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審決分類 審判 判定 その他 属さない(申立て不成立) W30
管理番号 1331502 
判定請求番号 判定2017-600005 
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標判定公報 
発行日 2017-09-29 
種別 判定 
判定請求日 2017-01-16 
確定日 2017-08-03 
事件の表示 上記当事者間の登録第5899318号商標の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 商品「茶飲料」について使用するイ号標章は、登録第5899318号商標の商標権の効力の範囲に属しない。
理由 第1 本件商標
本件登録第5899318号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成28年5月20日に登録出願、第30類「茶,茶飲料」を指定商品として、同年11月25日に設定登録されたものであり、その商標権は、現に有効に存続しているものである。

第2 イ号標章
被請求人が商品「茶飲料」について使用する標章(以下「イ号標章」という。)は、別掲2のとおりの構成からなるものである。

第3 請求人の主張
請求人は、被請求人が商品「茶飲料」について使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属する、との判定を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第4号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
(1)請求の必要性
ア 請求人は、昭和41年(1966年)に静岡市内に設立し、同44年(1969年)に現商号の「株式会社伊藤園」へ変更した会社であり(甲2の1)、茶製品、野菜飲料やコーヒー飲料等を中心として取り扱う総合飲料メーカーである(甲2の2)。
請求人は、昭和60年(1985年)に、我が国最初に缶入り緑茶の「お?いお茶」の製造、販売を開始し、これが現在でも長く親しまれているロングセラー商品となっていることもあって、とりわけ緑茶及び緑茶飲料について高い認識度を獲得している。
イ 請求人は、「お?いお茶」シリーズの新商品として、平成27年(2015年)10月26日から国産厳選の「玉露」を100%使用し、旨みを丹念に引き出すこだわりの製法で渋みと苦味を抑え、玉露特有の「旨み」を凝縮した味わいを実現した「瓶 お?いお茶 玉露」を特別限定品として発売開始した(甲3の1及び甲3の2。以下「瓶 お?いお茶 玉露」を「請求人商品」という。)。請求人商品は、日本茶本来の旨みと贅の極みの味わいをじっくり愉しめる逸品であり、贈答品としても届けることができる完全受注生産の高付加価値商品として市場に送り出したものであって、高級感あふれる深みのある緑系統の色彩とアクセントとなる赤系統のワンポイント図形を商品パッケージに採用したものである。請求人商品は、販売開始以来、各種のメディアでも注目され、全国紙、業界紙、テレビ番組等でたびたび取り上げられている(甲3の3)。
ウ 請求人は、請求人商品の販売と商標による保護を強化するため、平成28年(2016年)5月20日付けで本件商標を出願し、同年11月25日付けで商標権の設定登録を受けた(甲1)。
このような状況の下、被請求人のグループ会社である「キリンビバレッジ株式会社」(以下「キリンビバレッジ」という。)は、平成28年(2016年)3月22日から茶飲料「キリン生茶」のリニューアル販売を開始した(甲4の1)。かかるリニューアルにおいては、商品パッケージが変更されており、変更後の商品パッケージであるイ号標章は、本件商標と同一の深みのある緑系統の色彩とアクセントとなる赤系統のワンポイント図形から構成されており、商標としての類似性が高いものであるのみならず、同商品は、リニューアル後も売上実績を伸ばしているとのニュースもリリースされていることから(甲4の2ないし甲4の7)、市場において、請求人商品と出所の混同を生じるおそれが高いといわざるを得ないものである。
そこで、請求人は、イ号標章が本件商標に類似するものであり、本件商標に係る商標権の効力範囲に属することを確認するために本件判定を請求する次第である。
(2)イ号標章の説明
