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審決分類 審判 判定 その他 属さない(申立て不成立) W3041
管理番号 1325109 
判定請求番号 判定2016-600043 
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標判定公報 
発行日 2017-03-31 
種別 判定 
判定請求日 2016-09-06 
確定日 2017-02-10 
事件の表示 上記当事者間の登録第5826244号商標の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 被請求人が運営するウェブサイト(料理レシピ掲載サイト)上に表示されるイ号標章は、登録第5826244号商標の商標権の効力の範囲に属しない。
理由 第1 本件商標
本件登録第5826244号商標(以下「本件商標」という。)は、「ケーキイッチ」の片仮名を標準文字で表してなり、平成27年9月17日に登録出願、第30類「茶,コーヒー,ココア,デコレーションされたサンドイッチ,菓子,パン,サンドイッチ,中華まんじゅう,ハンバーガー,ピザ,ホットドッグ,ミートパイ,アイスクリームのもと,シャーベットのもと,穀物の加工品,ぎょうざ,しゅうまい,すし,たこ焼き,弁当,ラビオリ,即席菓子のもと」及び第41類「サンドイッチの作り方の知識の教授,技芸・スポーツ又は知識の教授,セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供,図書及び記録の供覧,図書の貸与,書籍の制作,通信を用いて行う映像又は画像の提供,映画の上映・制作又は配給,通信を用いて行う音楽又は音声の提供,演芸の上演,演劇の演出又は上演,音楽の演奏,興行の企画・運営又は開催(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行に関するものを除く。)」を指定商品及び指定役務として、同28年2月12日に設定登録されたものである。

第2 イ号標章
被請求人が運営するウェブサイト上に表示される標章は、「ケーキイッチ」の片仮名を横書きしたもの(以下「イ号標章」という。)である。

第3 請求人の主張
請求人は、被請求人がウェブサイト(料理レシピ掲載サイト)において使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属する、との判定を求め、その理由を判定請求書及び上申書において要旨以下のとおり述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第10号証(枝番を含む。)を提出した。
1 判定請求の必要性
(1)請求人は、北欧の伝統的な家庭料理であるスモーガストルタ(サンドイッチケーキ)からヒントを得て、これをアレンジしたサンドイッチの調理法を独自に考案するとともに、当該サンドイッチの名称として「ケーキイッチ」という新たな造語を考案して、これを商標登録した(甲1)。
(2)請求人は、一般参加者向けの有料講習会を各地で開催して請求人が考案した「ケーキイッチ」の調理法を教授するほか、「ケーキイッチ」の講習会やイベント等を自ら開催できる認定講師の資格取得希望者を対象としたインストラクター講座を実施する等の活動を行っている(甲2)。
(3)こうした請求人の活動は、「ケーキイッチ」の名称とともに複数のメディアで取り上げられ、「ケーキイッチ」が、請求人が北欧の伝統的な家庭料理を独自にアレンジして創作した商品であり、一般的に知られるサンドイッチやケーキとは異なる新しい魅力ある商品として、各所で紹介された(甲3)。
こうして、本件商標が請求人の事業にかかる商品や役務を表示するものとして広く知られるところとなり、請求人のもとには、講習会への参加希望者のみならず、出版業者、資格講座業者、料理教室等からも「ケーキイッチ」に関する問合わせが多く寄せられている。
(4)そうしたところ、被請求人が管理運営するウェブサイト(http://cookpad.com/をトップページとする料理レシピ掲載サイト、以下「被請求人サイト」という。)において、本件商標と全く同一の「ケーキイッチ」(イ号標章)と称する、デコレーションされたサンドイッチの作り方を記載した2件のレシピ(以下「被請求人レシピ」という。甲4)が、請求人に無断で掲載されていることが判明した。
(5)そこで、請求人が被請求人の担当者に対し、本件商標は請求人が商標権を有する登録商標であることを通知するとともに、被請求人レシピにおける本件商標の無断使用を中止するよう申し入れを行った。
これに対して、被請求人の担当者は、具体的な理由を示さないまま、「当社としましては、当該レシピ名の使用方法は、商標法その他法的に問題ないものと認識しております。従いまして、現時点ではユーザーにお伝えする等何らかの対応を行うことは検討しておりません。」と回答し、その後は請求人からの連絡にも応じず、一方的に連絡を絶った(甲5)。
