• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部取消 商53条の2正当な権利者以外の代理人又は代表者による登録の取消し 無効としない Y03052530
管理番号 1328032 
審判番号 取消2007-301509 
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2017-06-30 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2007-11-21 
確定日 2012-03-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第4927377号商標の商標登録取消審判事件についてされた平成21年4月21日付け審決に対し、東京高等裁判所において審決取消の判決(平成21年(行ケ)第10138号、平成23年1月31日判決言渡)があったので、さらに審理のうえ、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4927377号商標(以下「本件商標」という。)は、平成17年5月12日に登録出願、「アグロナチュラ」の片仮名と「AGRONATURA」の欧文字とを上下二段に横書きしてなり、第3類「家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用柔軟剤,洗濯用漂白剤,かつら装着用接着剤,つけまつ毛用接着剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,塗料用剥離剤,靴クリーム,靴墨,つや出し剤,せっけん類,歯磨き,化粧品,植物性天然香料,動物性天然香料,合成香料,調合香料,精油からなる食品香料,薫料,研磨紙,研磨布,研磨用砂,人造軽石,つや出し紙,つや出し布,つけづめ,つけまつ毛」、第5類「入浴剤,その他の薬剤,医療用油紙,衛生マスク,オブラート,ガーゼ,カプセル,眼帯,耳帯,生理帯,生理用タンポン,生理用ナプキン,生理用パンティ,脱脂綿,ばんそうこう,包帯,包帯液,胸当てパッド,歯科用材料,医療用腕環,失禁用おしめ,はえ取り紙,防虫紙,乳糖,乳児用粉乳,人工受精用精液」、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」及び第30類「アイスクリーム用凝固剤,家庭用食肉軟化剤,ホイップクリーム用安定剤,食品香料(精油のものを除く。),茶,コーヒー及びココア,氷,菓子及びパン,みそ,ウースターソース,グレービーソース,ケチャップソース,しょうゆ,食酢,酢の素,そばつゆ,ドレッシング,ホワイトソース,マヨネーズソース,焼き肉のたれ,角砂糖,果糖,氷砂糖,砂糖,麦芽糖,はちみつ,ぶどう糖,粉末あめ,水あめ,ごま塩,食塩,すりごま,セロリーソルト,化学調味料,その他の調味料,香辛料,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,コーヒー豆,穀物の加工品,アーモンドペースト,ぎょうざ,サンドイッチ,しゅうまい,すし,たこ焼き,肉まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,べんとう,ホットドッグ,ミートパイ,ラビオリ,イーストパウダー,こうじ,酵母,ベーキングパウダー,即席菓子のもと,酒かす,米,脱穀済みのえん麦,脱穀済みの大麦,食用粉類,食用グルテン」を指定商品として、平成18年2月10日に設定登録されたものである。
第2 請求人の主張
請求人は、商標法第53条の2の規定により、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求めると申し立て、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、甲第1号証ないし甲第34号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
被請求人(商標権者)は、請求人に係る商品の日本における代理店として、継続的に取引していた者であるところ、その期間中に正当な理由もなく、また、請求人の同意を得ないで、請求人が海外において有する商標と類似する本件商標を登録したものである。よって、本件商標は、商標法第53条の2の規定により取り消されるべきものである。
(1)パリ条約同盟国における本件商標と類似の商標権の存在について
請求人は、イタリアの農業協同組合であり、有機ハーブ等の製造を行なうとともに、これらを原料とする化粧品等の販売、ライセンスを行っている者である。
そして、請求人は、パリ条約同盟国であるイタリア共和国において、別掲のとおり「AGRONATURA」と「le Valli dei Profumi」の文字及びハーブを象った図形とから構成され(以下「請求人商標」という。)、第3類「洗濯用漂白剤又はそれ以外の物質の調合剤;洗浄、光沢、脂肪除去、汚れを掻き落とすための調合剤;石鹸;香水;エッセンシャルオイル;化粧品類整髪ローション;歯磨き粉」及び第5類「獣医学、衛生に関する薬品;医療用栄養剤;ベビー用品;膏薬;オブラート原料;歯の詰め物、歯形を採るための材料;消毒薬;害獣駆除用製品;防カビ剤;除草剤」を指定商品として、1999年3月26日に登録出願、2004年8月3日に登録された登録第933972号商標の商標権を有している(甲第2号証及び甲第3号証)。
(2)被請求人(商標権者)と請求人の取引関係について
被請求人は、下記の経緯を経て、2005年(平成17年)2月頃より、日本において商標「AGRONATURA」を付した商品を継続的に販売し、また、2006年(平成18年)9月1日には、請求人との間で独占的販売契約を締結していた。
ア 2004年(平成16年)4月28日、請求人は、IBSジャパン社との間で、請求人の「AGRONATURA」商品をIBSジャパン社を通じて日本において販売するための戦略について合意する契約書を締結した(甲第4号証)。その後、IBSジャパン社は日本において「AGRONATURA」商品を販売するエージェント、即ち代理人を探すこととなった。実際には、商品は、IBSジャパン社のイタリア法人であるIBSイタリアーナ社から日本のエージェントに送られることが予定されていた。かかる構想については、IBSイタリアーナ社の作成した報告書(甲第5号証)に纏められている。
イ そして、この日本のエージェントについては、2004年7月の段階においては、比較的大きな企業の名前がIBSジャパン社から請求人に伝えられ(甲第6号証)、また、2004年9月14日付け電子メールにおいては、さらに幾つかの会社が請求人に係る商品の販売を行なっている会社として挙げられていた(甲第7号証)。
ウ しかし、請求人は、最終的に被請求人を、請求人に係る商品の日本における販売代理人として選定した。
これに基づき被請求人は2005年初め頃から請求人に係る商品の販売について具体的な計画を行なうようになった。甲第8号証は、被請求人の内部で、国内販売についての会議が綿密に行なわれていたことを示す、2005年1月12日付け電子メールの写しである。電子メールアドレスの末尾に「@idea-in.com」とあるのが、被請求人の従業員である。この電子メールにおいては、4月に商品発売を行なうことが予定されている。なお、この電子メールに出てくる「ビオリーブス」商品は、後述の甲第14号証の報告書第4頁左上に表示されている、請求人に係る商品群の1つである。
エ 一方、請求人も、被請求人を代理人とした請求人に係る商品販売の準備を進め、2005年2月18日には、被請求人に対し、請求人に係る商品のサンプルを送付した。甲第9号証及び甲第10号証は、その際のエアウェイビル(航空貨物運送状)、及び請求人から被請求人に宛てたインボイスである。甲第10号証のインボイスの左上には、請求人商標が印刷されているのがわかる。
さらに、請求人は、2005年3月11日に、被請求人に対して、請求人に係る商品であるハーブミックスを送付している。甲第11号証及び甲第12号証は、その際のエアウェイビル(航空貨物運送状)、及び請求人から被請求人に宛てたインボイスである。
オ このように、遅くとも本件商標の登録出願日である2005年5月12日までの間には、被請求人が請求人に係る商品を、日本における代理人として、日本において継続的に販売するという関係が成立していたことが明らかである。
カ この点、2005年5月15日付けのIBSイタリアーナ社からの電子メール(甲第13号証)においては、東京(被請求人のことを指す)が特定の請求人に係る商品につき販売を行ないたいという要望が請求人に対して送付されている。このことからも、すでにこの時期に被請求人と請求人との間の商品販売に関する代理人としての関係は確立していたことが明らかである。
キ 2005年9月30日付けで作成された、IBSイタリアーナ社の作成した報告書(甲第14号証)によれば、2005年1月から6月までの間に、被請求人により請求人に係る商品が日本において販売されたことが示されている。また、同報告書においては、IBSイタリアーナ社が被請求人を日本における商品販売代理人として選定した理由を、「総合的に判断して、新事業を柔軟にそして精力的に展開していくことができる」としている。
ク なお、請求人と被請求人は、2005年9月1日付けで、この継続的取引関係を確認するために独占販売契約を請求人、被請求人及びIBSイタリアーナ社を当事者として締結した(甲第15号証)。
(3)本件商標の登録出願の正当性について
かかる状況の中、請求人は、被請求人が本件商標を2005年(平成17年)5月12日付けで出願していたことについて、全く知らなかったし、これに同意したこともなく、また、2005年9月1日付け独占販売契約(甲第15号証)においても係る商標登録出願について何も言及はないのであるから、本件商標の登録出願が正当な理由なく、また、請求人の同意を得ないで行なわれたことは明らかである。
この点、請求人は、2007年3月21日、ファクシミリでIBSイタリアーナ社及び被請求人に対して本件商標の登録出願についての抗議を行なっているが、これを被請求人は無視した(甲第16号証)。
(4)本件商標と請求人商標の類似について
本件商標は、上記のとおり「アグロナチュラ」と「AGRONATURA」からなるものであるところ、請求人商標は、丸角四角形の図形の中に、「AGRONATURA」、ハーブを象った図形、「le Valli dei Profumi」の文字が記載されたものであり、「AGRONATURA」を要部の一つとするものであるから、両商標は類似する。
なお、請求人商標の指定商品と本件商標の指定商品は、類似するものである。また、請求人と被請求人の間において取引のあった商品も、本件商標の指定商品と類似するものである。
2 第一回答弁に対する弁駁
(1)甲第15号証の独占的販売契約について
