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審決分類 審判 一部無効 商4条1項19号 不正目的の出願 無効としない X1719
審判 一部無効 商4条1項7号 公序、良俗 無効としない X1719
審判 一部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない X1719
審判 一部無効 商標の周知 無効としない X1719
管理番号 1328026 
審判番号 無効2015-890069 
総通号数 210 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2017-06-30 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-08-31 
確定日 2016-11-07 
事件の表示 上記当事者間の登録第5461379号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5461379号商標(以下、本件商標という。)は、「穴埋め職人」の文字を標準文字で表してなり、平成23年7月26日に登録出願され、第17類「エポキシ樹脂と硬化剤とからなる補修材,充填用パテ,水漏れ補修用の充填用パテ,壁補修用の充填用パテ,防水効果のある充填用パテ,建築用防湿材料,コンクリート及びセメントモルタル補強用化学繊維,ガスケット,管継ぎ手(金属製のものを除く。),パッキング,防水用パッキング,電気絶縁材料,ポリシート状の電気絶縁材料,ゴム,すべり止め加工されたシート状合成ゴム,すべり止め合成ゴムシート,抗菌性を有する合成ゴム,ゴム製又はバルカンファイバー製のバルブ(機械要素に当たるものを除く。),ゴム製栓,ゴム製ふた」及び第19類「セメント及びその製品,セメント製の道路舗装補修材料,タール類及びピッチ類,建築用又は構築用の非金属鉱物,リノリューム製建築専用材料,プラスチック製建築専用材料,合成建築専用材料,アスファルト及びアスファルト製の建築用又は構築用の専用材料,ゴム製の建築用又は構築用の専用材料,しっくい,石灰製の建築用又は構築用の専用材料,石こう製の建築用又は構築用の専用材料,繊維製の落石防止網,セメント製品製造用型枠(金属製のものを除く。),建具(金属製のものを除く。),無機繊維の板及び粉(石綿製のものを除く。)」を指定商品として、同年12月16日に登録査定、平成24年1月6日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
1 請求の趣旨
請求人は、本件商標の指定商品中、第17類「エポキシ樹脂と硬化剤とからなる補修材,充填用パテ,水漏れ補修用の充填用パテ,壁補修用の充填用パテ,防水効果のある充填用パテ,建築用防湿材料」及び第19類「リノリューム製建築専用材料,プラスチック製建築専用材料,合成建築専用材料,アスファルト及びアスファルト製の建築用又は構築用の専用材料,ゴム製の建築用又は構築用の専用材料,しっくい,石灰製の建築用又は構築用の専用材料,石こう製の建築用又は構築用の専用材料,繊維製の落石防止網」の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由要旨を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第48号証(枝番号を含む。)を提出している。
2 引用商標
請求人の引用する商標は、請求人が「クロス・壁・床材などの補修用の充填剤」(以下「引用商品」という。)に使用するものであって、いずれも「穴うめ職人」の文字からなる(1)「穴うめ職人」の文字を横書きしてなるもの、(2)別掲1のとおりの構成からなるもの、(3)別掲2のとおりの構成からなるものの3件であり、以下引用商標の(1)ないし(3)をまとめて「引用商標」という。
3 請求の理由要旨
(1)商標法第4条第1項第10号の該当性について
ア 本件商標及び引用商標の類否
本件商標と引用商標とを比較すると、両者は「埋め」が漢字仮名混じりか仮名表記かの違いのみであり、外観はほぼ同一であり、「アナウメショクニン」という称呼も同一であり、ともに、「きれいに穴を埋めることができる品質、性能を有する」との観念が生じる。
よって、本件商標と引用商標とは、外観が同一又は酷似し、称呼、観念が共通するから、同一の商標又は限りなく同一といえる程度に類似する商標である。
イ 本件商標の請求に係る商品と引用商品の類否
引用商品は、無効請求に係る指定商品中の第17類「充填用パテ,壁補修用の充填用パテ」と同一の商品であり、かつ第17類「エポキシ樹脂と硬化剤とからなる補修材,水漏れ補修用の充填用パテ,防水効果のある充填用パテ,建築用防湿材料」及び第19類「リノリューム製建築専用材料,プラスチック製建築専用材料,合成建築専用材料,アスファルト及びアスファルト製の建築用又は構築用の専用材料,ゴム製の建築用又は構築用の専用材料,しっくい,石灰製の建築用又は構築用の専用材料,石こう製の建築用又は構築用の専用材料,繊維製の落石防止網」と類似する商品である。
ウ 引用商標の周知・著名性
(ア)商標の使用開始時期、使用期間
請求人は平成17年10月1日に株式会社東陽トレーディングが株式会社ニッケンと業務統合して現社名となった(甲4)が、クロス・壁・床材などの補修用の充填材である引用商品は、業務統合前の株式会社ニッケンが遅くとも平成17年5月には販売を開始した(甲5、6)。そして、業務統合以後は、請求人が引用商品の販売を引き継ぎ、現在に至るまで販売を行っている。販売開始から現在に至るまで商品デザインに大きな変更はなく、引用商品には引用商標が大きく目立つ態様で表示されている。
(イ)プロ向け及びDIY向け補修材市場における請求人の地位
引用商品は、プロ向け及びDIY市場向けの商品であり、商品の需要者は住宅補修のプロ及びDIY愛好者である。このプロ向け及びDIY向けの壁、クロス、床など住宅の補修用品を販売する会社は請求人の他に株式会社建築の友、株式会社ベスコがあり、この3社で市場売上げのほとんどを占めている。そして、甲第7号証に記載のとおり、平成23?26年にかけての請求人の売上高は3社合計の売上高(ほぼ市場全体の売上)に対してそれぞれ約45.7%、約43.2%、約46.7%、約49.8%という非常に高い割合となっており、請求人がプロ向け及びDIY向けの壁、クロス、床など住宅の補修用品の市場における最大手の地位を占めることは、引用商品が販売店において同種商品に対して宣伝や取り上げ方、商品の陳列などに優位性を有することになり、引用商標の知名度獲得に大きく貢献している。
(ウ)商標の使用態様、商品数
引用商品は、その用途、色、本数の違いにより全部で15種類販売されている(甲2)。また、引用商品は、15種類ある商品単体での販売の他に、様々な補修用品、メンテナンス商品で構成されるキットである「ハウスケアボックス」(甲8)に組み込まれた形でも販売されている。引用商品のいずれにおいても、商品パッケージ、商品本体に大きく引用商標が記載されている。しかも、パッケージに記載された引用商標は赤地に白抜き文字で描かれており、非常に目立つ態様となっている。こうした商品の数の多さや商標パッケージにおける目立つ態様から、引用商標は需要者に対して強い印象を与えている。
(エ)商標使用地域、商品販売方法
a 実店舗での販売
主としてホームセンターにて引用商品を販売している(甲9、10)。