イ号標章は、瓶型容器を使用した茶飲料の商品パッケージであるところ、緑系統の色彩の背景図形に赤系統のワンポイント図形を配置させたものである。背景図形は、瓶胴部の縦横が略2対1の比率となっており、ワンポイント図形は、背景図形の右端から約4分の1、下端から約5分の2の位置に表されており、そのワンポイント図形には、茶飲料であることを表す「緑茶」の漢字が抜き文字で表されている。
また、イ号標章において、背景図形は、本件商標と同様の深みのある緑系統の色彩が付されており、アクセントとなるワンポイント図形にも、本件商標と同様の赤系統の色彩が付されている。
(3)イ号標章が本件商標の商標権の効力の範囲に属するとの説明
上記(2)で述べた構成からなるイ号標章に対し、本件商標は、緑系統の色彩を付した縦長矩形図形に赤系統の色彩を付した矩形のワンポイント図形を配置させたものであり、縦長矩形図形は、縦横が略2対1の比率となっており、ワンポイント図形は、縦長矩形図形の右端から約4分の1、下端から約5分の2の位置に表されている。
かかる構成にあって、イ号標章と本件商標とは、背景図形(縦長矩形図形)及びワンポイント図形の位置、大きさ、色彩が同一又は類似するものであり、商標としての基本的着想ないし基本的構成において軌を一にするものであるのみならず、いずれも深みのある緑系統の色彩の背景図形の中に赤系統の色彩を付したワンポイント図形を配した構図が、強く印象され、記憶され得るというべきものであるから、商標として互いに類似するものである。
また、イ号標章に係る被請求人の商品は、茶飲料であり、本件商標に係る指定商品と同一であることは明らかである。
さらに、イ号標章は、その背景図形及びワンポイント図形が看る者の注意をひきやすい外観構成を呈し、強く印象され、記憶され得るものであることから、出所識別標識として機能し得るものであるため、これを茶飲料について使用する行為は、商標的使用(商標法第2条第3項第1号)に該当する。
よって、イ号標章は、本件商標に係る商標権の効力の範囲に属するものである。
(4)むすび
以上によれば、被請求人が茶飲料について使用するイ号標章は、商標として、本件商標と同一又は類似するものであり、本件商標の指定商品と同一の商品について使用するものであって、商標的使用に該当するものである。
よって、被請求人が茶飲料について使用するイ号標章は、本件商標に係る商標権の効力の範囲に属するものである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の判定を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第13号証を提出した。
1 答弁の理由
(1)正当な理由のない判定請求であること
ア 請求人商品に係る販売の事実と本件商標との間に具体的関連性がないこと
請求人は、「瓶 お?いお茶 玉露」の商品名からなる請求人商品(甲3の1)のパッケージに「深みのある緑系統の色彩とアクセントとなる赤系統のワンポイント図形」が採用されていることを述べた上で、「請求人商品の販売と商標による保護を強化するため」、「本件商標につき商標権の設定登録を受けた」ことを主張する。
しかしながら、請求人商品に係る販売の事実と本件商標との間にどのような具体的関連性があるのか全く把握できず、上記請求人による主張は、全く理解できないものといわざるを得ない。
そもそも、登録商標の範囲は、願書の記載に基づいて定めなければならないものであるところ(商標法第27条第1項)、本件商標は、願書に記載した商標のとおり、縦横比を略2対1とする大きな縦長長方形図形の内側中央部やや右下の位置に、縦横比を略3対2とする小さな縦長長方形図形が配された構成の図形商標であり、大きい縦長長方形図形は、濃淡のある緑色からなり、小さい縦長長方形図形は、単色の赤色からなる。
これに対して、請求人商品は、ペットボトル容器の胴部の正面のみにパッケージが付されているのではなく、ペットボトル容器の正面、左側面、右側面、背面にわたり、周方向にパッケージが付されているものであり(甲3の1)、物理的にパッケージの正面の一部のみを縦長長方形状に切り取ることはできないものである。仮に、パッケージの正面のみを観察しても、請求人商品に本件商標及びこれと同一性が認められる商標が含まれていないことは、一見して明白である(請求人が主張する「赤系統のワンポイント図形」の位置のみを対比しても、左右異なる位置に配されていることは、誰もが理解できる。)。
