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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y25
管理番号 1331395 
審判番号 取消2015-300392 
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2015-06-01 
確定日 2017-06-29 
事件の表示 上記当事者間の登録第4779724号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4779724号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲のとおりの構成よりなり,平成15年9月29日に登録出願,第25類「洋服,コート,セーター,スポーツシャツ,Tシャツ,靴下,手袋,バンダナ,帽子,その他の被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として,平成16年6月18日に設定登録されたものである。
なお,本件の審判請求の登録日は,平成27年6月15日である。

第2 請求人の主張
請求人は,商標法第50条第1項の規定により,本件商標の登録を取消す,との審決を求め,審判請求書,弁駁書及び口頭審理陳述要領書等において,その理由及び答弁に対する弁駁等を要旨次のように述べ,甲第1号証ないし甲第4号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は,その指定商品について,継続して3年以上日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから,商標法第50条第1項の規定により,その登録は取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人が答弁書において提出している乙第1号証ないし乙第14号証を検討する。
ア 乙第1号証について
(ア)乙第1号証(イ)?(へ)は,いずれも本件商標を使用したと被請求人が主張するTシャツを撮影した写真であるが,これらの写真の撮影時期は客観的に明らかではなく,また答弁書において被請求人自身も「乙第1号証?乙第3号証は何れも本件審判請求書の副本が御庁から送達された日以降に撮影されたものである」旨自認しており,本件審判の請求の登録前3年(以下「要証期間」という。)以内における本件商標の指定商品についての日本国内での被請求人による使用の有無の立証には無関係の資料である。
(イ)上記(イ)?(へ)の写真のTシャツには,本件商標と同様の所謂「8ボールデザイン」が表示されているものの,これはビリヤードの遊び方の一つであるエイトボール(プールビリヤード)にて使用する8番目のボールを単に図示したものであり,装飾的に表されたにすぎないものである。そのため,「8ボールデザイン」それ自体にはそもそも通説で指すところの出所表示機能/品質保証機能/宣伝・広告的機能を発揮するものとは認められず,「本来の商標」としての「使用」にそもそも該当するものではない(表現の装飾的あるいは意匠的効果を狙って表示されているものにすぎない。昭和49(ワ)393事件で指摘されている。)。
イ 乙第2号証について
乙第2号証は,乙第1号証(イ)?(へ)の写真に表示されたTシャツを販売している衣料品店「カサブランカ(CASABLANCA)」(以下「カサブランカ店」という場合がある。)を撮影したとされる写真であるが,当該写真上には本件商標は一切表示されておらず,本件商標の使用を立証する証拠としては意味をなさない資料である。
ウ 乙第3号証について
(ア)乙第3号証(イ)?(ヲ)の写真は,「カサブランカ店」店内で販売されているTシャツを撮影したものであるが,これらの写真の撮影時期は明らかではなく,要証期間内における本件商標の指定商品についての日本国内での被請求人による使用の有無の立証には無関係の資料である。
(イ)上記(イ)?(ヲ)の写真に表示されたTシャツにはその一部に所謂「8ボールデザイン」が表示されているものの,これらの「8ボールデザイン」の表示は単に装飾的に表されたにすぎず,本件商標の「使用」にそもそも該当するものではない。
エ 乙第4号証について
乙第4号証は,被請求人の取引先である衣料品卸問屋「ユニバース」(個人経営)発行の,被請求人への「エイトボールTEE」の発注書とされるものであるが,発行日について,被請求人は,「平成27年1月30日」と主張している。
しかしながら,発注日は,単に「1月30日」と日付けが記載されているのみであり,また,それ以外に発注書を交付または郵送した日時を示す資料はない以上,被請求人の主張する「平成27年1月30日」という発注年月日は客観的に明らかではないことから,本件商標の要証期間内における使用を立証する証拠として意味をなさない資料である。
オ 乙第5号証ないし乙第8号証について
乙第5号証?乙第8号証は,被請求人(インセプトクリエイション)が取引先である衣料品メーカーの「シーアンドシー株式会社」(以下「シーアンドシー」という。:東京都墨田区錦糸4-3-6シーナビル2F)に対し,2015年(平成27年)2月4日付けで発行したTシャツのデザイン書兼発注書とされるものである。
しかしながら,請求人が調査会社を通じ調査を行ったところ,被請求人がTシャツの製作を発注したとするシーアンドシーは,2014年(平成26年)12月26日に既に「東京都墨田区錦糸4-3-6シーナビル2F」を退去していることが判明した(甲2)。
なお,2014年(平成26年)12月26日にシーアンドシーが「東京都墨田区錦糸4-3-6シーナビル2F」を退去した後,次の入居者が入居するまでの平成26年12月27日?平成27年7月23日の間は同室は空室であり,いかなる法人又は個人も同室を拠点とし活動を行うことは不可能であった(甲2)。
そうすると,請求人がTシャツ製作を発注したとする2015年(平成27年)2月4日の時点では既に「東京都墨田区錦糸4-3-6シーナビル2F」においてシーアンドシーは活動を行っていたとは考えられず,2015年(平成27年)2月4日に「東京都墨田区錦糸4-3-6シーナビル2Fに所在の衣料品メーカー・シーアンドシーに対し」Tシャツ製作を発注したとする主張はにわかに信じがたい。
また,かかる主張を立証するものとして提出された乙第5号証?乙第8号証には,シーアンドシーの所在地は記載されていないものの,上記主張を踏まえると,その信用性にも疑義が出てくるといわざるを得ない。
したがって,乙第5号証?乙第8号証のみをもって,被請求人がシーアンドシーに対し2015年(平成27年)2月4日付けでTシャツの製作依頼をした事実を認定することはできない。
なお,調査会社を通じて請求人が得た調査結果によると,被請求人がかつて経営していた「株式会社ジェイ・イースト」(2009年7月に破産・閉鎖)及び「株式会社ダーツ」(2009年4月に破産・閉鎖)と,シーアンドシーの代表取締役である趙漢誼氏がかつて経営していた「株式会社シーアンドシー」(2013年7月に閉鎖)及び「オリエンタルマスターリミテッド株式会社」(2008年3月に閉鎖,株式会社シーアンドシーに吸収合併された)は,いずれも過去に「墨田区緑4-28-6」を本店所在地としていたようであり(甲2),被請求人とシーアンドシーとの間には,なんらかの関係性があることが推測されることを付言する。
