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審決分類 審判 全部取消 商51条権利者の不正使用による取り消し 無効としない X3643
管理番号 1329193 
審判番号 取消2013-300519 
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2013-06-19 
確定日 2017-05-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第5464311号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5464311号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、平成23年7月25日に登録出願、第36類「前払い式証票の発行」及び第43類「飲食物の提供又はそれに関する情報の提供」を指定役務として、平成24年1月20日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、商標法第51条第1項の規定により、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第68号証(枝番を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標権者は、請求人の発行に係るものとして周知著名な「全国共通お食事券」という名称のギフトカードが存在することを知りながら、本件商標の態様で登録を取得し、その後、その使用態様を以下(1)のように変更して使用している。本件商標権者の使用する各商標の態様は、本件商標と類似するものであり、これらの態様への変更は、請求人の発行に係るギフトカードとの間で役務の質の誤認及び請求人の業務に係る役務と混同を生じているばかりでなく、請求人の発行に係るギフトカードの名称たる「全国共通お食事券」への「ただ乗り行為」にほかならず、商標法第51条第1項に規定する「不正使用」に当たることから、本件商標の登録は取り消されるべきものである。
(1)本件商標権者の使用に係る商標
本件商標に対し、本件商標権者は、その発行に係るギフトカード(以下「商標権者商品」という。)の券面、商標権者商品を入れる封筒やギフトボックス、自己のウェブサイト及び商標権者商品が使用できる店舗の表示に、別掲2に示す態様の商標(以下「本件使用商標」という。)を使用している(甲2?甲4)(審決注:各甲号証における本件使用商標には、別掲2と色彩が異なるものを含む)。
(2)本件商標と本件使用商標との類似性について
本件商標は、別掲1に示すとおり、楕円形を以ってその外郭を形成し、その中に「ぐるなび」の文字と「ギフトカード」の文字を二段に配して構成されてなるものであるのに対し、本件使用商標は、別掲2に示すとおり、本件商標の楕円形の中に配された「ギフトカード」の文字の下に小さく「GURUNAVI GIFTCARD」の欧文字が配されているとともに、当該楕円形の下に「全国共通お食事券」の文字が顕著に表されてなるものである。
本件商標と本件使用商標を対比すると、両者の楕円形部分については、本件使用商標中に「ぐるなび」と「ギフトカード」の文字を欧文字で表記する「GURUNAVI GIFTCARD」の文字が小さく配されているものの、両者の楕円形部分はその構成の軌を同じくするものであり、本件使用商標は、本件商標をその構成に含む態様となっていることから、本件使用商標が本件商標に類似する商標に当たるのは明らかである。
(3)請求人の業務に係る役務との混同について
ア 請求人について
請求人は、社団法人日本フードサービス協会(以下「日本フードサービス協会」という。)の加盟社である主要外食事業者と金融機関の出資により、外食産業界が共同して行う初の事業として、全国的に使える極めて利便性の高い信頼できるギフト券の発行事業を行う目的で設立された会社である(甲6、甲7)。請求人は、平成4年の設立以降、「ジェフグルメカード」という社名の略称の下、「全国共通お食事券」の名称(以下「引用商標」という。)のギフトカード(前払式証票)(以下「請求人商品」という。)を発行・販売している(甲8)。
イ 請求人の「全国共通お食事券」に係るギフトカード事業について
請求人商品の発行が開始されたのは平成4年12月1日であり、その販売は、日本フードサービス協会が母体となり、外食産業初の全国共通の食事券を発行する取組みとして位置付けられていた(甲9、甲12、甲13)。このような取組みについては、全国紙各紙(日本経済新聞、読売新聞、朝日新聞、毎日新聞)において報道された(甲14)。
請求人及び日本フードサービス協会は、消費者保護の視点に立って、各業界において「全国共通●●券」の名称が用いられているギフト券は、その業界で特定かつ単一の発行主体で行われているという実情も考慮し、さらには、自らの追求すべき理念を端的に体現できる名称にしたいとの深い思いを込めて、「全国共通お食事券」という名称を採択した。加えて、顧客ニーズが最大限に図られるようなギフトカードでなければならないとの理念から、ア)ギフトカードの利用に際し、有効期限を設けず(いつでも)、イ)フランチャイズ店を含め同一ブランドの店舗ではすべて利用可能とし(どこでも)、ウ)加盟店における全商品について利用可能として制限を設けない(何にでも)ことにより、使い勝手の良さが最大限に確保されたものであった。そして、この「いつでも、どこでも、何にでも」というフレーズは、請求人商品を表すスローガンとなっており、「全国共通お食事券」とは、「いつでも、どこでも、何にでも」使用できるグルメカードの意味であることを顧客たる消費者に十分に浸透させ、外食産業全体の普及に役立たせることにしたのである。
ウ 引用商標に係る「全国共通お食事券」の認知度について
請求人は、「全国共通お食事券」の名称について、ギフトカードの発行者として、テレビ、新聞広告、各店舗における広告等、多様な媒体を介して、その名称の周知化を図ってきた(甲15、甲16)。実際、請求人設立から5年間の宣伝広告費の名目での支出を合計したのみでも4億3500万円を超えるものであった。
このような宣伝広告活動と相まって、ジェフグルメカード(全国共通お食事券)という請求人商品のブランド認知度は、平成10年7月の時点で47.9%と、「NICOS GIFT CARD」や「UC ギフトカード」と拮抗する程度に達しており、また、プレゼント希望でも「NICOS GIFT CARD」を上回る希望者を得ており、高い認知度を得、人気を博している(甲17)。加えて、請求人商品は、最近では、エコポイントとの交換商品としても選定されたほか、各企業が展開するキャンペーンの賞品として選定されており(甲18、甲19)、今日においても依然として高い認知度を得、人気を博していることは明らかである。
請求人商品は、券面額500円の商品券で(甲20)、全国・全都道府県に所在する3万5294(平成23年6月現在)の加盟店で飲食代金等の支払いに利用でき、販売開始以来年々発行枚数は増加しており、昨年度は約1390万枚を発行し、総発行枚数は約1億4413万枚(平成23年10月現在)に達している(甲21)。
また、請求人商品は、「全国共通お食事券」の文字が表示され、その上部に「ジェフグルメカード」と通常の書体で請求人の名称が記載されているものである。さらに、全加盟店において、赤色で周辺部を囲った楕円形の中央部に赤地に白字抜きで大きく「全国共通お食事券」の文字が目立つ態様で表示され、その下部にやや小さい文字の2段組みで赤字をもって「ジェフグルメカード加盟店」の文字が、その上部にはデザイン化された態様で「Gourmet/Card」の文字が表されたステッカー(甲22)が店舗の出入り口付近に掲出されているほか、販売を取り扱う加盟店の多くに販売店用告知スタンドも設置されている(甲23)。
以上からすると、請求人商品は、今日において、引用商標に係る「全国共通お食事券」の名称をもって、需要者の間において広く認識され、周知著名となっているものである。
エ ギフトカード分野における「全国共通お食事券」の認知度について
請求人の加盟店リストのリーフレット中における「全国共通お食事券」と「ジェフグルメカード」の表示(甲24)は、容易に分離して認識し得る態様で表示され、その一方で、両者のうちのいずれかの表示を目にするときには、他の表示も必然的に目に入るものであり、このような実態に照らしたときには、請求人の「ジェフグルメカード」の認知度(甲17)は「全国共通お食事券」の認知度そのものであると考えられて然るべきである。つまり、需要者・取引者がこのリーフレットに接したときには、「ジェフグルメカード」は、請求人を指称するハウスマークであり、そのハウスマークの下、「全国共通お食事券」というグルメカードを発行しているという認識が生ずるのである。
加えて、請求人は、「全国共通お食事券」という名称以外のグルメカードは発行していない(甲21)。
以上からすると、「ジェフグルメカード」は、請求人が発行する「全国共通お食事券」というギフトカード(前払式証票)を指し、「全国共通お食事券」というギフトカード(前払式証票)は請求人が発行するグルメカード(ジェフグルメカード)を指すという認識が確立されており、「ジェフグルメカード」の認知度は「全国共通お食事券」の認知度そのものである。
