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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X36
管理番号 1327056 
審判番号 取消2015-300594 
総通号数 209 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2017-05-26 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2015-08-11 
確定日 2017-03-13 
事件の表示 上記当事者間の登録第5230737号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5230737号商標の指定役務中、第36類「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5230737号商標(以下「本件商標」という。)は、「テンポアップ」の片仮名を横書きしてなり、平成20年9月5日に登録出願、第35類「フランチャイズシステムに基づく不動産仲介業の運営における経営の診断及び指導,不動産に関する市場調査並びにその分析及び助言,不動産の賃貸事業計画に関するコンサルティング,不動産及びそれらの設備・施設に関する広告,不動産及びそれらの設備・施設に関する販売促進のための企画及び実行の代理」及び第36類「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供」を指定役務として、同21年5月15日に設定登録されたものである。
そして、本件審判の請求の登録日は、平成27年8月25日である。
また、本件審判請求の登録前3年以内の期間である平成24年8月25日から同27年8月24日までの期間を、以下「要証期間」という。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を審判請求書、弁駁書、口頭審理陳述要領書及び上申書において要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第20号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定役務中、第36類「建物の管理,建物の貸借の代理又は媒介,建物の貸与,建物の売買,建物の売買の代理又は媒介,建物又は土地の鑑定評価,土地の管理,土地の貸借の代理又は媒介,土地の貸与,土地の売買,土地の売買の代理又は媒介,建物又は土地の情報の提供」(以下「取消請求役務」という場合がある。)について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれによっても使用された事実が存しないから、その登録は、商標法第50条第1項により取り消されるべきものである。
2 弁駁の理由
(1)株式会社ジェー・ティ・ピーが本件商標を使用していた証明について
被請求人は、平成21年頃から平成26年4月の名義変更するまで本件商標を使用していたと主張し、乙第2号証として、株式会社ジェー・ティ・ピー(以下「ジェー・ティ・ピー社」という。)のホームページ(以下「ジェー・ティ・ピーHP」という場合がある。)を提出しているが、ジェー・ティ・ピーHPは、ねつ造であり、有効なものではない。
なぜならば、被請求人は、その掲載時期を「平成21年(2009年)頃から平成26年4月」としているが、ウェブアーカイブ閲覧サイト「Internet Archive Wayback Machine」(以下「ウェブアーカイブ閲覧サイト」という。)によると、平成21年(2009年)4月6日のジェー・ティ・ピーHPには本件商標の表示がない(甲3)。さらに、平成21年(2009年)11月1日(甲4)、平成23年(2011年)3月5日(甲5)、平成22年(2012年)1月30日(甲6)、そして名義変更の間際の平成25年(2013年)9月15日(甲7)の当該ホームページにも本件商標の表示がなく、現存する全てのアーカイブにおいても本件商標の掲載は認められない。
また、ジェー・ティ・ピーHPには日付が記載されておらず、いつのものなのか不明である。
よって、ジェー・ティ・ピーHPは、審判請求がなされたことを知った後に本件商標の使用実績を工作するために、ねつ造されたものであることは明らかである。
(2)株式会社トパーズが本件商標を使用している証明について
被請求人は、平成26年4月に名義変更をしてから現在も本件商標を使用していると主張し、乙第3号証として、株式会社トパーズ(以下「トパーズ社」という場合がある。)のホームページ(以下「トパーズHP」という。)を提出している。
今現在、確かに被請求人のウェブサイトにはトパーズHPに表されたものと同じ内容のページが存在するが、トパーズHPは審判請求がなされたことを知った後に作られたものであり、有効なものではない。
