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審決分類 審判 全部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない Y33
管理番号 1325963 
審判番号 取消2013-300549 
総通号数 208 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2017-04-28 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2013-06-28 
確定日 2017-02-20 
事件の表示 上記当事者間の登録第4709187号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第4709187号商標(以下「本件商標」という。)は、「QUINTUS」の欧文字を標準文字で表してなり、平成15年3月10日に登録出願、第33類「ぶどう酒,その他の果実酒,洋酒」を指定商品として、同年9月12日に設定登録されたものである。
そして、本件審判の請求の登録の日は、平成25年7月25日である。

第2 請求人の主張
請求人は、本件商標の登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、指定商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存在しないから商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。
2 被請求人の答弁に対する弁駁
乙第1号証ないし乙第3号証に記載された日付のいずれも、本件審判の請求の登録日の後である。
また、乙第4号証には、「19/12/12」が日付として記載されているものの、乙第4号証は、被請求人自らが答弁するように、ワインボトル用のラベルデザイン資料であり、日本国内において本件商標「QUINTUS」の使用をしていることを証明するものではない。
したがって、乙第1号証ないし乙第4号証のいずれも、本件審判の請求の登録日前に本件商標の使用をしていることを証明するものではない。
さらに、乙第1号証には、「INDOMITA」が会社名として記載されているものの、商標権者「ノストロス エス. エイ.」(以下「ノストロス」という。)は記載されてないことから、乙第1号証は、商標権者が本件商標の使用をしていることを証明するものではない。
以上より、被請求人は、本件審判の請求の登録日前3年以内(以下「本件要証期間内」という。)に日本国内において商標権者等がその請求に係る指定商品「ぶどう酒,その他の果実酒,洋酒」のいずれかについての本件商標の使用をしていることを証明していない。
3 口頭審理陳述要領書
(1)乙第5号証は、株式会社リカーマウンテン(以下「リカーマウンテン」という。)の会社概要であり、乙第6号証は、リカーマウンテンの「QUINTUS」ワイン販売店舗一覧である。
しかしながら、このリカーマウンテンと商標権者ノストロスとの関係は全く不明である。
さらに、乙第5号証及び乙第6号証において、本件商標の使用時期について何ら触れられていない。その上、被請求人が提出した平成26年5月22日付け口頭審理陳述要領書(以下「被請求人陳述要領書」という。)においても、その関係及び使用時期について全く言及していない。
したがって、乙第5号証及び乙第6号証は、本件要証期間内に商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが本件商標の使用をしていることを証明するものではない。
(2)乙第7号証は、「QUINTUS」の文字が表されたラベルが貼付されたワイン(以下「『QUINTUS』ワイン」という。)を陳列した様子を示す写真である。
しかしながら、この「QUINTUS」ワインを陳列販売する店舗と、その写真の撮影日及び撮影者は全く不明である。さらに、被請求人陳述要領書においても、販売店舗、写真撮影日及び写真撮影者について何ら言及していない。
したがって、乙第7号証は、本件要証期間内に商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが日本国内において本件商標の使用をしていることを証明するものではない。
(3)乙第8号証は、楽天市場のウェブサイトのうち、「QUINTUS」ワインを販売する「セラー専科」のウェブページである。
しかしながら、このセラー専科と商標権者ノストロスとの関係は不明である。さらに、そのウェブサイトにおいて「QUINTUS」ワインが掲載された日時も不明である。その上、被請求人陳述要領書においても、その関係及びワイン掲載日時について何ら言及していない。
したがって、乙第8号証は、本件要証期間内に商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが日本国内において本件商標の使用をしていることを証明するものではない。
(4)乙第9号証は、ビーニャ インドミタ エス エイ(以下「インドミタ」という。)とリカーマウンテンとの間におけるインボイスである。
しかしながら、このインドミタと商標権者ノストロスとの関係は全く不明である。さらに、上記したように、リカーマウンテンと商標権者ノストロスとの関係も全く不明である。その上、被請求人陳述要領書においても、それらの関係について何ら言及していない。
したがって、本件要証期間内に商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが日本国内において本件商標の使用をしていることを証明するものではない。
なお、乙第9号証は、取引書類であるが、展示されたものではないし、頒布されたものでもない。したがって、この取引書類により、法が予定している信用の蓄積はなされることはない。つまり、商標法第2条第3項第8号の規定・立法趣旨に照らし合わせると、乙第9号証は本件商標の使用には当たらない。
(5)乙第10号証は、「QUINTUS」ワインのボトルに貼付するラベルのデザインシートである。
このように、乙第10号証はあくまでも、ワインボトル用のラベルを示すものであり、本件要証期間内に商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが日本国内において本件商標の使用をしていることを証明するものではない。
4 その他、被請求人の答弁に対して
(1)被請求人が通常使用権を許諾されたとの主張に関して
被請求人は、乙第11号証を根拠に、黙示による本件商標の通常使用許諾を受けているとの主張をしているが、その主張には根拠がないため主張自体が失当であり、以下のとおり、これを根拠とした通常使用権許諾はないと考えられる。
ア 譲渡契約に基づく黙示の通常使用許諾について
被請求人が主張しているのは、通常使用権を有しないインドミタの商標使用行為を、インドミタが本件商標の譲渡契約を行っているということを根拠に、商標法第50条第2項の「商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務のいずれかについての登録商標の使用をしている」という行為として有効だと認めるべきだという無効行為の転換の問題であるが、これについては民法の規定にはなく、無効行為の転換が認められるためには厳しい条件がある。被請求人は、譲渡契約に基づく黙示の通常使用許諾が認められることを立証しておらず、法的な根拠もないので、被請求人の「譲渡契約に基づく黙示の通常使用許諾を受けている」との主張は失当である。
イ 裁判例(昭和57年(ワ)第7035号事件)について
被請求人は、意匠権の未登録の専用実施権の設定合意による独占的通常実施権の存在を認めた裁判例を挙げて、インドミタに独占的通常実施権を認めるべき、との主張がされている。
しかしながら、挙げられた裁判例は侵害訴訟事件において、意匠権の未登録の専用実施権の設定を受けた原告が損害賠償請求権を有するのか、という点での判断が示されたものである。一方、商標の不使用取消審判における通常使用権者は、商標権者から商標の使用を許諾されて、商標における出所表示の機能を果たす態様で商標を使用することにより、商標に信用を化体させているという点で、使用の主体たり得るものであるため、上記裁判例とは全く異なる判断基準に基づいて判断をすべきである。したがって、上記裁判例の射程範囲に本件が含まれるとは言えないものである。よって、被請求人の上記主張は失当である。
(2)乙第11号証について
被請求人の主張を参照しても、乙第11号証が真正であるかが疑わしく、乙第11号証に係る契約が不自然であり、その存在が証明されているとは考えられないので、これを根拠とした通常使用権許諾はないと考えられる。
ア 乙第11号証として提出された書面について
乙第11号証は公正証書の体裁をとっているが、これがチリ国における真正の公正証書であるのか、という点には疑義がある。
チリ国の公正証書の書式、及び真正であることを証明する手立てなどが明確ではなく、これだけではチリ国における真正の公正証書とは認められない。公正証書が真正であることを立証するチリ国外務省による認証手続は、簡単な手続であり数日で行えるものであるのに、その認証が行われていない。作成者及びサインをした者が公証人であることの立証もなされていない。
