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審決分類 審判 全部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W25
管理番号 1329172 
審判番号 無効2016-890055 
総通号数 211 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2017-07-28 
種別 無効の審決 
審判請求日 2016-09-12 
確定日 2017-05-08 
事件の表示 上記当事者間の登録第5761486号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5761486号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5761486号商標(以下「本件商標」という。)は、「collegiens」の欧文字を横書きしてなり、平成26年12月4日に登録出願、第25類「被服,子供服,靴下,帽子,レギンス,履物」を指定商品として、平成27年3月9日に登録査定、同年5月1日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が、本件商標の登録の無効の理由として引用する商標は、「Collegien」の欧文字(5文字目のeには、フランス語のアクセント記号であるアクサンテギュが付されている。)であり、請求人が商品「靴下,スリッパソックス,ルームシューズ,タイツ」に使用していると主張しているものである。

第3 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第198号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求人及び請求人が使用する商標について
(1)概要
請求人は、フランス南西部のブリアテクストに住所を有し、4世代にわたり靴下等の製造、販売を事業とする企業である(甲3?甲8)。
請求人の歴史は、1864年、Narcisse Guilleが事業を始め、1930年、Olivierは初の電動式の機器を購入して、靴下の製造に特化し、戦前には、乳幼児用の靴下を編むようになった。1947年には、Alain、RobertとともにCollegienブランド(5文字目のeはアクサンテギュを有する。(合議体注記:以下、本件において同様。))を立ち上げ、靴下に柔らかいゴムの靴底を射出した製品を発明した。こうして、フランス語で「Chaussons-chausettes」(ソーション・ショセット)、英語で「Slipper-Socks」(スリッパソックス)と呼ばれる、主にルームシューズとして使用する製品(甲3、甲25?甲33ほか)が誕生した。
別の形態の会社を経て、1956年、リミテッドカンパニーとして、スリッパソックス、靴下、タイツなどの製品を製造、販売している。
(2)請求人所有の商標について
請求人は、「Collegien」の文字を有する商標を、フランスをはじめ、各国で出願し、登録を受けている(甲9?甲15)。なお、以下、請求人が使用する「Collegien」の文字を含む商標を総称して「Collegien」商標という。
ここで、甲第13号証に示す国際登録第1253980号「Collegien」について、請求人は、我が国も指定国としたが(甲16)、2015年12月3日付で、本件商標及び同じく被請求人による商標登録出願である商願2015-38713号(甲18)を、それぞれ引用商標1、引用商標2として、商標法第4条第1項第11号の拒絶理由が記載された暫定拒絶通報が発送された(甲17)。これにより初めて、請求人は、本件商標及び商願2015-38713号商標の存在を知ることとなり、本件無効審判を請求するに至ったものである。
(3)フランスをはじめとする世界各国での請求人の「Collegien」商標の使用について
ア フランスでの商標の使用開始時期とその後の概要
請求人は、フランスでは、「Collegien」商標を、遅くともブランドを立ち上げた年である1947年から使用を開始し、請求人の広報誌、婦人向け雑誌や業界雑誌、コレクションの広告、商品や商品のタグ、カタログなど、現在に至るまで継続して使用し、今では「Collegien」は、商品のブランド名としてだけでなく、請求人自身を表す代名詞にもなっている(甲21?甲24、甲146、甲144、甲25?甲33、甲3?甲7、甲130)。
イ 世界各国の雑誌記事への掲載
請求人は、フランスだけでなく欧州を中心とした世界各国に「Collegien」商品を積極的に宣伝広告活動してきた。