カ 乙第9号証について
乙第9号証は,シーアンドシーが被請求人に宛てた平成27年4月30日付けの納品書とされるものである。
しかしながら,2015年(平成27年)2月4日に「東京都墨田区錦糸4-3-6シーナビル2Fに所在のシーアンドシーに対し」Tシャツ製作を発注したとする主張はにわかに信じがたく,乙第9号証の納品書にはシーアンドシーの所在地は記載されていないものの,その信用性には疑義があるといわざるを得ない。
したがって,乙第9号証のみをもって,被請求人がシーアンドシーから商品の納品を受けた事実を認定することはできない。
キ 乙第10号証及び乙第11号証について
乙第10号証は,被請求人が取引先であるユニバースに宛てた平成27年4月30日付けの納品書とされるものであるが,被請求人がシーアンドシーにTシャツ製作を依頼しTシャツの納品を受けたという主張自体信憑性に欠け,ユニバースによるTシャツ発注から「カサブランカ店」での販売に至るまでの一連の販売経路についての主張には疑義があること,また,被請求人作成の乙第10号証の筆跡と,乙第4号証のユニバース作成の発注書とが酷似しているようにも思われることから,乙第10号証についても,その信用性は慎重に判断されるべきである。
また,乙第11号証は,被請求人よりユニバースに宛ててなんらかの荷物が発送されたことを示す宅配便の発送伝票であるが,具体的な品名の記載もなく,荷物の内容は全くもって不明であり,本件商標の使用を立証する証拠として全く意味をなさない資料である。
ク 乙第12号証について
乙第12号証は,ユニバースが「カサブランカ店」に宛てた納品書であるとされるものであるが,ユニバースによるTシャツ発注から「カサブランカ店」での販売に至るまでの一連の販売経路についての主張には疑義があることから,乙第12号証についても,その信用性は慎重に判断されるべきである。
ケ 乙第13号証及び乙第14号証について
乙第13号証は,ユニバースより「カサブランカ店」に宛てて荷物が発送されたことを示す宅配便の発送伝票であるが,具体的な品名は単に「衣料品」とだけ記載されており,荷物の詳細は全くもって不明であることから,本件商標の使用を立証する証拠として全く意味をなさない資料である。
また,乙第14号証は,衣料品店「カサブランカ店」を展開する株式会社丸越(以下「丸越」という。:静岡県富士市本市場町702)発行の証明書とされるものである。
当該証明書には,「当社は平成27年5月3日に貴社から,佐川急便を介して品名820152 エイトボールTEE 8枚(省略)の納品を受け,これら商品を遅くとも5月4日には当社が運営する衣料品店カサブランカの店舗内において販売のため陳列した」との記載があるが,ユニバースによるTシャツ発注から「カサブランカ店」での販売に至るまでの一連の販売経路についての主張には疑義があるといわざるを得ない。
また,調査会社を通じて得た調査結果によると,「カサブランカ富士店」(静岡県富士市本市場町702)に於いて勤続10年以上のベテラン従業員・磯干繁生氏は,エイトボールTEEの販売は「(2015年)6月から」であること,及び2015年5月の時点では店頭になかったこと,を証言している(甲2)。これらの証言は,丸越発行の証明書の記載内容と矛盾するものである。このことからも,乙第14号証もその信用性については慎重に判断する必要がある。
(2)以上のとおり,被請求人の主張する本件商標の使用事実は信憑性に疑義があり,またこれに関連して提出された乙第1号証?乙第14号証の各証拠も,要証期間内の本件商標の指定商品への使用とは全く無関係の資料であるか,もしくは信用性に問題があるものであるから,本件商標がその指定商品について要証期間内に日本国内で被請求人により使用されたことについては,立証責任が尽くされてないというべきである。
また,被請求人が本件商標の使用に該当すると主張するTシャツへの所謂「8ボールデザイン」の表示は,装飾的なものにすぎず,出所表示機能/品質保証機能/宣伝・広告的機能を発揮する態様での「本来の商標」としての「使用」にそもそも該当するものではない。

3 口頭審理陳述要領書(平成28年3月31日付け)
(1)被請求人は,平成28年3月9日付け口頭審理陳述要領書において,乙第1号証?乙第14号証について補足説明を行い,新たな主張を行っている。
(2)乙第2号証及び乙第3号証について
乙第2号証及び乙第3号証はそもそも要証期間内における本件商標の指定商品についての日本国内での被請求人による使用の有無の立証に関しては無関係かつ意味の無い資料である上,そもそも乙第4号証?乙第14号証自体その信用性に問題のある資料であり,弁駁書においても述べたとおり,写真に写っている商品がカサブランカ店内に陳列された時期自体に疑義がある以上,乙第2号証及び乙第3号証は,乙第4号証?乙第14号証の資料を補強する資料としても参酌されるべきものではない。
(3)乙第4号証について
乙第4号証には,その表示上発注日として単に「1月30日」と記載されているのみであるところ,この点について,被請求人は,ユニバースの代表者である鈴木収氏の陳述書を新たに乙第16号証として提出し,乙第4号証は平成27年1月30日に発行されたものであると主張している。
しかしながら,当該陳述書は,例えば,そのころユニバースがカサブランカ店等納品先からの受注を受けたとか,発注書を被請求人(インセプトクリエイション)に対しどのように交付または送付したのかという,具体的な事実関係には触れられず,単に「年数の表示欄が設けられていない同一のフォームを用いて」いたということと,「発注日『1月30日』と記載された・・・発注書は『平成27年1月30日』であることに間違いありません。」とだけ記載されていることから,かかる陳述書のみをもって乙第4号証の発注書が平成27年1月30日に発行されたことを認めることはできないというべきである。
ましてや,甲第2号証に記載のとおり,調査会社を通じた調査の結果,ユニバースのシャッターはいつも閉まっており,最近は営業しているのかが分からない,との近隣住民の証言もあり,また弁駁書でも述べたとおり,乙第4号証の発注書と,被請求人がユニバースに宛てたとする平成27年4月30日付けの納品書(乙10)の筆跡が酷似しているように思われることとも相まって,乙第4号証の発注書に係る被請求人の主張の真偽については慎重な検討が必要である。
請求人としては,発注書が具体的にどのような方法でユニバースからインセプトクリエイションに対して交付または郵送されたのか,また,ユニバースがカサブランカ店等の納品先からの受注を受けて被請求人に発注したものであるのか等具体的な事実関係について釈明を求める。
ところで,乙第4号証の発注書には,品番及び品名としてそれぞれ「820151 エイトボールTEE」,「820152 〃」,「820154 〃」,「820155 〃」との記載がある。しかしながら,被請求人のいうところのいわゆる「エイトボールTEE」については,平成27年2月4日に被請求人がシーアンドシーの自宅兼事務所に往訪し,乙第5号証?乙第8号証(Tシャツのデザイン書を兼ねた発注書)に基づく打ち合わせを行ったと被請求人自身が主張しており,また乙第17号証において,シーアンドシーの代表取締役趙漢誼氏も同様に述べている。平成27年2月4日に「デザイン書を兼ねた」発注書に基づいて打ち合わせを行ったという被請求人の主張が仮に真実であるとすれば,「エイトボールTEE」はこの段階で初めて商品として具体化し,初めて品番が付されたと考えるのが自然であり,にもかからわず被請求人とシーアンドシーの打ち合わせ以前の時点で発行されたと被請求人の主張する乙第4号証の発注書に既に品番が記載されているのは,極めて不自然と言わざるを得ない。
