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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない X09
管理番号 1329307 
審判番号 取消2013-670017 
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2013-07-23 
確定日 2015-10-13 
事件の表示 上記当事者間の国際商標登録第872425号商標の登録取消審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件国際登録第872425号商標(以下「本件商標」という。)は,「FREEBIT」の文字からなり,2007年(平成19年)12月13日に国際商標登録出願(事後指定),第9類「Apparatus for recording,transmission and reproduction of sound and images;radiotelephony sets.」を指定商品として,平成21年4月17日に設定登録されたものである。
なお,本件審判の請求の登録は,平成25年7月30日にされている。
第2 請求人の主張
請求人は,「本件商標の登録を取り消す。審判費用は被請求人の負担とする。」との審決を求めると申し立て,その理由,答弁に対する弁駁,口頭審理期日における陳述及び上申を要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲1及び甲2を提出した。
1 理由
本件商標は,その指定商品について,継続して3年以上日本国内において,商標権者,専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用されていない。また,使用していないことについての正当な理由も見出せないから,その登録は,商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきである。
(1)使用商標と本件商標の同一性について
「フリービット」が「FREEBIT」と社会通念上同一の商標であることは認める。
(2)取引書類について
ア 乙1の1は,大韓民国所在のCRESYN CO.,LTD(以下「クレシン社」という。)から日本所在のCRESYN JAPAN社(以下「クレシンジャパン社」という。)に対し,「ATH-CKP500」の製品を発送することを示す梱包明細書であり,乙1の2は,クレシン社からクレシンジャパン社へ発行された乙1の1に関する請求書であるが,両社は,グループ会社であるから(乙2),これらは,グループ会社間で「ATH-CKP500」の製品の輸出入があったことを示す書類にすぎない。また,本件商標の記載も無く,「ATH-CKP500」に本件商標が付されていたことを示す証拠も提示されていないから,乙1の1及び2が示す輸出入の行為は商標の使用には該当しない。
イ 乙5の書類は,納品書や請求書ではないから,この記載内容において商品が販売されたことを示す証拠とはなりえない。また,ロイヤリティに関するものであるとしても,その説明がなくロイヤリティの意味するところが不明であるから,その書類のみにおいては,クレシンジャパン社から株式会社オーディオテクニカ(以下「オーディオテクニカ社」という。)への販売の証拠とはなり得ない。また,乙5には,本件商標の記載が無く,「ATH-CKP500」に本件商標が付されていたことを証明する証拠の提示も無い。
(3)商標の使用態様について
ア 被請求人は,「本件商標は『インイヤー型のヘッドホン及びその付属品であるイヤプラグの名称として使用されている』」旨述べているが,本件商標は「その付属品であるイヤプラグ」の名称ではあるが「インイヤー型のヘッドホン」の名称ではない。「インイヤー型ヘッドホン」は,「オーディオテクニカ ATH-CKP500」の商品名で取引されているものであって,本件商標がその名称として用いているのではない。
イ そして,本件商標が使用されている態様は,独立して流通し得る「その付属品であるイヤプラグ」の包装などに自他商品識別力などを発揮し得る態様で使用されているものを示すものはない。