(a)販売店舗
請求人は全国の主要なホームセンターに引用商品を納入している。
・カインズ(ホームセンター業界大手)全国204店舗の内の小規模店舗であるカインズマートを除く160店舗に引用商品を納入
・LlXILビバホーム 全国84店舗の全てに納入
・コメリ 全国43店舗の全てに納入
・東急ハンズ 横浜店、池袋店、宜野湾店、外商部に納入
この他、関東地区では、上記のカインズホーム、ビバホームの他に、コーナン、セキチュー、ドイト、ビーバートザン、島忠、ケーヨーデイツー、ハードストック、ハンディホームセンター、Jマート、オリンピック、ムラウチホビー、くろがねやの各店舗にも引用商品が納入され、九州を基盤とするホームセンターのホームワイドには全39店舗中の30店舗に納入されている。
(b)店舗での陳列、販売態様
引用商品は全部で15種類あるが、ホームセンターの各店舗では少ないところでも一店舗に2、3種類の引用商品が陳列され、多いところでは10種類もの商品が並んで陳列されている。しかも、請求人はDIY、プロ向けの床、クロス、壁の補修材市場において最大手であることから、各ホームセンターのDIY売場では、請求人の商品だけが集められてオリジナルの宣伝パネルが設置され、他の会社の商品と差別化された専用コーナーが設けられている(甲11)。
b インターネット通販サイトにおける販売
請求人自身が開設し、運営しているウェブショップとしては、プロ向けの「匠」(甲12)、セミプロ及び一般需要者向けの「住まいのお助け本舗」(甲13)、Yahoo!ショッピングに出店した一般需要者向けの「FAMIリノベ」(甲14)がある。
これら直営サイトだけでなく、大手のインターネット通販サイトのアマゾンドットコム(甲15)、楽天市場(甲16)、Yahoo!ショッピング(甲17)を始めとして各種のインターネット通販サイトに出店しているウェブショップに引用商品を卸している。これらの通販サイトは膨大なアクセス数を誇る上、出店しているウェブショップの店舗数も非常に多いことから、これらの通販サイトを介して多くの需要者によって引用商品はアクセスされることで、知名度が高められている。
c 工務店、住宅メーカーを通じた商品の頒布
請求人は使用商品を単体で販売する以外に、引用商品を含む様々な補修用品を集めたキット「ハウスケアボックス」を販売しており、これを住宅メーカーや工務店等に商品の紹介、提案、納入している(甲18?20)。
(オ)展示会への出展を通じた宣伝活動
請求人は、大規模な展示会へ出展し、引用商品の宣伝、広報活動を行っており(甲21ないし25)、その来場者の相当数が引用商品を目にしたといえる。
(カ)商品販売実績
引用商品は、販売開始時からの売上げの内、平成19年10月から本件商標の商標出願がされた平成23年7月までの3年9か月だけで計281,402個、引用商品の販売開始時期である平成17年5月から平成19年10月までの2年5か月の販売個数も含めれば、本件商標の商標出願がされた平成23年7月までに引用商品は少なく見積もっても35万個程度の販売がされていた。
また、平成23年から24年にかけて月平均7,000個程度は販売されていることから、商品の販売開始から本件商標の登録査定日である平成24年1月6日(当審注 登録査定日は平成23年12月16日)時点までには少なく見積もっても40万個程度は販売されていた。
このように、引用商品は、市場において販売開始から本件商標が商標登録出願されるまでの間に少なくとも35万個、本件商標が登録査定を受けるまでの間に少なくとも38万?40万個という膨大な個数が販売されていることからすると、引用商品は既にプロ向け及びDIY向けの補修材市場において高い知名度を有し、需要者に広く知られた商品であったといえる(甲26、27)。
(キ)プロ向け及びDIY向け補修材市場におけるシェア
プロ向け及びDIY向け補修材は多種多様な商品が販売され、商品数が非常に多い。その商品の中心は床やフローリング用の補修材で、売上も最も大きい。これに対し、引用商品のようなクロスに使用する商品は種類も売上の割合も小さい。そうした中で、プロ向け及びDIY向け補修材市場において売上全体の1%を越える売上を誇る引用商品は、有力商品であり商品の種類の少ないクロス系の補修材において非常に高いシェアを有している(甲7)。
(ク)その他の宣伝活動
a パンフレット、チラシの配布
業務統合前の株式会社ニッケンは、引用商品の販売を開始した平成17年5月に当該商品のチラシを一般需要者に(甲28)、請求人は、業務統合後の平成18年11月に、ガイドブック(甲29)を6,000部作成し(甲30)、ホームセンターの担当者や取引先に配布すると共に、ホームセンターに配置して一般需要者に提供した。また、平成22年にも商品チラシ(甲31)を作成、配布した。
b 大手動画サイトにおける商品説明動画の公開
引用商品の使い方を紹介した動画を、インターネットの大手動画サイトであるYouTubeにて平成22年3月16日より公開している(甲32)。
(ケ)インターネットサイト、ブログにおける掲載
引用商品は一般需要者によってブログ等で取り上げられ、口コミで宣伝されている(甲33?43)。
(コ)小括
このように、引用商標は、使用商品の販売活動、宣伝活動等により、本件商標の出願日時点で、請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されていた。
エ まとめ
以上のとおり、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当する。
(2)商標法第4条第1項第15号の該当性について
引用商標は、本件商標の査定時のみならず、出願時においても、請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者に周知・著名となっていた。そのため、引用商標と同一又は酷似する本件商標を無効請求に係る指定商品に使用をするときは、需要者は請求人の業務に係る商品であると認識することになるから、出所の混同を生じることは明らかである。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第19号の該当性について
ア 引用商標の周知・著名性
これまで述べてきたように、商標「穴うめ職人」は、本件商標の商標登録査定時のみならず、商標登録出願時においても、請求人の業務に係る商品を表示するものとして需要者に広く認識されていた。しかも、引用商標は、請求人の業務に係る商品を表示するものとして、周知を越えて著名とまでいえる程度に認識されていた。
不正の目的
引用商標は、造語商標であり、上記のように本件商標の商標登録出願の時点では既に広く知られていた。そして、被請求人は、本件商標の商標登録出願の前から現在に至るまで、この商品の商品パッケージや、商品宣伝、商品紹介のいずれにおいても一貫して「瞬間・穴埋め職人」と記載し(甲44、45)、必ず「瞬間」の語を併記していたにも関わらず、商標登録出願の際にわざわざ「瞬間」を外して、補修材市場において既に広く知られていた引用商標「穴うめ職人」に酷似した形での商標登録出願を行った。請求人はプロ向け、DIY向けの補修材市場において最大手であるが、そのクロス系補修の有力商品である引用商品と酷似する商標が無効請求に係る指定商品に使用されれば、出所の混同が生じるだけでなく、永年使用したことで引用商標に化体した信用、名声、顧客吸引力が毀損されることは明らかである。そして、商標登録後、被請求人は、平成27年6月8日付け内容証明郵便(甲46)及び平成27年7月6日付け内容証明郵便(甲47)にて請求人に対し引用商標の使用中止を繰り返し求めてきただけでなく、平成27年7月27日付け内容証明郵便(甲48)で引用商品の売上げの10%にも上る高額なライセンス料の支払を要求してきた。こうした被請求人の行為は、請求人が長年引用商標を使用して築き上げてきた引用商標に対する顧客吸引力を毀損するものである。