ア 甲第15号証の署名欄は、請求人は「Company」の立場として、IBSイタリアーナ社とともに本契約書を締結し、「Distributor」たる被請求人に日本における製品の販売代理権を授与したものである。
契約当事者について、実質的には3社が参加する契約書ではあるが、立場としては二者間の契約書であるため、このような表記となったものである。
イ 被請求人は、2007年に請求人に対し、「2005年9月1日の契約を2007年8月31日付けで解除する。」と述べているところの上記契約書の解約通知(甲第17号証)を送付しており、これは請求人が上記契約書の契約当事者であることを自ら認めている証拠である。
ウ また、甲第9号証ないし甲第12号証で明らかなように、請求人は被請求人に対して、直接商品を送付しており、このような商品の送付の事実は、追加する甲第18号証の1ないし14の送り状においても明らかである。これらは2005年5月から2007年7月にかけての送り状であって、甲第18号証の1においては、「イデアインターナショナル社向けサンプルセット」である旨が明示されており、また、甲第18号証の3、5ないし8、9ないし14においては、商品の宛先が被請求人となっている。
エ 以上のかかる取引の事実は、請求人が甲第15号証の契約当事者であって、それに基づいて被請求人に対して独占的販売権を与えたものであり、被請求人が請求人の販売代理人であったことを示すものである。
なお、IBSイタリアーナ社の代表者であるトヨシマの宣誓書は、被請求人に有利な証言をしている可能性が高く、その証明力はないといってよい。
さらにいえば、たとえ請求人が甲第15号証の独占的販売契約の当事者でなかったと仮定しても、商標法第53条の2は、「代理人又は代表者」が権利者との間において直接の契約関係にあることを必ずしも必要とはしておらず(甲第19号証)。少なくとも請求人がIBSイタリアーナ社を介して日本への販売を行っており、また、被請求人はIBSイタリアーナ社との間の契約関係は明確に認めているものであるから、いずれにしても被請求人が請求人の代理人の関係にあったことは明らかである。
オ 甲第20号証の1ないし6のとおり、IBSイタリアーナ社は請求人に対し、「AGRONATURA」ブランドの「使用手数料」に関する請求書を要求しており、請求人は実際にIBSイタリアーナ社に対してかかる請求書を送付していることからも、請求人が単なる「製造者兼原料供給者」や「立会人」などではなく、「AGRONATURA」商標の商標権者であり、IBSイタリアーナ社を通じて被請求人に商標を使用した商品の独占的販売権を与えたものである。
(2)請求人と被請求人間の実質的な継続的契約関係について
甲第15号証の契約は、2005年9月1日に締結されたものであるから、本件商標の出願日(2005年5月12日)前1年以内の代理人又は代表者でないため、商標法第53条の2の要件を満たさない旨主張しているが、請求書でも述べたとおり、この契約は当事者間の従来の契約関係を確認する意味で作成されたものであって、実際の請求人と被請求人の契約関係はそれ以前から継続しているものである。
この点、被請求人は、このような「実質的」な契約関係の存在についても、いくつかの理由を挙げて反論しているが、いずれも根拠のないものである。
ア 甲第4号証ないし甲第7号証は、請求人とIBSイタリアーナ社とのやりとりであって被請求人とは何ら関係がないと主張するが、甲第4号証は、2004年4月28日の時点で請求人が請求人に係る商品の日本における販売について検討していたことを示すものであり、甲第5号証及び甲第6号証は、IBSイタリアーナ社が日本への販売の窓口として請求人に係る商品を販売する計画について述べたものである。これらは全て、最終的に被請求人を日本における請求人の販売代理店として請求人に係る商品を販売することとなった計画の下地をなすものであって、かかる計画の実現の結果として、甲第9号証ないし甲第12号証に示されるとおり、被請求人に対して直接商品が発送され、両者の継続的な販売代理店としての契約関係が開始され、その後それを確認する意味で甲第15号証の契約書が締結され、甲第14号証の報告書で述べられたような被請求人を販売代理店とする体制が構築されたものである。
イ 被請求人は、甲第8号証について、「ビオリーブス」商品は被請求人とIBSイタリアーナ社が共同で企画・開発した商品であって、その企画・開発に当たって請求人の関与した事実はないと述べているが、甲第14号証のIBSイタリアーナ社による報告書の2頁に「アグロナチュラ・ブランドの化粧品類(ビオリーブス、アントス、アグロナチュラ)」と記載されているとおり、IBSイタリアーナ社自身が、上記商品が請求人のブランドの商品であることを明確にしているものである。
また、甲第21号証として提出する、「トヨシマ」から請求人の代表者であるダッピーノへ宛てた2004年9月21日付け電子メールにおいては、「ビオリーブス社から入手した全商品サンプル(化粧品とバス用品)の詳細を教えてください。洗浄商品サンプルもオーダーする必要があります。」と記載されており、ビオリーブスの商品がすでにそのころ存在していたことが示されている。
さらに、後述のように、被請求人の作成にかかるパンフレットには、「ビオリーブス」商品は、被請求人とIBSイタリアーナ社が共同で企画・開発した商品であるという主張とはまったく異なることが記載されている。
ウ 被請求人は、もし、請求人と被請求人との間に継続的な商品取引関係があったというのならば証拠を提出されたいと主張するので、以下のとおりの証拠を提出する。
(ア)被請求人を送付先とする送り状について
前述の甲第18号証の1ないし14は、請求人に係る商品の2005年から2007年にかけての送り状であるが、これらの送り状においては、商品が被請求人又はIBSイタリアーナ社に継続的に被請求人に送られていたことの証拠である。IBSイタリアーナ社と請求人との間においては、甲第4号証ないし甲第7号証に示されるとおり、日本における販売代理店を探す、という明確な共通の目的があり、IBSイタリアーナ社自身が日本における販売活動を行なうものではないから、IBSイタリアーナ社へ商品が送付されてということは即ち被請求人に対して商品が送付されたことであり、請求人と被請求人の間に継続的な契約関係が存在していたことが証明されるものである。
(イ)被請求人のパンフレットについて
被請求人が使用していたパンフレット(甲第22号証)には、以下のような記述が見られる。
(a)先ず、表紙には、イタリア語で、「アグロナチュラ物語」として、「アグロナチュラコスメティックのブランド名の元となっているアグロナトゥーラ社」として請求人を紹介し、「現在ではアグロナチュラは、その高い品質と信頼性のおかげで、ヨーロッパのみならずアジアや北アメリカ諸国に製品をお届けしています。アグロナチュラコスメティックの製品はその一つ一つがすべてアグロナトゥーラ協同組合の組合員が栽培した農産物から作られているのです。」として、「アグロナトゥーラ農業協同組合」、「ビオリーブス社」及び「アントスコスメシ社」の紹介が行なわれている。
(b)また、3頁目には、「シュタイナー思想を承継する、デメター『AGRONATURA』シリーズ」と題打った文章において、請求人につき「AGRONATURAブランドの名の由来でもあるアグロナチュラ農業協同組合」と紹介し、その商品について「組合直営工場および、組合員のビオリーブス社、アントスコスメシ社によって提供されるこれら製品は、原料の栽培(土壌づくり?収穫)から化粧品としての製品化に至るまで、すべて彼らの手により一貫生産されています。」と説明している。
(c)4頁目には、「アグロナチュラ農業協同組合が、欧州連合加盟国を対象とした莫大な数の農業関係団体・組織の中で、もっとも優秀な農業計画やそれらを実施した運営者を表彰する2006年欧州ベストアントレプレナー表彰団体7団体・組織の中の一つに選ばれました。」という説明とともに、「アグロナチュラ社代表:ピエルカルロ・ダッピーノ」の表示とともに同氏の署名が表示され、さらには「アグロナチュラ創立者ダッピーノ」との表示とともに同氏の写真が掲載されている。このダッピーノはいうまでもなく請求人の代表者であり、甲第15号証の契約書の署名者である。
(d)このように請求人の説明が被請求人のパンフレットに大々的に載せられていることから見ても、請求人が、被請求人のいうようにサンプルを「一方的に発送」し、「単なる商品の売り込み行為」を行った会社などではなく、被請求人と継続的な契約関係にあった者であることは明らかである。
(e)さらに、このパンフレットの6頁目には、ビオリーブス社について「私たちビオリーブス社は、1973年の創業以来、アグロナチュラ農業組合の組合員の一つとして、ハーブ原料の栽培と化粧品・洗剤の研究開発から生産までを一貫して行なっています。」と紹介されている。
この点からも、被請求人の主張する「ビオリーブス」商品は、被請求人とIBSイタリアーナ社が共同で企画・開発した商品である、という主張が事実に基づかないものであること、そして被請求人自身がそのパンフレットの中でそれを証明していることが明らかである。
(ウ)被請求人に係る商品の包装の記載について
(a)被請求人が販売していた「ブレンドハーブティー」の商品の包装(甲第23号証)には、「デメター・バイオダイナミック農法のアグロナチュラ農業協同組合農場にて土壌作りから一貫生産されるイタリアピエモンテ産100%ハーブ原料を使用しています。」との記載があり、また「Agronatura Coopは、イタリア/ピエモンテ州にあるハーブ農業組合会社です。海外から原料を買い集めることなく、土壌作りから、種植え、収穫、ハーブティーの製品化まで一貫してイタリアピエモンテ州の組合内でおこない、信用性・トレーサビリティの高い製品作りに特徴があります。」との説明がある。そして、被請求人は「輸入者」として記載されている。
(b)また、被請求人が販売していた「アグロナチュラ入浴剤」の商品の包装(甲第24号証)には、「原産国:イタリア製造者Agronatura Coop 製造販売業者:(株)イデアインターナショナル」との表記がある。
(c)かかる記載からしても、請求人と被請求人の間に継続的な取引関係があったことが明確である。
(エ)被請求人のウェブサイトにおける記載について
被請求人は、同人の過去のウェブサイトにおいて、請求人との関係について認めている。これを証明するためアメリカの非営利団体「インターネット・アーカイブ」が提供している、「ウェイバックマシン」という名称のキャッシュデータ閲覧サービスにおいて入手可能なデータを提出する(甲第25号証の1及び2のウェブサイト参照)。
(a)このサービスにおいて、被請求人のウェブサイトのトップページである「http://agronatura.jp/top.html」の過去のデータを検索すると、甲第27号証に表示されるとおり、遅くとも2005年11月から当該ウェブサイトが存在していたことが分かる。このうち、日付が表示されているところは、データが収集された時を示す。