「商標的使用」とは,標章を商品との関係で出所表示機能を有する態様で使用されていることをいい,使用態様が出所表示機能を有さず,単に商品機能の説明をするために記述的に用いられているものは商標的使用ではない。
オーディオテクニカ社販売の「ATH-CKP500」に関する書類及び「インイヤー型ヘットホン」のパッケージに付された「FREEBIT STYLE」「選べるフィット感\新形状“FREEBIT”採用」及び「FREEBIT(円形内にRの表示:以下「マルR」という)」の表示は,単に,イヤプラグの形状の説明,及び装着感など部品の機能を記述しているにすぎない。さらに,マルRの表示は小さすぎて“R”の文字は視認すらできない。
したがって,これらの表示は,本件商標の商標的使用を立証するものではない。
(4)通常使用権者について
ア 請求人は,被請求人の主要業務がライセンス契約であることを証明するため甲2を提出する。これによると,被請求人はイヤホンの製造及び販売は行わず,専ら被請求人が取得した特許権などを使用する権利をイヤホン製造業者や納入業者に許諾し,ライセンシーは一定の金額あるいは販売台数のパーセンテージによるロイヤルティを被請求人に支払っている旨が説明されている。
イ 被請求人は,2014年6月19日付の一枚のレター(乙17)をもって,オーディオテクニカ社に対して黙示の許諾を与えていたことは明らかであると主張しているが,黙示の許諾とは,審判請求前の状況証拠を伴って認定されるべきものであり,事後的に用意した一枚のレターのみをもって認定されるべきものではない。
ウ 乙19のライセンス契約は,「ATH-CKP500」の製造者であるクレシン社と被請求人との間に締結された,被請求人所有の「特許発明」に関する契約であり,登録商標に関する契約ではない。
被請求人は,オーディオテクニカ社に黙示の許諾を与えていたと主張しているが,商標権者である被請求人はノルウェーの会社,製造者であるクレシン社は韓国の会社,製品の輸入元はクレシン社の関連会社である日本の会社,そして一般消費者へ製品を販売するオーディオテクニカ社は日本の会社,という煩雑な国際間の契約において,商品の広告を含めどのように商標を使用するかについての詳細な取り決め,及び,実際の商品に付された商標はどういうものであったかに関する被請求人への報告も存在しないという状況は不自然である。
また,乙19の「4.ブランドとマーキング」の文言によると,被請求人が重要と考えているのは,“欧州特許番号第1410607B1に基づく技術”に関するものであり,登録商標の使用に関する具体的な規定はない。
クレシン社は,特許に関する使用権者であるが,登録商標に関するライセンス契約は存在せず,特許発明に関するライセンス契約においても登録商標の使用に関する明確な規定が盛り込まれていないことから,登録商標の使用許諾に関する被請求人の認識が明確ではなかったと考えざるを得ない。
さらに,乙22は,被請求人とクレシンジャパン社との間で交わされたメールであるが,被請求人からクレシンジャパン社に宛てたメールに添付されている添付ファイルの名称“(140512)Freebit Patent Fee.pdf”からもわかるように,被請求人が要求していたのは,特許使用に関するロイヤルティである。
したがって,乙19及び22は,被請求人がオーディオテクニカ社へ黙示の使用許諾を与えていたことを証明する証拠とはなり得ない。
(5)オーディオテクニカ社の認識の疑義
商標法第31条第1項及び第2項には,登録商標の使用を許諾された通常使用権は商標権者と契約で合意した範囲で登録商標を使用することができると規定されているが,オーディオテクニカ社による登録商標の使用が被請求人との契約で合意した範囲であったことを証明する証拠の提示は無く,オーディオテクニカ社自身が黙示の使用許諾を与えられていたことを認識していたことを証明する同社からの証拠の提示は一切無い。
また,乙20及び21は,クレシンジャパン社とオーディオテクニカ社との間に締結された「製品の購入に関する基本契約書」及び「党書」であるが,ここには登録商標の使用に関する規定は含まれていない。
さらに,乙23は,オーディオテクニカ社とクレシンジャパン社との間で交わされたメールによれば,製品「ATH-CKP500」のパッケージを作成しているのはオーディオテクニカ社であることが判明するが,クレシンジャパン社からの登録商標を使用するようにとの指示というよりは,パッケージを作成するにあたり,オーディオテクニカ社自らが表示はどのようにしたらよいのかとの考慮から,クレシンジャパン社へ質問をしているように見受けられる。
