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審決分類 審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効としない W2943
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない W2943
管理番号 1327087 
審判番号 無効2015-890071 
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-09-29 
確定日 2017-03-17 
事件の表示 上記当事者間の登録第5722023号商標の商標登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5722023号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲に示すとおりの構成よりなり,平成26年7月3日に登録出願,第29類「粉末きのこ,干しきのこ,加工きのこ,加工野菜及び加工果実,乾燥トリュフ(食用キノコ),きのこを主材とする惣菜,キノコ入りこんにゃく,きのこを使用したスープのもと,カレー・シチュー又はスープのもと,きのこ飯の素,きのこの成分配合のふりかけ,お茶漬けのり,ふりかけ,なめ物」及び第43類「飲食物のメニュー・レシピ又は食材に関する情報の提供,ケータリング,飲食物の提供」を指定商品及び指定役務として,同年10月20日に登録査定,同年11月28日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
本件商標が商標法第4条第1項第8号及び同項第15号に該当するとして,本件商標の登録の無効理由で引用する商標は,請求人が,役務「宿泊施設の提供,飲食物の提供,オンラインブティック,会議施設の提供,駐車場の提供,被服等のクリーニング,送迎サービス,託児サービス,宅配サービス,各種チケットの手配,観光の手配,自動車の貸与,結婚式場の提供」等に使用している「SHANGRI-LA」ないし「Shangri-La」の欧文字よりなるものである。以下,これらをまとめて「引用商標」という場合がある。

第3 請求人の主張
請求人は,本件商標の登録を無効とする,審判費用は被請求人の負担とするとの審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第66号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第8号違反について
(1)引用商標の周知・著名性について
請求人であるシャングリ・ラ インターナショナル ホテル マネジメント リミテッドは,1982年に設立された法人であって,1984年からシャングリ・ラ ホテル シンガポールの運営を引き継ぎ,1991年からシャングリ・ラ グループの全ホテルの管理運営をしている。シャングリ・ラ グループは,シャングリ・ラ ホテルとシャングリ・ラ リゾーツに分けられる。前者は,アジア太平洋,中東,北米,ヨーロッパの主要都市を中心に展開する5つ星のラグジュアリーホテルであり,後者は,世界有数のエキゾチックな旅先で友人や家族とリラックスした滞在を楽しめるリゾートホテルである。
シャングリ・ラの歴史は,シンガポール初のラグジュアリーホテルをオープンした1971年に遡る。1933年に発表されたジェームズ・ヒルトンの小説「Lost Horizon(失われた地平線)」に描かれた伝説の桃源郷「シャングリ・ラ」を体験できるくつろぎの空間とおもてなしを提供することが基本コンセプトである。
請求人が管理運営する「シャングリ・ラ ホテルズ&リゾーツ(SHANGRI-LA HOTELS & RESORTS)」(以下「請求人事業ホテル」という。)は,香港を基点とするアジア太平洋地区のラグジュアリーホテルグループの先駆けとして,また,世界有数のホテルオーナー&マネージメント企業として事業を展開している(アイランド シャングリ・ラ香港は,1991年のオープン以来,香港の代表的なホテルとして有名である。)。現在では,アジア,北米,中東,ヨーロッパに83軒のホテル,37,000室以上の客室を擁し,さらに中国,香港,インド,モンゴル,ミャンマー,フィリピン,シンガボール,カタール,スリランカでの新規オープンに向け,各地で開発が進められている。
