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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) Y11
管理番号 1328029 
審判番号 取消2015-300154 
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2017-06-30 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2015-03-03 
確定日 2017-05-01 
事件の表示 上記当事者間の登録第4874540号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第4874540号商標の指定商品中、第11類「ガス湯沸かし器,乾燥装置,換熱器,蒸煮装置,蒸発装置,蒸留装置,熱交換器,太陽熱利用温水器,浄水装置,業務用衣類乾燥機,家庭用浄水器」についての商標登録を取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4874540号商標(以下「本件商標」という。)は、「ぬくもり」の平仮名と「ヌクモリ」の片仮名を上下二段に書してなり、平成16年9月22日に登録出願、第11類「電球類及び照明用器具,あんどん,ガスランプ,石油ランプ,ちょうちん,ほや,工業用炉,原子炉,ガス湯沸かし器,業務用揚物器,業務用炊飯器,業務用電磁調理器,業務用煮炊釜,業務用焼物器,業務用レンジ,業務用食器乾燥機,冷凍機械器具,アイスボックス,氷冷蔵庫,飼料乾燥装置,牛乳殺菌機,乾燥装置,換熱器,蒸煮装置,蒸発装置,蒸留装置,熱交換器,美容院用又は理髪店用の機械器具(いすを除く。),太陽熱利用温水器,浄水装置,業務用衣類乾燥機,家庭用浄水器,水道蛇口用座金,水道蛇口用ワッシャー,汚水浄化槽,家庭用汚水浄化槽,家庭用し尿処理槽,業務用ごみ焼却炉,家庭用ごみ焼却炉,し尿処理槽,洗浄機能付き便座,洗面所用消毒剤ディスペンサー,便器,和式便器用いす,あんか,かいろ,かいろ灰,化学物質を充てんした保温保冷具,湯たんぽ」を指定商品として、同17年6月24日に設定登録され、その後、同27年6月2日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
そして、本件審判の請求の登録は、平成27年3月18日にされたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第10号証(枝番を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中、第11類「ガス湯沸かし器,乾燥装置,換熱器,蒸煮装置,蒸発装置,蒸留装置,熱交換器,太陽熱利用温水器,浄水装置,業務用衣類乾燥機,家庭用浄水器」について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)要約
被請求人は答弁書において縷々述べるが、その主張内容は、要するに、「(a)乙第1号証に掲載の暖房機器(以下「使用商品」という。)が、本件商標の指定商品「換熱器」に含まれる。」及び「(b)かかる「換熱器」に含まれる使用商品について本件商標を付していたことが、本審判の『請求の登録前三年以内に日本国内において・・・請求に係る指定商品・・・について登録商標の使用をしている。』(商標法第50条第2項本文)に該当する。」というものである。
しかしながら、使用商品は「換熱器」に該当するものではなく、乙第1号証は本件商標をその指定商品について使用した証拠とはなり得ないから、被請求人の主張は成り立たない。
(2)使用商品の位置付け(被請求人主張(a)について)
被請求人は、使用商品が本件商標の指定商品である「換熱器」に含まれると主張する。しかしながら、これは独自の見解にすぎず、商品の位置付けとしては全くの誤りである。
ア 使用商品は電気式の暖房装置であること
使用商品は、乙第1号証の説明書きに「快適暖房」、「静かなファンの働きで風を感じない快適な暖房です」、「ご家庭のコンセントに差し込むだけで簡単に使える100Vタイプで登場!」、「住まう人の健康を考える、新時代の暖房機器」などの記載があるように、電気式の暖房機器である。
そして、電気式の暖房機器は、類似商品役務審査基準(特許庁商標課編)によれば、第11類「家庭用電熱用品類」に含まれるか、又は第11類「暖冷房装置」と「家庭用電熱用品類」に含まれるかの何れかである(甲2)。この位置付けは過去の版においても変わりはない(甲3)。
よって、使用商品は、「家庭用電熱用品類」、又は「暖冷房装置」と「家庭用電熱用品類」に含まれる商品ではあっても、「換熱器」に含まれる商品ではない。
イ 「換熱器」の意味
被請求人が「『換熱器』とは、熱エネルギーを交換する道具を意味すると解釈できる。」と主張するので、これについて付言する。
「換熱器」及びこれと同じ短冊に属する「乾燥装置,蒸煮装置,蒸発装置,蒸留装置,熱交換器」は、特許庁商標課編「商品及び役務の区分解説〔国際分類第9版対応〕」(甲4)によれば、「ここに含まれる商品は、化学的製品を製造する際に専ら使用される装置及び機械の一部を機能、構造に着目しながらまとめたものである。」とあるように、あくまで化学的製品の製造に用いられるものである。