上記したとおり,乙19の4.において,被請求人は,被請求人所有の「特許発明」に関する表示を全ての製品に付することを義務づける一方,乙23では,クレシンジャパン社は,「強制的なことではありませんが出来れば英文ですることを推薦します」と答えていることから,クレシンジャパン社自身が,登録商標の使用に関する被請求人との契約で合意した範囲を認識していなかったことが証明される上,結果的には,製品のパッケージ及びマニュアルには,この英文は記載されていない。
したがって,オーディオテクニカ社による登録商標の使用は合意の範囲ではなかったと言える。
以上のことから,被請求人がオーディオテクニカ社に黙示の許諾を与えていたこと,及び,オーディオテクニカ社が黙示の許諾を与えられていたことを認識していたことは立証されていない。したがって,オーディオテクニカ社は通常使用権者ではない。
(6)乙22及び23の証拠としての信憑性
乙22はクレシンジャパンと被請求人の間で交わされたメールの写し,乙23は,オーディオテクニカ社とクレシンジャパン社の担当者の間で交わされたメールの写しであるが,これらは,一つ一つのメールのやりとりの前後に線が入っていることから切り貼りされたのではないかとの疑義があり,被請求人の署名のフォントが明らかに異なっているなどの不自然さがある。署名された契約書などとは異なり,電子メールのやりとりはいくらでも切り貼りすることが可能であり,編集し直すことも可能であるため,真実を証明するための証拠としては適正ではない。
したがって,乙22及び23は証拠としての信憑性に欠ける。
2 まとめ
以上のとおり,被請求人は本件商標権が通常使用権者によって本審判請求に係る指定商品について使用されていたことを証明していないため,本件商標登録は,商標法第50条により,取り消されるべきものである。
第3 被請求人の答弁
被請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を答弁,口頭審理期日における陳述及び上申を,要旨以下のように述べ,証拠方法として,乙1ないし乙23(枝番を含む。)を提出した。
1 理由
本件商標は,その通常使用権者によって,請求に係る指定商品のうち,「Apparatus for recording,transmission and reproduction of sound and images」について,審判の請求の登録前3年以内に,日本国内において継続して使用されているものである。
(1)本件商標の商標権者は,ノルウェー国に所在するFreebit ASであり,本件商標は,商標権者の名称(商号)に係る,いわゆる商号商標であり,指定商品中,前記商品について日本国内で使用されている。
(2)商品の取引について
ア 被請求人は,クレシン社が,型番「ATH-CKP500BK」,「ATH-CKP500RD」,「ATH-CKP500WH」の製品,それぞれ,1,120個,240個,800個を,クレシンジャパン社宛てに出荷したこと,クレシンジャパン社が,日本に輸入されたこれらの製品(型番「ATH-CKP500」)をオーディオテクニカ社に販売していることを述べ,これらを裏付ける証拠として,「PACKING LIST」(商品梱包明細書)の写し,「COMMERCIAL INVOICE」(請求書)の写し,クレシンジャパン社の会社情報を掲載したウェブサイトのプリントアウトを提出した(乙1の1,2,乙2)。
そして,これらの製品は,2012年6月15日付けで掲載,配信されたウェブサイトの記事から,オーディオテクニカ社により2012年7月19日に発売され,直接又はインターネットによる通信販売サイトを介して販売されて,日本の市場を流通していたことが明らかである(乙3,乙4,乙6の1?3,乙7)。
イ 乙5は,クレシンジャパン社がオーディオテクニカ社に販売した型番「ATH-CKP500」の製品の2012年7月から2013年6月までの売上数量/単位・ロイヤリティを表にまとめたものであり,当該型番の製品が一定数量,継続して取引されていることを示唆するものである。