請求人としては,「デザイン書を兼ねた」発注書に基づく平成27年2月4日の被請求人とシーアンドシーとの打ち合わせ前の段階でなぜユニバースが既に品番を知っていたのか,また仮にユニバースが発注書を発行したと被請求人が主張する平成27年1月30日よりも前の段階で既に「820151」,「820152」,「820154」,「820155」の各品番の「エイトボールTEE」が製造販売されており,そのためユニバースが品番を知っていたというのであれば,平成27年2月4日の被請求人とシーアンドシーとの打ち合わせの場では一体どのような内容の打ち合わせが行われたのか等,具体的な事実関係について釈明を求める。
(4)乙第5号証ないし乙第8号証,及び乙第9号証について
乙第5号証?乙第8号証については,被請求人の主張するように,2015年(平成27年)2月4日に被請求人がシーアンドシーの移転後の自宅兼事務所に往訪し打ち合わせを行ったというのであれば,被請求人はシーアンドシーが既に「東京都墨田区錦糸4-3-6シーナビル2F」を退去していたことを当然に知っていたはずである。さらにいえば,被請求人とシーアンドシーの間にはなんらかの関係性があることが推測されることからすると,被請求人が上記退去の事実を知らなかったとは考えにくい。にも拘わらず,当初,答弁書において被請求人はシーアンドシーが既に「東京都墨田区錦糸4-3-6シーナビル2F」を退去していることについて一切触れず,弁駁書での指摘を受けて初めて「被請求人がシーアンドシーの代表取締役趙漢誼氏に説明を求め」退去等の事実を知ったというのは,不自然極まりないというべきである。
加えて,真に営業活動を行っている法人であれば,納品書等の重要な取引書類に本店の新住所という重要な情報を記載せず,引き続き旧住所のゴム印を押捺するなど考えがたいことから,シーアンドシーが自宅兼事務所である新住所において営業活動を行っていながら,新住所のゴム印を新たに作成せず,旧住所のゴム印を引き続き使用していたなどとはにわかに信じがたい。シーアンドシーは,遅くとも「東京都墨田区錦糸4-3-6シーナビル2F」を退去した時点で,もはや活動を行っておらず,いわゆる休眠会社となっていたと考えるのが合理的である。
そしてこのことは,シーアンドシーが本店所在地を移転してから1年以上もが経過した平成28年3月23日の時点においても,いまだその商業登記簿について本店所在地の移転に係る変更登記申請をしていないことからも推認されるものである(甲3)。本店所在地が移転した場合には2週間以内に変更の登記を行う必要があり(会社法第915条第l項),これを怠った場合には百万円以下の過料に処するとされているところ(会社法第976条第1項第1号),1年以上が経過した平成28年3月23日の時点においてもいまだ変更の登記がなされていないという事実からは,シーアンドシーがもはや営業活動を行っておらず,そのため変更の登記を行う動機付けも失われ,変更の登記がなされないまま放置されている,という状況が推認される。
以上のとおり,乙第9号証の信用性には疑義があるといわざるを得ず,被請求人の「証拠価値に何らの変動を来すものではない」という主張は失当である。
なお請求人は,乙第17号証の原本の提示,乙第9号証の原本の提出・提示を被請求人に求める。この点,請求人は,証拠説明書において,乙第9号証を「写し」としているが,乙第9号証は被請求人の説明によればシーアンドシーが被請求人に宛てて発行した納品書である以上,原本が存在するはずである。また,シーアンドシーが自宅兼事務所で営業活動を行っていた旨の被請求人の主張に関連して,本件商標の使用された,被請求人のいういわゆる「エイトボールTEE」も当該自宅兼事務所で製造されたものであるのか,それともどこかに再委託して製造したのかについて釈明を求める。
(5)乙第11号証及び乙第13号証について
乙第11号証及び乙第13号証について,被請求人はこれら伝票類ないし送り状の品名欄に貨物の具体的中身を詳細に記載することがないのは通常のことであるとしているが(被請求人陳述要領書6頁),そうであれば,乙第11号証や乙第13号証の宅配便の発送伝票は,荷物の内容は全くもって不明である以上,当該宅配便で配送されたものが何であったかを証する他の証拠がない限り,これら証拠のみをもって,本件商標の使用された,被請求人のいういわゆる「エイトボールTEE」が発送されたことを認めることはできないことは明らかである。
なお,乙第13号証に関して,被請求人は,「『衣料品』の中に乙第1号証(イ)?(へ)が示されたTシャツが含まれていた」とする鈴木氏の陳述書(乙16)を提出しているが,当該陳述書は信用性に問題があるものである。
(6)乙第14号証について
乙第14号証に関連し,被請求人は,「カサブランカ富士店」に勤務する磯干繁生氏が「売れ残り商品を販売していると思われるのをおそれ,帳簿や伝票類を確認せず,咄嵯に店頭販売日を『2015年6月から』と事実に反したことを話した」と主張している。
しかしながら,調査会社がカサブランカ富士店を訪れたのは2015年9月3日のことであり(甲2),「売れ残り商品を販売していると思われるのをおそれ」「咄嗟に」回答したとすれば,より直近の日付けを述べるのが自然であり,「5月」を「6月」と中途半端にずらすことは考えづらい,したがって,乙第14号証のみをもって,店頭販売日を2015年5月と認定することはできないことは明らかである。
(7)被請求人の新たな主張について
被請求人は,本件商標を付した商品Tシャツをユニバースに宛てて譲渡ないし引き渡した行為が商標法第2条第3項第2号所定の使用行為に該当すると主張する。
しかしながら,被請求人の主張する本件商標の使用事実は信憑性に疑義があり,またこれに関連して提出された乙第1号証?乙第17号証の各証拠も,要証期間内の本件商標の指定商品への使用とは全く無関係の資料であるか,もしくは信用性に問題があるものである。
(8)名目的使用について
上述したとおり,被請求人提出の乙第1号証?乙第17号証の各証拠の信用性には問題があり,したがって被請求人の主張する本件商標の使用事実は信憑性に疑義があるものであるが,仮に万が一被請求人により本件商標と同一の標章がその指定商品について使用された事実が存在するとしても,当該使用は商標法第50条第1項に規定する「登録商標の使用」にはあたらないいわゆる「名目的使用」に該当するものであり,商標法第50条第1項による取り消しを免れるものではない。
商標とは,標章であって,「業として商品を生産し,証明し,又は譲渡する者がその商品について使用をするもの」(商標法第2条第1項第1号)をいい,商標法上の保護は,かかる業としての商標の使用によって蓄積された信用に対して与えられるものである。それ故商標法第50条第1項は,取り消しを免れるための要件として,単なる標章の使用にとどまらず,「登録商標の使用」の証明を被請求人に対し要求している。