次に乙第11号証の内容についてであるが、被請求人は乙第11号証を「商標売買契約書」としているが、その内容を見ると公証人が作成した公正証書の体裁であって、契約書そのものではない。
そして、乙第11号証の最後のページに記載されている日付によると、この文書は契約の日に作成されたものと推定できるが、契約書の内容をべタにタイプしている。契約書のコピーに「これは真正である」旨の記述をしたページを付け加える形式にするのが、通常のやり方であると考えられるのに、敢えてこのような形式にしているので、この点でも乙第11号証の真正性について疑わしさがある。
さらには、日本語訳が一部のみしかなされていないので、省略されている部分に何か記載されているかが不明である。契約書は前後の条が内容的に密接に絡み合っているので契約書全体で解釈されるべきものであり、一部のみの翻訳では契約書全体の内容を正しく理解できない。したがって、この翻訳も証拠として不適切である。
以上より、乙第11号証が公正証書であることの立証がなく、その内容も真正のものであるかは立証されておらず、そこで示されている「契約書」も存在することが立証されていない。
イ 契約について
被請求人は、平成18年4月27日に乙第11号証に係る契約が締結されて、本件商標を「インドミタ」に譲渡することを約したと述べているが、本件商標は平成18年5月18日に移転登録申請書が提出されており、出願人であって商標権者であったダビド デル クルト エセ アー(以下「ダビド社」という。)から、現在の商標権者(被請求人)ノストロスに移転されている(甲2)ので、この契約の時点では被請求人は本件商標の商標権者ではない。すなわち、この契約は無権利者からの譲渡という無効な契約である。また、譲渡人が権利を有しているか否かの確認を譲受人がしないで30万米ドルもの対価を支払うということは考えられないので、無効な契約を締結したというよりも、この契約自体がもともと存在していなかったと考えられる。
契約自体がもともと存在していなければ、契約から8年以上が経過している現在まで本件商標の移転登録がなされていないことも納得できる。
被請求人は、契約が存在していることを前提に本件商標の移転登録がなされていないことをいろいろと説明をしているが、説明を裏付ける事実は何一つ立証されていない。
また、被請求人は、乙第11号証が公正証書として真正であるとの主張をしているが、公正証書として真正であることと、その合意書が有効であることとは全く別のことである。被請求人は記載された商標権のうちの一部の商標権が米国や英国において移転登録されていることを証拠として挙げて(乙21)、合意書が有効であることを主張している。しかしながら、乙第11号証に記載された商標権は多数に及び、そのうちの1つである本件商標は乙第11号証に記載の日から10年以上、本件審判請求から3年以上が経過しているにも拘わらず未だ移転登録がなされていないことから、本件商標については譲渡の合意は無効であるものと考えられる。
(3)通常使用権について
被請求人は、被請求人陳述要領書において、インドミタに少なくとも黙示による通常使用権が認められていたというべき理由として、「被請求人とインドミタとの間では、本件譲渡日において、すでに本件商標権は被請求人からインドミタに移転したとの認識で一致している。実際にも、本件譲渡日以降、インドミタは、本件商標を含む本件契約に列挙された商標を、チリ国内外において使用している。」ことを主張する。
しかしながら、「被請求人とインドミタとの間では、本件譲渡日において、・・・本件商標権は被請求人からインドミタに移転したとの認識で一致している」ことや「インドミタは、・・・本件契約に列挙された商標を、チリ国内外において使用している」ことを明確に示す証拠がない。したがって、インドミタが通常使用権者であるということはできない。
また、被請求人は、インドミタが本件商標の譲渡契約を行っているということを根拠に、インドミタは黙示の独占的通常使用権を有していると主張しているが、上述のとおり、根拠となる譲渡の契約は無効であると考えられるため、インドミタには通常使用権はない。
(4)不使用取消審判の使用証拠について
商標の使用については、商標法第2条第3項に規定されており、そのうち第8号には「商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」と記載されている。
乙第2号証、乙第3号証、乙第9号証及び乙第13号証ないし乙第16号証は取引書類に該当する可能性があるが、これらは展示されておらず、頒布もされていないため、広告的な使用には該当しない。なお、乙第16号証には本件商標が付されていないので、商標法第2条第3項第8号に該当せず使用証拠にはなり得ない。
乙第12号証に関しては、添付資料1ないし4は取引書類には該当しないことは明らかである。添付資料5には手書きにより日付「2013/07/03」が記載されており、これはオンラインモールにおける画像を外部業者に発注したその納品データのプリントアウトであるとリカーマウンテン社員友田陽一氏(以下「友田氏」という。)が陳述している。ここで、この日付及びオンラインモール「セラー専科」に当該画像が掲載されたと陳述されている平成25年6月は、友田氏の陳述のみがその根拠となっている。しかしながら、リカーマウンテンはインドミタから「Quintus」を表示したラベル付きのワインを日本で唯一輸入販売しているので、リカーマウンテンは被請求人と利害を共にしており、中立の立場ではないことは明らかであるため、リカーマウンテン社員友田氏の陳述書(乙12)は使用証拠たり得ない。
また、被請求人は、平成26年9月18日付け上申書において、乙第12号証の添付資料2ないし4について、インドミタの代理店としてのリカーマウンテンがインドミタ製ワインとして本件商標を付するワイン(以下「本件ワイン」という。)を宣伝・販売したことを裏付ける間接証拠であると主張する。
ここで、リカーマウンテン社員の友田氏の陳述によれば、添付資料2ないし4はいずれも、リカーマウンテン社内用の内部的な資料であることが明白であり、リカーマウンテンによる本件ワインの宣伝・販売の事実を示すには客観性・信頼性に乏しいものである。したがって、少なくとも、それらの添付資料2ないし4をもって、2013年7月13日の前にリカーマウンテンによる本件ワインに関する具体的な宣伝・販売があったことを裏付けるものとみることはできない。
さらに、友田氏は、リカーマウンテンがウェブサイト「セラー専科」への画像掲載を委託した外部業者が、平成25年6月に画像をウェブサイトに掲載した後、平成25年7月3日にその画像をリカーマウンテンに納品したと陳述する。
しかし、この陳述は、ウェブサイトへの画像掲載日の事実を示すには客観性・信頼性に乏しいものであり、外部業者は重要な存在であるにも拘わらず、その外部業者が何者であるかについて何も明らかにしておらず、この点でも、その陳述は、画像掲載日の事実を示すものとしては、客観性・信頼性を欠いている。
したがって、請求の登録日前にウェブサイトを介したリカーマウンテンによる本件ワインに関する宣伝・販売があったことを裏付けるものとみることもできない。
以上より、被請求人の主張は失当である。
(5)乙第4号証及び乙第10号証について
被請求人は、被請求人陳述要領書において、「最終的な完成版としてインドミタから送られてきたラベルサンプルが、乙第4号証及び乙第10号証のラベルサンプルである。」と主張し、「乙第4号証及び乙第10号証の最終的なラベルデザインが、遅くとも平成24年12月14日までには完成し、・・・」と主張する。
しかしながら、乙第4号証及び乙第10号証のラベルサンプルが最終的な完成版であることを明確に示す証拠がない。また、下記(6)のように、乙第13号証のワインが日本でいつ販売されたのか、不明である。
したがって、乙第4号証及び乙第10号証は、本件審判の請求の登録日前にリカーマウンテンが乙第4号証及び乙第10号証のラベルを付したワインを日本国内において販売していた証拠とはならない。
(6)乙第13号証ないし乙第15号証について
被請求人は、被請求人陳述要領書において、「第2に、乙第13号証は、上記のやり取りを受けて、平成24年12月14日付のリカーマウンテンからインドミタに対する交付された発注書である。同書面には、・・・『INDOMITA QUINTUS(WITH JAPANESE BACK LABEL)』が300ケース注文されている。」と主張し、「第3に、乙第14号証は、平成25年(2013年)2月25日付のインドミタからリカーマウンテンに対する、上記発注書に対応するインボイスである。・・・また、下の表のArt.Num.70756の欄に、『Quintus Organico Cabernet Sauvignon』299ケース分が記載されている。」と主張し、「第4に、乙第15号証は、税関提出用書類である。同書面には、『Product』の欄には『Vino Tinto Quintus Organico』・・・と記載されている。」と主張する。
