれる取引において「BARON PHILIPPE」の冒頭語である「BARON」のみが捉えられて、この部分のみをもって「バロン」という称呼が生じるのは明らかである。 エ 引用商標4(甲5)は、欧文字の「BARONNE PAULINE」という文字商標であり、「BARONNE」と「PAULINE」の間に一文字程度の間隔があるので、簡易迅速が尊ばれる取引において冒頭語である「BARONNE」のみが捉えられて、「バロン」との称呼が生じることは明らかである。 オ 引用商標5(甲6)は、欧文字の「MOUTON BARONNE」という文字商標であり、「MOUTON」と「BARONNE」の間に一文字程度の間隔があるので、一体不可分に結合しているとは捉えがたく「BARONNE」のみをもって分離観察され得る結果、「バロン」との称呼が生じることは明らかである。 カ 引用商標6(甲7)は、欧文字の「BERGER BARON」という文字商標であり、「BERGER」と「BARON」の間に一文字程度の間隔があるので、一体不可分に結合しているとは捉えがたく「BARON」のみをもって分離観察され得る結果、「バロン」との称呼が生じることは明らかである。 キ 引用商標7(甲8)は、欧文字の「LA BARONNIE」という文字商標であり、その構成中の「LA」は、フランス語において女性名詞に付される定冠詞にすぎず、特定の意味合いは有さない。そうすると引用商標7の要部は後段の「BARONNIE」となり、「バロン」、「バロニー」等との称呼が生じることは明らかである。これは、引用商標8(甲9)も同様である。 ク 引用商標9(甲10)は、欧文字の「CHATEAU MOUTON BARONNE」という文字商標であり、「CHATEAU」「MOUTON」「BARONNE」の間に一文字程度の間隔があるので、一体不可分に結合しているとは捉えがたく「BARONNE」のみをもって分離観察され得る結果、「バロン」との称呼が生じることは明らかである。これは、引用商標10(甲11)も同様である。 ケ 以上より、引用商標1ないし引用商標10から、全て「バロン」という称呼が生じることは明らかである。さらに、これら引用商標1ないし引用商標10及び引用商標11(甲12)「BARONESS」中「(N)ESS」部分は英語の接尾辞として多用されることから、この商標中「BARON」の欧文字が要部としてみなされることは一目瞭然である。 そして、これらの「BARON」の欧文字部分からは、我が国における通常水準の英語力を有する需要者、取引者は特定の意味合いを想起、連想するものではないから、「BARON」の文字は我が国では特段の観念を生じ得ないものである(甲14)。 このような引用商標に含まれる「BARON」ないし「バロン」の部分は、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められるため、「商標の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他人の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、その部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などを除き、許されないというべきである」という商標の類否判断の基本原則となっている最高裁判決(最高裁昭和37年(オ)953号同38年12月5日第一小法廷判決、最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決、最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決)に矛盾することはないことは明らかである。 (2)類否判断 本件商標の中央部には、他の構成文字より一際目立つ態様で、水色で、縦に、「BARON」との語が太く大きく記載されている。一方で、「BARON」の上部に位置する「LE」との語は、「BARON」の「B」の文字の半分ほどの大きさで、小さく、通常の欧文字の記載と同様に単に横書きに記載されているにすぎない。この本件商標構成中の「LE」は、フランス語において男性名詞に付される定冠詞にすぎず、特定の意味合いは有さない。本件商標の指定商品である「アルコール飲料(ビールを除く)」の代表格ともいえるワインは、フランスが本場であるといえるため、この分野の取引者、需要者はフランス語の知識を有していると考えられる。 したがって、簡易迅速に行われる取引においては往々にして商標中の冠詞を省略して商標が称呼されることがあることを踏まえると、本件商標に接した取引者、需要者は「LE」の部分が定冠詞であることを理解でき、その結果、取引の実情に沿って、定冠詞が省略されて本件商標は捉えられるものとなる。 