ウ クレシンジャパン社がオーディオテクニカ社に対して,型番「ATH-CKP500」の製品を納入していたことを示す平成25年5月30日から平成26年6月6日までの間に作成された「納品書(写)」には,いずれも,品名として「ATH-CKP500 BK」「ATH-CKP500 RD」「ATH-CKP500 WH」「ATH-CKP500 BL」の全て又は一部が表示されている(乙8の1?13)。
エ オーディオテクニカ社の型番「ATH-CKP500」製品の「インイヤー型ヘットホン」は,商品の価格情報を提供するウェブサイト「価格.com」及び,ウェブ通信販売サイトある「楽天市場」・「ビックカメラ.com」・「e☆イヤホン web本店」などで取扱われている。
これらのウェブサイトの「発売年月」欄における「2012年7月19日」の表示と商品を購入した消費者による商品のレビューの記載によれば,オーディオテクニカ社の型番「ATH-CKP500」の「インイヤー型ヘットホン」が,2012年7月19日以降に,これらのウェブサイトを通じて販売されていたことが確認できる(乙9の1?乙13の2)。
また,商品の感想や評価をインターネットのブログの掲載記事によれば,オーディオテクニカ社の「インイヤー型ヘットホン」が,要証期間内に消費者に購入されていたことが確認できる(乙14?16)。
(3)商標の使用態様及び使用商品について
ア 被請求人は,本件商標及びこれと社会通念上同一の商標「フリービット」が,商品又は商品の包装に付されていることを示すものとして,アマゾンジャパン株式会社が運営するウェブ通信販売サイトで販売されているオーディオテクニカ社が販売する「インイヤー型のヘッドホン」の画像が掲載されたウェブページのプリントアウトを提出する(乙7,乙9の1,2)。
乙9の1及び2の画像には,「インイヤー型ヘットホン」のパッケージの左下方に,赤地に白抜きの文字で書された「FREEBIT STYLE」「選べるフィット感\新形状“FREEBIT”採用」の表示がある。また,同パッケージの右下方には,ヘッドホンをあしらったとおぼしき図形と共に白色で書された「FREEBIT(マルR)」の欧文字が表されている。
そして,その画像で視認できる「FREEBIT」の欧文字は,「FREEBIT」の部分を「STYLE」の部分に比べて相対的に太い文字で表示する,引用符「“”」を付す,登録商標を意味するマルRを右上に付すといったように,商品を手にする消費者その他の需要者の目を引くような態様で表されている。
したがって,「FREEBIT」の欧文字が「インイヤー型ヘットホン」及びその付属品であるイヤプラグの出所を表示し,自他の商品を区別する識別標識としての機能を果たしている。すなわち,商標的な使用がされていることは明らかである。
イ 本件商標及び社会通念上同一の商標「フリービット」が,本件商標の指定商品に包含される「インイヤー型ヘッドホン」及びその付属品である「イヤプラグ」の名称として使用されていることも明らかである(乙3,乙6の1?3及び乙7)。
ウ 以上のとおり,乙各号証の証拠資料を総合的に勘案すれば,本件商標及びこれと社会通念上同一の商標「フリービット」が,クレシンジャパン社及びオーディオテクニカ社によって,本件審判請求の登録前3年以内に,日本国内において,請求人の請求に係る指定商品のうち,少なくとも,「インイヤー型ヘッドホン」及び「イヤプラグ」を包含する第9類「Apparatus for recording,transmission and reproduction of sound and images(音響及び映像の記録用・送信用及び再生用の装置)」について,通常使用権者により使用されていたといわなければならないところである。
(4)被請求人とクレシンジャパン社及びオーディオテクニカ社との契約関係など
通常使用権者であるクレシンジャパン社及びオーディオテクニカ社は,本件商標をその指定商品に包含される「インイヤー型のヘッドホン」の付属品である「イヤプラグ」を日本国内で使用することについて,被請求人から黙示の使用許諾を受けている(乙17)。
また,オーディオテクニカ社が販売している「インイヤー型ヘッドホン」のパッケージに印刷されている,ヘッドホンをあしらったとおぼしき図形商標及び「FREEBIT(マルR)」の文字商標(乙9)は,いずれも被請求人の使用する商標である(乙18)。このことからも,オーディオテクニカ社の「FREEBIT」の使用が被請求人の許諾を受けたものであることが分かる。
イ 被請求人は,2009年6月1日に,クレシン社との間でライセンス契約を締結した(乙19)。
