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審決分類 審判 全部無効 外観類似 無効としない W0105
審判 全部無効 観念類似 無効としない W0105
審判 全部無効 称呼類似 無効としない W0105
管理番号 1329200 
審判番号 無効2016-890049 
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2016-08-04 
確定日 2017-05-15 
事件の表示 上記当事者間の登録第5707141号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5707141号商標(以下「本件商標」という。)は、「KOHJIN BIO」の文字を標準文字で表してなり、平成26年5月30日に登録出願、第1類「細胞培養用又は微生物培養用培地(医療用及び獣医科用のものを除く。)」及び第5類「医療用又は獣医科用の微生物培地,医療用又は獣医科用の組織培養用培地,医療用血液,医療用血清,医療用血漿,医療用又は獣医科用の血液代用剤,医薬用化学剤,医薬調剤用化学物質,医療用の薬剤,医療用及び医薬用のバクテリア調製剤,医療用及び医薬用生物学的製剤,その他薬剤(農薬に当たるものを除く)」を指定商品として、同年10月3日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が引用する商標は、以下のとおりであり、いずれも現に有効に存続しているものである。
1 登録第5395500号-2商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様 KOHJIN(標準文字)
指定商品 第1類「化学品,研磨用補助液,パルプ」、第5類「薬剤,食餌療法用食品,ビタミン剤,食品添加用ミネラル(医療用のものに限る。),医薬用酵母」及び第30類「酵母,調味料,酵母エキス」
登録出願日 平成22年6月21日
設定登録日 平成23年3月4日
2 登録第5621560号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様 別掲のとおり
指定商品 第1類「化学品,農薬(殺菌剤,除草剤,殺虫剤及び寄生生物駆除剤を除く。),植物成長調整剤類,肥料」、第5類「薬剤,医薬用酵母,サプリメント」及び第30類「調味料,酵母,酵母エキス」
登録出願日 平成24年12月26日
設定登録日 平成25年10月11日
以下、これらをまとめて「引用商標」という。

第3 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、審判請求書及び弁駁書において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第18号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項第1号により、無効とすべきである。
2 具体的な理由
(1)本件商標の説明
本件商標は、「KOHJIN BIO」の英文字からなり、「KOHJIN」と「BIO」との間に空白を有し、「KOHJIN」の文字部分と「BIO」の文字部分からなる結合商標である。
「BIO(バイオ)」の文字は、「生体・生物体・生物」などを意味する接頭語として知られており、さらに、「BIO」は、「生物学」を意味する語として知られている。本件商標の指定商品は、細胞培養用培地、医療用培地、医療用血液等の生物、生体に関する商品である。この指定商品は、生体、生物などを連想する商品であり、甲第4号証ないし甲第7号証に示すように、本件商標の指定商品である細胞用培地の販売等を行う企業に、「バイオ」又は「BIO」を使用している企業が複数存在する。
甲第4号証は、コスモ・バイオ株式会社カタログであり、培地を含む培養キットの商品について記載があり、第2頁にコスモ・バイオの記載がある。甲第5号証は、コスモ・バイオ株式会社発行のニュース誌であり、表紙及び目次に「コスモバイオニュース」、「Cosmo Bio News」の記載と、特注培地受託サービスの提供に関する記載がある。甲第6号証は、タカラバイオ株式会社発行のカタログであり、培地、細胞に関するカタログであって、第2頁に「タカラバイオのブランドです」との記載がある。甲第7号証は、DSファーマバイオメディカル株式会社のWebサイトのうち、細胞、培地、血清に関する紹介をしているサイトである。サイト上端中央に「DSファーマバイオメディカル」の記載がある。
