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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W354142
管理番号 1329338 
異議申立番号 異議2014-900363 
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2017-07-28 
種別 異議の決定 
異議申立日 2014-12-26 
確定日 2017-06-29 
異議申立件数
事件の表示 登録第5704606号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5704606号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第5704606号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおり,濃い灰色系の色に彩色された亀甲模様とおぼしき模様を施した矩形の枠内に緑色のややレタリングされた「UMB」の欧文字を書してなり,平成26年3月14日に登録出願され,第35類「広告業,経営の診断又は経営に関する助言,市場調査又は分析,商品の販売に関する情報の提供,ホテルの事業の管理,文書又は磁気テープのファイリング,コンピュータデータベースへの情報編集,広告用具の貸与,求人情報の提供,織物及び寝具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,ティーシャツの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,おむつの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,履物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,タオルの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,布製身の回り品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,身の回り品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,電子計算機用プログラムの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,電子応用機械器具及びその部品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,電気機械器具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,印刷物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,紙類及び文房具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,運動具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,おもちゃ・人形及び娯楽用具の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,ダウンロード可能な音楽又は音声の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,録音済み記録媒体の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,楽器及びレコードの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,ダウンロード可能な映像又は画像の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,録画済みDVDの小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,録画済み記録媒体の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,電子出版物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供」,第41類「技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与,映画・演芸・演劇又は音楽の演奏の興行の企画又は運営,通信を用いて行う映像又は画像の提供,映画の上映・制作又は配給,通信を用いて行う音楽又は音声の提供,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)」及び第42類「気象情報の提供,機械・装置若しくは器具(これらの部品を含む。)