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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y2932
管理番号 1330247 
審判番号 取消2015-300936 
総通号数 212 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2017-08-25 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2015-12-24 
確定日 2017-06-26 
事件の表示 上記当事者間の登録第4859476号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4859476号商標の商標登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4859476号商標(以下「本件商標」という。)は、「ベリーベリー」の片仮名を標準文字で表してなり、平成16年8月6日に登録出願、第29類「加工野菜及び加工果実,冷凍果実,冷凍野菜,カレー・シチュー又はスープのもと」及び第32類「清涼飲料,果実飲料,飲料用野菜ジュース,乳清飲料」を指定商品として、同17年4月22日に設定登録され、その後、同27年4月14日に第32類についてのみ商標権の存続期間の更新登録がされ、現に有効に存続しているものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、平成28年1月14日である。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証から甲第25号証までを提出した。
1 請求の理由
本件商標は、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても、その指定商品につき使用されていないものであるから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)使用に係る商品について
乙第1号証から乙第7号証までには年月日が示されておらず、当該書証に記載された商品が、本件商標に対する取消審判の請求の登録前の3年間である平成25年1月14日から同28年1月13日までの期間(以下「要証期間」という。)内に、製造・販売された事実が見当たらないため、本件審判の証拠としての適格性を有しない。乙第1号証、乙第2号証、乙第6号証及び乙第7号証の商品は、被請求人のニュースリリース(甲3及び甲4)によれば、要証期間外である2004年頃に発売されたものと認められるが、いずれも「BERRY&BERRY」の表示であり、本件商標とは、「&」の有無という顕著な差異があるため、社会通念上同一の商標でないことは明らかである。
(2)本件商標と社会通念上同一の商標の使用について
被請求人は、乙第5号証、乙第9号証及び乙第10号証で使用されている「ベリーベリー」及び「WS ベリーベリー」の商標は、本件商標と社会通念上同一であると主張するが、前記(1)のとおり、乙第5号証に係る商品が要証期間内に製造・販売された事実は確認できない上に、バーコード欄には「SAMPLE」と記載されており、これが市場において実在した商品であるかは疑わしい。また、乙第9号証及び乙第10号証の取引書類に記載された「ベリーベリー」の文字は、乙第8号証に記載された「WorldSelection ベリー&ベリー」の文字を取引の都合上簡易的に又は簡略化して「ワールドセレクション ベリーベリー」、「WS ベリーベリー」と表したにすぎないものであるから、これらの文字は乙第5号証に記載された「ベリーベリー」の使用ではなく、乙第8号証に記載された商標の使用であると認めるのが相当である。
(3)商標としての使用には該当しない点について
乙第8号証において、3つの商品の品名として、「デルモンテ WorldSelection」のあとに「パイナップル」、「アルフォンソマンゴー」及び「ベリー&ベリー」と標記されているところ、これらの語は商品の原材料表示であり、商標としての機能を果たしていない。
また、本件商標は平成17年4月に設定登録されたものであるところ、「ベリーベリー」の文字は、果実を含む飲料や食品について原材料を表す表示として普通に用いられている実情がある(甲5から甲21)。
