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審決分類 審判 査定不服 商3条2項 使用による自他商品の識別力 登録しない(当審拒絶理由) W30
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない(当審拒絶理由) W30
管理番号 1331346 
審判番号 不服2015-22053 
総通号数 213 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2017-09-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-14 
確定日 2017-07-19 
事件の表示 商願2015-8168拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第30類「菓子」を指定商品として、平成27年1月30日に登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由(要点)
原査定は、本願商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審において通知した拒絶の理由
審判長は、請求人に対し、平成28年4月5日付けで、以下に示す新たな拒絶の理由を通知した。
本願商標は、別掲1のとおり、立体的形状からなり、その円形面を顔の輪郭に見立て、円のほぼ中央上部の左右に、2つの小さな黒色の縦長楕円形の点を、人の目のように描き、その下方に下向きの黒色の円弧を人の口のように描き、全体が人の笑顔を認識させる構成からなるものである。
そして、別掲2によれば、まんじゅうやクッキー等の碁石状や球状等の立体的形状の円形面を顔の輪郭に見立て、アイシングやチョコレート、型押し、焼き付け等で、円のほぼ中央上部の左右に、2つの小さな円若しくは縦長楕円形の点を、人の目のように表し、その下方に下向きの円弧を人の口のように表した、人の笑顔を認識させる菓子が、普通に製造、販売されている実情がある。
そうすると、菓子の碁石状や球状等の立体的形状の円形面を顔の輪郭に見立て、全体が人の笑顔を認識させる構成は、それ自体が、出所表示機能や自他商品識別標識としての機能を有するというよりも、需要者の購買意欲を喚起する程度の、商品の一形態、一形状として認識されるものというのが相当である。
してみると、本願商標は、その指定商品に使用しても、これに接する取引者、需要者に、菓子の一形態、一形状を表したものと認識させるにすぎないものであるから、単に商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標と判断するのが相当である。
したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。

4 当審において通知した拒絶の理由に対する請求人の意見
請求人は、上記3の拒絶の理由に対し、要旨以下のとおり、意見を述べている。
(1)本願商標は、円形状の立体的形状が本願の指定商品の形状自体であるとしても、当該形状に識別力を有する笑顔の図形を付した構成は、需要者の購買意欲を喚起する程度の、商品の一形態、一形状として認識されるにとどまらず、(a)顔の輪郭を表現する立体的な円形状がほぼ真円であり、(b)やや縦長の楕円形からなる両目を、口の両端の幅に合わせて平行に配し、(c)一本の線からなる口を、円形状の下約3分の1の輪郭(曲線)に沿ってやや緩やかな弧に描き、(d)全体として、真円の輪郭と目と口のそれぞれの構成要素をほぼ等間隔にバランスよく配したという特徴をもって、需要者に対して自他商品の識別力を発揮するものである。
したがって、本願商標の笑顔を表現した構成自体が、生来的に識別力を備えていると考えるのが相当である。
(2)拒絶の理由において指摘するように、碁石状や球状等の立体的形状の円形面を顔の輪郭に見立て、その表面に目と口を描いて、全体で人の笑顔を認識させる菓子が、普通に製造、販売されている事情があることに異論はないが、そのような使用態様が、出所表示機能や自他商品識別標識としての機能を有するか否かは、本来、商標法第26条に規定される商標的使用の問題であって、登録要件としての識別力の判断で考慮されるべきではない。
商標法第3条第1項第3号識別力は、出願に係る商標自体の識別力の有無で判断されるべきであり、その使用態様によって判断が左右されるべきものではないから、上記実情に係る使用例が多数存在しているからといって、直ちに本願商標に識別力がないということにはならない。
(3)請求人は、1935年に創業した老舗の菓子メーカーで、東京、大阪、兵庫、愛知、北海道に直営店舗があり、請求人のウェブサイト及び大手ショッピングサイトでオンライン販売も行っているところ、本願商標に係る菓子は、請求人の看板商品として、人気の商品となっており、ウェブサイト上のブログ等で数多く紹介されている。
以上からすると、本願商標は、請求人が製造、販売する菓子として、全国的に広く一般に知られるに至っており、現に出所表示機能、自他商品識別機能を発揮していることは明白である。
また、たとえ、本願商標について生来的に識別力がないと判断される場合であったとしても、商標法第3条第2項の要件を満たしているといえる。
(4)菓子の立体的形状からなる商標が、立体的形状の表面に付されたデザインや形状等によって自他商品識別機能を発揮すると判断されて登録が認められていることからすれば、本願商標について識別力がないと判断することには、理由がない。