又はこれらの機械等により構成される設備の設計,デザインの考案,電子計算機用プログラムの設計・作成又は保守,電子計算機・自動車その他その用途に応じて的確な操作をするためには高度の専門的な知識・技術又は経験を必要とする機械の性能・操作方法等に関する紹介及び説明,機械器具に関する試験又は研究,電子計算機の貸与,電子計算機用プログラムの提供」を指定役務として,同年8月22日に登録査定,同年9月26日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が,登録異議の申立ての理由として引用する商標は,別掲2のとおりの構成からなり(以下「引用商標」という。),役務「ラッパーの競技大会の主催,競技大会の模様を収録したDVDや録音したCDの販売若しくはインターネット上でのダウンロード販売,ストリーミングの提供,Tシャツなどの関連商品の販売」に使用していると主張しているものである。
なお,このうち「ラッパーの競技大会の主催」との役務は,「ラップミュージックコンクールの開催」と,「ストリーミングの提供」との役務は,「ストリーミング形式による音楽の提供」というものと解して,以下,審理を進めることとする。

第3 登録異議の申立ての理由(要旨)
申立人は,本件商標は商標法第4条第1項第10号,同第15号及び同第19号に該当し,同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとし,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第36号証(枝番号を含む。)を提出している。
1 商標法第4条第1項第10号について
本件商標と引用商標は,共に「UMB」のアルファベット文字からなる商標である。引用商標は申立人の商標として取引者,需要者の間に広く知られている。また,指定商品も互いに抵触するものである。
2 商標法第4条第1項第15号について
引用商標は,申立人の商標として取引者,需要者の間に広く知られているから,これと類似する本件商標がその指定商品に指定された場合,商品の出所について混同を生ずるおそれがある。
3 商標法第4条第1項第19号について
引用商標は,申立人の商標として取引者,需要者の間に広く知られている。本件商標の代表者はもともと申立人の運営するレコード会社に所属しており,同会社を離れた後に,本件商標が申立人の著名商標と知りながら出願している。よって本件商標は不正の目的をもって登録を得たものである。

第4 審尋に対する申立人の回答(概要)
平成27年5月15日付け審尋に対し,申立人は,以下のとおりの回答をした。
回答の内容は,DVD表紙,テレビ番組,雑誌掲載記事,日本テレビ「NexT」放映の証拠資料,販売枚数等報告書,決勝大会公演精算表,「『魁!』音楽番付?EIGHT」で放映されたことを証する書面等,地区大会写真,地区大会カタログポスター,UMBの動画,出場者リスト,各地区大会等の会場での物販明細及び会場の写真,各会場の収容人数表及び観客席を撮影した写真についての資料を提出し,引用商標が,需要者の間に広く認識されている商標であることを述べた。

第5 本件商標に対する取消理由
商標権者に対して,平成27年8月31日付けで通知した本件商標の取消理由(要旨)は,次のとおりである。
1 引用商標の周知性について
登録異議申立人(以下「申立人」という。)の提出に係る証拠(各項の括弧内に掲記)及びその主張によれば,以下の事実を認めることができる。
(1)申立人について
申立人は,各種イベントの企画・立案,制作並びにその運営及び管理,レコード,コンパクトディスク,ビデオソフト等の録音録画物の企画,制作並びに販売などを主業とし,平成15年6月27日に設立された会社である(甲16)。
(2)申立人の活動状況等について
申立人は,2005年(平成17年)から現在に至るまで10年にわたり,「ULTIMATE MC BATTLE」(アルティメット エムシー バトル)(以下「UMB」という場合がある。)という名でラップのフリースタイル大会を毎年主催している(甲4?甲8,甲28)。
申立人が主催するUMBでは,全国30箇所で地区予選大会を行い,各地区の優勝者が参加して年末に行われる決勝大会でその年のチャンピオンが決まる。
また,申立人は,UMBの各大会の様子を収めたDVDに「UMB」の文字を付して販売している(甲18)。
(3)引用商標を付したDVDについて