本件においては,本件商標と同一の標章を使用されたいわゆる「エイトボールTEE」の制作を被請求人が依頼したとするシーアンドシーが,もはや活動を行っていないいわゆる休眠会社であると推認されること,被請求人とシーアンドシーとの間で継続的な取引関係があったとは考えがたく,その後のユニバースヘの商品の納品/カサブランカ店での販売のための陳列も,一度限りで行われたと推認されることから,被請求人による標章の使用は「業として」の使用には該当せず(すなわち,「登録商標の使用」には該当せず),単に不使用取消の審判を免れる目的での名目的使用に該当すると考えられ,よって本件商標は,その登録が取り消されるべきである。
ところで,商標法第50条第1項は,「商標権者,専用使用権者又は通常使用権者」のいずれもが登録商標の使用をしていないことを取り消しの要件としており,誰による登録商標の使用か,という点は重要な意味を有する。この点,被請求人の答弁書及び被請求人陳述要領書のいずれにおいても,誰による登録商標の使用か,という点は必ずしも十分に説明されていないと思われる。
4 上申書(平成28年5月19日付け)
(1)ユニバースからの受注の経緯について
ア 被請求人は,平成26年10月上旬頃に外部のデザイナー(田中智康氏)に委託して本件Tシャツのデザイン画が完成したと主張し,新たに乙第18号証及び乙第19号証を提出している。しかしながら,これらのいずれについてもその作成日付は証拠上一切明らかではない上,口頭審理において審判長より求められたにも拘わらず,作成した時期を客観的に立証するその他の証拠も一切提出されていない。すなわち,口頭審理における被請求人の発言によれば,デザイン画に関するやりとりが電子メールによりなされたとのことであるが,関連する電子メール等一切提出されていないのである。このように客観的な作成日付が明らかではない以上,乙第18号証及び乙第19号証はいずれも本件審判請求の予告登録前3年以内における本件商標の指定商品についての日本国内での被請求人による使用の有無の立証に関しては間接的にも意味のないものといわざるを得ない。
イ 被請求人は,平成26年10月下旬頃,乙第18号証及び乙第19号証のデザイン画に基づき韓国の取引先にサンプルの作成依頼を行い,平成27年1月に入ってから,試作品が韓国の取引先から国際郵便で被請求人に届いたと主張しているが,これらの主張を裏付ける客観的な証拠は一切提出されていない。さらに被請求人は,各サンプルをデザイン画と一緒に同年1月中旬頃にユニバース宛に宅急便で発送し,この時点でサンプルに仮の品番から「820151」などの本来の品番を付与したと主張するが,これらの主張についてもこれを裏付ける客観的な証拠は一切提出されていない。その後1か月も経たないタイミングでユニバースから被請求人に郵送されたという平成27年1月30日付け発注書(乙4)をはじめ,その後の受発注,納品等に係る証拠が揃って提出されていることとの対比からすると,証拠が一切提出されていないことは極めて不自然であるということも付言する。
以上のとおり,ユニバースからの発注書(乙4)に品番が表示されていたことに関する被請求人の説明は合理的なものとは到底いい得ず,乙第4号証の発注書に係る被請求人の主張はそのまま認めることはできないというべきである。
(2)乙第20号証について
被請求人は,ユニバース代表の鈴木収氏が平成28年2月20日に作成した弁明の書面とされるものを。乙第20号証として提出している。しかしながら,ユニバース代表の鈴木収氏からは,平成28年3月4日付けの陳述書(被請求人代理人が代筆し,鈴木氏の押印がなされたもの)が,乙第16号証として提出されている。平成28年2月20日付けの手書きの弁明書面が用意されていたのであれば,そのわずか2週間ほど後の3月4日付けで『陳述書』を用意する際に,手書きのものの内容を含めた形にするのが自然と考えられるところ,当該3月4日付け陳述書においては乙第20号証の弁明書面に記載された内容は一切触れられておらず不自然である。また,同じ人物が作成した書面であるにも拘わらずその形式(タイプか手書きか,押印の有無等)が全く異なることについて,何らの説明もなされていない。加えて,「平成28年4月14日の口頭審理期日において提示する機会がなかったため」という被請求人の弁明もにわかには信じがたい。以上より,乙第20号証は,乙第16号証とともにその信用性について慎重に検討がなされるべきである。
(3)シーアンドシーについて
被請求人は,シーアンドシーが「会社法上の問題を有しているとしても,現状,Tシャツを含めた衣料品の受託生産や販売を実際に行っている」と主張するが,かかる主張を裏付ける証拠は一切提出されていない。
請求人陳述要領書において述べたとおり,シーアンドシーはもはや営業活動を行っておらず,そのため変更の登記を行う動機付けも失われ,変更の登記がなされないまま放置され,かつ納品書等に押捺するための会社のゴム印も新たに作成していない,という状況を推認するのが自然である。
(4)名目的使用について
被請求人は,何らの根拠も示すことなく,「被請求人によるユニバースに対する本件商標を使用した商品Tシャツの販売行為は単なる名目的使用ではなく,実質的な使用であることはきわめて明らかである」と主張する。
この点に関して,被請求人提出の乙第1号証ないし乙第20号証の各証拠の信用性には問題があり,したがって,被請求人の主張する本件商標の使用事実そのものについて疑義があること,また,仮に万が一被請求人の主張する本件商標の使用事実自体が存在したとしても,当該使用は単なる名目的使用にすぎない。
すなわち,まず,被請求人は,平成22年11月25日に本件商標について特定承継により権利を譲り受けた(甲1)。そして,その後しばらく本件商標の使用をせず,被請求人の主張によれば。平成26年1月(証明範囲としての使用時期は平成27年1月?現在,平成27年8月3日付け提出の答弁書)になってからようやく本件商標の使用を開始し,ユニバースに商品を発送したのは平成27年5月1日である。
ところで,被請求人は,請求人の日本におけるディストリビューターである株式会社ジャックに対し,平成27年5月19日付け通知書を送付し,同社が被請求人の本件商標に係る商標権を侵害している旨主張している(甲4)。被請求人がユニバースに商品を発送したと主張する平成27年5月1日が,被請求人が株式会社ジャックに上記通知書を発送した同月19日ころよりわずかに前であること,口頭審理において被請求人本人が,審判長の問いに対し本件商標の使用の事実は答弁書で言及された取引「1件だけ」であることを明確に認めたことからすると,仮に被請求人の主張する本件商標の使用の事実が存在するとしても,被請求人の主張する使用の事実は,不使用取消審判請求を予期して行った所謂駆け込み使用(商標法第50条第3項)に該当することが強く疑われ,名目的使用にすぎないというべきである。

第3 被請求人の主張
被請求人は,結論同旨の審決を求めると答弁し,答弁書及び口頭審理陳述要領書等において,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第20号証を提出した。
1 答弁の理由
(1)使用事実の概要
ア 本件商標の使用者
東城 昇(商標権者)。「インセプトクリエイション」の屋号でTシャツや帽子等の企画・販売業を営む。
イ 本件商標の使用に係る商品
Tシャツ。
ウ 本件商標の使用時期
平成26年1月?現在。証明範囲としての使用時期は平成27年1月?現在。
エ 本件商標を使用した商品の販売場所