よって、同じ短冊に含まれる「換熱器」も化学的製品の製造用途の商品を指すのであり、家庭で用いる暖房装置を含むものではない。
ウ 小括
以上より、使用商品は、電気式の暖房装置として「家庭用電熱用品類」又は「暖冷房装置」に含まれるのであり、被請求人が主張するような「換熱器」に含まれることはない。
(3)使用商品に本件商標の使用をしても本審判では無意味であること(被請求人主張(b)について)
上記のように、使用商品は、第11類「家庭用電熱用品類」又は第11類「暖冷房装置」と「家庭用電熱用品類」に含まれる商品であるが、これらの「家庭用電熱用品類」及び「暖冷房装置」は本件商標における指定商品ではない。ましてや、本審判において登録の取消を請求した指定商品でもない。
そのため、乙第1号証は、本件商標をその指定商品ではない商品に使用していることを示すのみであり、本審判において何ら意味をなさない。被請求人が使用商品について本件商標の使用をしても、商標法第50条による商標登録の取消を免れるための要件である本審判の「請求の登録前三年以内に日本国内において・・・請求に係る指定商品・・・について登録商標の使用をしている」(商標法第50条第2項本文)を満たすものではない。
3 口頭審理における陳述及びその後の上申による主張
(1)被請求人は、請求人が甲第4号証の区分解説に基づいてした「換熱器」の意義の解釈に対して、該号証には証拠能力がないとし、最高裁平成21年(行ヒ)第217号同23年12月20日第三小法廷判決(民集65巻9号3568頁、甲5)の判示内容を踏まえて解釈すべきと主張する。
しかしながら、甲第4号証は、既に一般に頒布された書籍であり、作成や取得の過程に違法行為がある等の事情も存在しないから、証拠能力は否定されない。被請求人の主張が「証拠力」が低いという意味であるとしても、争点である「換熱器」及びこれと並んで掲載されている「乾燥装置,蒸煮装置,蒸発装置,蒸留装置,熱交換器」の解説は、本件商標の登録出願日よりもはるか以前に出版された版から変更されていない(甲6)から、甲第4号証は十分な証拠力を有している。なお、発行日が本件商標の登録出願日前である平成15年10月29日発行の特許庁商標課編「商品及び役務の区分解説〔国際分類第8版対応〕」(甲7)を提出する。
また、上記判例を引用する被請求人自身が該判例に従った意義の解釈を行っていない。該判例では「商標法施行規則別表において定められた商品及び役務の意義は、商標法施行令別表の区分に付された名称、商標法施行規則別表において当該区分に属するものとされた商品又は役務の内容や性質、国際分類を構成する類別表注釈において示された商品又は役務についての説明、類似商品・役務審査基準における類似群の同一性などを参酌して解釈するのが相当である」と判示し、省令別表及び類似商品・役務審査基準で並んで定められた役務と対比した意義解釈を行っている。
これに対し、被請求人は、商標法施行規則別表、商標法施行令別表、国際分類を構成する類別表注釈は参照するものの、これらに用途の制限がないことのみを強調し、省令別表及び類似商品・役務審査基準において並んで定められている商品同士の対比は一切行っていない。それどころか特許庁が正式に作成している解説を無視し、広辞苑等の辞書の記載を基にして独自に意味を解釈しているのであり、自己矛盾している。
そもそも、国際分類の注釈や商標法施行規則別表、商標法施行令別表を踏まえて類似商品・役務審査基準を作成した特許庁自身が策定した区分解説が存在しているのであるから、区分解説が商品・役務の意義解釈に重要な意味を持つことは明らかである。この区分解説に解説されていない事項については、上記判例に則した意義解釈が必要といえるが、「換熱器」については区分解説に解説されており、本件はその解説内容で十分判断可能である。
仮に、上記判例に則して意義を解釈するとしても、商標法施行規則別表、商標法施行令別表、国際分類を構成する類別表注釈のみならず類似商品・役務審査基準を参照すると、類似商品・役務審査基準における同一類似群の商品との対比によって、「換熱器」が工業用途であることは明らかである。
よって、「換熱器」は、化学的製品の製造用途の商品を指すのであり、家庭用の機器や暖房装置を含むものではない。
(2)被請求人は、平成28年12月12日公布の経済産業省令第百九号での商標法施行規則別表の改正に伴う類似商品・役務審査基準の改定で、これまでの「換熱器」の記載が「化学製品製造用換熱器」と表示変更されたことを挙げ、従来の「換熱器」には「化学製品製造用」という用途のみならず他の用途に使用されるものも含むことを理由に、使用商品が「換熱器」に含まれる旨主張する。
しかしながら、商標法施行規則別表の改定及び類似商品・役務審査基準の表示変更により、「換熱器」の記載は「化学製品製造用換熱器」に変わっているが、これは用途を限定したものではない。甲第4号証、甲第6号証及び甲第7号証に記載のように、これまで一貫して「換熱器」は「化学的製品を製造する際に専ら使用されるもの」とされてきたのであるから、単にこれまでの解釈を商品の名称として明示したにすぎず、商品の範囲を変更するものではない。
