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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W05
審判 全部申立て  登録を維持 W05
審判 全部申立て  登録を維持 W05
審判 全部申立て  登録を維持 W05
審判 全部申立て  登録を維持 W05
管理番号 1331491 
異議申立番号 異議2017-900076 
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2017-09-29 
種別 異議の決定 
異議申立日 2017-03-09 
確定日 2017-08-18 
異議申立件数
事件の表示 登録第5901300号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5901300号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第5901300号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成からなり、平成28年5月23日に登録出願、第5類「サプリメント」を指定商品として、同年10月21日に登録査定され、同年12月2日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は、次の(1)ないし(3)のとおりであり(以下、それらをまとめて「引用商標」という。)、いずれも同人が「医薬品」等についてハウスマークとして使用し、需要者等に周知・著名であるとするものである。
(1)登録第4387797号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様 別掲2のとおり
指定商品 第5類「薬剤」
出願日 平成5年10月26日
設定登録日 平成12年6月2日
(2)別掲3のとおりの構成からなる商標(色彩の異なるものを含む。以下「引用商標2」という。)
(3)別掲2のとおりの構成からなる商標(色彩の異なるものを含む。以下「引用商標3」という。)
なお、引用商標1に係る商標権は現に有効に存続している。また、引用商標2及び3の構成に係る申立人の主張は曖昧な部分があるが、上記のとおりと認めた。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号、同第15号及び同第19号に違反して登録されたものであるため、同法第43条の2第1号によりその登録は取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第21号証(枝番号を含む。以下、枝番号の全てを引用するときは、枝番号を省略して記載する。)を提出した。
(1)申立人について
申立人は、米国マサチューセッツ州に所在するバイオテクノロジー企業である。申立人は、1981年のボストンでの創業以来、急速に成長し、希少遺伝性疾患への先駆的な取り組みや、医学とバイオマニュファクチャリングヘの革新的な貢献で知られる、世界でも有数の医療バイオテクノロジー企業となった。また、2011年に、フランスの大手医薬品メーカー、サノフィの買収を受けてサノフィ・グループの一員となり、さらに、2016年からは、同グループにおけるグローバルビジネスユニットとして、主に希少疾患、多発性硬化症、免疫学、オンコロジーの分野で活動している(甲3)。
我が国においては、1987年に、申立人の日本法人としてジェンザイム・ジャパン株式会社(以下「ジェンザイム・ジャパン」という場合がある。)が設立された。ジェンザイム・ジャパンは、海外バイオ企業の日本法人としては初めて、自社での医療用医薬品の開発・販売に成功し、その後も希少疾患治療薬開発プログラムを積極的に推進してきた。2016年7月1日、ジェンザイム・ジャパンは、サノフィ株式会社に吸収合併され(甲4)、現在は、サノフィジェンザイムビジネスユニット(以下「サノフィジェンザイム」という場合がある。)として事業を行っている(甲5、甲6)。
サノフィジェンザイム及びその前身であるジェンザイム・ジャパンは、希少疾患分野の新薬開発を行うスペシャリティ・ファーマとして、我が国の医薬品分野において名声を得ていて、国が指定する「希少疾病用医薬品」では、2010年から過去10年において、国内の製薬会社では最多の承認数を誇っている。また、遺伝子疾患の患者やその家族からの相談に応じる医療従事者等を支援するため、社内に遺伝カウンセラー支援人材を配置し、日本の製薬会社では初の取り組みとして注目された。新薬の開発にあたっては、その成果等が記事になるなど、業界における注目度は高い。また、2016年にサノフィとの合併が発表されると、今後の展開について紹介されるなど、動向が非常に注目されている(甲7)。