(b)ここで、「Feb 03,2006」と記載がある箇所をクリックし、2006年2月3日付の被請求人のウェブサイトのトップページ「http://agronatura.jp/top.html」の記録を見ると、甲第28号証に示す画面が表示され、この画面のURLとして、「http://web.archive.org/web/20060203025529/http://agronatura.jp/top.html」が下部に表示され、このうち「20060203025529」の部分が、当該ウェブページが2006年2月3日午前2時55分29秒に記録されたページであることを示している。
(c)ここからさらに、同ページの下部にある、「会社案内」と書かれた部分をクリックすると、さらに甲第29号証に示す画面が表示される。この画面のURLは「http://web.archive.org/web/20060203025244/agronatura.jp/company.html」となっているので、これは2006年2月3日午前2時52分44秒に記録された、被請求人の会社案内に関するウェブページであることが分かる。
(d)そして、このウェブページの右下部分には、以下のような記載がある。
2005年1月 伊アグロナチュラ農業組合と業務提携
2005年3月 香港に物流倉庫設立
2005年5月 伊アグロナチュラ農業組合とのコラボレーションにより「ビオリーブス」洗剤の発売
2005年6月 化粧品製造販売業者資格取得
2005年11月 「アグロナチュラ」ボディケアシリーズの発売
(e)この記載からも明らかなとおり、被請求人の過去の(少なくとも2006年2月3日時点の)のウェブサイトには、被請求人自らが、2005年1月の時点で請求人である「伊アグロナチュラ農業組合」と「業務提携」を行なっていたことが謳われており、また、同年5月にはビオリーブス洗剤の発売、11月にはボディケアシリーズの発売が行なわれたことが示されている。
(f)なお、同ウェブページの「アグロナチュラ・ビオリーブス担当新規事業開発室 ご挨拶」と書かれた箇所をクリックすると、甲第30号証に示される画面が表示される。これは被請求人によるアグロナチュラ商品の取り扱いについて述べられたものであり、最後に、「株式会社イデアインターナショナル アグロナチュラ事業開発室 手島 大輔」と記載されている。この「手島 大輔」という人物は、甲第8号証の電子メールの送信者「DAISUKE TESHIMA」と同一人物であり、また、当該電子メールの送信日(2005年1月12日)と上記「2005年1月伊アグロナチュラ農業組合と業務提携」の記述が完全に符合するものである。
(g)さらに、甲第8号証において述べられた「消費財『ビオリーブス』についての国内販売プロジェクト」の「キックオフ」をする、という内容も、「2005年1月伊アグロナチュラ農業組合と業務提携」、「2005年5月伊アグロナチュラ農業組合とのコラボレーションにより『ビオリーブス』洗剤の発売」という経緯と完全に合致するものである。
(h)このほかにも、被請求人の過去のウェブサイトには、アグロナチュラ協同組合についての説明(甲第31号証)があり、甲第22号証においても表示されていたダッピーノの写真及び同氏のコメントが記載されている。
(i)甲第31号証の最後の頁には、「Agronatura及びle Valli dei Profumiは公的商標登録がされております」との記載があり、これは請求人のイタリアにおける商標登録(甲第2号証)のことを示しているものであり、被請求人は、請求人の商標登録について熟知していたものである。
(j)以上のとおり、被請求人は、同人のウェブサイト上において、被請求人が2005年1月頃には、請求人と実質的な契約関係に入っており、その後、2005年5月頃までには、請求人に係る商品の販売を行なうという継続的な取引関係が構築されたことを述べている。
なお、これらのウェブサイトの表示は、被請求人によりすでに書き換えられており、現在の被請求人のウェブサイトにおいては見ることは出来ない。
(オ)被請求人と請求人の間の商品に関するやり取りについて
被請求人と請求人は、商品の仕様等に関して、直接又はIBSイタリアーナ社を通じて連絡を取っていたものである。
(a)例えば、甲第32号証においては、先ず、2006年12月20日付けで(「toku@idea-in.com」からして、被請求人の従業員であること明らかな)「Tokuno Masato」という人物から(「m.toyoshima@ibs-italiana.com」からして、IBSイタリアーナ社のトヨシマであることが明らかな)「m.toyoshima IBS」という人物に対し、エッセンシャルオイルの外箱の表記内容について確認を求めるメールが送付されており、そのメールが、トヨシマから請求人の代表者である「Dappino Piercarlo」(ダッピーノ)に転送されている。
このメールには、エッセンシャルオイルの外箱の表記内容についての案を示す画像が付されている(甲第32号証の4枚目)。
(b)被請求人のウェブサイトにおいて、エッセンシャルオイルの広告を行なっているが(甲第33号証)、このウェブサイトにおける該商品の外箱のデザインは、上記電子メールに添付された案とほぼ同じであり、このことは上記のような被請求人と請求人との間のやり取りに基づいて商品デザインが決定されたことを示している。
(c)このように、被請求人と請求人は、商品の仕様等に関して、直接又はIBSイタリアーナ社を通じて連絡を取り合うなど、密接な関係にあったものである。
エ 甲第13号証の電子メールは、「東京」の文字が被請求人を指すか否かが不明であるとの主張は、これに加え、上記のとおりの請求人と被請求人の直接又はIBSイタリアーナ社を通じた独占的商品販売関係を見れば、当事者間では「東京」といえば被請求人のことを指すことは一目瞭然である。また、請求人は、たとえ「東京」が被請求人を示すものであったとしても甲第13号証は被請求人と請求人との直接的な取引関係の事実があったことを示すものではないとしているが、前述のとおり商標法第53条の2の適用の判断に当たっては両者が直接の契約関係にあることを必ずしも前提としない。
オ 被請求人は、甲第14号証の報告書は、あくまでも被請求人とIBSイタリアーナ社との共同による企画・開発に係る「ビオリーブス」商品を2005年6月に販売したことを示すものであって、請求人に係る商品に関するものではないと述べている。
しかし、該報告書をイタリア語で作成し、かつこれが請求人に交付され、その中で「なぜ、イデア インターナショナル社と協力共同をしていく決意をしたか。」という項目が存在するのかの疑問を生む、これは実際には、ビオリーブス商品が請求人に係る商品ラインであって、請求人に対して商品の販売戦略の説明をし、請求人の同意を得なければならなかったという点にのみ合理的な説明が求められるものである。
なお、「ビオリーブス」商品が「被請求人とIBSイタリアーナ社との共同による企画・開発に係る」という主張は、被請求人自身のウェブサイトの記述に『2005年5月伊アグロナチュラ農業組合とのコラボレーションにより「ビオリーブス」洗剤の発売』(甲第29号証)との記載からして、事実に反するものである。
(3)まとめ
以上のとおり、被請求人と請求人との間には、2005年1月以降、継続的な商品販売の契約関係が成立しており、被請求人の「被請求人と請求人の間に実質的な継続的商品取引関係が存在していない」といった主張が客観的な根拠に反すること明らかであって、被請求人は本件商標の登録出願以前に請求人に係る商品の販売についての販売代理店として代理人の地位にあり、また請求人との間に「契約或いは慣行上、信頼関係を形成する特別の関係」にあったものである。
なお、請求人は、もともと「アグロナチュラ コープ エッレ エッレ」(agronatura Coop. R.L.。「R.L.」は「RESPONSABILITA LIMITATA」の略であって、「Coop. R.L.」で「有限責任協同組合」という意味)として設立されたが、2004年12月23日付けで会社組織を変更し、「アグロナチュラ ソシエタ コーペラティーヴァ アグリコーラ」(Agronatura Societa Cooperativa Agricola。「Societa Cooperativa Agricola」は「農業協同組合」という意味)に名称を変更していたものである。したがって、両者は同一の主体であり、イタリアにおける登記簿謄本に当たる「Visura Camerale」を甲第34号証として提出する。その17頁において、変更の事実が記載されている。
第3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。
1 請求の理由に対する答弁(第一回)
本件商標は、我が国の商標法に違反して登録されたものではないから、商標法第53条の2の規定に基づいて、その登録が取り消されるべきものではない。
(1)商標法第53条の2に規定される要件について
商標法第53条の2では、審判請求に係る登録商標が、パリ条約の同盟国等においてわが国の商標権に相当する権利を有する者の当該権利に係る商標と同一又は類似の範囲であって、その商標登録出願が、正当な理由がないのに、その同盟国等の権利者の承諾を得ないでなされたものであり、当該商標登録出願が、その登録出願日に代理人若しくは代表者である者又は当該商標登録出願日前1年以内に代理人であった者若しくは代表者であった者によってされたものであること、の要件を満たす場合は当該登録商標の登録を取り消すものと規定されている。
(2)被請求人が請求人の代理人又は代表者であったか否かについて
被請求人が、該条項に規定する請求人の代理人又は代表者(以下「代理人等」という。)であったか否かが問題となる。
ここで、「代理人等」とは、当該商品取引においてパリ条約の同盟国等における商標権に相当する商標に関する権利を有する者と代理店、特約店、総代理店のように何らかの継続的な契約関係の存在等により代理権が授与された者を指すものであって、そのような関係のない単なる得意先又は顧客の関係にとどまる者は含まれないものと解されている(例えば、取消2002-30561審決公報参照)。要するに、「代理人等」とは、何らかの継続的な契約関係の存在等により代理権が授与された者を指すものをいい、それ以外の関係は、単なる得意先又は顧客の関係にとどまるに過ぎないということである。
(3)契約関係の有無について
請求人が提出した甲各号証を検討するに、何らかの継続的な契約関係の存在が示唆されるのは、甲第15号証の「独占的販売契約(Exective Distributorship Agreement)」がそれに相当するものと考えられる。
しかしながら、該独占的販売契約は、被請求人とIBSイタリアーナ社間で締結されたものであって、請求人はこの契約の契約当事者ではない。
あくまでも、請求人は、この契約の単なる原料供給者としての立会人に過ぎないものである。
ア 被請求人は、このことを証明するために、契約当事者であるIBSイタリアーナ社の代表者による宣誓書を乙第1号証として提出する。