なぜならば、被請求人は、その掲載時期を「平成26年4月の名義変更をしてから」としているが、ウェブアーカイブ閲覧サイトによると、平成27年(2015年)5月10日のトパーズHPには本件商標の表示がない(甲8)。そして、平成27年(2015年)6月10日(甲9)及び平成27年(2015年)7月10日(甲10)の当該ホームページにも本件商標の表示がなく、さらには本件審判請求日前日の平成27年(2015年)8月10日の当該ホームページにも本件商標の表示がなく(甲11)、請求人は本件の審判請求日の前日に当該ウェブサイトを確認したが、本件商標の表示は確認できなかった。そして乙第3号証には日付が記載されておらず、いつのものなのか不明である。
よって、トパーズHPは、審判請求がなされたことを知った後に本件商標の使用実績を工作するために作られたものであることは明らかである。
(3)ジェー・ティ・ピーHP及びトパーズHPの商標の使用について
ジェー・ティ・ピーHP及びトパーズHPがねつ造されたものではなかったとしても、当該証拠は、本件商標の使用を証明するものではない。ジェー・ティ・ピーHP及びトパーズHPに表された被請求人のホームページにおいて本件商標「テンポアップ」が表示されているのは、会社概要の業務内容の中の一か所のみであり、しかも、単に商標、登録番号、指定役務の情報を列挙しただけである。このようにホームページの会社概要の業務内容に単に商標、登録番号、指定役務の情報を列挙しただけでは、標章の使用について規定した商標法第2条第3項第1号ないし第10号のいずれの行為にも該当しない。
(4)インターネット検索エンジンでの表示について
被請求人は、「テンポアップ」と「トパーズ(あるいはTOPAZ)」を検索するとインターネットの検索エンジンで表示されるため、これらは、本件商標の広告的使用(商標法第2条第3項第8号)に該当すると主張しているが、被請求人の今現在のウェブサイトでは「テンポアップ」と「トパーズ(あるいはTOPAZ)」という文字が単に含まれているため検索にヒットしているにすぎない。実際の「テンポアップ」の使用態様は上記(3)に記載したとおり、商標法上の使用に該当しないものであるため、このように検索にヒットしただけで、「本件商標の広告的使用(商標法第2条第3項第8号)に該当する」とするのは失当である。
そもそも、被請求人のホームページに「テンポアップ」という言葉が入ったのは少なくとも審判請求後であり、それは、甲第8号証ないし甲第11号証からも明らかであって、その証拠に被請求人は乙第4号証の1及び2においてその日付を明らかにしていない。
よって被請求人の主張は失当である。
(5)株式会社きずなとの使用契約書について
被請求人は、乙第5号証として、株式会社きずな(以下「きずな社」という。)との「商標使用許諾契約書」(以下「本件使用契約書」という場合がある。)を提出し、本件商標を請求に係る役務に関し継続的に使用していると主張しているが、きずな社が実際に本件商標を使用していることを証明する書類を提出していない。
よって、本件使用契約書は、本件商標の使用を示すものではない。
なお、乙第5号証のうち、「商標使用許諾契約書変更契約書」の乙(きずな社)の住所は「石川県金沢市三ツ屋町口19-1」と記載されているが、日付は「平成26年4月1日」となっており、この時点では法人登記情報(甲12)によると、きずな社の住所は「石川県金沢市黒田一丁目129番地」に移転されているため、この契約書には瑕疵がある。
(6)トパーズ社の本件商標の使用態様について
被請求人は、トパーズ社は、現在テナント募集を行なう際には、乙第6号証の写真(以下「本件使用写真」という。)のように、空き物件の窓や扉に本件商標を付して使用しているとしているが、本件使用写真は具体的な日付等が客観的に示されていない。
よって、当該写真が要証期間内に撮影されたものであることが確認できない。さらに、撮影場所も明らかにされておらず、撮影者も不明であることから、審判請求がなされたことを知った後に被請求人が使用実績を工作するためにこれらの看板を作成して写真を撮影したことは明らかである。
(7)請求人が審判請求をするまでの経緯
請求人は、本審判請求をする前の平成27年8月10日に、被請求人に自ら電話をし、本件商標権の譲渡について交渉を行った。その時に本件商標の使用の有無について問うたところ、使用をしていないとの返答であった。
(8)まとめ
以上により、被請求人の答弁書は、要証期間内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定役務のいずれかについての登録商標の使用していることを証明するものではない。
3 口頭審理陳述要領書(平成28年7月22日付け)における主張
(1)被請求人のウェブアーカイブ閲覧サイトに関する主張について
被請求人は、ウェブアーカイブ閲覧サイトの内容は、根拠資料として信用できるものであるか定かではないと主張しているが、このサイトは、過去の特許庁における不使用取消審判に係る使用の証拠として採用された例があるほか(甲13、甲14)、他の審判事件の審決においても証拠として採用されている(甲15)。
(2)被請求人の乙第2号証ないし乙第4号証に関する主張ついて
被請求人は、本件商標をポスターとして使用している旨主張しているが、被請求人は、本件商標を本件取消審判の請求に係る役務について使用した事実を証明する証拠を提出していない。
(3)被請求人の乙第5号証及び乙第6号証に関する主張ついて
被請求人は、ポスターが貼られたのは審判請求の登録前であると主張しているが、それを証明する証拠を何ら提出していない。