(2)引用商標の周知性について
申立人、ジェンザイム・ジャパン及びサノフィジェンザイム(以下「申立人ら」という。)は、ハウスマークとして、「GENZYME」の文字からなる商標(以下、引用商標を含めて「GENZYME商標」という。)を長年にわたり使用してきた。その結果、GENZYME商標は、医薬品及びその関連分野において、申立人らの出所を表すものとして、周知となっている。
ア 商品及び広告への商標の使用について
申立人らは、日本において、希少疾患であるライソゾーム病のうち、「ゴーシェ病」、「ファブリー病」等に対する6つの治療薬と内分泌領域の2製品、合わせて8つの希少疾患用医薬品を製造販売している(甲8)。ハウスマークであるGENZYME商標は、これらの医薬品のパッケージや添付文書にはもちろん、症例報告書や広告、パンフレット等にも必ず付されている(甲9)。医薬品は、製造元の高い信頼性が重視される商品であるため、製造元を表示するハウスマークは、医薬品の需要者、取引者である医療関係者や患者の注意を強く引くものだといえる。そして、これらの医薬品の売上、販売数は年々増加していて、2015年時点で、売上高は1.7億ユーロ(約213億円)、販売数は9.3万個に上る。具体的には、以下のとおりである(甲6)。
・2010年 1.2億ユーロ(約143億円) 6.7万個
・2011年 1.2億ユーロ(約145億円) 7.0万個
・2012年 1.3億ユーロ(約168億円) 7.8万個
・2013年 1.4億ユーロ(約179億円) 7.9万個
・2014年 1.6億ユーロ(約200億円) 8.7万個
・2015年 1.7億ユーロ(約213億円) 9.3万個
そうすると、GENZYME商標は、医薬品の製造販売を通じて、多数の需要者等に注視され、その記憶に残っているというべきである。
イ 広告宣伝・啓蒙活動について
申立人らは、希少疾患の社会への周知を図るべく、積極的な情報提供や啓蒙活動を行ってきた。例えば、医療関係者に対しては、症例や診断方法、患者への説明の仕方などの情報を提供するリーフレットを発行したり(甲10)、専門家を招いたフォーラムやセミナーを毎年開催したりしてきた(甲11)。また、くすり相談室を設置するなどし、一般消費者への情報提供も行ってきた。例えば、疾患に気づかない患者も多いことから、広く一般に啓発を行うべく、病院等でリーフレットを配布したり(甲12)、希少疾患と診断された患者やその家族に対しては、病気を理解し付き合うための冊子を発行したりしてきた(甲13)。また、インターネット上でも、ウェブサイトを通じて情報提供を行っている(甲14)。GENZYME商標は、このような情報提供や啓蒙活動に用いられるリーフレットや冊子に付されたり、ウェブサイトに表示されたりすることで、情報提供元である申立人らのハウスマークとして、多くの需要者等に看取され、記憶されてきた。
さらに、企業としての周知を図るため、新聞等への企業広告も積極的に行っていて、その広告においてもGENZYME商標は、ハウスマークとして大々的に表示されている(甲15)。
ウ 広告宣伝費について
前述のように、申立人らは、広告宣伝、啓蒙活動に注力していて、ジェンザイム・ジャパンの2015年時における広告宣伝費は276万ユーロ(約3億4千万円)にも上る(甲6)。
エ サノフィ・グループとの合併について
前述のとおり、申立人らは、2016年からサノフィのビジネスユニットとして事業を行っているところ、サノフィは世界100か国以上に拠点を有する医薬品分野の大手企業であり、その日本法人であるサノフィ株式会社は、日本で多数の医薬品を製造販売する、大手企業のひとつである(甲16)。
したがって、合併によりサノフィの取引先等ともビジネスが始まったことで、GENZYME商標がより一層多くの需要者等に周知されるに至ったことはいうまでもない。
オ まとめ
以上のことから、GENZYME商標は、申立人らのハウスマークとして、本件商標の出願日及び登録日において、医薬品の需要者等に周知著名であったというべきである。
(3)商標法第4条第1項第11号に該当する理由
ア 本件商標について
本件商標は、図形と「ENZYM」及び「エンチーム株式会社」の文字からなる。図形は幾何学的な形状からなり、特に何かを表したものとは認識できないことから、当該部分から称呼や観念は生じず、文字部分との関連性も見いだせない。一方、「ENZYM」の文字と「エンチーム株式会社」の文字は、大きさが著しく異なり、欧文字と片仮名及び漢字で、文字の種類も異なることから、両者は視覚的に分離して把握される。また、「ENZYM」は後述するように造語と認識される一方、「エンチーム株式会社」は法人名と認識されることから、両者には観念的なつながりもない。これらのことからすれば、本件商標中の図形、「ENZYM」「エンチーム株式会社」を、常に一体不可分のものとして把握しなければならない特段の理由はなく、各部分が独立して、自他商品の出所識別標識としての機能を果たしうるというべきである。