当該契約では,被請求人がクレシン社に対して,「FREEBIT(マルR)」の技術・ノウハウ,デザイン,グッドウィルなどを使用した携帯式ヘッドセット,イヤホンなどの製造販売などをすることを許諾している(2条)。また,許諾地域は全世界とされ(1.7条),許諾商品の包装には,当該商品がライセンスされた「FREEBIT(マルR)」の技術・ノウハウを使用していることなどの表示をすることが義務づけられている(4条)。
そして,当該契約に基づき,乙9の1及び2などに示される本件商標が使用されている「インイヤー型ヘットホン」及びその付属品である「イヤプラグ」である「ATH-CKP500Series製品」などのFREEBIT商品について,被請求人は,クレシン社からライセンス料を受領している。これは,被請求人の担当者とクレシン社の担当者との間のFREEBIT商品に係るロイヤルティに係るメール及びその添付ファイル(販売数量及びロイヤルティ報告書)により分かる(乙22)。
ウ クレシン社の日本法人であるクレシンジャパン社(乙2)は,2009年11月12日に,オーディオテクニカ社との間で,購入基本契約を締結した(乙20)。その契約では,オーディオテクニカ社が発注する仕様書で定める仕様に適合する特定の製品を,クレシンジャパン社が製造して販売出荷し,オーディオテクニカ社が購入納入することが定められている。
エ クレシンジャパン社は,2012年6月5日に,オーディオテクニカ社との間で,覚書を締結した(乙21)。
当該覚書は,前記のクレシンジャパン社とオーディオテクニカ社との間の購入基本契約を基礎とする個別契約と位置づけられ,具体的には,クレシンジャパン社がオーディオテクニカ社のために「ATH-CKP500Series製品」を製造し,オーディオテクニカ社に販売納入する契約である。
「ATH-CKP500Series製品」とは,乙9の1及び2などに示される本件商標が使用されている「インイヤー型ヘットホン」及びその付属品である「イヤプラグ」である。
そして,「ATH-CKP500Series製品」に,本件商標及び「FREEBIT(マルR)」の技術・ノウハウなどが使用されているのは,前記のライセンス契約によって,被請求人がクレシン社に対して,当該使用する権利をライセンスしているからである。
オ オーディオテクニカ社販売の商品における本件商標の使用態様が,被請求人の確認を得ながら,クレシンジャパン社とオーディオテクニカ社との間で決定されたことは,両社の担当者間のメール及びその添付ファイル(被請求人のロゴの仕様書)により明らかである(乙23)。
(5)本件使用商品の製造から顧客への販売に至る流通経路
オーディオテクニカ社の販売に係る「インイヤー型ヘットホン」及びその付属品である「イヤプラグ」である「ATH-CKP500Series製品」(以下,この項では「本件使用商品」という。)の流通経路は,以下のとおりである。
オーディオテクニカ社が提供する金型を使用して(乙21),クレシン社が韓国で本件使用商品を製造する。
次に,クレシン社が本件使用商品を韓国から日本に輸出し,クレシンジャパン社に本件使用商品を出荷する(乙1の1)。
次に,クレシンジャパン社が,オーディオテクニカ社に対して,本件使用商品を販売納品する(乙8)。
そして,オーディオテクニカ社が,小売店などに対して,本件使用商品を販売し,最終的に当該小売店などから一般消費者に販売される。
第4 当審の判断
1 両当事者の主張及び提出に係る証拠によれば,以下の事実が認められる。
(1)オーディオテクニカ社は,2012年(平成24年)7月19日に,型番をATH-CKP500とする「インイヤー型ヘッドホン」(以下「使用商品1」ということがある。)の発売を開始した。その商品は,オーディオテクニカ社のウェブサイトで紹介されているほか,ウェブ通信販売サイトである「amazon.co.jp」「楽天市場」「ビックカメラ.com」などにおいて,その販売開始日から販売されていること,各サイトに記載された顧客のレビューにより実際に消費者が購入していることが確認できる。そして,その商品が納められたパッケージの左下方には,赤地に白抜きの文字で書された「FREEBIT(太字で表されている)STYLE」「選べるフィット感\新形状“FREEBIT”採用」の表示があり,その右側に,耳にイヤプラグと思しき部分を差し込んだ写真の部分に重ねて,被請求人が使用する商標とほぼ同態様の「ヘッドホンをあしらったと思しき図形と共に白色で書されたFREEBIT(マルR)」が表されている(乙6の1?3,乙7,乙9の1,2,乙10?13,乙18など)。
