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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W3541
審判 全部申立て  登録を維持 W3541
審判 全部申立て  登録を維持 W3541
審判 全部申立て  登録を維持 W3541
審判 全部申立て  登録を維持 W3541
審判 全部申立て  登録を維持 W3541
管理番号 1333418 
異議申立番号 異議2017-900088 
総通号数 215 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2017-11-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-03-17 
確定日 2017-09-14 
異議申立件数
事件の表示 登録第5906374号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5906374号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5906374号商標(以下「本件商標」という。)は、「日本スタディ・アブロード・ファンデーション」の文字を標準文字で表してなり、平成28年7月11日に登録出願、第35類「海外留学及び日本留学の事務手続きの代理又は代行」及び第41類「国際交流に関する知識の教授,海外留学及び日本留学に関する知識の教授,英語に関する能力試験の実施,海外留学・日本留学及びそれらの受け入れ校に関する情報の提供・助言又は相談,海外留学及び日本留学に関するセミナーの企画・運営又は開催」を指定役務として、同年11月29日に登録査定、同年12月16日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が本件登録異議の申立ての理由に引用する国際登録第972985号商標(以下「引用商標」という。)は、「THE STUDY ABROAD FOUNDATION」の欧文字を横書きしてなり、2008年1月18日にUnited States of Americaにおいてした商標登録出願に基づいてパリ条約第4条による優先権を主張して、2008年(平成20年)7月9日に国際商標登録出願、第35類「Administration of educational study abroad programs.」を指定役務として、平成21年11月20日に設定登録されたものであり、現に有効に存続しているものである。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第8号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであり、本件商標の登録は、商標法第43条の2第1号により取り消されるべきであると主張し、その理由を要旨次のように述べ、甲第1号証ないし甲第208号証を提出した。
1 前提事実
本件商標は、上述した商標法第4条第1項各号に該当するとの主張の前提となる事実として、まず、被請求人による本件商標出願の経緯について主張し、次いで、引用商標が、遅くとも本件商標の出願時である平成28年7月11日には、日本及び外国で周知・著名となっていたことを主張する。
(1)申立人設立から商標権者(以下「被申立人」という。)による本件商標の出願・登録に至るまでの経緯
ア 申立人設立から被申立人との提携解消まで
申立人は、米国インディアナ州認可の非営利教育機関であり、2000年に設立された(甲4)。
被申立人は、2000年に日本国で設立された株式会社である(甲5)。
2001年3月16日、申立人は、被申立人との間で、Student Recruitment and Funding Agreement(学生募集及び資金提供契約)を締結した(甲6)。同契約の締結以後、申立人が運営する留学プログラムについて、申立人と被申立人との間には、日本の学生募集に関する一部業務を申立人が被申立人に有償で委託をし、申立人が同業務を履行する関係があった(甲6の6条ないし10条参照)。
また、申立人が、留学プログラムの作成、改善等を行い(甲6の9条(b))、同プログラムの宣伝資料等を作成する一方(甲6の9条(d))、被申立人は、広告媒体を申立人の事前の同意なく作成できないと規定されていたこと(甲6の8条(e))などからして、同契約に基づく留学プログラムの運営に当たり、申立人とは別に、被申立人独自の信用が形成されることは、事実上もまた契約上(法的にも)もなかった。
2006年6月30日、申立人は、被申立人との間で、Termination Agreement(終了契約)を締結した(甲7)。
同契約締結後は、両者別々に留学プログラムの運営を行っていくこととし、提携関係は解消された。
なお、同契約においては、商標に関する取り決めを行っておらず、同契約においてはもちろんのこと、同契約から離れても、申立人が被申立人に対し本件商標の登録を許諾したなどということはなかった。
イ 被申立人との提携解消後から警告状をやりとりする前まで
申立人は、被申立人との提携関係を解消した後は、他の留学サポート機関(海外進学センター)と提携しながら、「THE STUDY ABROAD FOUNDATION」及び「SAF」の商標を使用して、日本国内で留学プログラムの運営を引き続き行なっていた。
申立人は、申立人設立以後における留学プログラムの運営を通じ、日本においても「THE STUDY ABROAD FOUNDATION」及び「SAF」に信用が形成され蓄積されていたことを踏まえ、「THE STUDY ABROAD FOUNDATION」(引用商標)について、2008年1月18日を出願日・優先日として出願したところ、2008年7月9日に国際登録され、2009年11月20日に登録された(甲2、甲3)。
2010年1月27日には、新会社(株式会社SAFスタディ・アブロード・ファウンデーション日本事務局)が設立され(なお、当時の商号は、株式会社SAFスタディ・アブロード・ファウンデーションで、同年5月26日に現在の商号に変更の登記を行った。)(甲8)、申立人と留学サポート機関(海外進学センター)との提携は、新会社(株式会社SAFスタディ・アブロード・ファウンデーション日本事務局)へ移転され、新会社が、申立人の許諾の下で、「THE STUDY ABROAD FOUNDATION」及び「SAF」商標を使用し、申立人の留学プログラムを運営することとなった。
ウ 警告状のやりとりから被申立人による商標出願・登録まで
