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審決分類 |
審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない W20 |
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管理番号 | 1329205 |
審判番号 | 不服2016-17395 |
総通号数 | 211 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2017-07-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2016-11-22 |
確定日 | 2017-05-17 |
事件の表示 | 商願2015-99765拒絶査定不服審判事件について,次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は,成り立たない。 |
理由 |
1 本願商標 本願商標は,「吉野棺」の文字を標準文字で表してなり,第20類「奈良県吉野町の杉又は桧の間伐材を利用した棺」を指定商品として,平成27年10月16日に登録出願されたものである。 2 原査定の拒絶の理由(要旨) 本願商標は,「吉野棺」の文字を標準文字で表してなるところ,その構成文字及び意味合いから,「吉野」と「棺」の文字を結合してなるものと容易に認識されるものである。 そして,本願商標の指定商品が「奈良県吉野町の杉又は桧の間伐材を利用した棺」であることからすれば,本願商標に接する取引者,需要者は,棺の原材料となる木材との関係においては,その構成中「吉野」の文字部分から,奈良県の吉野地方産の杉又は桧を連想・想起し,商品の原材料の産地を表したものと理解するというのが相当である。 したがって,本願商標は,これをその指定商品に使用しても,単にその商品の原材料・品質を表示するにすぎないから,商標法第3条第1項第3号に該当する。 3 当審の判断 (1)商標法第3条第1項第3号について 商標法第3条第1項第3号に掲げる商標が商標登録の要件を欠くとされているのは,このような商標は,商標の産地,販売地その他の特性を表示記述する標章であって,取引に際し必要適切な表示としてなんぴともその使用を欲するものであるから,特定人によるその独占使用を認めるのを公益上適当としないものであるとともに,一般的に使用される標章であって,多くの場合自他商品識別力を欠き,商標としての機能を果たし得ないものであることによるものと解すべきである(昭和54年4月10日,昭和53年(行ツ)第129号,最高裁判所第三小法廷判決参照)。 (2)本願商標の商標法第3条第1項第3号の該当性 ア 本願商標について 本願商標は,「吉野棺」の文字を標準文字で表してなり,その指定商品を「奈良県吉野町の杉又は桧の間伐材を利用した棺」とする。 本願商標の構成中には「吉野」の文字が含まれているところ,これは「奈良県南部の地名」を指称する語であり,同地は「吉野杉」(奈良県吉野地方に産する杉材)に代表される木材の産地として知られ,木材工業も盛んである(参照「広辞苑第6版」岩波書店;「大辞泉第2版」小学館)。そして,本願商標の指定商品は,通常は木材を原材料とする商品「棺」(死体をおさめて葬る木製の箱:「広辞苑第6版」岩波書店)であり,指定商品の表示中にその原材料に関する奈良県吉野町の杉又は桧との密接な関連が明示されていることも鑑みると,本願商標の「吉野」の文字部分は,奈良県吉野地方との関係を強く印象づけるものである。 また,奈良県吉野地方産の商品又は同地方産の原材料を用いた商品を,「吉野杉」,「吉野葛」(奈良県吉野から産出する上等の葛粉),「吉野塗」(吉野地方に産する漆器),「吉野紙」(吉野地方産の,コウゾを原料とした薄手の和紙)などのように,「吉野」の語と商品名等を結合して指称することが一般的に行われている(参照「大辞泉第2版」小学館;「広辞苑第6版」岩波書店)。 そして,本願商標の構成中「棺」の文字は,その指定商品との関係においては,商品そのものの普通名称を表示するものである。 そうすると,「吉野棺」の文字よりなる本願商標は,これをその指定商品「奈良県吉野町の杉又は桧の間伐材を利用した棺」に使用するときは,需要者,取引者をして,「奈良県吉野地方産の原材料(木材)を用いた棺」であることを容易に認識,理解させるというのが相当であり,単に商品の品質を表示するにすぎないものである。 イ 請求人の主張 請求人は,本願商標の構成中「吉野」の文字は,「吉野織」や「氏姓の一」などの意味をも有することや,本願商標全体としても産地だけでなく販売地等としての多義的な意味合いが生じ得るため,いまだ漠然とした意味合いを想起させるにとどまる旨主張する。 しかし,本願商標からは,前記アのとおり,その構成文字及びその指定商品の表示から,奈良県吉野地方との関係が強く示唆されるのであり,このような中で,同地との関連を有しない意味合いを想起する方が不自然である。そして,「吉野」の語を用いた,奈良県吉野地方産の商品又は同地方産の原材料を用いた商品が一般に存在することを鑑みても,本願商標全体として上記アのとおりの意味合いを認識させるというべきである。 また,請求人は,本願商標全体として商品の品質を表示する語として普通に用いられている事実がない旨主張するが,商標法第3条第1項第3号の規定の適用にあたっては,該表示態様が,商品の品質を表すものとして必ず使用されるものであるとか,現実に使用されている等の事実は,同号の適用において必ずしも要求されない(平成12年9月4日,平成12年(行ケ)第76号,東京高等裁判所判決参照)。 以上のとおり,請求人の主張はいずれも採用できない。 ウ 小括 本願商標は,その指定商品に使用するときは,「奈良県吉野町産の杉又は桧の間伐材を利用した棺」であることを認識させるにすぎず,商品の品質を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなるものであるから,商標法第3条第1項第3号に該当する。 (3)まとめ 以上のとおり,本願商標は,商標法第3条第1項第3号に該当し,登録することができない。 よって,結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2017-03-17 |
結審通知日 | 2017-03-21 |
審決日 | 2017-04-03 |
出願番号 | 商願2015-99765(T2015-99765) |
審決分類 |
T
1
8・
13-
Z
(W20)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 板谷 玲子、山田 啓之 |
特許庁審判長 |
早川 文宏 |
特許庁審判官 |
田村 正明 阿曾 裕樹 |
商標の称呼 | ヨシノヒツギ、ヨシノカン |
代理人 | 佐藤 富徳 |