(4)答弁書に記載された判決例について
乙第17号証の事例は、登録商標及び使用に係る商標の一部に被告のものとして著名な文字を含むものであり、登録商標の文字自体に自他識別力がないか又は極めて弱い本件商標とは事案を異にする。
また、乙第18号証の事例における使用に係る商標は、その使用態様から品名として使用されていると認められるものであり、登録商標及び使用に係る商標はいずれも指定商品との関係で識別力を喪失した文字ではない点で、本件とは事案を異にする。
3 口頭審理陳述要領書(平成28年9月8日)
(1)使用に係る商標「ベリー&ベリー」と本件商標が社会通念上同一でないこと
使用に係る商標「ベリー&ベリー」の構成中「&」は、左右の語を結合する記号であるが、英語「and」の記号として我が国でも広く使用されていることからすれば、構成全体として「ベリー『と』ベリー」の観念を生じさせる主要な構成要素というべきであって、自他商品識別機能を果たさない単なる付加的要素ではない。また、特定の意味で親しまれた「ベリーベリー」という語が存在するわけでもないのに、「&」を省略した上、さらに構成左右の「ベリー」を結合して「ベリーベリー」が自他識別機能を発揮する部分であるとの被請求人の主張は失当である。
してみると、使用に係る商標「ベリー&ベリー」からは、その構成文字に相応して「ベリーアンドベリー」の称呼及び「ベリーとベリー」の観念が生ずるのに対し、本件商標は、構成文字に相応して「ベリーベリー」の称呼が生じる一方で、特定の観念は生じないから、同商標は同一の称呼及び観念を生ずるものではない。
よって、使用に係る商標は、本件商標とは社会通念上同一ではない。
(2)乙第9号証及び乙第10号証について
被請求人は、上記証拠をもって、当該書類の頒布が商標法第2条第3項第8号のいわゆる「広告的使用」に該当すると主張するが、商標が出所表示機能・出所識別機能を果たす態様で用いられているといえない場合には、形式的には商標法第2条第3項各号に掲げる行為に該当するとしても、当該行為は、商標の「使用」に当たらないと解するのが相当である(甲23及び甲24;平成13年(行ケ)第190号)。
乙第9号証及び乙第10号証の雑口注文票に掲載された「ベリーベリー」の文字は、注文の対象となる乙第8号証のニュースリリースに掲載された「World Selection」シリーズの果実飲料の「原材料」ないし「味」を表すにすぎず、出所表示機能・出所識別機能を果たす態様で用いられているものではない。
さらに、乙第8号証では「World Selection ベリー&ベリー」と記載されていることからすれば、乙第9号証及び乙第10号証の雑口注文票において、単に記載の手間を省くために「&」が省略され「ベリーベリー」と記載されたにすぎず、本件商標に対する信用の蓄積作用が認められる「使用」の一態様とは認められないものであるから、不使用取消を免れる「使用」があったとはいえないものである。
(3)乙第22号証について
かかる証拠における「WS ベリーベリー 200G」等の記載は、乙第9号証及び乙第10号証と同様、「ベリー&ベリー」なる果実飲料を特定するための略記にすぎない。形式的に「ベリーベリー」の文字が記載されているからといって、本件商標が要証期間内に、「商標として」使用されたとはいえない。
(4)乙第23号証について
乙第23号証は、社内資料(日報)であり、商標法上の「広告」又は「取引書類」ではない。
また、該資料に記載された「ベリーベリー」の文字は乙第8号証と同様、「ベリー&ベリー」なる果実飲料を特定するための略記にすぎない。よって、社内資料に形式的に「ベリーベリー」の文字が記載されているからといって、要証期間内に本件商標が商標として使用されたとはいえない。
4 上申書(平成28年10月17日)
(1)乙第9号証及び乙第10号証について
口頭審理における被請求人の陳述によれば、上記証拠はサンプル品についてのものである。商標法第50条における商品とは、「市場において独立して商取引の対象として流通に供される物でなければならないと解すべきである」(平成16年(行ケ)第337号)とされるところ、サンプル品は、それ自体が市場において独立して商取引の対象として流通に供される物とはいえない。してみれば、サンプルの注文票である上記証拠は「商品に関する取引書類」ではないから、被請求人の行為は商標法第2条第3項第8号には該当しない。