申立人は、被申立人との提携関係解消後、被申立人とは別々に活動を行っていたところ、日本の大学関係者及び学生の中に、申立人と被申立人とを混同する例が生じるようになった。
かかる背景の下、申立人は、被申立人の名称(社名)の変更を求めて、2015年ころ、申立人の代表者と被申立人の代表者との間でやりとりがあったものの、最終合意には至らなかった。なお、被申立人は、申立人に対し、申立人の日本語ウェブサイトに使用されているドメインネーム(japan.studyabroadfoundation.org)(以下「本件ドメインネーム」という。)の変更を求めていた。
その後、2016年4月1日付けで、被申立人は、申立人の日本法人である上述の株式会社SAFスタディ・アブロード・ファウンデーション日本事務局(以下「申立人の日本事務局」という。)に対し、本件ドメインネームの削除・変更を要求する書状を送付してきた(甲9)。
被申立人は、代理人を通じて、同年4月13日付書状で、申立人の日本事務局に対し、重ねて同様の要求をした(甲10)。
申立人は、同年4月28日付け書状で、いったん期限の延長を求めた後(甲11)、同年5月27日付けで、被申立人に対し書状を送付した。同書状において、申立人は、本件ドメインネームの使用は何ら違法でないと返答した上、被申立人は、申立人との誤認・混同を生ぜしめる営業活動を中止し、被申立人のウェブサイト上での引用商標権に対する侵害行為を中止することを要求した(甲12)。
被申立人は、同年6月10日付け書状で、申立人の要求に応じない旨述べて、引き続き、本件ドメインネームの使用停止等を要求した(甲13)。
申立人は、被申立人に対し、同年7月1日付け書状を送付した上で(甲14)、同日、被申立人の代理人を通じ口頭で被申立人の名称の変更及び申立人のドメインネームの変更を基本条件とする和解の打診をしたものの、同年8月1日に口頭で、被申立人が名称の変更に直ちに応じることはない旨の回答を受け、和解の成立には至らなかった。
申立人は、被申立人に対し、同年9月23日付け書状を送付して(甲15)、同年6月10日付け書状での被申立人の主張は、いずれも理由がない旨述べた上で、改めて、被申立人による名称変更及び申立人による本件ドメインネームの変更を骨子とする和解案を提案した。
2017年になっても、被申立人からの返答がなかったことから、申立人は、被申立人に対し、2017年1月5日付け書状を送付して、提案した和解条件への回答を求めた(甲16)。
被申立人は、申立人に対し、同年1月26日付書状の中で、和解に応じないと述べ、本件ドメインネームの使用停止を引き続き求めるとともに、本件商標が登録されたことを通知した(甲17)。なお、同年1月26日付け被申立人の書状で、被申立人は、本件商標が2016年12月16日に登録された事実を指摘したうえで、「貴社が日本国内で行う業務が当社登録商標を侵害する可能性があることを示しております。」などと述べて、申立人が本件商標権を侵害する可能性に言及している。
以上のとおり、本件商標の出願自体は、申立人と被申立人との交渉の最中に、被申立人により行われたものである。
(2)「THE STUDY ABROAD FOUNDATION」(引用商標)及び「SAF」の周知・著名性
以下に述べる事実によれば、遅くとも本件商標が出願された2016年7月11日までには、引用商標は、需要者の間で周知・著名となっていた。
ア 活動実績
(ア)活動期間並びに事務局の数及び地域
申立人は、前述のとおり、2000年に設立され、アジアのSAFメンバー大学に在籍する学生に対して、北米、ヨーロッパ、オセアニアのSAFメンバー大学の協力の下で、留学プログラムを提供し、その運営を行っている(甲4)。
現在、申立人の事務局は、本部がアメリカにある他、北京、上海、広州、日本及び韓国の4か国計6か所に及んでいる(甲18)。
日本では、前述のとおり、2001年3月に被申立人と提携し、その後は2006年6月までは、被申立人を介し、2006年6月からは、他の留学サポート機関を介し、そして、2010年1月以降は、申立人の日本事務局を介して、現在まで、継続して留学プログラムの運営を行ってきた。
(イ)申立人のメンバー大学数
申立人の理念に賛同するSAFメンバー大学(留学先大学)は、米国、カナダ、イギリス、アイルランド、オーストリア(決定注:オーストラリア)、ニュージーランド、フランス、ドイツ及びスペインの計50大学に及び、派遣大学は、日本、中国及び韓国の計80大学(決定注:117大学)に及ぶ(甲19)。
(ウ)申立人プログラムに参加した学生数(2007年?2017年)
2007年から2017年にかけて、申立人の留学プログラムに参加した学生数は、合計9500名を超えている。学生の出身国・地域は、日本、ブルネイ、中国、香港、カザフスタン、韓国、マカオ、シンガポール及び台湾の9か国・地域に及び、留学先の大学の数も毎年多数に及んでいる(甲20)。なお、日本からの参加者は、合計3800名を超えている。
(エ)学生から申立人が受けた問合せの数(2013年?2017年)
2013年から2017年にかけて、学生から申立人の日本事務局が受けた問合せの数は、4年と1月半ほどの統計にもかかわらず、合計すると4900回を超えている(甲21)。
(オ)申立人が行った学生向けセミナーと参加学生数(2015年?2017年)
2015年から2017年にかけて、申立人の日本事務局は、定期的に大学や申立人の日本事務局新宿オフィスにおいて、学生向けセミナー・イベント・フェア(以下「セミナー等」という。)を行った。参加人数は、2年と2ヵ月の統計にもかかわらず、7100名を超えており、セミナー等の開催数も330回を超えている(甲22)。
(カ)インターナショナルアドバイザリカウンシル会議及びシンポジウム(2013年?2017年。日本、中国及び韓国。)
2006年以降、申立人の日本事務局、韓国事務局及び中国事務局は、20回にわたり、インターナショナルアドバイザリカウンシル会議及びシンポジウムを開催してきた。日本、韓国、中国及び海外の大学から留学関係業務の担当者が多数集まって、申立人と意見交換をしたり、また、アジア及びその他の地域における申立人の最近の活動のアップデートを受け取ったりしている。申立人の日本事務局では、2013年以降5回開催し、延べ169名の大学職員が参加した(甲23)。
(キ)国際レセプション(米国及びカナダ)及び専門職育成プログラム
申立人は、2007年以降、米国及びカナダで国際レセプションを10回開催し、毎回多数の参加者があった(甲24)。なお、各レセプションの招待状を添付するが(第1回のみ、データがないため提出証拠には含まれていない。)、各招待状には、「THE STUDY ABROAD FOUNDATION」及び/又は「SAF」の商標が使用されている(甲25?甲33)。