請求人事業ホテルが提供しているサービスは多岐にわたる。2009年にオープンしたシャングリ・ラ ホテル東京では,「宿泊施設の提供」はもとより,「飲食物の提供」,「オンラインブティック」,「会議施設の提供」,「駐車場の提供」,「被服等のクリーニング」,「送迎サービス」,「託児サービス」,「宅配サービス」,「各種チケットの手配」,「観光の手配」,「自動車の貸与」,「結婚式場の提供」等のサービスを提供している。
請求人事業ホテルが提供しているサービスは質が高く,高い評価を受けている。その結果,顧客,雑誌,業界パートナーから最も好まれるホテルとして称賛され,グループ全体あるいは各ホテル,リゾーツは,様々な権威ある賞を受賞している。
その他,請求人事業ホテル,シャングリ・ラ ホテル東京は,様々なホテルランキングにおいて高い評価を得ている。
上記したように,世界的に高い評価を得ている請求人事業ホテルは,世界各国の雑誌,新聞等で取り上げられており,また,請求人事業ホテル,シャングリ・ラ ホテル東京は,いわゆるハウスマークである引用商標を用いた宣伝広告をホームページ,雑誌等の媒体を通して世界的に広く行い,また,役務の提供時には引用商標を用いた物・印刷物を使用しているものであるから,引用商標は,遅くとも,本件商標の出願日である2014年7月3日の時点で,既に日本及び全世界の需要者の間で周知・著名となっていたものであり,2014年11月28日の登録日の時点においても同様であることは明らかである。
(2)商標法第4条第1項第8号の該当性
上記(1)において述べたように,引用商標は,本件商標の出願の時点において既に周知・著名性を獲得していたところ,引用商標は,請求人事業ホテルの略称でもある。一方,本件商標は「Shangri-La’s secret」の欧文字を上段に,「香格里拉」の漢字を下段に大きく横書きした構成からなるものであるから,本件商標は,請求人事業ホテルの著名な略称である「Shangri-La」を含んでいるものである。また,大きく表示されている「香格里拉」は「Shangri-La」に照応する漢字表記であり,現実に,中国,香港にあるシャングリ・ラ ホテルにおいては,そのホテル名に「香格里拉」の文字を用いている。したがって,本件商標からは,その大きく表記された「香格里拉」の文字を有することともあいまって,「Shangri-La」の部分から,請求人事業ホテルの著名な略称を認識させるものである。
なお,被請求人は,答弁書において,請求人の略称は,かなり緩く解釈しても,「シャングリ・ラ ホテル」であり,「シャングリ・ラ」のみでは,本人を指し示すものとして一般に受け入れられているとはいえず,商標法第4条第1項第8号にいう「著名な略称」には該当しない旨主張する。
しかしながら,請求人事業ホテルが引用商標を使用して提供してきたホテル業(「宿泊施設の提供」)は,需要者層が限られている特殊な分野ではなく,全ての老若男女を対象としたものであり,何人もが利用できる役務である。ホテル業というものは,広く世間一般を対象にしている役務であるから,ホテル業の名称として需要者に広く知られているということは,本人を指し示すものとして広く一般に知られているということである。
したがって,本件商標は,他人の著名な略称を含むものであって,商標法第4条第1項第8号に該当する。
2 商標法第4条第1項第15号違反について
(1)引用商標の周知・著名性について
引用商標が,本件商標の出願時及び登録時において周知・著名性を獲得していたことについては,上記1(1)において述べたとおりである。
(2)商標の類似性について
引用商標は,「SHANGRI-LA」ないし「Shangri-La」の文字からなるものであり,これよりは「シャングリラ」の称呼を生じ,請求人事業ホテルを認識させるものである。
一方,本件商標は,「Shangri-La’s secret」の欧文字を上段に,「香格里拉」の漢字を下段に大きく横書きした構成からなるものであるところ,「香格里拉」は「Shangri-La」に照応する漢字表記であるから,この「香格里拉」の部分からは「シャングリラ」の称呼を生じるものである。