以上を総合すると、「全国共通お食事券」という名称は、今日において既に請求人の業務(前払式証票の発行)に係る商標として広く認識されるに至っているものである。
オ 本件商標権者による本件商標に係る登録の取得とその後の使用について
本件商標権者は、インターネット及びコンピューターを利用した情報処理サービス業務並びに情報提供サービス、前払式支払手段の発行及び販売等を目的として、平成元年10月2日に設立された会社であり(甲25)、平成23年9月頃から本件商標に係ると思われる「ギフトカード」の発行・販売をしている(甲26)。
本件商標権者は、平成23年4月から自社の会員が貯めたポイントの交換対象として「ぐるなびスーパーぐポイントご利用券」(以下「ポイント利用券」ともいう。)の取扱いを開始したところ、平成23年8月頃、ポイント利用券取扱い店舗に対し、同年9月15日以降は、ポイント利用券に加え、本件商標権者の「ギフトカード」を取扱いいただき、どちらか一方の取扱いに限定することはできない旨を通告し、本件商標に係ると思われる「ギフトカード」の発行販売を開始した(甲27)。そして、この「ギフトカード」事業との関連で、本件商標の出願がされたと考えられるが、本件商標権者は、本件商標のほかに、「ぐるなびギフトカード」「ぐるなびグルメカード」「ぐるなびお食事券」についての出願をしていることからすると(甲28)、本件商標権者にあっては、「ぐるなびギフトカード」の名称を採択したと言えるが、本件商標の態様でそのまま使用すれば良いものを、請求人が使用している「全国共通お食事券」の表示を付けた態様で使用している(本件使用商標)。
さらに、本件商標権者は、自己のウェブサイト等において、「全国共通お食事券」の文字のみを表示して使用しているが(甲29)、これを商標出願した形跡は見当たらない(甲30)。
請求人において、なぜ、本件商標権者により「全国共通お食事券」の文字のみでの商標出願がなされていないかという点を推察すると、「全国共通お食事券」の文字のみで出願したときに、請求人会社の使用に係る「全国共通お食事券」という名称(引用商標)との関係で商標法第4条第1項第10号又は同第15号に該当する旨の拒絶理由が発せられた場合には、「全国共通お食事券」の文字を含んだ態様のグルメカードの発行に支障をきたすおそれがあり、本件商標権者はこの点を懸念したからではないかとの疑念を抱かざるを得ない。
さらに、本件商標権者は、飲食店情報検索サイトを運営する者として、飲食店の運営主体企業からなる外食産業の動向や請求人ギフトカードについても知悉していたはずであるが、請求人が使用している「全国共通お食事券」(引用商標)の表示を付加した態様に変更し、自己の標識として使用している(本件使用商標)。
このことは、本件商標権者は請求人が築き上げた「全国共通お食事券」(引用商標)に化体した信用に「ただ乗り」してこれを利用し、請求人のそれに化体した信用を減殺させる意図で本件使用商標を用いていることを意味するにほかならない。
カ 本件使用商標との出所の混同について
本件商標権者は、「全国共通お食事券」の名称及びこれを含む名称が商標登録されていないことを奇貨として、本件商標に「全国共通お食事券」の文字を付加し、本件使用商標に態様を変更している。加えて、本件商標権者は、今日においては、「全国共通お食事券の取扱店でお会計時にご利用頂ける『ぐるなびギフトカード』が誕生しました。」という謳い文句としている(甲31)。このような変遷、本件使用商標への使用態様の変更は、周知著名な引用商標への「ただ乗り行為」にほかならない。
さらに、請求人の加盟店でのみ利用できる「全国共通お食事券」(ジェフグルメカード)が存在するにもかかわらず、また、本件商標権者においてその存在を知悉していたにもかかわらず、「全国共通お食事券」という大きい括りの下、「全国共通お食事券の取扱店でお会計時にご利用頂ける『ぐるなびギフトカード』が誕生しました。」という謳い文句まで掲げ、本件使用商標を使用することは(甲31)、請求人の業務に係る役務と混同を生ずる行為をしたにほかならないものである。
(4)役務の質の誤認について
ア 請求人の発行に係る「ギフトカード」(「前払式証票」)との関係
平成4年12月に、請求人商品の発行・販売が開始されたが、需要者たる消費者においては、請求人商品は、加盟店であることさえ確認できれば、「いつでも、どこでも、何にでも」使用できるグルメカードであるという信頼を確立するに至っており、このことは、請求人の重要な社会的ステータスになっているのみならず、「いつでも、どこでも、何にでも」というフレーズ及びそれが意味するところは、請求人による20年にわたる独占的な使用とも相まって(甲32?甲34)、外食産業分野におけるギフトカードの一つの特性を表示するに至っているものである。
これに対し、商標権者商品は、「全国共通お食事券」という表示を含むものの、全国での使用という実態を伴っていない上に、同一ブランドの店舗でも取扱店と非取扱店とが混在しており(甲34)、利用店舗に対して利用できないサービスの有無の確認を需要者に求めることをその約款上想定し(甲35)、3年間の有効期限が設定されている。これらの状況は、加盟店であることさえ確認できれば、「いつでも、どこでも、何にでも」使用できる請求人商品とは、役務の質を全く異にするものである(甲34)。
したがって、このような状況を容認し、請求人の発行する「全国共通お食事券」というギフトカードに対する認識が、本件商標権者のそれのように需要者に認識されることは、明らかに請求人商品としての価値を低下させるものであり、請求人が積み上げてきた営業上の信用が減殺され、希釈化される状況にあることも明らかであるから、本件商標権者による本件使用商標の使用は、外食産業分野において請求人により既に確立されている役務の質との関係で誤認を生じさせる行為である。
イ 請求人会社以外の「前払式証票」との関係
「全国共通●●券」という態様の代表的なものとして、日本図書普及株式会社が発行する「全国共通図書カード」(「全国共通図書券」の後身)、米穀卸売業者で組織する全国団体である全国米穀販売事業共済協同組合が発行する「全国共通おこめ券」が挙げられ、これらに使用枚数・金額、使用曜日などの使用制限はない。
このように、「全国共通●●券」という態様の「前払式証票」の代表的なものと比較してみても、商標権者商品は、その役務の質が劣るものであることは明らかである。
この役務の質の劣悪の問題は、商標権者商品に本件商標をそのまま使用しているときには生じ得ないが、本件商標権者は、「全国共通お食事券」の文字を付加した態様(本件使用商標)に変更して使用していることから、当然に「全国共通図書カード」や「全国共通おこめ券」が兼ね備えている質との関係も問われなければならない。
本件使用商標での使用は、「役務の質」との関係で「誤認」を生じさせる行為であると言わざるを得ない。
ウ 第43類の「飲食物の提供に関する情報の提供」との関係
本件商標権者は、第36類の「前払式証票の発行」という役務について本件商標を登録した上で、その使用態様を本件使用商標に変更し、さらに、本件使用商標を「クーポン券」までを指称するものとして用いて、「飲食物の提供に関する情報の提供」を行っている。
このような形での情報の提供により、請求人の発行する「全国共通お食事券」というギフトカードに対する認識が、本件商標権者のそれのように需要者に認識され兼ねず、請求人が積み上げてきた営業上の信用が減殺され、希釈化される状況にあることも明らかであるから、本件商標権者による「飲食物の提供に関する情報の提供」についての本件使用商標の使用は、「役務の質の誤認」を生じさせる行為である。
(5)故意について
本件商標権者は、飲食店情報検索サイトを運営する者として、飲食店の運営主体企業からなる外食産業の動向や周知著名な引用商標を付したギフトカードの存在を認識していたにもかかわらず、「全国共通お食事券」という名称及びこれを含む名称が商標登録されていないことを奇貨として、本件使用商標にその使用態様を変更している。
上記に加え、外食産業分野では、加盟店であることさえ確認できれば、「いつでも、どこでも、何にでも」使用できるという環境が作られているにもかかわらず、本件商標権者は、利用可能な店舗や利用条件が異なる「全国共通お食事券」の名称のギフトカードを本件使用商標の下に提供しているのであるから、本件商標権者による本件使用商標の使用は「故意」によるものであることは明らかである。
2 答弁に対する弁駁
(1)商標権者商品の加盟店を示すステッカー(乙16)について
本件商標権者は、商標権者商品の加盟店を示すステッカーを挙げ、その代表的なものとして別掲3のステッカーを示している。
このステッカーの態様は、本件商標の楕円形の中に二段を以って配されている「ぐるなび」と「ギフトカード」の文字の下に、「全国共通お食事券」の文字が付加された態様となっている(以下、この態様の表示を「本件使用商標2」という)。本件商標権者の主張によれば、この本件使用商標2と本件使用商標は、いずれも商標権者商品の加盟店を示すステッカーで、どちらを選択するかは加盟店に委ねられているというものであり、本件商標との関係では、本件使用商標2についても、本件使用商標の捉え方と同様の捉え方になる。
本件使用商標2の態様での使用も、本件使用商標と同様、請求人の発行に係るギフトカードの名称たる「全国共通お食事券」への「ただ乗り行為」「すり寄り行為」に他ならないことから、請求人は、本件使用商標2についても、本件商標権者の本件商標の正当使用義務違反を追求する。
(2)「全国共通お食事券」という表示の出所識別機能について