(2)乙第22号証について
上記証拠は、注文主である伊藤忠食品株式会社(以下「伊藤忠食品」という。)が、被請求人に商品の納品を依頼する発注書であり、被請求人自身が頒布したものではないため、本件商標権者である被請求人が自己の商品の出所を表示するために使用する商標が記載された書類とはいえない。
(3)被請求人の陳述に対する反論
被請求人は、被請求人の企業内では「ベリーベリー」の文字が「World Selection」シリーズの「ベリー&ベリー」を特定する通称として使用されてきた、と陳述するが、このような「通称」としての使用はあくまでも単なる内部的な取決めにすぎず、提出された証拠において「ベリーベリー」の文字が形式的に記載されているとしても、それのみをもって信用の蓄積作用が生じるとは認めがたい。これを本件商標の使用と認めることは、実体とかけ離れた名目的な使用行為に基づいて登録商標の使用を認めることとなりはなはだ不合理である。
よって、かかる記載をもって本件商標と社会通念上同一の商標が要証期間内に使用されたとは認められない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、「本件審判請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証から乙第55号証まで(枝番号を含む。)を提出した。
1 答弁の理由
被請求人は、要証期間内はもとより、それ以前より継続して本件商標を使用している。
(1) 使用に係る商品
乙第1号証から乙第7号証までは、それぞれ、被請求人による本件商標の使用に係る商品(以下、第3において「本件商品」という。)及びそれらの包装容器に付着されたラベルの写真であり、品名として、果実ミックスジュース又は混合果汁入り飲料の表示が、販売先として、被請求人の名称及び住所が示されている(乙2、乙5及び乙7)。また、乙第8号証は、被請求人の平成27年3月30日付けニュースリリースであり、ベリー類の味わいを引き立てた3種類のプレミア果汁飲料が「ワールドセレクションシリーズ」として、平成27年4月1日より全国で販売されることが示されている。
(2)使用の時期その他の使用の事実
被請求人は、本件商品を平成16年より断続的に販売してきたものであり、少なくとも、平成25年1月以降現在に至るまで、小売又は卸売事業者を通じて取引の流通過程においている(乙8から乙10)。
また、本件商品は、被請求人の関連会社である日本デルモンテ株式会社(乙11、以下「日本デルモンテ」という。)が製造する商品であり、同商品は被請求人の関連会社であるキッコーマン食品株式会社(乙12、以下「キッコーマン食品」という。)の物流センターを通じ総武物流株式会社(乙13、以下「総武物流」という。)に出荷される。
ア 平成27年9月30日付け雑口注文票
乙第9号証は、雑口注文票の写しであり、卸売事業者である関東食糧株式会社(乙14、以下「関東食糧」という。)に出荷を指示するための注文票である。キッコーマン食品の業務用営業本部が同社物流センター宛に発行し、さらに同センターから総武物流宛に送信されたものである。当該注文票のFAX送信日時欄には「15-09-30;11:04」と印字され、右端部分には「物流 A様」及び「Bセンター長様」と記載され、日付欄には「2015年9月30日」、得意先欄には「関東食糧」、品名欄には「ワールドセレクション ベリーベリー」、品名欄の下部には「43070 ベリーベリー・・・・2015.03.20製造」と記載されている。
したがって、乙第9号証が、被請求人の関連会社から送信され、さらに、総武物流に送信された平成27年9月30日付けの注文票であることは明らかであり、当該注文票は、本件商品に関する取引書類に該当する。
イ 平成27年10月6日付け雑口注文票
乙第10号証は、雑口注文票の写しであり、小売店であるザ・プリンスパークタワー東京に配達するため東京プリンスホテル(乙15)に出荷を指示するための注文票であり、被請求人の関連会社であるキッコーマンビジネスサービス株式会社(乙16、以下「キッコーマンビジネスサービス」という。)がキッコーマン食品の物流センター宛に送信し、さらに同センターから総武物流宛に送信されたものである。当該注文票のFAX送信日時欄には「15-10-07;08:52;キッコーマンビジネスサービス(株)人事部」と印字され、その下には「受注C C様 よろしくお願い致します。」及び「物流センターD様」と記載され、日付欄には「10月6日」、配達先欄には「ザ・プリンスパークタワー東京」、品名欄には「WS ベリーベリー200」、注文票の下部には「43070 WS ベリーベリー2015.05.07製造品」と記載されている。
