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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない X14
管理番号 1326000 
審判番号 取消2015-300877 
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2017-04-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2015-12-04 
確定日 2017-02-28 
事件の表示 上記当事者間の登録第5381024号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5381024号商標(以下「本件商標」という。)は、「ブラックコブラ」の片仮名を標準文字で表してなり、平成22年9月29日に登録出願、第14類「キーホルダー,宝石箱,身飾品,宝玉及びその模造品,貴金属製靴飾り,時計」を指定商品として、同23年1月7日に設定登録されたものである。
なお、本件審判の請求の登録は、平成27年12月16日にされている。 また、本件審判請求の登録前3年以内の期間である平成24年12月16日から同27年12月15日までの期間を、以下「要証期間」という。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の指定商品中「時計」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由、答弁に対する弁駁、口頭審理における陳述及び上申の内容を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証から甲第6号証を提出している。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中「時計」について、継続して過去3年以上日本国内において商標権者又は使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により上記商品についての登録は取り消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
請求人は以下の点において、本件商標が使用された事実には疑義があると考えるので、被請求人に対し、釈明を求める。
(1)通常使用権について
被請求人は、審判事件答弁書において、株式会社ニッセン(以下「ニッセン」という。)が本件商標権に関する通常使用権者であると述べる。しかし、商標登録原簿によれば、ニッセンは本件商標の通常使用権者として登録されておらず、また、通常使用権が存在することを示す資料が提出されていない。よって、請求人はニッセンが本件商標の通常使用権者であることを示す資料の提出を求める。
(2)登録商標と使用商標との同一性について
本件商標は、片仮名の「ブラックコブラ」であるから、片仮名以外の文字による、例えば「BLACK COBRA」のような記載は本件商標の使用には該当しない。
つまり、被請求人が提出した証拠方法における「BLACK COBRA」の表示は、本件商標の使用とはいえない(乙4?乙7)。
(3)提出された資料中の「ブラックコブラ」の記載が商標の使用に該当するか
被請求人は、乙第2号証を提出し、ニッセンに提供した商品企画書において「ブラックコブラ」「BLACK COBRA」の文字が記載されていると述べているが、本件商標は「ブラックコブラ」であるから、「BLACK COBRA」は登録商標と同一ではなく、登録商標の使用とはいえない。また、かかる商品企画書における「ブラックコブラ」の記載が、商標法第2条第3項で規定された商標の使用には該当しない。
(4)商標使用の時期
被請求人によって提出された乙第2号証及び乙第3号証は、作成年月日の記載がないから、本件商標が使用された時期が不明である。
3 口頭審理陳述要領書(平成28年8月5日付け)
(1)被請求人が、ニッセンを通常使用権者として本件商標の使用を許諾した事実の証明について
被請求人が提出した乙第8号証によれば、被請求人とニッセンとの間で、平成23年3月7日から平成24年2月28日までの期間において、本件商標の使用を許諾する契約が締結されていた事実が確認できる。しかしながら、当該契約がその後も有効に存続しているか否かは、当該書面から確認することができない。また、その他当該通常使用権が存在していた事実を証明する書面は見受けられない。