本件商標の取引者、需要者は、細胞培養等を行う専門的職業従事者等であり、「バイオ」と「BIO」の記載は、同義の記載であると認識されることから、「BIO」の文字部分は、自他商品の識別標識としての機能を有しないか又は極めて弱いものである。
以上のことから、本件商標の「KOHJIN」の文字部分と「BIO」の文字部分とは、明瞭に区別して認識され、さらに、本件商標は、外観上「KOHJIN」の文字部分と「BIO」の文字部分との間に空白を有しており、外観上もこれらの文字部分を明瞭に区別して認識できる。
したがって、本件商標がその指定商品に使用されたときは、「BIO」の文字部分は、自他商品の識別標識としての機能を有しないか又は極めて弱いものであるから、「KOHJIN」の文字部分が取引者、需要者に対し、商品出所識別標識として強く支配的な印象を与える部分である。
(2)本件商標と引用商標1との類否
ア 商標の類否に関する最高裁の判決(最高裁昭和37年(オ)第953号同38年12月5日第一小法廷判決・民集17巻12号1621頁、最高裁平成3年(行ツ)第103号同5年9月10日第二小法廷判決・民集47巻7号5009頁、最高裁平成19年(行ヒ)第223号同20年9月8日第二小法廷判決・裁判集民事228号561頁参照)に、本件商標をあてはめると、上記(1)の記載のように、「KOHJIN BIO」から「KOHJIN」の文字を分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的に結合しているものではないから、本件商標の構成部分の一部である「KOHJIN」の文字部分は、取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる。
したがって、「KOHJIN」の文字部分を要部として抽出し、これを引用商標と比較し、類否判断することも許され、当該文字部分より、「コージン」の称呼が生じる。
一方、引用商標1は、「KOHJIN」からなる商標であり、「コージン」の称呼が生じる。
さらに、外観においても、前述の称呼と同様の理由で、本件商標の「KOHJIN」部分が、取引者、需要者に対し、商品出所識別標識として強く支配的な印象を与え、当該部分は、引用商標1と同一の外観であり、本件商標の商標全体と引用商標1を比較すると、紛らわしいものといえるから、類似する。
以上のとおり、本件商標の要部である「KOHJIN」の文字部分と引用商標1は、称呼及び外観が同一であることから、本件商標及び引用商標1が本件商標の指定商品に使用された場合には、その商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがあるものといえるから、本件商標と引用商標1は全体として類似している。
したがって、本件商標は引用商標1に類似する商標である。
イ 指定商品の類否
本件商標の指定商品中の第1類の商品は、商標法施行令別表の工業用、化学用の化学品に該当する商品であり、引用商標1の指定商品「化学品」に該当する商品であって、同一又は類似の商品である。
次に、本件商標の指定商品中、第5類のうち「医療用又は獣医科用の血液代用剤、医療用化学剤,医薬調剤用化学物質,医療用の薬剤,医療用及び医薬用のバクテリア調製剤,医療用及び医薬用生物学的製剤,その他の薬剤」は、引用商標1の指定商品「薬剤」に該当する商品であり、同一の指定商品である。同じく「医療用血液,医療用血清,医療用血漿,医療用又は獣医科用の微生物培地,医療用又は獣医科用の組織培養用培地」は、医療のために用いる血液、血清、血漿、培地を意味するため、「薬剤」に該当する。
したがって、引用商標1の指定商品「薬剤」と同一又は類似の商品である。
(3)本件商標と引用商標2の類否
ア 商標の類否
本件商標は、要部である「KOHJIN」の文字部分から「コージン」の称呼が生じる。
一方、引用商標2は、図形部と「KOHJIN Life Sciences」の文字部からなる。「KOHJIN」の表記は、「Life Sciences」の表記よりも太い文字で表記されており、強く認識される。また、「Life Sciences」は、生物科学を意味する語であり、本件商標の「BIO」と同様に、本件商標の指定商品、培地、薬剤等に使用した場合、識別力の弱い部分であり、「KOHJIN」の部分が、取引者、需要者に対し、商品出所識別標識として強く支配的な印象を与える部分であるから、「KOHJIN」の文字部分を要部として抽出し、これを本件商標と比較し、類否判断することも許される。