その結果、遅くとも1965年には、「Collegien」商品は、「Marie France」などのフランスの著名なファッション雑誌や業界雑誌等の記事に取り上げられ(甲23)、近年も世界各国の雑誌等の記事に多数取り上げられてきた(甲34?甲93)。
ウ フランスをはじめとする世界各国での取引状況
請求人は、本件商標の出願前から、いわゆるB2B取引(Business to Business)を中心に、フランスをはじめ、世界各国の業者と取引を行っているものであり、欧州を中心に、中東、アジア、南北アメリカ、オセアニアに及ぶ世界40か国以上の国に請求人の商品が輸出されている(甲95、甲97?甲107)。
また、請求人の商品は、いわゆるB2C取引(Business to Customers)、すなわち、請求人のウェブサイト(甲3?甲7)を通じて、消費者が請求人の商品を購入することができる。請求人はこのようなウェブサイトを通じた取引を遅くとも2009年から開始し(甲6)、消費者の国の分布は、欧州をはじめ、北アメリカ、南アメリカ、日本を含むアジア、中東、オセアニア、アフリカに及ぶ、世界各地の国々を含んでいる(甲96)。
さらに、請求人は、主に子供用衣料関連の見本市・展示会に数多く出展しており、スペインでの見本市(甲22)のほか、近年も2007年から2014年9月までの間だけでも、12回の見本市・展示会に出展した(甲108?甲129、甲149?甲152)。
エ その他SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)などを活用してきた。(甲130)
(4)日本での取引状況および商標の使用
ア 取引状況
日本には2008年に輸入が開始され、以降、現在に至るまで継続的に輸入されている。
2008年から2014年までの日本への「Collegien」商品の売上高および販売数量は、合計17万3578ユーロ、2万1698足である。取引業者を通じて我が国に輸入された請求人の商品は、輸入業者の直営の雑貨店などの店舗(甲100、甲132?甲134)や、運営するオンラインショップ(甲135)のほか、他の日本各地の小売業者の店舗やオンラインショップを通じて、購入することができる。本件商標の登録出願前には、少なくとも、東京、横浜をはじめとする関東、九州、東海の日本全国各地の雑貨店等で販売され、オンラインショップ等の通販でも購入することができた(甲100、甲第101、甲132?甲142、甲93)。また、上記(3)ウに示したように、請求人のホームページを通じて、請求人から直接、商品を購入することもでき、実際に日本の消費者からの購入もあった(甲96)。
イ 日本のテレビ番組、雑誌での紹介
請求人のスリッパソックスは、TBSで放送されていた人気長寿の生活情報番組「はなまるマーケット」の、2009年4月17日放送で紹介され(甲145、甲146)、請求人のスリッパソックスが「この春フランスから上陸したルームシューズ」として、その中敷きに「Collegien」の文字が表示されているのが映し出されている。
また、日本のファッション雑誌「FUDGE」の2009年6月号には請求人商品が掲載された(甲92)。
ウ 日本で開催の見本市への出展
請求人は、東京で開催された見本市「Playtime Tokyo 2009」、「Playtime Tokyo 2010」に出展し、取引者、業界関係者の注目を集めた(甲149?甲152)。
エ ブログ等での反響・評価
請求人の商品、特にスリッパソックスは、請求人独自の商品であって、その機能性及びデザインの良さ、豊富さで、我が国の取引者、需要者に注目されブログ等に多く紹介されてきたものであり(甲135?甲149)、また、その口コミで来店する顧客も多かった(甲100の8)。
2 無効理由について
(1)商標法第4条第1項第10号及び同第15号該当性について
ア 請求人の「Collegien」商標の我が国での周知性
上記1(4)で述べたように、「Collegien」商標を使用した請求人の商品は、2008年以降日本に輸入され、日本全国各地の店舗、オンラインショップや雑誌等の通販を通じて販売され、見本市に出展され、取引者、需要者の注目を集めてきた。
特に、スリッパソックスは、請求人が独自に開発し、現在も他にほとんど類を見ないユニークな商品である。それゆえに一度見ると印象が深く、特にお洒落に感度の高い女性、小さい子供の母親を中心に、ルームシューズや乳幼児のファーストシューズなどとして、愛用されてきた。
このように、「Collegien」商標を使用した請求人商品は、本件商標の登録出願前から、相当程度知られており、周知性を獲得していたものである。