また、申立人は、国際的に「Professional Development Programs」(専門職育成プログラム)を9回実施した。同プログラムでは、申立人が、アジアのSAFメンバー大学の留学事務管理者、教職員のために、大学や文化地域への訪問を組織した(甲24)。
(ク)小括
以上(ア)ないし(キ)で述べたとおり、申立人は、2000年の設立以後15年以上に渡り、海外留学プログラムの運営を行い、その間、多数の学生が、同プログラムについて問合せを行い、申立人のセミナーに参加し、実際に同プログラムに参加してきた事実がある。
また、申立人は、大学の留学事務担当者や教職員を対象として、会議・シンポジウムや留学先大学への訪問プログラムを継続して多数実施し、さらに、NAFSAの年次大会でも継続的にレセプションを開催してきた事実もある。
上述のとおり、申立人は、日本だけでなく、アジアや米国などの海外でも広く活動をおこなってきたものであるが、日本以外の地域における申立人の活動実績は、海外留学プログラムの運営という役務の性質上、需要者は、海外での活動実績に関する情報にも関心を持ち、通常アクセスすると考えられるので、上述した海外での活動実績は、日本の需要者の間における「THE STUDY ABROAD FOUNDATION」及び「SAF」の周知・著名性の認識にも寄与するものである。
さらに、海外留学プログラムの運営という役務の需要者は、留学に関心のある学生並びに留学事務担当の大学関係者及び教職員であり、限定されている。
上述した事実に照らすと、日本及び外国の需要者の間で、遅くとも、2016年7月11日までには、「THE STUDY ABROAD FOUNDATION」及び「SAF」が周知・著名になっていた。
イ 申立人による広告宣伝活動
(ア)パンフレット、チラシ、名刺、プログラム等の印刷費用、配布数、配布先(日本)
2007年から2017年にかけて、申立人は、日本国内で、留学サポート機関(海外進学センター)及び申立人の日本事務局を介して、広告宣伝活動を行ってきた(甲34)。
媒体としては、ポスター、パンフレット、チラシ、大学向けプログラム、ニュースレター、手引き、リーフレットなどであり、それらには、「THE STUDY ABROAD FOUNDATION」及び「SAF」が記載されている(甲35?甲130)。
配布先は、主として、日本全国の大学及びその学生であり、特定の大学向けの手引き等は、当該特定の大学の学生に配布された。申立人の日本事務局のスタッフの名刺も含めた各種宣伝媒体の印刷部数は、2007年から2017年までで、合計60万2381部であり、その費用は、合計すると3700万円を超えている(甲34)。
(イ)ニュースレター(本部)
2011年から2017年、申立人は、米国において、ニュースレターを、毎年200部、計1400部発注し、SAFのホスト大学及びホーム大学へ配布してきた。ニュースレターの印刷費用は、毎年270ドル(およそ3万円)、計1890ドル(およそ21万円)をかけている。なお、ほとんどの配布は、電子版であった(甲131)。
ニュースレターには、「THE STUDY ABROAD FOUNDATION」及び/又は「SAF」が記載されている(甲132?甲139)。
(ウ)パンフレット等(中国及び韓国)
中国及び韓国においても、多くの媒体を利用して、申立人の宣伝広告を行ってきた。その一部であるが、中国及び韓国のパンフレット、レポート等においても、「THE STUDY ABROAD FOUNDATION」及び「SAF」が記載されている事実がある(甲140?甲143)。
(エ)小括
申立人は、日本において、大学の学生向けのポスター、パンフレット、チラシ、手引き等の様々な媒体の宣伝資料を、多額の費用を支出して、多数作成し、全国の大学の関係者及び学生に対し、長期間配布してきた。
また、海外でも、ニュースレターを定期的に作成して、その印刷物を配布したり、ホームページ上に掲載して電子版で配布したりしてきたし、また、パンフレットやレポートを通じて、申立人の留学プログラムを知ってもらうことにも努めてきた。
これらのいずれにも「THE STUDY ABROAD FOUNDATION」及び/又は「SAF」が記載されていたことは、証拠により明らかである。
そして、海外留学プログラムの需要者である留学に関心のある学生並びに留学事務担当の大学関係者及び教職員は、一般消費者と異なり、そもそも、情報を提供されるのを待つのではなく、むしろ、自発的に情報にアクセスしようとする傾向がある。
そのような需要者の性質にも照らせば、上述した申立人の広告宣伝活動によって、日本及び外国の需要者の間で「THE STUDY ABROAD FOUNDATION」及び「SAF」は、遅くとも、2016年7月11日までには周知・著名になっていた。
ウ 申立人以外が作成した記事等
(ア)証拠の概要
申立人以外のウェブサイト、ウェブサイト上の記事及びその他新聞記事において、「THE STUDY ABROAD FOUNDATION」(引用商標)及び「SAF」が使用されたものが多数ある(甲144?甲207)。
(イ)小括
以上から、多数の大学においては、申立人との契約締結を伝える記事が作成されていること、また、大学の歴史において、重要な出来事として申立人との契約締結を位置付けるものがあること、さらに、申立人のプログラムを大学の学生に説明したり、奨励したりする大学があるという事実が認められる。
また、大学のウェブサイトのみならず、甲第188号証のオンラインニュースペーパーや甲第207号証の新聞記事においても、申立人の留学プログラムの運営に関する役務が取り上げられている事実がある。
さらに、甲第180号証では、「SAFは、アジア、米国、英国及び世界における一流の大学と、非常に尊敬を集めている国際的な大学ネットワークを構築した」との言及もあり、申立人の国際的な大学ネットワークが高く評価されている事実も認められる。
そして、甲144号証ないし甲第207号証のいずれにも「THE STUDY ABROAD FOUNDATION」及び/又は「SAF」が記載されていたことは、証拠により明らかである。
加えて、上述したとおり、海外留学プログラムの運営という役務の需要者は、留学に関心のある学生並びに留学事務担当の大学関係者及び教職員であり、限定されていることにも照らすなら、甲144号証ないし甲第207号証の証拠は、日本・及び外国の需要者の間で「THE STUDY ABROAD FOUNDATION及び「SAF」が、遅くとも、2016年7月11日までには周知・著名になっていた事実を裏付けているものである。
エ 周知・著名性の結論