これらの主張から明らかなように、乙第13号証記載の「INDOMITA QUINTUS(WITH JAPANESE BACK LABEL)」という商品名と、乙第14号証記載の「Quintus Organico Cabernet Sauvignon」という商品名と、乙第15号証記載の「Vino Tinto Quintus Organico」という商品名は互いに相違する。さらに、乙第13号証記載の「300ケース」というケース数と、乙第14号証記載の「299ケース」というケース数は互いに一致しない。以上より、乙第13号証記載の「INDOMITA QUINTUS(WITH JAPANESE BACK LABEL)」と、乙第14号証記載の「Quintus Organico Cabernet Sauvignon」と、乙第15号証記載の「Vino Tinto Quintus Organico」とが同じ商品であるか、不明である。
したがって、たとえ乙第13号証記載の「INDOMITA QUINTUS(WITH JAPANESE BACK LABEL)」がリカーマウンテンからインドミタに発注されていたとしても、その商品が日本にすでに輸入されているのか、たとえ日本に輸入されていたとしても、いつ輸入されたのか、不明である。
また、被請求人は、平成26年9月18日付け上申書において、乙第13号証の発注書どおりに納品がなされていなければ、再び同じワインを発注する乙第2号証が作成されることはありえないことから、乙第13号証の発注書どおりの取引の履行が完結したと主張する。
しかし、この主張は、それを裏付ける証拠が全くなく、商品の納品前にその商品を追加発注することは、一般にありうることである。
また、乙第2号証記載の商品と乙第13号証記載の商品は、同種の商品であると考えられるが、乙第2号証には、「(WITH JAPANESE BACK LABEL)」との記載がないので、乙第2号証記載の商品と乙第13号証記載の商品が、ラベルを含むすべての点で全く同じ同一の商品であるかについては不明である。
そうすると、乙第13号証記載の商品が納品されていなくても、この商品と同種の商品を発注するために、乙第2号証の発注書を作成することはありうることである。
以上より、被請求人の主張は、論理の飛躍があり、失当である。
(7)乙第12号証、添付資料2及び添付資料3について
被請求人は、被請求人陳述要領書において、「第6に、平成25年4月以降、上記のように本件ワインを輸入したリカーマウンテンは、同社実店舗にて消費者に対してワインを販売した(乙12、添付資料2及び3)。なお、乙第7号証は、リカーマウンテンの実店舗の様子を平成26年2月に同社社員が撮影した写真である。しかし、リカーマウンテンは、上記のように平成25年4月以降、インドミタから本件ワインを仕入れ、実店舗において販売していた(乙12)。その際、リカーマウンテンは、同写真のように、本件ワインが、インドミタの商品であることを表示していた。」と主張する。
しかしながら、リカーマウンテン社員友田氏の陳述書(乙12)は、上記したように、使用証拠たり得ない。さらに、本件審判の請求の登録日前に撮影した、リカーマウンテンの実店舗におけるワインの販売状態を示す写真もない。
以上より、乙第12号証、添付資料2及び添付資料3は、本件要証期間内に日本国内において本件商標の使用をしていることを証明するものではない。
(8)乙第8号証、乙第12号証、添付資料4及び添付資料5について
被請求人は、被請求人陳述要領書において、「第7に、添付資料4は、リカーマウンテンが乙第8号証のウェブサイトに掲載する本件商標を付したワインの画像を外部委託した際、その完成品の納品が平成25年7月3日11時26分であったことを示す証拠である。」と主張する。
しかしながら、添付資料4記載の「2013/07/03 11:26」という日時は、上記完成品の納品日時ではなく、「キンタス」というJPGファイルの撮影日時であることは明らかである。そのため、添付資料4は、上記完成品の納品が平成25年7月3日11時26分であったことを示す証拠とならない。よって、上記完成品の納品日時は不明である。そもそも、このJPGファイルが添付資料5の画像ファイルと一致することを示す証拠はない。ファイル名はいつでも変更することが可能であり、平成25年7月3日11時26分に撮影した何らかの画像(添付資料5の画像とは異なる画像)ファイルのファイル名を「キンタス」としている可能性がある。
また、被請求人は、被請求人陳述要領書において、「リカーマウンテンでは、ウェブサイトへの画像を全て外部委託しており、その外部受託業者は、画像を作成してセラー専科のウェブサイトへ掲載した後1か月以内に、その掲載した画像をリカーマウンテンに納品していた(乙12)。したがって、添付資料5の画像が納品された平成25年7月3日以前の1か月間に当該画像が掲載されたことになるから、本件要証期間内である平成25年6月頃に、乙第8号証の画像がセラー専科のウェブサイトに掲載されたことがわかる。」と主張する。
しかしながら、友田氏の陳述書(乙12)は、上記したように、使用証拠たり得ない。そのため、乙第8号証の画像の、セラー専科のウェブサイトへの掲載日時は不明である。さらに、上記完成品の納品日時は、上記したように、不明である。よって、たとえ添付資料5の画像の納品以前の1か月間に乙第8号証の画像がセラー専科のウェブサイトに掲載されていたとしても、その掲載日時はやはり不明である。
また、被請求人は、平成26年9月18日付け上申書において、乙第12号証の添付資料5について、「セラー専科」に掲載した画像であると主張する。
ここで、友田氏は、乙第12号証において、添付資料4の3番目のファイルを開いた画像が添付資料5であると陳述する。
乙第12号証の陳述も、単に友田氏の個人的な言い分であり、掲載画像の事実を示すには客観性・信頼性に乏しいものである。
したがって、この陳述をもって、具体的な掲載画像を裏付けるものとみることはできない。
以上より、乙第8号証、乙第12号証、添付資料4及び添付資料5は、本件要証期間内に日本国内において本件商標の使用をしていることを証明するものではない。
(9)また、被請求人は、被請求人陳述要領書において、「さらに上記の一連の事実を全体的に概観すると、・・・リカーマウンテンが本件ワインの販売を始めた時期である平成25年4月であるところ、同ワインがリカーマウンテンに引き渡されたのは・・・同年3月頃であるから、その時期も一致している。そして、その直後である同年6月頃に、セラー専科でも同ワインの販売を始めているのである。したがって、インドミタとリカーマウンテンとの間で、商談から契約締結、実際の商品の受け渡しまでの取引が実際に行われたことを裏から証明する事実であるということができる。」と主張し、「よって、平成24年9月以降、本件要証期間満了日までの間に、インドミタとリカーマウンテンとの間で本件ワインについての商談が持たれ、実際の取引がなされていたことが明らかである。」と主張する。
しかしながら、上記(1)?(8)において詳述するように、乙第11号証ないし乙第17号証はいずれも、本件要証期間内に商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかが日本国内において本件商標の使用をしていることを証明するものではない。
(10)乙第22号証について
被請求人は、乙第22号証についても判決の前提となる条件について自己にとって都合のよい結論のみを取り出しているので最終結論が妥当ではないものとなっている。
乙第22号証の判決の前提となる記載内容を検討すると、「本件契約は、原告がその営業の全部を被告に譲渡することを内容とするもの」であって、「被告が譲渡を受けた営業を行うに当たり、本件商標権の移転登録前といえども本件商標を使用できることは当事者間の当然の前提であったものと解される」という論理構成となっている。つまり、被告は営業の譲渡を受けたので、その営業を行うに当たっては商標を使用することが必要になるため、営業の譲渡後に商標権が移転登録されていなくても、被告がその商標を使用することは当然であるから通常使用権を被告が有している、ということである。
本件では被請求人からインドミタに営業の譲渡はなされていない。すなわち、本件は乙第22号証の判決とは前提が異なっているため、本件にこの判決の結論を当てはめることはできず、乙第22号証に基づく被請求人の主張は失当である。
(11)まとめ
以上より、本件商標は、第33類の指定商品「ぶどう酒,その他の果実酒,洋酒」について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者または通常使用権者のいずれも使用した事実が存在しないから商標法第50条第1項の規定により取り消されるべきものである。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第22号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 乙第1号証ないし乙第10号証について
(1)本件商標の使用状況の一部として提出する乙第1号証ないし乙第4号証は、被請求人による本件ワインが、インターネット通販サイトの楽天市場において販売されている事実(乙1)、酒類輸入卸売・販売業者である日本企業、株式会社リカーマウンテンとの取引書類(乙1、乙2)、日本で販売されるワインボトル用のラベルデザイン資料(乙4)である。
(2)被請求人ノストロスは、本件ワインを、関連会社であるインドミタを通じて世界各国で販売している。