イ 本件商標と請求人の「Collegien」商標との対比、および本件指定商品と請求人が使用する商品の対比
本件商標は、「collegiens」の欧文字からなる商標であり、「コレジアンス」の称呼を生ずるものであり、一方、請求人の「Collegien」商標は、「コレジアン」の称呼を生じる。
両者は、外観上、末尾の「s」の文字の有無、最初の「c」の大文字、小文字の別、「e」の文字のアクサンテギュの有無が相違する。しかしながら、「c」と「C」の相違は文字の形状は同じで大小の違いのみであり、「e」の上のアクサンテギュの有無は小さく、基本的な英語のアルファベットには無い文字であることから省略されて表示される場合も多い。したがって、全体的に見たときに、本件商標は、外観上、引用商標と相紛らわしい類似する商標である。
また、称呼に関して「コレジアンス」と「コレジアン」では、末尾の「ス」の音の有無で相違するが、末尾の「ス」の音は弱音となる傾向があり、その有無によって商標を聴別することは難しく、称呼においても、互いに相紛らわしいものといえる。
そして、本件商標の指定商品中、「被服,子供服,靴下,履物」については、請求人の製品であるスリッパソックスすなわちルームシューズとして使用できる靴下にゴム底を射出した商品、靴下、タイツと同一又は類似の商品である。また、本件商標の指定商品中、「帽子,レギンス」は、請求人商品と同様ファッション関連の製品であり、請求人商品と密接に関連する商品である。
以上より、本件商標は、引用商標と類似の商標であり、かつその指定商品は、請求人が使用する商品と同一又は類似の商品あるいはこれと密接に関連する商品である。
ウ 結論
以上のことから、本件商標は、請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標と類似する商標であって、その商品と同一又は類似の商品について使用するものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当する。
また、本件商標は、請求人の「Collegien」商標と類似であって、請求人が使用する商品と同一又は類似の商品あるいはこれと密接に関連する商品であるから、請求人の商品と出所の混同を生ずるおそれのある商標である。よって、本件商標は、他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標であり商標法第4条第1項第15号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第19号該当性について
ア 請求人の「Collegien」商標の周知・著名性
上記1(1)ないし(3)で述べたように、請求人の本国であるフランスにおいてブランドを立ち上げて以降、「Collegien」商標を使用した請求人商品は、フランス及び世界各国の多くのファッション雑誌、週刊誌、一般紙などに何度も紹介され、多くの見本市への出展、世界各国の店舗での陳列・販売、ブログ、インターネット等を通じた通信販売、SNSなどを通じて、本件商標の登録出願前から既に、フランスをはじめとする欧州、日本を含むアジア、取引者・及び需要者の間で、周知・著名であったというのが相当である。
イ 本件商標と請求人の「Collegien」商標との対比、及び本件商標の指定商品と請求人が使用する商品の対比
本件商標が請求人の「Collegien」商標と類似であること及び本件商標の指定商品が請求人が使用する商品と同一又は類似の商品あるいはこれと密接に関連する商品であることは、上記2(1)イで指摘したとおりである。
不正の目的について
(ア)被請求人の住所は京都府京都市内の「株式会社バク内」とされているところ、株式会社バクは衣料に係る業務を行っており、被請求人は、登録住所より、当該会社内の人間といえるから、衣料関連について強い関心がある者であるといえる(甲1、甲2、甲153?甲159)。
そして、請求人が行うスリッパソックス、靴下等の製造・販売はまさに、被請求人が関心を有する衣料業界に属する。
そうすると、被請求人は、本件商標の登録出願前から、請求人の商標を十分に認識していたというのが相当である。
(イ)被請求人名義の登録商標および商標登録出願について
被請求人は、本件商標および商願2015-38713号商標以外にも、少なくとも21件の商標登録出願をしている(甲160)。
本件商標及び商願2015-38713号商標については、これまでに述べたとおり、本件商標の登録出願前に請求人がフランスを中心とした欧州をはじめ日本を含む世界各国で使用をしてきた請求人の「Collegien」商標に依拠したものであり、請求人の「Collegien」商標と極めて類似の商標である。