また、「換熱器」は、審査基準の表示変更前である国際分類第9版の時点における商品・役務名の英訳が「Recuperators [for chemical processing]」となっており(甲8)、化学処理用、つまり化学的製品製造目的であったことが裏付けられる。「for chemical processing」と付されていることから、家庭用が含まれないことは当然であるが、そもそも「Recuperators(レキュペレータ)」は「工業炉の熱効率を高める目的で、その高温排ガスから空気側に熱回収して、空気を予熱する熱交換装置。」(甲9)や「工業炉や高温の排ガスが発生する燃焼システムや工業プロセスの廃熱回収熱交換器」(甲10)を指しており、家庭用などあり得ない装置である。これに対し、被請求人の使用商品は、乙第1号証及び乙第8号証に明示されているとおり、家庭用の暖房機器にすぎないから、レキュペレータとは異なる。
したがって、被請求人の使用商品は、指定商品「換熱器」には該当しないことは明らかである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第16号証(枝番を含む。)を提出した。
1 本件商標の使用について
(1)被請求人が本件商標を使用していることについて
被請求人は、本件商標と社会通念上同一の商標である「ぬくもり」(以下「使用商標」という。)を、現に使用している(乙1)。
よって、以下のとおり、本件商標の使用をしていると認められるべきである。
ア 本件商標の構成について
本件商標は、二段併記商標であり、上段に平仮名で表記した「ぬくもり」との語を記載し、下段に片仮名で表記した「ヌクモリ」との語を記載した構成である。
「ぬくもり」及び「ヌクモリ」は、それぞれ「温もり」との語を平仮名表記及び片仮名表記したものであり、共に「あたたかみ。ぬくみ。」との観念を生ずる。よって、本件商標の上段及び下段の各部は観念を同一とする。
したがって、本件商標の上段部又は下段部の一方の使用は、本件商標の使用と認められるべきである。
イ 被請求人が使用する商標について
被請求人が使用する商標は、平仮名表記の「ぬくもり」である。本件商標の構成と、使用商標の構成とを対比すると、本件商標の上段部と使用商標とは、平仮名で「ぬくもり」と表記している点で一致するが、使用している書体が互いに異なる点で相違する。
しかしながら、本件商標の上段部と使用商標とは、共に平仮名で「ぬくもり」と表記しており、両者から生ずる称呼及び観念が同一であることは明らかであるから、使用商標の使用は、本件商標の上段部の使用と認められるべきである。
そして、本件商標の上段部の使用は、本件商標の使用と認められるべきであるから、使用商標の使用は、本件商標の使用と認められるべきである。
以上のように、被請求人による使用商標の使用は、本件商標の使用であると認められるべきである。
(2)本件商標を指定商品について使用していることについて
被請求人は、本件審判請求に係る指定商品である「ガス湯沸かし器,乾燥装置,換熱器,蒸煮装置,蒸発装置,蒸留装置,熱交換器,太陽熱利用温水器,浄水装置,業務用衣類乾燥機,家庭用浄水器」(第11類)中の「換熱器」について、本件商標を使用している。
ア 指定商品「換熱器」について
「換熱」及び「換熱器」との語は、辞書には掲載された語ではなく(乙2)、意味が確立されてはいない。
したがって、構成する各文字「換」、「熱」、「器」の意味より、「換熱器」全体の意味を解釈する必要がある。
(ア)「換える」とは、広辞苑によれば、「(a)事物を互いに入れちがわせる。(a-1)入れちがわせる。交互にさせる。(a-2)それを取り除き別のものにする。交換する。とりかえる。(a-3)交代させる。代わりをさせる。(a-4)一椀の飯を残らず食べてまた新しくよそう。おわかりする。(a-5)古い水をかい出して新しい水を入れる。(b)事物の状態・質をそれまでと異なったものにする。(b-1)変化させる。(b-2)時間・場所などを前と別にする。」との意味を持つ。
(イ)「熱」とは、広辞苑によれば、「(a)あついこと。あつさ。(b)「熱エネルギー」参照。(c)物をあたため、また、焼く力。(d)体温。また、病気などで平常より体温の高まること。(e)物事に心を集中すること。1つのことにうちこむこと。夢中になること。(f)しつこいこと。執念深いこと。」との意味を持つ。
(ウ)上記(イ)(b)で参照されている「熱エネルギー」とは、広辞苑によれば、「エネルギーの一形態。熱平衡にある系において、個々の原子・分子の熱運動のエネルギーの形で存在する。熱エネルギーを単に熱ということが多いが、正しくはエネルギーの出入りの一形態が熱である。」との意味を持つ。
(エ)「器」とは、広辞苑によれば、「(a)うつわ。いれもの。道具。(b)器世界の略。」との意味を持つ。
(オ)以上のことを総合すれば、「換熱器」とは、「熱エネルギー」を「交換する」「道具」を意味すると解釈できる。
イ 被請求人が本件商標を使用している商品について
被請求人は、蓄熱体を備える暖房装置に本件商標を付したものを製造し、販売している(乙1)。
乙第1号証の「蓄熱体の構造」との欄には、以下の説明文が記載してある。
「ぬくもりは、割安な深夜電力で本体内部の蓄熱体である高密度レンガを夜間に暖めます。この夜の間に蓄えられた熱を、幅射とファンにより翌日の暖房に使用する、環境を考えた暖房機器です。」
さらに、当該説明文の下には、図(蓄熱体の構造の図)が記載されている。