また、請求人は、請求人商品のほかに、「伊藤園 お?いお茶」シリーズの商品を販売しているところ(甲2、甲3の1、乙1)、「伊藤園 お?いお茶」シリーズの商品のパッケージには、請求人を表示する「伊藤園」及び商品名を表示する「お?いお茶」など、商品の出所識別標識が必ず付されており、請求人が主張する「深みのある緑系統の色彩とアクセントとなる赤系統のワンポイント図形」が、独立して使用されているわけではない。
しかも、「伊藤園 お?いお茶」シリーズの商品には、様々な種類のパッケージが採用されており、「深みのある緑系統の色彩とアクセントとなる赤系統のワンポイント図形」自体も、具体的な色、形状、配置など様々であり、本件商標と同じ位置に「赤系統のワンポイント図形」がパッケージに表現されている商品は存在しない。
そうすると、請求人が、請求人商品の販売に当たり、独立して「深みのある緑系統の色彩とアクセントとなる赤系統のワンポイント図形」だけを商品の出所識別標識として使用している事実は確認できず、本件商標が、商品の出所識別標識として使用されてきたという事実も確認できないことは明らかである。
そして、取引者、需要者としても、請求人商品を「伊藤園」及び「お?いお茶」などの商品の出所識別標識に着目し、「伊藤園 お?いお茶」シリーズの商品の一つであると認識し、取引するのが自然であり、独立して「深みのある緑系統の色彩とアクセントとなる赤系統のワンポイント図形」だけを商品の出所識別標識として着目し、取引する場合は皆無である。ましてや、請求人商品に接する取引者、需要者が、パッケージに使用されてもいない本件商標を認識することはあり得ない。
したがって、請求人商品に係る販売の事実と本件商標との間にどのような具体的関連性があるのか全く把握できないことは明白であり、「請求人商品の販売と商標による保護を強化するため」、「本件商標につき商標権の設定登録を受けた」との請求人の主張は、全く理解できないものであり、請求人商品に係る販売の事実が、イ号標章につき、本件商標に係る商標権の効力範囲の属否を確認する本判定請求を正当化させる理由にもなり得ない。
イ 本判定請求に正当な理由がないこと
請求人は、請求人商品が平成27年(2015年)10月26日から販売されたものであること(甲3の3)及び請求人商品につき「販売開始以来、各種メディアで注目され、全国紙、業界紙、テレビ番組等でたびたび取り上げられている」こと(甲3の3)を主張し、その上で、平成28年(2016年)3月22日にリニューアルされた被請求人の商品(キリン 生茶)のパッケージであるイ号標章につき、「本件商標と同一の深みのある緑系統の色彩とアクセントとなる赤系統のワンポイント図形から構成されており、商標としての類似性が高いもの」であり、イ号標章が使用された被請求人の商品(キリン 生茶)につき、「リニューアル後も売上実績を伸ばしているニュースもリリースされていることから(甲4の2ないし甲4の7)、市場において請求人商品と出所の混同を生じるおそれが高い」と主張する。
かかる請求人の主張は、平成28年(2016年)3月22日にリニューアルされた被請求人の商品(キリン 生茶)のパッケージが、あたかも平成27年(2015年)10月26日から販売された請求人商品のパッケージを模倣したものであるかのような印象を与えることにより、本判定請求に正当な理由があることを強調したものと推測される。
上記請求人の主張について、イ号標章の特定を誤ったものであり、イ号標章と本件商標とが非類似であることは後述するが、そもそも請求人商品に係る販売の事実と本件商標との間にどのような具体的関連性があるのか全く把握できないことからすると、請求人商品と被請求人商品の販売日の前後は、本件商標に係る商標権の効力範囲の属否について判定を求める上で、全く無関係な事実の指摘にとどまるものである。
(2)イ号標章の特定の誤り
請求人は、「イ号標章は、瓶型容器を使用した茶飲料の商品パッケージであるところ、緑系統の色彩の背景図形に赤系統のワンポイント図形を配置させたものである」、「背景図形は、瓶胴部の縦横が略2対1の比率となっており、ワンポイント図形は、背景図形の右端から約4分の1、下端から約5分の2の位置に表されている」、「ワンポイント図形には、茶飲料であることを表す『緑茶』の漢字が抜き文字で表されている」、「背景図形は、本件商標と同様の深みのある緑系統の色彩が付されており、アクセントとなるワンポイント図形にも、本件商標と同様の赤系統の色彩が付されている」と主張する。