以上述べたとおり、申立人の活動実績、申立人による広告宣伝活動及び申立人以外が作成した記事などから、「THE STUDY ABROAD FOUNDATION」及び「SAF」が、遅くとも、2016年7月11日までには日本及び外国において、周知・著名になっていたということができる。
2 商標法第4条第1項各号に該当すること
(1)商標法4条第1項第11号について
引用商標は、上記のとおり、2008年1月18日に出願されたものであるところ、本件商標は、2016年7月11日に出願されたものである。
以下では、本件商標が引用商標と類似し、かつ、本件商標の指定役務が引用商標の指定役務と類似することを主張する。
ア 商標の類似
(ア)本件商標は、漢字の「日本」及び片仮名の「スタディ・アブロード・ファンデーション」からなる結合商標である。
本件商標は、漢字の「日本」の部分と片仮名の「スタディ・アブロード・ファンデーション」を区別して観察することができることから、構成部分を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合しているものではない。よって、本件商標は、構成部分を分離して観察することができる。
仮に、本件商標が構成部分を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合しているものと考えたとしても、上述のとおり、「THE STUDY ABROAD FOUNDATION」が著名であることから、その発音を片仮名で表記した「スタディ・アブロード・ファンデーション」の部分が強く支配的な印象を与えることとなる。また、「日本」の部分は、役務の提供の場所を意味する形容詞的文字であり、出所識別標識としての称呼、観念が生じないから、いずれにしても、本件商標は、分離して観察することができる。
(イ)本件商標中の「スタディ・アブロード・ファンデーション」と引用商標「THE STUDY ABROAD FOUNDATION」とを対比すると、まず、外観は、本件商標が、片仮名からなるのに対し、引用商標は、アルファベットからなるので、両者は異なる。
次に、称呼については、引用商標に「ザ」がある点のみが異なり、両者は、類似し、観念については、いずれも「海外留学財団」の観念が生じるので、両者は、類似する。
アルファベットで表記される英単語は、いずれも平易な部類に入るものであり、加えて、本件商標の需要者は、海外留学、国際交流、英語等に関心のある者であるから、アルファベットと片仮名の相違は、本件商標の需要者を前提とすると大きなものではない。
以上から、引用商標が、本件商標と同一又は類似の役務に使用された場合、役務の出所について誤認混同が生ずるおそれがあるから、本件商標は、引用商標に類似するものである。
(ウ)また、以下の(a)から(d)までに整理したとおり、大学関係者及び学生が、申立人を被申立人と混同した事例が、現に多数あった。これらの事例は、両商標が類似するものであることを裏付けている。
(a)申立人の日本事務局のスタッフに話しかける学生で、申立人は被申立人と同じ組織であると考える者がいる。
(b)大学を訪れると、申立人の資料ではなく、被申立人の資料を持って会議に参加する大学関係者がおり、また、申立人と被申立人とは同じ組織であると考える大学関係者もいる。
(c)申立人が一度も訪問したことがない大学を訪れた時、その大学の関係者は、申立人に既に会って、関係を構築しないことを決定したので、申立人と一緒に働くつもりはない旨回答されたことがあった。
この点に関して、申立人のスタッフと日本の大学の職員とが交わしたメール(甲208)を証拠として提出する。その経緯は、以下のとおりである。
まず、申立人のスタッフは、日本の大学の職員と日本でのイベントで会った。それまでに、申立人のどのスタッフも、同職員とは会ったことがなく、同大学のキャンパスを訪問したこともなかった。同職員は、申立人について個人的な関心を示したので、会ってさらに情報を交換することを奨めた。申立人のスタッフは、メールで、同職員に対し、打合せを行うことを奨めた。しかし、メール(甲208)にあるとおり、申立人のスタッフと以前会った旨を告げられた。同職員によると、同僚から、その同僚が以前申立人に会ったものの、申立人と働くことに興味を持たなかったという話があったからという背景があった。
(d)申立人と被申立人とが参加するイベントや会議で、両者を混同する大学関係者がいる。
ロサンゼルスでのNAFSA2017カンファレンスにおいて、展示エリアに日本のブースが展示されていた。その展示エリアで、被申立人は、ブースを運営し、申立人はブースを運営していなかったものの、カンファレンス期間に、数名の日本及び海外の大学関係者から、申立人のスタッフを見て、申立人のブースを展示エリアで見たと話しかけられたことがあった。
(エ)商標の類似の結論
以上から、本件商標は、引用商標に類似するものである。
イ 商品・役務の類似
本件商標の指定役務は、上述のとおり、第35類の海外留学及び日本留学の事務手続きの代理又は代行並びに第41類の国際交流に関する知識の教授、海外留学及び日本留学に関する知識の教授、英語に関する能力試験の実施、海外留学・日本留学及びそれらの受け入れ校に関する情報の提供・助言又は相談、海外留学及び日本留学に関するセミナーの企画・運営又は開催である。これらの役務の需要者は、大学などの留学事務担当の職員や留学に関心のある学生である。
他方、引用商標の指定役務は、上述のとおり、第35類の教育的海外留学プログラムの運営であり、その需要者は、大学などの留学事務担当の職員や留学に関心のある学生である。
すなわち、両商標の役務の需要者の範囲は一致する。
また、引用商標の教育的海外留学プログラムの運営役務は、本件商標の留学、国際交流及び英語能力試験に関する役務とは、業種が同じであることからしても、本件商標の役務に同一又は類似の商標を使用するときは、同一営業主の提供にかかる役務と誤認されるおそれがある。
よって、本件商標の指定役務は、引用商標の指定役務と類似する。
ウ 被申立人が2000年に設立された株式会社であり、2001年から2006年まで申立人と提携関係にあったことについて
上述したとおり、被申立人の設立は2000年であり、申立人の設立年と同年であること、また、2001年からは申立人と被申立人間の学生募集及び資金提供契約(甲6)により、申立人の業務の一部を日本において履行していたことが事実として存在する。
しかしながら、まず、被申立人が、2000年以後、被申立人の名称(社名)を使用していたとしても、それは、あくまでも法人を特定する社名としてであり、提供する役務の出所を識別する商標としてではない。