したがって、引用商標2からは、「コージン」の称呼が生じる。
また、観念において、本件商標は、「BIO」の部分が、生体・生物体・生物などを意味する接頭語として知られていることから、商品に付された場合、「生物等に関連する商品」であるとの観念が生じる。さらに、引用商標2は、「Life Sciences」の表記から生命科学等に関する商品であるとの観念が生じ、両商標とも、生物、生体など生命科学に関連するものであるとの観念が生じ、「KOHJIN」の部分から特定の観念が生じないため、商標全体として、両商標は、同一の観念を生じる。
そして、外観においては、称呼と同様に本件商標と引用商標2では、要部として「KOHJIN」の文字部分が共通し、当該要部が出所識別機能として強く認識される部分であるため、図形部分を含めた引用商標2と本件商標の商標全体を比較すると、紛らわしいものといえるから、類似する。
以上のとおり、本件商標の要部である「KOHJIN」の文字部分と引用商標2は、称呼が同一であり、商標全体としての観念が同一、外観において類似であることから、本件商標及び引用商標2が本件商標の指定商品に使用された場合には、その商品の出所について誤認混同を生ずるおそれがあるものといえるから、本件商標と引用商標2は全体として類似している。
したがって、本件商標は引用商標2に類似する商標である。
イ 指定商品の類否
本件商標と引用商標2の指定商品は、引用商標1との対比と同様に、同一又は類似の商品である。
(4)小括
以上によれば、本件商標は、引用商標に類似する商標であって、本件商標の指定商品は引用商標の指定商品と同一又は類似であり、本件商標は商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。
3 答弁に対する弁駁
(1)本件商標の周知、著名性について
被請求人は、被請求人が製造販売する「細胞培養用培地」、「血清」、「細胞凍結保存液」、「細胞培養バック」において、本件商標が需要者の間で相当程度認知され、指定商品の分野において周知、著名であることが明らかであると主張している。
しかしながら、被請求人が提出した乙第1号証ないし乙第12号証には、いつから「KOHJIN BIO」を商標として使用しているかが不明であり、乙第2号証には、1989年(平成元年)に「コージンバイオ株式会社に社名を変更する。」なる記載があるが、本件商標とは同一商標ではなく、社名変更の記載であり、商号表記である。さらに、商品写真、カタログ以外の証拠においては、商標として「KOHJIN BIO」を使用しているものはなく、いずれも「コージンバイオ」、「コージンバイオ(株)」の表記であり、商標「KOHJIN BIO」が周知、著名である証拠はない。
したがって、「KOHJIN BIO」は、被請求人の商標として、周知、著名な商標ではない。
(2)商標の類否判断について
被請求人は、答弁書において、本件商標中の「KOHJIN」の部分を分離して抽出し、類否判断の対象とすることは許されない、及び「BIO」の部分から、本件商標の指定商品において、出所表示機能が生じないとは認めることができないと主張する。
しかしながら、被請求人が提出した乙第15号証及び甲第11号証には、バイオ産業と称される産業の範囲が記載されていることから、「BIO」から生じる観念が、本件商標の指定商品以外の広範囲に及ぶとしても、「BIO」の表記は、指定商品である細胞培養用培地等において慣用されている表記である。
甲第8号証には、バイオ産業に関与する会社が多数記載されており、「タカラバイオ」、「協和発酵バイオ」等の記載があり、乙第3号証及び乙第9号証においても、「コージンバイオ」、「タカラバイオ」、の記載がある。
さらに、観念上においても、「KOHJIN」部分と「BIO」部分に関連性はなく、「KOHJIN」部分を分離して称呼が生じる。
このように、慣用されている「バイオ」から、「BIO」なる表記において、簡易・迅速を尊ぶ取引の実際においては、「BIO」の部分を除いた部分によって、需要者に識別され、称呼、観念が生じることがあるといえる。
以上から、本件商標の「KOHJIN BIO」から、「KOHJIN」を分離して、「コージン」の称呼が生ずる。
したがって、本件商標と引用商標は、称呼が同一であり、全体として、類似する商標である。
(3)先登録例について