ア 請求人の「全国共通お食事券」に係る商標登録出願について
請求人の「全国共通お食事券」に係る商標登録出願についての拒絶査定は、妥当な判断と言えるものではないから、請求人は、上記拒絶査定に対して拒絶査定不服審判を請求している。
イ 「全国共通お食事券」の表示に対する被請求人の認識について
被請求人は、「全国共通お食事券」という表示について「自他識別機能」や「出所識別機能」が備わることはないなどと主張している。
被請求人の主張より明らかなことは、被請求人は、「全国共通お食事券」という表示について「サービスの抽象的な質」を示す表示として認識しているということである。
請求人は、特許庁で採られている商品・役務の識別性の判断に関して、商品の品質等を直接的かつ具体的に記述する場合に始めて「商品の品質又は役務の質」の表示に当たることになり、商品・役務の間接的・抽象的な表示は商品等の品質表示には当たらないとの判断がなされていると理解している。
被請求人が言うところの「サービスの抽象的な質」を表示すると認識される「全国共通お食事券」という表示にあっては、それ自体で、「生来的な自他商品・役務識別機能」「出所識別機能」が備わっているという結論に至らなければならないはずであり、このような被請求人の主張こそが、「全国共通お食事券」という表示についての「識別性を肯定」する主張に他ならない。
ウ 「全国共通お食事券」の表示に対する特許庁審判部の認識について
本件商標に対してなされた異議申立事件において、異議決定(乙3)で示されている理由は、「ぐるなびギフトカード全国共通お食事券」という商標中の「全国共通」の語は「全国的に共通のもの、全国で利用できる」などの意味合いを想起させるものであるといえるとしても、かかる意味合いは漠然としたものであるし、また、該文字が申立人が述べるように「少なくとも47都道府県の主要都市における、ある程度の規模の店なら使用できるであろう」との役務の質を表示するものとして、一般に使用されていると認めるに足る証左は見いだせず、かつ、「食事券の発行」に係る指定役務との関係において、その需要者をして該語をその役務の質を表示するものと認識させるというべき事情も発見できない、ということである。
つまり、「全国共通お食事券」という文字は、「役務の質」を表示するものと認識されるものではなく、「役務の質」の表示に該当しない以上、「役務の質の誤認」という事態が生ずることはないということを示しているのである。
審判部は、異議決定における判断を無視できないはずであり、さらには、「全国共通お食事券」の字義からは「サービスの抽象的な質」しか看取されないということであれば、請求人における当該表示の使用とも相まって、「全国共通お食事券」という表示(引用商標)については、「自他商品・役務識別機能」「出所識別機能」が備わっているという結論にならざるを得ないはずである。
エ 「全国共通お食事券」(引用商標)に関する取引の実態について
商標法における関連各条項が求めているのは、「全国共通お食事券」の表示が単独で識別標識として機能しているか、ということではなく、「全国共通お食事券」の表示が請求人の業務に係る表示として認識されているか、すなわち、請求人の出所識別標識として機能しているか、ということである。
また、取引の現場では、両者を取り違える事態が生じている(甲39ないし甲46)。実際の現場では、「全国共通お食事券」の表示を単なる説明的な文字として捉えるのではなく、商品の識別に際して最も重要となる商品名(商品を識別するための名称)という位置付けで、捉えているのである。被請求人も、答弁書における一覧のリスト中に「全国共通●●券」を挙げているが、これらも「名称」という項目の下に挙がっている。これは、被請求人においても、「全国共通お食事券」の表示を商品名として捉えているからに他ならない。
上記より、取引の現場においては、「ジェフグルメカード」や「ぐるなびギフトカード」という表示は、ギフトカードの発行主体(加盟店にあっては加盟カードの主体)を認識させるにすぎず、ギフトカードの識別に際し最も重要なものとして位置付けられるのは、「全国共通お食事券」の表示(商品名)にあるといえる。
このような取引の実態は、本件審判請求事件にのみ通用する「浮動的・一過的」なものでないことは明らかであり、この種の分野における「普遍的・恒常的」な取引の実情として考慮されるべきものである。
オ 請求人・被請求人発行のギフトカードと「全国共通お食事券」(引用商標)の認知度について
請求人の発行に係る「グルメカード」と被請求人の発行に係る「ギフトカード」との取違えの事態が発生したのは請求人のグルメカードの加盟社の店舗においてである。請求人においては、平成23年10月に加盟社に対して、「『ぐるなびギフトカード全国共通お食事券』の情報提供」というタイトルの通知をしていた(甲47)。この通知には、注意喚起を促す文書も添付して、この文書の活用を加盟社に要請し、加盟社は各店舗やフランチャイズ店への周知徹底を図っていた(甲48?甲52)。
このような中で、被請求人のギフトカードを請求人のグルメカードと取り違えるという事態が発生したが、これは、請求人のグルメカードの加盟社やその従業員にあっては、「全国共通お食事券」という名称(商品名)のギフトカードに接したときには、ジェフグルメカード(請求人のグルメカード)を指すという認識が既にできあがっていたからである。
この点に関連し、被請求人は、請求人商品と商標権者商品や、両者に関するステッカーについて、直接対比した観察手法を採っている。しかし、実際の取引の現場において、直接対比観察を以って両商品等を区別するなどしていないという点で、このような観察手法を採ること自体、誤っている。つまり、実際の取引というのは、過去において異なる場所で購入し、或は、広告等により知った記憶とイメージとを手掛かりに、時と処とを異にした場合に両者を取り違えるか、という間接離隔観察の視点から捉えなければいけないのである(甲53)。
この視点で捉えた場合、被請求人のギフトカードを請求人のグルメカードと取り違えるという事態は、請求人のグルメカードの加盟社の従業員や被請求人のギフトカード利用者(即ち、取引者・需要者)にあっては、「全国共通お食事券」という名称(商品名)のギフトカードは、請求人のグルメカードを指すという記憶やイメージがあり、それが一つの固定観念を生み出し、この固定観念こそが、「全国共通お食事券=ジェフグルメカード(請求人発行のグルメカード)」の認知度を示すに他ならない。
カ 請求人のグルメカードの加盟社における「全国共通お食事券」(引用商標)に対する認識について
請求人のグルメカードの加盟社のうち107社(109名)署名の抗議文を、平成25年9月2日付けで被請求人の代表取締役会長宛てに送付し(甲54)、平成25年10月9日付けでも抗議文を送付している(甲55)。この抗議文の中には、請求人の発行に係る「全国共通お食事券」について、「?20年以上に及んでお客様にご好評をいただき、『全国共通お食事券』といえば『ジェフグルメカード』と認識されるほど、法人、個人を問わず多くのお客様に利用されています。」との記述がある(甲54の4?14、甲55の4?7)。
この記述は、引用商標に係る「全国共通お食事券」に対する認識の程度(認知度)を端的に表すものである。そして、この抗議文に署名・捺印していることは、少なくとも請求人のグルメカードの加盟128社、24,296店舗(甲55の3)及びその従業員にあっては、「全国共通お食事券=ジェフグルメカード(請求人発行のグルメカード)」という認識であること示すものであり、このことも、取引者間において、このような「認識の構図」が確立されていることを裏付けるものである。
キ 請求人による「全国共通お食事券」の使用実態についての補足
(ア)加盟店リストについて
加盟店の一覧表・リスト(甲59、甲60)には必ず、「全国共通お食事券」と「ジェフグルメカード」という2つが表示されている。そして、両者の表示は、文字の大きさや色を異にしたり、両者間にスペースを配したりして、両者が容易に分離して認識し得る態様の表示となっており、その一方で、両者のうちのいずれかの表示を目にするときには、他の表示も必然的に目に入るという表示形態となっている。
「全国共通お食事券」といえば「ジェフグルメカード」、「ジェフグルメカード」といえば「全国共通お食事券」という認識を確立するため、このような表示形態を採ったのである。
(イ)請求人発行のグルメカードの券面について
請求人の発行に係るグルメカード(甲20)の券面中の「ジェフグルメカード」「全国共通お食事券」の表示形態も、「全国共通お食事券」と「ジェフグルメカード」とが市場において同時に認知されるための態様となっている。更に、この券面には、発行主体を示す「株式会社ジェフグルメカード」が明記され、株式会社ジェフグルメカードが発行する「ジェフグルメカード」即ち「全国共通お食事券」という認識、若しくは、株式会社ジェフグルメカードが発行する「全国共通お食事券」即ち「ジェフグルメカード」という認識が看取できる。
そして、この券面の下に発行された請求人会社のグルメカードの総数が1億5000万枚以上にのぼっており(甲33)、多くの人に請求人発行の「全国共通お食事券」が愛され、利用されているかが分かる。
加えて、需要者が請求人の業務に係る役務を表示するものと認識するか否かの重要なポイントは、発行主体(使用者)の表示とその対象となる表示(商標)が、一体として結び付く態様の表示形態を採っているか、ということであり、この券面がそのような形態を採っていることは、発行主体として「株式会社ジェフグルメカード」の記載より、明らかである。