静岡県富士市本市場町702に所在の株式会社丸越が同所で展開する衣料品店「カサブランカ(CASABLANCA)」。
(2)乙第1号証ないし乙第12号証
ア 乙第1号証(イ)?(へ)は,本件商標を使用したTシャツを撮影した写真である。
これらの写真から明らかなように,Tシャツの前身頃にワンポイント的に本件商標と同一の図形がプリントされていると共に,裾の部分にも本件商標が表示された布片(所謂ピス)が縫い付けられている。また,当該Tシャツの襟ネームの裏面にも本件商標が表示されている。
イ 乙第2号証は,上記したTシャツを販売している「カサブランカ店」(静岡県富士市本市場町702)を撮影した写真である。乙第3号証(イ)?(ヲ)は,当該「カサブランカ店」店内で販売されている商品を撮影した写真であり,本件商標を使用した商品Tシャツが販売のため陳列されている。
ウ 前記「カサブランカ店」にて販売されているTシャツの販売経路は次のとおりである。
(ア)インセプトクリエイションの取引先である衣料品卸問屋「ユニバース」(個人経営:静岡県静岡市葵区城東町27-13)から平成27年1月30日に,インセプトクリエイションに対し,品名「エイトボールTEE」,品番820151,820152,820154,820155」についての発注があった(乙4)。
(イ)インセプトクリエイションは,2015年(平成27年)2月4日に,取引先の衣料品メーカーの「シーアンドシー」(東京都墨田区錦糸4-3-6シーナビル2F)に対し,品番820151,820152,820154,820155のTシャツを,デザイン書を兼ねた発注書により製作依頼を行なった(乙5?乙8)。
(ウ)平成27年4月30日に,インセプトクリエイションは,前記シーアンドシーから注文した商品の納品を受けた(乙9)。
(エ)インセプトクリエイションは,前記発注者であるユニバースに対し,平成27年4月30日付けで納品書(乙10)を作成し,5月2日必着で佐川急便を利用し,5月1日付けで商品を発送した(乙11)。
(オ)ユニバースは,取引先である「カサブランカ店」宛に平成27年5月2日付けで佐川急便(乙13)を利用し,納品書(乙12)にて「品番820152エイトボールTEE」8枚,「品番820155エイトボールTEE」8枚,「品番820151エイトボールTEE」8枚,「品番820154エイトボールTEE」8枚を他社商品と同梱にて納品した。
なお,乙第12号証(納品書)の作成日付は平成27年5月21日となっているが,これはカサブランカ側の支払い期日締日の関係で本来5月2日であるべきところを,5月21日としたものである。
(カ)丸越が運営する衣料品店「カサブランカ店」は,遅くとも平成27年5月4日には,店内にて品番820152,品番820155,品番820151,品番820154に係るTシャツを販売のため陳列した(乙14)。
(キ)なお,ユニバースは,「カサブランカ店」以外の取引先にも「品番820151エイトボールTEE」等を納品している。
(3)結論
上記のとおり,本件商標を使用したTシャツは,平成27年5月2日には商標権者(インセプトクリエイション)からユニバースに対し,販売されていたことが明らかであると共に,平成27年5月4日には「カサブランカ店」にて陳列され,販売に供されていたことが明らかである。
2 口頭審理陳述要領書(平成28年3月9日付け)
(1)乙第1号証(イ)?(へ)について
乙第1号証(イ)?(へ)は,本件審判請求書の副本が被請求人宛てに送達された日以降に登録商標の使用商品を説明するために作成されたものであるが,これらのみによって要証期間内の本件商標の指定商品についての使用を主張しているものではない。
乙第1号証(イ)?(へ)に示された商品Tシャツにはワンポイント的に本件商標と同一の8玉図形が商標的にプリント表示されていると共に,襟ネームにも本件商標が表示してあり,さらに本体裾部分にも本件商標が表示された布片(所謂ピス)が縫着されている。
したがって,本件商標が指定商品(Tシャツ)に商標として使用されていたことはきわめて明らかである。
(2)乙第2号証及び乙第3号証について
これらの乙号証は,被請求人が,本件商標を使用した商品Tシャツを実際に販売していた静岡県富士市本市場町702に所在の「カサブランカ店」を運営する丸越の代表取締役鈴木徹氏に依頼して作成されたものであり,本件審判請求書の副本が送達された日以降に撮影されたものである。
なお,乙第2号証は当該「カサブランカ店」の外観を撮影したものであり,乙第3号証(イ)?(ヲ)はカサブランカ店内における本件Tシャツを含めた衣料品の陳列状態を撮影したものである。
したがって,要証期間内における本件商標の指定商品についての使用の立証には直接関係がない資料であるとしても,乙第4号証?乙第14号証と密接な関係を有する重要な証拠資料であることに変わりはない。
(3)乙第4号証について
当該乙号証に関し,請求人は発注書中の「発注日」欄に「1月30日」のみ記載されていて,年数が記載されていないから,本件商標の要証期間内における使用を立証する証拠として意味をなさないと主張している。
これについて,被請求人が,衣料品卸売業・ユニバースの代表者である鈴木収氏から聴取したところ,ユニバースでは開業当初より乙第4号証と同一のフォームを用いて取引先各社に納品依頼を行っており,最初から年数欄は設けていなかったとのことである。
また,乙第4号証が平成27年1月30日に発行された事実が真正であることを証するため,ユニバースの代表者である鈴木収氏の陳述書を乙第16号証として提出する。
(4)乙第5号証?乙第8号証について
請求人は,これらの乙号証に関して,シーアンドシーは,平成26年12月26日に「東京都墨田区錦糸4-3-6シーナビル2F」を退去していたのであるから,同所を拠点として活動を行うことは不可能であり,平成27年2月4日に同社に対しTシャツの製作を発注したとする被請求人の主張は信じ難く,被請求人が平成27年2月4日にTシャツの製作依頼をした事実を認定することはできない,と主張している。
これについて,被請求人がシーアンドシーの代表取締役趙漢誼氏に説明を求めたところ,確かに,シーアンドシーは平成27年2月4日当時「東京都墨田区錦糸4-3-6シーナビル2F」には所在しておらず,平成26年12月末頃,シーナビル2Fを退去した後は,自宅兼事務所である東京都墨田区太平1-1-7アザラテラス701にて営業活動を行っていたとのことである。
被請求人の住所と,当該墨田区太平1-1-7は徒歩で数分の僅かな距離しかなく,乙第5号証?乙第8号証(Tシャツのデザイン書を兼ねた発注書)に基づくシーアンドシーとの打ち合わせは平成27年2月4日に被請求人が同社の前記自宅兼事務所に往訪して行なった。
なお,シーアンドシーは,前記シーナビル2Fを退去後,自宅兼事務所の前記アザラテラス701にて営業活動を行っていたが,その際,市販の納品書等に押捺するためのゴム印を新たに作成せず,会社名・代表取締役名及び旧住所が一体となった従来のゴム印を取引書類に引き続き使用していたものである。
(5)乙第9号証について
請求人は乙第9号証の納品書にはシーアンドシーの所在地は記載されていない,と述べているが,会社名表示の上部に小さく掠れてはいるが,旧住所地が表示されている。この旧住所地に関する疑義は前記したように,会社名・代表取締役名及び旧住所が一緒になっているゴム印を使用したため生じたものにすぎず,証拠価値に何らの変動を来すものではない。
