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審決分類 |
審判 一部申立て 登録を維持 W05 審判 一部申立て 登録を維持 W05 審判 一部申立て 登録を維持 W05 |
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管理番号 | 1326096 |
異議申立番号 | 異議2016-900253 |
総通号数 | 208 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2017-04-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-08-15 |
確定日 | 2017-03-16 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第5849338号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第5849338号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
1 本件商標 本件登録第5849338号商標(以下「本件商標」という。)は、「くんたん」の文字を標準文字で表してなり、平成27年10月29日に登録出願、第5類「薬剤」及び第10類「医療用機械器具」を指定商品として、同28年5月13日に設定登録されたものである。 2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が登録異議の申立ての理由において引用する商標は、次の(1)及び(2)のとおりであり、現に有効に存続しているものである。 (1)国際登録第927379号商標(以下「引用商標1」という。)は、「KUVAN」の文字を横書きしてなり、2007年(平成19年)5月29日に国際商標登録出願、第5類「Pharmaceutical preparations, namely pharmaceuticals comprising tetrahydrobiopterin (BH4) and related compounds for treatment of phenylketonuria.」を指定商品として、平成20年7月11日に設定登録されたものである。 (2)国際登録第1002133号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、2009年3月25日にUnited States of Americaにおいてした商標の登録出願に基づくパリ条約第4条による優先権を主張して、2009年(平成21年)4月29日に国際商標登録出願、第5類「Pharmaceutical preparations, namely, pharmaceuticals comprising tetrahydrobiopterin (BH4) and related compounds for treatment of phenylketonuria.」を指定商品として、平成22年3月26日に設定登録されたものである。 以下、上記引用商標1及び引用商標2をまとめて「引用商標」という場合がある。 3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標について、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものであるから、その登録は、同法第43条の2第1号により、取り消されるべきである旨申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第18号証を提出した。 (1)本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とについて 本件商標の指定商品中の第5類「薬剤」は、引用商標の指定商品と同一又は類似の商品を含むものであるから、引用商標の指定商品と抵触する。 (2)本件商標と引用商標とが類似することについて ア 称呼 本件商標からは「クンタン」の称呼を生じるのに対し、引用商標からは「クヴァン」の称呼を生じるところ、両称呼は、最も強い印象を与える語頭に位置する「ク」の音と語尾の「ン」の音が共通し、中間音である「ンタ」と「ヴァ」が相違するにすぎないものである。 しかも、本件商標の2音目の「ン」は、鼻音かつ弱音であり、前音「ク」に自然にアクセントが置かれて強く発音されることもあいまって、当該「ク」の音に吸収され、埋没しやすいため、明瞭に聴取される音とはいい難い。 さらに、本件商標の3音目の「タ」と引用商標の「ヴァ」とは、母音が共通するものであるから、「クンタン」と「クヴァン」とを一連に称呼した場合、「ンタ」と「ヴァ」の音の差異は、中間に位置することもあり、極めて印象の薄い違いにすぎない。 そうすると、「クンタン」と「クヴァン」とは、称呼の類否において重視される語頭の音と語尾の音が同一であり、中間部における差異も商標全体の印象に大きな影響を及ぼすものではないことから、全体として称呼したときは、互いに聴取し誤るおそれがある。 よって、本件商標と引用商標とは、称呼上、類似する。 イ 外観 本件商標は平仮名で表された標準文字による商標であるのに対し、引用商標は全ての文字が英字で表された商標であるところ、薬剤の包装に日本語表記と英字表記の名称が併記されることが一般的に行われていること(甲4)からすれば、両商標の外観上の差異は、顕著なものではない。 むしろ、本件商標を英字で表記した場合には「KUNTAN」となることから、そのつづりは、外観上、引用商標と紛らわしく、仮に、本件商標が併記されていた場合であっても、時と場所を異にするときは、取引者、需要者が見誤る可能性がある。 