(4)被請求人の「請求人が審判請求をするまでの経緯」に関する主張について
被請求人の主張は、本件商標の使用の事実とは関係がなく、失当である。
(5)その他
被請求人は、審理事項通知書の合議体の暫定的見解に対して何ら意見を述べていない。
4 上申書(平成28年9月15日付け)における主張
(1)被請求人の「平成21年10月から平成24年6月頃までの主張」について
この期間については、要証期間外であるため、被請求人の主張は失当であり、証拠物件についても有効なものではない。
被請求人は、「不動産賃貸の仲介を業としている株式会社アパートマン(以下、『アパートマン社』という。)に、賃貸借募集を委託した」と主張しているが、これを客観的に証明するような、きずな社とアパートマン社間の契約書等が一切提出されておらず、信用することができない。
被請求人は、「広告の方法としては、乙第7号証の広告を賃貸物件に提示して」としているが、乙第7号証が要証期間内に広告として賃貸物件に提示されていたことを客観的に証明する証拠が提出されていない。
被請求人は、「乙第8号証のようにテナント物件に広告を掲示し商標の使用を開始した」としているが、乙第8号証の写真の、撮影日、撮影場所、撮影者が明らかにされておらず、この写真が要証期間内に貼られていた事実を客観的に証明していない。
(2)被請求人の「平成24年6月頃から現在までの主張」について
ア 被請求人は、きずな社の貸借人の募集の方法としては、アパートマン社に、本件商標である「テンポアップ」のフリーダイヤル受付業務を担当してもらいと主張しているが、これを客観的に証明するような、きずな社とアパートマン社間の契約書等が一切提出されておらず、信用することができない。
被請求人は契約書の写し(乙15ないし乙19)を提出しているが、これらの契約書には本件商標すら記載されておらず、また、被請求人が主張するようなフリーダイヤルも記載されておらず、本件商標の使用を証明できるような書類ではない。
被請求人は、「本件商標である『テンポアップ』のフリーダイヤル受付業務」云々と主張しているが、この行為が商標法第2条第3項のどの行為に該当しているのか不明である。
被請求人は賃貸契約の経緯(乙20)を提出しているが、その記載内容からでは広告にテンポアップという商標が掲載されていたか否かについてすら不明であり、「テンポアップの(株)きずなさん」とはどういった意味で「テンポアップ」という言葉が用いられているのかも不明である。
よって、賃貸契約の経緯(乙20)は、本件商標の使用を客観的に証明し得ない。
イ 被請求人は、本件使用写真(乙6)は、AないしDの4物件(以下、乙第6号証の「A」ないし「D」を、それぞれ、「A物件」、「B物件」、「C物件」及び「D物件」という場合がある。)の写真であるとしているが、「当該写真は、平成28年2月2日に撮影されたものである」としているため、要証期間内の商標の使用を証明するものではない。また、被請求人は「募集の広告の掲示は各物件が空き室になった時点から継続している」云々と主張しているが、それを裏付ける客観的な写真等は提出されていない。
被請求人が提出した「解約通知書」(乙21、乙23)、「賃貸借契約解約届」(乙22)及び「不動産賃貸借契約書」(乙24)によって、AないしDの4物件の住所が明らかになっているため、これを基に請求人は以下のように独自に調査した。
(ア)A物件(金沢市増泉1丁目アピタ金沢別棟)については、2015年5月に撮影されたGoogleストリートビューでは、TOPAZのテナント募集の広告が確認できるが、テンポアップの広告は確認できない(甲16(特に2枚目))。
(イ)B物件(石川県金沢市西金沢1丁目5番地)については、2015年5月に撮影されたGoogleストリートビューでは、TOPAZのテナント募集の広告が確認できるが、テンポアップの広告は確認できない(甲17(特に2枚目))。
(ウ)C物件(石川県野々市市御経塚1丁目523)については、Googleストリートビューでは2015年5月に撮影されたものしかなく、まだ空き店舗になっていなかったため確認できなかった(甲18)。
(エ)D物件(金沢市三ツ屋町口45)については、2015年8月に撮影されたGoogleストリートビューでは、アパートマン社のテナント募集の広告が確認できるが、テンポアップの広告は確認できない(甲19)。また、2015年5月に撮影されたGoogleストリートビューでは、やはりアパートマン社のテナント募集の広告が確認できるが、テンポアップの広告は確認できない(甲20)。
(オ)上記(ア)ないし(エ)の写真がA物件ないしD物件であることは、本件使用写真と見比べると間違いないことが分かり、本件使用写真において写っている「テンポアップ」の広告は、上記写真ではいずれも確認できず、被請求人が「テンポアップ」の広告が要証期間中に使用されていたとする主張は虚言であるといわざるを得ない。
(カ)上記(ア)及び(イ)のA物件及びB物件の写真と本件使用写真のA物件及びB物件とを見比べると、(ア)及び(イ)の写真にはTOPAZの広告のみが掲載されており「テンポアップ」の広告が無く、一方、平成28年2月2日に撮影されたとされる本件使用写真のA物件及びB物件にはTOPAZの広告に加えて「テンポアップ」の広告が突如として掲載されている。