また,請求人は乙第5号証?乙第8号証のデザイン書を兼ねた発注書と乙第9号証に係る納品書における納品日や納品数量の記載に齟齬がある旨述べているが,デザイン書兼発注書に表示された納品日(2015年4月10日)は納品希望日であって,これが実際の納品日と一致しないことはよくあることであり,納品数量についても原反裁断の関係や縫製不良の発生等から納品希望数量と実際の納品数量に多少の違いが生じるのは被請求人の取引経験からはよくあることである。
(6)乙第10号証及び乙第11号証について
請求人は,被請求人作成の乙第10号証の筆跡とユニバース作成の乙第4号証の筆跡とが酷似しているから乙第10号証についての信用性は慎重に判断されるべきであると主張しているが,被請求人が乙第4号証(発注書)を作成することなど全くあり得ないと共に,ユニバースが乙第10号証(納品書)を作成することも全くあり得ない。
筆跡自体もよく精査すれば,容易に相違点が明らかとなる(例えば,乙第4号証と乙第10号証の両方に記載されている「8」や「2」の数字の表現態様,「東」の漢字の表現態様等)。
なお,乙第11号証は佐川急便発行の送り状であるが,当該伝票類に貨物の具体的中身を詳細に記載することがないのは通常のことである。
(7)乙第12号証?乙第14号証について
乙第13号証(ユニバースが丸越商品センターに宛てた佐川急便発行の送り状)に関し,請求人は,荷物の詳細は全くもって不明であり,証拠として全く意味をなさないと主張されるが,当該送り状の品名欄には「衣料品」と記載されており,それ以上の具体的中身を詳細に記載することがないのは通常のことである。
また,乙第14号証に関し,請求人は,「カサブランカ富士店」に勤務する磯干繁生氏に一般客を装って調査員が接触し,本件商標の使用商品の販売時期について聴取した内容を甲第2号証(調査会社ニッチョーの調査報告書)として提出しているが,磯干繁生氏によると,調査員を一般顧客と認識し,通常は尋ねられることのない特定商品の販売開始日を聞くなど不審に感じながら,売れ残り商品を販売していると思われるのをおそれ,帳簿や伝票類を確認せず,咄嵯に店頭販売日を「2015年6月から」と事実に反したことを話したとのことである。
なお,乙第13号証(ユニバースが丸越商品センターに宛てた佐川急便発行の送り状)の品名欄に記載された「衣料品」の中に乙第1号証(イ)?(へ)に示されたTシャツが含まれていたことについては乙第16号証によって証明されていると確信する。
(8)新たな主張(商標法第2条第3項第2号の使用行為)
乙第4号証,乙第10号証及び乙第11号証等により明らかなとおり,被請求人は,本件商標を付した商品Tシャツ(品番:820151,820152,820154,820155)をユニバースに宛てて譲渡ないし引き渡した。
これは,商標法第2条第3項第2号所定の商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し,引き渡し等する使用行為に該当するのが明らかである。
被請求人からユニバースに対する当該商品の譲渡ないし引き渡しは前記したように,本件審判請求日より以前の平成27年5月2日である。
したがって,本件商標は,その指定商品について,審判請求の予告登録前3年以内に日本国内において使用されていたものであるから,商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきではない。
3 上申書(平成28年4月28日付け)
(1)請求人は,平成28年3月31日付け口頭審理陳述要領書において,ユニバースの発注書(乙4)がどのような方法で被請求人に交付または郵送されたのか,また,ユニバースがカサブランカ店等の納品先からの受注を受けて被請求人に発注したものであるのか,さらに前記発注書(乙4)に品番が記載されているのは極めて不自然であるなどと主張しているので,以下釈明する。
(2)平成28年4月14日の口頭審理において,被請求人が陳述したように,平成26年10月上旬頃に,被請求人が外部のデザイナー(田中智康氏)に委託して本件Tシャツのデザイン画(乙18,乙19)が完成した。この時点では品番はEB-001.EB-002などの仮の品番が付与されていた。
被請求人は,平成26年10月下旬頃,このデザイン画に基づいて,韓国の取引先にサンプルの作成依頼を行なった。
平成27年1月に入ってから,試作品が韓国の取引先から国際郵便で被請求人に届き,被請求人は各サンプルをデザイン画と一緒に同年1月中旬頃,ユニバース宛に宅急便で発送した。なお,被請求人は,この時点で各サンプルに,仮の品番から「820151」などの本来の品番を付与した。
おそらく,ユニバース代表鈴木収氏はサンプルを受け取り次第,取引先のカサブランカ店等にサンプルを持参して営業活動を行なったと考えられる。
したがって,ユニバースからの発注書(乙4)に品番が表示されていたことは何ら不自然なことではない。
なお,発注書(乙4)はユニバースから郵送によって被請求人宛て送られた。
(3)請求人は,口頭審理陳述要領書において,調査会社株式会社ニッチョーの調査報告書(甲2)No.15?16に記載の「近隣住民も『いつもシャッターが閉まっているので,最近は営業しているのかが分からない』とコメントした。尚,平日の昼間に何度か架電したが,誰も電話に出なかった。」を引用し「ユニバースのシャッターはいつも閉まっており,最近は営業しているのかが分からない」ので被請求人の主張の真偽については慎重な検討が必要である,などと述べている。
これについてユニバース代表の鈴木収氏が平成28年2月20日に作成した弁明の書面を,平成28年4月14日の口頭審理期日において提示する機会がなかったため,今般,乙第20号証として提出する。
乙第20号証のとおり,ユニバースは取引先50口座を有し,衣料品卸売業を15期に亘り継続して行っている。
(4)また,請求人は,口頭審理陳述要領書において,シーアンドシーにつき「いわゆる休眠会社となっていたと考えるのが合理的である」などと述べているが,同社は指摘されたような会社法上の問題を有しているとしても,現状,Tシャツを含めた衣料品の受託生産や販売を実際に行っている。
(5)さらに,請求人は,口頭審理陳述要領書において,「万が一被請求人により本件商標と同一の標章がその指定商品について使用された事実が存在するとしても,当該使用は商標法第50条第1項に規定する『登録商標の使用』にはあたらないいわゆる『名目的使用』に該当するもの」であるなどと述べているが,被請求人によるユニバースに対する本件商標を使用した商品Tシャツの販売行為は単なる名目的使用ではなく,実質的な使用であることはきわめて明らかである。
以上のとおり,被請求人は,要証期間内に,本件商標を付した商品Tシャツをユニバースに宛てて譲渡ないし引き渡した。

第4 当審の判断
1 被請求人が提出した証拠及びその主張について
(1)乙第1号証について
乙第1号証(イ)?(ヘ)は,1枚のTシャツについての表面,裏面,襟元のタグ,裾に付されたタグ等の写真である。
そして,(イ)(ハ)(ニ)の写真の襟元のタグには,表側に,山形の曲線と「eightball」及び「since1988」,「-M-」の表示が見て取れるものであり,また,その裏側に,本件商標が表示されている。