日本においては、酒類の輸入卸及び販売業者であるリカーマウンテン(乙5)と提携し、同社の展開する日本各地の店舗、実に121店舗(乙6)において、「QUINTUS」ワインを販売している。
実際の各店舗では、手頃でありながら本格的な味わいを楽しめるオーガニックワインとして、大きくスペースをとり大々的に販売を行っている(乙7)。
また、インターネット通信販売の楽天市場におけるワイン販売店舗「セラー専科」を通じた販売も行っている(乙8)。
インドミタとリカーマウンテンとの実際の取引の証拠として、「QUINTUS」ワインを含む被請求人ワインに係るインボイスを提出する(乙9)。
また、「QUINTUS」ワインを日本において販売する際に使用中の、ボトル正面に貼付するラベル、及び、ボトル背面に貼付する商品説明や原産国表示等をまとめたラベルのデザインシートを提出する(乙10)。
上記のとおり、被請求人が、本件商標を日本国において継続して使用していることは明らかである。
2 口頭審理陳述要領書
(1)被請求人の主張の骨子(インドミタによる本件商標の使用について)
被請求人とインドミタとの間では、本件商標に係る商標権(以下「本件商標権」という。)の譲渡契約(以下「本件契約」という。)に基づき、黙示による本件商標の通常使用許諾(以下「本件使用許諾」という。)があった。
そして、本件使用許諾に基づき、インドミタは、本件要証期間内においてリカーマウンテンに対し、本件商標を使用した。
したがって、上記インドミタによる本件商標の使用は、商標法第50条第2項の「使用」に該当し、請求人の本件審判請求は成り立たない。
詳細は、以下のとおりである。
(2)被請求人とインドミタの間での本件商標の譲渡契約について
被請求人とインドミタは、いずれもチリ国の企業である。
本件商標は、平成15年9月12日に、被請求人により登録されたものである。その後、平成18年(2006年)4月27日(以下「本件譲渡日」という。)、被請求人とインドミタとの間で、本件商標権を含む、被請求人が有していた数多くの商標に係る権利を移転することを目的として、本件契約が締結された(乙11)。
本件契約の契約書を見ると、その頭書に、本件契約が、本件譲渡日に弁護士かつ公証人である「Enrique Morgan Torres」氏の面前で締結されたことが記載されている。
しかるに、第1条の本文には、被請求人が、チリ国内および海外において、同条に記載されている商標の登録出願ないし商標登録をしていることが記載され、同条のAの第8項に、本件商標も挙げられている。
その上で、第2条では、被請求人がインドミタに対して、第1条に列挙されている商標に関する全ての権利を譲渡する旨が定められている。そして、インドミタは被請求人に対し、第3条に基づき、第1条記載の商標の譲渡対価として、本件契約締結時に30万米ドルを現金で支払った。
つまり、本件商標権は、本件譲渡日に、本件契約に基づいて被請求人からインドミタに対して譲渡されたものである(以下「本件譲渡」という。)。
(3)移転登録が未了であることについて
一方、被請求人とインドミタとの間の本件契約が、本件商標のみならず、「DUETTE」等、被請求人が有する他の複数の商標権を世界各国で包括的に譲渡する契約であること等が原因となり、日本においては現在まで、本件譲渡に関して移転登録がなされていない。
したがって、商標法第35条の準用する特許法第98条第1項第1号の規定により、日本国内における本件商標権者は、未だ被請求人である。
(4)少なくともインドミタは本件商標の通常使用権を有していること
しかし、被請求人とインドミタとの間では、本件譲渡日において、すでに本件商標権は被請求人からインドミタに移転したとの認識で一致している。実際にも、本件譲渡日以降、インドミタは、本件商標を含む本件契約に列挙された商標を、チリ国内外において使用している。
つまり、少なくとも被請求人とインドミタとの間では、日本国内において、インドミタが本件商標の独占的使用権を有していることを当然の前提としていたし、だからこそ本件譲渡日以降現在まで、被請求人からインドミタに対して、日本国内におけるインドミタによる本件商標の使用について何らの異議も出されなかったのである。
上記のような事情に鑑みれば、被請求人とインドミタとの間では、本件譲渡に関する移転登録がなされていなかったとしても、少なくとも黙示による通常使用権が認められていたというべきである(審判例:取消2006-30444、取消2006-31092、裁判例:大阪地裁昭和59年12月20日判決(昭和57年(ワ)第7035号事件))。
(5)インドミタによる本件商標の使用が商標法第50条の「使用」に該当すること
そうとすれば、通常使用権はその登録が効力要件とはなっておらず、かつインドミタと請求人は商標法第31条第4項の対抗関係にない以上、かかる通常使用権に基づくインドミタによる本件商標の使用は、商標法第50条第2項の「通常使用権者」による「使用」にあたることとなる。
(6)インドミタによる本件商標の使用を証する証拠について
ア 第1に、リカーマウンテン社員の友田氏の陳述書(乙12)によれば、以下の事実がわかる。
まず、平成24年(2012年)9月ころから11月ころまでの、インドミタとリカーマウンテンとの間のメールのやり取り(乙12添付資料1。以下「添付資料」と記載する場合には、乙12の添付資料を指す。)から、同年9月以前から、両社ではワインの取引があったが、同月頃、インドミタ担当者よりリカーマウンテン担当者に対し、オーガニックワインに興味があるかどうかの打診があり、それに対しリカーマウンテンが価格表と同製品の写真を要求した。そこで、インドミタは本件ワインを紹介し、価格を示した。
その後、リカーマウンテンがサンプルを3本送るように要求したところ、同年11月6日までにインドミタからリカーマウンテンにサンプルが提供され、同日付メールにて、リカーマウンテンは試飲の結果、本件ワインをインドミタから購入することを決めたことがインドミタに伝えられた。
なお、添付資料1の2012年11月6日22時2分のリカーマウンテン社員野上氏からインドミタ担当者Gonzalo Latorre氏へのメールでは、本件ワインの裏ラベルのデータを準備すべきだということが述べられている。これを受けて、リカーマウンテンとインドミタで協議がされた後、最終的な完成版としてインドミタから送られてきたラベルサンプルが、乙第4号証及び乙第10号証のラベルサンプルである。
イ 第2に、乙第13号証は、上記のやり取りを受けて、平成24年12月14日付のリカーマウンテンからインドミタに対する交付された発注書である。
同書面には、「ORDER NO.LM13051IND」という注文番号と共に、「INDOMITA QUINTUS(WITH JAPANESE BACK LABEL)」が300ケース注文されている。
なお、本書面には、「INDOMITA QUINTUS(WITH JAPANESE BACK LABEL)」とあることから、乙第4号証及び乙第10号証の最終的なラベルデザインが、遅くとも平成24年12月14日までには完成し、インドミタからリカーマウンテンに送付されていたこともわかる。
ウ 第3に、乙第14号証は、平成25年(2013年)2月25日付のインドミタからリカーマウンテンに対する、上記発注書に対応するインボイスである。同書面には、「Your Ref」の欄に上記発注書の注文番号と同じ「LM13051IND」という記載があり、「Customer」の欄にリカーマウンテンの社名が記載されている。
また、下の表の「Art.Num.70756」の欄に、「QUINTUS Organico Cabernet Sauvignon」299ケース分が記載されている。
なお、「Organico」とはオーガニック商品であることを意味し、「Cabernet Sauvignon」はぶどうの品種である。
エ 第4に、乙第15号証は、税関提出用書類である。
同書面には、「Product」の欄には「Vino Tinto QUINTUS Organico」、「Country of destination」の欄には「Japan」、「Export Company or Owner」の欄には「VINA INDOMITA S.A.」と記載されている。なお、「Vino Tinto」とは、赤ワインのことである。そして、「Date of reception at Laboratory」の欄には「11/02/2013」と記載され、同書面下部には、Carlos Choque G.Quimico氏の署名日として2013年3月12日と記載されている。
オ 第5に、乙第16号証は船荷証券である。同書面には、「Shipper」としてインドミタが、「Consignee」としてリカーマウンテンが記載され、「Carrier‘s Receipt」の欄に、上記の発注番号と同じ「LM13051IND」とあると共に、「SHIPPED ON BOARD FEB 24,2013」と記載されている。
カ 第6に、平成25年4月以降、上記のように本件ワインを輸入したリカーマウンテンは、同社実店舗にて消費者に対してワインを販売した(乙12、添付資料2及び3)。
なお、乙第7号証は、リカーマウンテンの実店舗の様子を平成26年2月に同社社員が撮影した写真である。
しかし、リカーマウンテンは、上記のように平成25年4月以降、インドミタから本件商標を付したワインを仕入れ、実店舗において販売していた(乙12)。