すなわち、本件審判の請求の登録前三年以内の期間において、被請求人が、ニッセンを通常使用権者として本件商標の使用を許諾した事実は証明されていない。
(2)登録商標と使用商標の同一性について
被請求人の提出した証拠に記載された商標と本件商標との同一性について検討する。
ア 乙第4号証の1に掲載された腕時計のフェイスには、黒色の文字盤上に白抜きで「BLACK」及び「COBRA」の文字(以下「使用商標」という。)が二段書きで表されている。
一方、本件商標は「ブラックコブラ」の片仮名を横書き一列で表わしてなるものである。
両商標を比較すると、片仮名と英文字との相違及び色彩の相違があるだけでなく、本件商標が横一列に一体的に表されているのに対し、使用商標は「BLACK」と「COBRA」とが二段に分かれて表されており、両商標は、外観上、全く異なる印象をもって看取、把握されるものである。
すなわち、当該使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標であるとはいえない。
イ 乙第4号証の1に掲載されている「BLACK/COBRA及び図形」の表示は、中心に向かって黒色から白色のグラデーションで表わされた四角形の内部に、黒色の英文字で「BLACK」及び「COBRA」の文字が二段書きで表されており、該文字の右側にコブラのイラストと思しき図形が描かれてなるものである。
一方、本件商標は「ブラックコブラ」の片仮名を横書き一列で表わしてなるものである。
両商標を比較すると、片仮名と英文字の相違及び一段書きと二段書きとの相違があるだけでなく、本件商標は文字のみで構成されているのに対し、使用商標は、全体構成中必要不可欠な構成部分であるコブラのイラスト図形と文字とが有機的に結合された構成であり、その構成態様を明確に異にし、また、両商標は、外観上全く異なる印象をもって看取、把握されるものであるのみならず、常に同一の称呼及び観念のみを生ずるともいえない。
すなわち、当該使用商標は、本件商標と社会通念上同一の商標であるとはいえない。
ウ 乙第4号証の1に記載された「ブラックコブラ/ハードタイム」の表示は、同一の書体、同一の大きさで表わされ、外観上まとまりよく一体的に表示されており、構成全体から「ブラックコブラハードタイム」の称呼を生じる。
一方、本件商標は「ブラックコブラ」の片仮名を横書き一列で表わされてなり、「ブラックコブラ」の称呼を生じる。
両商標は、外観及び称呼が明確に異なるため、社会通念上同一の商標とはいえない。
なお、「ブラックコブラ/ハードタイム」の構成中の「ブラックコブラ」の部分が取引者、需要者に対し商品の出所識別機能として強く支配的な印象を与えるものとまではいうことはできず、「ハードタイム」の部分から出所識別標識としての称呼、観念が生じないともいえないため、「ブラックコブラ」の部分は商標の要部とは認められない。すなわち、一連一体に表わされた当該使用商標から「ブラックコブラ」の部分のみを抽出し、この部分だけを本件商標と比較して商標そのものの同一性を判断することは許されない。
(3)乙第2号証の商品企画書における「ブラックコブラ」の記載が商標の使用に該当するかについて
被請求人は、当該商品企画書における「ブラックコブラ」の記載は、商標法第2条第3項第8号に該当すると主張するが、当該商品企画書を含む乙第2号証にかかる書類には、商品である時計の写真、仕様等の説明、及び被請求人の名称等が記載されているものの、ニッセンに対して提供される目的で作成された旨の記載は見受けられず、その他、ニッセンに提供された事実を確認できる記載や文書は見受けられない。そうすると、乙第2号証にかかる書類は、被請求人会社の内部文書にすぎないものであって、使用予定商品について具体的な商取引があったことを裏づけるものとは認められない。すなわち、当該商品企画書は商標法第2条第3項第8号に規定する取引書類には該当せず、商品の広告、価格表にも該当しないことから、乙第2号証の商品企画書における「ブラックコブラ」の記載は商標の使用に該当しない。
さらに、乙第2号証には、書類の作成年月日等、日付の記載は一切見受けられないことから、本件審判の請求の登録前3年以内に使用していたことを示す証拠として採用すべきではない。
4 上申書(平成28年9月9日付け)
(1)乙第10号証及び乙第11号証について
被請求人が提出した乙第10号証によれば、本件審判の要証期間中に、被請求人及びニッセンが本件商標の使用をした事実があった旨を被請求人の代表者が宣誓し、乙第11号証にはニッセンヘ納入する商品の形態を示す写真が表されているが、いずれの証拠も、作成者は被請求人の代表者であり、さらに、本件審判の審理がある程度進んだ後に作成されたものであることからすると、これらの書面の内容の信憑性は低く、証拠力は著しく弱いといえる。