さらに,(へ)の写真のTシャツ本体の裾部分にも本件商標が表示された布片(所謂ピス)が縫合されている。これらの写真は,本件審判請求書の副本が送達された日以降に商標権者によって作成された。
(2)乙第2号証及び乙第3号証について
乙第2号証は,カサブランカ店(静岡県富士市本市場町702)を撮影したとされる写真であり,乙第3号証は,カサブランカ店内で販売されているTシャツを撮影したとされる写真である。これらの写真は,本件審判請求書の副本が送達された日以降に商標権者によって作成された。
(3)乙第4号証について
乙第4号証は,ユニバースがインセプトクリエイションに平成27年1月30日にTシャツを発注したとする「発注書」である。
これには,「発注日 1月30日」,「御担当者名 東城様」,及び,「品番 品名 上代 数量」の欄に,「820151 エイトボールTEE 3,900 32」「820152 〃 3,900 24」「820154 〃 3,900 18」「820155 〃 3,900 32」等の記載がある。
(4)乙第5号証について
乙第5号証は,インセプトクリエイション(担当:東城)からシーアンドシー(趙)に2015年(平成27年)2月4日にTシャツを発注したとする「デザイン書を兼ねた発注書」である。
これには,「BRAND:エイトボール」,「品番:820151」,「商品名:Tシャツ(ロゴ×バック8玉)」,「現物依頼日:2015年2月4日」等の記載があり,また,Tシャツの表と裏のデザインが表示されている。
そして,Tシャツのデザイン画の下の表中には,手書きで「現物 M L/19 20/16 18」(合計73)の数字の記載がある。
(5)乙第9号証について
乙第9号証は,シーアンドシーからインセプトクリエイション(東城)に平成27年4月30日にTシャツを納品したとする「納品書」である。
これには,シーアンドシーの社名,住所等が記載されたゴム印による表示がある。また,「品名 数量 単価」の欄に,「No820151 エイトボールTシャツ 73 858」等の記載がある。
(6)乙第10号証について
乙第10号証の上部の「納品書(控)」(No.27035)は,インセプトクリエイション(東城)からユニバースに平成27年4月30日にTシャツを納品したとする「納品書」である。
これには,「品名 数量 単価」の欄に,「820151 エイトボールロゴプリントT 32 1560」等の記載がある。
(7)乙第12号証について
乙第12号証の上部の「納品書(控)」(No.08930)は,ユニバースからカサブランカ店に平成27年5月21日にTシャツを納品したとする「納品書」である。
これには,「品名 数量 単価」の欄に,「820152 エイトボールTEE 8 1,950」,「820151 〃 8 1,950」等の記載がある。
なお,納品書の作成日付は,カサブランカ側の支払い期日締日の関係で本来5月2日であるべきところを,5月21日としたものである。
(8)乙第14号証について
乙第14号証は,丸越からのユニバースに対する平成27年7月23日付けの書面であり,これは,同社が「当社は平成27年5月3日に貴社から,佐川急便を介して・・・品名820151 エイトボールTEE 8枚,・・・の納品を受け,これら商品を遅くとも5月4日には当社が運営する衣料品店カサブランカの店舗内において販売のため陳列したこと。」を証明するものである。
2 上記1によれば,以下のとおり判断できる。
(1)使用者について
本件商標の使用においては,Tシャツに関する各種取引書類(乙4?乙10等)において,東城氏(商標権者)が「インセプトクリエイション」の屋号でTシャツの企画・販売を行っていることが認められるものである。
(2)使用商標及び使用商品について
ユニバースがインセプトクリエイションにTシャツを発注した「発注書」(乙4)には,品番として「820151」,品名として「エイトボールTEE」,数量として「32」の記載があり,また,インセプトクリエイションがシーアンドシーに発注した「デザイン書を兼ねた発注書」(乙5)には,「BRAND:エイトボール」,「品番:820151」,「商品名:Tシャツ(ロゴ×バック8玉)」,「現物依頼日:2015年2月4日」等の記載がある。
そして,シーアンドシーからインセプトクリエイションには,平成27年4月30日に,Tシャツが納品されたものであって,その「納品書」には,「品名 数量 単価」の欄に,「No820151 エイトボールTシャツ 73 858」等の記載がある(乙9)。
さらに,インセプトクリエイションからユニバースには,平成27年4月30日にTシャツが納品されたものであって,その「納品書(No.27035)」には,「品名 数量 単価」の欄に,「820151 エイトボールロゴプリントT 32 1560」等の記載がある(乙10)。
そして,上記した「デザイン書を兼ねた発注書」に表示されたTシャツのデザインは,乙第1号証のTシャツの写真(乙1,(イ)(ロ))と同じデザインである。
このTシャツには,襟元のタグの表側に,山形の曲線と「eightball」及び「since1988」,「-M-」の表示が見て取れるものであり,また,その裏側に,本件商標が表示されている(乙1,(イ)(ハ)(ニ))。
さらに,このTシャツ本体の裾部分にも本件商標が表示された布片(所謂ピス)が縫合されている(乙1,(ヘ))。
なお,上記Tシャツは,ユニバースから丸越が運営するカサブランカ店に納品され,同店舗で販売されていた(乙12,乙14)。
加えて,請求人が調査を依頼した株式会社ニッチョーの調査員は,2015年9月3日に丸越が運営するカサブランカ富士宮店において,品番820151のTシャツを購入している(甲2)。
そうすると,インセプトクリエイションは,Tシャツの襟元のタグやTシャツ本体の裾部分に本件商標を付して商品「Tシャツ」を販売をしていたものであって,当該商品は,実際にカサブランカ店で販売されていたことが優に推認できるものである。また,上記Tシャツは,本件審判の請求に係る指定商品に含まれる商品である。
してみれば,インセプトクリエイション(商標権者)がユニバースに販売した「Tシャツ」の襟元のタグや本体裾部分に付されて使用されている商標は,本件商標と同一の商標と認められるものである。
(3)本件商標が付された商品の販売時期等について
ユニバースがインセプトクリエイションにTシャツを発注した「発注書」(乙4)には,「1月30日」の記載がある。
そして,インセプトクリエイションがシーアンドシーに発注した「デザイン書を兼ねた発注書」(乙5)には,「現物依頼日:2015年2月4日」の記載がある。
また,シーアンドシーがインセプトクリエイションにTシャツを納品した「納品書」(乙9)には,平成27年4月30日の記載がある。
さらに,インセプトクリエイションがユニバースにTシャツを納品した「納品書(No.27035)」(乙10)には,平成27年4月30日の記載がある。
なお,上記Tシャツは,ユニバースがカサブランカ店に納品し,その「納品書(控)No.08930」(乙12)には,平成27年5月21日の記載がある。
そうすれば,上記Tシャツに関するユニバースの「発注書」(乙4),インセプトクリエイションの「デザイン書を兼ねた発注書」(乙5),シーアンドシーの「納品書」(乙9),インセプトクリエイションの「納品書(No.27035)」(乙10)等の日付けによれば,インセプトクリエイションが本件商標をTシャツに付して,平成27年4月30日にユニバースにそのTシャツを販売した事実があるというのが相当である。