ア 申立人が作成し販売したDVDの各表紙(甲18)は, DVD1枚につき,裏表が見開きとなった形で全体として1枚の表紙になっており,少なくとも24枚のDVDが作成されている。これら全てのDVDの表紙には「UMB」の文字が表示されている。
イ 甲第18の2号証,甲第18の4号証ないし甲第18の8号証は,2006年,及び2009年から2014年までに毎年1回開催される決勝大会の模様を収めたDVDである。甲第18の9号証ないし甲第18の17号証は,各地方大会で特に人気の高かったMCバトルを東日本エリア及び西日本エリアに分けて収めたものである。甲第18の18号証ないし甲第18の24号証は,各地方大会のMCバトルを収めたものである。
ウ 表紙左側に記載された収録演目の下に「Libra Record」及び「有限会社ライブラ」と記載されており,製作販売しているのが申立人であることがわかる。
また,会社名の近くに各DVDの販売価格が記載されている。それによれば,各決勝大会のDVDの販売価格が概ね3,000円(但し2006年は2,000円)であること,ベスト盤及び地区大会盤が概ね2,000円であることがわかる。
エ 申立人が製作販売したUMBの決勝大会(2014年)DVD(甲18の8)がオリコンチャート6位にランクインし,TBSの音楽情報番組「CDTV」(カウントダウン・ティーヴイ)(毎週土曜日深夜24:58?放送)の平成27年4月11日放送分にて,このことを番組中に紹介した画像であり,甲第18の8号証が画面中央に表示され,その左上に「6位」の文字が表示されている(甲19の3)。
オ 申立人が現在に至るまで販売したDVD等の数量の明細であり,各会社の販売数量と,ネット通販大手のアマゾンで販売された数量の明細がある(甲24の1?4)。
以上により,申立人のUMBを収録したDVD販売数が販売会社を通じて約5万8000枚,ネット販売にて2000枚以上であることから,少なくとも6万枚を下らないこと,2005年から現在に至るまで,少なくとも1億4,000万円?1億6,000万円程度の売上があることがわかる。
(4)引用商標を付したテレビ番組について
ア 日テレ「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!」放映を証する資料
日本テレビ放映の上記番組で申立人の「UMB」の文字と「Libra」の文字が表示されている静止画がある(甲20の4)。
イ 有料音楽チャンネルSSTVでの放映を証する資料
申立人は平成26年9月テレビ番組の企画制作を行う株式会社ユーコムから依頼を受け,同会社が制作するスペースシャワーTV放映に係わる「千原ジュニアの鼓膜」という番組内で「UMB」及び申立人会社のロゴ「libra-record,com」が使用され,放映された(甲21)。
(5)引用商標を付した雑誌等
ア 2014年(平成26年)10月23日 静岡新聞夕刊 「即興ラップ対戦で競う」の見出しの下,「1対1で即興ラップを競う『MCバトル』の全国大会『UMB』静岡予選が18日,沼津市のイベント会場『ループサウンズ』で開かれた。」の記載及び,写真の下に,「UMB静岡予選の決勝で対戦するY.A.S(右)と泉ピン太郎=18日,沼津市のループサウンズ」の記載がある(甲13)。
イ 「WOOFIN‘」2015年5月号 124頁に「PEEP OUT」の見出しの下,「UMB 2014」全試合を収録した豪華DVDがついにドロップ」の項に,甲第18の8号証の表紙と「libra Records」の文字の記載がある(甲22の2)。
ウ 「Ollie」2014年5月号 152頁に「フリースタイルの若きキングの待望のデビュー作がアツい!」の見出しの下,「UMB 2連覇も果たした22歳の若きMC,R-指定が遂に待望のアルバムデビューを果たした。」の記載及び,「TOUR INFORMATION」の項に,「■『UMB OPENING GAME』4月19日,■『UMB宮崎』4月26日,■『UMB熊本』4月27日,■『UMB福岡』4月28日」の記載がある(甲22の3)。
(6)関連商品の販売
申立人は,UMB大会DVD,MCのラップアルバム等のCD,Tシャツ,タオル,前売りチケット等関連商品に「UMB」の文字を付して,取扱店や「Libra オンラインショップ」を通じて販売し,イベント会場などにおいても販売している(甲10,甲34)。
(7)決勝大会の公演清算表
甲第25の1号証ないし4は,毎年12月に開催されるUMB決勝大会の収支計算(精算)表である。申立人はUMB決勝大会のチケット販売や舞台設営,広告等を株式会社株ディフェンス・アンド・アソシェイツという広告制作会社に委託しており,同会社が作成した2011年?2014年の決勝大会における収支精算表である。
また,決勝大会の参加者は,2011年は,約1,000人であるが,決勝大会の集客人数は毎年1,200人?1,400人といったところであることがわかる。