したがって、乙第10号証が、被請求人の関連会社であるキッコーマンビジネスサービスから送信され、さらに、総武物流に送信された平成27年10月6日付けの注文票であることは明らかであり、当該注文票は、本件商品に関する取引書類に該当する。
(3)使用に係る商標
本件商標は、「ベリーベリー」の標準文字よりなるところ、使用に係る商標「ベリーベリー」及び「WS ベリーベリー」(乙5、乙9及び乙10)は、社会通念上同一である。
(4)まとめ
商標の不使用を事由とする商標登録取消しを論ずるときには、商標がその指定商品について何らかの態様で使用されておれば十分であって、識別標識としての使用に限定しなければならぬ理由は、全く考えられない(乙17、審決注:「平成2年(行ケ)第48号」の誤記と解される)。すなわち、何が商標法50条1項にいう登録商標の使用に当たるかについては、原則として、商標法2条3項の規定によりこれを決するのが相当であり、また、商標法にいう商標の使用は、商品又は包装に使用することに限られるわけではないというべきである(乙18;平成13年(行ケ)第23号)。
上述のとおり被請求人は、本件商標を、取消請求に係る指定商品「果実飲料」に関する取引書類に、本件商標と社会通念上同一と認められる標章を付して頒布しているのであるから(商標法第2条第3項第8号)、要証期間内に日本国内で使用していたものとはいえないとする請求人の主張は失当である。
2 口頭審理陳述要領書(平成28年8月25日)
(1)本件商標の使用事実
被請求人の主要グループ会社である日本デルモンテは、本件商標と社会通念上同一の商標「BerryBerry」及び「ベリーベリー」又は「Berry&Berry」及び「ベリー&ベリー」を付した果実飲料を、平成16年2月より現在に至るまで断続的に製造してきた(乙1から乙8まで、乙20、甲3及び甲4)。
乙第8号証は、被請求人による果実飲料に係る要証期間内のニュースリリースであり、果実飲料シリーズの広告であるところ、様々な果実をブレンドした「ベリー&ベリー」が発表されている。使用に係る商標「ベリー&ベリー」の構成中の「&」は、「and」の略記号であり、左右の語を単に結合するにすぎない上、「ベリーアンドベリー」との称呼は比較的冗長であるため、「ベリー」の文字部分が要部として捉えられ、これより生ずる称呼、観念をもって取引に資されることも少なくない。そうとすれば、「ベリー&ベリー」の自他識別機能を果たす部分は「ベリーベリー」にあるということができるので、使用に係る商標「ベリー&ベリー」は本件商標と社会通念上同一の商標と認められるべきものである。したがって、商品の広告を内容とする情報に使用に係る商標「ベリー&ベリー」を付して電磁的方法により提供する行為は、本件商標の使用(商標法第2条第3項第8号)に該当する。
(2)乙第9号証及び乙第10号証について
乙第9号証及び乙第10号証で使用されている「ベリーベリー」が「WorldSelection ベリー&ベリー」を特定するために使用されたものであったとしても、それらの事実からこれら証拠が、単に不使用取消を免れる目的で、名目的に商標を使用するかのような行為と認めるに足る合理的根拠はない。これら証拠が取引書類であることは明らかであるから、商標法第2条第3項第8号にしたがって、被請求人(通常使用権者を含む。)が取引書類に本件商標を付したものである。また、商品の名称を簡略化したものが商標として使用されるのはよくあることで過去の判決においても認められている(乙18)。
(3)追加の証拠
使用に係る商標中「&」の左右に反復して表された「ベリー」の文字部分を要部として捉え、簡易迅速を尊ぶ取引の場において「ベリー&ベリー」の外に「ベリーベリー」をも商標として使用してきたことを立証するための証拠として、伊藤忠食品が被請求人のグループ会社であるキッコーマン飲料株式会社(以下「キッコーマン飲料」という。)宛に発行した注文書を提出する(乙22)。例えば、乙第22号証の1では、商品名欄に「デルモンテ WS ベリーベリー 200G」との記載がある。これらは、要証期間内の果実飲料に関する取引書類に標章「ベリーベリー」を付したものを頒布する行為であり、商標法第2条第3項第8号に該当する。