(キ)上記(エ)のD物件の写真と本件使用写真のD物件とを見比べると、(エ)の写真にはアパートマン社の広告のみが掲載されており「テンポアップ」の広告が無く、一方、平成28年2月2日に撮影されたとされる本件使用写真のD物件の写真には、アパートマン社の広告に加えて「テンポアップ」の広告が突如として掲載されている。
よって、被請求人が、本件商標の取消しを免れるための工作として審判請求の登録後の平成28年2月2日に「テンポアップ」の広告をA物件ないしD物件に貼り、これを撮影したと考えるのが自然である。
(3)まとめ
以上により、被請求人の上申書は、要証期間内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定役務のいずれかについての登録商標の使用していることを証明するものではない。

第3 被請求人の主張
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、旨の審決を求め、審判事件答弁書、口頭審理陳述要領書及び上申書において要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証から乙第24号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 答弁の理由
(1)被請求人について
商標権者であるジェー・ティ・ピー社は、その名称をトパーズ社に変更していることから(平成27年12月3日付け表示変更登録申請)、上記二つの名称による本件商標の使用がある。ジェー・ティ・ピー社は、昭和62年に設立した会社であり、乙第1号証の履歴事項全部証明書にも示すように、宅地建物取引業及び不動産の管理並びに不動産の賃貸を第1に掲げて業務を行なう会社であり、石川県金沢市を中心に業務を行なっているが、近年は関東方面においても店舗の管理を行うかたわら、商業施設の開発(スーパー、飲食、商業店舗)も行っている。
(2)ジェー・ティ・ピー社が本件商標を使用していた証明
ジェー・ティ・ピー社は、ジェー・ティ・ピーHPにて、当社事業内容を以下のように本件商標とともに「不動産の代理・仲介・管理業」、「土地・建物賃貸業」として表示していた(乙2)。この掲載については、平成21年(2009年)頃から平成26年4月の名義変更するまで(乙1)使用していた。しかし、ジェー・ティ・ピー社の名称をトパーズ社に変更したので、ジェー・ティ・ピーHPは、トパーズHPに引き継がれ、現在はこのホームページは使用されていない。
乙第2号証に示すように、街づくり店づくりの「株式会社J・T・P」として(商標権者として)、不動産の代理・仲介・管理業、土地・建物賃貸業を行なうことを表示して、本件商標と商標登録番号を表示して使用していた。これは、役務の提供に当たりその提供を受ける者の当該指定役務の提供を提供に係る物に登録商標を付するときに、その商標が登録商標である旨の表示をするものであり、商標法第73条の規定の趣旨に沿った商標登録表示である。そして、そのホームページには、賃貸物件の表示をして、そこをクリックすると、賃貸物件情報が表示されるようになっており、賃貸物件の空きや終了(済み)が表示されるようになっている。また、不動産を貸す/売る、をクリックすると、不動産を貸す/売るときの流れが表示される。
したがって、本件商標をその指定役務中、取消請求役務に使用していた。
(3)トパーズ社が本件商標を使用している証明
トパーズ社は、そのホームページで当社事業内容を確認すると、本件商標とともに「不動産の代理・仲介・管理業」、「土地・建物賃貸業」として役務の詳細が掲載されるようにしている(乙3)。この掲載については、平成26年4月の名義変更をしてから現在も使用している。
乙第3号証の1に示すように、街づくり店づくりの「株式会社トパーズ」として、不動産の代理・仲介・管理業、土地・建物賃貸業を行なうことを表示して、そして本件商標と商標登録番号を表示して使用している。これは、役務の提供に当たりその提供を受ける者の当該指定役務の提供を提供に係る物に登録商標を付するときに、その商標が登録商標である旨の表示をするものであり、商標法第73条の規定の趣旨に沿った商標登録表示である。そして、そのホームページには、賃貸物件の表示をして、そこをクリックすると、賃貸物件情報が表示されるようになっており(乙3の2)、賃貸物件の空きや終了(済み)が表示されるようになっている。また、不動産を貸す/売る、をクリックすると、不動産を貸す/売るときの流れが表示される。
このように、本件商標をその指定役務中、取消請求役務に使用している。
(4)インターネットの検索エンジンでの表示
トパーズ社は、GoogleやYahooのインターネットの検索エンジンで「テンポアップ」と「トパーズ(あるいはTOPAZ)」として検索すると、本件商標とともに「街づくり店舗づくりの株式会社TOPAZ」として役務(店づくり)が掲載されるようになっており(乙4の1)、また、GoogleやYahooのインターネットの検索エンジンで「テンポアップ」と「トパーズ(あるいはTOPAZ)」と「金沢」として検索すると、本件商標とともに「街づくり店舗づくりの株式会社TOPAZ」として役務(店づくりのほか、賃貸物件情報)が掲載されるようになっており(乙4の2)、これらは、本件商標の広告的使用(商標法第2条第3項第8号)に該当する。