これら以外の19件中、18件の登録商標および商標登録出願について、請求人が調査したところ(甲161?甲178等)、本件商標及び商願2015-38713号商標を含めると、被請求人の登録商標および商標登録出願の21件中、まさに20件が、それぞれの商標の登録出願前から存在していたファッションブランドの名称と一致またはその前後に余分に一文字程度追加されたものである。また、指定商品も、各ファッションブランドに係る商品と同一又は類似、もしくは密接に関連する商品である。
このように、被請求人が登録出願した、これほど多数の商標が、偶然に、既存のブランドの名称と一致又は極めて類似したものとなったとは到底考えられない。
そうとすれば、被請求人は、出願前に各ファッションブランドの名称を知ったうえで、それらが我が国で商標登録されていないことを奇貨として、剽窃的及び先取り的に出願したものであり、各ブランドが獲得した顧客吸引力や信頼等の利益を不正に得る目的で、機会があれば高額で買い取らせるために、あるいは外国の権利者の国内参入を阻止し若しくは代理店契約締結を目論むために、不正の目的をもって使用する若しくは使用しようとするものであることは明白である。
請求人の「Collegien」商標は、上記のとおり、被請求人が本件商標を出願する前から、請求人がフランスを中心とした欧州及び日本を含む世界各国で使用していたものである。
被請求人は、請求人の「Collegien」商標を知ったうえで、それが我が国で商標登録されていないことを奇貨として、剽窃的及び先取り的に出願したものであり、請求人が獲得した顧客吸引力や信頼等の利益を不正に得る目的で、高額で買い取らせる目論見で、あるいは外国の権利者の国内参入を阻止し若しくは代理店契約締結を目論むために、不正の目的をもって使用する若しくは使用しようとするものであることは明白である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に規定される、不正の目的をもって使用するものであることが明白である。
エ 結論
以上のとおり、本件商標は、他人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に周知な商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的(不正の利益を得る目的、他人に損害を与える目的、その他不正の目的をいう。)をもって使用するものであるから、商標法第4条第1項第19号の規定に違反して登録されたものである。
(3)商標法第4条第1項第7号該当性について
上記したように、被請求人は請求人の「Collegien」商標が我が国で登録されていないことを奇貨として、当該商標が請求人の商標であることを明白に認識しながら、請求人に何の断りもなく、剽窃的及び先取り的に、出願、登録を行ったものといえる。
このように、本件商標は、登録に至る出願の経緯において著しく社会的妥当性を欠くものがある。
また、本件商標の登録出願は、請求人が商標として使用することを選択し、やがて我が国においても出願されるであろうと認められる商標を、先回りして、不正な目的をもって剽窃的に出願したものと認められるから、商標登録出願について先願主義を採用し、また、現に使用していることを要件としていない我が国の法制度を前提としても、そのような出願は、健全な法感情に照らし条理上許されないというべきであり、また、商標法の目的(商標法1条)にも反し、公正な商標秩序を乱すものというべきであるから、出願当時、請求人の「Collegien」商標が周知・著名であったか否かにかかわらず、本件商標は「公の秩序又は善良な風俗を害するおそれがある商標」に該当するというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものである。
(4)本件商標が商標法第3条第1項柱書に違反して登録されてものであること
仮に、被請求人が株式会社バクの業務との関係を否定し、衣料関係の事業に係る者でないと主張するならば、本件商標は「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」ということはできないから、そのような場合には、商標法第3条第1項柱書に違反して登録されたことになる。
また、株式会社バクの登記された住所が、万が一上記衣料品店ではなく、団地の部屋を登記したものであれば、UR都市機構の規約に違反することになるので、たとえ書類上会社が存在し得ても、実質的な業務を公然と行うことは困難である。そうであるならば、本件商標は、「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」ということはできないから、そのような場合にも、商標法第3条第1項柱書に違反して登録されたことになる。