したがって,両商標は,「シャングリラ」の称呼において共通するから,両者の類似性の程度は高いものである。
(3)本件商標の指定商品・指定役務と引用商標を使用している役務との関連性
請求人事業ホテルに属するシャングリ・ラ ホテル東京では,「宿泊施設の提供」のほか,「飲食物の提供」,「オンラインブティック」,「会議施設の提供」,「駐車場の提供」,「被服等のクリーニング」,「送迎サービス」,「託児サービス」,「宅配サービス」,「各種チケットの手配」,「観光の手配」,「自動車の貸与」,「結婚式場の提供」等の多様なサービスを提供している。
そして,「オンラインブティック」においては,食品を含む,自身のオリジナル商品を販売しているところ,請求人事業ホテル以外の多くのホテルも,独自のオンラインショッピングサイトを起ち上げ,自身のホテル名からなるオリジナルブランドを付した食品を含む,多様な商品の販売を行っているものである。
この点,本件商標の指定商品は,「野菜の缶詰」を含む「加工野菜」,「果実の缶詰」を含む「加工果実」,「きのこを主材とする惣菜」,「きのこを使用したスープのもと」,「カレー・シチューまたはスープのもと」,「お茶漬けのり」,「ふりかけ」等であって,上記した,シャングリ・ラ ホテル東京を含め,多くのホテルが運営するショッピングサイトにおいて扱われている商品と関連性の高いものであり,需要者も共通するものである。
また,請求人事業ホテルにおいては,自身が経営する飲食店をホテル内に有しているところ,上記のように,飲食部門においても数々の賞を受賞しているものであって,高い評価を得ている。したがって,本件商標の指定役務「飲食物の提供,飲食物のメニューレシピ又は食材に関する情報の提供,ケータリング」とも関連性の非常に高いものであり,需要者も共通するものである。
(4)出所混同のおそれの有無について
以上のとおり,引用商標の周知性の程度,引用商標と本件商標との類似性の程度,引用商標が使用されている役務と本件商標の指定商品・指定役務との関連性,需要者の共通性,引用商標の使用者の多角経営化等を総合的に勘案してみれば,本件商標の登録時はもとより,その出願時において,本件商標をその指定商品・指定役務に使用するときには,これに接する需要者が引用商標を連想,想起して,当該商品及び役務を請求人あるいは同人と経済的又は組織的に何等かの関係を有する者の業務に係る商品又は役務であるかのように誤信し,商品又は役務の出所について混同するおそれがあったとみるべきである。
なお,被請求人は,引用商標は「楽園」等を意味する既成語であるから,ホテル業以外の商品・サービスにおいては,既成語としてのイメージがホテル業のイメージを凌駕し,本件商標中の「Shangri-La’s secret」からは,「楽園の秘密」を想起するのが自然であるから,引用商標を想起させず,請求人の人格的権利を毀損しない旨主張する。
しかしながら,引用商標「SHANGRI-LA」は,英国の作家ジェームズ・ヒルトンが1933年に出版した小説「失われた地平線」に登場する架空の地名であり,「楽園」等を意味する既成語との知識は,我が国の平均的な一般の需要者にとっては,高度な知識といえるものであり,辞書等を調べることにより,初めて知ることができるレベルの知識であるから,我が国の平均的な一般の需要者にとって,このような「既成語」としての意味は,想起できないと考えるのが自然である。
したがって,ホテル業以外の商品・サービスにおいては,本件商標中の「Shangri-La’s secret」からは,「楽園の秘密」の意味の方が想起され,引用商標とは混同することがないとする,被請求人の反論は妥当ではない。
(5)まとめ
してみれば,本件商標は,他人の業務に係る商品又は役務と混同を生じさせるおそれがあるから,商標法第4条第1項第15号に該当する。

第4 被請求人の主張
被請求人は,結論同旨の審決を求めると答弁し,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第15号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第8号について。
商標法第4条第1項第8号の趣旨は,「人(法人等の団体を含む。以下同じ。)の肖像,氏名,名称等に対する人格的利益を保護することにある」と解されている(最高裁平成17年7月22日第二小法廷判決,平成16年(行ヒ)第343号)。