これらの事実からすると、被請求人が、引用商標を知った上で、周知、著名となっていた引用商標が商標登録されていないことを奇貨として、あえて引用商標と同一又は酷似した商標を先回りして登録したことは明らかである。被請求人は、請求人が築きあげてきた信用にただ乗りするだけでなく、請求人に対して損害を加える目的を有していたのであるから、「不正の目的」を有していた。
ウ 小括
以上より、本件商標は、請求人の業務に係る商品を表示するものとして日本国内における需要者の間に広く認識されている引用商標と同一又は類似の商標であって、不正の目的をもって使用をするものであるから、商標法第4条第1項第19号に該当する。
(4)商標法第4条第1項第7号の該当性について
被請求人は、補修材市場において既に広く知られていた引用商標が商標登録されていないことを奇貨として、あえて引用商標と同一又は酷似した商標を先回りして登録している。こうした被請求人による本件商標の商標出願の経緯は、著しく社会的妥当性を欠き、登録を認めることは商標法の予定する秩序に反するものであるから、本件商標は商標法第4条第1項第7号に該当する。
4 被請求人の答弁に対する弁駁の要旨
(1)引用商標の使用の程度について
被請求人より、使用開始時期や使用の状況等について反論がなされたので、以下のとおり審判請求書の主張に補足、追加する。
ア 請求人商品の販売について
(ア)ホームセンターへの納品数について
請求人は、請求人商品を始めとする各商品を直接販売するとともに、仲卸を通じた販売を行っている。主な販売ルートは仲卸を通じた販売であり、請求人は仲卸に商品を納品し、この仲卸が主要な取引先であるホームセンター運営会社から注文を受けて各ホームセンターの店舗に納品している。
仲卸である株式会社ハンディ・クラウン(以下、単に「ハンディ・クラウン」という。)が請求人商品を取引先のホームセンターに納品した実績を示す表(甲52)及び「商品取扱状況についての回答書」(甲53)によると、ハンディ・クラウンは、平成17年5月から平成23年7月26日までに合計357,860個の請求人商品をホームセンター等に納入していた。
ハンディ・クラウンが請求人商品を納入した主なホームセンター運営会社としては、「コーナン」、「ドイト」、「LIXILビバ(旧トステムビバ)」、「ビーバートザン」、「Jマート」、「カインズ」、「セキチュー」、「ハンズマン」、「ビックカメラ」、「マキバ」、「ムラウチホビー」、「島忠」が挙げられる(甲54)。
(イ)請求人商品の販売個数について
請求人商品の販売個数については、請求人がハンディ・クラウンを通じた販売ルート以外の販売も行っており、平成17年5月から本件商標の出願日である平成23年7月26日までの間に累計で38万個程度は販売されていたことは確実である。
そして、請求人商品の販売は、ハンディ・クラウンが請求人商品を取り扱う平成17年5月よりも前から行われていたから、平成23年7月26日までに40万個程度は販売されていた。
(ウ)店舗における陳列状況について(甲55)
甲第55号証は、各ホームセンターにおける請求人商品の陳列状況を示し、いずれの写真も本件商標の出願日よりも前に撮影されており、平成17年当時よりホームセンター店舗において請求人用の専用のコーナーが設けられ、請求人商品を始めとする請求人の製造・販売する各商品が並べられていたことが裏付けられ、ホームセンターにおいて、長年に亘り請求人の製造・販売する商品を集めた専用コーナーが設けられていた。
(エ)納入されたホームセンターの店舗数について(甲54、55)
請求人商品は、甲第54号証に記載の会社が運営する各ホームセンター、甲第55号証に記載のホームセンターにて展示、販売されている。
住宅用補修材を取り扱っている店舗は700店舗強に過ぎない(甲53)から、ハンディ・クラウンが取り扱わないホームセンターの店舗数を含めたとしても、400?500店舗という請求人商品の取り扱い店舗数は全国のホームセンターのうちの住宅用補修材を取り扱っている店舗の5?6割を占めるものといえ、全国の住宅用補修材を取り扱うホームセンターのうちの相当の割合の店舗で販売されていることは明らかである。
イ 雑誌、新聞への掲載
請求人商品は、以下の雑誌、新聞にも掲載されて広告されていた。
・日経流通新聞(平成18年5月3日発行、甲58)
・月刊MONOQLO(平成23年7月19日発行、甲59)
・月刊Pacoma(平成17年1月10日発行、甲60)
ウ 展示会への出展
平成19年11月14日?16日に開催された「JAPAN HOME&BUILDING SHOW 2007」、平成23年3月8日?11日に開催された「建築・建材展」、平成18年11月15日?17日に開催された「JAPAN HOME&BUILDING SHOW 2006」、平成18年から平成23年までの間、日本ドゥ・イット・ユアセルフ協会主催の展示会である「JAPAN DIY HOMECENTER SHOW」にて、ハンディ・クラウンのブースでの展示を行った(甲65)。
エ インターネット通販について
本件商標の出願日よりも前から請求人商品を扱っていたのはアマゾンドットコムだけではない。楽天市場やYahoo!ショッピング、請求人の通販サイト「住まいのお助け本舗」の他、通販モノタロウ、ビックカメラ、エディオン等のサイトのいずれも本件商標の出願日である平成23年7月26日よりも前の更新日の記載ががあり(甲69、70)、これらの通販サイトが平成23年7月26日以前から請求人商品を取り扱っていたことが分かる。
このように、本件商標の出願日よりも前から、各種の主要なインターネット通販においても請求人商品が販売されていたことは明らかである。
オ 請求人商品等の補修用の充填材市場について
被請求人は、DIY業界全体と比較して請求人商品の販売規模を議論しているが、DIYには様々な種類の商品が含まれているため、その商品がどのような分類に属するかを考慮せずにDIY業界全体と比較するのはDIY業界の実情に合致しない。
一般社団法人日本ドゥ・イット・ユアセルフ協会(以下、「DIY協会」という。)が作成したDIY小売業実態調査報告書の抜粋にホームセンターの商品分類が掲載されている(甲71、72)。この記載のように、DIY用品には多種多様な商品が含まれ、その商品範囲は広範に亘っている。商品毎に製造者、需要者がそれぞれ異なることから、大きく9つに分類(中分類)されている。さらに、この中分類にもそれぞれ多くの種類の商品が含まれることから、さらに細分化した分類がなされている。このような商品の種類に応じた分類がなされていることからも明らかなように、DIYと総称される商品類は、小分類に挙げられた商品ごとに市場が形成されている。そして、請求人商品は、「6.接着剤・梱包資材」の「充填材」に分類される(甲71中の「補修剤」は「家庭用セメント類、タイル」についてのもの)ことから、請求人商品のシェアについてはこの「充填材」という小分類を基準に考えることになる。
また、前掲の甲第59号証には住宅用の補修用品において請求人が競合する株式会社建築の友との間で熾烈なシェア争いをしていることが記載されており、請求人が市場において相当のシェアを有していることは明らかである。