この宣誓書によれば、上記事実とともに、「当該契約書に併署した『アグロナチュラ農業協同組合』は、当該独占販売契約の契約当事者ではなく、単なる原料供給者であって当該契約の立会人に過ぎず、『アグロナチュラ農業協同組合』もその立場を了承の上で署名したものである。」という事実も宣誓されている。
この宣誓が真実であることは、契約書原文における「IN WITNESS WHEREOF,the parties hereto have caused this Agreement in English and duplicate to be signed by their authorized officers or representatives as of the first above written.」と記載されていることからもわかる。即ち、甲第15号証の和訳に記載されているように「副本」に署名するものではなく、この「duplicate to be signed」とは2通に署名することであり、契約当事者が1通ずつ保有するものである。契約当事者が3名であれば、この記載は「triplicate to be signed」となるはずである。
イ なお、乙第2号証及び乙第3号証に示すように、被請求人は、甲第15号証における請求人の立場と同様に、製造者兼原料供給者を立会人としてIBSイタリアーナ社と契約を締結する場合がある。
乙第2号証:製造者兼原料供給者であるビオリーブス社を立会人とした被請求人及びIBSイタリアーナ社間の独占販売契約書
乙第3号証:製造者兼原料供給者であるアントス社を立会人とした被請求人及びIBSイタリアーナ社間の独占販売契約書
これらの独占販売契約においても、契約当事者は、あくまでも被請求人とIBSイタリアーナ社であって、これらの独占販売契約に署名したビオリーブス社又はアントス社は、製造者兼原料供給者としての立会人に過ぎないものである。換言すると、これらの独占販売契約の正本は、被請求人とIBSイタリアーナ社がそれぞれ1通ずつ保有するものである。
ウ 以上より、被請求人とIBSイタリアーナ社との間には、継続的な契約関係が存在するものの、被請求人と請求人との間には、代理店、特約店、総代理店のように何らかの継続的な契約関係の存在等により代理権が授与された事実はない。したがって、被請求人は請求人の代理人等ということはできない。
(4)代理人等の関係の成立について
仮に、請求人を当該独占的販売契約の契約当事者であると仮定したとしても、被請求人は、請求人の代理人等には該当しない。
本件商標の登録出願日は、平成17年(2005年)5月12日であるから、商標法第53条の2に規定する被請求人適格の要件を満たすためには、少なくとも、2005年5月12日か、この日から1年以内(2004年5月12日?2005年5月12日までの間)に被請求人が代理人等でなければならないはずである。
ア 甲第15号証の独占的販売契約は、2005年9月1日に締結されており、請求人が契約当事者であったと仮定するならば、その日以降に代理人等の関係が成立したということは可能であるが、その出願日は契約締結の日以前であることから、被請求人は、「その商標登録出願日若しくは当該商標登録出願日前1年以内」に代理人等であった者という被請求人適格を満たしていないということになる。
イ 以上のことは、契約関係の存在(独占的販売契約の存在)に着目してこれを検討したものであるが、契約関係は契約書がなくとも成立するという考えもあるので、これを更に検討する必要がある。
そこで、請求人が提出した甲各号証のうち、甲第4号証ないし甲第14号証及び甲第16号証についてこれを検討する。なお、甲第1号証については、本件商標に係る登録原簿並びに商標公報であり、甲第2号証及び甲第3号証については、パリ条約の同盟国等において請求人が所有する商標権に相当する商標に関する権利に関するもの(イタリア国における請求人商標に係る書類)であるので、特にこれを争わない。
(ア)甲第4号証ないし甲第7号証について
甲第4号証ないし甲第7号証の内容は、次のとおりとなっている。
・日本での販売戦略に関するIBSイタリアーナ社(IBSジャパン社を含む)と請求人との間の合意事項(甲第4号証)
・IBSイタリアーナ社から請求人へ宛てられた日本市場の販売計画に関するプレゼンテーション資料(甲第5号証)
・IBSイタリアーナ社から請求人に送付された日本のエージェント候補に関する電子メール(甲第6号証)
・IBSイタリアーナ社から請求人に送付された日本のエージェント候補に関する電子メール(甲第7号証)
これらは、請求人とIBSイタリアーナ社(IBSジャパン社を含む)との間でなされた、2004年4月頃から同年9月頃に日本市場参入に関するやり取りを示すものであり、被請求人とは何ら関係のないものである。
したがって、甲第4号証ないし甲第7号証に基づいて、被請求人が請求人の実質的な代理人等であったということはできない。
なお、甲第7号証の付随する説明において、「最終的には、請求人は、被請求人を、請求人の商品の日本における販売代理人として選定した。」と述べているが、仮に、請求人が主張するように、請求人が被請求人を請求人の商品の日本における販売代理人として選定したとするならば、何らの経緯が示されるべきところ、何らその直接的な証拠を提出しておらず、また合理的な説明もなされていないから、かかる主張は一方的なもの、或いは事実を歪曲したものであって、合理的な根拠を欠くものである。
(イ)甲第8号証について
2005年1月12日に送信された電子メール(甲第8号証)を提出し、被請求人の内部(IBSイタリアーナ社を含む)において、請求人に係る商品の日本における販売に関する具体的な計画を策定している旨述べている。
(a)甲第8号証でいうところの「ビオリーブス」商品は、そもそも、被請求人とIBSイタリアーナ社が共同で企画・開発した商品であって、「ビオリーブス」(「アントス」も含む。)とは生産者名を冠した商品名であり、かかる製品の企画・開発にあたっては請求人の関与した事実は全くない。これは、その電子メールの宛先(被請求人の社員及びIBSイタリアーナ社)を見ても明らかである。この「ビオリーブス」商品(「アントス」商品も含む。)については、請求人はあくまでも商品を製造する際の単なる原料提供者の1人に過ぎないものである。
(b)なお、「アグロナチュラ」というのは、イタリア国におけるオーガニック農家の総称であってイタリア各地に存在している農業組合のことである。
被請求人は、オリジナル商品にこれらの総称を冠し「アグロナチュラ」商品として被請求人自らブランド化し立ち上げたものであることを付言しておく。
この点について、請求人は、「この電子メールに出てくる『ビオリーブス』商品は、後述の甲第14号証の報告書第4頁左上に表示されている、請求人の商品群の1つである。」と述べているが、その和訳に、「ビオリーブス」商品や「アントス」商品の「生産者はアグロナチュラの原料を第一にして使用しなければならない。」とあるように、請求人は単なる原料提供者に過ぎず、これをもって、「請求人の商品群の1つである。」などということはできない。
(c)もし、請求人の商品群の1つであると主張するのであれば、「ビオリーブス」商品(「アントス商品」を含む)の企画・開発にかかる何らかの証拠書類が提出されて然るべきであるが、その証明は何らなされていない。
請求人に係る商品と「ビオリーブス」商品(「アントス商品」を含む)をともに請求人の商品群といっているが、それはあり得ないことである。そもそも、請求人に係る商品そのものがその当時(2005年1月12日当時)存在していないのである。
(d)したがって、甲第8号証により、2005年1月12日の時点で、被請求人が請求人の実質的な代理人等であったということはできない。
(ウ)甲第9号証ないし甲第12号証について
請求人は、甲第9号証ないし甲第12号証を提出し、請求人は、請求人に係る商品のサンプルを航空貨物で2005年2月18日と同年3月11日に被請求人へ送付している旨を述べている。
(a)請求人の被請求人に対するこのような送付行為は、そもそも被請求人が当該サンプル品の送付を請求人へ発注したものではなく、単に請求人が被請求人へ当該サンプル品を一方的に送付してきたものに過ぎない。
このようなサンプル品の一方的な発送は単なる商品の売り込み行為に他ならず、このような事実をもって被請求人と請求人との間に実質的な取引があったものといえないことは取引の実情に鑑みても明らかである。
(b)請求人は、「このように遅くとも本件商標の登録出願日である2005年5月12日までの間には、被請求人が請求人の商品を、日本における代理人として、日本において継続的に販売するという関係が成立していたことが明らかである。」旨を述べているが、請求人が以上に述べたことは、請求人側の一方的な思い込み或いは事実の歪曲であって、被請求人と請求人との間には何ら実質的な継続的商品取引関係は存在していない。そればかりか、このようなサンプル送付をもってして、本件商標の登録出願日である2005年5月12日までの間に被請求人と請求人との間に日本において継続的に請求人の商品を販売するという関係が成立していたとは到底いうことができない。
(c)付言すると、本件商標の登録出願日である平成17年(2005年)5月12日以前はもちろんのこと、その日以降も、被請求人は請求人と継続的な商品取引関係を持ったことはない。もし、請求人が被請求人と継続的な商品取引関係があったというのならば、どの時点でも結構であるが、その継続的な商品取引関係を示す証拠を提出されたいものである。
(d)したがって、甲第9号証ないし甲第12号証によって、2005年5月12日の時点で、被請求人が請求人の実質的な代理人等であったということはできない。
(エ)甲第13号証について
請求人は、甲第13号証を提出し、IBSイタリアーナ社の電子メールによれば、被請求人が請求人に係る商品を取り扱う要望がある旨を有すると述べているが、そもそも甲第13号証中の「東京」の文字が被請求人のことを指すか否かは、請求人が提出する証拠方法からは不明であり、これについては何ら立証もされていないから、「東京」の文字が被請求人を指すとする主張は一方的なものである。
(a)仮に、甲第13号証中の「東京」の文字が被請求人を示すものであったとしても、この甲第13号証は、IBSイタリアーナ社と請求人間との電子メールにおけるやりとりであって、被請求人と請求人との直接的な取引関係の事実があったことを示すものでない。
(b)また、そもそも被請求人であるか否か不明である「東京」在住の誰彼が請求人に係る商品の販売を要望しているとの報告を趣旨とする電子メールに過ぎないものであるから、甲第13号証に基づいて、少なくとも、本件商標の登録出願日或いはそれ以前の1年以内の間に、被請求人が請求人の実質的な代理人等であったということはできない。
(オ)甲第14号証について
甲第14号証は、甲第8号証の項で述べたように、あくまでも被請求人とIBSイタリアーナ社との共同による企画・開発に係る「ビオリーブス」商品を、2005年6月に販売したことを示すものであって、請求人の商品に関するものではない。