被請求人は、「バイオ」を含む、先登録例を例示し、これら先登録例から、「BIO」の部分にも識別性があり、当然に「KOHJIN BIO」からは、「コージンバイオ」の称呼のみが生じると主張している。
しかし、本件審判事件における争点である、「KOHJIN」と「KOHJIN BIO」の類比判断において、被請求人が例示した登録例は、先登録例とはならない。被請求人が例示した先行例は、全て外観において、英文字と仮名文字、図形表記の有無などの相違点があり、称呼、観念、外観の総合判断により、非類似商標として登録されたものと考える。一方、本件商標と引用商標1は、外観の相違点が「BIO」の文字部分のみである。
したがって、本件商標と引用商標1との類否判断において、被請求人が例示した登録例は、本件商標と引用商標1との類否判断には影響しない。
(4)乙第22号証及び乙第28号証について
被請求人は、「COSMO BIO」の登録例から、本件商標「KOHJIN BIO」も「コージンバイオ」の称呼のみが生じると主張している。
しかし、本件商標において、「COSMO BIO」の「COSMO」の部分において、甲第8号証及び甲第9号証に示すように、「COSMO」、「コスモ」が付される事業体が多数存在している。
このような状況のなかで、「COSMO BIO」のような表記では、「コスモバイオ」として認識することで、識別表記として機能するとみるのが自然である。
一方で、「KOHJIN」について、同様に、甲第10号証に示すインターネット検索をすると、請求人、請求人のグループ企業、又は、被請求人に関するサイトがほとんどである。
以上から、被請求人が先行登録例の証拠として採用した、登録例と、本件商標では、「KOHJIN」という部分の識別性への影響が大きいと考えるのが自然であり、本件商標「KOHJIN BIO」の「KOHJIN」部分からも称呼が生じる。
したがって、本件商標と引用商標1は、同一称呼の商標であり、外観において類似しており、観念において比較できないため、両商標は、類似の商標である。
さらに、「KOHJIN」部分の識別性への影響が大きい理由として、甲第11号証ないし甲第17号証を提出する。
「興人」は、本件商標の指定商品の範囲において、周知性を有しており、その結果、「KOHJIN」部分の識別性への影響が大きくなり、本件商標から、「KOHJIN」部分を分離して、「コージン」との称呼が生じる。
甲第12号証の日経バイオテクオンラインで、「興人」を検索すると、バイオ企業番付に「興人」が記載され、甲第13号証には、1987年のバイオ番付の前頭に「興人」の記載がある。
このように、1987年から2012年まで長期にわたり、「興人」は、バイオ企業として番付されており、甲第11号証は、経済産業省が平成28年(2016年)に作成した資料であり、現在も「興人」は、バイオ産業において周知性を有している。
甲第14号証及び甲第15号証において、本件商標の指定商品である第5類「医薬用化学剤、医療用の薬剤、その他薬剤」に該当するグルタチオンのメーカーとして、「興人」の記載がある。
甲第16号証には、本件指定商品の第5類「医薬用化学剤、医療用の薬剤、その他薬剤」に該当又は類似する診断薬の開発会社として「興人」の記載がある。
甲第17号証には、酵母エキスの生産能力増強に関する記事に「興人」の記載がある。なお、酵母エキスは、食品用途だけでなく、微生物培地用途にも使用されるのは、周知のことである。
これらのことから、「興人」は、バイオ産業において、周知性を獲得しており、「興人」から生じる称呼「コージン」は、周知となっており、本件商標の指定商品の範囲においては、識別性への影響が大きい。
さらに、被請求人においても、「KOHJIN」と「BIO」を分離して使用している例があり(甲18)、当該サイトは、被請求人の関連会社、連結子会社として紹介されている(乙2)
被請求人は、中国では、「高金生物科技(上海)有限公司」を社名としているが、会社ロゴ表示の下には「KOHJIN生物有限公司」と記載しており、「KOHJIN」と「BIO」を分離して使用している。
(5)結論
以上のとおり、本件商標は、「KOHJIN」と「BIO」を分離することがあり、その結果、「KOHJIN」部分から「コージン」の称呼が生じる。

第4 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第28号証を提出した。
1 前提事実