また、医薬品やサプリメントを取り扱う業界においては、ハウスマークを欧文字や、欧文字と図形の組み合わせで表すことは一般的に行われている(甲17)。そうすると、本件商標中「ENZYM」の文字は、図形の近くに配置されていることも相まって、当該部分がハウスマークであると認識され、出所の識別にあたり、特に注目される場合も少なくなく、本件商標に接する需要者が、「ENZYM」の文字部分に着目し、出所を認識する場合も少なくないというべきである。
そこで、本件商標中の「ENZYM」をみるに、「ENZYM」は、ドイツ語で「酵素」を意味する語であるが(甲18)、日本におけるドイツ語の普及の程度からすれば、必ずしも需要者がその意味を直ちに理解、認識するとはいえず、むしろ造語と認識し、称呼するにあたっても、より親しまれている英語に倣った発音がされるとみるのが自然である。そして、英語の発音に倣うと、「ENZYM」は、「エンザイム」と称呼されるといえる。このことは、「酵素」を表す英単語「ENZYME」が「エンザイム」と発音されることや(甲19)、周知著名なGENZYME商標が、日本では「ジェンザイム」と称呼されることからも推察できる。
したがって、本件商標からは、「ENZYM」の文字部分に照応して「エンザイム」の称呼が生じる。
イ 引用商標1について
引用商標1は、「GENZYME」の欧文字からなり、前述のとおり申立人のハウスマークとして周知著名なGENZYME商標と同一であることから、「ジェンザイム」と称呼される。
「GENZYME」は既存語ではないが(甲19)、英語の発音に倣っても「ジェンザイム」と称呼される。
したがって、引用商標1からは、「ジェンザイム」の称呼が生じる。
ウ 本件商標と引用商標1の比較
本件商標から生じる「エンザイム」の称呼と、引用商標1から生じる「ジェンザイム」の称呼を比較すると、両者はいずれも5音からなり、語頭の「エ」と「ジェ」を除く4音が共通する。「エ」と「ジェ」はいずれも母音「e」を共通にする音質の近似した音であり、続く第二音の「ン」が撥音で前音に吸収されやすいことから、より母音「e」が響きやすく、両者は聴別し難いといえる。また、第二音の「ン」が吸収されやすいことに加えて、第三音の「ザ」が有声の破擦音で強く発音されることから、両称呼は「エン・ザイム」「ジェン・ザイム」というように、二音節風に発音されるため、全体の音調や音節も近似する。
そうすると、「エ」と「ジェ」が異なるとしても、両称呼をそれぞれ一連に称呼するときは、全体の語調、語感、全体的印象が極めて近似し、彼此相紛らわしいものというべきである。
次に、外観を比較すると、両商標の全体の外観は異なるものの、「ENZYM」と引用商標とは、語頭と末尾の「G」と「E」以外の文字を共通にし、近似した印象を与える相紛らわしいものである。
以上のことから、本件商標と引用商標1とは、全体の外観において差異を有するとしても、「ENZYM」の部分において、称呼、外観がいずれも相紛らわしい、類似の商標であるといえる。
エ 商品の類否について
本件商標の指定商品「サプリメント」と、引用商標1の指定商品中「ビタミン剤、アミノ酸剤、滋養強壮変質剤」は、商品の目的、用途、生産者、販売店、需要者等が共通する、類似の商品であるといえる。実際に、特許庁の類似商品・役務審査基準では、「『サプリメント』は、『ビタミン剤 アミノ酸剤 滋養強壮変質剤』に類似と推定する。」と規定されている(甲20)。
したがって、本件商標と引用商標1の指定商品は、類似するといえる。
オ まとめ
以上のとおり、本件商標は、引用商標1に類似する商標であり、類似する商品に用いるものである。よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
(4)商標法第4条第1項第15号に該当する理由
前述のとおり、本件商標中の「ENZYM」の文字は、独立して出所識別標識としての機能を果たし得る。また、本件商標の構成にあって「ENZYM」の文字は、ハウスマークであると誤認させ、需要者等の注意をひく。したがって、本件商標に接する需要者等が、「ENZYM」の部分に着目して、商品の出所を判断する場合も少なくない。そして、当該「ENZYM」は、GENZYME商標と、称呼、外観が類似しているところ、GENZYME商標は、医薬品を取り扱う業者や、需要者である医療関係者や患者等には、申立人らのハウスマークとして周知・著名であり、かつ、独創的な商標である。そうすると、本件商標中の「ENZYM」に着目した需要者等が、GENZYME商標と誤認する場合も少なくない。