よって、被申立人が、2000年以後、被申立人の名称(社名)を使用していたとしても、被申立人が、本件商標に対する信用を2000年当時から形成・蓄積してきたと解することはできない。
また、2001年から2006年までの間、被申立人が、申立人と提携して留学プログラムの運営に関わっていたとしても、上述したとおり、2001年の学生募集及び資金提供契約(甲6)は、日本の学生募集に関する一部業務を申立人が被申立人に有償で委託をし、申立人が同業務を履行するというものであり、同契約の下においては、留学プログラムの運営に当たり、被申立人が、申立人とは独立して、当該役務の出所に対する信用を形成することは、事実上も、また契約上も(法的にも)なかった。すなわち、申立人の「THE STUDY ABROAD FOUNDATION」及び「SAF」の商標並びにその商標に化体した信用は、申立人に帰属し、被申立人に帰属することはなかった。
よって、被申立人は、被申立人が2000年に設立された株式会社であり、2001年から2006年まで申立人と提携関係にあったことをたとえ考慮したとしても、本件商標出願が適法になされた旨主張する余地はないというべきである。
エ 結論
以上から、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当するものであり、本件商標の登録は、商標法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきである。
(2)商標法第4条第1項第8号について
ア 本件商標は他人の名称を含むこと
本件商標の「スタディ・アブロード・ファンデーション」の部分は、申立人の名称を片仮名で表記したものであり、申立人の名称と実質的に同一であるから、申立人の名称を含むものと解することができる。
すなわち、本件商標は、他人の名称を含むものである。
イ 他人の承諾がないこと
被申立人は、2017年1月26日付け被申立人作成に係る書状(甲17)において、「Japan Study Abroad Foundation」の商標を使用することは、甲6号証の契約書で確認されている旨主張しているが、上述したとおり、甲6号証の契約書は、商標に関する取り決めを行っておらず、同契約に基づいて、「Japan Study Abroad Foundation」の商標及び本件商標について、承諾があったと解する余地はない(会社の名称と商標とが異なることは上述したとおりであり、株式会社日本スタディ・アブロード・ファンデーションとして特定される被申立人と2006年の終了合意を締結したことをもってして、「商標」に関する合意の存在を導くことができないことは明らかである。)。また、同契約書と無関係に、申立人が、被申立人に対し、本件商標の出願・登録を許諾するようなことも、明示的であれ、黙示的であれ一切ない。
ウ 結論
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当するものであり、本件商標の登録は、商標法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきである。
(3)商標法第4条第1項第15号について
ア 「混同を生ずるおそれ」があること
本件商標の指定役務の需要者は、留学事務を担当する大学関係者及び大学教職員並びに留学に関心のある学生であるから、需要者には相応の注意力がある。しかし、商標法4条1項11号該当性の主張で述べたとおり、本件商標と引用商標とは類似し、本件商標の指定役務と引用商標の指定役務とも類似するものであること、前提事実として詳述したとおり、引用商標は、周知著名性を獲得したものであることからして、本件商標を指定役務に使用したときに、周知著名な「THE STUDY ABROAD FOUNDATION」及び「SAF」に係る役務と誤信されるおそれがある。
のみならず、両商標が、観念及び称呼に関し、「日本」「ニホン」の有無で相違するだけであることは、本件商標を指定役務に使用したときに、少なくとも、申立人と緊密な営業上の関係にある営業主の業務に係る役務と誤信されるおそれもある(例えば、あたかも申立人の日本支部ないし日本法人などであるかのように誤信されることがある。)(広義の混同)。
よって、いずれにしても、本件においては「混同を生ずるおそれ」がある。
イ 結論
以上から、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものであり、本件商標の登録は、商標法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきである。
(4)商標法第4条第1項第19号について
ア 需要者の間に広く認識されている商標であること
引用商標が、需要者の間で、周知著名となっていたことは、前提事実として詳述したとおりである。
すなわち、引用商標は、「需要者の間に広く認識されている商標」に該当する。
イ 需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似するものであること
本件商標が、引用商標と類似するものであることは、商標法4条1項11号該当性の項目で主張したとおりである。
不正の目的があること
上述したとおり、被申立人が2000年に設立された株式会社であること、2001年から2006年まで申立人と提携関係にあったことは、被申立人が本件商標による本件商標の取得を肯定する事実とはなり得ない。
少なくとも、2006年までに形成された「THE STUDY ABROAD FOUNDATION」及び「SAF」の商標に対する業務上の信用は、事実上もまた法律上も、申立人に帰属するものである。
2006年以後は、被申立人は、申立人とは別々に活動を行うこととなったことも既に主張したとおりである。
本件商標は、「日本」と「スタディ・アブロード・ファンデーション」からなることから、その商標の客観的構成からして、申立人の「日本支部」ないし「日本法人」などであるかのような誤認混同を生ずるおそれのあるものである(この点について会社の名称と商標とは峻別されることは既述のとおりである。)。また、本件商標に係る役務と引用商標に係る役務の需要者が、前述のとおり、共通していることにも照らせば、被申立人自身は、株式会社組織であって、営利を目的とする法人である以上、被申立人には、本件商標により、需要者の誤認・混同を利用して経済的利益を得る目的(不正の目的)があったといわざるを得ない。