(8)引用商標が付されたポスター等の広告
引用商標が付された各地区大会のポスターについて,それぞれ,日付,大会名,場所が以下のように記載されている。
2013年11月3日「UMB 岐阜予選」clubBLOCK(甲6),2014年4月19日「UMB 茨城予選A」古河spider(甲6), 2008年12月27日「UMB GRAND CHAMPION SHIP2008」 OSAKA NAMBA HATCH(甲7),2013年12月30日「UMB GRAND CHAMPIONSHIP 2013」LIQUIDROOM(甲8),2009年11月1日「UMB 福岡予選」EARLY BELIEVERS,2010年5月30日「UMB北九州大会」Voodoo Lounge」,2011年6月11日「UMB 福岡大会」Voodoo Lounge,2012年6月2日「U.M.B.福岡大会」Voodoo Lounge,2012年6月1日「U.M.B.長崎大会」PARFUM B1,2012年8月25日「広島大会」MUGEN5610 3F,2013年8月31日「広島大会」club BORDER,2013年6月8日「宮崎予選」WEATHER KING,2014年4月26日「宮崎」WEATHER KING,同月27日「熊本」club JAIL,同月28日「福岡」MUSK「九州地区予選」,2014年8月17日「広島予選」club BORDER,2015年5月2日「宮崎」WEATHER KING,同月3日「福岡」Voodoo Lounge「九州予選」において,「UMB」の文字が表示され,これらのポスターの中で,2012年6月1日の長崎大会,同月2日の福岡大会,同年8月25日の広島大会,2013年6月8日の宮崎予選,同年8月31日の広島大会,2014年4月26日?28日の九州地区予選,同年8月17日の広島予選,2015年5月2日,3日の九州予選のポスターには,申立人の略称である「Libra」の文字が表示されている(甲28)。
(9)引用商標が広告等して掲示されている各地区大会の写真
引用商標が掲示されている各地区の大会について,それぞれ,日付,大会名,場所が以下のように記載されている。
2008年12月27日「UMB 2008 GRAND CHAMPION SHIP」 なんばHATCH(甲27の8),2009年12月26日「UMB 2009 GRAND CHAMPION SHIP」 川崎CLUB CITTA‘(甲27の10),2010年9月19日「UMB 千葉準予選」BELT(甲27の14),2013年10月5日「UMB 兵庫予選」太陽と虎(甲27の35),2014年9月26日「UMB 千葉予選」LOOM LOUNGE(甲27の37),2014年10月4日「UMB 兵庫予選」太陽と虎(甲27の41),2014年9月15日「UMB 京都予選」BLACK BOXxx(甲27の42),2015年4月29日「UMB 新潟予選」club SEVEN(甲27の43)の写真において,「UMB」の文字が表示されている。
2 商標法第4条第1項第19号該当性について
(1)引用商標の周知性
上記1で認定した事実によれば,引用商標は,申立人の業務に係る役務「ラッパーの競技大会の主催,競技大会の模様を撮影したDVDや録音したCDの販売若しくはインターネット上でのダウンロード販売,ストリーミングの提供,Tシャツなどの関連商品の販売」を表示するものとして,長年にわたり継続して使用されてきたものであり,本件商標の登録出願日(平成26年3月14日)には既に,我が国のラッパーのファンやラップミュージックの愛好家である需要者の間に広く認識されていたものと認めることができる。そして,その周知性は,本件商標の登録査定日(平成26年8月22日)においても継続していたものということができる。
(2)本件商標と引用商標の類似性
本件商標は,前記1のとおり,濃い灰色系の色に彩色された亀甲模様とおぼしき模様を施した矩形の枠内に緑色のややレタリングされた「UMB」の文字を書してなるところ,該文字よりは,「ユウエムビー」の称呼が生じるものである。
観念においては,「UMB」の文字は,辞書に載録されていない語であって,造語とみるのが相当であるから,特定の観念が生じないものである。
他方,引用商標は,別掲2のとおり,黒い四角形に濃い青色でややレタリングされているが,「UMB」の文字を書してなるところ,該文字よりは,「ユウエムビー」の称呼を生じ,上記のとおり,該文字は,造語とみるのが相当であるから,特定の観念が生じないものである。
そうすると,本件商標と引用商標は,黒い四角形の中にややレタリングされた「UMB」の文字からなる構成であり,その「UMB」の文字の形状は,ほぼ同一であるから,外観上,極めて紛らわしい類似の商標である。