(ウ)請求人発行のグルメカードの利用可能店舗を示すステッカーについて
請求人発行のグルメカードの利用可能店舗(ジェフグルメカード加盟店)を示すステッカー(甲22)には、赤色で周辺部を囲った楕円形の中央部に赤地に白字抜きで大きく「全国共通お食事券」の文字が目立つ態様で表示されている。このステッカーは、ジェフグルメカード加盟店と「全国共通お食事券」とを結び付ける目印となるものであり、「ジェフグルメカード」が使える店は、「全国共通お食事券」が使える店であるとの認識に結び付くのである。
このステッカーの表示は、1995年7月の加盟店リストに掲載して以来、その後のリーフレットにも必ず掲載されている(甲60)。
(エ)請求人発行のグルメカードに関する宣伝広告について
請求人のテレビ番組及び新聞における宣伝広告(甲15、甲16)には、請求人が発行するグルメカードの券面や「全国共通お食事券」と「ジェフグルメカード」の表示がなされている。それも、両者が容易に分離して認識し得る態様で、かつ、両者のうちのいずれかの表示を目にするときには、他の表示も必然的に目に入るという表示形態となっている。
加えて、請求人は、平成7年に全国の加盟店と一体となって「全国共通お食事券=ジェフグルメカード」であることを需要者にアピールする販促活動も行っており(甲61)、平成17年には、年賀はがき購入の全国キャンペーンの商品として請求人会社のギフトカードが採用され、そこでは、「全国共通お食事券」の名称を以って紹介されている(甲62)。これによれば、請求人会社発行のグルメカードが「全国共通お食事券」として位置付けられていることが認識でき、また、グルメカード発行当初、そのような位置付けにするための広告がなされていた(甲63)。
(オ)請求人の表示形態と被請求人の主張について
請求人会社の表示形態の一つの大きな特徴は、取引媒体に「全国共通お食事券」と「ジェフグルメカード」の2つが表示されているという点にあり、両者の表示は、両者が容易に分離して認識し得る態様の表示となっている一方で、両者のうちのいずれかの表示を目にするときには、他の表示も必然的に目に入るという表示形態となっているということである。
「全国共通お食事券」と「ジェフグルメカード」の表示のそれぞれが別個の表示として認識されるならば、「全国共通お食事券=ジェフグルメカード(請求人発行のグルメカード)」という認知度になるはずである。
ク 小括
以上より、引用商標に係る「全国共通お食事券」の表示は、請求人の長年の地道な努力の結果、外食産業のギフトカードの分野で請求人の発行するジェフグルメカードを指称する出所識別標識として機能するに至っており、「全国共通お食事券」という表示の「生来的な自他商品・役務識別機能」とも相まって、今日においては、請求人の業務に係る一つの表示として認識されていることは明らかである。
したがって、「全国共通お食事券」の表示(引用商標)を付加する態様での変更使用(本件使用商標及び本件使用商標2)は、請求人によって確立された「全国共通お食事券」についての出所識別機能を阻害する行為に他ならない。
よって、本件商標権者による登録商標の正当使用義務違反を追求し、その商標登録を取り消すという制裁を科す本件審判事件の審理において、「全国共通お食事券」という一つの表示(引用商標)に関する出所識別機能についての上記請求人の主張は、十分な評価を受けなければならない。
(3)本件商標と使用に係る商標との類似性及び故意について
本件商標と本件使用商標との類似性については、既に述べたところである。
被請求人は、商標権者商品の商品企画において、請求人商品とは完全に差別化した商品である、と言うように、請求人のグルメカード及びその特徴を把握した上で、商品企画をし、本件商標の態様で登録したのであれば、それをそのままの態様で使用すればよいにもかかわらず、本件商標を各使用商標の態様に変更使用していることからすれば、被請求人の行為は「故意」によるものであることは明らかである。
(4)本件審判請求事件と需要者利益の保護
抗議文(甲54、甲55)の被請求人への送付は、被請求人による「全国共通お食事券」に関する一連の行為が公正な競争に反し、それをそのまま認めて、「全国共通お食事券」の名称の使用及びその名称にすり寄るような不正使用を容認することは、商標の使用をする者の業務上の信用の維持の観点、需要者利益の保護の観点に照らして許されるべきものではない、との立場からなされたものである。
請求人は、単に、自己の利益のみを追求するために本件取消審判を請求しているのではなく、需要者利益の保護の観点に照らして、外食産業界の全体を消費者の立場で捉えて請求しているのである。
(5)総括
被請求人は、本件商標の態様で商標権を取得し、登録商標の使用について正当使用義務があるにもかかわらず、本件使用商標及び本件使用商標2の態様で使用している。本件商標からこれらの使用商標への態様の変更は、請求人の発行に係るギフトカードの名称たる「全国共通お食事券」という名称への「ただ乗り行為」、「すり寄り行為」に他ならず、請求人の引用商標に係る「全国共通お食事券」という名称のギフトカード等との関係で「不正使用」に当たるものである。
したがって、本件商標は、本件商標権者の登録商標の正当使用義務違反の下、商標法第51条第1項の規定により、取り消すとの判断がなされるべきである。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第16号証(枝番を含む。)を提出した。
1 本件審判請求に至る経緯(特許庁における引用商標の拒絶査定及び被請求人が保有する「ぐるなびギフトカード 全国共通お食事券」商標の登録維持決定並びに東京地裁における差止仮処分申立の取下げ等)
本件審判における請求人の主張は、いずれも既に特許庁において実質的に否定され、かつ、裁判所においても取り下げられた主張の蒸し返しにすぎない(乙1?乙6)。
2 本件商標権者及び商標権者商品について
(1)本件商標権者について
本件商標権者は、日本最大級の飲食店情報検索サイト「ぐるなび」(以下「本件商標権者サイト」という場合もある。)の運営をその主たる事業とする、東証一部上場企業であり、その売上高は連結で約273億円(平成25年3月期)に達し(乙7)、平成24年3月31日時点における本件商標権者サイトの総掲載店舗数は約50万店(乙8)、同年末日時点における月間アクセス数は約9.3億ページビュー、月間ユニークユーザー数は約3400万人、平成25年4月1日時点における会員数は約1033万人、同年3月31日時点における同総加盟店舗数は約12万1000店という巨大なウェブサイトに成長している(乙7)。
このため、本件商標権者の商号及びその主たる事業において使用されている「ぐるなび」は、日本全国にわたり、極めて高い知名度を誇っている。
(2)商標権者商品について
本件商標権者は、上記「ぐるなび」の高い認知度及び本件商標権者サイトの掲載店数が極めて大きいこと等を背景として、平成23年9月15日に、商標権者商品の販売を開始した。商標権者商品は、「大規模に展開するチェーン店だけでなく、多くの個人経営の飲食店でも利用できる初めての全国共通お食事券」という画期的なコンセプトに基づき独自に考案されたものである(乙9)。
また、このような幅広い飲食店において利用されることを想定し、商標権者商品においては、500円券のみならず、1000円券、5000円券、10000円券といった、高額券種を含む複数の券面を用意し(乙10)、さらに、その券面の高級感、洗練されたイメージを演出している。
そして、商標権者商品の加盟店数は、販売開始当初においては約3000店舗であり、平成27年3月までに5万店舗を目指すこととした(乙9)。そして、開始後1年足らずの平成24年6月の時点で全国で約1万店舗を超え、平成25年2月の時点では約1万4000店舗に達している(乙11)。
以上からも明らかなとおり、請求人商品と商標権者商品はコンセプトが異なっている。
コンセプトの相違は、双方の加盟店の重複が極めて少ないという事実(請求人商品の加盟店に占める、商標権者商品が使用できる店舗の割合は、平成24年6月の被請求人調査で、約5%程度)にも如実に表れている。
3 請求人の業務に係る役務と混同を生じない
請求人の「混同」に関する主張は、「全国共通お食事券」の表示が、それ単独で請求人の業務に係る役務又は請求人商品の識別標識であることを前提としている。
しかし、請求人の主張はこの点において既に理由を欠くものである。
(1)「全国共通お食事券」は、請求人の業務に係る商品又は役務の識別標識ではない
ア 請求人による「全国共通お食事券」の出願(乙1)に対し、特許庁は、自他役務の識別標識としては認識し得ない、として商標法第3条第1項第3号を理由に拒絶査定をした(乙2)。また、同査定は、「全国共通お食事券」の文字部分のみが単独で請求人の役務を表示するものとして広く認識されているとまで認めることはできないとした。
イ 「全国共通お食事券」という表示は、その字義どおり、「全国の取扱店で共通に利用できる、食事をするための券」という程度の意味合いを需要者に認識させるにすぎず、単に普通名詞のありふれた組み合わせによって、サービスの抽象的な質等を普通に用いられる方法で表示するものにすぎない。
そして、外食業界においては、「共通お食事券」という表現も、ごく一般的に通用している。