(2)乙第12号証について
被請求人が提出した乙第12号証には、乙第3号証の会社概要の配布先が列記されているが、乙第12号証についても、上記乙第10号証及び乙第11号証と同様に証拠力が弱いのみならず、乙第3号証には「ブラックコブラ」の文字が記載されているにすぎず、指定商品との関係は示されてないことから、乙第3号証の配布は本件商標の使用の証明とは無関係であるといえる。
以上のとおり、本件審判の請求の登録前3年以内に、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが、実際に、本件商標を請求に係る指定商品について使用している事実は未だ立証されていない。

第3 被請求人の主張
被請求人は、結論同旨の審決を求める、と答弁し、その理由、口頭審理における陳述及び上申の内容を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第12号証(枝番号を含む。ただし、枝番号のすべてを引用する場合は、その枝番号を省略する。)を提出している。
1 答弁の理由
(1)本件商標の使用事実の要点
本件商標権の商標権者及び通常使用権者は、本件審判請求の登録前3年以内に、指定商品「時計」に本件商標「ブラックコブラ」及び「BLACK COBRA」の文字を使用している。
(2)本件商標の具体的使用事実
ア 商標の使用者
本件商標の使用者は、本件商標の商標権者である被請求人、及び、商標権者が許諾した通常使用権者である「ニッセン」(以下「通常使用権者」という場合がある。)である(乙1、乙2)。
通常使用権者は、被請求人の卸売り先であり、商品カタログの「時計」に本件商標「ブラックコブラ」及び「BLACK COBRA」の文字を付して販売することを、被請求人から使用許諾されている(乙1、乙2、乙6、乙7)。
イ 使用に係る商品及び使用している商標
(ア)被請求人の使用
被請求人は、指定商品「時計」につき、卸売りの顧客(通常使用権者)に対し、その都度、商品企画書等を提供しており、この商品企画書等には、時計の写真等と共に、本件商標「ブラックコブラ」及び「BLACK COBRA」が記載されている(乙2、乙6、乙7)。
被請求人は、顧客に対して、その都度、会社概要を配布しており、この会社概要には、時計の写真等と共に、本件商標「ブラックコブラ」が記載されている(乙3)。
(イ)通常使用権者の使用
通常使用権者は、小売りの顧客に対し、商品カタログを提供しており、この商品カタログには、時計の写真等と共に、「ブラックコブラ」及び「BLACK COBRA」の文字が記載されている(乙4)。
また、通常使用権者は、小売りの顧客に対し、ウェブサイトに商品を掲載しているが、このウェブサイト(アーカイブ)には、指定商品「時計」の写真等と共に、本件商標「ブラックコブラ」及び「BLACK COBRA」の文字が記載されている(乙5)。
ウ 使用時期
(ア)被請求人の使用
被請求人は、本件審判請求登録前3年以内において、卸売りの顧客に対し、その都度、商品企画書等を提供している(乙2)。
また、会社概要を2014年(平成26年)9月16日に作成し、その後現在に至るまで会社概要を配布している。
したがって、本件商標が、本件審判請求登録前3年以内に使用されていたことが明らかである。
(イ)通常使用権者の使用
通常使用権者の使用時期(カタログ)に関しては、証拠資料に記載のカタログ有効期限等から、本件商標の使用時期が、本件審判請求登録前3年以内の時期に使用されていたことが明らかである(乙4)。
また、通常使用権者の使用時期(ウェブサイト)に関しては、アーカイブの日付が、2014(平成26年)年7月20日及び2015(平成27年)年11月11日となっている(乙5)。
2 口頭審理陳述要領書(平成28年7月21日付け)
(1)審理事項通知書に記載された「請求人の主張の要点」等に対する意見
ア ニッセンが本件商標の通常使用権者であることについては、商標使用許諾に関する覚書(乙8)により、立証されている。
イ 「BLACK COBRA」及び「BLACK/COBRA」は、本件商標を英文字に変換した商標であって、共に「ブラックコブラ」の称呼及び「黒いコブラ」の観念を生ずる商標であるので、これらの使用は本件商標の使用に該当する。