してみれば,上記Tシャツについて,インセプトクリエイションによる取引の状況を鑑みれば,要証期間内(平成24年6月15日?平成27年6月14日までの期間。)において,インセプトクリエイションがTシャツに本件商標を付し,これを販売したことが認められるものである。
(4)小括
上記(1)ないし(3)によれば,本件商標の商標権者は,本件審判の請求の登録前3年以内に,その指定商品中「Tシャツ」について,本件商標を付してこれを譲渡していた事実が確認できるものであるから,その行為は,「商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡・・・する行為」(商標法第2条第3項第2号)に該当するものと認められる。
3 請求人の主張について
(1)乙各号証の証拠の信用性について
請求人は,「被請求人は,本件商標を付した商品Tシャツをユニバースに宛てて譲渡ないし引き渡した行為が商標法第2条第3項第2号所定の使用行為に該当すると主張する。しかしながら,被請求人の主張する本件商標の使用事実は信憑性に疑義があり,またこれに関連して提出された乙第1号証?乙第20号証の各証拠も,要証期間内の本件商標の指定商品への使用とは全く無関係の資料であるか,もしくは信用性に問題があるものである。口頭審理においては,被請求人の主張する本件商標の使用事実の信憑性並びに各証拠の信用性について,更に検証をする必要がある。」旨を主張し,様々な点について釈明を求めるなどしている。
しかしながら,上記1及び2に記載した証拠及びそれらによる事実認定については,これらの証拠が偽りのものであるとか,事実では無いという証拠はないのであるから,また,被請求人は,その一部についての釈明を行っており,それも首肯できるものであるから,たとえ,請求人の様々な点に関する釈明がなされないからといって,上記2の判断に影響があるものとはいえない。
(2)名目的使用について
ア 請求人は,「被請求人提出の乙第1号証?乙第20号証の各証拠の信用性には問題があり,したがって被請求人の主張する本件商標の使用事実は信憑性に疑義があるものであるが,仮に万が一被請求人により本件商標と同一の標章がその指定商品について使用された事実が存在するとしても,当該使用は商標法第50条第1項に規定する『登録商標の使用』にはあたらないいわゆる『名目的使用』に該当するものであり,商標法第50条第1項による取り消しを免れるものではない。・・・本件においては,本件商標と同一の標章を使用されたいわゆる『エイトボールTEE』の制作を被請求人が依頼したとするシーアンドシーが,もはや活動を行っていないいわゆる休眠会社であると推認されること,被請求人とシーアンドシーとの間で継続的な取引関係があったとは考えがたく,その後のユニバースヘの商品の納品/カサブランカ店での販売のための陳列も,一度限りで行われたと推認されることから,被請求人による標章の使用は『業として』の使用には該当せず,単に不使用取消の審判を免れる目的での名目的使用に該当すると考えられ,よって本件商標は,その登録が取り消されるべきである。」旨を主張している。
確かに,シーアンドシーが本店所在地を移転してから,いまだその商業登記簿について本店所在地の移転に係る変更登記申請をしていないことや(甲3),本店所在地が移転した場合には2週間以内に変更の登記を行う必要がある(会社法第915条第l項)としても,インセプトクリエイションがシーアンドシーに発注した「2015年2月4日」及び,シーアンドシーからインセプトクリエイションにTシャツが納品された「平成27年4月30日」は,シーアンドシーが本店所在地を移転した前後であって,移転したからといって,直ちに,シーアンドシーがもはや営業活動を行っていないということはできない上,上記の商業登記簿によっては,変更の登記がなされていないという状況が確認されるのみである。
そうすれば,直ちに,乙第9号証の信用性には疑義があるということはできないものであって,また,その取引におけるシーアンドシーからインセプトクリエイションに納品されたTシャツは,その後,実際にカサブランカ店で販売されているものである。
してみれば,インセプトクリエイションがシーアンドシーと取引していた「2015年2月4日」から「平成27年4月30日」頃に,シーアンドシーがいわゆる休眠会社であるということはできない。
また,インセプトクリエイションとシーアンドシーとの間で継続的な取引関係がなかったとしても,本件商標が付されたTシャツが販売された事実が,要証期間内に一度限りでも行われていれば,被請求人による標章の使用は認められるものであって,「『業として』の使用には該当せず,単に不使用取消の審判を免れる目的での名目的使用に該当する」との主張は,妥当なものとはいえない。
イ 請求人は,「被請求人は,請求人の日本におけるディストリビューターである株式会社ジャックに対し,平成27年5月19日付け通知書を送付し,同社が被請求人の本件商標に係る商標権を侵害している旨主張している(甲4)。被請求人がユニバースに商品を発送したと主張する平成27年5月1日が,被請求人が株式会社ジャックに上記通知書を発送した同月19日ころよりわずかに前であること,口頭審理において被請求人本人が,審判長の問いに対し本件商標の使用の事実は答弁書で言及された取引『1件だけ』であることを明確に認めたことからすると,仮に被請求人の主張する本件商標の使用の事実が存在するとしても,被請求人の主張する使用の事実は,不使用取消審判請求を予期して行った所謂駆け込み使用に該当することが強く疑われ,名目的使用にすぎないというべきである。」旨を主張している。
しかしながら,請求人の述べる内容は,単なる憶測の域を出ないものであって,その主張を裏付ける何らの証拠も提出されていない。
よって,請求人の主張は,いずれにおいても失当である。
4 むすび
以上のとおり,被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,商標権者がその請求に係る指定商品中「Tシャツ」について,本件商標を使用していたことを証明したものと認められる。
したがって,本件商標の登録は,その請求に係る指定商品について,商標法第50条の規定により,その登録を取り消すことができない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲(本件商標)





審理終結日 2016-06-02 
結審通知日 2016-06-06 
審決日 2016-06-20 
出願番号 商願2003-84273(T2003-84273) 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (Y25)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 佐藤 松江 
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 榎本 政実
井出 英一郎
登録日 2004-06-18 
登録番号 商標登録第4779724号(T4779724) 
代理人 八鍬 昇 
代理人 岩瀬 ひとみ 
代理人 谷口 登 
代理人 八木 智砂子 
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