また、その他の業界も含めると、「全国共通●●券」、「全国共通●●カード」等という同種の用法は、ごく一般的に通用している。
よって、「全国共通お食事券」の表示には、サービスの抽象的な質等を普通に用いられる方法で表示することを超えて、自他識別機能又は出所表示機能が備わることはない。
ウ 実際に、「全国共通●●券」という同一の表現を、複数の事業者が用いている事例も存在しており、単一事業者により独占的には使用されていない。
複数の異なる事業者が「全国共通ギフトカード」という全く同一の名称に自身のサービス等の名称を付加しているケース、業種横断的に使用できる商品券の名称に複数の異なる事業者が「全国共通商品券」という同一の表現を用いて説明を行っているケースが、それぞれ存在する。そのため、「全国共通●●券」という表現は、特定の単一事業者ではなく、むしろ複数の異なる事業者によって用いられることがあるという実態が存在し、需要者も複数の事業者によって用いられている可能性があることを当然に認識している。
よって、需要者は、「全国共通お食事券」という表現についても同様に、これが単一の事業者の出所を示す表現であるとは考えないのであって、これに自他識別機能又は出所表示機能が備わることはない。
エ 請求人商品において、「全国共通お食事券」を単独で使用するのではなく、むしろ「ジェフグルメカード」等の文字と併せて表記してきたことが窺われる。例えば、請求人商品の券面をみると、表面では「ジェフグルメカード」の文字が3箇所に現れる一方で、「全国共通お食事券」は「ジェフグルメカード」の下に、それよりも小さな文字(しかも、字体等の外観には何の特徴もない。)でわずか1箇所のみに記載されている。また、裏面に至っては「ジェフグルメカード」が4箇所に現れる一方、「全国共通お食事券」の表示は一切存在しない。
そうすると、請求人商品に接した需要者は、上記のような使用態様からしても、「全国共通お食事券」という表示のみによって、その出所が請求人であると認識することはなく、むしろ「ジェフグルメカード」という表示に着目して、その出所が請求人であることを認識することになるのである。
このように、請求人商品の外観は、「全国共通お食事券」の部分がそれ単独では自他識別機能又は出所表示機能を備えていないことを端的に示している。
オ 請求人の会社案内等においても、請求人商品は「ジェフグルメカード」として紹介されるに留まり、「全国共通お食事券」という表現すら使用していなかった(甲7?甲9、甲11?甲14)。
さらに、現在の請求人のウェブサイトによれば、請求人商品を「ジェフグルメカード」とのみ表記する箇所が散見される(乙13の1)。のみならず、同ページに設定されているページタイトルも「全国35,000店舗で使える便利な食事券 ジェフグルメカード」とされている。また、同ウェブサイト中の「住宅エコポイント交換申請に関するQ&A」ページにおいては、「『全国共通お食事券』との事ですが、どのくらいの店舗で使えるのですか?」との質問を自ら置いているが(乙13の2)、これはまさに、請求人が「全国共通お食事券」の表現が単なる説明的記載にすぎないことを自認するものである。
このほか、請求人が請求人商品の販売の際に用いている小袋も、その封印シールも含めて「ジェフグルメカード」としか表示していない(乙14)。
したがって、請求人が、その当初から現在に至るまで、「全国共通お食事券」を自己の商品の自他識別表示として用いていないことは自明である。
カ 請求人による広告宣伝においても、請求人商品は「ジェフグルメカード」、「ジェフグルメカード 全国共通お食事券」又は「全国共通お食事券 ジェフグルメカード」と表示されており、「全国共通お食事券」単体での表示はなされていない(甲15、甲16)。
キ 請求人の提出に係る調査結果報告書等も、「全国共通お食事券」が単独では識別標識として機能していないという被請求人の主張を裏付けるものである。
(ア)請求人は、請求人商品のブランド認知度が、平成10年7月の時点で47.9%に達した旨を主張する。
しかし、調査結果報告書(甲17)の集計対象はわずか1000通にすぎない。また、当該調査は、1998年6月18日(土)付け日本経済新聞夕刊に掲載された「ギフト券特集」に応募があったハガキから集計された結果であるところ(乙12)、ここには、当該広告企画に参加した広告主のギフト券(9種類)だけが限定的に掲載されている。そして、アンケートの方法は、新聞読者に対し、抽選でギフト券がもらえることを誘引として、「この紙面に掲載されたギフト券」(当該広告企画に参加して広告料を支払った企業又は団体のギフト券のみ)から、知っているギフト券、もらいたいギフト券を挙げるよう求めるものである(問4を参照)。そのため、このアンケートでは、広告料を支払った企業又は団体のギフト券のみ(9種類)が選択肢として示されており、それ以外のギフト券との関係で公平なアンケートが行なわれたということはできない。また、同報告書は、日本経済新聞の夕刊の読者であって、もともとギフト券に興味を有していて、アンケートに応募する労を厭わない性質の応募者に限定した傾向が示されているにとどまり、一般的な需要者の傾向を示すものではない。このように、当該報告書の内容は、請求人商品の一般需要者からの認知度を表すものとしては、信用に足りないものである。
さらに、同報告書の内容をみても、請求人が指摘する「ギフト券ブランド認知度」及び「第一希望プレゼント」の項目において、請求人商品は単に「ジェフグルメカード」として表示されているにとどまっており、「全国共通お食事券」という表示は一切存在していない。このことは、請求人商品はせいぜい「ジェフグルメカード」として認知されているにとどまり、「全国共通お食事券」が単独では識別標識として機能していない、という被請求人の主張をむしろ裏付けている。
のみならず、ギフト券の認知度に関する他のアンケート結果を参照すると、そもそも「知っているギフトカード」や「使用したことのあるギフトカード」として請求人商品がランクインすらしていないアンケート結果も存在する(乙15)。そのため、当該報告書を、請求人商品の認知度が高いことの根拠とすることはできない。
(イ)請求人は、請求人商品がエコポイントとの交換商品として選定された事実を指摘する。
しかし、その選定は、商品の認知度に基づき行なわれたわけではないし、交換できる商品数は200点以上にのぼるから、そのうちの1つに選定されたことをもって認知度を獲得したということはできない。
また、一覧(甲18)中の表示は、「ジェフグルメカード(全国共通お食事券)」であって、「(全国共通お食事券)」の部分は明らかに「ジェフグルメカード」の従たるものとして説明的に付加された記載にすぎない。そして、他の商品には「全国共通おこめ券」「全国共通たまごギフト券」「全国共通すし券」と単独で表記されていることと比較すれば、この点は、識別標識として機能しているのはむしろ「ジェフグルメカード」の部分であって「(全国共通お食事券)」の部分ではない、という被請求人の主張を裏付けている。
(ウ)請求人は、このほか、請求人商品がキャンペーンの商品として選定された事実を指摘する。
しかし、このようなキャンペーンは無数に存在するところ、そのうち1つの商品として選定された事実が、請求人商品が「依然として高い認知度を得、人気を博している」ことの根拠となるのかは不明である。
ク 小括
以上のとおり、「全国共通お食事券」は、自他識別機能又は出所表示機能を備えておらず、請求人の業務に係る役務の識別標識としての機能を有することはないから、請求人の主張には理由がないことが明らかである。
(2)本件使用商標の具体的な表示態様をみても、請求人の業務に係る役務と混同を生ずることはない
請求人が主張する本件使用商標の具体的な使用態様をみると、そのいずれにおいても被請求人の名称が明瞭に記載されており、その出所が被請求人であることは、極めて明白である。
また、本件使用商標においては、「ぐるなびギフトカード」という記載が特徴的なフォントによりなされ、かつ、それが円形の図形に囲まれて強調表示されているというものであって、円形の図形の欄外下に、特徴のないゴシック体で「全国共通お食事券」という記載が説明的に付記されているにすぎない。そうすると、同標章の主たる要素は「ぐるなびギフトカード」の部分であるといえ、これが請求人商品である「ジェフグルメカード」と異なるものであることは、その表示自体から明らかである。
そのため、本件使用商標を記載した被請求人の行為は、この観点からも、およそ請求人の業務に係る役務と混同を生ずるものではない。
(3)本件商標の使用実態にかんがみても、本件使用商標の使用により「混同」を生ずるおそれはない
ア 請求人商品と商標権者商品の外観は大きく異なっており、混同が生じるおそれなどないことは明白である。
イ 加盟店におけるステッカーも、両者間では大きく異なっている。
また、請求人が指摘する告知スタンドについても、請求人商品の券面をわざわざ見本として大きく掲示していることからすれば(甲23)、券面の外観が全く異なる商標権者商品との混同を惹起するおそれは皆無である。
ウ 請求人商品と商標権者商品のコンセプトは大きく異なり、また、その結果として、重複する加盟店舗は著しく少ない。
したがって、需要者が、請求人商品と商標権者商品とを取り違えたり、関連付けたりする可能性が皆無であることは明白であるし、本件商標権者に、請求人商品の「全国共通お食事券」に対する「信用」なるものに「ただ乗り」する意図などないこともまた、明白である。
(4)小括