そうすると,本号の適用で対象となるのは請求人の国の法令の規定に則って付された正式な名称「シャングリ・ラ インターナショナル ホテル マネージメント リミテッド」,あるいは,その略称となる。
請求人は,本件商標が,請求人事業ホテルの略称「SHANGRI-LA」を含んでいることを前提として本号に該当することを述べているが,これは本号の趣旨を十分に理解していないことによる失当だと考えられる。
また,「人の名称等の略称が8号にいう『著名な略称』に該当するか否かを判断するについても,常に,問題とされた商標の指定商品又は指定役務の需要者のみを基準とすることは相当でなく,その略称が本人を指し示すものとして一般に受け入れられているか否かを基準として判断されるべき」とされている(前掲最高裁判決)。
そうすると,請求人の略称は,「シャングリ・ラ インターナショナルホテル マネージメント」,「シャングリ・ラ インターナショナル ホテル」であり,かなり緩く解釈しても「シャングリ・ラ ホテル」であると考えられる。つまり,後述するように「シャングリ・ラ(SHANGRI-LA)」のみでは本人を指し示すものとして一般に受け入れられているとは到底いえず,「シャングリ・ラ(SHANGRI-LA)」は本号でいう「著名な略称」に該当しない。
以上から,請求人の「本件商標が他人の著名な略称を含んでいる」という主張は誤りであり,本件商標が商標法第4条第1項第8号に該当するものではないことは明らかである。
なお,仮に,「SHANGRI-LA」が本号でいう「略称」(≠「著名な略称」)にあたるとしても,以下で述べるように,本件商標の使用が請求人の人格的権利を毀損することはない。
請求人は,本件商標は「Shangri-La」を含む旨,証拠などを複数挙げて主張している。確かに,本件商標は,大きく「香格里拉」と表記された文字の上に,小さく「Shangri-La’s secret」の文字が表記されているので,請求人が指摘する「Shangri-La」の文字が含まれていることは認める。しかし,そもそも「Shangri-La」とは,英国の作家ジェームズ・ヒルトンが1933年に出版した小説「失われた地平線」に登場する架空の地名であり,「理想郷」とか「楽園」を意味する既成語である。しかも「理想郷」とか「楽園」という語感の良さから,様々な物・商品・サービスの名称に使用される傾向がある。例えば,歌の題名,飲食店の名称,エステサロンの名称,会社の名称,アニメの題名,ラジオ番組名,脱毛サロンの名称など多数存在する。これらの使用がすべて請求人の商標「Shangri-La」と同一・類似であると取引者・需要者が認識するとは考えられない。何故なら,ホテル業の名称としては請求人が主張する「Shangri-La」は確かに知られた存在かもしれないが,同時に上述のとおり既成語でもあるため,ホテル業以外の商品・サービスにおいては,既成語としての「理想郷」とか「楽園」のイメージが,ホテル業の「Shangri-La」のイメージを凌駕するからである。よって,ホテル業以外の商品・サービスについて「Shangri-La」が使用されても,その使用は既成語としての使用にすぎないので,請求人の人格的権利を毀損することにはならない。
また,中華人民共和国雲南省デチェン・チベット族自治州には「シャングリラ市」という地名が存在し,英文表記で「Shangri-La City」,中文表記で「香格里拉」と表記する。2001年12月17日に小説「失われた地平線」の中で描かれている理想郷であるシャングリラ(Shangri-La)を採用してシャングリラ県に改名され,現在はシャングリラ市(香格里拉市)となっている。つまり,「Shangri-La」は,中華人民共和国の地名であるという点でいえば,「Shangri-La」や「香格里拉」は商標としての識別力を有する文言ではなく(商標法第3条第1項第3号),万人が自由に使用できる文言であるともいえる。
さらに,本件商標中の「Shangri-La’s secret」を直訳すれば「シャングリラの秘密」となる。これを「『SHANGRI-LA HOTELS & RESORTS』の秘密」のように解釈するのは常識的に考えて不自然である。一般需要者は,「Shangri-La」を本来の意味である「楽園」と解釈して,「Shangri-La’s secret」からは「楽園の秘密」を想起すると考えるのが自然である。この点からも,本件商標に含まれる「Shangri-La」の表記が引用商標を想起させることはなく,請求人の人格的権利を毀損することはないといえる。