被請求人は、東京都杉並区において1981年に設立され、現在は埼玉県坂戸市に本社を構える日本法人である。1989年に社名を「コージンバイオ株式会社」に変更した後は、自己の業務に係る商品の出所標識として、商標「KOHJIN BIO」(本件商標)を付し、我が国において、動物血液及び血清、組織培養培地、医薬品、研究用抗血清、微生物検査用培地等の製造販売を行っている。
被請求人は、本件商標を総合カタログやウェブサイト等にも使用している(乙1、乙2)。
(1)細胞培養用培地
被請求人は、細胞培養用培地に関する市場において、2015年には約5億6,000万円の売上を上げており、市場において約12%のシェア(金額ベース)を有している(乙3)。
被請求人が製造販売する細胞培養用培地のラベルの左上には、「KOHJIN BIO」の商標が付されている(乙4?乙6)。
したがって、本件商標は、被請求人の業務に係る微生物培養用培地の出所を表示するものとして、需要者の間で相当程度認知されているというべきである。
(2)血清
被請求人は、血清に関する市場において、2015年には約7,100万円の売上を上げており、市場において約2.4%のシェア(金額ベース)を有している(乙7)。
さらに、「牛新生児血清」の広告に該当する被請求人のホームページには、「KOHJIN BIO」の商標が付されている(乙8)。
したがって、本件商標は、被請求人の業務に係る医療用血清及びその他薬剤(農薬に当たるものを除く)の出所を表示するものとして、需要者の間で相当程度認知されているというべきである。
(3)細胞凍結保存液
被請求人は、細胞凍結保存液に関する市場において、約3,500万円の売上を上げており、市場において約7.6%のシェア(金額ベース)を有している(乙9)。
さらに、そのうち主力製品の広告に該当する被請求人のホームページには、「KOHJIN BIO」の商標が付されている(乙10)。
したがって、本件商標は、被請求人の業務に係るその他薬剤の出所を表示するものとして、需要者の間で相当程度認知されているというべきである。
(4)細胞培養バッグ
被請求人は、2015年には細胞培養バッグに関する市場において、約2億円の売上を上げており、市場において約33.3%のシェア(金額ベース)を有している(乙11)。
さらに、その主力製品のラベルの左上には、「KOHJIN BIO」の商標が付されている(乙12)。
したがって、本件商標は、需要者の間で相当程度認知されているというべきである。
(5)小括
以上から、本件商標は、被請求人(商標権者)の商品を示すものとして、その指定商品の分野において周知、著名であることが明らかである。
2 商標の類否
(1)商標の類否の判断基準に関する最高裁の判決(昭和43年2月27日最高裁昭和39年(行ツ)第110号)及び複数の構成部分を組み合わせた結合商標と解されるものについて、請求人提示の最高裁判決があるところ、本件商標から「KOHJIN」の部分のみを抽出し、類否判断の対象とすることが許されるケースは、(i)「KOHJIN」の部分が、取引者及び需要者に対し、商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められる場合、又は(ii)「KOHJIN」以外の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められる場合に限られる。
(2)本件商標のうち「KOHJIN」が強く支配的な印象を与えるか
本件商標は「KOHJIN BIO」の欧文字からなり、各文字の大きさ及び書体は同一でまとまりよく表されており、外観上一体に看取される。本件商標は「KOHJIN」の文字部分だけが独立して見る者の注意をひくように構成されておらず、「KOHJIN BIO」が同書、同大、等間隔で表されている。本件商標の全体から生じる称呼「コージンバイオ」も、無理なく一連に称呼し得るものであり、需要者が本件商標を称呼する際、「コージン」と「バイオ」との間に一拍置いて称呼するとは考え難い。「BIO」が、生物・生物体・生物などを意味する接頭語に通ずるものであっても、本件商標は全体の構成によって、一体不可分の造語を表している。さらに、上述のとおり、本件商標は「KOHJIN BIO」一体の構成で需要者に広く認識されている。
したがって、本件商標のうち「KOHJIN」の部分は強く支配的な印象を与えるものではなく、本件商標と引用商標の類否を判断するに当たっては、「KOHJIN」の部分のみを要部として抽出し、類否判断の対象とすることは許されない。