3 むすび
上述のように、本件商標は商標法第4条第1項第10号、同第15号、同第19号、同第7号及び同法第3条第1項柱書の規定に違反するものであり、同法第46条第1項第1号の規定によりその登録は無効とされるべきものである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、請求人の主張に対して何ら答弁していない。

第5 当審の判断
1 引用商標の周知性について
請求人提出の証拠及びその主張によれば、以下のとおりである。
(1) 請求人について
請求人は、フランス南西部のブリアテクストにおいて靴下等の製造、販売を事業とする企業であり、1864年に事業を開始し、以後、乳幼児用の靴下を製造、1947年から「Collegien」の欧文字からなる商標(引用商標)を使用した、靴下に柔らかいゴムの靴底を射出した製品を開発し、1956年以降、スリッパソックス、タイツなどの製品を製造、販売している(甲3?甲8及び主張の趣旨)。
(2)引用商標の外国における周知性について
請求人は、上記のとおり、フランスにおいて、1947年から現在に至るまで、引用商標を、主として商品「スリッパソックス」に継続して使用しているものであり、引用商標を使用した請求人の商品は、1965年には、「Marie-France」や「Echo de la Mode」といったフランスのファッション雑誌等(甲23)をはじめ、その後も2008年から2014年にかけて、世界各国の雑誌等に、のべ55回(うちフランスで31回、ドイツで7回、スペインで6回、イタリア、オーストリア、香港及び日本で各2回、オランダ、米国及びオーストラリアでは各1回)取り上げられたほか、宣伝広告されてきた(甲34?甲94)。
また、請求人は、2011年から2014年の間、フランスをはじめ、世界40か国以上の業者と引用商標を使用した商品の企業間取引を行っていることが推認でき(甲95及び主張の趣旨)、この間、少なくとも、フランス、日本、イギリス、アイスランド、ドイツ、スイス、台湾の店舗に請求人の商品「スリッパソックス」が陳列され販売されていたこと(甲97?甲107)、請求人は、さらに、1965年スペインで開催された見本市に請求人の商品「スリッパソックス」を出展したのを皮切りに(甲22)、近年においては、2009年9月から2014年にかけて開催された、主に子供用衣料関連の見本市・展示会に、フランスにおいて13回、英国及びドイツにおいて各3回、日本において2回及びスペインにおいて1回出展したこと(甲123?甲129)が認められる。
以上のことからすれば、引用商標は、請求人の商品「スリッパソックス」に使用されて、本件商標の登録出願前には、少なくとも、請求人が所在するフランスにおける需要者の間において広く認識されていたということができるものである。
(3)引用商標の我が国における周知性について
引用商標が使用された請求人の商品「スリッパソックス」は、請求人の主張によれば、2008年から我が国に輸入が開始され、2014年までの7年間に輸入された商品の売上高は合計17万3578ユーロであり、年平均の販売数量は3100足にすぎない。また、当該商品について、我が国の小売店への卸売数や卸売額、我が国の小売店やオンラインショップを通じて購入された商品の購入数や購入額については明らかでなく、テレビ放送における紹介も2009年4月17日の1回のみであり(甲145、甲146)、雑誌類においてはファッション雑誌「FUDGE」の2009年6月号に1度紹介されたにすぎない(甲92)。また、見本市へは2009年と2010年の2度の出展にとどまり(甲149?甲152)、さらに、ブログ等での反響も極めて多いものとは認め難く、主に請求人の上記商品に対する個人の感想や論評の記載を引用商標の著名性の評価の基礎とすることは相当でない(甲135?甲144、甲149、甲100号証の8)。
してみれば、提出された甲各号証からは、引用商標が請求人の商品「スリッパソックス」に使用された結果、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたということはできないものであり、その他の「靴下、ルームシューズ、タイツ」についても、我が国における周知・著名性を認めることはできない。
2 商標法第4条第1項第10号及び同第15号について
上記1(3)で判断したように、引用商標は、本件商標の登録出願前及び登録査定時において我が国の取引者、需要者の間において広く認識されていたということはできないから、本件商標をその指定商品に使用しても、引用商標を連想・想起することはなく、これに接する取引者、需要者が、該商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように誤認することはなく、その出所について誤認、混同を生ずるおそれはないというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第19号について