そして、前述のとおり、本件商標の指定商品「サプリメント」と、医薬品は、商品の目的、用途、生産者、販売店、需要者等が共通する、関連性の強い類似する商品である。また、申立人らが、医療関係者のみならず、一般消費者に向けても、広く啓発活動を行ってきたことからすれば、サプリメントの需要者にとっても、GENZYME商標は広く知られていたといえる。
以上の事情に照らせば、本件商標を「サプリメント」に使用するときは、その取引者及び需要者において、当該商品が申立人らの業務にかかる商品、あるいは、申立人らと緊密な関係にある者の業務にかかる商品であると誤認し、その出所につき混同するおそれがある。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。
(5)商標法第4条第1項第19号に該当する理由
本件商標の権利者は、医薬部外品や健康食品等を取り扱う会社であるところ(甲21)、医薬品とサプリメントをはじめとする健康食品は、生産者が共通する、非常に関連性の高い業界であることから、同権利者は、薬剤の分野で周知著名なGENZYME商標を、当然に知っていたというべきである。
そして、本件商標中の「ENZYM」の部分は、GENZYME商標と称呼、外観が類似していて、相紛らわしい。そうすると、本件商標は、申立人らのGENZYME商標の顧客吸引力へのただ乗り希釈化といった不正の目的をもって、出願されたものといわざるを得ない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
ア 申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、次の事実を認めることができる。
(ア)申立人が1987年に設立した日本法人「ジェンザイム・ジャパン株式会社」(ジェンザイム・ジャパン)は、我が国において、1996年(平成8年)からゴーシェ病治療剤、2004年(平成16年)からファブリー病治療剤などの医薬品を販売しており、2016年(平成28年)にサノフィ株式会社(以下「サノフィ社」という。)に吸収合併され、現在はサノフィジェンザイムビジネスユニット(サノフィジェンザイム)として事業を行っている(甲4、甲5)。
(イ)ジェンザイム・ジャパン及びサノフィ社は、遅くとも平成22年から引用商標2(甲15の1)を、平成28年から引用商標1及び3(甲9の2)を、自社の新聞広告、ファブリー病に係るリーフレット、パンフレット、及びファブリー病治療薬「ファブラザイム」などに使用している(甲9?甲15)。
(ウ)しかしながら、リーフレット、パンフレット類の配布部数など配布実績を示す証左は見いだせず、また、確認できる新聞広告は平成22年に1回、平成24年に2回のみである(甲15)。
イ 上記アの事実からすれば、ジェンザイム・ジャパン及びサノフィ社は、我が国において遅くとも平成22年から引用商標を主にファブリー病治療薬「ファブラザイム」について使用していることが認められるものの、引用商標を使用したリーフレットやパンフレットの配布実績が確認できないこと、新聞広告の掲載は平成22年と同24年の計3回であること、及び両者が扱う商品(医薬品)は希少疾患に対する治療薬であることをあわせみれば、引用商標は、本件商標の登録出願の日前及び登録査定時において、他人(申立人ら)の業務に係る商品を表示するものとして我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないと判断するのが相当である。
なお、仮に、申立人が主張する売上高や広告宣伝費などが事実であるとしても、かかる金額が申立人の医薬品の1ブランドの周知性を基礎付けるほど多額であると認めるに足りる証左は見いだせない。
また、引用商標は米国で使用されていることはうかがえるものの(甲3、甲9の7)、同国における引用商標が使用された商品の売上高、シェアなど販売実績を示す主張、証左はないから、引用商標は、他人(申立人ら)の業務に係る商品を表示するものとして米国をはじめとする外国の需要者の間に広く認識されているものと認めることもできない。
(2)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、図形とやや図案化した「Enzym」及び「エンチーム株式会社」の文字からなり、その構成態様などから、「Enzym」の文字部分が独立して自他商品識別標識としての機能を果たし得、該文字に相応して「エンザイム」及び「エンチーム」の称呼を生じ(甲18)、特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。
イ 引用商標1
引用商標1は、別掲2のとおり、「GENZYME」の文字からなり、該文字に相応して「ジェンザイム」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