ウ 「ブラックコブラ/ハードタイム」は二段書きであり、許諾を受けた通常使用権者は、上段に「ブラックコブラ」の文字を書し、下段には通常使用権者の商品名である「ハードタイム」を書したものであり、これは、本件商標の使用に該当する。
エ 商品企画書における「ブラックコブラ」の記載は、商標法第2条第3項第8号に該当する。
(2)追加の主張
ア 被請求人は、腕時計の文字盤に、「BLACK/COBRA」の文字を2段書きした商標を、時計(腕時計の文字盤)に付して販売している(商標法第2条第3項第1号、同条同項第2号、乙4)。
イ 被請求人は、「BLACK/COBRA」の文字とコブラの図からなるタグ商標を、腕時計に付して販売している(商標法第2条第3項第1号、同条同項第2号)。当該商標は、社会通念上同一と認められる商標に該当する(商標法第50条第1項)。
さらに、「BLACK COBRA」の文字を、腕時計のベルト裏側に印字して販売している(商標法第2条第3項第1号、同条同項第2号)。当該商標は、社会通念上同一と認められる商標に該当する(商標法第50条第1項)。
3 上申書(平成28年8月16日付け)
(1)被請求人の使用について
ア 腕時計に商標を付す態様、商標を付した腕時計を販売する態様について
商品には「BLACK/COBRA」の二段書きを、表面文字盤に1箇所、「BLACK COBRA」の一段書きを、本体裏面に、1箇所、ベルト付け根部分に2箇所(左右対称)の合計4箇所に付してある(乙11)。
被請求人は、通常使用権者に、商標を付した腕時計を納入したことに間違いはなく、通常使用権者への納入時期と通常使用権者によるカタログの配布時期とは、一定の関係がある(乙4、乙6、乙7、乙10)。
イ 会社概要の頒布について
会社概要(乙3)については、その配布先名を明記し、また、東京国際宝飾展、神戸国際宝飾展、インターナショナル・ギフト・ショーなどにおいても、各開催時期に各開催場所で出展者宛に、約50枚配布しているものである(乙12)。
これにより、被請求人が、本件商標「ブラックコブラ」を要証期間に使用したことを立証した。
(2)通常使用権者の使用(「ブラックコブラ」、「BLACK COBRA」の使用態様)
商標使用許諾に関する覚書(乙8)において、使用許諾対象は、「ブラックコブラ」の文字、「BLACK COBRA」の文字、「BLACK/COBRA」の二段書文字+コブラ図形の、3形態である。
そして、通常使用権者のカタログ(乙4)において、上記の3形態が表示され、「人気ブランド『ブラックコブラ』」の記載があることから、通常使用権者がこれらを使用していることを立証している。

第4 当審の判断
1 被請求人が提出した証拠について
被請求人が提出した証拠によれば、以下のとおりである。
(1)乙第2号証は、被請求人が作成した、入荷時検品確認書、出荷・納品形態確認書、商品企画書であり、その1頁目には、「ブラックコブラ(BLACK COBRA)時計/製作・検品書類一式」の記載がある。これには、右下に被請求人の名称の記載がある。
そして、「BLACK COBRA時計 入荷時検品確認書」には、腕時計の写真があり、「生産時注意ポイント」が記載され、右下に「有限会社ファインクリエーション」の記載がある。
また、「ブラックコブラ(BLACK COBRA)腕時計 出荷・納品形態確認書」には、腕時計の写真があり、「検品確認詳細」として、腕時計のチェーン状のベルト等の写真があり、右下に「有限会社ファインクリエーション」の記載がある。
さらに、「商品企画書」には、それぞれ、「商品名」として、「『ブラックコブラ(BLACKCOBRA)』腕時計」の記載、「商品説明」として、「人気ブランド『ブラックコブラ』よりもの凄い存在感のウォッチが登場。」の記載、「備考」として、「ブランド名:ブラックコブラ(BLACKCOBRA)」の記載があり、右上に「有限会社ファインクリエーション」の記載がある。
(2)乙第3号証は、「COMPANY PROFILE」と題する被請求人の「会社概要」である。第1葉目には、「会社概要」として、「商号:有限会社ファインクリエーション」の記載、「事業内容:アクセサリー・ジュエリーの輸入及び製造卸 時計並びに服飾雑貨等の卸販売」の記載、「★取扱ブランド:ブラックコブラ」の記載があり、アクセサリーとともに、時計の写真が掲載されている。なお、この「COMPANY PROFILE」の最後の頁には、「2014.9.16」の日付とともに、被請求人の会社名である「FINE CREATION CO.,LTD」の記載がある。
(3)乙第4号証は、株式会社ニッセンが販売する商品を掲載した商品カタログである。