また、GoogleやYahooのインターネットの検索エンジンで「テンポアップ」と「テナントアップ」等として検索すると、本件商標とともに「街づくり店舗づくりの株式会社TOPAZ」として役務(店づくり)が掲載されるようになっており(乙4の3)、これらは、本件商標の広告的使用(商標法第2条第3項第8号)に該当する。
したがって、本件商標をその指定役務中、取消請求役務に使用している。
(5)きずな社との使用契約書
ジェー・ティ・ピー社は、平成24年6月20日、きずな社に対し、平成24年8月1日から平成29年7月31日までの5年間、本件商標について商標使用許諾契約を締結している(乙5)。また、ジェー・ティ・ピー社からトパーズ社へ名義変更した平成26年には「商標使用許諾契約書変更契約書」を締結しており、当該原契約書の各条項を従前どおりすべて適用することを確認している(乙5)。
したがって、本件商標を取消請求役務に関し継続的に使用している。
(6)トパーズ社の本件商標の使用態様
トパーズ社は、現在テナント募集を行なう際には、本件使用写真(乙6)のように、空き物件の窓や扉に本件商標を付して使用している。
したがって、本件商標をその指定役務中の取消請求役務に使用している。(7)むすび
上記のとおり、本件商標は、要証期間内に日本国内において、商標権者により本件商標がその請求に係る指定役務について使用されている。
2 口頭審理陳述要領書(平成28年7月11日)における主張
(1)請求人のウェブアーカイブ閲覧サイトについて
請求人は、ウェブアーカイブ閲覧サイトを根拠として、ジェー・ティ・ピーHPをねつ造であるとして、有効ではないとするが、そもそも該閲覧サイトの内容は根拠資料として信用できるものであるか定かではなく、該閲覧サイトの内容は編集したり書換えたりすることが可能であると考えられる。
(2)乙第2号証ないし乙第4号証について
被請求人は、本件商標をポスターとして使用しており、使用していたからこそ会社概要の業務内容中に、本件商標、登録番号、指定役務の情報を列挙しているのである。該使用は、商標法第2条第3項第8号に該当する。
(3)乙第5号証及び乙第6号証について
被請求人は、きずな社との商標使用許諾契約を結び(乙5)、きずな社は本件商標をポスターに使用してテナント募集中の物件に広告として使用してきた。請求人は本件使用写真(乙6)について、「審判請求がなされたことを知った後に被請求人が使用実績を工作するためにこれらの看板を作成して撮影したことを明らかである。」と主張するが、該ポスター(テナント募集/お問い合わせ先/テンポアップの文字が表示された張り紙)は、本件審判請求の登録前からきずな社の賃貸物件に貼られていたものである。
すなわち、本件商標の使用写真の撮影は審判請求の登録後ではあるが、ポスターが貼られたのは審判請求の登録前であり、該使用は、商標法第2条第3項第8号に該当する。
したがって、本件商標は、要証期間内に日本国内において、商標権者により本件商標が取消請求役務について使用されている。
(4)「請求人が審判請求をするまでの経緯」について
請求人は、「本審判請求をする前の平成27年8月10日に、被請求人であるトパーズ社に自ら電話をし、本件商標権の譲渡について交渉を行った。その時に本件商標の使用の有無について問うたところ、使用をしていないとの返答であった。」とするが、被請求人は使用をしていないとの返答はしておらず、被請求人は使用していた。請求人の、「使用をしていないとの返答があった。」とする主張は虚偽の主張である。
3 上申書(平成28年9月2日付け)における主張
(1)平成21年10月から平成24年6月頃まで
被請求人は、平成21年5月15日に本件商標権を取得したのち、不動産賃借人募集の広告として利用するため乙第7号証のとおりデザイン化して、平成21年10月頃から乙第8号証の写真のようにテナント物件に広告を掲示し商標の使用を開始した。
被請求人における賃借人募集の方法は乙第9号証の図表のとおりである。
不動産賃貸の仲介を業としているアパートマン社に、賃貸借募集を委託した。広告の方法としては、乙第7号証の広告を賃貸物件に掲示して、連絡先とされている電話番号の電話受付をアパートマン社に行ってもらい「テンポアップ」の名称で電話対応をしてもらっていた。顧客から連絡が入った時は、その旨報告してもらいアパートマン社に仲介を依頼するか、あるいは被請求人自らが交渉して賃貸借契約の締結に至るという方法をとっていた。そのような方法で契約成立に至った物件が少なくとも乙第10号証の表のとおり存在し、その時の賃貸借契約書が乙第11号証ないし乙第13号証である。
以上のとおり、被請求人は平成21年10月頃から平成24年6月頃まで本件商標を使用していた。
(2)平成24年6月頃から現在まで
ア 被請求人において、平成24年6月から一部賃貸人募集の変更をしており、その方法の説明は乙第14号証である。被請求人は賃借物件の一部についてきずな社に賃貸管理を委託することとした。具体的には、被請求人の物件をきずな社に賃貸して、きずな社がサブリースとして賃借人の募集、賃借物件の管理などを行う方法とした。
きずな社の賃借人の募集の方法としては、アパートマン社に、本件商標である「テンポアップ」のフリーダイヤル受付業務を担当してもらい、その後の進め方は、上記(1)と同様である。