また、本件商標の中央部に水色で大きく記載された「BARON」という語の下部には、「Garnier」という語が記載されている。しかし、「Garnier」は、「BARON」の「B」の文字と同程度の大きさで、小さく横書きされているにすぎない。また、「BARON」が青色にて、全て大文字で太く大きく目立つように記載されているのに対し、「Garnier」は、今にも消え入りそうな細さのフォントの装飾文字で、通常の黒色にて記載されているにすぎない。この「Garnier」は、一見した限りでは、何という文字が記載されているか判別することすら困難である。 以上のことから、本件商標においては、「BARON」の部分が、要部として、すなわち取引者、需要者に対して商品の出所の識別標識として強く支配的な印象を与える結果、取引においては「BARON」のみが捉えられて、この部分をもって「バロン」と称呼されるものとなるのは明らかである。 一方、上述のとおり、引用商標からは、「バロン」という称呼が生じる。 したがって、両商標は、称呼が同一となる結果、出所が混同する商標である。また、両商標は外観や観念上も「BARON」の部分を共通にする結果、かれこれ識別しがたい。以上のことから、両商標は、明らかに類似する商標であるといえる。 (3)現実の取引実情 申立人は、1853年にその礎を築き、創業者のひ孫であるフィリップ氏が経営を引き継いで以来、本格的にワインビジネスをスタートさせ、伝統的なワイン造りを頑なに守り続ける一方で、数々のジョイント・ヴェンチャーにより新しい銘酒を世に送り出して来ている。例えば、カリフォルニアワインの父と称されるロバート・モンダヴィ社と1979年に共同で生産を開始したオーパスワンは、今日カリフォルニア最高の赤ワインとして世界的に知られている。 また、最近では、申立人と、シャトーラフィット・ロスチャイルドを保有するドメーヌ・バロン・ド・ロスチャイルド、そしてシャトー・クラーク・ロスチャイルドを保有するバロン・エドモン・ド・ロスチャイルドの3社のロスチャイルドファミリーが、一家のこれまでの功績とロスチャイルド家のシンボルとして、シャンパーニュバロン・ド・ロスチャイルドを生み出している(甲15)。また、申立人は、日本においても引用商標を付した「ワイン」を販売しており、数々の代表的ワインブランド名で共通して称される「バロン」商標は申立人を標榜するものとして、我が国の需要者、取引者間で周知なものとなっている(甲16)。 一方で、申立人が調べた限り、商標権者は、日本で本件商標を使用していないようであるが、インターネットで検索する限りでは、商標権者は外国において本件商標を「ウォッカ」に付して販売しているようである(甲17)。 このような状況下で、もし本件商標権者が日本において将来、称呼が引用商標と類似する本件商標を付した商品を販売した場合に、両商標を付して販売する商品が同一ないし類似である以上、需要者が両商標の出所について混同することは明らかである。そのような商標の登録を認めることは、商標の使用をする者の業務上の信用を維持し、需要者の利益を保護することを目的とする、商標法の趣旨に反することになる。 したがって、両商標は、現実の取引実情に照らし合わせた場合にも、出所が混同する類似する商標であることは明らである。 (4)小括 以上のとおり、本件商標と引用商標は明らかに類似する商標であり、また、指定商品も類似する。よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。 2 商標法第4条第1項第10号該当性について 上記1(3)で述べたとおり、数々の代表的ワインブランド名で共通して称される「バロン」商標は出願人を標榜するものとして、我が国の需要者、取引者間で周知著名なものとなっている(甲16)。そして、申立人が供するワインは、「バロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド」に代表されるように比較的長い標章を付して販売等されることから、これに接した需要者、取引者は 簡易迅速取引に乗せるべく、冒頭部分の「バロン」の部分のみをもって称呼し、知覚することが多い。 したがって、本件商標は、そのような申立人商品を表示するものとして需要者間に広く認識されている商標に類似する商標であって、その指定商品及び類似商品について使用をするものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。 