また,オーディオテクニカ社のウェブサイトの同商品に関するウェブページには,「運動中も快適な装着感をキープする3サイズの“FREEBIT”採用」などの説明や,テクニカルデータの項に「●付属品:CKP500専用フリービットS,M,L」の記載があり,さらに,同商品の取扱説明書の「フリービットについて」の項には,「本製品にはS,M,L,3サイズのフリービットが付属されており,お買い求め時はMサイズが装着されています。/よりよい装着のために,耳のサイズや収まりに合わせてフリービットを交換し,ご使用ください。」などの記載とともに,左右一対の「イヤプラグ」の形状の図が表示されている(乙6の1,2)。
(2)本件の商標権者(被請求人)は,ノルウェーに所在する「Freebit AS」であり,本件商標は,被請求人の商号の一部であるところ,被請求人は,自社のブランドとしてイヤホンの製造及び販売は行わず,専ら,イヤホン製造業者や納入業者に対し,ライセンスを許諾することを業とする会社である(甲2)。
そして,被請求人は,2009年6月1日に,大韓民国に所在するクレシン社とライセンス契約を締結した(乙19)。
当該契約は,被請求人がクレシン社に対して,「FREEBIT(マルR)」の表示をもって特定する被請求人が所有する発明を実施する権利に関するものであって,その定義1.及び付属書において,以下の記載を確認できる(日本語訳)。
1.定義
1.2「ノウハウ」とは,当該製品の開発および製造に関連し,本契約の付属書2に記載された技術情報の主要部分を意味する。
(付属書2)
これには,「ノウハウ」として,「以下の内容は,製品の開発および製造に関連する技術情報の主要部分の概要を示す」と記載され,「FREEBIT(マルR)オンイヤーC型,左耳用,エキストラスモール(日本語訳)」などの品目とこれに対応するファイル名が表示されている。
(3)クレシンジャパン社は,横浜市に所在する電子音響機器,電子通信機器などの製造,販売並びに輸出入を事業内容とする株式会社であり,クレシン社のグループ会社である(乙2及び弁駁書3頁4,5行目)。
そして,クレシンジャパン社は,2009年11月12日に,オーディオテクニカ社との間で購入基本契約を締結した。これには,オーディオテクニカ社が発注する仕様書で定める仕様に適合する特定の製品をクレシンジャパン社が製造,販売,出荷し,オーディオテクニカ社が当該製品を購入・納入することが定められている(乙20;1条,2条,3条等)。
また,クレシンジャパン社は,2012年6月5日,オーディオテクニカ社との間で覚書を締結した。これには,クレシンジャパン社が,金型を使用し,「ATH-CKP500Series製品」をオーディオテクニカ社に納入する旨が記載されている(乙21)。
(4)被請求人の代表者「Vidar Sandanger」の署名のある書面には,「私達は『FREEBIT』及び『フリービット』で書された商標を付した「インイヤー型ヘッドホン」の付属品である「イヤプラグ」を,2012年5月16日から現在まで日本国内で,製造,販売する許可をオーディオテクニカに付与した(日本語訳)」とする旨の記載がある(乙17)。
(5)2011年11月22日から2012年4月6日までの間にクレシンジャパン社とオーディオテクニカ社の担当者間で交わされたメール及びその添付ファイルによれば,両者間でオーディオテクニカ社が製品のパッケージに付するロゴの使用態様の検討がなされ,使用商品1のパッケージに表示され,かつ,被請求人が使用する商標とほぼ同態様の「ヘッドホンをあしらったと思しき図形と共にFREEBIT(マルR)」のデザインのデータが添付されていることが確認できる(乙23)。
(6)2013年5月20日と記載された「PACKING LIST(製品梱包明細書)」及び「COMMERCIAL INVOICE(請求書)」によれば,「ATH-CKP500BK」「ATH-CKP500RD」「ATH-CKP500WH」が,それぞれ1120個,240個,800個,クレシン社を荷送人として,クレシンジャパン社に出荷され,その請求書が送付されたことが確認できる(乙1の1,2)。