前述したように、被請求人は、自身のオリジナル商品にイタリア国の農業組合の総称「アグロナチュラ」を冠し、被請求人自らのブランドとして立ち上げたものであり、この被請求人自らの「アグロナチュラ」ブランドを、甲第14号証の和訳第2頁にあるように、日本市場に紹介することを「目標」にすることを謳ったものである。
したがって、甲第14号証に基づいて、本件商標の登録出願日或いはそれ以前の1年以内の間に、被請求人が請求人の実質的な代理人等であったということはできない。そもそも、被請求人とIBSイタリアーナ社との間に代理人等の関係が成立していたとしても、請求人の代理人等である(或いは代理人等であった)とはいえない。
(カ)甲第16号証について
以上のように、本件商標の登録出願日あるいはそれ以前の1年以内の間に、被請求人が請求人の実質的な代理人等であったということはできないため、甲第16号証については、あくまでも、請求人の一方的主張に過ぎないといわざるを得ない。
(5)まとめ
以上に述べたとおり、被請求人が本件登録審判の被請求人適格を有する者ではないことは明らかであるから、本件商標は本件取消審判において取り消されるべきでない。また、本件商標と類似する登録商標を、単にイタリア国において有することを理由として、わが国において、本件商標を取り消すべく取消審判を請求し、被請求人の使用により既に化体した業務上の信用の毀損を招くような請求人のこのような行為は権利の濫用というべき他ない。
したがって、請求人によるこのような行為は到底許されるものではなく、わが国商標法の法目的に反し、社会正義にもとるものといわざるを得ない。
(6)その他
ア 一連の商取引においては、IBSイタリアーナ社が極めて重要な役割を担っているものであるため、被請求人及び請求人の関係及び一連の事実を明確にする上では、このIBSイタリアーナ社は不可欠な存在である。そのため、被請求人としては、必要な場合には、このIBSイタリアーナ社の代表者を証人として審尋することを要求する予定である。
イ 請求人である「アグロナチュラ コープ エッレ エッレ」と当該独占的販売契約に記載されている「アグロナチュラ ソシエタ コーペラティーヴァ アグリコーラ」とは、同一者と考えられるが、念のため、両者の関係を明確にされることを要求する。
2 弁駁に対する答弁(第二回)
(1)はじめに
本件審判の争点は、被請求人が請求人の「代理人若しくは代表者又は当該商標登録出願の日前一年以内に代理人若しくは代表者であった者」であるか否かである。要するに、出願時に代理人若しくは代表者(以下「代理人等」という。)であったか、或いは、出願日前1年以内に代理人等であったか、ということである。したがって、少なくとも出願日の段階までに、両者間に、形式的あるいは実質的な取引関係があったか否かが問題となる。
これについては、請求人は、形式的なものとして、2005年9月1日の独占販売契約を提出し、この契約の契約当事者であると主張すると共に、この独占販売契約は、2005年1月からの実質的な取引関係を確認するためになされたものである、と主張し、その根拠として、甲各号証を提出している。
しかし、2005年9月1日の独占販売契約における請求人の立場は、あくまでも立会人であって契約当事者ではない。また、被請求人と請求人の間には、2005年1月から現在に至るまで、あるいは、出願日である2005年5月12日の時点あるいはその出願日前1年以内にも継続的な(実質的な)取引関係はなかった。これを、さも両者間に形式的あるいは実質的な取引関係があったかのようにいう請求人の主張は採用されるべきでない。
以下、請求人の弁駁に沿って、反論する。
(2)甲第15号証について
ア 請求人は、「甲第15号証の署名欄は、上段が『Company』、下段が『Distributor』となっている。即ち、請求人は『Company』の立場として、IBSイタリアーナとともに本契約書を締結し、Distributorたる被請求人に日本における製品の販売代理権を授与したものである。・・・・そのような危険な行為を行うことはありえない。」と述べている(弁駁書2頁19行ないし3頁9行)。
しかしながら、このような主張は、請求人の憶測に基づくものであり、取引の実情を完全に無視したものと言わざるを得ない。なぜならば、一般に、契約に際しその「立会人」が契約書に記名・署名することは当然に認められているものであり、また、それに際しても「observer」や「Witness」等の肩書きを明記することは必ずしも要しないからである。この点、請求人は、自己が契約当事者と解され、契約に記載された義務を負うものと判断されるから、そのような危険な行為を行うことはありえない、と述べているが、上述の通り、契約に際しその「立会人」が契約書に記名・署名することは当然に認められ、また、それに際しても「observer」や「Witness」等の肩書きを明記することは不要であることが取引の現実なのである。
また、請求人は、「そもそもかかる部分は契約書の『決まり文句』であるために、・・・・実質的には3社が参加する契約書ではあるが、立場としては二者間の契約書であるため、このような表記となったものであるといえ、契約当事者が2名であったことの確固たる証拠とはならない。」と述べている(弁駁書3頁13行ないし22行)。
しかしながら、かかる主張は、請求人による前記主張と完全に矛盾するものであって極めて妥当性を欠くものといわなければならない。
すなわち、前記主張では、「立会人」が契約書に記名・署名する際には肩書きを署名欄に記載する等、契約書の形式面を重視するかのような主張を行っている。しかし、ここで請求人は「duplicate to be signed」あるいは「triplicate to be signed」の文言について、契約書の決まり文句であって意識せずに使用することもあるなどと、契約書の形式面を軽視した主張を行っている。このような主張は、請求人自らによる前記主張と齟齬をきたすものであり、主張の一貫性に欠けるものである。
取引の現実はさておき、請求人が述べるように契約書の形式面は当然に重視されるべきものである。そのため、契約書上の文言が「duplicate to be signed」であるか「triplicate to be signed」であるかは、契約当事者が2名であるか3名であるかを決定する極めて重要な問題である。
翻って、甲第15号証には「duplicate to be signed」との記載があり、このことは本件契約の当事者が被請求人と審判外IBSイタリアーナ社の2名であることを指し示すことに他ならない。
イ 請求人は、「被請求人は、請求人が上記契約書の契約当事者であることを自ら認めている。・・・・この解除通知は、被請求人が、請求人を甲第15号証の契約書の契約当事者であったことを自ら認めている証拠である。」と述べている(弁駁書3頁23行ないし4頁7行)。
請求人(審決注:第二回答弁書のとおり)は、2005年9月1日の独占販売契約を解除するに際して、その契約に立会人がいたので、その立会人に通知したに過ぎないのであるが、その行為がどのようにしたら立会人を契約当事者とみなすことになるのか、不思議でならない。単に、立会人に「この契約は終わります」ということを参考までに通知したに過ぎない。
ウ 請求人は、「甲第9号証ないし12号証において明らかなとおり、請求人は被請求人に対して、何度も、直接商品を送付している。・・・・かかる取引の事実は、請求人が甲第15号証の契約当事者であり、右契約書に基づいて被請求人に対して独占的販売権を与えたものであり、従って被請求人が請求人の販売代理人であったことを示すものである。」と述べている(弁駁書4頁8行ないし23行)。
ここで、請求人は甲第18号証の1ないし14を商品サンプルの送り状であると述べているが、甲第18号証の1ないし14をよく検討すれば「請求書番号」「通貨」「支払方法」「支払期日」「口座番号」「取引銀行」「合計請求金額」「支払い対象金額」等の項目が存在することから、商品サンプルの発送に伴う「請求書」であることが分かる。
すなわち、請求人は被請求人に対して、商品サンプルを一方的に送付するのみならず、さらに請求書をも一方的に添付しているものである。さらに言うなれば、請求人は本件独占的販売契約の単なる「立会人」にすぎず、さらに、被請求人が請求人に対し商品サンプルの送付を依頼した事実がない以上、請求人による商品サンプルの送付行為は「契約に基づかない一方的な送付」であるものと理解せざるを得ない。
また、追加して提出された甲第18号証の1ないし14はサンプル商品の請求書であるが、その日付は、いずれも本件商標の出願日(平成17年5月12日)以降の請求人による「契約に基づかない一方的な送付」という単なる形式的な取引関係(サンプルの送付行為)を示すものであるため、被請求人が請求人の代理人等であることの証左とは到底なりえない。ましてや被請求人と請求人との間に契約関係があったことを示すものとは全く言えない。
よって、請求人の主張は、請求人自身の一方的な思い込み、あるいは、事実を歪曲したものといわざるを得ない。
なお、被請求人は甲第18号証の「請求書」に対して、審判外IBSイタリアーナ社に対しては支払いを行った事実はあるが、請求人に対して支払いを行った事実はない。なぜなら、被請求人の取引の相手はあくまで審判外IBSイタリアーナ社であって、請求人は取引の相手ではないからである。要するに、請求人との取引関係はないのである。
エ 請求人は、「IBSイタリアーナは、本件登録商標が取り消された場合には被請求人から契約責任を追及されるおそれがあり、従って被請求人の言うままに、あるいは自己の責任を免れるために、被請求人に有利な証言をしている可能性が高い。従って、かかる宣誓書の証明力はないといってよい。」と述べている(弁駁書4頁24行ないし5頁4行)。
これは、請求人の単なる憶測又は推測である。このような証拠に基づかない憶測又は推測による主張は採用されるべきではない。考慮するにも値しない。
オ 請求人は、『たとえ請求人が甲第15号証の独占的販売契約の当事者でなかったと仮定しても、かかる事実は結論に影響を与えない。・・・・審決においては、被請求人は日本における独占的ライセンシーを介して請求人の代理人の関係にあり、従って被請求人による商標登録は商標法第53条の2に該当する、請求人の承諾を得ないで正当な理由なくして登録を受けたものであったことが認定されている。』と述べている(弁駁書5頁5行ないし16行)。
しかしながら、甲第19号証の審決は、本件とは全く事案を異にするものであり、何らの参考にはなり得ない。
そもそも上記審決において、請求人と日本における独占的ライセンシーとの関係は、親会社と子会社という経済的又は社会的に密接不可分の関係にあり、取引上は同一人と同視しうる関係にあるものである。
翻って、本件事案の場合は、請求人と審判外IBSイタリアーナ社は、親会社、子会社の関係ではないことはおろか、何らの資本関係、提携関係にもない全くの別会社である。そのため、上記審決における事案と本件事案とは全く別のものであって、これを引用して本件審判に適用しようとする請求人の主張は考慮に値しないといわざるを得ない。