以上のとおり、本件商標権者が本件使用商標を使用することによっても、請求人の業務に係る役務との間に混同が生じておらず、そのおそれもないことは明らかであるから、請求人の主張には理由がない。
4 役務の質の誤認を生じない
(1)「全国共通お食事券」を含む別件商標について、商標法第4条第1項第16号等を根拠に登録異議の申立てをした事件において、特許庁は、品質等誤認のおそれはないとして商標の登録を維持する旨の決定を下した(甲5)。
(2)「全国共通お食事券」の表示が、単独で請求人商品の識別標識としての機能を有している旨の主張に理由がないことは、前記のとおりである。
また、そもそも「全国共通」の表現には、前記のとおり、せいぜい「全国の取扱店で共通に利用できる」といった程度の意味合いしかないし、「全国」や「共通」の文言は、様々な幅のある解釈があり得る極めて抽象的な表現である。そして、様々なギフトカード類において、加盟店数の多寡・範囲や使用条件等がそれぞれ全く異なっていることに照らすと(乙12)、一般的な需要者は、「全国共通」の文字が含まれるギフトカードであっても、有効期限が存在しうることや、全国のあらゆる店舗において利用できるわけではなく、利用条件にも何らかの制約が存在しうることは、十分に認識可能なのである。
これに対し、請求人は、あたかも請求人商品の特定のコンセプトに基づく請求人の主観的な「全国共通」の価値観こそが全てであるかのように、「全国共通」の具体的な意味内容を主張する。しかし、商標法第51条第1項の「役務の質の誤認」の該当性を論じるにあたっては、あくまで、需要者が役務の質を誤認するかどうかが問われるべきである。
そして、請求人が主張する要素のうち、とりわけ「いつでも」や「何にでも」といった点が、「全国共通」という表現とは全く無関係かつ別次元の問題であることは明らかである。また、請求人は「どこでも」に関して、平成25年2月19日の時点の加盟店舗数が前記のとおり約1万4000店舗に達しており、かつ、加盟店の分布も全都道府県に及んでいる商標権者商品が(乙11の2)、「全国での使用という実態を伴っていない」などと論難するが、請求人自身が遅くとも、請求人商品の加盟店舗が1万950店舗であった平成6年当時において、既に「全国共通お食事券」という表示を用いていたこと(甲9)と、自己矛盾をきたしている。
(3)小括
以上のとおり、本件商標権者が本件使用商標を使用することによっても、「役務の質の誤認」が生じておらず、そのおそれもないことは明らかであるから、請求人の主張には理由がない。
5 本件商標権者は、本件使用商標を、本件商標に類似する商標として使用していない
請求人は、本件商標権者による本件使用商標の使用が本件商標に類似する商標の使用である旨主張するが、誤りである。
本件使用商標は、「ぐるなびギフトカード」という記載が特徴的なフォントによりなされ、かつ、それが円形の図形に囲まれて強調表示されているというものであって、円形の図形の欄外下に、特徴のないゴシック体で、それ単独では何ら自他識別性を有しない「全国共通お食事券」という記載が付記されているにすぎない。
本件使用商標を、上記二つの異なる記載を合わせて一つの「商標の使用」と捉えること自体がそもそも誤りなのである。
6 故意がない
前記のとおり、そもそも本件商標権者の行為は、請求人の業務に係る役務と混同を生じるものでもなければ、役務の質の誤認を生ずるものでもない。
したがって、かかる混同や役務に関する「故意」がないことも明らかである。
7 むすび
以上のとおりであるから、本件商標には、商標法第51条第1項が定める取消事由が存在せず、よって請求には何ら理由がない。

第4 当審の判断
1 「全国共通お食事券」について
請求人は、請求人の使用に係る「全国共通お食事券」の名称が、請求人の取り扱う商品・役務についての識別標識として周知・著名であり、本件商標権者による、本件商標と類似する商標の使用は、請求人の業務に係る役務と出所の混同を生ずるものである旨及びかかる名称を含む商標権者の商品は役務の質の誤認を生ずるものである旨主張しているので、まず、その前提として、「全国共通お食事券」について検討する。
(1)「全国共通お食事券」の識別性について
「全国共通お食事券」の構成中、「全国」が「国内全体。国じゅう。」を意味し、「共通」が「二つまたはそれ以上のもののどれにも通ずること、あてはまること。」を意味する(いずれも「株式会社岩波書店 広辞苑第六版」)それぞれ平易な語であって、「お食事券」が、社会通念上、「取扱店で利用できる食事券」程度の意味と解されるから、これらを結合した「全国共通お食事券」は、「全国で共通して取扱店で利用できる食事券」ほどの意味を認識させる語であると認められる。
そうすると、「全国共通お食事券」の語は、役務「前払い式証票の発行」、「飲食物の提供又はそれに関する情報の提供」について使用すれば、これに接する需要者をして、「全国で共通して取扱店で利用できる食事券の発行」や「同食事券の取扱店における飲食物の提供又はそれに関する情報の提供」ほどの意味合いを理解させ、役務の質を記述的に表示したものと認識させるものといえ、取引者及び需要者にその出所を表示するものとは認識されないものといえるから、同語は、上記のような役務についての自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないものである。
(2)「全国共通お食事券」の周知性について
「全国共通お食事券」という語が、上記(1)のとおり一般的には自他役務の識別標識としての機能を果たし得ないとしても、請求人により使用された結果、これが請求人の役務の出所を表示するものとして取引者及び需要者に一般に認識されるに至ったものといえるかどうかについて、検討する。
ア 請求人は、請求人会社によりギフトカードの発行が開始されたのは平成4年(1992年)12月1日であると主張して、その経緯について甲第6号証ないし甲第14号証を提出している。これらによれば以下のことが確認できる。
(ア)請求人は、社団法人日本フードサービス協会の加盟社である主要外食事業者と金融機関の出資により、外食産業界が共同して行う事業として、全国的に使えるギフト券の発行事業を行う目的で平成4年(1992年)8月21日に設立された会社である(甲6及び請求人の主張の趣旨)。
(イ)請求人設立当初の会社案内には、「全国共通お食事券」の語は使用されておらず、他方、代表取締役は「『ジェフグルメカード』は外食産業界が共同で行う初の事業です。・・・本カードがギフトカードの代名詞となり、またなによりこころからお客様にお喜びいただけるカードへと成長するよう・・・」と述べているほか、「・・・おいしいギフトの提案を。『ジェフグルメカード』。全国12,000の加盟店で、ご利用いただける『お食事券』です。」「『ジェフグルメカード』にしかできないこと。」、「『ジェフグルメカード』の運営業務システム。」など、「ジェフグルメカード」について、これが括弧で括られて事業の説明がされている(甲7)。
(ウ)平成6年(1994年)8月当時のものとされる請求人発行のリーフレットには、「全国共通お食事券」「ジェフグルメカード」との記載のもと、請求人の食事券が示され、同券面の上部には「ジェフグルメカード」との記載と、その下段に「全国共通お食事券」との記載が上段の文字より小さい文字で記されている。また、同リーフレットには「全国共通お食事券ジェフグルメカードは・・・楽しくご利用いただけます。」、「全国共通お食事券ジェフグルメカードのお申込みは、簡単便利なフリーダイヤルで。」との記載がされ、ここにおいて「全国共通お食事券」の語は「ジェフグルメカード」とともに記載されており、「全国共通お食事券」の語が単独で、又は強調するような態様で表示するものは見あたらない(甲8)。
(エ)社団法人日本フードサービス協会が平成6年(1994年)12月に発行した書籍「外食の未来を見つめて」には、105頁に「業界活動の象徴、ジェフグルメカード」との標題のもと、「・・・そんなJFの連体を深化させるべくスタートしたのが、ジェフグルメカードの発行事業だった。この事業はJFが母体となって外食産業初の全国共通の食事券を発行しようというものだ。・・・1992年(平成4年)8月、株式会社ジェフグルメカードが設立され、12月にはカードの発売が開始されることになった。」との記載があり、122頁には「ジェフグルメカードへの挑戦」との項目において、「1992年(平成3年(審決注:原文のまま))12月1日、(株)ジェフグルメカードを発行母体とする全国共通お食事券『ジェフグルメカード』(500円券)の発行が開始された。・・・初年度のジェフグルメカード加盟企業は112社を数え・・・」との記載がある一方、「全国共通お食事券」の語のみでは使用されていない。また、124頁には1992年(平成4年)12月1日付の日本経済新聞での発売告知とされるものが掲載されており、これに「全国12,000の飲食店でご利用いただけるお食事券。『ジェフグルメカード』12月1日、新発売。」との記載があるが、「全国共通お食事券」の語は当該提出証拠からは確認できない。また、この広告の右側には店頭ステッカーが示され、これには、「全国共通お食事券 ジェフグルメカード」の文字や、「ジェフグルメカード お食事券」との文字が表示された500円の食事券と共に「全国共通で使えるお食事券『ジェフグルメカード』のお買い求めは当店で。」との文字が記載されている。そして、125頁には右側の中段に「営業損益は当初予想通り、いまだ赤字であるが、これは全国共通お食事券『ジェフグルメカード』をナショナルブランドとして育成していくためのやむをえぬ支出と言ってよいだろう。」との記載がされている。