ア 乙第4号証の1は、2013年夏号のカタログであり、その有効期限は2013年(平成25年)9月20日である。カタログの89頁には、腕時計(文字盤には「BLACK/COBRA」の二段書きの欧文字が表示されている)の写真の掲載とともに、「ブラックコブラ/スカルタイム」、「人気ブランド『ブラックコブラ』より、満を持して腕時計が登場。」の記載がある。
イ 乙第4号証の2は、2014年初秋号のカタログであり、その有効期限は2015年(平成27年)2月28日である。カタログの7頁には、腕時計(文字盤には「BLACK/COBRA」の二段書きの欧文字が表示されている)の写真の掲載とともに、「ブラックコブラ/ハードタイム」、「企画から製作まで1年以上を費やしてリリースされた本誌限定ブランド『ブラックコブラ』。」の記載がある。
ウ 乙第4号証の3は、2015年秋号のカタログであり、その有効期限は2016年(平成28年)2月29日である。カタログの10頁には、腕時計(文字盤に「BLACK/COBRA」の二段書きの欧文字が表示されている)の写真の掲載とともに、「ブラックコブラ/ハードタイム」、「人気ブランド『ブラックコブラ』に、モテる男の必須アイテム、腕時計がラインナップ!」の記載がある。
エ 乙第4号証の4は、2016年春号のカタログであり、その有効期限は2016年(平成28年)5月31日である。カタログの55頁には、腕時計(文字盤には「BLACK/COBRA」の二段書きの欧文字が表示されている)の写真の掲載とともに、「ブラックコブラ ハードタイム」、「人気ブランド『ブラックコブラ』に、腕時計がラインナップ!」の記載がある。
(4)乙第6号証の1の上段は、ニッセンが被請求人にあてた「発注書兼納品書控」であり、「取引先」として「ユ)ファインクリエーション」、「取引先コード」として「9388-20」の記載がある。また、これには、「品番」として「ブラックコブラスカルタイム/1540-2611-111」の記載、「数量:50」、「納期:13-07-01」及び「発注日:13-04-10」の記載がある。
下段は、被請求人がニッセンにあてた宅配伝票である。これには、「品名:時計 1540-2611-111×50」及び「受付日:6月26日」等の記載がある。
(5)乙第6号証の2は、「支払報告書」であり、「取引先コード」として、乙第6号証の1と同じく「9388-20」の記載がある。また、「入荷日付」が「2013/06/28」である3つの商品のうち、一番上に、「商品名」として「ブラックコブラスカルタイム」の記載、「数量」として「50」の記載がある。
(6)乙第7号証の1の上段は、ニッセンが被請求人にあてた「発注書兼納品書控」であり、上述した「取引先コード:9388-20」の記載がある。これには、「品番:ブラックコブラスカルタイム/1540-2611-111」、「数量:100」、「納期:14-01-10」及び「発注日:13-09-13」の記載がある。
また、下段は、被請求人がニッセンにあてた宅配伝票である。これには、「品名:1540-2611-111×100」及び「受付日:2013年12月24日」等の記載がある。
(7)乙第7号証の2は、「支払報告書」であり、左上に「ユ)ファインクリエーション 御中」、「お取引先コード:938820」の記載がある。下部の表には、「日付」が「2013年12月28日」である商品のうち、3つ目に、「商品名:ブラックコブラスカルタイム」の記載及び「数量:100」の記載がある。
(8)乙第8号証は、被請求人の甲とニッセンの乙との間で締結した「商標使用許諾に関する覚書」(以下「覚書」という。)である。この覚書の日付は2011年3月7日であり、「第1条(使用許諾)」として、本件商標の日本国内における通常使用権を許諾する旨が記載されている。また、「第2条(期間)」には、「本契約の有効期間は平成24年2月28日までとする。ただし、期間満了3か月前までに甲または乙から別段の意思表示がなかった場合は、本契約は同1条件で自動的に延長できるものとする。」の記載がある。
(9)乙第10号証は、被請求人代表取締役による宣誓書である。第2葉目の「○追加事項(1)その1」には、商標使用許諾に関する覚書の継続状況について、「双方(株式会社ニッセン、有限会社ファインクリエーション)から更新しない旨の意思表示はなく、両者の関係は現在まで良好であり・・・取引が係属中であることは明白であります。」旨の記載がある。
(10)乙第11号証は、「標章を付した腕時計を株式会社ニッセンへ納品する形態を表す資料」と題する書類であり、腕時計の裏面の写真が添付されている。