また,称呼においては,本件商標から「ユウエムビー」の称呼が生じ,引用商標からも,「ユウエムビー」の称呼が生ずるものであるから,両商標の称呼は同一である。
そして,観念においては,両商標とも,「UMB」の文字は,特定の観念を生じないものであるから,比較することはできない。
してみると,本件商標と引用商標とは,観念においては比較できないが,外観及び称呼において,極めて類似性の高い商標といわざるを得ない。
(3)不正の目的
ア 申立人の主張及び提出された甲第18号証ないし甲第20号証,甲第22号証ないし甲第24号証,甲第27号証及び甲第28号証によれば,申立人の会社名である「有限会社ライブラ」の文字や申立人の略称である「Libra」の文字が記載されており,申立人自らがDVDを制作販売し,テレビ会社と打合せをし,申立人のDVDを雑誌に掲載し,各地区の予選会場の写真や各地区予選のポスターなどを制作していることが認められる。
そして,商標権者である「株式会社鎖GROUP」は,平成23年10月5日に設立され,「CD,レコード,DVD,ビデオの企画・制作・販売,イベントの企画,運営」等を事業とする会社であり,代表取締役は,川上国彦氏(以下,「川上氏」という。)である(甲17)。
また,当時無名のラップミュージシャンであった本件商標権者の代表者川上氏は,2002年(平成14年)ころ,知り合いを通じて申立人代表者と知り合った。申立人は川上氏のライブ活動を主催したり,同人のCDを制作し販売するなどしていた。川上氏は2004年(平成16年)ころより,ラッパーとして注目され始め,同人の出場した大会のDVDやCDが売れ出した。そこで,申立人は,川上氏が出場した大会をまとめたDVDの売上額の約10%,CD売上の50%相当額を川上氏に支払ったが,2012年のUMB決勝大会にゲストで出演したのを最後に,連絡がとれなくなってしまった。
イ 上記によれば,引用商標は,本件商標とは極めて類似性の高い商標であること,本件商標の登録出願時において,引用商標が申立人役務を表示するものとして,ラッパーのファンやラップミュージックの愛好家である需要者の間において,広く認識されていたこと,「UMB」の語は,既成語とはいえず,申立人が考案した造語であることから,商標として採択されやすいものではないこと,などを併せ考慮すると,「CD,レコード,DVD,ビデオの企画・制作・販売,イベントの企画・運営」等を行っている商標権者は,本件商標の登録出願当時,引用商標がラッパーのファンやラップミュージックの愛好家の分野等において広く認識されていたことを知りながら,引用商標が未だ我が国において商標登録されていないことを奇貨として,それに化体された業務上の信用と顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)し,不正の利益を得る目的など,不正の目的のために引用商標と類似する本件商標を先に登録出願し,設定登録をうけたものと推認せざるを得ないものである。
(4)小活
そうすれば,本件商標は,申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして,需要者の間に広く認識されている引用商標と極めて類似する商標であって,不正の目的をもって使用する商標といわなければならない。
3 むすび
以上によれば,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものと認められる。

第6 商標権者の意見の要旨
商標権者は,前記第5の取消理由に対して,要旨以下のように意見を述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第29号証(枝番号を含む。)を提出している。
1 「UMB」が創設されるに至った経緯
取消理由通知書において,「『UMB』の語は申立人が考案した造語である」とあるが,この認定には誤りがある。「UMB」が開催されるに至った経緯においては「B BOY PARK」というイベントが重要なので,以下にその概要を述べる。「B BOY PARK」は,1997(平成9)年から,年1回,代々木公園野外ステージで行われる,日本におけるヒップホップ最大規模のブロックパーティである(乙1)。「B BOY PARK」においては,1999年からMCバドルが開催され,当時は,事実上日本で最大の権威を有するMCバドルイベントとしてヒップホップ愛好家に認知されていた。商標権者の代表者である川上氏は,2002(平成14)年に行われた同MCバドルの優勝者である「漢」と同一人物である(乙1?3)。しかし,同MCバドルは,2003(平成15)年,一部参加者の威圧的な振る舞いを背景として,審査員が一時席を外すなどの混乱が生じ,観客の大きな失望を招いた。