なお、請求人は、「右審決においては、商標法第53条の2は『代理権を授与された代理人のみならず、商標権所有者と被請求人との間に契約或いは慣行上、信頼関係を形成する特別の関係にあるものをすべて包含して解釈されるべきである』ことも述べられている。」と述べている(弁駁書5頁16行ないし20行)。
しかし、当該部分は、審決において特許庁の判断として審示されていない(一方当事者の単なる希望的主張としては記載されている)ため、何らの参考にもなりえない。
また、請求人は、「本件においても、IBSイタリアーナの作成した報告書(甲第14号証)等から明らかなとおり、少なくとも請求人がIBSイタリアーナを介して日本への販売を行っていたことは明らかであり、また被請求人はIBSイタリアーナとの間の契約関係は明確に認めているものであるから、いずれにしても被請求人が請求人の代理人の関係にあったことは明らかである。」と述べている(弁駁書5頁21行ないし26行)。
上述のとおり、上記審決の事案と本件事案は全く異なるため、甲第19号証は何らの参考にならず、さらに、被請求人が請求人の代理人であったことを認めるに足る事実は何処にも見当たらない。
カ 請求人は、「請求人とIBSイタリアーナとの関係についていえば、甲第20号証の1ないし6において明らかなとおり、・・・・IBSイタリアーナを通じて被請求人に商標を使用した商品の独占的販売権を与えたものであることは明らかである。」と述べている(弁駁書6頁1行ないし9行)。
しかしながら、甲第20号証の1ないし6は、あくまで審判外IBSイタリアーナ社と請求人との関係を示すものであって、被請求人とは全く関係のない事実である。仮に、被請求人と請求人が契約関係にあるというのであれば、その当事者である被請求人と請求人とが直接連絡を取り合うのが通常である。そうであるにもかかわらず、請求人は審判外IBSイタリアーナ社と連絡を取り合う関係となっている。このこと、すなわち、甲第20号証の1ないし6から導き出される事実は、被請求人と請求人とが契約関係にないという事実である。
さらに、甲第20号証の1の日付は2006年6月30日、同じく甲第20号証の3は2006年11月22日、同じく甲第20号証の6は2007年4月15日であり(甲第20号証の2、甲第20号証の4及び甲第20号証の5は日付なし)、いずれも本件登録商標の登録出願日以降のものであるため、被請求人が請求人の代理人等であったことの証左にはなりえない。
キ 小括
以上に述べたとおり、甲第15号証の独占販売契約における当事者は被請求人と審判外IBSイタリアーナ社であり、請求人は単なる「立会人」であるか「製造者兼原料供給者」であるにすぎない。そのため、被請求人と請求人が甲第15号証の独占販売契約を締結した事実はない。
したがって、これらの事実から、被請求人が請求人の代理人等であるとはいえない。
(3)継続的契約関係について
ア 請求人は、「甲第15号証は当事者間の従来の契約関係を確認する意味で作成されたものであり、そのために契約書においても被請求人の独占的権利を『確認するためのもの』であるとの表現が使用されているのであって、実際の請求人と被請求人の契約関係はそれ以前から継続しているものである。」と述べている(弁駁書6頁15行ないし19行)。
請求人が主張するとおり、甲第15号証は、当事者間の従来の契約関係を確認する意味で作成されたものである。ただし、ここで言うところの「当事者」は被請求人と審判外IBSイタリアーナ社であって、「立会人」である請求人が含まれないことは、上述したとおりである。請求人は、あくまで「立会人」であり「製造者兼原料供給者」に過ぎない。また、請求人と被請求人の間には、出願日1年前の2004年5月12日以降現在に至るまで継続的な契約関係(実質的な取引関係)は一切ない。
イ 請求人は、「甲第4号証は、2004年4月28日の時点で請求人が請求人の商品の日本における販売について検討していたことを示すものであり、甲第5号証および甲第6号証は、IBSイタリアーナが日本への販売の窓口として請求人の商品を販売する計画について述べたものである。・・・・被請求人はかかる経緯の上で請求人の商品の販売代理人となったものである。」と述べている(弁駁書7頁3行ないし15行)。
しかしながら、先の答弁書(第一回)においても述べたとおり、甲第4号証ないし甲第6号証には、請求人の販売代理人として被請求人が選定された事実が全く見当たらず、そればかりか甲第6号証からは「いずれも日本でとても有名な大手企業」であるとして「明治屋」「片岡物産株式会社」「モンテ物産」という被請求人とは異なる他の企業名が記載されている。このことからも請求人の販売代理人として被請求人を選定すべく検討していた、という主張が事実に相反するものといわなければならない。
また、請求人は、「かかる経緯については甲第14号証の報告書において、・・・・被請求人が請求人の販売代理店として選定されていないというのであれば、被請求人がこのような契約解除の通知を送付するわけがない。被請求人の主張は客観的な証拠に相反するものである。」と述べている(弁駁書7頁19行ないし26行)。
しかしながら、甲第14号証は審判外IBSイタリアーナ社が作成したものであることに鑑みれば、甲第14号証中の「なぜ、イデア インターナショナル社と協力共同をしていく決意をしたか。」という項目は、審判外IBSイタリアーナ社が一方的に被請求人について言及するにとどまり、そこから、被請求人から請求人に対して、あるいは、請求人から被請求人に対して契約の「申込」をしたことを導き出すことはできない。なぜならば、被請求人・請求人間の継続的な取引関係は皆無だからである。さらに、甲第17号証が、被請求人が請求人の代理人等であったことの証左にはなりえないことは上述のとおりである。
ウ 請求人は、「甲第14号証のIBSイタリアーナによる報告書の2ページに『アグロナチュラ・ブランドの化粧品類(ビオリーブス、アントス、アグロナチュラ)』と記載されているとおり、IBSイタリアーナ自身が、上記商品が請求人のブランド商品であることを明確にしているものである。・・・また、後述のように、被請求人の作成にかかるパンフレットには、『ビオリーブス』商品は被請求人とIBSイタリアーナが共同で企画・開発した商品であるという主張とはまったく異なることが記載されており、被請求人の主張が信用できないものであることが明らかである。」と述べている(弁駁書8頁5行ないし20行)。
しかしながら、答弁書(第一回)における被請求人の主張と被請求人に係る商品パンフレット(甲第22号証)の記載は相反するものではない。
エ 請求人は、「イタリアの一地方の組合会社が、はるばる日本の会社に対していきなりこのような商品の送付による『売り込み』を行うことがあるだろうか。このようなことが起きるのは、両者にすでに提携関係が存在していたことの証左に他ならない。」と述べている(弁駁書8頁24行ないし9頁2行)。
しかし、この点については、現実の実質的取引関係は、被請求人と審判外IBSイタリアーナ社間にのみ存在するものであって、被請求人と請求人間には商品サンプルの発送及び受領という形式的な取引関係であって、実質的な取引関係などない。つまり、被請求人が請求人に対し商品サンプルの送付を依頼した事実がない以上、請求人による商品サンプルの送付行為は「契約に基づかない一方的な送付」であるといわざるを得ない。そのため、このような「契約に基づかない一方的な送付」行為のみで両者に「提携関係」があったものと判断できないことなど言うに及ばない。
オ 請求人は、「前述の甲第18号証の1ないし14は、請求人の商品の2005年から2007年にかけての送り状であるが、・・・・IBSイタリアーナと請求人との間においては、甲第4号証ないし7号証に示されるとおり、・・・・請求人と被請求人の間に継続的な契約関係が存在していたことが証明されるものである。」と述べている(弁駁書9頁7行ないし17行)。
しかしながら、かかる請求人の主張は論理の飛躍が著しく、採用されるべきではない。
さらに、上述のように、甲第18号証の1ないし14は、全て本件登録商標の登録出願日以降のものであるため、被請求人が請求人の代理人等であったことの証左となりえない。
さらに、甲第4号証ないし甲第6号証よりは、請求人の販売代理人として被請求人が選定された事実は全く見当たらず、単に請求人と審判外IBSイタリアーナ社とのやり取りを示すものに過ぎない。
カ 請求人は、「被請求人が使用していたパンフレット(甲第22号証。・・・・)には、以下のような記述が見られる。・・・・さらに、このパンフレットの6ページには、ビオリーブス社について・・・・『ビオリーブス』商品は被請求人とIBSイタリアーナが共同で企画・開発した商品である、という主張が事実に基づかないものであること、そして被請求人自身がそのパンフレットの中でそれを証明していることが明らかである。」と述べている(弁駁書9頁19行ないし11頁14行)。
しかしながら、答弁書(第一回)における被請求人の主張と被請求人に係る商品パンフレット(甲第22号証)の記載は相反するものではない。
答弁書(第一回)においても述べたように、「ビオリーブス」商品又は「アントス」商品について、その企画・開発を行ったのは被請求人と審判外IBSイタリアーナ社であり、その生産を行ったのは審判外ビオリーブス社又は審判外アントス社であり、請求人は、この「ビオリーブス」商品等に関する一連の行為には全く関与していない。
然るところ、甲第22号証については、この「ビオリーブス」商品又は「アントス」商品の生産者である審判外ビオリーブス社及び審判外アントス社を紹介することが趣旨であり、ここで請求人について言及したのは、審判外ビオリーブス社及び審判外アントス社が請求人の組合員であるために、追加的に記載したものである。そうであることを示すように、甲第22号証のどの箇所にも「請求人が『ビオリーブス』商品又は『アントス』商品の生産者である」旨の記載は存在しない。なぜなら、「ビオリーブス」商品又は「アントス」商品を生産した者は審判外ビオリーブス社及び審判外アントス社だからである。
キ 請求人は、「被請求人が販売していた『ブレンドハーブティー』の商品の包装(甲第23号証)には、『デメター・バイオダイナミック農法のアグロナチュラ農業協同組合農場にて土壌作りから一貫生産されるイタリアピエモンテ産100%ハーブ原料を使用しています。』との記載があり、・・・・かかる記載からしても、請求人と被請求人の間に継続的な取引関係があったことが明確である。」と述べている(弁駁書11頁16行ないし12頁8行)。
しかしながら、甲第23号証は、単に請求人の紹介記事にすぎず、かかる記載から被請求人と請求人が継続的な契約関係にあったということはできない。また、甲第24号証は、その「製造者」欄については、便宜上「Agronatura Coop」と表記したものであって、決して請求人との取引関係を認めたわけではない。このことは、請求人自身が何らの商品を製造していないことからも明らかである。そのため、かかる表記から被請求人と請求人が継続的な契約関係にあったということはできない。