ウ 本件商標と引用商標1との類否
本件商標と引用商標1との類否を検討すると、まず、本件商標の構成中、「Enzym」の文字部分と引用商標1との比較において、両者は外観において、構成文字数や書体が明らかに異なるから、相紛れるおそれはない。
次に、称呼においては、前者の称呼「エンザイム」と後者の称呼「ジェンザイム」とは、称呼の識別上重要な要素である語頭において、「エ」と「ジェ」の音の差異を有し、該差異が共に5音という比較的短い称呼全体に与える影響は大きく、両者をそれぞれ称呼しても語調、語感が異なり、聴き誤るおそれはない。
また、前者の称呼「エンチーム」と後者の称呼「ジェンザイム」とは、構成音が相違すること明らかであり、明瞭に聴別し得るものである。
さらに、両者は、いずれも特定の観念を生じないものであるから、観念において相紛れるおそれはない。
そうすると、両者は、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標といわなければならない。
エ 小括
以上のとおり、本件商標と引用商標1とは、非類似のものであって、他に本件商標と引用商標1とが類似するというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標の指定商品と引用商標1の指定商品の一部(ビタミン剤など)とが類似するとしても、本件商標は、引用商標1と非類似の商標であるから、商標法第4条第1項第11号に該当するといえない。
(3)商標法第4条第1項第15号について
上記(1)のとおり、引用商標は、いずれも他人(申立人ら)の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められない。
また、上記(2)のとおり、本件商標と引用商標1とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標であり、さらに本件商標と引用商標2及び3とは、後者が「genzyme」及び「GENZYME」の文字からなるものであるから、上記(2)と同様の理由により非類似の商標ということができる。
そうすると、本件商標は、これに接する取引者、需要者が引用商標を連想又は想起するものということはできない。
してみれば、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その商品が他人(申立人ら)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
その他、本件商標が出所の混同を生じさせるおそれがあるというべき事情は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものといえない。
(4)商標法第4条第1項第19号について
上記(1)のとおり、引用商標は、いずれも他人(申立人ら)の業務に係る商品を表示するものとして我が国又は外国の需要者の間に広く認識されているものと認められないものであり、上記(3)のとおり、本件商標と引用商標とは相紛れるおそれのない非類似の商標であり、また、本件商標は引用商標を連想又は想起させるものでもない。
そうすると、本件商標は、引用商標の名声にただ乗りするなど不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものとはいえない。
(5)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号、同項第15号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものとはいえないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲1(本件商標)

別掲2(引用商標1及び3)

別掲3(引用商標2)




異議決定日 2017-08-08 
出願番号 商願2016-60828(T2016-60828) 
審決分類 T 1 651・ 222- Y (W05)
T 1 651・ 262- Y (W05)
T 1 651・ 261- Y (W05)
T 1 651・ 263- Y (W05)
T 1 651・ 271- Y (W05)
最終処分 維持  
前審関与審査官 大橋 良成 
特許庁審判長 大森 健司
特許庁審判官 松浦 裕紀子
小松 里美
登録日 2016-12-02 
登録番号 商標登録第5901300号(T5901300) 
権利者 エンチーム株式会社
商標の称呼 エンチーム、エンザイム 
代理人 鮫島 睦 
代理人 川本 真由美 

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