しかしながら、イ号標章は、緑色のパッケージが付された瓶型のペットボトル容器を使用した茶飲料の商品パッケージであるところ(乙2)、ペットボトル容器の胴部正面のみにパッケージが付されているのではなく、ペットボトル容器の正面、左側面、右側面、背面にわたり、周方向にパッケージが付されているものであるから、パッケージの正面(以下、ペットボトル容器の胴部正面のパッケージに現れた標章を「イ号正面標章」という。)の一部のみを縦長長方形状に切り取り、その部分のみを「瓶胴部の縦横が略2対1の比率」とする「背景図形」と特定することは、誤った特定方法である。
また、イ号正面標章のみを観察してみても、図形と色彩の結合だけで構成された商標でないことは、一見して容易に把握できる。
すなわち、イ号正面標章の内側中央部には、白色の「生茶」の文字が大きく縦書きされ、該文字の右下には、緑色の「緑茶」の文字を内包した赤色の略縦長楕円形図形が配され、それらの文字及び図形の背後には、「RGT」と茶葉をモチーフとする図形を内包する濃い緑色の円形図形が配されている。
また、イ号正面標章の内側下方には、白色の「Rich Green Tea」の文字が横書きされ、該文字の下部には、白色の「茶葉のいいところ“まるごと”」の文字を内包した濃い緑色の帯状図形が配されており、該図形の下部には、濃い緑色の「KIRIN」の文字が横書きされている。
さらに、イ号正面標章の内側左やや下方には、濃い緑色の「まるごと搾り生茶葉抽出物 加熱処理」の文字が縦書きされている。
このように、イ号標章は、イ号正面標章のみを観察してみても、図形と色彩の結合だけで構成された商標ではなく、「生茶」の文字、「KIRIN」の文字、「緑茶」の文字を内包した略縦長楕円形図形、「RGT」と茶葉をモチーフとした図形を内包した円形図形、「Rich Green Tea」の文字、「茶葉のいいところ“まるごと”」の文字を内用した帯状図形、「まるごと搾り生茶葉抽出物 加熱処理」の文字が、所定の位置に配されてなる結合商標である。
したがって、請求人が、本件商標とイ号標章との類否を判断する上で、イ号標章を「緑系統の色彩の背景図形に、赤系統の色彩のワンポイント図形を配置させたもの」とだけ特定し、その他の構成要素を無視した主張を展開しているのであれば、該主張は、商標の類否判断の前提となるイ号標章の特定を誤ったものといわざるを得ない。
(3)イ号標章と本件商標との類否判断の誤り
ア 請求人の主張
請求人は、イ号標章につき、「本件商標と同一の深みのある緑系統の色彩とアクセントとなる赤系統のワンポイント図形から構成されており、商標としての類似性が高いものである」と主張し、イ号標章が使用された商品につき、「リニューアル後も売上実績を伸ばしているニュースもリリースされていることから(甲4の2ないし甲4の7)、市場において請求人商品と出所の混同を生じるおそれが高い」と主張する。
また、請求人は、「イ号標章と本件商標とは、背景図形(縦長矩形図形)及びワンポイント図形の位置、大きさ、色彩が同一又は類似するものであり、商標としての基本的着想ないし基本的構成において軌を一にするものであるのみならず、いずれも深みのある緑系統の色彩の背景図形の中に赤系統の色彩を付したワンポイント図形を配した構図が、強く印象され、記憶され得るというべきものであるから、商標として互いに類似するものである」と主張する。
類否判断におけるイ号標章の特定の誤り
イ号標章は、前述のとおり、緑色のパッケージが付された瓶型のペットボトル容器を使用した茶飲料の商品パッケージであるところ(乙2)、ペットボトル容器の胴部正面のみにパッケージが付されているのではなく、ペットボトル容器の正面、左側面、右側面、背面にわたり、周方向にパッケージが付されているものであるから、パッケージの正面の一部のみを縦長長方形状に切り取り、その部分のみを「背景図形」と特定し、本件商標との類否を検討している請求人の主張は、商標の類否判断の前提となるイ号標章の特定において誤ったものである。
ウ 本件商標とイ号正面標章との類否判断の誤り
仮に、イ号標章中のイ号正面標章を捉えて、本件商標との類否を検討しても、被請求人の商品(キリン 生茶)に接する取引者、需要者は、独立して「深みのある緑系統の色彩とアクセントとなる赤系統のワンポイント図形」だけを商品の出所識別標識として着目し、取引する場合は皆無であり、少なくとも、イ号正面標章中の「生茶」、「KIRIN」、「RGT」と茶葉をモチーフとする図形を内包した円形図形を商品の出所識別標識として着目し、取引するものであり、本件商標とイ号正面標章とは、外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すると、何ら商品の出所を誤認、混同するおそれが認められない非類似の商標であるから、請求人の主張は、商標の類否判断を誤ったものである。