上記説明文及び図を考慮すれば、使用商品は深夜電力でヒーターを加熱し、その熱を蓄熱体に蓄えるものである。そして、蓄熱体に蓄えた熱により、取り入れた空気を暖め、温風として吹き出すものである。
使用商品は、蓄熱体を介し、ヒーターで発生した熱で空気を暖めるものである。すなわち、ヒーターと空気との間で、「熱エネルギー」を「交換する」「道具」であるから、上記アより、使用商品は「換熱器」に該当する。
したがって、被請求人は、本件商標を指定商品「換熱器」について、使用している。
(3)本件審判の請求の登録前三年以内に日本国内で使用したことについて
被請求人が、本件商標を、指定商品「換熱器」について使用していることは、上述したとおりである。
カタログ(乙1)には、印刷された日付等は表示されていないが、次に示すように、早くとも平成24年7月2日以降に作成され、日本国内において配布されたものである。
ア カタログ記載の被請求人の所在地について
カタログには、製造元として、被請求人の社名及び所在地が記載されている。その所在地は、被請求人の本店住所である「東京都世田谷区」である。
イ 被請求人の本店移転について
被請求人は、以前、本店を東京都千代田区に置いていた。現在の東京都世田谷区に本店を移転したのは、平成24年7月2日である(乙3)。
ウ カタログの作成日時について
カタログは営業活動上、重要不可欠なツールであり、常に切らさぬように手配するのが通常である。そのため、本店を移転し、カタログの所在地の記載変更が必要な場合であっても、移転時には旧所在地を記載したカタログが一定部数残っており、それらに記載を変更したシールを貼るなどして記載を改め、配布していたと考えるのが通常である。そして、旧所在地を記載したカタログの残り部数が少なくなった後に、移転後の所在地を記載したカタログを手配するのが通常である。
してみれば、上記カタログは、早くとも、被請求人が本店を移転した平成24年7月2日以降に印刷され、使用開始されたと認定するのがもっとも妥当である。
エ 本件審判の請求の登録前三年以内であること
本件審判の請求の予告登録日は、平成27年3月18日であり、その3年前は、平成24年3月18日である。上述したように、カタログが印刷され、使用開始されたのは、早くとも平成24年7月以降であるから、被請求人は、審判の請求の登録前3年以内にカタログを使用したことになる。
そして、日本語のカタログは日本国内の消費者等に向けて配布されるのが通常である。
以上のことから、被請求人は、本件商標を指定商品「換熱器」について、審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において使用したことは明らかである。
2 請求人の弁駁に対して
(1)使用商品は「換熱器」に含まれること
ア 指定商品の意義の解釈について
請求人は、使用商品が「換熱器」に含まれないとの主張の根拠として、特許庁商標課編「商品及び役務の区分解説〔国際分類第9版対応〕」(甲4)を商品の意義の解釈のために、どのように位置付けられるのか述べていない。
被請求人は、商標法施行規則別表において定められた商品又は役務の意義についてから主張する。
判例は、「商標法施行規則別表において定められた商品及び役務の意義は、商標法施行令別表の区分に付された名称、商標法施行規則別表において当該区分に属するものとされた商品又は役務の内容や性質、国際分類を構成する類別表注釈において示された商品又は役務についての説明、類似商品・役務審査基準における類似群の同一性などを参酌して解釈するのが相当であるということができる。」(前出甲5:最高裁平成21年(行ヒ)第217号同23年12月20日第三小法廷判決)と判示している。
また、上記判例は、「本件指定役務は、本件商標登録出願時に施行されていた商標法施行規則別表(平成13年経済産業省令第202号による改正前のもの。)第35類3に定める「商品の販売に関する情報の提供」を意味するものと解される」と判示しているから、指定商品の意義について解釈するにあたっての判断基準日は、商標登録出願時である。
イ 区分解説(甲4)は証拠能力を持たないことについて
「商標法施行規則別表」、「国際分類を構成する類別表注釈」、「類似商品・役務審査基準」を参酌もせずに区分解説のみを引用しての請求人の主張は、暴論といわざるを得ない。しかも、その根拠とする甲第4号証は、平成19年11月30日発行であり、本件商標登録出願の出願日である平成16年9月22日以後に発行されたものであり、証拠能力はない。
ウ 法令での「換熱器」の定義について
本件商標に係る指定商品「換熱器」は、本件商標登録出願時に施行されていた商標法施行令別表(平成13年政令第265号により改正されたもの。乙4)において、第11類に属し、商標法施行規則別表(平成13年経済産業省令第202号により改正されたもの。乙5)の第11類13に定める「換熱器」を意味すると解すべきである。
エ 「換熱器」の用途を限定すべきではないこと
上記省令別表の規定によれば、「換熱器」を含む第11類13では、いずれの商品にも「家庭用」、「工業用」、「業務用」といった用途に関する記載はない。また、国際分類を構成する類別表注釈(乙6の1・2)にも、上記のような用途の記載はない。したがって、「換熱器」は、化学的製品の製造用途の商品を指すのであり、家庭で用いる商品を含まないとの請求人の主張は認められない。