その際、リカーマウンテンは、同写真のように、本件ワインが、インドミタの商品であることを表示していた。
キ 第7に、添付資料4は、リカーマウンテンが乙第8号証のウェブサイトに掲載する本件商標を付したワインの画像作成を外部委託した際、その完成品の納品が平成25年7月3日11時26分であったことを示す証拠である。そして、当該納品された画像が添付資料5であり、この画像は、乙第8号証の画像と同一である。なお、セラー専科は、リカーマウンテンが運営しているサイトである(乙12、乙17)。
リカーマウンテンでは、ウェブサイトへの画像の掲載を全て外部委託しており、その外部受託業者は、画像を作成してセラー専科のウェブサイトヘ掲載した後1か月以内に、その掲載した画像をリカーマウンテンに納品していた(乙12)。したがって、添付資料5の画像が納品された平成25年7月3日以前の1か月間に当該画像が掲載されたことになるから、本件要証期間内である平成25年6月頃に、乙第8号証の画像がセラー専科のウェブサイトに掲載されたことがわかる。
なお、乙第8号証に「3月20日(木)9:59まで開催中」とのキャンペーンが記載されているのは、同証拠が平成26年2月12日に作成されたからであり、上記ワイン画像が平成25年7月3日ころに掲載されたこととは無関係である。
ク さらに上記の一連の事実を全体的に概観すると、上記オのとおり、リカーマウンテンが本件商標を付したワインの販売を始めた時期である平成25年4月であるところ、同ワインがリカーマウンテンに引き渡されたのは、上記エから明らかなとおり、同年3月頃であるから、その時期も一致している。そして、その直後である同年6月頃に、セラー専科でも同ワインの販売を始めているのである。
したがって、上記のオ及びキの事実は、上述のアからエのように、インドミタとリカーマウンテンとの間で、商談から契約締結、実際の商品受け渡しまでの取引が実際に行われたことを裏から証明する事実であるということができる。
ケ よって、平成24年9月以降、本件要証期間満了日までの間に、インドミタとリカーマウンテンとの間で本件ワインについての商談が持たれ、実際の取引がなされていたことが明らかである。
(7)小括
以上から、商標法第2条第3項第2号又は第8号により、本件商標の通常使用権者たるインドミタは、指定商品たるワインに関し、本件商標を使用したということができる。
3 その他の請求人の主張に対して
(1)被請求人とインドミタとの間の、本件契約が締結された平成18年(2006年)4月27日より後である同年5月31日になって、本件商標権に関し、設定登録時の権利者から被請求人に対する移転登録がなされた理由について
ア 被請求人代理人が設定登録時の権利者であるダビド社から被請求人に対する本件商標権の移転登録申請を行ったのは今から8年以上前の平成18年(2006年)5月17日であるところ(乙19)、現在既に、当該手続にかかる被請求人代理人における書類保存期間を過ぎており、かつ、被請求人においても当時の資料をすでに破棄していたことから、当時の事情について知ることのできる文書等を発見することができなかった。
イ しかしながら、在外当事者間の、多数の国において登録された複数の商標権の包括的な譲渡においては、権利者及び譲受人の手続的、経済的負担が大きいことから、各国における移転登録手続が遅れ、移転登録の原因となる契約の締結日と各国における移転登録日に齟齬が生じることは間々あることである。
すなわち、本件契約においては、被請求人はチリ国の企業であり、被請求人代理人とのやり取り、必要提出文書の作成、送付に時間がかかること、言語の違いにより意思疎通に問題が生じる場合があること、日本とチリ国との法制の違いにより移転登録について被請求人が十分に把握していなかった可能性があること、本件契約においては本件商標権のみならず、チリ国内外の非常に多数の商標権も同時に包括的に譲渡されていること(乙11)等の事情が存在する。
かかる事情の下では、被請求人は被請求人代理人に対し、本件契約締結前にはすでに、ダビド社から譲り受けた各商標権について移転登録申請の依頼していたものの、上記のような理由が原因となり、特許庁に対する移転登録申請自体が遅れているうちに、被請求人とインドミタとの間で本件契約が平成18年4月27日に締結され、本件商標権も含めた多数の商標権がインドミタに移転された後、以前より依頼されていた移転登録申請がなされたことが推察される。
ウ この点、上記移転登録申請にあたり提出された譲渡証(Deed of Assignment)には、ダビド社代表により2006年5月3日付で署名がなされている(乙19)。これは、以下の理由が考えられる。
つまり、本件契約の存在を知らなかった被請求人代理人が、本件契約締結日前後に、ダビド社に対して必要書類として署名を要求したのではないかと思われる。そうであれば、ダビド社としては、同社が被請求人に本件商標権を移転した事実自体は間違いがないことから、本件契約締結後であっても、上記日時に譲渡証を作成してもなんら不思議はない。
なお、ダビド社は本件契約とは無関係であるから、同書面に署名した時点において、おそらく同社も本件契約の存在を知らなかったと思われる。
また、上記署名日は本件契約締結日のわずか6日後であることから、被請求人から被請求人代理人に対する移転登録申請の依頼自体は、本件契約締結前に行われていたであろう事も容易に推測される。
エ 平成26年6月6日付口頭審理陳述要領書(以下「被請求人陳述書」という。)に記載したとおり、本件契約により本件商標権を被請求人からインドミタに移転するとの合意自体は有効になされたものの、移転登録が未了である間にインドミタが本件商標を使用した場合、本件契約後のインドミタによる使用は、移転登録の有無にかかわらず、通常使用権者による商標の使用として、商標法第50条第2項の「使用」に該当するから、商標法第50条第1項の適用はなく、請求人の請求は不成立であるというものである。
すなわち、そもそも商標登録原簿の記載は一切無関係であり、本件要証期間前に締結されている本件契約により、商標権者である被請求人とインドミタとの間で、本件商標権をインドミタに移転する旨合意していたという事実のみが重要なのである。
したがって、ダビド社から被請求人に対する本件商標権の移転登録申請及び移転登録が本件契約締結日よりも後であったという時系列的齟齬も、被請求人の主張に直接的に影響することはない。
(2)インドミタが独占的通常使用権を有していることについて
ア インドミタに黙示の独占的通常使用権が認められる旨の被請求人の主張は、「無効行為の転換」の主張であるから、その認定は厳格に行うべきであるとの主張について
被請求人とインドミタとの間で本件契約は有効に成立しており、本件商標の使用を許諾するという合意も有効に成立しているから、およそ無効行為は存在せず、そもそも「無効行為の転換」などと論じること自体、当を得ないものである。
また、本件は、被請求人とインドミタとの間で、本件商標権を移転するという合意をした後、その移転登録が未了の状態であるにすぎない。
したがって、移転登録さえ行えば商標権移転の要件が全て充足され、本件商標権は法的にも完全にインドミタに移転する。
このように、被請求人とインドミタとの間での本件商標権の移転が無効であるとする請求人の前提自体が誤りであり、このように誤った理解を前提とする被請求人の主張は、その全体において失当である。
イ 乙第22号証は、商標権の不使用取消請求を認容した特許庁の審決を取り消した、知的財産高等裁判所平成26年7月17日判決(平成26年(行ケ)第10036号、以下「本判決」という。)である。
本判決では、原被告間の営業譲渡契約は、本件商標権の移転登録が未了の間、被告に本件商標権の通常使用権を許諾する旨の黙示の合意を含んでおり、したがって、被告による本件商標権の使用は商標法第50条第2項の「使用」にあたる、との原告の主張を認容し、審決を取り消す判決を下した。
本判決は、商標権の移転登録が未了であっても、当事者間の合理的意思解釈から、譲受人に黙示の通常使用権の存在を認めることはでき、それは商標の不使用取消事件においても何ら変わることがないことを明確に示しているのである。
これを本件について考えると、本件合意書は、被請求人が所有していた世界各国の数多くの商標権を同時にインドミタに移転することを内容としており、本件契約締結後のインドミタによる本件商標の日本における使用状況を鑑みると、移転登録が未了であってもインドミタには本件商標を使用する通常使用権が黙示に許諾されていたと解するのが、両者の合理的意思解釈に合致する。
(3)乙第11号証の成立の真正および内容の信用性について
ア 第1に、請求人は、本件合意書について、数日で行える認証手続がなされておらず、真正な公正証書とは言えないと主張する。
しかし、認証がなされていなかった点は、合意書の当事者がいずれもチリ国内の企業であり、もともと認証は必要でなかった点に加え、本件合意書に押印された公証印があればチリ国においては公正証書として通用するため、本件において請求人が主張している本件合意書の問題点を被請求人が正確に理解するのに時間を要したことが理由である。
イ 第2に、請求人は、本件合意書は公正証書の体裁であって契約書ではないと、被請求人の主張を論難する。