イ このような方法で「テンポアップ」への電話の問い合わせは、月5件程度以上存在したが、契約締結に至ったものは、少なくとも「建物賃貸契約書」(乙15ないし乙18)に示すものなどが存在する。なお、「土地賃貸借契約書」(乙19)は、被請求人ときずな社との間の賃貸借契約である。
このうち、乙第15号証の賃借人である内糸氏については、本件審判継続後に賃貸借契約締結の経緯を確認した(乙20)。要旨としては、内糸氏は、平成26年11月下旬に物件に掲示されていた「テンポアップ」フリーダイヤルの電話番号に架電して、賃貸借契約成立に至ったものである。すなわち「テンポアップ」という商標は、平成26年11月下旬頃には物件に掲示され使用されていた。
また、乙第16号証は、契約成立が平成24年9月1日であり、乙第17号証は契約成立が平成27年8月1日であり、乙第18号証は契約成立が平成27年8月4日であるから、その頃「テンポアップ」という商標は使用されていた。
(3)本件使用写真(乙6)は、AないしDの4物件の写真であり、この写真は平成28年2月2日に撮影されたものであるが、募集の広告の掲示は各物件が空き室になった時点から継続しているものである。
ア A物件は、「解約通知書」(乙21)のとおり、解約日は平成26年4月末日であり、その頃から「テンポアップ」の商標は掲示されている。この物件は、現在においてもテナントが決まっていないので、「テンポアップ」の商標は現在まで継続して使用されている。
イ B物件は、「賃貸借契約解約届」(乙22)のとおり、退去予定日は平成23年11月30日である。この物件は現在まで数か月単位でテナントが入れ替わりしているので、募集広告の状況は、本件使用写真と同じものではないが、テナントが退去したのちは、募集のために本件使用写真と同じような広告を掲示していた。
ウ C物件は、「解約通知書」(乙23)のとおり、退去予定日は平成27年5月31日であり、その頃から「テンポアップ」の商標は掲示されている。この物件は現在においてもテナントが決まっていないので、「テンポアップ」の商標は現在まで継続して使用されている。
エ D物件は、「不動産賃貸契約書」(乙24)記載の物件である。この物件は、被請求人がサブリースするために亀田氏から平成17年5月15日に借り入れてから、現在まで空き室のままである。当時の募集広告の状況は定かではないが、少なくとも平成24年頃からは本件使用写真のような広告を掲示していた。
以上のとおり、平成24年6月頃から現在まで「テンポアップ」の商標は継続して使用されてきた。

第4 当審の判断
1 本件商標の使用について、被請求人の提出に係る乙各号証及び同人の主張によれば、以下のとおりである。
(1)本件商標権者による使用について
ア 本件商標権者について
被請求人の履歴事項全部証明書(乙1)及び被請求人のホームページ(乙2、乙3)によれば、本件商標権者(被請求人)は、昭和62年7月25日に設立された法人であり、設立の目的には、「1.宅地建物取引業及び不動産の管理並びに不動産賃貸業/2.店舗の企画、開発、管理業」などの記載があり、平成26年4月1日に、商号が「株式会社ジェー・ティ・ピー」から「株式会社トパーズ」に変更されている。
イ 証拠について
(ア)乙第2号証は、ジェー・ティ・ピー社のホームページとされるものであり、その最上部には「会社概要/Outline」の表示があり、その下部には「会社概要」の項目に「会社名」、「設立」、「資本金」などの記載があり、また、「事業内容」の項目には、「不動産の代理・仲介・管理業/土地・建物賃貸業」の記載の下部に、「テンポアップ(商標登録第5230737号)」の表示が他の7件の登録商標と並び表示されており、さらに、その下部には指定役務と思しき表示がある。
なお、乙第2号証には、作成日、印刷日の表示は無いが、証拠説明書によれば、平成28年2月2日に作成されたものである。
(イ)乙第3号証の1及び2は、トパーズ社のホームページとされるものであり、乙第3号証の1には、上部の「会社概要」の項目に、「会社名」、「設立」、「資本金」などの記載があり、また、下部の「事業内容」の項目には、「不動産の代理・仲介・管理業/土地・建物賃貸業」の記載の下部に、「テンポアップ(商標登録第5230737号)」の表示が、他の1件の登録商標と並び表示されており、さらに、その下部には指定役務と思しき表示がある。
また、乙第3号証の2には,「賃貸物件情報INDEX」の見出しの下、各賃貸物件について写真と共に貸店舗物件の名称、住所が表示されているが、「テンポアップ」の表示は見当たらない。
なお、乙第3号証には、作成日、印刷日の表示は無いが、証拠説明書によれば、平成28年2月2日に作成されたものである。
(ウ)乙第4号証の1ないし3は、「テンポアップ トパーズ」、「株式会社トパーズ 金沢 テンポアップ」及び「テンポアップ テナントアップ」の各文字をキーワードとして、インターネット検索エンジンで検索した結果であり、その検索結果がヒット件数と共に表示されており、例えば、乙第4号証の1には、「会社概要-街づくり店舗づくりの株式会社TOPAZ」の見出しの下「テンポアップ(商標登録第5230737号)・テナントアップ(商標登録第5232339号)フランチャイズシステムに基づく不動産仲介業の運営における経営の診断及び指導、不動産に関する市場調査並びにその分析及び助言、不動産の賃貸事業計画に関する・・・」と記載された記事情報がある。