なお、本件商標を出願したタイミングに関して、2006年に申立人との提携を解消したことからすれば、被申立人は、その後いつでも本件商標を出願すること自体はできたはずである(登録要件を充足するか否かは別として。)。しかしながら、2015年ころ、申立人と被申立人とが、被申立人の名称変更をめぐって交渉し、最終合意に至らず、その後、2016年に、双方代理人を介して、互いに警告のやりとりをして、申立人としては、被申立人の名称変更を含む和解を模索していた最中に、本件商標が出願・登録されたこと、のみならず、2017年1月26日付け被申立人の書状で、被申立人は、本件商標が2016年12月16日に登録された事実を指摘したうえで、「貴社が日本国内で行う業務が当社登録商標を侵害する可能性があることを示しております。」などと述べて、申立人が本件商標権を侵害する可能性に言及したことは、本件商標権の権利行使(差止請求ないし損害賠償請求)による経済的利益の確保の可能性を示唆したものであり、前述の不正の目的と符合する事実である。
エ 結論
以上から、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものであり、本件商標の登録は、商標法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきである。
3 むすび
本件商標は、商標法4条第1項第8号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであり、本件商標の登録は、商標法第43条の2第1号により取り消されるべきである。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知・著名性について
(1)申立人の提出した証拠(各項の括弧内に掲記)によれば、以下の事実を認めることができる。
ア 申立人は、2000年に設立された米国インディアナ州認可の非営利教育機関であり、アジアで申立人の理念に賛同する大学(以下「派遣大学」という。)に在籍する学生に対して、北米、ヨーロッパ、オセアニアで申立人の理念に賛同する大学(以下「留学先大学」という。)の協力の下、「Administration of educational study abroad programs.」に関する役務(以下「申立人役務」という。)を行っている(甲4、甲19)。
イ 申立人の事務局は、本部がアメリカにある他、北京、上海、広州、日本及び韓国の4か国計6か所にあり(甲18)、留学先大学は、米国、カナダ、イギリス、アイルランド、オーストラリア、ニュージーランド、フランス、ドイツ及びスペインの計50大学であり、派遣大学は、日本、中国及び韓国の計117大学である(甲19)。
ウ 2007年から2017年にかけて、申立人役務に参加した学生は、合わせて約9,580名であり、学生の出身国・地域は、日本、ブルネイ、中国、香港、カザフスタン、韓国、マカオ、シンガポール及び台湾の9か国・地域である(甲20)。
エ 2015年から2017年にかけて、申立人の日本事務局は、大学や申立人の日本事務局新宿オフィスにおいて、申立人役務の学生向けセミナー・イベント・フェアを338回開催し、参加人数は7,132名であった(甲22)。
オ 2006年以降、申立人の日本事務局、韓国事務局及び中国事務局は、20回にわたり、インターナショナルアドバイザリカウンシル会議及びシンポジウムを開催(申立人の日本事務局では、2013年以降5回開催)し、延べ168名の大学職員等が参加した(甲23)。
カ 2007年以降、申立人は、米国及びカナダで国際レセプションを10回開催し、また、2008年以降、申立人は、派遣大学の留学事務管理者、教職員のために留学先大学へ訪問する「Professional Development Programs」(専門職育成プログラム)を9回実施した(甲24)。各レセプションの招待状には、引用商標が使用されている(甲25?甲33)。
キ 2007年から2017年にかけて、申立人は、日本国内で留学サポート機関(海外進学センター)及び申立人の日本事務局を介して、申立人役務の広告・宣伝活動を行い、名刺を含めた各種媒体の印刷部数は、2007年から2017年までで、60万2,381部であり、その費用は、3,729万6,659円であった(甲34)。ポスター、パンフレット、チラシ、大学向けプログラム、ニュースレター、手引き、リーフレットなどの広告・宣伝媒体には、引用商標が使用されている(甲35?甲102、甲104?甲110、甲114?甲120、甲124?甲130)。
ク 2011年から2017年、申立人は、米国において、ニュースレターを毎年200部、計1,400部発注し、留学先大学及び派遣大学へ配布してきた。ニュースレターの印刷費用は、毎年270ドル(およそ3万円)計1,890ドル(およそ21万円)であった(甲131)。また、中国及び韓国においても、パンフレット、レポート等の媒体を利用して申立人役務の広告・宣伝活動を行ってきた。これらのニュースレター、パンフレット、レポートなどの広告・宣伝媒体には、引用商標が使用されている(甲132?甲143)。
ケ 申立人以外のウェブサイトの記事等においても引用商標の記載がある(甲144、甲145、甲148、甲152、甲154、甲155、甲157?甲159、甲162、甲163、甲165?甲177、甲179?甲198、甲200、甲201、甲206)。これらのうち、甲第162号証、甲第163号証、甲第166号証、甲第168号証、甲第170号証、甲第181号証?甲第185号証、甲第188号証、甲第189号証は、国内大学のウェブサイトにおいて、申立人役務に関する記事が掲載されているものであるが、その他の甲号証は、外国語の証拠であるにもかかわらず訳文の提出がないため、その詳細な内容は不明である。
なお、甲第21号証は、2013年から2017年にかけて、学生から申立人の日本事務局が受けた問合せの数が4,941回であることを示しているリストであるが、当該リストには未完成データとの記載があることから、この証拠は採用することができない。
(2)上記(1)によれば、申立人は、派遣大学に在籍する学生に対して、留学先大学の協力の下、申立人役務を行っており、日本国内で、申立人の日本事務局等を介して、申立人役務の広告・宣伝活動を行い、ポスター、パンフレット、チラシ、手引き等の広告・宣伝媒体を作成し、配布してきており、また、海外でも、ニュースレター等を作成し、その印刷物を配布してきていることがうかがえるところ、それらの広告・宣伝媒体においては、申立人役務を表示するものとして引用商標を使用していることが認められる。
しかし、我が国及び外国における引用商標の周知・著名性を量的に判断し得る留学先大学数及び派遣大学数(甲18、甲19)、申立人役務に参加した学生数及び出身国・地域数(甲20)、学生向けセミナー・イベント・フェアの開催回数及び参加人数(甲22)、国際的な会議・シンポジウム等の開催回数及び参加人数(甲23、甲24)、並びにポスター、パンフレット、チラシ、手引き、ニュースレター等の広告・宣伝媒体の数量、印刷代等(甲34、甲131)は、いずれも申立人の内部資料のみであって、その記載内容を客観的に立証する資料等は何ら提出されていないし、海外留学市場における申立人のシェア等も確認することができない。