なお、区分解説(甲4)が証拠力を持ったと仮定しても、「換熱器」は家庭で用いる商品を含まないとの請求人の主張は認められない。区分解説によれば、「ここに含まれる商品は、化学的製品を製造する際に専ら使用される装置及び機械の一部を機能、構造に着目しながらまとめたものである。」とある。すなわち、「専ら使用される」とあるから、「化学的製品を製造する際に使用される装置及び機械の一部」のみに限定し、「家庭で用いる商品」を完全に排除しているのではない。
オ 「換熱器」の意味について
上記アで述べた判断基準日に鑑みれば、「換熱器」の意味を解釈する根拠とした乙第2号証は証拠能力を持たないから、乙第2号証の1(広辞苑第五版の抜粋(写し))により、乙第2号証を補完する。広辞苑第五版の発行日は、平成10年(1998年)11月11日であり、本件商標登録出願の出願日である平成16年9月22日以前に発行されたものである。
以上のように、上記1(2)アのとおり、「換熱器」の意味は、本件商標の登録出願の出願日においても妥当な主張である。
(2)使用商品と「家庭用電熱用品類」、「暖冷房装置」について
ア 「暖冷房装置」について
使用商品は、乙第1号証で示したように、「暖冷房装置」である。すなわち、使用商品は「換熱器」を暖房装置として構成したものといえる。一方、省令別表第11類14の「暖冷房装置」には、「温気暖房装置」、「温水暖房装置」、「蒸気暖房装置」が含まれ、熱源は問わずに「暖房装置」は含まれると解される。このことから、「換熱器」を「暖房装置」として構成した使用商品は、第11類14の「暖冷房装置」にも含まれるともいえる。
イ 「家庭用電熱用品類」について
使用商品は、乙第1号証で示したように、換熱器に熱を蓄える際に、電気を使用する。また、使用商品は、一般家庭で使用されることを想定し、換熱器に蓄えた熱を放出する装置である。一方、省令別表第11類19の「家庭用電熱用品類」には、「電気カーペット」、「電気ストーブ」、「電気火鉢」などが含まれ、「家庭用」であって、「電気」により「熱を放出させる」商品が含まれると考えられる。このことから、一般「家庭」で「使用」されることを想定し、「電気」より蓄えた「熱を放出させる」使用商品は、「家庭用電熱用品類」にも含まれるともいえる。
ウ 小括
以上のように、使用商品は、「暖冷房装置」及び「家庭用電熱用品類」にも含まれるともいえる。しかしながら、そうであるとしても、使用商品は「換熱器」に含まれないことを示したことにはならない。
3 口頭審理における陳述及びその後の上申による主張
(1)乙第1号証の作成日について
ア 乙第7号証は、建設業法第3条第1項の規定による許可通知である。被請求人は、平成26年5月8日に東京都知事に建設業の許可を受けた。その許可番号は、「東京都知事 許可(般-26)第1412535号」である。
乙第1号証に記載した許可番号は、「国土交通大臣許可 第9900号」であり、東京都知事による許可番号と異なっている。
建設業法第3条第3項によれば、許可の期間は5年間である。したがって、乙第7号証による許可期間の前期間は、平成21年5月8日から同26年5月7日までとなる。乙第1号証は、平成24年7月2日以降に作成されたものであることから、建築業の許可の前期間である平成21年5月8日から同26年5月7日までの間に作成されたことは明らかである。そして、記載の許可番号が平成26年5月8日に受けた番号と異なる点も裏付けとなる。
以上を総合すれば、乙第1号証が作成された平成24年7月2日以降、同26年5月7日以前であるから、乙第1号証の作成日は、本件審判請求の登録前3年以内に含まれる。
イ 乙第8号証は、「使用商品」の取扱説明書及び保証書である。保証書の右下には「2012.10」と記されている。これは、乙第8号証が2012年10月、すなわち平成24年10月に作成されたことを示している。
平成24年10月は、本件審判請求の登録前3年以内に含まれる。
(2)「換熱器」の意義解釈について
ア 請求人は、被請求人が「類似商品・役務審査基準」及び「商品及び役務の区分解説」を無視し指定商品「換熱器」の意義を解釈した旨主張するが、それらを無視はしていない。
区分解説によれば、「換熱器」は「化学的製品を製造する際に専ら使用される装置及び機械の一部を・・・」であり、「家庭用機器」が含まれないことは明記されていない。「3 工業用炉」についての解説には、「家庭用炉、例えば、『暖炉』は本類5火鉢類に、『天火』は本類8加熱器に含まれ、この概念には属さない」と記載されている。また、同「9 冷凍機械器具」についての解説には、「主として家庭において用いられるものは、本類14家庭用電熱用品類に属する」と記載されている。以上のことから、「換熱器」が「家庭用機器」を含まないとすれば、審査基準又は区分解説にその旨が明記されているはずであり、また、「専ら」という修飾語も使用されないはずである。
したがって、「換熱器」は工業用途の商品であると断定する請求人の主張は誤りである。
イ 区分解説によれば、「換熱器」と並んで定められている商品には「熱交換器」がある。同様な記載が審査基準にもあるものと推認し、「熱交換器」が工業用途の商品に限定され、家庭用のものは含まないのか検討する。