(3)「BIO」の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないと認められるか
「広辞苑」(第4版)によれば、「BIO」の日本語読みである「バイオ」の文字は「生命を意味するギリシア語ビオス(bios)の短縮形で、生体・生物体・生物などを意味する接頭語」と定義されている(乙13)。「研究社 新英和大辞典(第5版)」によれば、「bio-」は「生命、生物の意の連結形」と定義されている(乙14)。これより「bio-」又は「バイオ」の語が単独では用いられることが稀であり、「バイオリズム」、「バイオテクノロジー」など、接頭語として用いられることによって、生命に関する単語を形成することが明らかとなる。
ウェブサイト「Wikipedia」(乙15)の記載からも、「生物学(Biology)」が、本件商標の指定商品に係る生物製剤の分野を直接的に表すものではなく、広範に及ぶことが明らかとなる。また、「バイオ産業の国際競争力の現状と優位性構築のための検討」(乙16)によれば、バイオ産業の定義には、本件商標の指定商品に係る生物製剤の分野に限られず、農林水産業、農薬、医薬品、遺伝子治療、実験機器等といった、本件商標の指定商品とは非類似の分野にも及ぶ。
「BIO」の文字が語頭に配置されることによって、生命に関する単語を形成し、需要者が生命に関する何等かの意味を受けとるとしても、「BIO」の文字は、本件商標の指定商品を直接的に表すものとして一般的に用いられている語ではないことから、自他商品の識別標識としての機能を有しないと認めることはできない。特に、「BIO」の文字が語尾に付された本件商標においては、その構成全体をもって一体不可分の一種の造語として認識し、把握されるとみるのが自然である。
ところで、請求人が提出した証拠書類に記載されている「○○バイオ」の文字は、いずれも文字商標として化学品や薬剤等を指定商品に含み商標登録されている(乙17?乙19)。
それら商標登録に係る指定商品は、本件商標の指定商品よりも広範囲に及ぶことを鑑みれば、「BIO」の文字が本件商標の指定商品を直接的かつ具体的に認識させるものではないことが明らかである。上記の商標登録に係る商標権者が一事業として培地及び培養キット等を販売していることのみを理由として、「BIO」の部分が自他商品の識別標識としての機能を有しない又は極めて弱いということはできない。
以上により、本件商標のうち、「BIO」の部分からは出所識別標識としての機能が生じないと認めることはできない。そして、本件商標「KOHJIN BIO」の文字は、辞書類に載録された成語とは認められず、また、特定の意味合いを有する語として一般に知られたものとも認められない。本件商標は、その構成全体をもって「コージンバイオ」の称呼を生じ、特定の意味を有することのない一種の造語として看取、理解されるとみるのが相当である。
3 先行登録例
本件商標と同一又は類似する指定商品等を含み、商標の一部に「BIO」の語が含まれており、「BIO」と他の語との間に空白を有するものの、商標全体をもって一体不可分のものとして認識されると判断され、特許庁において登録処分が行われた登録例を列挙する。
(1)「アップル」と「Apple Bio」(乙20、乙21)
(2)「コスモ/COSMO」と「COSMO BIO」(乙22、乙23)
(3)「ビーズ」と「Bio Beads」(乙24、乙25)
(4)「Laundry」と「BIO LAUNDRY」(乙26、乙27)
4 引用商標との類否判断の誤り
上記のとおり、特許庁での先行登録例をみても、本件商標「KOHJIN BIO」と、引用商標1「KOHJIN」及び引用商標2「KOHJIN Life Sciences」とは識別可能であり、並存して登録が認められるべき商標であることは明らかである。
(1)引用商標1との類否判断の誤り
引用商標1は、「KOHJIN」の欧文字からなり、その構成から「コージン」の称呼が生じる。引用商標1の称呼「コージン」と、本件商標の称呼「コージンバイオ」とは、音数に明らかな差異があることから、十分に区別し得ると認められる。さらに、両商標ともに特定の観念を生じないことから、観念においては対比することができない。したがって、両商標は非類似の商標である。
(2)引用商標2との類否判断の誤り
引用商標2の構成については、「KOHJIN」部分が要部となる。
しかし、本件商標と引用商標2とは、外観が明白に異なり、引用商標2から生じる称呼「コージン」と、本件商標の称呼「コージンバイオ」とは、音数に明らかな差異があることから、十分に区別し得ると認められる。さらに、両商標ともに特定の観念を生じないことから、観念においては対比することができない。したがって、両商標は非類似の商標である。