また、乙第23号証は、キッコーマン飲料が実施した試飲販売等の店頭プロモーションの日誌であり、例えば、2015年5月3日付けの日報には、「【ワールドセレクション ベリーベリー】冷却して提供 ☆接客例 ベリーベリー ってなぁに?『ブルーベリーとクランベリーのベリーとベリーですよ!!』」との記載がある。これらはキッコーマン飲料が委託した人材派遣業者の販売スタッフが作成したものであり、被請求人(通常使用権者を含む。)が、要証期間内に、店頭でのプロモーション活動をした事実を示すものである。
(4)まとめ
以上により、乙第8号証ないし乙第10号証、乙第21号証ないし乙第23号証(審決注:乙第22号証及び乙第23号証の誤記と解される。)のとおり、要証期間内に、被請求人(通常使用権者を含む。)により、本件取消審判に係る「果実飲料」に、本件商標と社会通念上同一の標章が使用されたことは明らかである。
3 上申書(平成28年10月31日)
(1)社会通念上同一の商標について
使用標章と登録商標の社会通念上の同一性は、使用標章の構成、外観、取引の実情に照らし、自他商品の識別機能を見出すことができる部分により認めるべきであるところ(平成19年(行ケ)第10178号)、使用に係る商標の構成中「&」は単に左右の語を結合する接続詞に過ぎないから、簡易迅速を尊ぶ取引の場においては、これを捨象し、左右に反復して表された「ベリー」の文字部分を要部と捉え、これより生じる称呼、観念をもって取引に資されてきた。よって、被請求人の使用する商標と本件商標はいずれも「ベリーベリー」との同一の称呼が生じ、また、小果実類との観念も同じくする社会通念上同一の商標である。
したがって、被請求人が果実飲料に関するニュースリリースに「ベリー&ベリー」の標章を表示して提供する行為は、商標法第2条第3項第8号にいう行為に該当する。
(2)乙第9号証及び乙第10号証について
請求人は、サンプルの注文票である上記証拠は、商品に関する取引書類ではないから、商標の使用には該当しないと主張するが、被請求人は果実飲料の販売事業をおこなっている者であり、営業活動の一環として、取引の見込み客に対し、有償販売の対象物である果実飲料と同じ物を交付したものであるから、これらが無償で引き渡されたとしても、被請求人が販売する商品であることに変わりなく、そのことのみをもって、当該果実飲料が、独立して商取引の対象となることを目的とした「商品」ではないとはいえない(乙31;平成27年(行ケ)第10157号)。
また、請求人は、「ベリーベリー」の文字は「World Selection ベリー&ベリー」を略記したにすぎないから本件商標と社会通念上同一ではない旨主張するが、「ベリーベリー」の文字が被請求人の商品を特定するために記載されているということは、とりもなおさず、当該文字が、被請求人商品の自他識別標識として使用されていることを意味する。したがって、被請求人が「ベリーベリー」の文字からなる商標を表示して、総武物流にファクシミリ送信した行為は、商標法第2条第3項第8号にいう「商品に関する取引書類に標章を付して頒布する行為」に該当する。
(3)乙第22号証について
この注文書類は、注文者たる伊藤忠食品と受注者たる被請求人の互いの意思を表示するための注文書及び注文請書として運用されていることは明らかであり、商品を特定するために「ベリーベリー」の文字が表示されている。 被請求人が取引先にファクシミリ送信した行為は、商標法第2条第3項第8号にいう「商品に関する取引書類に標章を付して頒布する行為」に該当する(乙33;平成13年(行ケ)第530号)。
(4)請求人の陳述に対する反論
本件事案の審理の対象は、本件商標の使用の有無であるから、本件商標と同一の標章が取引書類に付されていればそれで足りるのであり、それが他の通称か否かは問題外である。
簡易、迅速を尊ぶ商取引において、商品を特定するために商品名の略語が用いられていることは自明であるが、たとえ略語であったとしても、それを活用することにより、取引者等にある特定の商品を思い浮かべることができれば、その略語は、自他商品の識別標識としての機能を果たしていることもまた自明である(乙35から乙55)。