(11)乙第12号証は、「会社概要配布先」と題する書類であり、「乙第3号証 2014年9月16日作成の弊社会社概要の配布先です」の記載がある。ここには、配布先の「会社名」、「所在地」及び「配布時期」が記載されている。配布時期は、配付先の会社によって異なるが、2014年10月から2015年7月頃までの間に配付されている。なお、東京国際宝飾展(2015年1月22日)、神戸国際宝飾展(同年5月15日)、インターナショナル・ギフト・ショー(同年2月4日、同年9月3日)において出展者宛に約50枚配付した旨の記載があるが、それ以外の配付先に何枚配付したかについての記載は、見受けられない。
2 被請求人の主張及び上記1で挙げた証拠によれば、以下のとおり判断できる。
(1)使用者について
ア 被請求人による使用について
「商品企画書」(乙2)各項目の記載からすると、被請求人が、ブランド名を「ブラックコブラ(BLACK COBRA)」とする腕時計を企画した事実がうかがえる。また、作成日が平成26年9月16日の「会社概要」(乙3)には、事業内容として「時計・・の卸販売」の記載、取扱いブランド名として「ブラックコブラ」の記載があり、これは、被請求人がブランド名を「ブラックコブラ(BLACK COBRA)」とする腕時計の商品企画をしているということを裏付けるものである。
そして、この「会社概要」は、複数の会社や宝飾店の出展者宛に送付されており、それらの配付時期はいずれも要証期間内である。
これらの事実を総合すれば、被請求人は、同人が卸売販売する時計のブランド名として「ブラックコブラ」の標章を、「会社概要」に付して、頒布したといえるものである。
通常使用権者による使用について
(ア)通常使用権者について
ニッセンは、被請求人が所有する本件商標の使用を2011年(平成23年)3月7日付けの「覚書」(乙8)の契約によって許諾されていることからすれば、本件商標の通常使用権者は、ニッセンと認められる。
(イ)通常使用権者による使用
通常使用権者のニッセンが発行する商品カタログ(乙4)によれば、これらには、「人気ブランド『ブラックコブラ』」又は「本誌限定ブランド『ブラックコブラ』」の文字とともに、文字盤に「BLACK/COBRA」の二段書きの欧文字が表示されている腕時計の写真が掲載されていることから、通常使用権者は、時計について、「BLACK/COBRA」の二段書きの標章をカタログに表示して使用しているものである。
(2)使用商標について
乙3号証の「会社概要」には、取扱いブランド名として、片仮名で「ブラックコブラ」(以下「使用商標1」という。)と表示されており、また、乙4号証の商品カタログには、文字盤に「BLACK/COBRA」の二段書きの標章(以下「使用商標2」という。)が表示されている時計の写真が掲載されている。
一方、本件商標は、「ブラックコブラ」の片仮名を標準文字で表したものである。
そうすると、本件商標と使用商標1とは、いずれも片仮名の同じ文字からなるものであり、「ブラックコブラ」という同一の称呼及び「黒いコブラ」という同一の観念を生ずるものであるから、社会通念上同一の商標ということができる。
また、本件商標と使用商標2とは、文字の種類が片仮名と欧文字とで異なり、使用商標2は二段書きの欧文字で表されているとしても、その構成中の「BLACK」の文字が片仮名の「ブラック」を、「COBRA」の文字が片仮名の「コブラ」を英語表記したものであって、いずれも「ブラックコブラ」という同一の称呼及び「黒いコブラ」という同一の観念を生ずるものであるから、両商標は、社会通念上同一の商標ということができる。
(3)使用商品について
請求人が作成した会社概要には、使用商標1が付されているところ、会社概要中に記載された事業内容「時計の卸販売」は、本件審判の請求に係る指定商品「時計」の販売と認められる。
また、通常使用権者が発行する商品カタログに、使用商標2が文字盤に付された腕時計が掲載されているところ、「腕時計」は、本件審判の請求に係る指定商品「時計」に含まれるものである。
(4)使用時期について
「会社概要」に記載された日付は平成26年9月16日であり、乙第12号証の「会社概要配付先」によると、これらは要証期間内である平成26年10月から同27年7月頃までに、取引先の会社や宝飾展の出展者へ配付されている。
通常使用権者が発行する商品カタログ(乙4の1?乙4の4)については、いずれも要証期間内である平成25年9月20日、同27年2月28日、同28年2月29日及び同28年5月31日をそれぞれ有効期限とし、通常使用権者は、これらの商品カタログを利用して時計の販売をしていたものと認められる。
(5)小括