2 商標法第4条第1項第15号について。
請求人は,本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について種々述べているが,まず引用商標の周知・著名性について述べる。「SHANGRI-LA」は既成語であり,「理想郷」とか「楽園」という語感の良さから,様々な物・商品・サービスの名称に使用されているのは上述したとおりである。そのため,「SHANGRI-LA」の使用がすべて引用商標の便乗だと考える者はいない。そして,「SHANGRI-LA」は既成語であるので,例えば,「SHANGRI-LA」というレストランがあった場合でも,引用商標との関連性よりも「理想郷」や「楽園」の方を想起するものと考えられる。そうすると,引用商標は,ホテルの名称としてはある程度知られているとはいえ,「SHANGRI-LA」自体が既成語であるがゆえに,引用商標にホテル業以外の商品・役務にも効力が及ぶような周知・著名性があるとは到底いえない。
さらにいえば,本件商標の構成中「Shangri-La’s secret」の文字部分は,同一の大きさ,同一の書体をもって軽重の差なくまとまりよく構成されており,上述したように「楽園の秘密」が想起されるので,需要者が引用商標と混同することはない。
以上から,本件商標の使用によって請求人の業務に係る商品又は役務と混同を生じるおそれはないと考えられる。
なお,本件商標の「香格里拉」の表記は特徴のある字体から構成されている。引用商標について請求人が提出した証拠書類には,本件商標「香格里拉」の特殊な字体と一致する,あるいは少しでも影響を与えたと思われる表記すらない。本件商標は,この特徴ある字体に自他商品等の識別力を有する商標であり,この点からも本件商標は引用商標と混同を生じるおそれがある商標ではないと考えられる。
3 まとめ
以上のとおりであるから,本件商標は,商標法第4条第1項第8号及び同項第15号には該当しない。

第5 当審の判断
1 認定事実
後掲の証拠(本件商標の登録出願前のものと認められるものに限る。)及び請求人の主張によれば,引用商標である「SHANGRI-LA」ないし「Shangri-La」については,以下のとおり認められる。
(1)甲第3号証は,請求人事業ホテルのウェブサイトであるところ,その上部に「SHANGRI-LA」の文字と「HOTELS and RESORTS」の文字が上下二段に記載され,請求人の会社沿革が表示されているが,当該表示以外の請求人ないし請求人事業ホテルに関連する表示は,そのほとんどが,請求人の名称あるいは各国における請求人事業ホテルの名称として,「シャングリ・ラ ホテル」の片仮名と地名を組み合わせたものであって,「SHANGRI-LA」のみの表示が,直ちに請求人の略称あるいは請求人事業ホテルを表すものであることを認識させるとは認められない。
(2)甲第4号証は,「楽天トラベル」のウェブサイトであるところ,その左上部に「SHANGRI-LA」の文字と「HOTELS and RESORTS」の文字が上下二段に記載され,請求人事業ホテルの宿泊プラン,宿泊費などとともに紹介されているが,上記(1)と同様に,当該表示以外の請求人あるいは請求人事業ホテルに関連する表示は,そのほとんどが,各国における請求人事業ホテルの名称として,「シャングリ・ラ」の片仮名と地名を組み合わせたものであって,「SHANGRI-LA」のみの表示が,直ちに請求人の略称あるいは請求人事業ホテルを表すものであることを認識させるとは認められない。
(3)甲第9号証は,請求人事業ホテルに属する「シャングリ・ラ ホテル 東京」の宣伝冊子といえ,その最終ページに「SHANGRI-LA」の文字と「HOTELS and RESORTS」の文字が上下二段に記載されているが,当該表示以外の請求人あるいは請求人事業ホテルに関連する表示は,そのほとんどが,「シャングリ・ラ ホテル 東京」であって,「SHANGRI-LA」のみの表示が,直ちに請求人の略称あるいは請求人事業ホテルを表すものであることを認識させるとは認められない。なお,当該宣伝冊子の発行部数や配布地域等は,不明である。