請求人の上記主張の法的意義は必ずしも明確ではないが、売買契約は書面で行う必要はなく、口頭でも成立することは論を待たない。
そして、本件合意書には、冒頭において、公証人の面前で、被請求人とインドミタのそれぞれの代理人により商標売買契約が締結されたことが記載されている。
本件合意書には、売買契約の要件事実である所有権移転の合意と代金の支払が記載されているから、売買契約として有効に成立している。
そして、同合意は、公証人により目撃され、公正証書の形で文書化されているから、その記載内容には完全なる信用性が具備されているというべきである。
また、本件合意書には、被請求人が所有していたチリ国外の商標権で、本件商標権と同時にインドミタに譲渡されたものが列挙されているところ、その中にはすでに被請求人からインドミタに対し移転登録がなされているものがある。
本件合意書第1条Aに列挙されている商標が、実際に移転登録されているということは、本件合意書の内容が確かに被請求人とインドミタの間で合意されたことを示しているといえる。
ウ 第3に、本件合意書が作成された平成18年4月27日の時点において、被請求人は未だ無権利者であったから、本件契約は無効であると主張する。
しかし、無権利者が売主として売買契約を締結した場合も売買契約としては有効であり、単に売主には当該所有権を取得して買主に譲渡すべき義務が発生するだけである。
したがって、請求人の上記主張は、民法の明文の規定に反し、主張自体失当である。
かつ、請求人も認めるとおり、被請求人は、同年5月31日には移転登録を完了し、完全な商標権者となったから、遅くとも同日において被請求人の無権利状態が追完され、当然に商標権者としてインドミタに対する商標権の移転ないし使用権の設定が可能となった。
以上から、被請求人とインドミタの間の本件契約が無効であるとする請求人の主張は失当である。
エ 以上から、本件合意書は、真正に成立した公正証書であるから、同文書に記載されている、被請求人からインドミタに対する本件商標権の移転合意が確かに存在したといえる。
また、平成18年5月31日にダビド社から被請求人に対する本件商標権の移転登録手続が完了したことにより、同日以降、被請求人は法的に完全な商標権者となり、インドミタに通常使用権を設定することができた。
したがって、遅くとも本件要証期間内の始期日までには、被請求人はインドミタに独占的通常使用権を設定しうる法的地位を有していた。
よって、被請求人はインドミタに通常使用権を設定し得ないとする請求人の主張は失当である。
(4)商標法第50条第2項規定の通常使用権者による使用の事実を立証する証拠について
ア 請求人は、乙第2号証、乙第3号証、乙第9号証および乙第13号証ないし乙第16号証は、商標法第2条第3項第8号の使用態様に該当せず、本件商標の「使用」を表す書面とは言えないと主張する。
しかし、被請求人は、これらの書面それ自体が、インドミタによる本件商標の「使用」を根拠付ける直接証拠として提出しているのではない。これらは全て、インドミタとリカーマウンテンとの間で、本件ワインの取引がなされたこと、あるいはインドミタの代理店としてのリカーマウンテンがインドミタ製のワインとして本件ワインを宣伝・販売したことにより、本件商標が「使用」された事実を裏付ける間接証拠として提出されているものである。
すなわち、インドミタはリカーマウンテンに対し、乙第12号証添付資料1のメールのやり取りにより、平成24年9月ころから本件ワインを紹介していたところ、乙第13号証の発注書(以下「本件発注書」という。)により、リカーマウンテンからインドミタに対し、本件ワインの注文があった。
その後、インドミタからリカーマウンテンに本件ワインを輸出する際に、乙第14号証のインボイス、乙第15号証の税関提出用書類、乙第16号証の船荷証書等の書面が作成された。そして、リカーマウンテンに本件ワインが届き、リカーマウンテンは本件ワインを自社店舗ないしウェブサイトにおいて、一般に宣伝・販売をした(乙7、乙8、乙12)。
この点、インドミタからリカーマウンテンに対し、本件発注書に基づき本件ワインが確かに輸出されたことは、乙第13号証に記載されている注文番号「LM13051IND」との記載が、乙第14号証のインボイス及び乙第16号証の船荷証書にも記載されていることから明らかである。
よって、請求人の主張は、被請求人の主張及びその立証構造の誤解に基づいており、失当である。
イ 乙第12号証について、請求人は添付資料1ないし4は取引書類に該当しないから被請求人の主張は失当と結論付けている。
しかし、上記同様、これら自体は、インドミタとリカーマウンテンとの間で本件ワインの取引が存在したこと、及びリカーマウンテンが本件ワインを宣伝・販売したことの間接証拠であるから、請求人の主張は前提に誤りがあり、失当である。
また、請求人は、添付資料5について、リカーマウンテンは本件ワインを日本で唯一輸入販売している企業であるから、被請求人と利害が一致しており、したがって乙第12号証の友田氏の陳述書には信用性がないとしている。
しかし、リカーマウンテンは近畿地方を中心に、ワインを販売する自社店舗を数多く展開しており(乙5)、かつインターネット販売も行っている(乙8)。そして、当然同社が取り扱うワインは本件ワインだけではなく、むしろ本件ワインは、リカーマウンテンによって宣伝販売されているワインの一銘柄にすぎない。
にもかかわらず、リカーマウンテンが、一取引先にすぎないインドミタのために、法的手続たる特許庁における審判手続において、敢えて虚偽の事実を陳述しなければならない動機は皆無である。
したがって、リカーマウンテンがインドミタを利する虚偽陳述をする可能性があることを前提とした請求人の上記主張は、明らかに経験則に反し、不合理である。
ウ 請求人は、被請求人とインドミタとの間で、本件譲渡日において本件商標権を移転するとの認識があったこと、及びインドミタが本件契約に列挙された商標をチリ国内外で使用していることの立証がないと主張する。
まず、被請求人とインドミタが本件商標権を移転させることで合意していたことは、上記(2)で述べたとおりである。
また、インドミタが本件契約に列挙された商標をチリ国内外で使用している事実については、乙第21号証の1ないし3から明らかである。
すなわち、米国や英国にて本件合意書の内容にしたがった移転登録がなされている事実は、インドミタが同国内において当該商標を使用することを前提としている。
したがって、インドミタが同国内において当該商標を使用した事実も当然推認できるのである。
ただし、日本以外の国における使用状況というのは、本件とは無関係であり、この点に関する請求人の反論も無意味である。
エ 請求人は、乙第4号証及び乙第10号証について、これらがラベルサンプルの最終完成版であることを示す証拠は存在せず、本件発注書で日本に輸入されたワインがいつ販売されたか不明であるから、当該2つの証拠は本件ワインを日本で販売した証拠とはならないと主張する。
しかし、乙第4号証及び乙第10号証のラベルサンプルと、乙第7号証と乙第8号証の実際に販売されている本件ワインの写真を比較すれば、本件ワインのラベルがラベルサンプルと同一のものであることがわかる。したがって、乙第4号証及び乙第10号証に記載されているラベルサンプルが最終完成版であることは明らかである。
さらに、乙第12号証添付資料1の2012年(平成24年)11月6日にリカーマウンテン社員野上綾子氏からインドミタ社員ゴンザロ・ラトッレ氏に送られたメールにて、ラベルの準備をする必要性が述べられている。そこで乙第4号証及び乙第10号証を見ると、“Fecha”(日付)として、“19/12/12”、つまり2012年(平成24年)12月19日と記載されており、上記のメールの日付からごく近接した時期に、同書面が作成されていることがわかる。そして、同月14日には、リカーマウンテンからインドミタに対して本件ワインの発注がなされている(乙13)。
上記のような近接した日時において全ての書類が交わされている事実から、乙第4号証及び乙第10号証は、リカーマウンテンからの発注に基づいて作成された本件ワインのラベルの最終版であり、これがリカーマウンテンによって輸入されたことは明らかである。
本件ワインが本件要証期間内に宣伝・販売された事実については後述する。
オ 請求人は、乙第13号証記載の「INDOMITA QUINTUS(WITH JAPANESE BACK LABEL)」、乙第14号証記載の「Quintus Organico Cabernet Sauvignon」、乙第15号証記載の「Vino Tinto Quintus Organico」が、それぞれ相違しているから、同一商品かどうか不明であると主張する。
しかし、乙第12号証添付資料1に記載されている、2012年(平成24年)9月29日に野上綾子氏からゴンザロ・ラトッレ氏に送信されたメールに引用されている、ラトッレ氏のメールには、“Regarding Quintus Organico Cabernet Sauvignon”と記載されており、本件ワインが“Quintus”の商標名で販売されるオーガニックワインで、ぶどうの品種はカベルネソーヴィニョンであることがわかる。
この点、上記の3つの表記に、この内容と矛盾するものはない。つまり、“Organico”はスペイン語でオーガニックの意である。また、“Vino Tinto”はスペイン語で赤ワインの意であるが、カベルネソーヴィニョンは赤ワインの製造に使用される代表的なぶどうの品種である。