(ア)色彩及びそれとの組合せについて
そもそも、商標の類否は、同一又は類似の商品又は役務に使用された商標が、その外観、称呼、観念等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して、その商品又は役務に係る取引の実情を踏まえつつ、全体として類似するかどうかを考察すべきものであり、複数の構成部分を組み合わせた結合商標についても、その構成部分全体を対比して類否を判断するのを原則とすべきものであって、結合商標の構成部分の一部を抽出し、この部分だけを他の商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、その部分が取引者、需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合や、それ以外の部分から商品又は役務の出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合などを除き、許されないと解するのが相当である(最高裁平成19年(行ヒ)第223号、同20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁参照)。
このような観点で、イ号正面標章中、パッケージ正面に表れた色彩及びそれとの組合せについて検討すると、パッケージの背景色が緑色であることや、「緑茶」の文字を内包した略縦長楕円形図形が赤色であること自体は、何ら商品の出所を表示し、自他商品を識別するための標識として認識されるものではない。
そして、商品のパッケージに使用される色彩は、様々な色彩を組み合わせたものを含め、多くの場合、それらの魅力向上等のために選択されるものであって、商品の出所を表示し、自他商品を識別するための標識として認識し得ないものである。
また、茶飲料を取り扱う業界においては、例えば、請求人商品以外にも、パッケージの背景色を緑色とし、赤色の図形をパッケージの一部に配する商品が存在することからすると(乙3ないし乙6)、少なくとも、茶飲料を取り扱う業界においては、パッケージの背景色を緑色とし、赤色の図形をパッケージの一部に配することは、ありふれた表現方法であり、イ号正面標章中、パッケージの背景色が緑色であることや、「緑茶」の文字を内包した略縦長楕円形図形が赤色であること自体が、独立して、商品の出所識別標識としての機能を発揮しているとは、到底いい難い。
(イ)「生茶」の文字部分について
イ号正面標章中、「生茶」の文字は、被請求人の子会社であるキリンビバレッジが販売をする生茶葉抽出物を使用した茶飲料の商品名(ブランド名称)として、平成12年(2000年)に採択されたものであり(乙7)、「生茶」ブランドの茶飲料は、その商品名(ブランド名称)から、みずみずしい生茶葉の生命力と透明感あふれる自然なあまみを連想、想起させることともあいまって、茶飲料を取り扱う業界において、長年の間、親しまれ、飲まれているロングセラー商品となっている。
また、著名人を起用したテレビコマーシャルを実施するなど、被請求人らによって、膨大な宣伝広告費用を投入した大規模かつ継続的な宣伝広告活動をした結果、茶飲料の商品名(ブランド名称)として広く認知されており、「生茶」の著名性の程度は、極めて高いものとなっている。
このように、イ号正面標章中の「生茶」の文字は、被請求人の子会社であるキリンビバレッジの業務に係る茶飲料を表示する出所識別標識として、取引者、需要者の間に広く認識されている著名ブランドになっている。そして、被請求人は、指定商品を「飲料用容器入りの茶飲料」とし、「生茶」の文字からなる商標につき、商標登録もしている(乙8)。
そうすると、ラベルの中央部に大きく白色で縦書きされた「生茶」の文字部分は、イ号標章が使用された商品に接する取引者、需要者に対し、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであるから、イ号正面標章中の「生茶」の文字部分から、商品の出所識別標識としての「ナマチャ」の称呼が生じ、「キリンビバレッジの商品(生茶)」の観念が生じる。
(ウ)「KIRIN」の文字部分について