(4)甲第12号証は,請求人事業ホテルに属する「シャングリ・ラ ホテル 東京」のウェブサイトであるところ,その上部に「Shangri-La hotel」の文字と「TOKYO」の文字が上下二段に記載されているが,当該表示以外の請求人ないし請求人事業ホテルに関連する表示は,そのほとんどが,「シャングリ・ラ ホテル 東京」であって,「SHANGRI-LA」のみの表示が,直ちに請求人の略称あるいは請求人事業ホテルを表すものであることを認識させるとは認められない。
(5)甲第15号証は,請求人事業ホテルのウェブサイトであるところ,その上部に「SHANGRI-LA」の文字と「HOTELS and RESORTS」の文字が上下二段に記載され,請求人事業ホテルの受賞歴が記載されているが,当該表示以外の請求人あるいは請求人事業ホテルに関連する表示は,そのほとんどが,日本以外の各国における請求人事業ホテルの名称として,「シャングリ・ラ ホテル」の片仮名と地名を組み合わせたものであって,「SHANGRI-LA」の表示のみが,直ちに請求人の略称あるいは請求人事業ホテルを表すものであることを認識させるとは認められない。
(6)甲第16号証は,請求人事業ホテルに属する「シャングリ・ラ ホテル 東京」のウェブサイトであるところ,その上部に「Shangri-La hotel」の文字と「TOKYO」の文字が上下二段に記載され,「シャングリ・ラ ホテル 東京」の受賞歴が記載されているが,当該表示以外の請求人ないし請求人事業ホテルに関連する表示は,「シャングリ・ラ ホテル 東京」であって,「Shangri-La」のみの表示が,直ちに請求人の略称あるいは請求人事業ホテルを表すものであることを認識させるとは認められない。
(7)甲第17号証は,請求人事業ホテルに属する「シャングリ・ラ ホテル パリ」のウェブサイトであるところ,その上部に「Shangri-La hotel」の文字と「PARIS」の文字が上下二段に記載され,「シャングリ・ラ ホテル パリ」の受賞歴が記載されているが,当該表示以外の請求人ないし請求人事業ホテルに関連する表示は,「世界的に認められたシャングリ・ラならではのアジアンホスピタリティをご体験いただけシャングリ・ラ ホテル パリは,以下の賞を受賞しております。」であって,ここでの「シャングリ・ラ」は,「シャングリ・ラ ホテル(Shangri-La hotel)」の略称として使用されているものと認められる。
(8)甲第18号証及び甲第19号証は,「Business Traveller」の2008年10月号及び2013年10月号であるところ,これらは英文による雑誌であり,「Shangri-La」,「SHANGRI-LA」の表示があるが,これらが,直ちに請求人の略称あるいは請求人事業ホテルを表すものであることを認識させる日本語による記述は認められない。
(9)甲第22号証は,「Japan Today」のウェブサイトであるところ,これらは英文によるウェブサイトであり,「Shangri-La」の表示があるが,これが,直ちに請求人の略称あるいは請求人事業ホテルを表すものであることを認識させる日本語による記述は認められない。
(10)甲第33号証ないし甲第35号証は,中国,ヨーロッパ,香港及び東南アジアの,新聞・雑誌・インターネットの外国語による記事であり,これらに「Shangri-La」の表示がされているが,これらが,直ちに請求人の略称あるいは請求人事業ホテルを表すものであることを認識させる日本語による記述は認められない。
(11)甲第39号証は,香港の新聞に掲載された「Shangri-La Hotel Tokyo」の広告であるが,これに「Shangri-La hotel」の文字と「TOKYO」の文字が上下二段に記載されているが,「Shangri-La」の表示のみが,直ちに請求人の略称あるいは請求人事業ホテルを表すものであることを認識させる日本語による記述は認められない。
(12)甲第41号証及び甲第42号証は,雑誌「FINANCIAL TIMES」2010年10月2日号及び同年3月6日号に掲載された「Shangri-La Hotel Tokyo」の英語広告であるが,これらに「Shangri-La hotel」の文字と「TOKYO」の文字が上下二段に記載されているが,「Shangri-La」の表示のみが,直ちに請求人の略称あるいは請求人事業ホテルを表すものであることを認識させる日本語による記述は認められない。