そうすると、審判請求書にて主張したように、請求人が業界の大手であること、その主力商品である請求人商品がDIY協会の報告書に記載の「充填材」中の壁、クロス、床材の補修用品の市場において高いシェアを有していたことは明らかである。
(2)需要者、取引者について
上記のように、請求人商品を始めとするクロス、壁、床材向けの補修用品はインターネット通販を除けば主にホームセンターという限定された業態の店舗でのみ販売される商品であり、請求人商品の主な客層は住宅補修のプロ及びDIY愛好者である。
かかる顧客の傾向から、請求人商品を始めとするクロス、壁、床材向けの補修用品の需要者は一般消費者ではなく、審判請求書にて主張したように住宅補修のプロ及びDIY愛好者である。また、取引者はDIY商品のうちのクロス、壁、床材向けの補修用品を扱うホームセンター、卸売業者である。
よって、請求人商標が周知性を獲得しているか否かの判断も、こうした需要者及び取引者の間において広く認識されているかによって決せられるべきである。
(3)以上から、請求人商標が請求人の業務にかかるクロス・壁・床材などの補修用の充填材を表示するものとして需要者、取引者の間に広く認識されていたから、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当する。
また、被請求人は、答弁書において出所の誤認混同が無くそのおそれも無いと認めているように見受けられるが、そうであるなら被請求人には何らの損害も生じていないのであるから、内容証明郵便にて請求人に対し請求人商標の使用中止のみならず高額なライセンス料の支払いまで要求する理由は無いことになる。こうした一連の被請求人の行為からすれば、被請求人は請求人に対して損害を加える目的、即ち「不正の目的」を有していたことは明らかであるから、本件商標は商標法第4条第1項第19号に該当する。
5 結語
答弁書における被請求人の主張には理由がないから、本件商標は商標法第4条第1項第10号、同項第15号、同項第19号及び同項第7号に該当し、その指定商品中、第17類「エポキシ樹脂と硬化剤とからなる補修材,充填用パテ,水漏れ補修用の充填用パテ,壁補修用の充填用パテ,防水効果のある充填用パテ,建築用防湿材料」及び第19類「リノリューム製建築専用材料,プラスチック製建築専用材料,合成建築専用材料,アスファルト及びアスファルト製の建築用又は構築用の専用材料,ゴム製の建築用又は構築用の専用材料,しっくい,石灰製の建築用又は構築用の専用材料,石こう製の建築用又は構築用の専用材料,繊維製の落石防止網」についての登録を無効にすべきである。

第3 被請求人の主張
1 答弁の趣旨
被請求人は、結論同旨の審決を求め、答弁の理由要旨を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第14号証(枝番号を含む。)を提出している。
2 答弁の理由要旨
(1)商標法第4条第1項第10号の該当性について
ア 概説
商標法第4条第1項第10号は、登録主義をとる我が国商標法制度のもと、例外的に未登録周知商標と出所の混同を生じさせるような商標の登録を排除し、周知商標を保護しようとするものである。例外であるからには、取引者・需要者に商標を知らせるための活動が、通常の商標を使用しているという程度を大きく超えて行なわれていることが必要であり、そうでない限り、たとえ商標を使用してきたとしても、取引者・需要者の間に広く知られているという状態ではないと考えるべきである。引用商標は、登録主義の例外として保護を受けるに値する程の周知性を獲得しているものではないと思料する。
イ 引用商標についての検討
引用商標が本件商標に類似することについて異論はない。
引用商標「穴うめ職人」は、請求人の主張のように、その用途・機能である「穴うめ」に、品質が確かで仕上がりが綺麗というイメージを持つ「職人」の語を結合した商標である。このように、用途・機能を表す語に「職人」を付加した商標は、特にDIY分野においては「素人が施工しても職人のように高品質に仕上げることができる」という観念を想起するため、広く使用されている。「○○職人」の商標は多用されており(乙1)、その独創性の程度は低いといわざるを得ない。すなわち、引用商標はいわゆるウィークマークであり、このような商標に接した需要者は、「職人」部分により商品を識別し出所を判断するというより、主に「○○」部分から用途・機能を看取するにすぎない。つまり、「○○職人」商標は全体として自他商品識別力は低いといえる。
ウ 引用商標の周知性について
(ア)引用商標の使用開始時期
甲第5号証は出荷開始予定日が記されているのみで、平成17年5月に販売が開始されたかは不明である。甲第6号証についてもホームページで新製品の案内がされていたことがわかるのみで、当時販売されていたかは不明である。
(イ)請求人の地位
審判請求書によれば、「壁、クロス、床など住宅の補修用品を販売する会社は(略)3社で市場売上げのほとんどを占め」、請求人が「補修材市場において最大手の地位を占める」とのことであるが、この主張は全く妥当ではない。
大手通販サイト「アマゾン」において「塗装・接着・補修」カテゴリで「壁」「クロス」「床」として検索すると、「セメダイン」「アサヒペン」「コニシ」「ニトムズ」「日本ミラコン産業」「家庭化学」「カンペハピオ」といった著名な企業が並び、3社で市場売上げのほとんどを占めるなどということはあり得ないことがわかる(乙2)。これに加えて、住宅補修には「壁、クロス、床」のみならず「家具、キッチン、トイレ、風呂、ドア、サッシ、外壁、屋根」なども含まれる。現に請求人も「ウッド、アルミ、ストーン、レザー」等の商品を販売しているし、本件審判請求書に係る指定商品が、類似群コード「07A03」が付される第17類及び第19類に属する多岐にわたる商品であることからも、請求人の地位ということを考える際には、引用商品の需要者は一般消費者であり、狭く考えても「住宅補修のプロ及びDIY愛好者」と考えるべきであるし、「補修材市場」を「壁、クロス、床など住宅の補修用品を販売する会社」のみに限定すること自体が妥当でない。
以上のように考えると、請求人が「補修材市場において最大手の地位を占める」などということはあり得ない。さらに、請求人の主張する3社に限定して考えた場合についても、引用商標は請求人のハウスマークではなく一商品の商標にすぎないから、請求人の売上高が大きいことは直接的に引用商標の周知性が高いことを示すことにはならない。
(ウ)引用商標の使用態様について
引用商標が引用商品に大きく記載されていることは異論がないが、引用商標は本来的にウィークマークであるから、自他商品識別力が高くない。そのため、引用商標が引用商品に大きく記載されていることにより、需要者に用途を理解させることができているとしても、ブランドイメージを与えているとはいえない。また、甲第8号証に見られる「ハウスケアボックス」という別商品に組み込まれた状態では需要者が接するのは主として「ハウスケアボックス」の商標であり、その内容物に付された引用商標を判断基準として取引しているとは考えにくいから、引用商標の自他商品識別機能はより一層滅殺されているといえる。
(エ)引用商品の販売状況について
a 引用商品は多くの実店舗に納品の実績があるとされるが、本件商標の出願前における販売店舗数を示す証拠はない。