(1)引用商標の外国(フランス)における周知性について
上記1(2)で判断したように、引用商標は、請求人商品(スリッパソックス)に使用されて、本件商標の登録出願前には、少なくとも、請求人の居所があるフランスにおける需要者の間において広く認識されていたということができるものである。
(2)本件商標と引用商標との類否について
本件商標は、「collegiens」の欧文字を横書きしてなり、その構成に相応して「コレジアンス」の称呼を生ずるものであり、該文字が我が国において日常親しまれて使用される外国語とは認められないから、これよりは特定の観念は生じないというべきである。
他方、引用商標は、「collegien」の欧文字からなり、その構成に相応して「コレジアン」の称呼を生ずるものであり、本件商標と同様に特定の観念は生じないというべきである。
しかして、本件商標と引用商標は、その称呼において、その差異は末尾の「ス」の音の有無という微差にすぎないから、両者を、それぞれ一連に称呼する時には互いに紛らわしいものというべきである。
また、両者は、その外観においても、頭部の「c」と「C」との差異、5文字目の「e」におけるアクサンテギュの有無、末尾の「s」の文字の有無という差異があるものの、これらの差異は微差にすぎないというべきであるから、外観において類似するというのが相当である。そして、両者は、観念において類似するとはいえないものの、それぞれの外観、称呼及び観念を総合して検討すれば、互いに類似する商標というべきである。
(3)不正の目的について
ア 被請求人の我が国における商標登録出願について
しかして、甲第160号証によれば、被請求人は、2016年6月27日現在、下記の商標及び本件商標を含めて21件の商標について登録出願をしていることが認められる。
(ア)本件商標と商願2015-38713号商標は、請求人の引用商標と文字の構成が「C(c)ollegien」の部分において一致しており、これら被請求人商標の指定商品は、請求人が引用商標に使用している商品「スリッパソックス」と同一又は類似するものである(甲18)。
(イ)登録第5695574号商標及び登録第5748476号商標は、「KTZ」の文字からなるところ(甲161、甲162)、これらは、2003年に採択された欧州の被服等の商標「KTZ」と文字の構成を同じくし、当該商標は、インターネットの通信販売において商品「被服」について実際に使用されている(甲179、甲180)。
(ウ)登録第5695575号商標及び登録第5739897号商標は、「Seventh Wonderland」の文字からなるところ(甲163、甲164)、これらは、2008年に採択されたオーストラリアを拠点とする水着の商標「Seventh Wonderland」の文字からなる商標(甲182)と文字の構成を同じくし、該オーストラリアを拠点とする商標は、インターネットの通信販売において商品「水着」について実際に使用されている(甲181)。
(エ)登録第5739902号商標は、「llinoui justlikesantaanawinds」の文字からなり、登録第5767674号商標は、「L」、「Linoui」、「JustlikeSantaAnawinds」の各文字からなるところ(甲165、甲166)、これらは、韓国のバッグの商標「L’inoui」(甲183)と「l(L)」「inoui」の文字において一致しており、「Just like Santa Ana winds」の語は当該バッグの宣伝用の語句として使用されており(甲183)、2013年9月5日付けのウェブ情報において「L’inoui」との名称の韓国のバッグ専門店が紹介されている(甲184)。
(オ)登録第5761487号商標は、「motherofpearls」の文字よりなり、登録第5794491号商標は、「motherofpearl」の文字よりなるものであって(甲173)、商願2015-111530号に係る商標は、「motherofpearl」の文字よりなるところ(甲172?甲174)、これらは、イギリスの商標「MOTHER OF PEARL」(甲190)と「mother(MOTHER)」「of(OF)」「pearl(PEARL)」の文字の構成において一致しており、このイギリスの商標は、2012年の春夏には日本の百貨店である伊勢丹新宿店等で取り扱われており(甲190)、インターネットのGoogleによる検索によればプレタポルテ(高級既製服)に使用する当該商標等が検索される(甲189)。