(13)甲第45号証及び甲第47号証は,雑誌「CHiNAビジネス」2009年8月号及び雑誌「Whenever」2009年4月号に掲載されたシャングリラホテル蘇州の紹介記事であり,これに「Shangri-La hotel」の文字と「SUZHOU,CHINA」の文字が上下二段に記載されているが,当該表示以外の請求人ないし請求人事業ホテルに関連する表示は,「シャングリラホテル蘇州」,「蘇州シャングリラホテル」ないし「Shangri-la Hotel,Suzhou」(「,」を空白で表したものを含む。)であって,「SHANGRI-LA」のみの表示が,直ちに請求人の略称あるいは請求人事業ホテルを表すものであることを認識させるとは認められない。なお,当該雑誌の発行部数や販売地域等は,不明である。
(14)甲第48号証は,「Business Traveller」2008年10月号であるところ,これらは英文による雑誌であり,これに「SHANGRI-LA」の文字と「HOTELS and RESORTS」の文字が上下二段に記載されているが,「SHANGRI-LA」の表示のみが,直ちに請求人の略称あるいは請求人事業ホテルを表すものであることを認識させる日本語による記述は認められない。
(15)甲第50号証及び甲第51号証は,「Forbes」2004年11月15日号及び「FORTUNE」2004年12月6日号であるところ,これに「SHANGRI-LA」の文字と「HOTELS and RESORTS」の文字が上下二段に記載されているが,「SHANGRI-LA」の表示のみが,直ちに請求人の略称あるいは請求人事業ホテルを表すものであることを認識させる日本語による記述は認められない。
(16)甲第52号証は,「JAL GUIDE ’98?’99」であるところ,これに「Shangri-la Hotel Beijing」との表示があるが,これだけでは,「Shangri-la」の表示のみが,直ちに請求人の略称あるいは請求人事業ホテルを表すものであることを認識させるとは認められない。なお,当該ガイドの発行部数や配布地域等は,不明である。
2 引用商標の周知性
上記1で認定した事実によれば,本件商標の登録出願前に,引用商標である「SHANGRI-LA」ないし「Shangri-La」について我が国の需要者向けに発せられた情報といえるものは,請求人事業ホテルのウェブサイト(甲3,12,15,16,17),請求人事業ホテルに属する「シャングリ・ラ ホテル 東京」の宣伝冊子(甲9),「楽天トラベル」のウェブサイトでの請求人事業ホテルの宿泊プラン等の紹介(甲4),発行部数及び販売地域等が不明な2雑誌での紹介記事(甲45,47)並びに発行部数及び配布地域等が不明な「JAL GUIDE」(甲52)のみしかないところ,請求人事業ホテルのウェブサイトにおいて,請求人事業ホテルの受賞歴に関する記載(甲15?17)があることから,請求人事業ホテル自体が一定の評価を受けていたことは認められるが,それら各賞を受賞したことが広く世間一般に知られていたと認めるに足りる証拠はなく,また,上記各証拠においては,片仮名による「シャングリ・ラ」が「シャングリ・ラ ホテル(Shangri-La hotel)」の略称として使用されていたもの(甲17)がわずか1件あるにすぎず,それ以外のものは,いずれも「SHANGRI-LA」又は「Shangri-la」の表示のみで,直ちに請求人の略称あるいは請求人事業ホテルを表すものであることを認識させるものとは認められないから,上記各証拠のみでは,引用商標である「SHANGRI-LA」ないし「Shangri-La」との表示だけで,請求人の略称あるいは請求人事業ホテルを表すものとして広く認識されていたとは認めることができない。
3 本件商標について
本件商標は,別掲に示すとおり,上段に「Shangri-La’s secret」の欧文字(以下「本件文字部分」という)を同書同大の文字で一連に横書きし,その下段には,文字らしき図形(以下「本件図形部分」という。)を顕著に表した構成からなるものである。