イ号正面標章中、「KIRIN」の文字は、被請求人を含むキリングループの商品又は役務を示すものとして、取引者、需要者の間で周知、著名になっている。「KIRIN」の文字の周知著名性(識別力の顕著さ)は、指定商品「茶」を含む広範囲の指定商品及び指定役務について、「KIRIN」の文字からなる標章が防護標章登録されている事実から明らかである(乙9、乙10)。そして、被請求人は、指定商品を「茶」とし、「KIRIN」の文字からなる商標につき、商標登録もしている(乙11、乙12)。
このような「KIRIN」の文字の周知著名性からすれば、「KIRIN」の文字は、イ号標章が使用された商品に接する取引者、需要者に対し、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであるから、「KIRIN」の文字部分から、商品の出所識別標識としての「キリン」の称呼が生じ、「麒麟」の観念又は「キリングループの商品」の観念が生じる。
(エ)円形図形部分について
イ号正面標章中、「RGT」と茶葉をモチーフとする図形を内包した円形図形は、顕著に図形化されているため、これから商品の出所識別標識としての格別の称呼及び観念が生じることはないが、イ号標章が使用された商品に接する取引者、需要者がこれを商品の出所識別標識として認識し、理解し得る位置、大きさ、範囲で使用されているものといえる。そして、被請求人は、指定商品を「茶」とし、「RGT」と茶葉をモチーフとする図形を内包した円形図形につき、商標登録もしている(乙13)。
(オ)小括
上記(ア)ないし(エ)において述べたことを踏まえて、仮に、本件商標とイ号正面標章との類否を検討すると、イ号正面標章中、パッケージの背景色が緑色であること自体や、「緑茶」の文字を内包した略縦長楕円形図形が赤色であること自体は、何ら商品の出所を表示し、自他商品を識別するための標識として認識されるものではないから、この点だけを本件商標と比較して商標そのものの類否を判断することは、許されないと解するのが相当である。
これに対し、イ号正面標章中、少なくとも、「生茶」の文字及び「KIRIN」の文字は、これに接する取引者、需要者に商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与える部分であり、「RGT」と茶葉をモチーフとする図形を内包した円形図形についても、商品の出所識別標識としての機能を発揮し得る部分であるから、本件商標とイ号正面標章との類否を判断するに当たって、決して無視できない文字及び図形であることは明らかである。
そうすると、本件商標とイ号正面標章との類否について全体的に考察すると、両者は、少なくとも、商品の出所識別標識としての機能を発揮し得る「生茶」の文字の有無、「KIRIN」の文字の有無及び「RGT」と茶葉をモチーフとする図形を内包した円形図形の有無という顕著な差異が認められ、その構成を全く異にするから、対比的観察においてはもちろん、異時別所におけるいわゆる離隔的観察においても全く相違するので、外観上、両者を混同するおそれはないものである。そして、パッケージラベルの背景色と、本件商標中、大きい縦長長方形図形の色彩のみを比較してみても、濃淡の有無により、外観上、十分区別し得るものである。
また、本件商標から格別の称呼及び観念が生じることはないのに対し、イ号正面標章からは、少なくとも、「ナマチャ」又は「キリン」の称呼が生じ、「キリンビバレッジの商品(生茶)」、「麒麟」又は「キリングループの商品」の観念が生じることから、両者が、称呼上又は観念上、相紛れるおそれも全くない。
さらに、イ号正面標章中の「生茶」の文字及び「KIRIN」の文字は、被請求人の子会社であるキリンビバレッジ又はキリングループの商品を表示するものとして、広く認識されている周知、著名なものであるから、イ号標章が使用された茶飲料に接する取引者、需要者は、該商品がキリングループの商品(キリンビバレッジ)と認識するのが自然であり、取引上、両者の間に商品の出所を誤認、混同するおそれがあることを認めるに足りる取引の実情、その他の実情も一切存在しない。
請求人は、イ号標章が使用された商品につき、「リニューアル後も売上実績を伸ばしているニュースもリリースされていることから(甲4の2ないし甲4の7)、市場において請求人商品と出所の混同を生じるおそれが高い」と主張するが、「リニューアル後も売上実績を伸ばしているニュースもリリースされている」という事実は、むしろ、イ号標章が使用された被請求人の商品がキリングループの商品(キリンビバレッジ)として理解され、取引されていることを示す事実にほかならない。
したがって、本件商標とイ号正面標章とは、外観、観念、称呼等によって取引者、需要者に与える印象、記憶、連想等を総合して全体的に考察すると、何ら商品の出所を誤認混同するおそれが認められない非類似の商標である。