第4 当審の判断
1 本件商標の使用について、被請求人が提出した証拠によれば、以下のとおりである。
(1)果実ミックスジュース(濃縮還元)について
乙第1号証は、「BERRY&BERRY」と表示された「濃縮還元 ブルーベリー&クランベリー」の「果汁100%(果肉入り)」の瓶飲料の写真であり、乙第2号証は、同様の表示があるパッケージを展開した写真であり、「販売者:キッコーマン株式会社」及び「デルモンテ ベリー&ベリー」の記載並びに「KIKKOman」の表示がある。
これらによれば、本件商標権者は、果実ミックスジュース(濃縮還元)の瓶容器及び該飲料の容器として使用するパッケージに「BERRY&BERRY」及び「ベリー&ベリー」の文字を表示したものであり、果実ミックスジュース(濃縮還元)は、本件商標の指定商品中、第32類「果実飲料」に含まれる商品と認められる。
しかしながら、上記証拠からは、「BERRY&BERRY」及び「ベリー&ベリー」の文字が、「果実ミックスジュース(濃縮還元)」について使用された時期は証明されていない。
そして、本件商標は、「ベリーベリー」の片仮名を書してなるのに対し、果実ミックスジュース(濃縮還元)の容器に表示された商標は、「BERRY&BERRY」の欧文字又は「ベリー&ベリー」の片仮名からなるものであるから、いずれも、本件商標の書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標とも、本件商標の平仮名、片仮名及びローマ字の文字を相互に変更するものともいうことができない。
また、本件商標からは、「ベリーベリー」の称呼が生ずるのに対し、「BERRY&BERRY」及び「ベリー&ベリー」の文字からは、「ベリーアンドベリー」の称呼が生ずるものであるから、同一の称呼を生ずるものとはいえない。
さらに、本件商標は、特段の観念を生じないものであるのに対し、「BERRY&BERRY」及び「ベリー&ベリー」の文字からは、「(食用小果実である)ベリーとベリー」程の観念を生ずるものであるから、同一の観念を生ずるものとはいえない。
したがって、「BERRY&BERRY」及び「ベリー&ベリー」の文字は、本件商標と社会通念上同一の商標ということができない。
(2)混合果汁入り飲料について
乙第3号証及び乙第20号証は、「BerryBerry」と表示された「ブルーベリー&クランベリー」の「果汁35%(果肉入り)」の缶飲料の写真、乙第4号証は、「BerryBerry」と「Kikkoman」の表示がある「果汁60%(果肉入り)」の瓶飲料の写真、乙第5号証は、乙第3号証と同種の缶飲料の外見を展開した写真、乙第6号証は、「BERRY&BERRY」と表示した乙第3号証と同種の瓶飲料の写真、乙第7号証は、「BERRY&BERRY」又は「ベリー&ベリー」と表示した該飲料の容器として使用するパッケージを展開した写真であり、これらの混合果汁入り飲料は、本件商標の指定商品中、第32類「果実飲料」に含まれる商品と認められる。
そして、「BerryBerry」の欧文字(乙3から乙5、乙20)は、本件商標とは、片仮名及びローマ字の文字を相互に変更するものであって「ベリーベリー」の同一の称呼を生ずるから、社会通念上同一のものということができる。
しかしながら、上記乙第3号証から乙第5号証及び乙第20号証からは、「BerryBerry」の文字が、「混合果汁入り飲料」について使用された時期は証明されていないため、要証期間内に本件商標と社会通念上同一の商標が使用されていたということはできない。
また、「BERRY&BERRY」又は「ベリー&ベリー」(乙6及び乙7)の文字は、上記(1)に記載した理由と同様の理由により、本件商標と社会通念上同一の商標ということができず、かつ、該文字が、混同果汁入り飲料について使用された時期も証明されていない。
(3)果汁飲料(World Selection)について
ア 乙第8号証は、2015年3月30日付けの本件商標権者のニュースリリースであり、これには、「デルモンテから、プレミアム果実飲料!『World Selection』シリーズ新発売!」の記載の下、4月1日より、「デルモンテ World Selection」シリーズを全国で新発売すること、「World Selection ベリー&ベリー」は、ぶどう、りんご、ブルーベリー、レモン、クランベリーを使った果汁100%の果実ミックスジュースであることなどが記載されている。