ウ 観念 本件商標と引用商標とは、いずれも特定の意味を有しない造語であり、観念上、類否を判断することはできないが、逆に造語であることが、両商標の称呼上及び外観上の類似性を助長することになる。 すなわち、商標の観念において明瞭な差異がある場合には、称呼や外観に多少の類似性があったとしても、観念の相違により、全体としては相紛れることなく識別することができるが、造語のように特定の観念を生じない場合には、取引者、需要者は、称呼及び外観のみによって識別せざるを得なくなるため、称呼や外観における類似点が商標全体についての類否判断に及ぼす影響は、既成の語の場合と比べて、大きなものとなる。 特に、日本人は、漢字を使用し、文字の意味や形からも情報を得て、言葉を判別しているため、引用商標のように、全て英字で表された造語の場合、読みづらく、覚えづらいことは疑いがないところ、「KUVAN」は、既成の語が結合したり、既成の語の一部を切り取ったりした造語ではなく、既成の語に近似する語もない。 よって、「KUVAN」に接した需要者は、何らかのイメージを持つことはなく、単に漠然とした音の感じやスペリングの印象によって商標を記憶することになる。 他方、本件商標も、何か別の言葉や概念を連想させる言葉ではないため、英字で表された「KUVAN」との類否を後から曖昧な記憶によって判断することになり、混同を生じる可能性が高いといえる。 (3)申立人について ア 申立人は、1997年に米国カリフォルニア州に設立された製薬会社であって、主に重症の遺伝性の疾患や症状に対する革新的なバイオ医薬品の製造、販売に力を注いでいるところ、引用商標は、2007年に申立人とMerk Serono社が共同で開発したフェニルケトン尿症(PKU)治療薬の名称である(甲5)。 イ フェニルケトン尿症(PKU)とは、先天的な遺伝子異常によって、フェニルアラニンというアミノ酸を代謝する酵素が欠乏しているために、食べ物から摂取されるフェニルアラニンが体内に蓄積し、精神発達障害を起こす難病(甲7)であり、近年になり、「テトラヒドロビオプテリン」が体内にあるフェニルアラニン代謝酵素の働きを助けることが判明したため、フェニルケトン尿症の治療薬として用いられるようになってきている(甲8)。 「KUVAN」は、2007年に米国で開発、認可された初めてのフェニルケトン尿症専用の治療薬であり、フェニルアラニンの血中濃度を下げる働きがあるため、画期的なフェニルケトン尿症の治療薬として、世界的にも広く知られており(甲9)、日本国内においても、フェニルケトン尿症に関する治療薬として、紹介されている(甲10)。 ウ 申立人は、米国、ヨーロッパ、ラテンアメリカを含む世界中で薬剤を販売しているが、「KUVAN」は、申立人の主力商品の一つであり、2015年の売上げは、約240,000ドルである(甲11)。 また、申立人は、世界各国で「KUVAN」商標を出願、登録しており、その数は、230件以上になる(甲12)。 エ 上記したとおり、「KUVAN」が世界で初めて開発されたフェニルケトン尿症の治療薬であることに加え、申立人が世界中で販売し、商標を出願、登録しているものであることを考慮すると、「KUVAN」は、取引者、需要者に広く知られている商標といえる。 (4)本件商標権者及び取引の実情 本件商標権者(甲13)は、「せんねん灸」(商標登録第1938733号)というお灸関連の商品で有名な会社である(甲14)。お灸の原料となる「もぐさ」は、第5類「薬剤」に含まれる(甲15)。 ところで、本件商標権者の商品のパッケージをみると、登録商標である「せんねん灸」の文字のほかに、「SENNENKYU」の英字表記も表示している(甲16)。また、本件商標権者のホームページでは、外国人向けにお灸の使用方法等について、英語の説明書を掲載していることから、本件商標権者の商品の需要者には外国人も一定の割合で含まれていることが推認できる(甲17)。 このような本件商標権者の使用態様を考慮すると、本件商標についても、商品のパッケージ又は説明書等に「KUNTAN」と表示される可能性が高く、その場合には、「くんたん」と日本語表記が併記されたとしても、英字表記された「KUNTAN」と引用商標とは、外観上、紛らわしい上、称呼において類似するものとなり、これに、本件商標及び引用商標のいずれも特定の観念やイメージが生じないために、類否判断における称呼及び外観の及ぼす影響が大きいことを考慮すると、本件商標と引用商標とを同一又は類似の指定商品について使用するときは、需要者が、その商品が同一の事業者の製造、販売に係るものと誤認、混同するおそれが高いから、本件商標と引用商標とは、類似の商標である。 また、申立人の商品「KUVAN」は、上述のとおり、フェニルケトン尿症の治療薬として周知であるため、本件商標が「生薬・黒焼き及びもぐさ」以外の薬剤、特に、申立人の商品と同じ粉状又はタブレット状の飲み薬(甲18)について使用されるときは、薬の取り違えが起こる可能性がますます高くなるといわざるを得ない。 特に、フェニルケトン尿症は、子供の頃に適切な治療をしないと重大な精神発達障害を生じる病気であるため、「KUVAN」を服用するのは、主に子供であるところ、判断力が未熟な子供が服用する薬は、大人に比べて取り違えが起こりやすいから、「KUVAN」と類似する商標の一般薬剤についての使用は、重大な事故を誘発すると危惧する。 (5)まとめ 以上のとおり、本件商標と引用商標とは、称呼、外観及び観念並びに取引の実情を考慮すると、類似する商標であり、指定商品も同一又は類似するものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものである。 