以上によれば、商標権者は、要証期間内において、本件審判の請求に係る指定商品「時計」の範ちゅうに含まれる「腕時計」について、「会社概要」に、本件商標を表示して頒布したものと認めることができる。
また、本件商標の通常使用権者は、要証期間内において、本件審判の請求に係る指定商品「時計」の範ちゅうに含まれる「腕時計」が掲載されたカタログに、本件商標を表示して頒布したものと認めることができる。
そして、上記の行為は、商標法第2条第3項第8号に該当し、商品に関する広告、定価表若しくは取引書類に標章を付して頒布する行為である。
(6)請求人の主張について
ア 請求人は、「株式会社ニッセンの商品カタログに掲載された時計の文字盤に付された『BLACK/COBRA』の二段書きの標章(使用商標2)は、本件商標とは外観上、全く異なる印象をもって看取、把握されるものであるから、本件商標と社会通念上同一とはいえない。」旨を主張している。
しかしながら、本件商標と使用商標2とは、同じ意味の語として理解されるものであって、それぞれ片仮名と欧文字で表してなるものであり、その称呼、観念を同一とする社会通念上同一の商標であるといえるものである。
イ 請求人は、「乙第2号証の資料は被請求人会社の内部文書にすぎないものであって、使用予定商品について具体的な商取引があったことを裏づけるものとは認められないから、商標法第2条第3項第8号に規定する取引書類には該当せず、商品の広告、価格表にも該当しないことから、乙第2号証の『ブラックコブラ』の記載をもって被請求人が本件商標を使用したということはできない。」旨を主張している。
しかしながら、「会社概要」に、事業内容として「時計・・の卸販売」の記載、取扱いブランド名として「ブラックコブラ」の記載があるから、これらを併せみれば、本件商標が「時計」に使用されているものとして認められるものである。また、各種証拠からしても、被請求人がブランド名を「ブラックコブラ(BLACK COBRA)」とする腕時計の商品企画をし、ニッセンと商取引があったことは十分に認められるところである。
ウ 請求人は、「被請求人が提出した乙第10号証の宣誓書、乙第11号証の資料、乙第12号証の会社概要の配布先が列記されている資料について、いずれの証拠も作成者は被請求人の代表者であり、さらに、本件審判の審理がある程度進んだ後に作成されたものであることからすると、これらの書面の内容の信憑性は低く、証拠力は著しく弱いといえるものである。」また、「会社概要には『ブラックコブラ』の文字が記載されているにすぎず、指定商品との関係は示されてないことから、会社概要の配布は本件商標の使用の証明とは無関係である。」旨を主張している。
しかしながら、ニッセンへの時計の納品、ニッセンの商品カタログによる時計の販売が要証期間において継続されていたことから、ニッセンを通常使用権者とする覚書による契約は継続しているものと推認できるものであり、また、乙第11号証資料中の商品の写真や乙第12号証の会社概要の配付先の資料に不自然な点はないものである。その他、これを覆すに足る証拠はない。
したがって、請求人の上記主張は、いずれも採用することができない。
3 むすび
以上のとおり、被請求人は、商標権者及び通常使用権者が本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、請求に係る指定商品「時計」について本件商標を使用していたことを証明したものというべきである。
したがって、本件商標の登録は、その請求に係る指定商品について、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2016-09-30 
結審通知日 2016-10-04 
審決日 2016-10-21 
出願番号 商願2010-75974(T2010-75974) 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (X14)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 半田 正人 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 清棲 保美
榎本 政実
登録日 2011-01-07 
登録番号 商標登録第5381024号(T5381024) 
商標の称呼 ブラックコブラ、コブラ 
代理人 佐藤 富徳 
代理人 塚田 美佳子 
代理人 長谷 玲子 
代理人 橋本 千賀子 

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