そして、乙第28号証は、本件商標権者の「World Selection」、「ベリー&ベリー」と表示された「濃縮還元 果汁100%」の瓶飲料の写真であり、乙第29号証の蓋部分の写真によれば、「17.04.27」(賞味期限)の表示及び乙第30号証のラベル(裏面)の記載によれば、「原材料名:果実(ぶどう、りんご、ブルーベリー、レモン、クランベリー)」の表示がある。
上記によれば、本件商標権者は、2015年(平成27年)4月1日に発売する「World Selection」シリーズの「ぶどう、りんご、ブルーベリー、レモン、クランベリーを使った果汁100%の果実ミックスジュース」の広告に「ベリー&ベリー」の文字を表示したものである(乙8)。
そして、該飲料の発売日(2015年(平成27年)4月1日)は要証期間内であり、「17.04.27」(平成29年)を賞味期限とする商品がある(乙28から乙30)から、本件商標権者は、該商品を発売後、継続して販売しているものと推認される。
また、果汁100%の果実ミックスジュースは、本件商標の指定商品中、第32類「果実飲料」に含まれる商品と認められる。
しかしながら、本件商標は、「ベリーベリー」の片仮名を書してなるのに対し、果汁100%の果実ミックスジュースの容器に表示された商標は、「ベリー&ベリー」の文字からなるものであるから、上記(1)に記載した理由と同様の理由により、本件商標と社会通念上同一の商標ということができない。
イ 乙第9号証は、要証期間内の2015年(平成27年)9月30日付け「雑口注文票(社内使用)」であり、「得意先」の欄には「関東食糧」及び「品名」の欄には手書きで「ワールドセレクション ベリーベリー」の記載がある。そして、FAX送信日時として「15-09-30;11:04」の印字がある。
被請求人は、同号証について、本件商標権者の関連会社であるキッコーマン食品が同社の物流センター宛に注文票を発行し、さらに物流センターから同じく関連会社の総武物流宛に送信されたものである旨主張する。
たしかに、該証拠は、本件商標権者の関連会社間での要証期間内における商品の注文票とはいえるものの、上記の品名欄における手書きの「ワールドセレクション ベリーベリー」の記載は、乙第8号証の本件商標権者のニュースリリースで表示されている「デルモンテ World Selection ベリー&ベリー」の商品を指示するものとして、上記関連企業間で便宜上略記して使用されたものとみるのが相当である。したがって、該証拠によっては、乙第8号証の「ベリー&ベリー」の商標を付した果実飲料が、要証期間内である平成27年9月に取引に供されたことを推認できるにとどまるものであり、本件商標が使用されたことを証明するものではない。そして、「ベリー&ベリー」の文字が本件商標と社会通念上同一とはいえないことは上記(1)のとおりである。
また、乙第10号証は、要証期間内である2015年(平成27年)10月6日付け「雑口注文票(社内使用)」であり、「配達先」の欄には「ザ・プリンスパークタワー東京」及び「品名」の欄には手書きで「WS ベリーベリー 200」の記載がある。そして、FAX送信日時として「15-10-07;08:52」の印字がある。
被請求人は、同号証について、本件商標権者の関連会社であるキッコーマンビジネスサービスがキッコーマン食品の物流センター宛に注文票を送信し、さらに物流センターから総武物流に送信されたものである旨主張する。
しかしながら、上記の品名欄における手書きの「WS ベリーベリー」の記載は、乙第8号証の本件商標権者のニュースリリースで表示されている「デルモンテ World Selection ベリー&ベリー」の商品を指示するものとして、上記関連企業間で便宜上略記して使用されたものとみるのが相当であるから、本件商標の使用を証明するものではないことは、上記乙第9号証と同様である。
また、乙第22号証(枝番号を含む)は、要証期間内である2015年(平成27年)9月17日、同年10月22日、同年11月4日、同年11月24日及び同年11月26日付けの本件商標権者のグループ会社であるキッコーマン飲料と伊藤忠食品との間で交わされた商品の発注書と注文請書を兼ねている書類であり、「商品名」欄に「デルモンテ WS ベリーベリー 200G」という記載と、FAX送信日時として「15-09-17;13:51」の印字がある(乙22の1)。