5 結語
以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に反して登録されたものではない。

第5 当審の判断
請求人が本件審判を請求するにつき、利害関係を有する者であることについては、当事者間に争いがないので、本案に入って審理し、判断する。
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は、前記第1のとおり、「KOHJIN BIO」の文字を標準文字で表してなるところ、その構成文字は、同書、同大でまとまりよく一体的に表されているものであり、たとえ、その構成中の「BIO」の文字部分が、「生体・生物体・生物などを意味する接頭語」を及び「生物学」の意味(広辞苑 第六版、ジーニアス英和大辞典)を有するものであるとしても、「KOHJIN」及び「BIO」のいずれかの文字部分が、殊更、取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるとはいい難いものであるから、かかる構成態様においては、むしろその構成全体をもって一体不可分の造語を表したものと認識され、把握されるとみるのが自然である。
そして、本件商標の構成文字全体から生じる「コージンバイオ」の称呼も格別冗長でもなく、無理なく一連に称呼されるものである。
また、被請求人の提出した証拠によれば、被請求人の商品である細胞培養用培地、細胞凍結保存液及び細胞培養バッグについては、2014年(平成26年)の売上及び企業シェアは、それぞれ、約5億3,500万円、約12パーセント(3位:乙3)、約3,500万円、約7.6パーセント(2位:乙9)、及び2億円、約33パーセント(2位:乙11)であり、その商品のラベル等に、「KOHJIN BIO」の文字が使用されている(乙4?乙6、乙10、乙12)ことからすれば、「KOHJIN BIO」の文字からなる本件商標は、当該商品に係る業界においては、相当の知名度を獲得していたものというべきであって、その登録出願時及び登録査定時には、本件商標の指定商品の分野において、一定程度の周知性を有していたといえるものである。
そうすれば、取引者、需要者は、「KOHJIN BIO」の表示をもって、本件商標を一体的なものとして認識し、把握するものというのが相当である。
してみれば、本件商標は、その構成文字に相応して、「コージンバイオ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標について
引用商標1は、前記第2の1のとおり、「KOHJIN」の文字からなるところ、その構成文字に相応して、「コージン」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
引用商標2は、別掲のとおり、大きさの異なる3つの緑色の楕円形からなる図形と「KOHJIN Life Sciences」の文字からなるところ、その構成文字に相応して、「コージンライフサイエンシズ」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。
また、引用商標2は、語頭に位置し、他の文字に比べて、大きく太く表された「KOHJIN」の文字部分が取引者、需要者に対し商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものと認められるから、該文字に相応して、「コージン」の称呼をも生じ、特定の観念を生じないものである。
(3)本件商標と引用商標の類否について
ア 本件商標と引用商標1とを比較すると、両商標は、外観においては、上記(1)及び(2)のとおりの構成からなるところ、後半部における「BIO」の文字の有無の差異を有するものであるから、外観上、判然と区別し得るものである。
また、称呼においては、本件商標から生じる「コージンバイオ」と引用商標1から生じる「コージン」の称呼は、「コージン」の音を共通にするとしても、語尾における「バイオ」の音の有無という明らかな差異を有するから、称呼上、明確に聴別し得るものである。
さらに、観念においては、両商標は共に特定の観念を生じないものであるから、観念上、相紛れるおそれのないものである。
してみれば、本件商標と引用商標1とは、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