2013年10月?2014年9月の売上金額が約二千万円である(甲27)のに対し2010年10月?2011年9月の売上金額は65%程度の約一千三百万円である(甲26)こと、引用商品の売上が急激に伸びたのが2012年10月頃からである(甲27)ことから、本件商標の出願前における販売店舗数は、売上規模及び年数から考えても2015年の現状の半分程度の小規模なものであったと推察される。なお、甲第9号証及び甲第10号証は納品の実績を表していると考えられ、現在も納品しているかは定かではない。また、販売店舗数について、現在までに甲第9号証及び甲第10号証から355店舗に納品の実績があると見ることができるが、日本全国ホームセンターマップによれば全国にホームセンターは4187店あり(乙3)、引用商品が納品された実績のある店舗はそのうち8%程度にすぎない。
店舗での引用商品の陳列・販売態様についても、現状の写真が開示されているのみで、本件商標の出願時における態様を示す証拠はない。また、現状の陳列・販売態様を示す甲第11号証に開示されている代表的な店舗においても引用商品の種類が6点程度のケースがあること、審判請求書において「少ないところでも一店舗に2、3種類」「多いところでは10種類」と記載されていること、甲第27号証によれば種類ごとの売上数量に大きなばらつきがあり、1万個を越えるものは3種類のみであることを考えると、多くの店舗ではこの3種類のみが陳列されているのではないかと推察される。
b インターネット通販サイトの販売についても、現状の販売状況のみで、本件商標の出願前における販売状況・店舗数・態様を示す証拠はない。被請求人において調べたところ、「アマゾン」における取り扱い開始時期のみが確認できた。これによると、現状販売されている引用商品15種類のうち、2種類のみが本件商標の出願前、しかも出願のわずか半年前の2011年1月6日に取り扱い開始されたものであり、他の13商品は商標出願後の取り扱い開始であることがわかった(乙4)。また、「アマゾン」における合計72件の引用商品のカスタマーレビューは全て商標出願後に書かれたものであり、本件商標の出願前は出願後に比して売上が極端に少ないことが推認される(乙4)。
c 工務店・住宅メーカーへの販売については、甲第19号証から、実際に販売している取引先が10程度、数量が5年間で1946個と、取るに足らない程度である。さらに、「ハウスケアボックス」の販売によってその内容物である「穴うめ職人」の周知性が高まるとは考えられない。
(オ)引用商品の宣伝について
請求人は大規模な展示会へ出展し、引用商標の知名度を高めたとしているが、この出店により引用商標が周知性を獲得したとは考えられない。
展示会には他の多くの会社が出展しているから、来場者が特に請求人のブースに注目したとは考えられない。引用商品は、他の商品と共に展示されているうちの一部である「ハウスケアボックス」の、さらに内容物として紹介されている(甲22)。このような扱いであっては、来場者が「ハウスケアボックス」というセット商品に注目することがあったとしても、その内容物である引用商品の商標の印象を強く受けるとは考えにくく、来場者に対して周知性が高まるとは考えられない。甲第21号証及び甲第22号証、さらに来場者に示す資料である甲第25号証のいずれにも引用商標が表記されていないことからも、これらの展示会において引用商標の周知性が高まったとは全く考えられない。
引用商品の広告宣伝について検討すると、引用商標は全国的にテレビCMが放映されたなどという事実もなく、広告活動については以上に検討した展示会及び以下に検討するチラシ等のみであるから、引用商標が周知商標に該当するためには全く足りない。
(カ)引用商品の販売実績について
審判請求書によれば遅くとも平成17年5月から引用商品を販売していたとのことであるが、上述のとおりその根拠は希薄であり、本件商標の出願前の販売数量は甲第26号証に記載の平成19年10月から平成23年7月までの3年9か月、約28万個に限って勘案するべきである。そうすると、月平均の売上個数が6千個程度であり、これは需要者が一般消費者であること、DIYという市場の規模を考えると特段に多いものではないし、3年9か月の販売により登録主義の例外として保護を受けるに値する程の周知性を獲得するとは到底考えられない。なお、甲第26号証等自体が内部作成資料にすぎないから、必ずしも信憑性が高いとはいえない。
(キ)引用商品のシェアについて
a 審判請求書によれば、「プロ向けおよびDIY向け補修材市場において売上全体の1%を越える売上を誇る引用商品は、有力商品であり商品の種類の少ないクロス系の補修材において非常に高いシェアを有している」とあるが、これは妥当ではない。
審判請求書ではクロス系の補修材における引用商品のシェアが不明である。被請求人において調査したところでは建築の友社の「クロスの穴うめ材」シリーズは、日本最大の店舗数を誇る(乙3によれば1175店舗)ホームセンター「コメリ」のサイトにおいて数多く扱われ(乙5)、各店舗でも販売されていることが推測されるが、引用商品は扱われていない。このことから、引用商品が「クロス系の補修材において非常に高いシェアを有している」とは考えにくい。また、引用商品が「プロ向けおよびDIY向け補修材市場において売上全体の1%を越える売上を誇る」点については既に検討したように、「プロ向けおよびDIY向け補修材市場」を3社に限定したことにそもそも妥当性がない。具体的には上述のように「床、クロス、壁の補修材」に絞っても「セメダイン」「アサヒペン」「コニシ」「ニトムズ」「日本ミラコン産業」「家庭化学」「リンテックコマース」などがあり、さらに「キッチン、トイレ、風呂、ドア、サッシ、表具、電気設備、外壁、屋根」などの補修材を考えると母数は数倍に大きくなり、引用商品のシェアは限りなく小さくなる。
さらに、請求人は引用商品が「種類の少ないクロス系の補修材において高いシェアを有している」ことから需要者に対し周知であると論理づけているが、ここには論理の飛躍がある。DIY商品などは非常に多くの種類に細分化されており、細かい分野では市場が小さいため参入企業は少なくなるから一企業のシェアは大きくなりやすい。しかし、細かい分野でのシェアが大きかった場合にこれをもって需要者に周知であるとして商標権を無効にできるとすれば著しく法的安定性に欠ける。そうすると、周知性を検討する際のシェアや需要者の母数は請求の趣旨にある指定商品とのバランスで考えるべきである。判例によれば、その商品の性質上、需要者が一定分野の関係者に限定されている場合には、その需要者の間に広く認識されていれば足りるとされているが、引用商品や請求の趣旨にある指定商品は一般消費者向けのものであるから、特段に需要者が一定分野の関係者に限定されているといった事情もないし、限定された独自市場が存在するわけでもない。
以上のように考えると、クロス系の補修材の種類が少ないことは引用商品の需要者への周知性を高める方向に作用しないし、クロス系の補修材という細かい分野でのシェアを考えること自体、需要者への周知性を検討する上で意味がない。とすれば、引用商品の需要者は一般消費者であり、狭く考えても「住宅補修のプロ及びDIY愛好者」であると考えられるし、指定商品の範囲を考えれば「住宅」とは「床、クロス、壁」といった分野に限られるべきではない。このことを踏まえて考えると、既に検討したように、引用商品の「プロ向けおよびDIY向け補修材市場」におけるシェアは限りなく低いのであるから、需要者に対して、登録主義の例外として保護を受けるに値する程の周知性を獲得していたとは到底考えられない。