ク 請求人は、「被請求人は、被請求人の過去のウェブサイトにおいて、明確に、請求人との関係について認めている。・・・・以上のとおり、被請求人自身のウェブサイトにおいて、被請求人自身が、被請求人が2005年1月ころには請求人と実質的な契約関係に入っており、その後2005年5月頃までには、請求人の商品の販売を行うという継続的な取引関係が構築されたことを明確に述べているのである。これは、2005年1月頃までには請求人と被請求人との間において継続的な取引関係が始まったことを明確に示すものである。」と述べている(弁駁書12頁10行ないし15頁21行)。
しかしながら、甲第29号証に係る被請求人ウェブサイト上の「2005年1月 伊アグロナチュラ農業組合と業務提携」との表記中の「伊アグロナチュラ農業組合」とは、正確には「ビオリーブス」商品や「アントス」商品を生産する請求人の組合員である審判外ビオリーブス社と審判外アントス社を意味するものであり、この2社との業務提携を意味するものであって請求人との業務提携を意味するものではない。そのことを証明するように、被請求人と請求人が2005年1月に業務提携を行ったという事実を示す証拠は何ら存在しない。仮に、被請求人と請求人が2005年1月に業務提携を行った事実を示す証拠が存在するのであれば、それを証拠として提出するよう求めるものである。
ケ 請求人は、「被請求人と請求人は、商品の使用等に関して、直接またはIBSイタリアーナを通じて連絡を取っていたものである。・・・・このように、被請求人と請求人は、商品の使用等に関して直接又はIBSイタリアーナを通じて連絡を取り合うなど、密接な関係にあったものである。」と述べている(弁駁書16頁2行ないし17頁2行)。
しかしながら、請求人による上記主張は不実に基づくものであって採用するに値しない。なぜならば、被請求人と請求人が直接やり取りしたことを示すメールは甲各号証のいずれにも存在しないからである。
さらに、甲第32号証及び甲第33号証をもって、被請求人と請求人が継続的な契約関係を締結していたことを示すものとはなりえない。なぜならば、甲第32号証に係るメールのやりとりは被請求人の従業員が審判外IBSイタリアーナ社の代表者であるトヨシマ氏に宛てて送ったものであり、請求人に転送されることを意図していないからである。このことは、被請求人の従業員の文面からは請求人を指し示すような文言が見当たらないことからも明らかである。
コ 請求人は、「甲第13号証に加え、上記の通りの請求人と被請求人の直接またはIBSイタリアーナを通じた独占的商品販売関係を見れば、当事者間では『東京』といえば被請求人のことを指すことは一目瞭然である。・・・・かかる議論が無意味であることは言うまでもない。」と述べている(弁駁書17頁6行ないし16行)。
しかしながら、甲第6号証から請求人が「明治屋」「片岡物産株式会社」「モンテ物産」等の他の企業を検討していたことが事実であることからすれば、「東京」が被請求人のことを指すことが一目瞭然であるとはいえない。
サ 請求人は、「被請求人のこのような説明は、多くの疑問を生む。まずそもそも、被請求人の言うように請求人の商品に関するものでないのであれば、・・・・これは、実際には、ビオリーブス商品が請求人の商品ラインであって、従って請求人に対して商品の販売戦略の説明をし、請求人の同意を得なければならなかったという点にのみ合理的な説明が求められるものである。」と述べている(弁駁書17頁21行ないし18頁9行)。
しかしながら、請求人自身は何らの商品をも生産していない。生産しているのは組合員である審判外ビオリーブス社であり審判外アントス社である。そのため、まず「ビオリーブス商品が請求人の商品ライン」などという事実はない。このように、他人の生産に係る商品を恰も自己が生産したかのように虚偽の事実を主張する請求人が信用できないことなど疑いの余地はない。また、前述したように、ウェブサイト中の「伊アグロナチュラ農業組合」との記載が、正確には審判外ビオリーブス社及び審判外アントス社を指し示すものであることに鑑みれば何らの矛盾などないことは明らかである。
シ 小括
以上に述べたとおり、被請求人と請求人は本件商標の登録出願日である2005年5月12日から2004年5月12日の間に継続的な契約関係があったと認められる事実は全く存在しない。
したがって、上記事実から、被請求人が請求人の「代理人若しくは代表者又は当該商標登録出願の日前一年以内に代理人若しくは代表者であった者」であるとはいえない。
(4)まとめ
以上のように、本件商標は我が国の商標法に違反して登録されたものでないことは明らかである。
第4 当審の判断
1 事実関係
(1)提出された証拠及び当事者の主張によれば、以下の各事実が認められる。なお、前記の本件に係る審決取消訴訟において、請求人が提出した乙第1号証ないし乙第14号証は、本件審決においては、甲第35号証ないし甲第48号証とし、被請求人が提出した甲第38号証ないし甲第59号証は、本件審決においては、乙第4号証ないし乙第25号証とした。
ア 被請求人は、平成7年11月30日、時計を中心とした商品の開発・販売を目的として設立された会社であり、ライフスタイル商品(時計・文具・家電・雑貨等)の企画開発・販売、OEM商品の企画開発、ギフトプレミアム商品の企画開発・販売を業としている。
被請求人は、平成17年5月、請求人(農業協同組合)の組合員であるビオリーブス社製の洗剤の販売を開始し、同年11月に、「アグロナチュラ」ブランドとして、シャンプーや石けん等の商品の販売を開始した。
なお、被請求人は、平成17年5月12日に本件商標出願をし、同年12月13日に登録査定を受け、平成18年2月10日に本件商標登録を受けたものである。
イ 被請求人の元社員であった手島大輔は、被請求人会社内において、2005年(平成17年)1月1日からは「新規事業開発室」で、同年8月1日からは「アグロナチュラ事業開発室」で、それぞれ室長として、アグロナチュラの商品開発からブランド戦略にわたる広範な業務を担当していた。
同人のブログ(甲第47号証)には、2004年(平成16年)12月ころ、(被請求人内で)アグロナチュラの話が出た際に、イタリアから届いた洗剤の大瓶や、謎のシャンプー、エッセンシャルオイル、蜂蜜、ハーブティーがあったことや、2005年(平成17年)1月には、被請求人において「新規事業開発室」との部署が発足し、アグロナチュラ事業を開始したことが記載されている。
ウ イタリアの会社であるIBSイタリアーナ社は、2005年(平成17年)1月ころ、日本人「トヨシママキオ」によって設立された(甲第46号証、乙第1号証)。
エ 請求人は、イタリア国所在の農業協同組合であって、1986年(昭和61年)10月ころ、薬用及び芳香族としての植物及びハーブ、エッセンシャルオイル、オレオリティー及びハーブ水、小型の果物、蜂蜜、その他の農作物の栽培、加工及びマーケティングを支援、増強、強化する目的で設立された。
請求人農業協同組合は継続的に拡大し、約100の農家(ビオリーブス社を含む。)を統合し、オーガニック及びバイオダイナミックの手法により、モンフェッラート及びランゲの谷間に広がる400ヘクタールを超える土地で、約40種の植物を栽培している。請求人は、研究施設において、農家により栽培、収穫及び加工されたハーブを、エッセンシャルオイルや乾燥ハーブに変えている。
オ 請求人は、1999年(平成11年)3月26日に、イタリア国において、請求人商標を出願し、2004年(平成16年)8月3日に商標登録されたほか、「Agronatura」の文字を含む商標の登録出願を多数行っている。
カ 平成17年5月2日付け日経MJ新聞(乙第19号証)には、「イデアインターナショナル、有機ハーブ製洗剤を輸入」のタイトルのもと、被請求人が、イタリアのビオリーブス社と販売代理店契約を締結した旨が記載されている。
キ 甲第15号証(「Exclusive Distributorship Agreement」[日本語訳「独占的販売契約」]と題する書面)には下記記載(ただし、日本語訳による)があるほか、被請求人がDistributor(訳:販売者)として、IBSイタリアーナ社及び請求人がCompany(訳:会社)としてそれぞれ署名している。このほか、同契約書添付の表には、同契約の対象となる「ビオリーブス」、「アントス」、「アグロナチュラ」との名前が付された各商品が列挙されている。

This agreement is to confirm that the exclusive right to IDEA INTERNATIONAL CO.,LTD.,01 of September,2005,on the following conditions:
Conditions:
1.Exclusivity Products:models listed a attached table
2.Exclusivity Territory:all countries except Italy
3.Duration:3 years from the first day of September,2005
This agreement shall be automatically renewed and continued thereafter on a year to year basis unless either party gives the other party at least 1 month prior written notice to terminate this Agreement before the expiration of the original term or any such extension of this Agreement.
4.Exclusive Transaction:the exclusive right to distribute products in Territory during the life
IN WITNESS WHEREOF,the parties hereto have caused this Agreement in English and duplicate to be signed by their duly authorized officers or representatives as of the date first above written.
Company:IBS Italiana s.a.s AGRONATURA
di Toyoshima Makio & C. Societa Cooperative Agricola
Via Mariscotti 66 Localita Bargagiolo
15011 Acqui Terme(AL) 15018 SPIGNO MONFERRATO AL
C/F.P/IVA 02067320065 C/F.P/IVA 01286190069
Distributor:IDEA INTERNATIONAL CO.,LTD.