よって、本件商標とイ号標章とが類似するとする請求人の主張は、商標の類否判断を誤ったものであり、当を失するものである。
(4)商標的使用に係る主張の誤り
請求人は、イ号標章につき、「背景図形及びワンポイント図形が、看る者の注意をひきやすい外観構成を呈し、強く印象され、記憶され得るものであることから、出所識別標識として機能し得るものであるため、これを茶飲料について使用する行為は、商標的使用(商標法第2条第3項第1号)に該当する」と主張する。
しかしながら、前述のとおり、イ号標章は、緑色のパッケージが付された瓶型のペットボトル容器を使用した茶飲料の商品パッケージであるところ、イ号標章中、パッケージの背景色が緑色であることや、「緑茶」の文字を内包した略縦長楕円形図形が赤色であること自体は、何ら商品の出所を表示し、自他商品を識別するための標識として認識されるものではないし、このような色彩や色彩との組合せは、少なくとも、茶飲料を取り扱う業界においては、ありふれた表現方法である。
したがって、イ号標章中、パッケージの背景色が緑色であることや、「緑茶」の文字を内包した略縦長楕円形図形が赤色であることは、ありふれた表現方法であり、「看る者の注意をひきやすい外観構成」ではなく、「強く印象され、記憶され得るもの」でもないから、これを茶飲料に使用する行為は、商標的使用(商標法第2条第3項第1号)に該当するものではない。
よって、請求人の上記主張は、理由がなく、誤ったものである。
2 結語
以上のとおり、請求人の主張は、いずれも失当であり、被請求人が商品「茶飲料」に使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属しない。

第5 当審の判断
1 本件商標について
本件商標は、別掲1のとおり、縦横比を約2対1とする緑色の縦長長方形と、その内側中央の右斜め下の位置に縦横比を約3対2とする赤色の小さな縦長長方形を配してなる図形であって、該緑色の縦長長方形には、凝視したときに横縞のように視認される濃淡が付けられているところ、その構成態様からは、特定の称呼及び観念を生じるものとは認められない。
2 イ号標章について
イ号標章は、別掲2のとおり、濃緑の栓部を有するペットボトル様の容器であって、その胴部に付された緑色のラベル正面には、その中央部に縦書きで大書された白色の「生茶」の文字及び特定の事物を表したものとは直ちに認識されることのない濃緑細線で表された図形が配されており、また、該「生茶」の文字の右斜め下の位置に緑色の「緑茶」の文字を内包する赤色の小さな略楕円形が配され、さらに、それらの下方には、白色の「Rich Green Tea」の文字及び「茶葉のいいところ“まるごと”」の文字(後者については、濃緑の帯状図形上に表されている。)並びに濃緑の「KIRIN」の文字が配されている。
そして、イ号標章は、商品「茶飲料」について使用するものであるところ、上記緑色のラベル正面にある文字及び図形のうち、緑色の「緑茶」の文字を内包する赤色の小さな略楕円形、白色の「Rich Green Tea」の文字及び「茶葉のいいところ“まるごと”」の文字は、その商品との関係においては、いずれも自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものか、又はその機能が極めて弱いものとみるのが相当である。
また、商品「茶飲料」、とりわけ「緑茶飲料」を取り扱う業界においては、商品容器に付すラベルの地色を緑色とし、かつ、そのラベル上に赤色の小さな図形を配することが、しばしば見受けられるところであり、このことは、被請求人の提出した乙第3号証ないし乙第6号証によっても裏付けられる。
そうすると、イ号標章は、商品「茶飲料」のペットボトル様の容器であって、その胴部に、各種の文字や図形が配された地色を緑色とするラベルが付されているものであり、その構成中、該ラベル正面にある縦書きで大書された白色の「生茶」の文字及び濃緑細線で表された図形とその下方に配された濃緑の「KIRIN」の文字が、取引者、需要者に対し、強く支配的な印象を与え、自他商品の識別標識として認識されるといえ、緑色のラベル正面及びそのラベル正面にある緑色の「緑茶」の文字を内包する赤色の小さな略楕円形部分のみが分離、抽出されて取引者、需要者の注意をひくことはないというべきである。