また、仮に、申立人が主張する上記各数値や印刷代等の記載が事実であるとしても、かかる数値や金額が引用商標の周知・著名性を基礎付けるほど多数、多量、多額であると認めるに足る証左は見いだせない。
以上を総合勘案すると、引用商標は、本件商標の登録出願日ないし登録査定日はもとより現在においても、申立人の業務に係る役務(申立人役務)を表示するものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されていたものということはできない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は、上記第1のとおり、「日本スタディ・アブロード・ファンデーション」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成に係る各文字は、同じ書体、同じ大きさで一連に表されており、外観上一体として把握し得るものである。また、その構成文字全体より生ずる「ニッポンスタディアブロードファンデーション」の称呼は、多少冗長であるとしても、無理なく一連に称呼し得るものである。
そして、本件商標は、「日本」の文字、「留学」を意味する「スタディ・アブロード」の文字及び「財団(法人)」を意味する「ファンデーション」の文字を結合したと理解されるものであって、これら各文字間には軽重の差は見いだせない。
また、その指定役務との関係からみても、構成各文字は、自他役務の識別標識としての機能を有しないか、又は、あるとしても極めて弱いものということができるから、識別力の点からも軽重の差はなく、いずれかの文字部分のみに印象付けられることはないというべきである。
してみると、本件商標は、構成全体の外観上の一体性が極めて強く、かつ、いずれかの文字部分が役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものとはいえないから、その構成文字全体に相応した、「ニッポンスタディアブロードファンデーション」の一連の称呼のみを生ずるものであり、「日本海外留学財団」の観念が生ずるものである。
なお、申立人は、本件商標を構成する、漢字の「日本」の部分と片仮名の「スタディ・アブロード・ファンデーション」を区別して観察することができることから、「日本」の部分を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分に結合しているものではない旨主張する。
しかしながら、本件商標の構成に係る各文字は、上記のとおり、同じ書体、同じ大きさで一連に表されており、外観上一体として把握し得るものである。また、その構成文字全体より生ずる「ニッポンスタディアブロードファンデーション」の称呼は、多少冗長であるとしても、無理なく一連に称呼し得るものである。そして、指定役務との関係からみても、いずれかの文字部分のみに印象付けられるものではなく、本願商標は、構成全体を一体のものとしてみるのが自然である。
したがって、申立人の主張は、採用することができない。
また、申立人は、「THE STUDY ABROAD FOUNDATION」が著名であることから、本件商標は、その発音を片仮名で表記した「スタディ・アブロード・ファンデーション」の部分が分離して観察される旨主張する。
しかしながら、上記1のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る役務(申立人役務)を表示するものとして、我が国又は外国における需要者の間に広く認識されていたものということはできないものである。
したがって、申立人の主張は、その前提を欠くものであり、失当である。
(2)引用商標
引用商標は、上記第2のとおり、「THE STUDY ABROAD FOUNDATION」の欧文字を横書きしてなるものであり、該文字に相応して「ザスタディアブロードファンデーション」の称呼を生じ、「(固有名詞としての)海外留学財団」の観念が生ずるものである。
(3)本件商標と引用商標との類否
ア 外観について
本件商標は、上記(1)のとおり、「日本スタディ・アブロード・ファンデーション」の文字を標準文字で表してなるのに対して、引用商標は、上記(2)のとおり、「THE STUDY ABROAD FOUNDATION」の文字を横書きしてなるものである。
したがって、本件商標と引用商標は、外観において明らかに相違するものであるから、外観上類似するものではない。
イ 称呼について
本件商標より生じる「ニッポンスタディアブロードファンデーション」の称呼と引用商標より生じる「ザスタディーアブロードファンデーション」の称呼とは、語頭における「ニッポン」と「ザ」の音の差、構成音数の差により明らかに聴別し得る差異を有するものである。
したがって、本件商標と引用商標は、称呼上類似するものではない。
ウ 観念について
本件商標より生じる「日本海外留学財団」の観念と引用商標より生じる「(固有名詞としての)海外留学財団」とは、それぞれの観念上の印象も明らかに相違するものであるから、観念上類似するものではない。
エ 以上によると、本件商標と引用商標は、外観、称呼及び観念のいずれの点についても、互いに紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
(4)本件商標及び引用商標の指定役務の類否
申立人は、「本件商標と引用商標の役務は、大学などの留学事務担当の職員や留学に関心のある学生であり、需要者の範囲が一致し、また、引用商標の役務は、本件商標の留学、国際交流及び英語能力試験に関する役務とは、業種が同じであることからしても、本件商標の役務に同一又は類似の商標を使用するときは、同一営業主の提供にかかる役務と誤認されるおそれがある」旨主張する。
しかしながら、申立人は、上記主張をするのみであって、その主張を客観的に立証する資料は何ら提出していない。また、役務の類否については、上記の需要者の範囲が一致するかどうか、業種が同じかどうか、の他にも、提供の手段、目的又は場所が一致するかどうか、提供に関連する物品が一致するかどうか、当該役務に関する業務や事業者を規制する法律が同じかどうか、同一の事業者が提供するものであるかどうか等についてを総合的に考慮して判断すべきであるところ、申立人は、これらについては何らの主張・立証もしていない。
したがって、申立人の主張は、その前提を欠くものであり、失当である。