4 当審の判断 (1)「KUVAN」の文字について 申立人は、甲第5号証ないし甲第12号証を挙げて、「KUVAN」が世界で初めて開発されたフェニルケトン尿症の治療薬であることに加え、申立人が世界中で販売し、商標を出願、登録しているものであることを考慮すると、「KUVAN」は、取引者、需要者に広く知られている商標といえる旨主張する。 そこで、申立人が挙げる上記甲各号証をみると、申立人は、ドイツのMerck Serono社と共同で「Kuvan」という商品名のフェニルケトン尿症治療薬を開発したこと、当該治療薬が、2007年にアメリカ食品医薬品局(FDA)により認可(承認)されたこと、引用商標と同一の商標が、我が国を含む世界各国において出願又は登録されていることはうかがえるものの、引用商標が、我が国において、申立人の主張に係るフェニルケトン尿症の治療薬について、いつから、どのような態様で取引に用いられているかなどは何ら明らかでない。 そうすると、申立人の提出に係る上記甲各号証からは、「KUVAN」の文字が、申立人の業務に係る商品「フェニルケトン尿症治療薬」を表示するものとして、我が国の取引者、需要者の間に広く知られているものということができない。 (2)商標法第4条第1項第11号該当性について ア 本件商標 本件商標は、前記1のとおり、「くんたん」の文字を標準文字で表してなるところ、該文字は、辞書類に載録されている既成の語ではないから、特定の意味合いを想起させることのない一種の造語として看取、理解されるとみるのが相当である。 してみれば、本件商標は、「クンタン」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 イ 引用商標 (ア)引用商標1 引用商標1は、前記2(1)のとおり、「KUVAN」の文字を横書きしてなるものであるところ、該文字は、辞書類に載録されている既成の語ではないから、特定の意味合いを想起させることのない一種の造語として看取、理解されるとみるのが相当である。 してみれば、引用商標1は、「クヴァン」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 (イ)引用商標2 引用商標2は、別掲のとおりの構成からなるところ、その構成中の図形部分は、特定の事物を表してなるものとはいえず、また、その構成中の「KUVAN」の文字部分との関係においては、一種の装飾として看取、理解されるとみるのが相当である。 そうすると、引用商標2は、その構成中の「KUVAN」の文字部分が分離され、独立して自他商品の識別標識の機能を果たし得るものといえる。 そして、「KUVAN」の文字は、上記(ア)のとおり、特定の意味合いを想起させることのない一種の造語として看取、理解されるものである。 してみれば、引用商標2は、その構成中の「KUVAN」の文字部分に相応して、「クヴァン」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものである。 ウ 本件商標と引用商標との類否 本件商標と引用商標とは、それぞれ、上記ア及びイのとおりの構成からなるものであるから、外観上、明確に区別されるものである。 また、本件商標から生じる「クンタン」の称呼と引用商標から生じる「クヴァン」の称呼とは、それぞれ、4音又は3音という短い音構成からなるものである上、前者が「ク」と「タ」の音にアクセントがあるように聴取されるものであるのに対し、後者は「ク」の音にアクセントがあるように聴取されるものであって、その音調、音感において相違するものであるから、称呼上、聴き誤るおそれはない。 さらに、本件商標と引用商標とは、いずれも特定の観念を生じないものであるから、観念上、相紛れるおそれはない。 してみれば、本件商標と引用商標とは、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのないものであり、ほかに本件商標と引用商標とが類似するとみるべき特段の事情も見いだし得ないものであるから、これらを総合勘案すれば、両商標は、非類似の商標というべきである。 なお、申立人は、取引の実情などとして、本件商標については「KUNTAN」と英字表記される可能性が高く、その場合には、引用商標と外観において紛らわしい旨主張するが、申立人の主張は、本件商標とは全く別異の商標を仮定してするものであるから、その前提において失当である。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 (3)まとめ 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号に違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、維持すべきものである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲 引用商標2(国際登録第1002133号商標) |
異議決定日 | 2017-03-06 |
出願番号 | 商願2015-104785(T2015-104785) |
審決分類 |
T
1
652・
261-
Y
(W05)
T 1 652・ 263- Y (W05) T 1 652・ 262- Y (W05) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 大橋 良成 |
特許庁審判長 |
田中 亨子 |
特許庁審判官 |
田中 敬規 豊泉 弘貴 |
登録日 | 2016-05-13 |
登録番号 | 商標登録第5849338号(T5849338) |
権利者 | セネファ株式会社 |
商標の称呼 | クンタン |
代理人 | 小谷 武 |
代理人 | 藤吉 繁 |
代理人 | 特許業務法人不二商標綜合事務所 |
代理人 | 木村 吉宏 |