そして、上述したとおり、乙第14号証には、本件発注書(乙13)に記載された発注番号と同じ“LM13051IND”と記載されているから、乙第13号証と乙第14号証に記載されたワインの同一性は明らかである。
また、乙第15号証には輸出者がインドミタであること、輸出先が日本であることが記載されている。請求人も認めるとおり、リカーマウンテンは本件ワインを輸入販売する唯一の業者であるから、その輸出先が同社であることは明らかである。かつ、乙第15号証に記載されている作成日時は“11/02/2013”、つまり2013年(平成25年)2月11日であり、乙第16号証に記載された船に積み込まれた日付である2013年2月25日と極めて近接している。
以上の事実から、乙第13号証ないし乙第15号証に記載された内容は、全て本件発注書によってリカーマウンテンがインドミタに対して本件ワインを発注した取引に関連する書類である。
そして、遅くとも平成25年4月までには本件ワインがリカーマウンテンに納品され、実際に宣伝・販売されたことは、乙第12号証添付資料2及び3において、同月以降に本件ワインを販売した実績が記載されていることから明らかである。
なお、請求人は添付資料2及び3の内容の信用性についても論難しているが、乙第12号証の信用性については前述したとおりである。
また、乙第2号証の発注書にて、リカーマウンテンはインドミタに対して、2013年(平成25年)10月15日に再び本件ワインを発注している。
もし乙第13号証の発注書どおりに納品がなされていなければ、再び同じワインを発注する乙第2号証が作成されることはありえないことから、少なくとも本件発注書どおりの取引の履行が完結したことがわかる。
なお、請求人は乙第13号証には300ケースと記載されている一方、乙第14号証のインボイスでは299ケースになっている点を指摘する。この点の詳細は不明であるが、理由としては乙第15号証の税関検査のために1本使用された可能性(乙15には本件ワインの成分に関する表示がなされており、抜栓して検査したことが想定される)や、輸送の間に破損した可能性がある。いずれにしても、発注番号が一致している両書面の整合性を弾劾するほどの事情でない。
以上から、乙第13号証ないし乙第15号証からは、本件ワインの日本への輸入の有無ないし日時が不明であるとする請求人の主張は失当である。
カ 最後に、請求人は、乙第11号証ないし乙第17号証はいずれも本件要証期間内に日本国内において本件商標が使用された事実を証明するものとは言えないと主張する。
しかし、上記のような請求人の証拠評価が誤りであることはこれまで述べたとおりであり、以下の4つの事実が、上記の各乙号証に整合性を保ちつつ記載されているということができる。
(ア)インドミタがリカーマウンテンにメールにて本件ワインを紹介し、商談がなされた事実(乙12添付資料1)
(イ)平成24年12月14日に本件ワインが発注された事実(乙13)
(ウ)(イ)の発注に基づき平成25年2月から3月頃に本件ワインが日本に向けて輸出された事実(乙14ないし乙16)
(エ)平成25年4月からリカーマウンテンによって販売された事実(乙12添付資料2及び3)
以上のような一連の証拠の整合性を鑑みれば、本件要証期間中にインドミタとリカーマウンテンの間で本件ワインの取引があった事実、リカーマウンテンにより本件ワインが、日本国内で宣伝・販売された事実は、上記乙号証から明らかである。
キ 以上から、本件要証期間内において、インドミタが本件商標を指定商品たるワインについて使用した事実は、被請求人が提出した乙号証により立証されている。
したがって、これに反する請求人の主張は失当である。

第4 当審の判断
1 被請求人の提出に係る乙各号証及び同人の主張によれば、以下の事実を認めることができる。
(1)本件商標の商標登録原簿を徴すれば、その商標権者は、設定登録時「ダビド デル クルト エセ. アー.」であり、平成18年5月18日受付の本件の移転登録申請により、同年5月31日に現在の商標権者(被請求人)「ノストロス エス. エイ.」に移転登録がされ、現在もノストロスが商標権者となっている。
なお、該商標権移転登録申請書に添付された譲渡証の日付は、2006年(平成18年)5月3日となっている(乙19)
(2)乙第11号証及び乙第20号証は、2006年4月27日にチリ国の公証人の面前で締結された、被請求人(当時は、まだ上記(1)の移転登録はされていなかった。)とインドミタによる「商標売買契約書」(乙11で抄訳が提出されている。)とされるものである(乙20は乙11を差し替えるものであり、平成26年10月8日付け上申書により認証手続が完了したものとして提出された。)。
この商標売買契約書は、「売主」を「ノストロス エス. エイ.」とし、「買主」を「ビーニャ インドミタ エス. エイ.」とし、第1条として「ノストロス エス. エイ.は、チリ国内及び国外において、登録出願中及び登録済みの下記の商標を有している。」、「A 海外において登録商標かつ/または登録出願中の商標」として「8 商標:QUINTUS 登録番号:4709187 国:日本 類:第33類」の記載があり、第2条として「・・・売主が有する前条にて列挙した商標に関する全ての権利、法的地位及び利益を、その関連する全ての権利も含め、買主に対し売却、譲渡及び移転し、買主は売主からこれを購入し、取得する。」、第3条として「本件商標の購入金額は30万米ドルとし、買主は売主に対し、本件契約の締結日において現金にてこれを支払い、売主はこれを完全な支払いとして承諾する。」との記載があり、商標売買契約書本文末尾に公証人エンリケ モルガン トーレスのサインが記入されている。
(3)乙第4号証及び乙10号証は、リカーマウンテンがインドミタから輸入したワイン(本件ワイン)を販売する際に貼付するボトル用ラベルのデザインシートとされるものであるところ、その正面用のラベルデザインは、要証期間後の撮影であるが、乙第7号証のリカーマウンテンの店舗で販売されているとする赤ワインの正面用ラベルのデザインと同一と認められるものであり、2葉目の商品名や原産国等を表示するための背面用ラベルデザインには、正面用と同様に、「Q」の文字の下部の払いにデザインが施されているものの明らかに「QUINTUS」の文字と解る表示(以下「使用商標」という。)と、「輸入者」として「株式会社リカーマウンテン」の文字が、また、輸出業者を表すものとして「EXPORTED BY VINA INDOMITA S.A.」の文字が書されている。
(4)乙第13号証は、リカーマウンテンからインドミタへの発注書とされるものであり、右上に「2012/12/14」、その下に「ORDER NO.LM13051IND」、「CONTAINER REF.60」の記載、左上に送り先として「LIQUOR MOUNTAIN CO.,LTD」の記載がある。
また、それらの下に表形式で「ARTICLE」(商品)の項目に「INDOMITA QUINTUS(WITH JAPANESE BACK LABEL)」、「CASES」(ケース)の項目に「300」、表の下部の「ARRIVAL DATE AT KOBE」(神戸到着日)として「MARCH 2013」の記載があり、最下部には「LIQUOR MOUNTAIN CO.,LTD」「authorized signeture」及び「Naotaka TOTSUKA」の横にサインがされている。
(5)乙第16号証は、インドミタからリカーマウンテンへの船荷証書とされるものであり、左上に「Shipper」(荷送人)として「VINA INDOMITA S.A.」、その下に「Consignee」(荷受人)として「LIQUOR MOUNTAIN CO.LTD」の記載があり、「Carrier‘s Receipt」(運送業者受取)の欄には「Marks and Nos」(荷印)、「Container No.」(コンテナ番号)として「OV14108」及び「60/LM13051IND」、その右に「1,199CASES OF CHILEAN WINE」及び「SHIPPED ON BOARD FEB 24,2013」の記載がある。
(6)乙第9号証の2葉目及び5葉目は、インドミタがリカーマウンテンにワインを輸出したインボイスとされるものであり、左上に「VINA INDOMITA S.A.」の記載、右上の四角枠中に、「R.U.T.:99.568.600-7」「Factura de Exportacion」(輸入インボイス)及び「No 003402」が記載され、その下に「LIQUOR MOUNTAIN CO.LTD」の記載がある。
また、その左に「February 26 2013」、「SKU」(管理番号)として「70756」が記載された右に「DESCRIPTION OF GOODS」(商品)として「Cases of 12Bottles ×75cl. Quintus Organico Cabernet Sauvignon,Red Wine,2012」、「QUANTITY」(量)として「299」の記載があり、「Total Cases of Wine」(総ケース数)として「1,199」の記載がある。