(7)クレシンジャパン社がオーディオテクニカ社に宛てた納品書によれば,平成25年5月30日から平成26年6月6日までの間に,13回にわたり,「ATH-CKP500」と表示された商品がクレシンジャパン社からオーディオテクニカ社に納品されたことが確認できる(乙8の1?13)。
2 判断
(1)前記1で認定した事実によれば,オーディオテクニカ社は,「イヤプラグ」が装着された「インイヤー型ヘッドホン」を2012年(平成24年)7月19日に発売し,その発売時から現在に至るまで,その商品をインターネットのウェブ通信販売サイトを通じ,顧客に販売している。そして,その使用商品1のパッケージには,一般に登録商標の表示として用いられる「マルR」を伴った「FREEBIT」の文字が表示されている。
以下,かかるオーディオテクニカ社による「FREEBIT」の文字の使用行為が商標法50条所定の使用に当たるか否かについて判断する。
ア 使用商標及び使用商品について
本件商標は,「FREEBIT」であるところ,「インイヤー型ヘッドホン」のパッケージに表示されている「FREEBIT」の文字は,本件商標と綴り文字を同じくする同一の商標である。
また,「FREEBIT」の文字を表示したパッケージは,「インイヤー型ヘッドホン」のものであるところ,そのパッケージの右下方に表示された「FREEBIT」の文字は,耳にイヤプラグと思しき部分を差し込んだ写真に重ねて,一般に登録商標の表示として用いられる「マルR」を伴って表示されていること,また,その写真部分の横に表示された「FREEBIT(太字で表されている)STYLE」「選べるフィット感\新形状“FREEBIT”採用」の説明,取扱説明書における「フリービット」の説明書きから,「FREEBIT」の文字は,「インイヤー型ヘッドホン」の付属品である「イヤプラグ」を表示する商標ということができる。
そして,「インイヤー型ヘッドホン」とその付属品である「イヤプラグ」は,音響の記録用の装置の付属品といえるものであって,本件の取消し請求に係る商品「Apparatus for recording,transmission and reproduction of sound and images(音響及び映像の記録用・送信用及び再生用の装置)」に包含されるものである。
イ 使用時期について
「FREEBIT」の文字が表示され,「イヤプラグ」が装着された「インイヤー型ヘッドホン」は,2012年(平成24年)7月19日の発売以降,現在に至るまで継続して,顧客に販売されているものと推認し得る。そして,その時期は,本件審判の請求の登録前3年の期間である。
ウ 使用者について
「FREEBIT」の文字が表示され,「イヤプラグ」が装着された「インイヤー型ヘッドホン」の販売者,すなわち,「FREEBIT」の商標の使用者は,オーディオテクニカ社であるところ,オーディオテクニカ社は,被請求人から「FREEBIT」及び「フリービット」の文字からなる商標を付した「インイヤー型ヘッドホン」の付属品である「イヤプラグ」を製造,販売することを許可されている者である(乙17)。
そして,「インイヤー型ヘッドホン」の付属品である「イヤプラグ」は,被請求人の所有する特許権又はノウハウに基づき,被請求人がクレシン社に製造を許可したものであって,クレシン社のグループ会社であるクレシンジャパン社とオーディオテクニカ社との購入基本契約と覚書に基づき,クレシン社が韓国で製造し,クレシンジャパン社を通じて,オーディオテクニカ社に納品したものである。
また,オーディオテクニカ社が販売する「インイヤー型ヘッドホン」のパッケージに表示された「FREEBIT」の表示態様は,クレシンジャパン社とオーディオテクニカ社の担当者間の協議の下で決定されたものであって,被請求人の使用する商標(ヘッドホンをあしらったと思しき図形と白色で書されたFREEBIT(マルR)の文字からなる商標)とほぼ同一の態様となっている。
これらの事実を総合すれば,オーディオテクニカ社は,「インイヤー型ヘッドホン」の付属品である「イヤプラグ」に「FREEBIT」及び「フリービット」の文字からなる商標を使用することを,被請求人(商標権者)から許可された者,すなわち,本件商標の通常常使用権者であると優に認めることができる。
(2)以上によれば,通常使用権者であるオーディオテクニカ社は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,本件取消請求に係る指定商品に含まれる商品「インイヤー型ヘッドホンの付属品であるイヤプラグ」について,その商品に本件商標と社会通念上同一と認められる商標を付して,譲渡(販売)したことを認めることができる。