b 参考判例として、平成21年(行ケ)第10411号、平成27年(行ケ)第10012号及び平成25年(行ケ)第10011号がある。
(ク)その他の宣伝活動
a チラシ等
甲第28号証のチラシについては、発行部数は不明であり、発行日の記載もない。甲第29号証のガイドブックについては、多くの商品の中に引用商品が5品掲載されているにすぎないから引用商品が特に宣伝されたというわけでもなく、また部数も多いとはいえない。甲第31号証のチラシも部数が不明であるし、引用商品の扱いは小さい。
b 動画サイト
甲第32号証の動画掲載は本件商標の出願のわずか1年4か月前であり、現在においても8,963回しか再生されていないから、本件商標の出願前において引用商標の周知性に貢献していたとは考えられない。
(ケ)インターネットサイト、ブログ等における掲載
被請求人においても調査したが、出願日前に個人ブログ等に引用商品が紹介されている例は甲第33号証ないし甲第43号証に示された以外になかった。紹介されているのが10件とはあまりにも少ない数であり、その事実をもって、引用商標が需要者の間に広く認識されていたと認めることはできない。なお、同義語を排除した「穴うめ職人」として通常に検索サイトグーグルで検索した場合のヒット件数は4480件であり(乙7-1)、同じキーワードで期間指定を出願日前に設定した場合のヒット件数はわずか25件であった(乙7-2)。
(コ)被請求人による本件商標の使用について
a 被請求人は、本件商標を出願日前からコンクリート補修材(以下、「本件商標に係る使用商品」という。)に「瞬間・穴埋め職人」の商標を使用して販売している(甲44)。
b 本件商標に係る使用商品は出願日の4年3か月前であって引用商品の販売開始と考えられる平成19年10月より早い平成19年4月から販売され、出願日の属する平成23年7月までに2422個を売り上げている(乙8、9)。
c 本件商標に係る使用商品の納入先は約60社に亘る(乙10)。多くは工場環境商品の販売会社で、工場等を顧客とする業者であり、エンドユーザーは主に工場等である。
d 小売業者が一般消費者に対してインターネット上で本件商標に係る使用商品を販売している(乙11)。代表的な市場販売価格は税込み20849円である。
e 以上のように、本件商標に係る使用商品は出願日前から相当数販売されている。引用商品が主として一般消費者に対して販売され、本件商標に係る使用商品は主として業務用に販売されていること、また用途や内容量、価格などが異なることから単純にこの二つの商品の売上を比較することはできないが、商品の出願日までの売上規模は4270万円程度であり(甲26)、本件商標に係る使用商品の売上規模は1143万円程度である(甲8-2)。このように類似する二つの商標が、大きく変わらない程度の売上規模で使用されている状況において、引用商標だけが周知性を獲得したと考えることはできない。
f 株式会社イプロスのアクセス数調査結果報告書(乙12)によれば、出願前の平成23年6月において本件商標に係る使用商品は製造業・建設業合わせて60社からのアクセスを受けている。ここで、被請求人において、取引先や需要者から、引用商品との出所混同を生じたという報告やクレームは現在まで生じていない。これは、引用商品が一般消費者向けのクロスの補修材であるのに対し本件商標に係る使用商品が主に業者向けのコンクリート補修材であることも理由の一つであるが、いずれにせよ、商標法第4条第1項第10号の趣旨は、商品の出所の混同の防止にあるというべきところ、現時点においても出所の混同を生じておらず、また引用商標が出所の混同を生じるほどの自他商品識別力を獲得していないことが推察される。
エ まとめ
引用商標は、本件商標の登録出願及び登録査定の時点において、引用商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていたとは認められない。
よって、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当しない。
(2)商標法第4条第1項第15号の該当性について
引用商標が、本件商標の登録出願日及び登録査定日の時点において、引用商品を表示するものとして、需要者の間に広く認識されていた商標とは認められないものであるところからすれば、本件商標に接する需要者は、引用商標を想起又は連想することはないというべきであるから、本件商標をその指定商品について使用しても、該商品が請求人又はこれと業務上何らかの関係を有する者の取扱いに係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生ずるおそれはない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第19号の該当性について
a 引用商標が、本件商標の登録出願及び登録査定の時点において、引用商品を表示するものとして、日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されていた商標とは認められないものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
b 不正の目的について
審判請求書によれば被請求人は商標出願の1年ほど前より被請求人商品を販売しているとのことであるが、被請求人は出願日の4年3ケ月前である平成19年4月から被請求人商品を販売しており、請求人の主張は妥当ではない。
また、被請求人が「瞬間・穴埋め職人」の表記を使って被請求人商品を販売していることは事実であるが、登録商標に対して何らかの文字を付加・欠落又は変更して使用することは実際の取引においてはしばしば行われることであり、品質を表示する付加的な部分を省いて商標出願をすることは、将来の商品展開を見据えて一般に行われることであり、このことをもって不正の目的があるとはいえない。
(4)商標法第4条第1項第7号の該当性について
上述のように、被請求人に不正の目的があったとは認められないから、本件登録商標の出願の経緯が社会的妥当性を欠くとはいえない。
よって、本件登録商標は商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(5)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号、同項第15号、同項第19号及び同項第7号のいずれにも違反してなされたものではないから、同法第46条第1項の規定により無効とすべきものではない。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知性について
(1)請求人及び被請求人の提出証拠及び主張によれば以下のように認めることができる。
ア 引用商標の使用状況について
(ア)引用商標を付した引用商品の販売
a 引用商標の使用開始時期、使用期間
請求人は、平成17年10月1日に株式会社東陽トレーディングと株式会社ニッケンとが業務統合して現社名となったことが認められる(甲4)。
そして、請求人の前身である株式会社ニッケンが遅くとも平成17年1月には引用商標を付した引用商品の販売を開始し(甲5、6、52、53及び60)業務統合以後は、請求人が引用商品の販売を引き継ぎ、現在に至るまで販売を行っていることが推認される。
b 仲卸を通じた引用商品のホームセンターへの納品状況