(7)乙第14号証は、乙第9号証の2葉目及び5葉目により輸出したワインの「COMMERCIAL INVOICE No.003402」(請求書)とされるものであり、左上に「Vina Indomita S.A.」の記載、「Our Ref.」(当社紹介番号)として「OV14108」、「Your Ref.」(貴社紹介番号)として「LM13051IND」、「Customer」(顧客)として「LIQUOR MOUNTAIN CO.LTD」の記載があり、「Date」(日付)として「February 25,2013」の記載がある。
また、「Art.Num.」(商品番号)として「70756」が記載された右に「DESCRIPTION」(種類)として「Cases of 12Bottles ×75cl. Quintus Organico Cabernet Sauvignon,Red Wine,2012」、「QUANTITY」(数量)として「299」の記載があり、「TOTAL CASES」(ケースの合計)として「1,199」の記載がある。
(8)乙第15号証は、チリ共和国の輸出ワイン分析表であり税関提出用書類とされるものであり、「Product」(商品)「Vino Tinto Quintus Organico」、「Country of destination」(仕向国)「JAPAN」、「Export Company Or Owner」(輸出企業)「VINA INDOMITA S.A.」及び「Date of reception at Loboratory」(試験場受領日)「11/02/2013」の記載がある。
2 上記1及び被請求人の主張を総合すれば、次のとおり認めることができる。
(1)本件商標の通常使用権者について
現在の本件商標権者であるノストロスが、商標権者となるために移転登録で提出された譲渡証の日付が2006年5月3日であるのに対し、ノストロスとインドミタで締結された「商標売買契約書」(乙11及び乙20)の締結日が同年4月27日であって、ノストロスがダビド社と譲渡契約を結ぶ6日前である。
このため、インドミタとの契約時には商標権者ではなかったものであるが、その僅か6日後には本件商標の譲渡契約が交わされており、さらに14日後には、本件商標の移転申請が行われ、同年5月31日には移転登録がされ、商標権者となったものであることから、遅くとも移転登録日において被請求人の無権利状態が追完されており、商標権者としてインドミタに対する商標権の移転が可能となった。
そして、契約当事者において、この「商標売買契約書」について、これを無効とする等の意思表示がされたとの事実は確認できないことから、未だ、インドミタへの商標権の移転登録がされていないとしても、該契約は現在も有効なものと認められる。
なお、チリ国の公証人の前で行われた「商標売買契約書」による契約は、乙第20号証の差し替えとして平成26年10月8日付け上申書により認証手続が完了したものが提出されていることからすれば、有効な契約と認められる。
そうとすれば、インドミタは、本件商標の買主として、その譲渡契約を結び、その代金も支払っていることからすれば、登録原簿上の権利者とはなっていないが、移転登録前といえども本件商標を使用できることについて当事者間の黙示の合意はあったものと認めるのが相当である。
以上からすると、インドミタは、本件商標権についての通常使用権者ということができる。
(2)本件商標の使用について
ア 酒類・食品の小売業、酒類の輸入卸及び販売を業とするリカーマウンテン(乙5)は、注文番号を「LM13051IND」、コンテナ番号を「60」とする2012年(平成24年)12月14日付け発注書において、商品名を「INDOMITA QUINTUS(WITH JAPANESE BACK LABEL)」とする商品300ケースを、2013年(平成25年)3月に神戸に到着するよう注文した(乙13)ことが認められる。
イ 上記(1)のとおり、通常使用権者と認められるインドミタは、乙第16号証の船荷証書にあるように、荷印及びコンテナ番号等を「OV14108」及び乙第13号証の発注書の注文番号を含む「60/LM13051IND」とするチリ産ワイン1,199ケースを2013年(平成25年)2月24日にリカーマウンテンに船で神戸に向け出荷したことが認められる。
ウ また、翌日の2013(平成25年)2月25日に、インドミタからリカーマウンテンに、乙第16号証の船荷証書の荷印及びコンテナ番号等の「OV14108」及び乙第13号証の発注書の注文番号「LM13051IND」で特定された「Quintus Organico Cabernet Sauvignon,Red Wine,2012」299ケースを含む1,199ケースに対するインボイスが発行されている(乙14)。
エ なお、リカーマウンテンからの発注が300ケースであったのに対し、インドミタから船便で出荷されたものが299ケースであり、1ケースの相違があるが、乙第15号証によれば、輸出国のチリ国において当該輸出ワインの分析が行われていることからすれば、輸出品から分析のため商品が抜き取られ、1ケース分の出荷量に違いが生じたことが想定されるものであり、注文番号等の整合性からすれば、発注を受けた商品の出荷であったと認めるのが自然である。
オ また、発注書(乙13)において、商品「INDOMITA QUINTUS(WITH JAPANESE BACK LABEL)」とし、日本用のバックラベルを付したものを注文していること、発注から5日後の2012年(平成24年)12月19日時点において、乙第4号証及び乙第10号証の日本向けのバックラベルが提案されていたことからすれば、上記イにおいて、インドミタがリカーマウンテンに出荷した商品(本件ワイン)には、乙第4号証及び乙第10号証の2頁に表されたバックラベルが貼付されていたものと推認できる。
カ 本件商標は、上記第1のとおり「QUINTUS」の文字を標準文字で表してなるところ、上記オで商品に貼付されていたと認められるバックラベルに記載の使用商標は、「Q」の文字に多少のデザイ化はされているものの、明らかに本件商標と同じ綴り字の「QUINTUS」の文字からなるものと認識されるものであるから、本件商標と使用商標は、社会通念上同一の商標と認められるものである。
(3)以上によれば、本件商標の通常使用権者と認められるインドミタは、本件審判の請求の登録前3年以内である2013(平成25年)2月25日(インボイスの日付)に、本件審判の請求に係る指定商品中の「ぶどう酒」に含まれる「赤ワイン」のボトルに、本件商標と社会通念上同一と認められる使用商標を貼付し、リカーマウンテンを通じて日本に輸入したものであり、この行為は、商標法第2条第3項第2号にある「商品又は商品の包装に標章を付したものを・・・譲渡若しくは引き渡しのために・・・、輸入・・・する行為」に該当するものである。
(4)請求人の主張について
請求人は、被請求人が「商標売買契約書」に記載された商標権のうちの一部の商標権が米国や英国において移転登録されていることを証拠として挙げて(乙21)、合意書が有効であることを主張しているが、乙第11号証に記載された商標権は多数に及び、そのうちの1つである本件商標は乙第11号証に記載の日から10年以上、本件審判請求から3年以上が経過しているにも拘わらず未だ移転登録がなされていないことから、本件商標については譲渡の合意は無効であると主張する。
しかしながら、乙第11号証(乙20として再提出)は、2006年4月27日にチリ国の公証人の面前で締結された、現権利者(ノストロス)とインドミタによる「商標売買契約書」とされるものであり、平成26年10月8日付け上申書により、チリ大使館において認証手続が完了した合意書が提出されていることからすれば、その有効性について請求人の主張する状況をもって無効とする条項を含むものとも認められず、現時点において外国において一部の権利しか移転されていないこと、本件商標権の移転がまだであるとしても、これが無効であるとまでは認められない。
また、請求人は、譲渡の契約が無効であるとの主張を前提として、インドミタには通常使用権がない旨の主張をしているが、前記のとおり、「商標売買契約書」が有効なものと認められる以上、請求人の主張は、その前提において失当といわざるを得ないから、これを採用することはできない。
3 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品の範ちゅうに含まれる「ぶどう酒」について本件商標の使用をしていることを証明したものというべきである。
したがって、本件商標の登録は、その請求に係る指定商品について、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2016-12-19 
結審通知日 2016-12-22 
審決日 2017-01-10 
出願番号 商願2003-18493(T2003-18493) 
審決分類 T 1 31・ 1- Y (Y33)
最終処分 不成立 
特許庁審判長 酒井 福造
特許庁審判官 今田 三男
小松 里美
登録日 2003-09-12 
登録番号 商標登録第4709187号(T4709187) 
商標の称呼 キントゥス、クインタス、クイントゥス 
復代理人 浅村 昌弘 
代理人 特許業務法人前田特許事務所 
復代理人 松川 直樹 
代理人 特許業務法人浅村特許事務所 
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