そして、この書籍における「全国共通お食事券」の語は、「ジェフグルメカード」のように、括弧により括られた表示はなく、単独で、又は強調するような態様で表示するものは見あたらない(甲9)。
(オ)甲第10号証は、「日本フードサービス協会(JF)について」との同協会のホームページの記事であり、「社団法人日本フードサービス協会(通称:JF/ジェフ)は、・・・1974年に設立されました。」、「加盟社は、現在では正会員、賛助会員を合わせて約850社を数え、外食産業関連で最大規模の組織となっています。」との記載がある。なお、ここには食事券に関する記述はなく、「全国共通お食事券」の語も使用されていない。
(カ)1992年(平成4年)6月5日号の雑誌記事において、「JFグルメカードは歳末商戦までに発足・・・」との見出しのもと、「かねてからJF(略)の懸案事項であったグルメカード発行がいよいよ軌道に乗った。」との記載があり、日本フードサービス協会のグルメカードについての記事が記載されているが、ここには「全国共通お食事券」の語は使用されていない(甲11)。
(キ)平成4年(1992年)3月15日の社団法人日本フードサービス協会の発行とされる記事において、「JFグ・ル・メ・カ・ー・ド・事・業」との見出しのもと、日本フードサービス協会のグルメカードについての記事が記載されているが、ここには「全国共通お食事券」の語は使用されていない(甲12)。
(ク)平成4年(1992年)8月15日の社団法人日本フードサービス協会の発行とされる記事において、「ギフトシーンの新しい追い風に。」「全国共通食事券『ジェフグルメカード』」との見出しのもと、日本フードサービス協会のグルメカードについての記事が記載されている。
ここでは、「全国共通食事券」の語が「ジェフグルメカード」とともに記載され、又は、文中に「全国共通食事券」の語が記載されているが、「全国共通食事券」の語が強調されるような態様をもって表示されているとはいえず、また、「全国共通お食事券」の語は使用されていない(甲13)。
(ケ)平成4年(1992年)7月24日付の以下の各新聞記事とされるものには、「共通食事券の発行会社設立」「・・・全国のレストランやファストフード店で共通して使える食事券『ジェフグルメカード』を発行する株式会社、ジェフグルメカード・・・」(読売新聞)、「全国共通の食事券」「外食企業の業界団体である日本フードサービス協会・・・は、十一月から、全国共通の食事券『ジェフグルメカード』を発行する。」(日本経済新聞)、「全国共通の外食券を発行」(朝日新聞)、「全国の外食店共通の食事券」「食事券は『ジェフグルメカード』の名称で額面五百円」(毎日新聞)との記載があるものの、「全国共通お食事券」との記載はない(甲14)。
イ 請求人は「『全国共通お食事券』の認知度について」との主張に関して甲第15号証ないし甲第24号証(枝番を含む。)等を提出するほか、加盟店リストの表紙又は抜粋(甲59及び甲60)を提出している。これらによれば以下のことが確認できる。
(ア)『ジェフグルメカード』とのタイトルによる、平成10年(1998年)11月30日ないし同年12月23日の間に放映されたテレビスポットに関するTVパブリシティ報告書によれば、一部不鮮明であり記載内容が特定できないものもあるものの、請求人の取扱いに係るものと見られる食事券が表示され、その下部には、「全国共通お食事券をプレゼント」、「ジェフグルメカード 全国共通お食事券 ¥20,000分プレゼント」又は「全国共通お食事券『ジェフグルメカード』10万円」との表示がされた。ここにおいては、「ジェフグルメカード」が括弧で括られているものの、「全国共通お食事券」の語は括弧で括られてはいない(甲15)。
(イ)新聞広告等によれば、「全国共通お食事券」及び「ジェフグルメカード」が併記されて掲載されている(甲16)。
そして、これらにおいては、「全国共通お食事券」の語を単独で、又は強調するような態様で表示するものは見あたらない。
(ウ)日本経済新聞社広告局マーケティング調査部の1998年(平成10年)7月付の「広告企画 『ギフト券アンケート』 調査結果報告書」によれば、ギフト券ブランド認知度調査は、「ジェフグルメカード」をギフト券のブランド名として行われ、47.9%の認知度であったことが示されているが、「全国共通お食事券」は、そのブランド名として表示されていない(甲17)。
(エ)「住宅エコポイント交換商品カタログ」には、「ジェフグルメカード(全国共通お食事券)」の記載がある。ここにおいて、「全国共通お食事券」の語は、「ジェフグルメカード」に比べて小さく括弧書きで記載されている(甲18)。
(オ)「NTTドコモ」のチラシにおいて、1等「全国共通お食事券 ジェフグルメカード」が掲載されているものの、ここにおいて「全国共通お食事券」の語は「ジェフグルメカード」に併記されており、「全国共通お食事券」の語を単独で、又は強調するような態様で表示するものは見あたらない(甲19)。
(カ)請求人が発行する食事券は、甲第20号証に示された態様のものであるところ、表面の上部には、「ジェフグルメカード」との記載があり、その下段に「全国共通お食事券」との記載がある。ここにおいて、「ジェフグルメカード」の方が「全国共通お食事券」よりも大きく表示されており、表面中央部には、「gourmet card」の文字をデザイン化した標章と、「ジェフグルメカード」との記載がされ、右下部には、「¥500」、「株式会社ジェフグルメカード」との記載がされている。また、その裏面には、「ジェフグルメカードのご使用について」との表題の下に、注意書き等が記載されているが、この面には「全国共通お食事券」との記載はない(甲20)。
(キ)請求人の営業部長による「陳述書」には、請求人が「全国共通お食事券」と称するギフトカードを発行しており、平成23年(2011年)6月現在全国で3万5千余の加盟店舗があり、平成4年(1992年)の発売以来1億4千余万枚発行されていることや、加盟店舗入り口付近にはステッカーを貼付して表示していること等が陳述されている。(甲21)。
(ク)「請求人の加盟店用ステッカー」(甲22)、「請求人のグルメカードの販売店用告知スタンド」(甲23)、「請求人の加盟店リスト」(甲24)においては、「全国共通お食事券」の語は「ジェフグルメカード」とともに記載されており、「ジェフグルメカード」が単独で記載されている一方、「全国共通お食事券」の語を単独で記載するものは見あたらない。
(ケ)「1993年前期版」等と表示された加盟店リストの表紙(甲59の1)を含め、加盟店リストの表紙又は抜粋(甲59及び甲60)には、「全国共通お食事券」の語は「ジェフグルメカード」とともに記載されており、「全国共通お食事券」の語を単独で記載するものは見あたらない。
ウ 小括
以上によれば、請求人は、その設立時である平成4年(1992年)8月21日においては、「全国共通お食事券」の語を使用して事業を開始したとは認められず、むしろ、請求人は、請求人に係るギフト券の発行事業を開始した頃は、「ジェフグルメカード」の語を括弧で括るなどにより、この語を強調する使用方法を採っていたといえるものである。
そして、本件証拠上、請求人が「全国共通お食事券」の語を使用していたと認められるのは、平成5年頃からの「1993年前期版」と表示された加盟店リストの表紙(甲59の1)等においてである。
また、上記ア及びイによれば、「全国共通お食事券」の語が単独で使用されている事実は認められず、「ジェフグルメカード」という語と併記して使用されていると認められるところ、その具体的使用態様において「ジェフグルメカード」の文字の方が大きく表記されているなど、「全国共通お食事券」の語よりも「ジェフグルメカード」の文字の方が看る者の注意を惹くものとなっていること及び前記(1)で認定した「全国共通お食事券」の語の意味からすれば、取引者及び需要者は、「全国共通お食事券」をギフトカードの記述的な表示として認識し、「ジェフグルメカード」を請求人ギフトカードの出所表示と認識するというべきである。
したがって、「全国共通お食事券」の文字が請求人により使用された結果、これが役務の出所を表示するものとして、取引者及び需要者に認識されるに至ったものということはできない。
なお、請求人は、実際の取引の現場において、請求人商品と商標権者商品とを取り違える事態が生じていることをあげ、「全国共通お食事券」の表示が請求人の業務に係る表示として認識されている旨主張するが、その取り違えの内容は、商標権者商品を顧客から誤って提示され、又は受領したという程度のものであり(甲39?甲46)、「全国共通お食事券」の文字が役務の出所を表示するものとして、取引者及び需要者に認識されるに至ったものということはできないという上記認定を覆すには足りない。
2 本件商標と使用商標の類否
(1)本件商標について
本件商標は、別掲1のとおり、一部に円弧を重ねた楕円輪郭内に、「ぐるなび」及び「ギフトカード」の文字を二段に横書きしてなるものである。
そして、その構成中、「ギフトカード」の文字部分は、「贈答用商品券」(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)の意味を有するから、その指定役務との関係において、役務の質(内容)、提供の用に供する物を表示するものと認識させるものであり、それ自体独立して自他役務の識別機能を果たすものということができないものである。