甲第52号証ないし甲第54号証からすれば、請求人は引用商品を仲卸であるハンディ・クラウンを通じ、「コーナン」、「ドイト」、「LIXILビバ(旧トステムビバ)」、「ビーバートザン」、「Jマート」、「カインズ」、「セキチュー」、「ハンズマン」、「ビックカメラ」、「マキバ」、「ムラウチホビー」、「島忠」等のホームセンター運営会社を経由し、全国のホームセンター4187店(乙3)中、約400?500店舗に平成17年5月から本件商標の登録出願時である平成23年7月までの約6年間で、約35万7千個が納品されていたと認められる。また、平成23年においては、月平均約6千個の納品があったと認められることから、登録査定時の平成23年12月までには、約40万個が納品されていたものと推認される。
c 店舗における陳列状況
甲第55号証によれば、各ホームセンター店舗内において、様々なDIY商品が陳列されている中で、床や壁等の各種補修材が陳列され、その中に引用商標を付した引用商品も一緒に陳列され販売されていることが認められる。
d インターネット通販
甲第69号証のインターネット検索結果によれば、請求人の通販サイトのほか、楽天市場やビックカメラ等のサイトで取り扱われていたことが確認できるが、これらのサイトを通じてどの程度の販売、取引がされていたかについては確認することができない。
(イ)広告・宣伝活動
a ガイドブック・チラシの配布
請求人は、株式会社ニッケンが引用商品の販売を開始した平成17年5月にその商品のチラシ(甲28)を一般需要者に配布した旨主張するが、その配布時期、配布部数、配布先及び配布方法などは明らかにしていない。
請求人は、平成18年11月に商品ガイドブック(甲29、30)を6000部作成し、ホームセンターや取引先に配布すると共に、ホームセンターに配置して一般需要者に提供したとしているが、ガイドブックを配布された各店舗の配布部数が明らかでないものの、ガイドブックを作成し配布した平成18年当時の店舗数が引用商品を納品していた、平成27年8月当時の店舗数365店舗(甲9、10)の半数程度であったとしても、1店舗あたり約30部程度にすぎない。
さらに、平成22年にも商品チラシ(甲31)を作成、配布した旨主張するが、配布部数、配布先及び配布方法などを明らかにしていない。
b 雑誌、新聞への掲載
甲第58号証は、平成18年5月3日付けの日経流通新聞の「この一品」と題する商品紹介コーナーの記事と認められるところ、引用商標を付した引用商品は、他の商品とセットされた「ハウスケアボックス」の一つとして紹介されている。また、甲第59号証は、2011年7月発行の「MONOQLO」と題する雑誌であるところ、様々な商品の比較がされている記事の一つとして引用商標を付した引用商品が取り上げられたことが認められるが、提出に係る証拠によれば、新聞及び雑誌における記事は、その2回のみである。
c その他
請求人は、引用商標を付した引用商品の使い方を紹介した動画を、インターネットの大手動画サイトであるYouTubeにて、平成22年3月16日より公開したことが認められる(甲32)が、その公開の事実のみにより、需要者の引用商標の認識の程度を推認し得るものではない。
また、ブログにおける掲載として提出された甲第33号証ないし甲第43号証は、平成20年8月から本件商標の登録出願前に投稿されたものであるが、総数11件にすぎない。
そして、甲第65号証の「JAPAN HOME&BUILDING SHOW 2006」の写真によれば、該展示会において、請求人のコーナーが設けられた一角でリペア商品の1つとして、引用商標を付した引用商品が展示されているのが確認できる。また、甲第67号証(ハンディ・クラウンによる証明書)には、平成22年の「JAPAN DIY HOMECENTER SHOW」にて、ハンディ・クラウンのブースで引用商標を付した引用商品を展示した旨が記されているが、上記各展示状況は、様々な補修用商品の一つとして、他の商品とのセットの内の一つとして、又は、他社のブースの一角に引用商標を付した引用商品が置かれているもの等であって、特に、他の商品と比較して請求人の商品を印象づける展示方法がされているというものではない。
イ 補修材市場(引用商標が使用された商品の分野、取引者・需要者の範囲)について
(ア)請求人は、住宅の補修用品を販売する会社は請求人の他に株式会社建築の友、株式会社ベスコがあり、この3社で市場売上げのほとんどを占めている旨主張するが、競合する3社の補修材市場の売上げに対する引用商品の売上占有率は約1%程度(甲7)であることからすれば、住宅の補修用品の市場全体における引用商品のシェアは極めて少ないものといわざるを得ない。
また、請求人商品を始めとするクロス、壁、床材向けの補修用品の需要者・取引者は一般消費者ではなく、住宅補修のプロ及びDIY愛好者並びにホームセンター及び卸売業者である旨主張するが、住宅における補修の対象となるものは「壁、クロス、床」に限られず、「家具、キッチン、トイレ、風呂、ドア、サッシ、外壁、屋根」なども住宅を構成するものであり、住宅における補修の対象に含まれるものであって、これらの補修用の商品も引用商品と同様にホームセンターを中心に販売がされているし、補修用の商品を求める需要者においても、自宅等の補修を自ら行う事を希望する一般需要者がホームセンター等を通じて購入する場合も含まれるから、その需要者・取引者が特定の専門家のみに限定されるとも考えがたい。
例え、引用商標が使用された商品の範囲を「壁、クロス、床」に限定したとしても、同分野が上記3社で市場売上げのほとんどを占めているとする客観的な証拠資料が提出されていないばかりか、乙第2号証によれば、壁補修用品を扱う企業として、請求人が挙げる3社以外に「セメダイン」「アサヒペン」「コニシ」「家庭化学」「カンペハピオ」など多数の企業が挙げられている。
(イ)補修材市場における引用商標を付した引用商品が占める割合について
穴埋め職人(単体)月別売上(甲26)及び商品別売上実績表(甲27)によれば、本件商標の登録出願前(平成19年10月ないし平成23年9月)における引用商標を付した引用商品の年間売上高は、1000万円から1300万円程度で推移している。
補修材業界の売上げが、仮に、請求人の主張するように、請求人、株式会社建築の友及び株式会社ベスコの3社でそのほとんどを占めているとみても、本件商標の登録出願時(平成23年)の補修材市場における引用商標を付した引用商品が占める割合は、3社の売上げ合計が約10億7200万円であり、引用商標を付した引用商品の売上げが約1300万円(甲7)であるから、わずか約1%程度にすぎない。さらに、該3社以外の「セメダイン」等、補修材を取り扱う企業の売上げも考慮するとすれば、その占有率は、さらに低い割合となる。
(2)以上の認定事実からすれば、本件商標の登録出願前における引用商標の使用期間は、平成17年5月からの6年2か月程度と認められるところ、その間の引用商標を付した引用商品の販売状況・宣伝広告状況は、以下のとおりである。
ア 住宅用の補修を用途とする商品は、ホームセンターにおいて、引用商品の用途である壁、クロス、床の補修用に限らず、家具、キッチン、トイレ、風呂、ドア、サッシ、外壁、屋根等も対象とする各種商品が特定の専門家のみならず、一般の消費者にも販売されているものであるところ、全国にホームセンターは4187店あり、引用商標を付した引用商品を取り扱っていたのはその内400店舗?500店舗であって、全体の約10%程度であること、引用商標を付した引用商品を取り扱う店舗における納品数は、1店舗あたり月13?15個程度と、取扱店及び納品数ともに決して多いとはいえない。