なお、乙第4号証の1ないし3には、印刷日の表示は無いが、証拠説明書によれば、平成28年2月2日に作成されたものである。
(エ)乙第7号証は、「金沢ビル-垂れ幕デザイン」の表題の不動産賃借人募集の広告であり、「テナント求む」の文字を左側に縦書きし、その右側に「テンポアップ」の文字を横書き、該文字の下部に電話番号が表示され、さらにその下部には、「不動産のカリスマ『テンポアップ』物件をお探しならご連絡ください!」の文字が表示されており、広告の枠の上部には「No.1」及びページの右上部には「1/2ページ」の表示があり、右下部には「2008/10/31」の表示がある。
(オ)乙第8号証は、「金駅ビルII」の物件の写真であり、その入り口付近には、「テナント求む」の文字が大きく横書きされた広告が表示されているが、該文字以外に判別可能な文字は見いだせず、その他、当該写真において、判読可能な広告等を見いだせない。
(カ)乙第10号証の2は、平成20年3月21日付けの「株式会社ジェー・ティ・ピー」と「株式会社テンビリオン」間の「金沢市昭和町・・・金沢駅東口前J・T・P貸店舗定期建物賃貸借契約書」の解約に関する覚書である。
(キ)乙第11号証は、管理業者及び貸主をジェー・ティ・ピー社とし、媒介業者をアパートマン社とする、「金駅ビルII 3階」に関する「建物賃貸借契約書」であり、乙第12号証及び乙第13号証は、管理者及び貸主を「株式会社シンク・タンク」とする、「金駅ビルII 1階」及び「金駅ビルII 2階」に関する「建物賃貸借契約書」である。
ウ 本件商標の使用について
上記ア及びイによれば、被請求人(商標権者)は、不動産の管理、賃貸などを業としていること、及び被請求人のホームページ(乙2及び乙3)に、本件商標と同一認められる「テンポアップ」の文字を表示していることが認められる。
しかしながら、該ホームページの「テンポアップ」の表示は、該文字がその登録番号と共に他の登録商標と並べて表示されているものであって、たとえ「テンポアップ」の文字が事業内容と共に表示されているとしても、単に被請求人が保有する登録商標の一つが表示されていると理解されるにすぎないものであるから、該表示が、被請求人の事業を表す自他役務識別標識として認識されるものとはいえず、かつ、「テンポアップ」の文字を取消請求役務について使用していると認められる事実を見いだすこともできないから、「テンポアップ」の文字を取消請求役務の広告に使用したと認めることができない。
また、検索エンジンの結果表示(乙4)における「テンポアップ」の表示は、該文字が含まれている記事情報が表示されているところ、被請求人が該文字を取消請求役務について使用していると認められる事実を見いだすことができないから、これをもって、「テンポアップ」の文字を取消請求役務の広告に使用したと認めることはできない。
さらに、上記ホームページ(乙2及び乙3)及び検索エンジンの結果表示(乙4)は、いずれも要証期間外のものであり、かつ、請求人の提出した2009年4月6日ないし2015年8月10日の期間の被請求人のホームページ(甲3ないし甲11)に、「テンポアップ」の表示が見当たらないことは、要証期間内の被請求人のホームページに、「テンポアップ」の表示が無かったことをうかがわせる事情といえる。
そうとすれば、これらの証拠をもって、商標権者が、本件商標を要証期間内に取消請求役務に使用したものとは認められない。
そして、上記イ(エ)によれば、「テンポアップ」の文字が表示された広告(乙7)が2008年(平成20年)10月頃に作成されたことは推認し得るものの、該広告の作成者が明らかにされておらず、かつ、その作成日は要証期間外であり、さらに、これが、要証期間内に商標権者によって使用された事実を証する証拠の提出はない。
また、乙第10号証ないし乙第13号証において、「テンポアップ」の表示を見いだすことはできず、かつ、乙第12号証及び乙第13号証の貸主及び管理者「株式会社シンク・タンク」とは如何なる者であるのか明らかでなく、さらに、被請求人の主張によれば、被請求人による上記使用は、平成21年10月頃から平成24年6月頃までであるところ、該期間は要証期間外である。
してみれば、被請求人が提出した上記証拠によっては、要証期間内に、商標権者が本件商標を、取消請求役務に使用していたことを証明したものと認めることができない。
(2)きずな社による使用について
ア 証拠について
(ア)乙第5号証は、平成24年6月20日付けの、甲をジェー・ティ・ピー社、乙をきずな社とする本件商標に関する「商標使用許諾契約書」であり、ジェー・ティ・ピー社が、平成24年8月1日から平成29年7月31日までの期間において、きずな社に本件商標の専用使用権を許諾する旨の記載がある。
(イ)乙第6号証は、テナント物件4件(A物件ないしD物件)の写真であるところ,いずれの物件の写真にも「テナント募集」及び「テンポアップ」の文字が表示された広告が掲示されているが、これら全ての広告において、下部が黒塗りされており、上記以外の記載内容は「お問い合わせ」の文字以外はその内容が明らかではない。また、乙第6号証には、作成日、作成者等の表示は見い出せないが、証拠説明書によれば、平成28年2月2日にきずな社により撮影されたものである。