第4 当審の判断 1 商標法第4条第1項第11号該当性について (1)本件商標について 本件商標は、別掲1のとおり、青色で「LE」の欧文字を横書きし、その下段に「BARON」の欧文字を縦に配し、その下段に黒色で、「Garnier」の欧文字を筆記体で横書きしてなる構成態様からなるものであり、その構成中、「LE」の文字は、「男性名詞に付される定冠詞」の意味を有し、「BARON」の文字は、「男爵」等の意味を有するフランス語で、「Garnier」の文字は、人名を表すものである(クラウン仏和辞典第7版「株式会社三省堂」)。 そして、本件商標は、その構成中の「LE」及び「BARON」の文字部分が、青色の太字で大きく表されていることから、取引者、需要者に対し、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであり、該文字部分に相応して「ルバロン」の称呼を生じるほか、「LE」の文字は、省略されて称呼される場合が多い定冠詞であり、かつ、「BARON」の文字よりも小さく表され、文字の向きも異なることから、最も大きく表された「BARON」の文字部分に着目し、これを識別標識としての要部と捉え、該文字に相応して、単に「バロン」の称呼をも生じるとみるのが相当である。 また、本件商標は、これらを構成する各文字が、辞書上、上記意味合いを有するとしても、我が国ではなじみのない語であるから、本件商標全体及び上記分離観察した場合においても、特定の観念は生じないものである。 (2)引用商標について ア 外観について 引用商標は、それぞれ前記第2のとおりの構成からなり、引用商標1ないし引用商標9は、それぞれの構成文字は、同書、同大で書されており、まとまりよく一体に構成されているものである。 また、引用商標10は、別掲2のとおり、図形と文字からなる結合商標であるところ、最も大きく表され、看者の目を引く「Chatoau Mouton Baron Philippe」の文字部分については、同じ筆記体でまとまりよく一体に構成されているものである。 さらに、引用商標11は、「BARONESS」の文字からなるところ、同書、同大で書されており、1つの語としてみるのが自然である。 イ 称呼について 引用商標は、それぞれ上記のとおりの構成からなり、各構成文字に相応して、引用商標1及び引用商標2は、「バロンフィリップドロスチャイルド」、引用商標3は、「コレクションバロンフィリップ」、引用商標4は、「バロンヌポーリーヌ」、引用商標5は、「ムートンバロンヌ」、引用商標6は、「バーガーバロン」、引用商標7は、「ラバロンニー」、引用商標8は、「ミゼドラバロンニー」、引用商標9は、「シャトームートンバロンヌ」、引用商標10は、「シャトームートンバロンフィリップ」及び引用商標11は、「バロネス」の称呼を生じるものである。 そして、これらの引用商標において、その構成中の「BARON」又は「バロン」の文字部分が他の構成文字に比して格別、強く支配的な印象を与える特段の理由もないことから、引用商標からは「バロン」の称呼を生じるものとはいえない。 ウ 観念について 引用商標は、これらを構成する各文字が、我が国において、なじみのない語であることから、特定の観念を生じないとみるのが相当である。 (3)本件商標と引用商標との類否について 本件商標と引用商標とを比較すると、両者は、外観において、明らかに区別し得るものであるから、相紛れるおそれはない。 また、称呼において、本件商標は、「ルバロン」又は「バロン」の称呼が生じ、引用商標は「バロン」の音を含んでいるとしても、それぞれの引用商標全体から生じる称呼が全く異なり、十分聴別できるものである。 さらに、観念において、両者は、特定の観念を生じないものであるから、比較できない。 そうすると、本件商標と引用商標は、観念において比較することができないとしても、外観及び称呼において、相紛れるおそれのないものであるから、これらを総合して判断すると両商標は非類似の商標といえる。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 2 商標法第4条第1項第10号該当性について (1)引用商標の周知性について 申立人の提出に係る証拠によれば、以下のとおりである。 ア 引用商標の周知性を証明する証拠について (ア)「ENOTECA/online」のウェブサイト(甲15)には、バロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド社の歴史は、1853年、ナタニエル・ド・ロスチャイルド男爵が、フランスのポイヤック村に位置するシャトーを購入し、その名を「シャトー・ムートン・ロスチャイルド」と改める。