なお、請求人が主張する主たる3社に限定した市場とした場合であっても、引用商標が付された引用商品のシェア(甲7)は、約1%程度と極めて低いものである。
イ そして、請求人による引用商標を付した引用商品の宣伝・広告活動をみても、提出された証拠によれば、雑誌、新聞への掲載において平成18年から本件商標登録出願時までに、各1回程度であって、展示会への出展においても、各ブースの中で様々な商品が展示されている中に引用商品数点が展示されているのみである。
また、株式会社ニッケン作成の商品チラシ及び請求人が作成したチラシのいずれも配布時期、配布部数、配布先及び配布方法、商品ガイドブックの配布部数等明らかにされておらず、その他の証拠をみても、引用商標が広く知られていたとは認めることができない。
(3)小括
したがって、引用商標は、本件商標の登録出願の時及び登録査定時に請求人の取扱いに係る商品「壁、クロス、床用の住宅補修用品」の出所を表示するものとして、住宅の補修用品の取引者、需要者間において周知性を獲得していたとは認められない。
2 商標法第4条第1項第10号の該当性について
(1)本件商標と引用商標の類否
本件商標は、上記第1のとおり「穴埋め職人」の文字を標準文字で表してなり、構成中の「穴埋め」の文字と、「職人」の文字からなり、これよりは、構成文字に相応して「アナウメショクニン」の称呼を生じ、「穴を埋める技術を有する人」ほどの意味合いを看取させるものである。
一方、引用商標は、上記第2のとおり、「穴うめ職人」の文字からなるものであり、その構成中「穴うめ」の文字は「穴埋め」の語を容易に理解するから、これよりは、構成文字に相応して「アナウメショクニン」の称呼を生じ、「穴を埋める技術を有する人」ほどの意味合いを看取させるものである。
以上から、本件商標と引用商標の構成文字は漢字の「埋」と平仮名の「う」の違いはあるが、外観上近似し、称呼及び観念を同じくする類似の商標と認める。
(2)本件商標の指定商品と引用商標の使用商品の類否
本件商標の請求に係る指定商品中、第17類「エポキシ樹脂と硬化剤とからなる補修材,充填用パテ,水漏れ補修用の充填用パテ,壁補修用の充填用パテ,防水効果のある充填用パテ,建築用防湿材料」及び第19類「リノリューム製建築専用材料,プラスチック製建築専用材料,合成建築専用材料,アスファルト及びアスファルト製の建築用又は構築用の専用材料,ゴム製の建築用又は構築用の専用材料,しっくい,石灰製の建築用又は構築用の専用材料,石こう製の建築用又は構築用の専用材料,繊維製の落石防止網」は、壁補修用の充填用パテ等の壁補修材を含むものであり、引用商標の使用商品(引用商品)は、クロス・壁・床材などの補修用充填剤であって、両商品は、商品の品質、用途を共通にする場合のある商品であるから、同一又は類似の商品である。
(3)引用商標の周知性
引用商標の周知性については、上記1のとおり、本件商標の登録出願の時及び登録査定時に請求人の取扱いに係る商品「壁、クロス、床用の住宅補修用品」の出所を表示するものとして、取引者、需要者間において周知性を獲得していたとは認められない。
(4)したがって、本件商標は、引用商標と類似し、請求に係る指定商品と使用商品が同一又は類似するとしても、引用商標が周知性を有しないものであるから、商標法第4条第1項第10号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号の該当性について
本件商標は、引用商標とは、類似性の程度が高いとしても、上述したとおり引用商標の周知性が認められないものであるから、商標権者がこれを、本件商標の請求に係る指定商品について使用しても、取引者・需要者において、その商品が請求人あるいは請求人と経済的又は組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように役務の出所について混同を生じさせるおそれがあるとはいえない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 商標法第4条第1項第19号の該当性について
引用商標は、本件商標の登録出願の時及び登録査時に引用商品について周知性を有しないことは上述したとおりである。
また、不正の目的についても、乙第9号証からすれば、被請求人は、本件商標の登録出願以前から「瞬間 穴埋め職人」の文字からなる商標を使用しており、使用している商標をもとに、その一部を抽出し登録出願することに不自然はなく、このことをもって不正の目的があったともいえない。
その他、本件商標が不正の利益を得る目的、請求人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用するものであることを具体的に示す証左はない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当しない。
5 商標法第4条第1項第7号の該当性について
請求人は、引用商標が補修材市場において既に広く知られていたことを前提として、被請求人が本件商標の商標出願をした経緯は著しく社会的妥当性を欠き、商標法の予定する秩序に反するものである旨主張するが、上記1のとおり、本件商標の登録出願がなされた当時、引用商標は周知性を獲得していなかったものであるから、この主張は、前提を欠くものであり採用することができない。
そして、本件商標は、その構成自体において公序良俗に反するものでないことは明らかであり、他に、本件商標をその指定商品について使用することが、社会公共の利益に反し、社会の一般的道徳観念に反するような事情もない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当しない。
6 結論
以上のとおり、本件商標の登録は、請求に係る指定商品について、商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第15号及び同項第19号のいずれの規定にも違反してされたときに該当しないから、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきものでない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲
1(引用商標の(2))(色彩は原本参照)


2(引用商標の(3))





審理終結日 2016-07-28 
結審通知日 2016-08-02 
審決日 2016-09-26 
出願番号 商願2011-52513(T2011-52513) 
審決分類 T 1 12・ 222- Y (X1719)
T 1 12・ 255- Y (X1719)
T 1 12・ 271- Y (X1719)
T 1 12・ 22- Y (X1719)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 平松 和雄 
特許庁審判長 堀内 仁子
特許庁審判官 小松 里美
今田 三男
登録日 2012-01-06 
登録番号 商標登録第5461379号(T5461379) 
商標の称呼 アナウメショクニン 
代理人 畝本 卓弥 
代理人 特許業務法人アイザック国際特許商標事務所 
代理人 神田 知江美 
代理人 畝本 継立 
代理人 國塚 道和 
代理人 春日 秀一郎 
代理人 小川 耕太 
代理人 畝本 正一 
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