そこで,川上氏は,2004(平成16)年,川上氏考案の「過激な売り文句と賞金制度のオーディエンス参加型のジャッジシステム」によるMCバトルのイベントを自身が立ち上げ,友人とともに,MCバドルに特化したイベントを立ち上げた。同イベントは,当初「お黙り!ラップ道場」という名前でスタートしている。
その後,川上氏らは,究極の日本一を決める大会という趣旨で,「お黙り!ラップ道場」に「ULTIMATE MC BATTLE(アルティメットエムシーバトル)」「UMB」という副題をつけるようになり,以後「ULTIMATE MC BATTLE(アルティメットエムシーバトル)」「UMB」の名称でMCバドルを行うようになったが(乙4?6),「UMB」という名称は川上氏が,そのロゴデザインはデザイナーである友人が考案したものである。
上記のように,「UMB」のルールは川上氏が考案したものであり,その「UMB」がラッパーを目指す者やラップミュージック愛好家の間で広く認識されるようになった理由は,当時,事実上日本で最大の権威を有するMCバドルイベントで優勝した川上氏が考案し創設したためであり,川上氏の人気と信用があって初めて今日のような認識の広がりがあるといえる(乙9?15)。
2 申立人との関係
川上氏は,同級生らと2000(平成12)年に音楽グループである「MS CRU」を結成し(2003(平成15)年に「MSC」に改名),音源を自主制作した。
一方,申立人代表者である西原慶祐氏(以下「西原氏」という。)は,川上氏と以前からの知り合いであったところ,2003(平成15)年5月に申立人を設立し,レーベルとして「MSC」をバックアップするという申し出をし,「MSC」はこれに応じた。その際に,申立人は,川上氏らと,(1)音源作成,イベント等のマネジメントをするのは申立人,(2)経費負担も申立人,(3)売り上げについては50%を分配する,という内容の合意をした。
しかし,申立人は,「川上氏にDVDの売上額の約10%,CD売上の50%相当額を支払った」とあるが,これは部分的な履行を意味している。実際には上記合意の大半は履行されていない。
また,取消理由通知書において,「当時無名のラップミュージシャンであった川上氏と2002(平成14)年ころ知り合った」「川上氏は2004(平成16)年ころよりラッパーとして注目され始めた」とあるが,川上氏は2002(平成14)年に行われた,当時事実上日本で最大の権威を有する「B BOY PARK」のMCバトルイベントで優勝し,翌年2003(平成15)年でも優勝候補と期待されており,西原氏と知り合った2002(平成14)年時点において「無名」であるはずがない。
「UMB」については,「MSC」としての音楽活動とは別に川上氏が単独で立ち上げたものであったため,上記の契約においても特段の定めはなく,「UMB」のイベント運営については西原氏への企画の報告のみとなっており,運営資金,赤字リスクなども川上氏らが個人でまかない,申立人の会社事業とは全く関係のないイベントとなっていた。しかし申立人は,「UMB」が人気を博するにつれ,その利益に目をつけ,同イベントについても関与をし始め,あたかも申立人が仕切っているかのような活動を始めた。すなわち申立人こそが,川上氏が始めたMCバトルイベント「UMB」に後からただ乗りをしたのである。
申立人は異議申立書において,「UMB」の創設に川上氏が関係していることを一切触れていないが,申立人のウェブサイトには以下の記載が見られる(乙16?17)。
「当イベントは2005年に弊社所属アーティスト『MSC』の『MC漢』のもとに今まで不正や癒着のまかり通っていた,この手のバドルコンテストに異を唱えたことが始まりで企画された…。」これは申立人が,「UMB」が前身を有するイベントであること,イベントとしての正統性を重視するものであること,「UMB」の創設者が川上氏であることを意図的に隠している証拠にほかならない。
3 申立人との決別
申立人は,川上氏を含む所属アーティストに対し,売上の50%を支払うという合意をしていた。しかし前記の合意は2003(平成15)年から数年間,川上氏に対してのみ部分的に履行されたにとどまり,申立人はその後「粗利の50%」次いで「経費1000万円に届かなければ払わない」などと前言を翻し,実際には分配金を支払っていない。現在,係争化している。
西原氏は,申立人従業員に対して暴言・暴行等の不法行為を繰り返しており,川上氏は,一連の状況において,その遵法性の欠如や従業員に対する悪質な行為の数々を見て,西原氏に愛想を尽かし,申立人との関係を解消することにした。そこで,2011(平成23)年に自身の会社「株式会社鎖GROUP」を設立し,申立人の所属から完全に離れた。
一連の経緯については,川上氏本人がインターネット上のTV番組「DOMMUNE」に出演し語っている(乙19?23)。