(カ)商願2015-78419号に係る商標は、「ROBINSJEAN」の文字よりなり、商願2016-40254号に係る商標は、「RROBINSJEANREALAMERICANJEANSR」の文字よりなるところ(甲175、甲176)、これらは、2005年アメリカで採択された綾織り綿布の商標「Robin’s Jean」(甲192)と「ROBIN(Robin)」「S(s)」「JEAN(Jean)」の文字の構成において一致しており、当該商標を使用した商品は、2013年には世界35カ国で販売され、日本でも取引されており(甲192)、インターネットのGoogleによる検索によれば当該商標が使用された商品が検索される(甲191)。
(キ)商願2015-78420号に係る商標は、「MIRAMIKATIR」の文字よりなるところ(甲177)、これは、イギリスのロンドンで2007年から活動を始めたデザイナーの名であり、同人が商品「被服」の商標に使用している商標「Mira Mikati」(甲195)と「MIRA(Mira)」「MIKATI(Mikati)」の文字構成において一致しており、インターネットのGoogleによる検索によれば当該商標が使用された商品が検索される(甲194)。
(ク)商願2016-40258号に係る商標は、「PMARQUESALMEIDA」の文字よりなるところ(甲178)、これは、2011年4月に採択され被服に使用されている外国の商標「Marqes’Almeida」(甲197、甲198)と「MARQUES(Marqes)」「ALMEIDA(Almeida)」の文字の構成において一致しており、インターネットのGoogleによる検索によれば当該商標が使用された商品が検索される(甲196)。
イ 本件商標は不正の目的をもつて使用をするものであるか
以上のアによれば、本件商標を含む、上記ア(ア)ないし(ク)における被請求人の商標は、その全てが、それぞれの商標の登録出願前から存在していた外国の商標と一致、又は一致する文字を構成中に含むものであるから、同一又は酷似し、あるいは類似又は近似するといえるものであり、また、当該被請求人の出願に係る商標の指定商品も、上記外国商標が使用されている商品と同一又は類似、もしくは密接に関連する商品である。
このような、被請求人の出願によるこれらの商標は、上記した外国の商標とは無関係に、偶然に採択されたものとは到底考えられない。
してみれば、被請求人が登録出願した、上記ア(ア)ないし(ク)の各商標は、それらが我が国において登録されていないことを奇貨として、外国の権利者の国内参入を阻止したりする等の目的で、先取り的に、不正の目的をもって使用するために出願したというのが相当である。
したがって、被請求人は、本件商標と引用商標並びにその指定商品と引用商標が使用されている商品「スリッパソックス」との高い類似性及び関連性、及び引用商標が本件商標の登録出願前からフランスにおいて需要者の間において広く認識されていたことを知りながら、未だ引用商標が我が国において商標登録されていないことを奇貨として、不正の目的のために、引用商標と類似する本件商標を出願し、設定登録を受けたものと推認せざるを得ない。
(4)小括
以上、本件商標は、他人(請求人)の業務に係る商品又を表示するものとしてフランスにおける需要者の間に広く認識されている商標と類似の商標であって、不正の目的をもって使用をするものというべきであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
4 むすび
以上のとおり、その余の請求理由について判断するまでもなく、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第19号に違反してされたものというべきであるから、同法第46条第1項により、無効とすべきである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2017-03-07 
結審通知日 2017-03-09 
審決日 2017-03-29 
出願番号 商願2014-107030(T2014-107030) 
審決分類 T 1 11・ 222- Z (W25)
最終処分 成立 
前審関与審査官 小林 智晴椎名 実 
特許庁審判長 早川 文宏
特許庁審判官 堀内 仁子
阿曾 裕樹
登録日 2015-05-01 
登録番号 商標登録第5761486号(T5761486) 
商標の称呼 コレジアンス 
代理人 ▲吉▼川 俊雄 
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