(5)小括
以上によれば、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する商標ということはできない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
引用商標が、本件商標の登録出願日及び登録査定日の時点において、申立人の業務に係る役務(申立人役務)を表示するものとして、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたものということはできないことは、上記1のとおりである。
また、上記2のとおり、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点についても互いに紛れるおそれのない非類似の商標である。
してみると、本件商標に接する需要者が、引用商標又は申立人若しくはそのグループ企業を想起・連想することはなく、したがって、本件商標は、これを本件登録異議の申立てに係る指定役務について使用しても、該役務が申立人又はこれと組織的・経済的な関係を有する者の業務に係る役務であるかのように、役務の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
以上によれば、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する商標ということはできない。
4 商標法第4条第1項第19号該当性について
上記1のとおり、引用商標は、本件商標の登録出願日及び登録査定日の時点において、申立人の業務に係る役務(申立人役務)を表示するものとして、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたということはできない。
また、引用商標が、本件商標の登録出願日及び登録査定日の時点において、申立人の業務に係る役務(申立人役務)を表示するものとして、外国の取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認めるに足る証拠の提出もない。
さらに、上記2のとおり、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点についても互いに紛れるおそれのない非類似の商標である。
してみると、本件商標権者は、引用商標の著名性に便乗して不正の利益を得るなど、不正の目的をもって本件商標を登録出願したということはできない。その他、本件商標が不正の目的をもって使用する商標であると認めるに足る証拠の提出はない。
以上によれば、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する商標ということはできない。
5 商標法第4条第1項第8号該当性について
(1)商標法第4条第1項第8号が、他人の肖像又は他人の氏名、名称、著名な略称等を含む商標は、その他人の承諾を得ているものを除き、商標登録を受けることができないと規定した趣旨は、人(法人等の団体を含む。以下同じ。)の肖像、氏名、名称等に対する人格的利益を保護することにあると解される。すなわち、人は、自らの承諾なしにその氏名、名称等を商標に使われることがない利益を保護することにあるところ(最高裁平成17年7月22日第二小法廷判決・裁判集民事217号595頁)、問題となる商標に他人の略称等が存在すると客観的に把握できず、当該他人を想起・連想できないのであれば、他人の人格的利益が毀損されるおそれはないと考えられる。そうすると、他人の氏名や略称等を「含む」商標に該当するかどうかを判断するに当たっては、単に物理的に「含む」状態をもって足りるとするのではなく、その部分が他人の略称等として客観的に把握され、当該他人を想起・連想させるものであることを要すると解すべきである(知財高裁平成21年(行ケ)第10074号、同21年10月20日判決参照)。
(2)上記(1)について検討すると、本件商標は、上記第1のとおり、「日本スタディ・アブロード・ファンデーション」の文字を標準文字で表してなるところ、上記2(1)認定のとおり、本件商標の構成に係る各文字は、同じ書体、同じ大きさで一連に表されており、外観上一体として把握し得るものである。また、その構成文字全体より生ずる「ニッポンスタディアブロードファンデーション」の称呼は、多少冗長であるとしても、無理なく一連に称呼し得るものである。そして、指定役務との関係からみても、いずれかの文字部分のみに印象付けられるものではなく、本願商標は、構成全体を一体のものとしてみるのが自然である。
(3)そうすると、「スタディアブロードファンデーション」の表示が申立人の名称であるとしても、本件商標は、その構成中の「スタディアブロードファンデーション」の文字部分のみが独立して把握、認識されるものではないから、これに接する需要者をして、申立人を想起、連想させることはないというべきである。
(4)以上によれば、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する商標ということはできない。
6 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号、同項第19号及び同項第8号のいずれにも違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2017-09-05 
出願番号 商願2016-74352(T2016-74352) 
審決分類 T 1 651・ 263- Y (W3541)
T 1 651・ 262- Y (W3541)
T 1 651・ 23- Y (W3541)
T 1 651・ 261- Y (W3541)
T 1 651・ 271- Y (W3541)
T 1 651・ 222- Y (W3541)
最終処分 維持  
前審関与審査官 高橋 厚子 
特許庁審判長 青木 博文
特許庁審判官 半田 正人
豊泉 弘貴
登録日 2016-12-16 
登録番号 商標登録第5906374号(T5906374) 
権利者 株式会社日本スタディ・アブロード・ファンデーション
商標の称呼 ニッポンスタディアブロードファンデーション、ニホンスタディアブロードファンデーション、スタディアブロードファンデーション、スタディアブロード、スタディ、アブロードファンデーション、アブロード、ファンデーション 
代理人 上村 喜永 
代理人 西村 竜平 
代理人 田島 壽 
代理人 青木 篤 
代理人 齊藤 真大 

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