東京ガス株式会社等が開発した「家庭用」高効率給湯暖房用熱源機には、「熱交換器」が搭載されている(乙9)。高木産業株式会社が発売する高効率「家庭用」ガス給湯器には、単一「熱交換器」が搭載されている(乙10)。昭和電工株式会社は直冷式「家庭用」冷蔵庫向けに「熱交換器」を販売している(乙11)。以上のことから、「熱交換器」は工業用途の商品に限定されず、「家庭用」機器にも搭載されるものであることは明らかである。
したがって、「熱交換器」と並んで定められている「熱交換器」についても、工業用途の商品に限定されず、「家庭用」機器も含まれることはいうまでもない。
ウ 平成28年12月12日付け経済産業省令第109号が公布され、商標法施行規則が改正された。また、類似商品・役務審査基準も改定された。
該省令によれば、商標法施行規則別表中、従来の「換熱器」と表示されていたものが、「化学製品製造用換熱器」と変更された(乙12、乙13)。
また、審査基準の改定により、第11類「暖冷房装置」(09E11)が「業務用暖冷房装置」に変更された(乙15)。注釈として、「用途限定のない『暖冷房装置』の類似群は、09E11、11A06、20A02と成りますので、必ず用途を明示して下さい。」とある。すなわち、「暖冷房装置」の記載では、「業務用暖冷房装置」以外に「家庭用暖冷房装置」を含まれると解釈が可能であり、表示が不明確となるそのため、表示を明確にするために、用途を限定する「業務用」を付加したものである。
「換熱器」を「化学製品製造用換熱器」と表示変更するのは、用途を限定する「化学製品製造用」を付加するものである。したがって、「暖冷房装置」と同様に、不明確の表示を明確化する目的で変更されるとの類推解釈が可能である。
エ 「換熱器」を「化学製品製造用換熱器」とする表示変更を反対解釈すれば、従来の「換熱器」は用途を限定していなかったことになる。または、用途を限定する解釈が可能であったとすべきである。すなわち、「化学製品製造用」という用途のみならず、他の用途に使用される「換熱器」も含まれると解釈するのが妥当である。
オ 我が国は、標章の登録のための商品及びサービスの国際分類に関するニース協定に基づく国際分類、いわゆる国際分類を採用しているため、国際分類の変更に伴い審査基準も改定される。
しかし、国際分類の主な変更点は、特許庁公表の資料(乙16)に示されているとおりであり、当該資料には、「暖冷房装置」を「業務用暖冷房装置」に表示変更することや、「換熱器」を「化学製品製造用換熱器」に表示変更することは記載されていない。また、当該表示変更と趣旨を同じくする変更についても記載されていない。
したがって、被請求人が主張する上記の表示変更は、国際分類の変更に伴うものではなく、国内事情に伴うものである。
カ 以上のとおり、被請求人の使用商品は、指定商品「換熱器」に該当するものである。
3 結語
以上のとおり、本件商標は、商標権者である被請求人が、その指定商品「換熱器」について、審判の請求の登録前3年以内に、日本国内において使用したから、商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものではない。

第4 当審の判断
1 被請求人提出の証拠によれば、以下の事実が認められる。
(1)商標権者は、昭和54年3月23日に「建築における設計施工管理及びコンサルタント業,建築及び住宅資材の販売業,住宅設備機器の販売及び施工業」等を目的に設立された法人であり、本店の住所が平成19年6月1日に「東京都千代田区」から「東京都新宿区」へ、また、同所から平成24年7月2日に「東京都世田谷区」(現住所)へ変更されたことが認められる(乙3)。
(2)乙第1号証は、「高密度れんがが暖めるぬくもり 家族に優しい快適暖房」を表題とする暖房機器(使用商品)のカタログ(「リーフレット」と称した方が適切とも思われるが、被請求人の説明のとおり、このままとする。)の写しである。該証拠には、1葉目の右上部の表題中に他の文字より大きく表された「ぬくもり」の文字が記載されている。また、1葉目の左下の商品の写真画像の本体右上及び該写真画像の上部、並びに2葉目の右上部において、「ぬくもり」の文字が記載されている。乙第1号証に表示されている「ぬくもり」の文字からなる商標を、以下「使用商標」という。
そして、該証拠には、商品の説明として、1葉目には「ご家庭のコンセントに差し込むだけで簡単に使える100Vタイプで登場! ぬくもり(JK-1000N)は、ご家庭のAC100V電源だけで蓄熱も制御も可能にした大変便利な蓄熱移動式タイプです。200Vの電気配線工事も必要ありません。現在の電力契約が時間帯別電灯契約の方や、これからオール電化住宅を建築したいとお考えの皆様にとてもうれしいお知らせです。」、「とってもお得な暖房コスト 特にTOU(時間帯別電灯契約)の場合では、廉価な夜間時間帯の電気料金を利用して蓄熱し、お部屋を快適に暖房することができます。」の記載があり、2葉目には「住まう人の健康を考える、新時代の暖房機器」の記載の下、使用される場所(子供部屋、お年寄りの部屋、ユーティリテースペース、書斎)のイラストが表示されている。
また、2葉目には、製品仕様表が示されており、標準機能として「ファン予約機能,チャイルドロック機能,室温センサー,100V電源コード付,キャスター付」等が記載され、また、型式「JK-1000N」、有効蓄熱量「6,000kcal」、定格消費電力・単相100V「1000W」、同・制御100V「25W」との記載もある。