5 当審の判断
本願商標は、当審において通知した上記3の拒絶の理由(商標法第3条第1項第3号該当)により、商標登録を受けることができないものと判断する。その理由は、以下のとおりである。
(1)商標法第3条第1項第3号該当性について
本願商標は、別掲1のとおり、薄桃色に着色された碁石状の立体的形状の一面に、2つの小さな黒色の縦長楕円形と下向きの黒色の弧線とを描いて、全体として人の笑顔を認識させる構成からなるものである。
ところで、本願の指定商品である菓子を取り扱う業界においては、需要者の関心を引き、購買意欲を喚起するなどのため、商品の形状や色彩を工夫することが一般に広く行われているところ、本願商標を構成する薄桃色の色彩は、ありふれた単色といえるものであり、また、別掲2のとおり、商品の立体的形状の一面に、2つの小さな円形又は楕円形と下向きの弧線とを描くなどして、全体として人の笑顔を認識させる構成からなるものが、複数の事業者によって製造、販売されている実情が認められる。
そうすると、本願商標をその指定商品に使用しても、これに接する需要者は、これを自他商品の識別標識として認識するというよりは、むしろ商品の立体的形状そのものとして認識するとみるのが相当である。
してみると、本願商標は、その指定商品との関係において、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標というべきであり、商標法第3条第1項第3号に該当する。
(2)商標法第3条第2項の要件を具備するか否かについて
請求人は、本願商標は、請求人が製造、販売する菓子として、全国的に広く一般に知られるに至っており、現に出所表示機能、自他商品識別機能を発揮しているから、たとえ、本願商標について生来的に識別力がないと判断される場合であったとしても、商標法第3条第2項の要件を満たしているといえる旨主張し、証拠方法として、第31号証ないし第49号証を提出している。
そこで、請求人の提出する証拠方法をみるに、請求人は、1935年(昭和10年)に創業した菓子メーカーであり、東京、大阪、神戸、名古屋及び札幌に直営店舗を持ち、チョコレート、マシュマロ、ラスク、クッキー等の菓子を販売しており(インターネットを用いた通信販売を含む。)、その菓子には、本願商標と同様の色彩及び立体的形状からなるチョコレート(以下「本件チョコレート」という。)が含まれていることが認められる(第42号証?第45号証)。
また、本件チョコレートは、2012年(平成24年)に取扱いを開始したAmazonのほか、楽天市場及び大丸松坂屋といった、他人が運営するインターネットを用いた通信販売サイトにおいて販売されていること(第46号証、第47号証、第49号証)、個人のブログ等で紹介されていること(第31号証?第39号証)が認められる。
しかしながら、本件チョコレートが、いつから、どこで、どれくらいの数量が販売されたかは明らかではなく、また、その商品紹介等も、上記の通信販売サイト上のものを除けば、少数の個人のブログ等によるものにすぎず、積極的な広告宣伝活動や、新聞、雑誌等に記事が掲載された事実は見いだせない。
その他、請求人の提出する証拠方法を総合してみても、本願商標が、需要者において、請求人の業務に係る商品であることを表示する商標として認識されているとまでは認めることができない。
したがって、本願商標は、使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものとはいえないから、商標法第3条第2項の要件を具備するものではない。
(3)その他の請求人の主張について
ア 請求人は、本願商標は、円形状の立体的形状が本願の指定商品の形状自体であるとしても、当該形状に識別力を有する笑顔の図形を付した構成は、需要者の購買意欲を喚起する程度の、商品の一形態、一形状として認識されるにとどまらず、(a)顔の輪郭を表現する立体的な円形状がほぼ真円であり、(b)やや縦長の楕円形からなる両目を、口の両端の幅に合わせて平行に配し、(c)一本の線からなる口を、円形状の下約3分の1の輪郭(曲線)に沿ってやや緩やかな弧に描き、(d)全体として、真円の輪郭と目と口のそれぞれの構成要素をほぼ等間隔にバランスよく配したという特徴をもって、需要者に対して自他商品の識別力を発揮するから、本願商標の笑顔を表現した構成自体が、生来的に識別力を備えていると考えるのが相当である旨主張する。
しかしながら、上記(1)で述べたとおり、本願商標は、薄桃色に着色された碁石状の立体的形状の一面に、2つの小さな黒色の縦長楕円形と下向きの黒色の弧線とを描いて、全体として人の笑顔を認識させる構成からなるものであり、請求人が本願商標の特徴として挙げる上記(a)ないし(d)は、需要者にそのように認識させる要素というべきものである。
そして、本願の指定商品である菓子を取り扱う業界において、本願商標の立体的形状を構成する碁石状の形態及び薄桃色の色彩は、商品自体の形状(形態)を構成する要素として普通に採択されているものであり、また、別掲2に示すとおり、細部については上記(a)ないし(d)と相違する点があるものの、総じて商品の立体的形状の一面に、2つの小さな円形又は楕円形と下向きの弧線とを描くなどして、全体として人の笑顔を認識させる構成からなるものが複数の事業者によって製造、販売されている実情がある。
そうすると、本願商標が上記(a)ないし(d)を具備するものであるとしても、それらは、全体として人の笑顔を認識させる立体的形状の構成要素にとどまるものであって、かつ、そのように認識させる要素として際立った特徴を有するともいい難いものであるから、本願商標に接する需要者に、自他商品識別標識としての機能を果たすものとして認識されないというのが相当である。
したがって、請求人による上記主張は、採用することができない。
イ 請求人は、別掲2に示された使用態様が、出所表示機能や自他商品識別標識としての機能を有するか否かは、本来、商標法第26条に規定される商標的使用の問題であって、登録要件としての識別力の判断で考慮されるべきではないから、別掲2の使用があるからといって、直ちに本願商標に識別力がないということにはならない旨主張する。
しかしながら、登録出願に係る商標が商標法第3条第1項第3号に該当するか否かは、当該商標の構成態様と指定商品に基づき、その指定商品に係る取引の実情を考慮して、当該商標が、取引者、需要者により、当該指定商品の品質等を表示したものとして認識されるか否かにより決すべきところ、別掲2に示したものは、本願商標の同号該当性を判断する上で、本願商標に接する取引者、需要者の認識を認定するために採り上げた、本願の指定商品である「菓子」に係る取引の実情である。
そして、このような実情を踏まえて本願商標をみるときは、その指定商品との関係において、取引者、需要者により、自他商品の識別標識とは認識されず、商品の立体的形状そのものとして認識され、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標として商標法第3条第1条第3号に該当するものであること、上記(1)のとおりである。
したがって、請求人による上記主張は、採用することができない。
ウ 請求人は、菓子の立体的形状からなる商標が、菓子の表面に付されたデザインや形状等によって自他商品識別機能を発揮すると判断されて登録が認められていることからすれば、本願商標について識別力がないと判断することには、理由がない旨主張する。
しかしながら、請求人の挙げる登録例は、本願商標とは商標の構成態様等において相違し、事案を異にするものであって、そのような例が存することをもって、本願商標の商標法第3条第1項第3号該当性の判断が左右されるものではない。
したがって、請求人による上記主張は、採用することができない。
(4)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当し、かつ、同条第2項の要件を具備するものではないから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1 本願商標 ※色彩は原本参照
(1図)