(日本語訳)
「本契約は、イデアインターナショナルCO.,LTDの独占的権利を、下記の条件の下、2005年(審決注:平成17年)9月1日付けで確認するためのものである。」
「条件:
1.独占的商品:添付の表にリストされたモデル
2.独占地域:イタリアを除く全ての国
3.期間:2005年(審決注:平成17年)9月1日より3年間
本契約は自動的に更新され、いずれかの当事者が他方当事者に少なくとも本契約の本来の期間又は延長された期間の終期の1ヶ月前に書面により本契約を解除する通知を行わない限り、その後は一年ごとに継続する。
4.独占的取引:本地域において、一生、製品を販売する独占的権利」
ク 請求人から被請求人に宛てた2005年(平成17年)2月18日付けのエアウェイビル(AIR WAY BILL 航空貨物運送状、甲第9号証)には、商品として「ワイン及びバスグラス」、数量1、総量85.0kg、課金重量160kg、合計320(ユーロ)との記載がある。
また、請求人から被請求人に宛てた同年2月15日付けのインボイス(甲第10号証、ここには「All products is for samples/non commercial value」[訳:すべての製品はサンプル用]との記載がある。)には、以下の記載がある。


ケ 請求人からIBSイタリアーナ社宛ての2005年(平成17年)5月16日発行の請求書(甲第18号証の1)には「イデアインターナショナル社向けサンプルセット」(訳文)との記載があり,その数量は1、単価は2468.90(ユーロ)、金額2468.90(ユーロ)、付加価値税額493.78(ユーロ)、合計請求金額2962.68(ユーロ)と記載されている。
コ また、請求人が被請求人宛てに作成した2005年(平成17年)9月5日発行の請求書(甲第18号証の3)には、「ES ABAGELE 15★ 4 バス・エレガントConf.Gr.15★ 4 真空 ロットL26805D3」が3000個、単価1.52ユーロ、金額4560ユーロ、「ES ABAGBIM 15 ★4 バス・ベイビー-鎮痛作用Conf.Gr.15★4 真空 ロットL26805D2」が3000個、単価1.52ユーロ、金額4560ユーロ、「ES ABAGENE 15★4 バス・エネルギッシュConf.Gr.15★4 真空 ロットL26805D4」が3000個、単価1.52ユーロ、金額4560ユーロ、「ES ABAGRIN 15★4 バス・リフレッシャーConf.Gr.15★4 真空 ロットL26805D1」が3000個、単価1.52ユーロ、金額4560ユーロ、「ES ABAGRIL 15★4 バス・リラックスConf.Gr.15★4 真空 ロットL26805D」が3000個、単価1.52ユーロ、金額4560ユーロ、以上合計が22800(ユーロ)との記載がある。
サ 同様に、請求人が被請求人宛てに作成した2005年(平成17年)12月21日発行の請求書(甲第18号証の5)には,「ES ABAGELE 15★4 バス・エレガントConf.Gr.15★4 真空」が1500個、単価1.52ユーロ、金額2280ユーロ、「ES ABAGENE 15★4 バス・エネルギッシュConf.Gr.15★4 真空」が1500個、単価1.52ユーロ、金額2280ユーロ、「ES ABAGBIM 15★4 バス・ベイビーConf.Gr.15★4 真空」が1500個、単価1.52ユーロ、金額2280ユーロ、「ES ABAGRIN 15★4 バス・リフレッシャーConf.Gr.15★4 真空」が1500個、単価1.52ユーロ、金額2280ユーロ、「ES ABAGRIL 15★4 バス・リラックスConf.Gr.15★4 真空」が1500個、単価1.52ユーロ、金額2280ユーロ、以上合計が11400(ユーロ)との記載がある。
シ 請求人は、2006年(平成18年)6月ころ以降、2007年(平成19年)9月ころまでにかけて、IBSイタリアーナ社から、「アグロナチュラ」ブランド使用料等の名目で金を受領していた(甲第20号証の1ないし甲第20号証の6)。
ス 請求人は、2007年(平成19年)3月21日付けで、被請求人及びIBSイタリアーナ社に対し、被請求人が日本において本件商標を登録していることを知ったが、これはパリ条約に違反する行為であり、このような状態を解決するための会議を行うことを要請する旨の書面(甲第16号証)を送付した。
セ 被請求人は、請求人を含む関係者に対し、2005年(平成17年)9月1日付けの契約に関し、次の満了日である2007年(平成19年)8月31日で失効する旨の通知(甲第17号証)を送付した。
ソ 被請求人作成のパンフレット(甲第22号証)には、以下の記載がある。
・同パンフレットの1枚目左半分には、「IDEA INTERNATIONALCO.,LTD」との表示がある。
・同パンフレット1枚目の右半分(訳文による)には、「アグロナチュラ物語」として、請求人の概要等が記載されるとともに、「ビオリーブス社」及び「アントスコスメシ社」が紹介されている。
・同パンフレットの3枚目左半分には、「Agronatura ブランドの名の由来でもあるアグロナチュラ農業組合は、・・・組合直営工場および、組合員のビオリーブス社、アントスコスメシ社によって提供されるこれら製品は、原料の栽培(土壌づくり?収穫)から化粧品としての製品化に至るまで、すべて彼らの手により一貫生産されています。」との記載がある。
・同パンフレットの3枚目右半分には、「アグロナチュラ農業協同組合が、欧州連合加盟国を対象とした莫大な数の農業関係団体・組織のなかで、最も優秀な農業計画やそれらを実施した運営者を表彰する2006年欧州ベストアントレプレナー表彰対象7団体・組織の中の一つに選ばれました。」との記載がある。
・同パンフレットの3枚目の右下部分には、「アグロナチュラ社代表:ピエルカルロ・ダッピーノ」の表示、同人の署名及び写真と「アグロナチュラ創立者ダッピーノ氏」との表示がある。
・同パンフレット4枚目の右部分に、「私たちビオリーブス社は、1973年の創業以来、アグロナチュラ農業組合の組合員のひとつとして、ハーブ原料の栽培と化粧品・洗剤の研究開発から生産までを一貫して行っています。」との記載がある。
・同パンフレット5枚目の左半分に、「私たちアントス・コスメシ社は、数百年にわたる有機養蜂業で培った豊富な知識をもとに、1968年からハチミツ・プロポリス・ポーレン花粉・蜜蝋など、高品質な天然原料を用いた化粧品の研究・開発・製造を一貫して行っています。」との記載がある。
・同パンフレットの8枚目以降には、シャンプー、コンディショナー、ボディーソープ、ハンドソープ、入浴剤、はみがき、ハンドクリーム、ポケットレメディー、リップクリーム、ハーブブレンドティー、アロマウォーター、蜜ロウクリーム、蜜ロウアロマキャンドル、住居用多目的洗剤及び食器用洗剤等が、「bio Leaves」、「Antos Cosmesi」や「Agronatura」標章の下で紹介されている。
なお、「bio Leaves」ないし「Antos Cosmesi」標章が付されている商品についても、商品(ボトル等)の下方に「Agronatura」の表示が存在する。
タ アメリカの非営利団体「インターネット・アーカイブ」が提供している「ウェイバックマシン」という名称のデータ閲覧サービスにおいて、2006年(平成18年)2月3日にデータが収集され、記録された被請求人の会社案内に関するウェブページ(甲第29号証)上、「沿革」欄には、「2005年[審決注:平成17年]1月伊アグロナチュラ農業組合と業務提携」、「2005年[審決注:平成17年]5月伊アグロナチュラ農業組合とのコラボレーションにより『ビオリーブス』洗剤の発売」との各記載がある。
このほか,2006年(平成18年)2月10日時点での被請求人のウェブページ(甲第31号証)上、アグロナチュラ農業組合(請求人)について詳細な説明があるほか、請求人代表者のピエルカルロ・ダッピーノの大きな写真や同人の署名、メッセージ等の記載がある。なお、2005年(平成17年)7月17日時点でも、これらの記載(請求人についての詳細な説明や、請求人代表者の写真、メッセージ等)は、被請求人が有する、「http://www.bioleaves.jp」とのアドレスのウェブページ上に存在していた(甲第41号証、甲第42号証)。
チ 甲第30号証(平成18年2月3日に収集され記録された被請求人の会社案内に関するウェブページ)には、「ご挨拶」の見出しのもと、アグロナチュラボディケアシリーズに関する記載があり、その中に、「さて、弊社は元々インテリアを扱う会社ですが・・・」「約1年の開発の期間を経て、世に出る今回のシリーズは、この取り組みの第一弾となります。」「このプロジェクトのきっかけは私たちのパートナーである日本人家族が大きなリスクを取ってイタリアピエモンテ州のアクイテルメ市に引っ越し、アグロナチュラ農業組合に入ったことによるものです。」との各記載があり、文末には「株式会社イデアインターナショナル アグロナチュラ事業開発室 手島 大輔」との記載がある。
(2)請求人と被請求人の関係について
前記認定事実によれば、日本法人である被請求人は、平成17年1月ころから、イタリア法人である請求人農業協同組合の収穫するハーブ等を製品化し日本等で販売する計画を立ち上げ、同年2月ころから商品サンプルを購入して検討を重ね、同年9月1日付けでIBSイタリアーナ社及び請求人との間で独占的販売契約(Exclusive Distributorship Agreement)を締結し、そのころから被請求人は、請求人から大量の商品を購入するようになった。
しかし、平成19年3月21日ころ、請求人が被請求人に対し、平成18年2月10日に登録された本件商標はパリ条約に違反する旨の警告文を送付したこと等を契機として、平成19年8月31日の1か月前ころ、被請求人が請求人に対し平成17年9月1日付けの契約関係を終了させる旨の通知をしたことが認められる。
(3)前記認定事実の本件への当てはめ
商標法53条の2は、「登録商標がパリ条約の同盟国、世界貿易機関の加盟国若しくは商標法条約の締結国において商標に関する権利(商標権に相当する権利に限る。)を有する者の当該権利に係る商標又はこれに類似する商標であって当該権利に係る商品若しくは役務又はこれらに類似する商品若しくは役務を指定商品又は指定役務とするものであり、かつ、その商標登録出願が、正当な理由がないのに、その商標に関する権利を有する者の承諾を得ないでその代理人若しくは代表者又は当該商標登録出願の日前1年以内に代理人若しくは代表者であった者によってされたものであるときは、その商標に関する権利を有する者は、当該商標登録を取り消すことについて審判を請求することができる。」と規定するところ、同条が本件に適用されるためには、前記認定事実に係る本件に即していうならば、本件商標登録出願がなされた平成17年5月12日の1年前である平成16年5月12日から平成17年5月12日までの間に被請求人が請求人の「代理人」であったことが必要となる。
しかしながら、前記のとおり、被請求人は本件商標登録出願後3か月余を経過した平成17年9月1日付けで請求人との間で独占的販売契約(Exclusive Distributorship Agreement)を締結して、被請求人が何らかの意味で請求人の代理人となったことは認められるものの、それ以前は、請求人から顧客として商品サンプルを購入して上記契約を締結するかどうかを検討する期間であったと認めることができる(被請求人が請求人から商品を業として大量に購入するようになったのは、前記のとおり上記契約締結後である)。
確かに、被請求人は,自らの会社案内に関するウェブページの「沿革」欄に、平成17年1月に請求人と業務提携をした旨記載している(甲第29号証)が、他方、平成17年5月2日付けの日経MJ新聞(乙第19号証)では、被請求人とビオリーブス社(審決注:請求人ではない)が販売代理店契約を締結した旨記載されていて、ウェブページ上の「請求人との業務提携」との記載が誤りであったとみる余地もあり、その他前記の事実関係に照らすと、上記ウェブページの記載は、被請求人が請求人の「代理人」となったのは平成17年9月1日以降であるとする前記認定を左右するものではない。
そうすると、本件商標登録出願がなされた平成17年5月12日より1年前以内に被請求人は、請求人の「代理人」であったということはできない。
4 まとめ
以上のとおり、被請求人は、商標法第53条の2にいう「代理人若しくは代表者又は当該商標登録出願の日前一年以内に代理人若しくは代表者であつた者」に該当しないから、同規定のその他の要件を検討するまでもなく、本件商標の登録は、商標法第53条の2の規定により、登録を取り消すべきものではない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 【別記】

審理終結日 2009-04-21 
結審通知日 2009-05-07 
審決日 2011-10-28 
出願番号 商願2005-41519(T2005-41519) 
審決分類 T 1 31・ 6- Y (Y03052530)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小川 敏 
特許庁審判長 水茎 弥
特許庁審判官 内田 直樹
前山 るり子
登録日 2006-02-10 
登録番号 商標登録第4927377号(T4927377) 
商標の称呼 アグロナチュラ 
代理人 内藤 通彦 
代理人 達野 大輔 
代理人 橘 哲男 
代理人 大野 聖二 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