したがって、本件商標は、これを構成する文字全体の他、その構成文字中の「ぐるなび」の文字部分を捉え、該文字部分から生じる「グルナビ」の称呼をもって取引に資される場合も少なくないものということができる。また、「ぐるなび」の文字部分が特定の意味を有しないものであるから、本件商標、本件商標の構成中「ぐるなびギフトカード」又は「ぐるなび」の文字部分から、観念は生じないものである。
(2)使用商標について
請求人は、前記第2の1(1)及び2(1)のとおり、別掲2のとおりの構成からなるもの(以下「使用商標1」という。)及び別掲3のとおりの構成からなるもの(以下「使用商標2」という。)(以下これらをまとめて「使用商標」という場合がある。)の2つを使用商標と主張するので、以下検討する。
ア 使用商標1について
甲第2号証の1は、本件商標権者発行のギフトカード、甲第2号証の2は、本件商標権者発行のギフトカードを入れる封筒及びギフトボックス、甲第3号証及び甲第4号証は、本件商標権者のウェブサイトであり、当該者の取扱いに係るギフトカードの紹介及び販売を行うもの(甲3)や、当該者の取扱いに係るギフトカードを利用できる飲食店の紹介を行うものと見られ、これらには使用商標1が表示されている(別掲2と色彩が異なるものを含む。)。
そして、使用商標1の構成中、「全国共通お食事券」の文字部分は、前記1(1)及び(2)のとおり、役務「食事券の発行」又は「飲食物の提供又はそれに関する情報の提供」との関係において、それ自体独立して自他役務の識別機能を果たし得ないものである。また、構成中の「ギフトカード」及び「GIFTCARD」の文字部分は、「贈答用商品券」(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)の意味を有するから、役務「食事券の発行」又は「飲食物の提供又はそれに関する情報の提供」との関係において、役務の質(内容)、提供の用に供する物を表示する語と認識させるものとみるのが相当である。
したがって、使用商標1は、構成全体の他、その構成中の「ぐるなびギフトカード」、「GURUNAVI GIFTCARD」、「ぐるなび」又は「GURUNAVI」の文字部分を捉え、各文字部分から生じる「グルナビギフトカード」、「グルナビ」の称呼をもって取引に資される場合も少なくないものということができる。また、「ぐるなび」及び「GURUNAVI」の文字部分が特定の意味を有しないものであるから、使用商標1及びその構成中の上記各文字部分は、特定の観念を生じないものである。
イ 使用商標2について
乙第16号証は、商標権者商品に用いるステッカーであり、使用商標1の他に、使用商標2が表示されている(別掲3と色彩が異なるものを含む。)。
そして、使用商標2の構成中、「全国共通お食事券」の文字部分は、前記1(1)及び(2)のとおり、役務「食事券の発行」又は「飲食物の提供又はそれに関する情報の提供」との関係において、それ自体独立して自他役務の識別機能を果たすものということができない。また、構成中の「ギフトカード」の文字部分は、「贈答用商品券」(株式会社岩波書店 広辞苑第六版)の意味を有するから、役務「食事券の発行」又は「飲食物の提供又はそれに関する情報の提供」との関係において、役務の質(内容)、提供の用に供する物を表示する語と認識させるものとみるのが相当である。
したがって、使用商標2は、構成全体の他、その構成中の「ぐるなびギフトカード」又は「ぐるなび」の文字部分を捉え、該文字部分から生じる「グルナビギフトカード」、「グルナビ」の称呼をもって取引に資される場合も少なくないものということができる。また、「ぐるなび」の文字部分が特定の意味を有しないものであるから、使用商標2及びその構成中の「ぐるなびギフトカード」又は「ぐるなび」の文字部分は、特定の観念を生じないものである。
(3)本件商標と使用商標1及び2の類否について
まず、外観については、本件商標と使用商標1及び2とは、構成全体においては構成文字の一部を異にするものの、一部に円弧を重ねた楕円輪郭内に、独立して自他役務の識別機能を果たす「ぐるなびギフトカード」の文字を二段に配した点を共通にすることから、外観上類似しているものということができる。
次に、称呼については、本件商標と使用商標1及び2とは、「グルナビギフトカード」又は「グルナビ」の称呼を共通にすることから、称呼上類似しているものということができる。
さらに、観念については、本件商標と使用商標1及び2は、いずれも特定の観念を生じないものであるから、観念上比較することができない。
そうすると、本件商標と使用商標1及び2とは、外観及び称呼上類似するものであるから、観念上比較することができないとしても、類似の商標というのが相当である。
また、本件商標の指定役務は、前記第1のとおり、第36類「前払い式証票の発行」及び第43類「飲食物の提供又はそれに関する情報の提供」であり、使用商標1及び2は、「食事券の発行」又は「食事券を取り扱う飲食物の提供に関する情報の提供」に使用するものであるから、本件商標の指定役務と使用商標1及び2の使用に係る役務とは、同一又は類似の役務と認められる。
3 他人の業務に係る役務との混同について
前記1の認定のとおり、「全国共通お食事券」の文字は、「全国で共通して取扱店で利用できる食事券」ほどの意味合いを看取させる語であり、自他役務の識別標識としての機能を果たすものとはいえず、また、請求人の役務の出所を表示するものとして、取引者及び需要者に認識されるに至ったものということはできない。
したがって、本件商標権者による使用商標の使用は、請求人の業務に係る役務と混同を生ずることはないというべきである。
4 役務の質の誤認について
(1)「全国共通お食事券」の文字は、前記1(1)のとおり、「全国で共通して取扱店で利用できる食事券」ほどの意味を看取させる語であるところ、使用商標を使用する役務である「食事券の発行」又は「食事券を取り扱う飲食物の提供に関する情報の提供」との関係において検討するに、その対象となる食事券が「全国で共通して取扱店で利用できる食事券」以外のもの(例えば、「全国で共通して非取扱店でも利用できる食事券」)であることは、実際にはおよそ考え難いことからすれば、本件商標が、指定役務を、例えば「全国共通の取扱店で利用できる食事券の発行」のように「全国で共通して取扱店で利用できる食事券」に係る役務に限定していなくとも、役務の質の誤認を生じさせるおそれがあると認めることはできない。
(2)請求人は、使用商標は請求人の発行に係るギフトカード等との間で役務の質の誤認が生じており、外食産業の分野において請求人会社によって既に確立されている「役務の質」との関係で「誤認」を生じさせると主張している。
しかしながら、使用商標中の「全国共通お食事券」の文字は、前述のように自他役務の識別機能を果たすものとして使用されているとはいえないから、本件商標権者が使用商標を使用しても、これに接する取引者、需要者は、該文字が請求人の提供に係る役務を表示するものと認識することはなく、請求人の提供する役務との関係で、その質を誤認することはないというべきである。
5 故意について
使用商標中の「全国共通お食事券」の文字は、前記1のとおり、「全国で共通して取扱店で利用できる食事券」ほどの意味を看取させるもので、「食事券の発行」又は「飲食物の提供又はそれに関する情報の提供」との関係においては自他役務の識別機能を果たし得ない語であって、かつ、これをもって請求人の役務の出所を識別する表示ということもできないものである。
そうすると、該文字は、役務の質の誤認や請求人の業務に係る役務との混同を生じさせることを目的に使用するものということはできず、本件商標権者による使用商標の使用に、故意(誤認、混同を生ずることの認識)があったということはできない。
6 まとめ
以上によれば、本件商標権者は、本件商標の指定役務である第36類「前払い式証票の発行」及び第43類「飲食物の提供又はそれに関する情報の提供」について、本件商標に類似する使用商標1及び2を使用したとはいえるものの、故意に当該役務の質の誤認又は他人の業務に係る役務と混同を生ずるものをしたということはできない。
したがって、本件商標の登録は、商標法第51条第1項により、取り消すことはできないものである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(本件商標)


別掲2(本件使用商標及び使用商標1)


別掲3(本件使用商標2及び使用商標2)



審理終結日 2017-03-01 
結審通知日 2017-03-08 
審決日 2017-03-31 
出願番号 商願2011-52214(T2011-52214) 
審決分類 T 1 31・ 3- Y (X3643)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 大森 健司 
特許庁審判長 青木 博文
特許庁審判官 板谷 玲子
田中 亨子
登録日 2012-01-20 
登録番号 商標登録第5464311号(T5464311) 
商標の称呼 グルナビギフトカード、グルナビギフト、グルナビ、ギフトカード、ギフト 
代理人 岡田 淳 
代理人 上山 浩 
代理人 本宮 照久 
代理人 増田 雅史 
代理人 藤原 総一郎 
代理人 飯田 昭夫 
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