(2図)


別掲2
(1)「ITS’DEMO」のウェブサイトにおいて、「ITS’DEMOオリジナルお菓子ランキング」の見出しの下、「4位 ニッコリスマイルクッキー」として、人の笑顔を認識させる菓子の画像が掲載されている。
(http://www.world.co.jp/itsdemo/brandblog/695/)
(2)「楽天」のウェブサイトにおいて、「岩手県奥中山高原の憩いの場 手づくりお菓子【結カフェ】おからクッキー(豆乳入り)」の見出しの下、人の笑顔を認識させる菓子の画像が掲載されている。
(http://item.rakuten.co.jp/iwate2/000370-003/)
(3)「阪急オンラインショッピング」のウェブサイトにおいて、「『エクチュア』ミミロンド」の見出しの下、「毎年、人気のスマイルフェイス。中は、シンプルなトリュフチョコ。ほんの少しリキュールが入っています。」の記載とともに、人の笑顔を認識させる菓子の画像が掲載されている。
(https://web.hankyu-dept.co.jp/ecshop/shohinDetailDisplay.do?mstShohinId=77357)
(4)「SAC about cookies」のウェブサイトにおいて、「ミニクッキーギフト(おうち小)」の見出しの下、人の笑顔を認識させる菓子の画像が掲載されている。
(http://sac-about-cookies.com/?pid=40518328)
(5)「ことらや」のウェブサイトにおいて、「にこちゃんまんじゅう(薯蕷饅頭)」の見出しの下、人の笑顔を認識させる菓子の画像が掲載されている。
(http://www.kotoraya.jp/item/2663/)
(6)「和菓子 青野」のウェブサイトにおいて、「どら焼き」の見出しの下、人の笑顔を認識させる菓子の画像が掲載されている。
(http://www.azabu-aono.com/recommend/dorayaki.html)
(7)「みなとや」のウェブサイトにおいて、「ニコニコスマイルせんべい」の見出しの下、人の笑顔を認識させる菓子の画像が掲載されている。
(http://www.minatoya.biz/blog/%E3%83%8B%E3%82%B3%E3%83%8B%E3%82%B3%E3%82%B9%E3%83%9E%E3%82%A4%E3%83%AB%E3%81%9B%E3%82%93%E3%81%B9%E3%81%84/)
(8)「鷹巣 晩梅」のウェブサイトにおいて、「笑内」の見出しの下、「焼印のにこにこマークがとてもかわいらしく 何故かニッコリしてしまうまんじゅうです。」の記載とともに、人の笑顔を認識させる菓子の画像が掲載されている。
(http://www.banbai.com/okasinai.html)


審理終結日 2017-04-20 
結審通知日 2017-05-12 
審決日 2017-05-24 
出願番号 商願2015-8168(T2015-8168) 
審決分類 T 1 8・ 17- WZ (W30)
T 1 8・ 13- WZ (W30)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 早川 真規子 
特許庁審判長 田中 亨子
特許庁審判官 松浦 裕紀子
田中 敬規
代理人 中村 仁 
代理人 土生 真之 
代理人 大塚 啓生 

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