川上氏は,自身が申立人と決別したことによって,「UMB」自体が一旦終了するものと考えていた。
しかし,申立人は,すでに川上氏が自身の所属から離れていることを隠蔽し,あたかも川上氏がまだ申立人所属アーティストであるかのように表示して「UMB」を継続した。
そこで商標権者は,一度,申立人によって主導権を奪われた「UMB」を川上氏自身の手に取り戻すべく,本件商標を登録し,申立人とは別に,川上氏が審査員として参加するMCバトルを開催することにした(乙24?28)。
川上氏は,アーティストとして申立人に所属しており,申立人との関係は良好であった。しかし,申立人による,川上氏の信頼を裏切る数々の悪質行為のため,これ以上,申立人に自身及び自身の考案したイベントを任せることはできないと考え,苦渋の決断の及んだ次第であり,申立人が川上氏の信頼に応える行動を取っていれば,両者の間にこのような争いは起こらずにすんだはずである。
4 本件商標が維持されるべき理由
本件商標は,登録要件を満たす者であり,商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものではない。
(1)前述のように,「UMB」は商標権者の代表者である川上氏が創設したイベントであり,「UMB」は「川上氏」の業務に係る商品及び役務を表示するものとして,需要者の間に広く認識されているものである。
実際の需要者のニーズは,あくまでMCとしてのスキルや識見が広く認められた川上氏が主催し審査に加わるイベントとしての「UMB」にあるのであり,同イベントが申立人の主催するものであるとの周知性は存在しないといえる。
また,「UMB」のルールを考案し創始した者は川上氏であることについては,多数の第三者の証言が得られている(乙29の2)。
(2)申立人は,商標権者が「申立人の周知商標に化体した信用,名声,顧客吸引力等毀損させる恐れがあることは明白である。」と主張しているが,「UMB」に化体している信用,名声,顧客吸引力は,創設者たる「川上氏」のものであり,申立人のものではない。
商標権者は,一度申立人によって主導権を奪われた「UMB」を代表者である川上氏自身の手に取り戻すべく,川上氏の業務に係る商品及び役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標の登録に動き,商標登録を受けたものであり,その行動は至極当然のものであって,「不正の目的をもって」などと認定されるような行為では断じてない。乙第29の2号証に示したように,多数の第三者が商標権者の主張を裏付ける証言をしている。
5 結論
したがって,本件商標は,「他人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして,需要者の間に広く認識されている商標と類似する商標であって,不正の目的をもって使用する商標」には到底該当し得ない。
以上により,本件商標は,商標法第43条の2第1号の規定に該当するものではない。

第7 当審の判断
1 本件商標についてした前記第5の取消理由は,妥当なものと認められるものである。
そうすれば,本件商標は,申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして,需要者の間に広く認識されている引用商標と極めて類似する商標であって,不正の目的をもって使用する商標といわなければならないから,商標法第4条第1項第19号に該当するものである。
2 申立人の主張について
(1)本件商標の登録までの事実関係について
ア 商標権者は,「UMB」が創設されるに至った経緯について,「川上氏らは,究極の日本一を決める大会という趣旨で,『お黙り!ラップ道場』に『ULTIMATE MC BATTLE(アルティメットエムシーバトル)』『UMB』という副題をつけるようになり,以後『ULTIMATE MC BATTLE(アルティメットエムシーバトル)』『UMB』の名称でMCバドルを行うようになった。『UMB』という名称は川上氏が,そのロゴデザインはデザイナーである友人が考案したものである」旨,主張する。
しかしながら,仮に,川上氏とその友人が考案したものであるとしても,川上氏は,アーティストとして申立人の会社に所属していたものであり,会社組織の一員としてMCバトルイベント「UMB」の企画及び制作に携わっていたものであり,川上氏が会社を去った後も,申立人がMCバトルイベント「UMB」の事業を行っていたわけであるから,「UMB」をラッパーのファンやラップミュージックの愛好家である需要者の間において,広く認識させたのは,申立人であることは,前記第5のとおり明らかであるといわざるを得ない。