その後、ひ孫のフィリップ男爵がこの経営を引き継ぎ、バロン・フィリップ・ド・ロスチャイルド社は、本格的なワインビジネスをスタートさせた。現在、シャトー・ムートン・ロスチャイルドをはじめ、取扱商品は60銘柄を越える。ボルドーの輸出市場において非常に影響力を持つ会社である。また、同社は伝統的なワイン造りを守り続ける一方で、数々のジョイント・ヴェンチャーにより新しい銘酒を世に送り出している。例えば、カリフォルニアワインの父と称されるロバート・モンダヴィ社と1979年に共同で生産を開始したオーパスワンは、今日カリフォルニア最高の赤ワインとして世界的に知られている。さらに、南米チリのコンチャ・イ・トロ社と提携で生まれたアルマヴィーヴァや南仏でのジョイント・ヴェンチャーで誕生したバロナークは、数量限定の高級ワインとして高い評価を得ているなどの記載がある。 (イ)「ENOTECA Champagne Cruise 2016-17」(甲16)には、「シャトー・ムートン・ロスチャイルドを所有するバロン・フィリップ・ド・ロスチャイルドと、シャトーラフィット・ロスチャイルドを保有するドメーヌ・バロン・ド・ロスチャイルド、そして、シャトー・クラーク・ロスチャイルドを保有するバロン・エドモン・ド・ロスチャイルドの3社のロスチャイルドファミリーが、一家のこれまでの功績とロスチャイルド家の精神的価値を代表するシンボルとして、世界でも最も名声の高いワインの一つであるシャンパーニュを造ろうと考案されたのがこちらの〈バロン・ド・ロスチャイルド〉シリーズです。」の記載がある。 イ 引用商標の周知性について 上記アによれば、申立人は、フランス国においてワインを生産し、また、米国カリフォルニア及び南米チリでもワイン事業を拡大し、多くの銘柄のワインを生産している会社であるといえる。 しかし、申立人が提出した証拠は、引用商標の登録情報(甲2ないし甲12)や引用商標の語の意味を調べた辞書等の情報(甲13、甲14)がほとんどで、インターネット情報(甲15,甲16)では、申立人の商品が販売されている事実を証拠として提出しているが、例えば、引用商標の周知著名性の程度を推定するために必要な具体的な事実、引用商標の業務に係る商品「ワイン」における販売数量、売上高、新聞又は雑誌を介しての広告宣伝をした回数や期間、広告費などを立証する証拠の提出はされておらず、引用商標が使用された事実を客観的、具体的に把握することができないため、その周知性を推し量ることができない。 ウ 小括 してみると、申立人の提出した証拠によっては、引用商標が、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、我が国の需要者の間に広く認識されていたものであることを認めることができない。 (2)本件商標と引用商標との類否について 上記1(3)のとおり本件商標と引用商標とは、観念において比較することができず、かつ、その外観及び称呼において明らかに相違する相紛れるおそれのない非類似の商標であって、別異の商標というべきである。 (3)小括 そうすると、引用商標は、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の需要者の間に広く認識されていたものではなく、また、本件商標と引用商標は、類似しない商標である。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。 3 まとめ 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号及び同第11号に違反してされたものでないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
【別記】 |
異議決定日 | 2017-04-27 |
審決分類 |
T
1
651・
25-
Y
(W33)
T 1 651・ 262- Y (W33) T 1 651・ 261- Y (W33) T 1 651・ 263- Y (W33) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 須田 亮一 |
特許庁審判長 |
山田 正樹 |
特許庁審判官 |
大井手 正雄 榎本 政実 |
登録日 | 2015-07-27 |
権利者 | GARNIER Frederick |
商標の称呼 | ルバロンガルニエ、バロンガルニエ、ルバロン、バロン、ガルニエ、ガーニア |
代理人 | 外川 奈美 |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 田島 壽 |