さらに、2葉目左下には、製造元として、商標権者の名称及び住所(東京都世田谷区(現住所))並びに「国土交通大臣許可第9900号」の記載がある。
(3)乙第7号証は、一般建設業の許可について(通知)」と題する平成26年5月8日付けの東京都知事から商標権者宛ての通知(写し)であり、「平成26年4月16日付けで申請のあった一般建築業については、建設業法第3条第1項の規定により、下記のとおり許可したので通知します。なお、国土交通大臣に係る許可については、建設業法第9条第1項の規定により、この許可をもってその効力を失ったので、念のため申し添える。」との文章の後、記として、許可番号及び「許可の有効期限 平成26年5月8日から平成年5月7日まで」の記載がある。
(4)乙第8号証は、「使用商品」の取扱説明書及び保証書(写し)である。表紙には、「蓄熱移動式タイプ ぬくもり 取扱説明書」の表題の下、もくじが記載されており、保証書が裏表紙であることが示されている。そして、保証書には、型式「JK-1000N」のほか、商標権者の名称及び住所(東京都世田谷区(現住所))等が記載されており、該ページの右下には「2012.10」との記載がある。
また、「必ず守っていただきたいこと」中の「注意」のページには「●乾燥室、温室、風呂場など特殊な場所、違う用途では絶対しないでください。“ぬくもり”は居室の暖房用として作られた物です。故障の原因になります。」との記載がある。
2 上記1の認定事実によれば、以下のように判断することができる。
(1)使用商品に係る使用者及び使用時期について
使用商標を表示した使用商品が掲載された乙第1号証のカタログにおいて、それに記載された製造元が商標権者の名称及び住所と一致することから、使用商標及び使用商品の使用者は、商標権者であるといえる。
そして、商標権者が現在の住所に移転したのが平成24年7月2日であること、上記カタログに「国土交通大臣許可第9900号」の記載があること、平成26年5月8日に商標権者が東京都知事から一般建設業の許可の通知を受けたこと、その通知には「国土交通大臣に係る許可はこの許可をもってその効力を失ったことがなお書きとして記載されていること、使用商品に係る取扱説明書の作成日が2012(平成24)年10月であると認められることからすれば、乙第1号証のカタログは、平成24年7月頃からそう遅くない時期に作成されたと推認することができる。
(2)使用商標について
乙第1号証のカタログにおいて表示された使用商標は、「ぬくもり」の平仮名からなるものであるのに対して、本件商標は、前記第1のとおり、「ぬくもり」の平仮名と「ヌクモリ」の片仮名を上下二段に書してなるものである。
使用商標は、本件商標における平仮名部分のみの使用といえるものであるところ、使用商標と本件商標は、共に「ヌクモリ」の称呼及び「ぬくもり(温もり)」の観念を生じるものであって、同一の称呼及び観念を生ずる商標といえるものであるから、使用商標は、本件商標社会通念上同一と認められる商標であるといえる。
(3)使用商品について
被請求人は、本件審判の請求に係る指定商品中の「換熱器」に使用商品が含まれると主張しているが、以下の理由により、使用商品は「換熱器」に含まれる商品であると認めることはできない。
ア 商標法上の商品としての「換熱器」については、商標法施行規則別表において、第11類に属する商品として、「十三 乾燥装置 換熱器 蒸煮装置 蒸発装置 蒸留装置 熱交換器」中の一に定められているところ(乙5)、区分に属する商品又は役務がいかなるものかを説明した「商品及び役務の区分解説〔国際分類第8版対応〕」(特許庁商標課編)によれば、第11類「乾燥装置 換熱器 蒸煮装置 蒸発装置 蒸留装置 熱交換器」の解説において、「ここに含まれる商品は、化学的製品を製造する際に専ら使用される装置及び機械の一部を機能、構造に着目しながらまとめたものである。[関連商品]圧搾機 かくはん機 乾燥機 吸収機 吸着機 混合機 収じん機 焼結機 焼成機 洗浄機 選別機 造粒機 抽出機 乳化機 捏和機 焙焼機 破砕機 反応機 分縮機 分離機 磨砕機 溶解機 ろ過機(第7類) オゾン発生器 電解槽(第9類)」と記載されている(甲7)。
また、「換熱器」の語は、一般の国語辞典に載録されている語とはいえないものであり、その英訳である「Recuperator」の表音である「レキュペレータ(レキュペレーター)」は、「工業炉の熱効率を高める目的で、その高温排ガスから空気側に熱回収して、空気を予熱する熱交換装置。」(甲9:中外テクノス株式会社ウェブサイト「用語集」)や「工業炉や高温の排ガスが発生する燃焼システムや工業プロセスの廃熱回収熱交換器」(甲10:Weblioウェブサイト「大車林 Weblio辞書」)と説明されている。
以上よりすれば、本件商標の指定商品中の「換熱器」とは、「工業炉や高温の排ガスが発生する燃焼システムや工業プロセスの廃熱回収熱交換器であって、化学的製品を製造する際に専ら使用される装置及び機械」であるといえる。