イ 商標権者は,「申立人との関係について,当初は,申立人は,川上氏らと音源作成,イベント等のマネジメントをするのは申立人,経費負担も申立人,売り上げについては50%を分配する,という内容の合意をしていた。その後,両者の関係は悪化し,報酬についての問題や西原氏の申立人従業員に対しての暴言・暴行等の不法行為等が原因で,申立人と決別した」旨,主張する。
しかしながら,たとえ,上記のような事情を考慮したとしても,本件商標をラッパーのファンやラップミュージックの愛好家である需要者の間において,広く認識させたのは,申立人であることは前記第5のとおりである。
その上で,商標権者は,本件商標が登録を得ていないことを奇貨として,引用商標の周知性フリーライドするなど,本件商標を専ら自己の業務のために利用する意図をもって,本件商標を先取り的に出願し,登録を得たものと推認せざるを得ないというべきである。
(2)本件商標が維持されるべき理由について
ア 商標権者は,「『UMB』は商標権者の代表者である川上氏が創設したイベントであり,『UMB』は『川上氏』の業務に係る商品及び役務を表示するものとして,需要者の間に広く認識されているものである」旨,主張する。
しかしながら,前記第5のとおり,発売されたDVD(甲18)には,「ULTIMATE MC BATTLE」及び「UMB」文字が表示されており,そのDVDの収録演目の下に「Libra Record」及び「有限会社ライブラ」と記載されている。
また,MCバトルイベント「UMB」の各地区大会等のポスター(甲27)にも「UMB」の表示がされており,そのポスターには,申立人の略称である「Libra」の文字が表示されている。
以上のことから,MCバトルイベント「UMB」を,ラッパーのファンやラップミュージックの愛好家である需要者の間において,広く認識させたのは,申立人であるといわざるを得ないものであり,また,川上氏が本件商標を需要者の間に広く認識された商標にしたということを証明する証拠の提出もない。
イ 商標権者は,「実際の需要者のニーズは,あくまでMCとしてのスキルや識見が広く認められた川上氏が主催し審査に加わるイベントとしての『UMB』にあるのであり,同イベントが申立人の主催するものであるとの周知性は存在しない」旨,主張する。
しかしながら,同イベントを主催していたのは申立人であることは,前記第5のとおりであり,仮に川上氏が申立人のイベントの中で企画及び運営に携わっていて,そのことによって同イベントが盛況であっても,それは,申立人自身が行っていることになるわけであるから,申立人が周知にしたことには変わりがないものである。
ウ 商標権者は,「他人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして,需要者の間に広く認識されている商標と類似する商標であって,不正の目的をもって使用する商標には該当し得ない。」旨,主張する。
しかしながら,商標権者の提出した証拠は,インターネット情報が多く,その情報は,本人の書き込みや発言がほとんどである。
また,乙第29の2号証には,多数の第三者が商標権者の主張を裏付ける証言を記載しているが,これらの証言は,わずか9つの証言であり,そのうち,8つの証言については,ほとんど文章が同一で,川上氏が,本件商標を最初に考案したことを証言するものであって,本件商標が商標権者の業務に係る商品を表示するものとして正当に取得したものであることを根拠とする証拠にはならないものである。
さらに,商標権者は,他に不正の目的をもって使用していないことを証明する証拠の提出もない。
よって,上記商標権者の主張は,いずれも採用することができない。
3 まとめ
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものであるから,同法第43条の3第2項により,その登録を取り消すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 別掲 1 本件商標

(色彩については,原本参照。)

別掲 2 引用商標

(色彩については,原本参照。)

異議決定日 2016-01-15 
出願番号 商願2014-19931(T2014-19931) 
審決分類 T 1 651・ 222- Z (W354142)
最終処分 取消 
前審関与審査官 杉本 克治 
特許庁審判長 金子 尚人
特許庁審判官 榎本 政実
井出 英一郎
登録日 2014-09-26 
登録番号 商標登録第5704606号(T5704606) 
権利者 株式会社鎖GROUP
商標の称呼 ユウエムビイ 
代理人 追川 道代 
代理人 平野 泰弘 
代理人 松田 次郎 
代理人 小川 憲久 
代理人 松田 省躬 
代理人 阿部 博 
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