本件文字部分は,「シャングリラ」と読まれ,「(英国の作家James Hilton1900?1954の小説『失われた地平線』に登場する架空の地名から)理想郷。楽園。」(甲53)の意味を有する「Shangri-La」の英語に,名詞の所有格語尾を表す「’s」を付し,その後ろに続けて「秘密」の意味を有する「secret」の英語を1文字分の空白を介して書してなることから,本件文字部分からは,その構成文字に相応して,「シャングリラズシークレット」の一連の称呼とともに,「シャングリ(・)ラ(Shangri-La)」の語の上記意味を知っている者であれば,「理想郷の秘密」ないし「楽園の秘密」程の観念が,そのことを知らない者であっても「シャングリ(・)ラ(Shangri-La)の秘密」といった観念が生じるものといえる。
次に,本件図形部分は,何らかの文字らしきものをモチーフにしていると思われるものの,高度に図案化が施されているため,一見して特定の文字を認識することができるとはいえず,本件図形部分からは特定の称呼及び観念は生じないというべきである。
以上より,本件商標の文字部分は全体として一体不可分の造語というべきであり,したがって,本件商標は「シャングリラズシークレット」の称呼のみを生じ,「理想郷の秘密」,「楽園の秘密」あるいは「シャングリ(・)ラ(Shangri-La)の秘密」程の観念が生じるというのが相当である。
4 本件商標の商標法第4条第1項第8号該当性
上記2のとおり,引用商標は,本件商標の登録出願時において,請求人の略称を表示するものとして著名となっていたとは認められないから,本件商標は,他人の著名な略称を含む商標とはいえず,商標法第4条第1項第8号に該当しない。
5 本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性
上記2のとおり,引用商標は,本件商標の登録出願時において,請求人の略称あるいは請求人事業ホテルを表すものとして広く認識されていたとは認めることができない。
そして,本件商標は,上記3のとおり,その構成中の「Shangri-La」の文字部分のみが抽出されるとすべき特段の事情も見出せないことから,引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれにおいても非類似の商標というべきである。
そうすると,本件商標をその指定商品及び指定役務について使用しても,これに接する取引者,需要者が,該商品及び役務が請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品又は役務であるかのように誤信することはなく,その出所について混同を生ずるおそれはないというべきである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
6 まとめ
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第8号及び同項第15号に該当するものではないから,同法第46条第1項により,無効とすることはできない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲(本件商標)


審理終結日 2016-10-24 
結審通知日 2016-10-27 
審決日 2016-11-08 
出願番号 商願2014-55498(T2014-55498) 
審決分類 T 1 11・ 23- Y (W2943)
T 1 11・ 271- Y (W2943)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 内田 直樹 
特許庁審判長 早川 文宏
特許庁審判官 田村 正明
田中 幸一
登録日 2014-11-28 
登録番号 商標登録第5722023号(T5722023) 
商標の称呼 シャングリラズシークレットシャングリラ、シャングリラズシークレットコーカクリラ、シャングリラズシークレット、シャングリラズ、シャングリラ、シャングリエルエイ、シャングリ、シークレット、コーカクリラ 
代理人 幡 茂良 
代理人 橋本 良樹 
代理人 蔵田 昌俊 
代理人 小出 俊實 
代理人 特許業務法人JAZY国際特許事務所 
代理人 吉田 親司 
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