イ 次に、本件商標と引用商標2とを比較すると、両商標は、外観においては、上記(1)及び(2)のとおりの構成からなるところ、図形の有無や構成文字数が相違するものであるから、外観上、判然と区別し得るものである。
また、称呼においては、本件商標から生じる「コージンバイオ」と引用商標2から生じる「コージンライフサイエンシズ」の称呼は、「コージン」の音を共通にするとしても、その後半部の構成音に明らかな差異を有するから、称呼上、明確に聴別し得るものである。
さらに、観念においては、両商標は共に特定の観念を生じないものであるから、観念上、相紛れるおそれのないものである。
そして、本件商標と引用商標2の構成中の「KOHJIN」の文字部分とは、引用商標1の場合と同様の判断ができるものであって、その外観、称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標である。
してみれば、本件商標と引用商標2とは、外観、称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
(4)小括
以上のとおり、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当しない。
2 請求人の主張について
請求人は、本件商標は、その構成中「BIO」の文字が、自他商品識別機能を有しないか又は極めて弱いものであるから、「KOHJIN」の文字部分が取引者、需要者に対し商品出所識別標識として強く支配的な印象を与える部分であって、「KOHJIN」の文字部分を要部として抽出し、引用商標と比較し類否判断することも許されるものである旨及び本件商標の指定商品を取り扱う企業に「バイオ」又は「BIO」の文字を使用している企業が多数存在することから、本件商標から「KOJIN」の文字部分を分離して、該文字部分から「コージン」の称呼を生じる旨主張している。
しかしながら、請求人提出の証拠によっては、「BIO(バイオ)」の文字が本件商標の指定商品中のいずれかの商品の普通名称や品質等を表示するものであると認め得る証左はなく、また、企業が「バイオ」又は「BIO」の文字を使用しているとして提出した証拠(甲4?甲7)は、「コスモ・バイオ」、「コスモバイオ」、「Cosmo Bio」、「タカラバイオ」及び「DSファーマバイオメディカル」といった表示で使用されているものであり、それらの表示は、「バイオ」又は「BIO」の文字が企業名として他の文字と一体不可分に使用されているとみるべきものである。
さらに、被請求人は、「興人」が周知性を有していることから、本件商標の構成中「KOJIN」の文字部分を分離して「コージン」の称呼が生じる旨主張し証拠(甲11?甲17)を提出しているが、提出された証拠によっては、周知著名性の程度を推定するために必要な具体的な事実、例えば、売上高や広告の規模等が何ら明らかにされておらず、「興人」の文字が周知性を有するとは認められないものであり、かつ、「興人」の文字が誰の使用に係る商標であるのかも不明である。
してみれば、請求人の主張は、採用できない。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定に基づき、その登録を無効にすべきでない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(引用商標2。色彩は原本参照)


審理終結日 2017-03-15 
結審通知日 2017-03-21 
審決日 2017-04-04 
出願番号 商願2014-43711(T2014-43711) 
審決分類 T 1 11・ 263- Y (W0105)
T 1 11・ 261- Y (W0105)
T 1 11・ 262- Y (W0105)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 海老名 友子 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 中束 としえ
木住野 勝也
登録日 2014-10-03 
登録番号 商標登録第5707141号(T5707141) 
商標の称呼 コージンバイオ、コージンビオ、コージン 
代理人 榎本 政彦 
代理人 伊藤 信和 
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