(ウ)乙第15号証ないし乙第18号証は、管理業者及び貸主をきずな社とする、「きずな5 B・C区画」、「きずな5 D区画」「きずな5 G区画」及び「きずな5 E区画」に関する「建物賃貸借契約書」である。
(エ)乙第19号証は、賃貸人をジェー・ティ・ピー社、賃借人をきずな社とする、「石川県野々市市御経塚・・・」の「土地賃貸借契約書」である。
(オ)乙第20号証は、平成28年8月23日付けの、「きずな5 B・C区画」を平成26年12月15日から借りていた内糸氏の陳述であり、上記物件の契約の経緯として、「・・空きテナントを見つけ、その空きテナントに貼ってあったフリーダイヤルに電話したところ、テンポアップの(株)きずなさんに現地案内をして頂きました。・・・最終的にきずな5 B・C区画を借りることを決め、平成26年12月13日に建物賃貸借契約書(事業用)を締結しました。」の記載がある。
(カ)乙第21号証ないし乙第23号証は、被請求人宛の、A物件ないしC物件の「解約通知書」又は「賃貸借契約解約届」である。
また、乙第24号証は、媒介業者及び管理業者を被請求人とする、D物件の「不動産賃貸契約書」である。
イ 本件商標の使用について
上記アによれば、きずな社は、商標権者から本件商標の使用についての許諾を得ていた者であること、及び被請求人の賃貸物件の一部について、きずな社がその管理を行っていたことなどが認められる。
そして、被請求人は、きずな社がアパートマン社に、本件商標「テンポアップ」でフリーダイヤルの受付業務を委託していた旨、及び本件使用写真(乙6)のA物件ないしD物件に、各物件が空き室になった時点(乙21?乙24)から物件の募集広告の掲示を行い「テンポアップ」商標を掲示していた旨を主張している。
しかしながら、本件使用写真(乙6)には、本件商標と社会通念上同一といえる「テンポアップ」の文字が表示された募集広告が貼付されていることが認められるものの、これが誰による広告であるのかが明らかでなく、かつ、要証期間内にA物件ないしD物件に、上記広告が貼付されていた事実を裏付ける証拠は見いだすことができず、さらに、本件使用写真の作成日は、要証期間外である。
また、被請求人の上記主張によれば、物件の受付業務において「テンポアップ」を名乗っていたのはアパートマン社であり、きずな社が、商標「テンポアップ」を使用していた事実を裏付ける証拠は見いだすことができず、加えて、該アパートマン社ときずな社の関係を明らかにする証拠の提出もない。
そして、乙第20号証の内糸氏の陳述は、「テンポアップの(株)きずなさんに現地案内をして頂きました。」と述べるのみで、「テンポアップ」が何を意味するのかも明らかにされておらず、同氏が上記のように認識した理由の説明もなく、その客観的な裏付けもないから、本件商標の使用を証明する証拠として、具体性に乏しいものといわざるを得ず、これをもって、きずな社が本件商標を取消請求役務に使用していた根拠とすることはできないものである。
また、契約書等において、物件名を含め本件商標の表示は見いだすことができない。
そうとすれば、被請求人が提出した上記証拠によっては、要証期間内に、きずな社が本件商標を、取消請求役務に使用していたことを証明したものと認めることができない。
(3)小括
してみれば、きずな社が、仮に本件商標の専用使用権者であったとしても、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、要証期間内において、本件商標(社会通念上同一と認められる商標を含む。)を、取消請求役務について、使用した事実を認めることができないものであるから、商標法第50条第2項に係る所定の要証事項を証明したものということはできない。
2 まとめ
以上のとおり、被請求人は、要証期間内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが取消請求役務のいずれかについて、本件商標を使用していたことを証明したものと認めることはできない。
また、被請求人は、取消請求役務について本件商標を使用していないことについて正当な理由があることも明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、その指定役務中の「結論掲記の指定役務」について、商標法第50条の規定により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2017-01-11 
結審通知日 2017-01-13 
審決日 2017-02-01 
出願番号 商願2008-73119(T2008-73119) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (X36)
最終処分 成立  
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 中束 としえ
榎本 政実
登録日 2009-05-15 
登録番号 商標登録第5230737号(T5230737) 
商標の称呼 テンポアップ 
代理人 木森 有平 

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