してみれば、イ号標章は、その構成中の「生茶」の文字から「ナマチャ」の称呼を生じ、「KIRIN」の文字から「キリン」の称呼を生じるものであり、また、「KIRIN」の文字から「キリン(ウシ目キリン科の哺乳類)」の観念を生じるものである。
3 本件商標とイ号標章との類否について
本件商標は、上記1のとおり、緑色の縦長長方形と、その内側中央の右斜め下の位置に赤色の小さな縦長長方形を配してなる図形であって、該緑色の縦長長方形には、凝視したときに横縞のように視認される濃淡が付けられているものであり、特定の称呼及び観念を生じないものである。
他方、イ号標章は、上記2のとおり、商品「茶飲料」のペットボトル様の容器であって、その胴部に、各種の文字や図形が配された地色を緑色とするラベルが付されているものであり、そのラベル正面にある「生茶」の文字から「ナマチャ」の称呼を生じ、「KIRIN」の文字から「キリン」の称呼を生じるものであり、また、「KIRIN」の文字から「キリン(ウシ目キリン科の哺乳類)」の観念を生じるものである。
そこで、本件商標とイ号標章とを比較すると、前者は、図形からなるものであるのに対し、後者は、商品容器からなるものであるから、その構成全体において、外観上、容易に区別し得るものであるし、また、本件商標とイ号標章の構成中の緑色のラベル正面とを比較しても、取引者、需要者に対して強く支配的な印象を与える「生茶」の文字や「KIRIN」の文字の有無などといった明らかな差異があるから、外観上、相紛れるおそれはない。
また、本件商標は、上記のとおり、特定の称呼及び観念を生じないものであるから、上記のとおりの称呼及び観念を生じるイ号標章と比較しても、称呼上及び観念上、相紛れるおそれはない。
してみれば、本件商標とイ号標章とは、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似のものというべきである。
4 請求人の主張について
請求人は、本件商標は、緑系統の色彩を付した縦長矩形図形に赤系統の色彩を付した矩形のワンポイント図形を配置させたものであるのに対し、イ号標章は、瓶型容器を使用した茶飲料の商品パッケージであって、緑系統の色彩の背景図形に赤系統のワンポイント図形を配置させたものであり、両者は、背景図形(縦長矩形図形)及びワンポイント図形の位置、大きさ、色彩が同一又は類似するものであり、商標としての基本的着想ないし基本的構成において軌を一にするものであるのみならず、いずれも深みのある緑系統の色彩の背景図形の中に赤系統の色彩を付したワンポイント図形を配した構図が、強く印象され、記憶され得るというべきものであるから、商標として互いに類似するものである旨主張する。
しかしながら、請求人がイ号標章について指摘する「緑系統の色彩の背景図形に赤系統のワンポイント図形を配置させたもの」とは、イ号標章の構成中、濃緑の栓部を有するペットボトル様の容器の胴部に付された緑色のラベル正面と、そのラベル正面にある文字及び図形のうち、緑色の「緑茶」の文字を内包する赤色の小さな略楕円形とを指すものと解されるところ、これらは、上記2において述べたとおり、イ号標章の使用に係る商品「茶飲料」及びその商品の取引の実情に鑑みれば、イ号標章の構成から独立して分離、抽出されて取引者、需要者の注意をひくことはないものである。
してみれば、イ号標章の構成から上記緑色のラベル正面と赤色の小さな楕円形のみを分離、抽出して本件商標とイ号標章とが類似するとする請求人の主張は、その前提において失当であり、採用することはできない。
5 むすび
以上のとおり、本件商標とイ号標章とは非類似のものであるから、イ号標章は、本件商標の効力の範囲に属しないものである。
よって、結論のとおり判定する。
別掲 (別掲)
1 本件商標(登録第5899318号商標)


2 イ号標章


(上記1及び2のいずれも、色彩については原本参照のこと。)
判定日 2017-07-26 
出願番号 商願2016-54726(T2016-54726) 
審決分類 T 1 2・ 9- ZB (W30)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 大島 康浩 
特許庁審判長 青木 博文
特許庁審判官 田中 敬規
豊泉 弘貴
登録日 2016-11-25 
登録番号 商標登録第5899318号(T5899318) 
代理人 稲葉 良幸 
復代理人 星宮 一木 
代理人 田中 克郎 
代理人 飯島 紳行 
代理人 佐藤 俊司 
代理人 藤森 裕司 
代理人 中村 勝彦 
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