そして,通常使用権者の上記行為は,「商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡・・・する行為」(商標法第2条第3項第2号)に該当する。
3 請求人の主張について
(1)請求人は,「被請求人とクレシン社の間のライセンス契約,クレシンジャパン社とオーディオテクニカ社との購入基本契約と覚書は,特許に関する契約であって商標の使用に関するものではなく,被請求人の代表者の署名入りレター(乙17)も黙示の許諾を立証するものではない。また,クレシン社とオーディオテクニカ社のメールも改ざんされた可能性があり信ぴょう性を欠くものであるなどとして,オーディオテクニカ社は通常使用権者でない」旨主張する。
しかしながら,「オーディオテクニカ社に『FREEBIT』の商標を付した『インイヤー型ヘッドホン』の付属品である『イヤプラグ』の販売を許可する」旨をしるした被請求人の代表者の署名入りレターに疑義があるものとは認められず,また,前記のライセンス契約,購入基本契約及び覚書などに商標の使用許諾を明記する記載がないとしても,ライセンス契約における「FREEBIT(マルR)」の記載やパッケージにおけるその表示態様や関係者間のメールのやり取りなどを総合考慮すれば,オーディオテクニカ社による「FREEBIT」の使用が,被請求人(商標権者)の許諾の下でされたことを優に認めることができる。
(2)請求人は,「本件商標は,独立して流通し得る『イヤプラグ』の包装などに自他商品識別力を発揮し得る態様で使用されているものではない。『インイヤー型ヘッドホン』のパッケージに付された『FREEBIT STYLE』『選べるフィット感\新形状“FREEBIT”採用』及び『FREEBIT(マルR)』の表示は,『イヤプラグ』の形状の説明や装着感など部品の機能を記述しているにすぎず,マルRの表示も小さすぎて“R”の文字は視認すらできない」などと主張する。
しかしながら,前記のとおり,「インイヤー型ヘッドホン」のパッケージに表示された「FREEBIT(マルR)」は,その表示位置,表示態様などからして「インイヤー型ヘッドホン」の付属品である「イヤプラグ」に使用する商標として,独立して自他商品の識別機能を発揮し得るものである。
そして,その商品の取扱説明書に記載されたとおり,「イヤプラグ」は交換可能なものであるところ,音響製品の付属品や部品が交換品や補充品として単独で販売されるものであることはその商品の取引の実情から十分に想定し得るところであり,「イヤプラグ」を独立して取引の対象となり得ない商品ということはできない。
したがって,「FREEBIT」の文字の使用が「イヤプラグ」について自他商品識別力を発揮し得る態様で使用されていないとする請求人の主張は採用することはできない。
よって,請求人の前記主張は,いずれも採用することはできない。
3 むすび
以上のとおりであるから,被請求人は,本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において,通常使用権者が本件請求に係る指定商品について,本件商標の使用をしていたことを証明したと認め得るところである。
したがって,本件商標の登録は,商標法第50条の規定により,取り消すことができない。
よって,結論のとおり審決する。
審理終結日 2014-11-14 
結審通知日 2014-11-18 
審決日 2014-12-10 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (X09)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 八木橋 正雄 
特許庁審判長 渡邉 健司
特許庁審判官 小林 由美子
大森 健司
登録日 2007-12-13 
商標の称呼 フリービット 
代理人 勝沼 宏仁 
代理人 矢口 太郎 
代理人 今岡 智紀 
代理人 塩谷 信 
代理人 宇梶 暁貴 
代理人 高田 泰彦 
代理人 宮嶋 学 
代理人 柏 延之 
代理人 ▲高▼橋 隼人 
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