しかしながら、上記の商品名として記載された「デルモンテ WS ベリーベリー 200G」は、乙第8号証の本件商標権者のニュースリリースで表示されている「デルモンテ World Selection ベリー&ベリー」の商品を指示するものとして、上記企業間で便宜上略記して使用されたものとみるのが相当であるから、本件商標の使用を証明するものではないことは、上記乙第9号証及び乙第10号証と同様である。
他に、乙第9号証、乙第10号証及び乙第22号証の取引書類に本件商標(社会通念上同一のものを含む。)の表示は、見当たらない。
2 被請求人の主張について
被請求人は、「ベリー&ベリー」の構成中「&」は、「and」の略記号であり、左右の語を単に結合するにすぎない上、「ベリーアンドベリー」との称呼は比較的冗長であり、「ベリー」の文字部分が要部として捉えられ、これより生ずる称呼、観念をもって取引に資されることも少なくない。そうとすれば、「ベリー&ベリー」の自他商品の識別機能を果たすのは、「ベリーベリー」にあるということができるので、「ベリー&ベリー」は本件商標と社会通念上の同一の商標と認められるべきものである旨、主張する。
しかしながら、本件商標は、「ベリーベリー」の片仮名を横書きしてなるものであるから、該商標と「ベリー&ベリー」の表示とが、商標法第50条第1項にいう、「書体のみに変更を加えた同一の文字からなる商標、平仮名、片仮名及びローマ字の文字の表示を相互に変更するものであって同一の称呼及び観念を生ずる商標」であるか否かについて検討すべきである。
そうすると、被請求人のいう、「&」は、「and」の略記号であり、左右の語を単に結合するにすぎないこと、「ベリーアンドベリー」との称呼は比較的冗長であること等の主張は、本件商標と社会通念上同一であるか否かの判断において採用すべきものということができない。
また、被請求人は、乙第9号証、乙第10号証及び乙第22号証の注文書において「ベリーベリー」の記載があることをもって、商標法第2条第3項第8号にいう「商品に関する取引書類に標章を付して頒布する行為」に該当する旨主張する。
しかしながら、同号は、「商標の広告的使用」を定義したものであるところ、それは、取引書類でいえば、書式中に定型的に表示された企業名、企業ロゴ、商品ブランド等の使用をいうのが相当であって(例えば、乙第33号証の判決例でいえば、FAX送信状の下部に付された企業ロゴの使用)、上記書証のように、企業の担当者間の注文票において個別の商品を指示するために記載された商標の略記をもって同号にいう標章の使用であるというのは相当ではない。
さらに、乙第23号証の試飲販売・展示会の日誌において、「ベリーベリー」と記載した者がいるとしても、それは、これらの日誌を記載した者が、商品がわかる程度に商品名「ベリー&ベリー」を略して記載したにすぎないものである。
3 むすび
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが指定商品のいずれかについて、本件商標(社会通念上同一のものを含む。)の使用をした事実を証明したものということはできない。
また、被請求人は、本件商標をその指定商品に使用していなかったことについて、正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定に基づき、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2017-04-21 
結審通知日 2017-05-02 
審決日 2017-05-16 
出願番号 商願2004-73183(T2004-73183) 
審決分類 T 1 31・ 1- Z (Y2932)
最終処分 成立  
特許庁審判長 田中 亨子
特許庁審判官 小松 里美
青木 博文
登録日 2005-04-22 
登録番号 商標登録第4859476号(T4859476) 
商標の称呼 ベリーベリー 
代理人 黒川 朋也 
代理人 森川 邦子 
代理人 長谷川 芳樹 
代理人 工藤 莞司 
代理人 特許業務法人RIN IP Partners 

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