イ 他方、使用商品についてみるに、使用商品である暖房機器は、上記1認定のとおり、乙1号証のカタログにおいて、「家族に優しい快適暖房」や「ご家庭のコンセントに差し込むだけで簡単に使える」の記載があること、使用される場所(子供部屋、お年寄りの部屋、ユーティリテースペース、書斎)のイラストが表示されていること、標準機能として「チャイルドロック機能」があること、また、乙第8号証の取扱説明書において、「 “ぬくもり”は居室の暖房用として作られた物です」との記載があることのほか、その他の記載事項も総合して考察すれば、当該使用商品は、家庭用の電力で蓄熱体を暖め、その放熱を温風で室内を暖めて温度を上げる家庭で使用される暖房機器というのが相当であり、その商品自体の用途、需要者等からみて「家庭用の電気式暖房機器」の一種と認められる。
そうすると、該商品は、商標法施行規則別表において、第11類に掲げられている「十九 家庭用電熱用品類」の範ちゅうに属する商品といえる。
ウ 商品「換熱器」及び使用商品がいかなるものであるかは、それぞれ上記ア又はイのとおりであり、また、その他、使用商品が「換熱器」として取引されていることを認め得る証拠は見いだせないから、使用商品は、本件審判の請求に係る指定商品中の「換熱器」の範ちゅうに含まれる商品とみることはできない。
(4)小括
上記(1)ないし(3)によれば、本件審判請求の登録前3年以内の時期に、商標権者によって使用商品について本件商標と社会通念上同一と認め得る商標が表示されたカタログが作成されていたとしても、そもそも、その使用商品は、本件審判の取消請求に係る指定商品に属するとはいい難いものである。
3 被請求人の主張について
被請求人は、平成28年経済産業省令第109号が同年12月12日に公布され、商標法施行規則別表中において、従来「換熱器」と表示されていたものが「化学製品製造用換熱器」と変更されたところ、「換熱器」を「化学製品製造用換熱器」と表示変更するのは、用途を限定する「化学製品製造用」を付加するものであり、従来の「換熱器」は用途を限定していなかった、又は、用途を限定する解釈が可能であったとすべきであって、「化学製品製造用」という用途のみならず、他の用途に使用される「換熱器」も含まれると解釈するのが妥当であるから、使用商品は、指定商品中の「換熱器」に該当するものである旨主張する。
そして、商標法施行規則別表において定められた商品及び役務の意義は、商標法施行令別表の区分に付された名称、商標法施行規則別表において当該区分に属するものとされた商品又は役務の内容や性質、国際分類を構成する類別表注釈において示された商品又は役務についての説明、類似商品・役務審査基準における類似群の同一性などを参酌して解釈するのが相当であるということができる(前出甲5:最高裁平成21年(行ヒ)第217号同23年12月20日第三小法廷判決)のであり、この点については、当事者間において争いはない。
そこで、上記の被請求人の主張についてみるに、上記省令は、その附則において、施行期日は平成29年1月1日とされ、経過措置として「この省令の施行前にした商標登録出願及び防護標章登録出願に係る商品及び役務の区分については、なお従前の例による。」とされているものであり、今回の商標法施行規則別表の一部改正が、本件審判の判断に直接影響するものではない。そして、本件商標は、前記第1のとおり、平成16年9月22日に登録出願されたものであり、本件審判は、その時に適用される商標法施行規則別表(平成13年経済産業省令第202号による改正後のもの)において定められた商品及び役務に基づき判断されるものであり、商標法施行規則別表における記載及びその商品の説明については、上記2(3)アのとおりである。
そして、使用商品が第11類「家庭用電熱用品類」の範ちゅうに属する商品であり、第11類「換熱器」の範ちゅうに含まれる商品とみることができないことは、上記2(3)イ及びウのとおりであるから、被請求人の主張は採用することができない。
4 むすび
以上のとおり、被請求人の提出に係る乙各号証によっては、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品について、本件商標の使用をしていたことを証明したものとは認められない。また、被請求人は、本件商標を請求に係る指定商品について使用していないことについて、正当な理由があることを明らかにしていない。
したがって、本件商標は、商標法第50条の規定により、その指定商品中「結論掲記の商品」について、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2017-02-02 
結審通知日 2017-02-06 
審決日 2017-03-21 
出願番号 商願2004-87164(T2004-87164) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (Y11)
最終処分 成立  
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官 田中 幸一
酒井 福造
登録日 2005-06-24 
登録番号 商標登録第4874540号(T4874540) 
商標の称呼 ヌクモリ 
代理人 沖田 正樹 
代理人 畝本 継立 
代理人 田中 伸次 
代理人 河野 英仁 
代理人 畝本 正一 
代理人 畝本 卓弥 

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