(6)そのため、やむなく請求人は代理人弁護士に依頼し、請求人代理人が被請求人に対して、平成28年3月31日付通告書を送付し、本件商標の無断使用を中止するよう通告した(甲6)。
これに対して、被請求人は、同年4月5日付回答書にて、「当社レシピサイトにおいて、『ケーキイッチ』の名称(以下『本件名称』といいます。)はユーザーが投稿したレシピの内容を説明するために使用されているにすぎず、登録商標『ケーキイッチ』の商品の出所を示すための態様でも、商品を識別するための態様でも使用されていません。」と述べて、被請求人レシピにおける本件商標の使用が商標権侵害に当たらない旨を主張してきた(甲7)。
そして、被請求人は、現在まで被請求人レシピにおける本件商標の使用を継続している。
(7)以上のような経緯からすれば、被請求人は、今後も被請求人レシピにおける本件商標の使用を継続するばかりか、被請求人サイトに「ケーキイッチ」と称する新たなレシピを掲載したり、被請求人サイトに掲載された調理法をまとめた書籍(甲8)を出版するなどして、今後も本件商標の無断使用を行う可能性が高い。
2 イ号標章の説明
(1)イ号標章は、平成28年2月17日から現在まで、被請求人サイト(http://cookpad.com/recipe/3694496)上に、デコレーションされたサンドイッチの画像、その調理法、調理者のコメント等とともに、「ケーキイッチ」の文字が記載されているものである。
(2)イ号標章は、平成28年2月27日から現在まで、被請求人サイト(http://cookpad.com/recipe/3716062)上に、デコレーションされたサンドイッチの画像、その調理法、調理者のコメント等とともに、「ケーキイッチ」の文字が記載されているものである。
(3)なお、イ号標章が記載されている被請求人レシピは、いずれも、請求人が考案し講習会等で教授している、いわば本物の「ケーキイッチ」ではなく、「ケーキイッチ」を模したものである。また、被請求人レシピを投稿した人物は、いずれも、請求人の認定講師の資格を有する者ではない。
3 イ号標章が商標権の効力の範囲に属すること
(1)イ号標章は、デコレーションされたサンドイッチについて、本件商標と全く同一の「ケーキイッチ」と称し、かつ、当該サンドイッチの作り方の知識を教授するべく、その画像や調理法などを被請求人サイトに掲載しているものである。
このように、イ号標章は、本件商標の指定商品である「デコレーションされたサンドイッチ」、並びに、本件商標の指定役務である「サンドイッチの作り方の知識の教授」及び「通信を用いて行う映像又は画像の提供」について、外観、呼称、観念のいずれにおいても本件商標と全く同一の「ケーキイッチ」たる標章を使用するものであり、本件商標にかかる請求人の商標権を侵害していることは明らかである。
(2)これに対し、被請求人は、イ号標章は、自他商品識別機能ないし出所表示機能を有する態様で使用されたものではないから、本件商標の商標権侵害には当たらないと主張している。
しかし、前記のとおり、本件商標は、請求人が独自に考案した新たな造語であり、請求人が提供する商品や役務を識別する標識としての機能を有している。
すなわち、「ケーキサンドイッチ」や「サンドイッチケーキ」などといった類似の観念を有するものも含めて、サンドイッチやケーキ等に関する商品や役務が多数存在する中で、あえて複数のメディアが請求人の「ケーキイッチ」を取り上げ、多数の需要者が請求人が主催する有料の講習会への参加を希望し、様々な業界が「ケーキイッチ」に関心を示して請求人に問合せを行ってくるのは、まさしく、一般需要者(とりわけ、食品、調理、海外の食文化、習い事、資格取得等に関心のある需要者やこれらを扱う各業者)において、「ケーキイッチ」が、他のサンドイッチやケーキ等とは異なる請求人独自の商品として認識されており、本件商標により、他の商品や役務と請求人独自の商品や役務とを区別して選択されているからに他ならない。
(3)そして、世間に数多あるサンドイッチやケーキの中で、「ケーキイッチ」と呼べるのは、請求人が独自に考案し請求人がその調理法や知識を教授しているものだけであり、「ケーキイッチ」の調理法等を教授できるのは、請求人もしくは請求人において認定講師の資格を取得した者に限られる。
かつ、現在、請求人もしくはその認定講師が講習会等で教授している内容はインターネット等で公開していないため、一般需要者は、請求人もしくはその認定講師が主催する有料の講習会に参加することで、唯一、「ケーキイッチ」の調理法や知識を得ることができるのである。
(4)したがって、一般需要者が被請求人サイトにおけるイ号標章を見た場合、イ号標章が記載されている被請求人レシピは、請求人が考案した本物の「ケーキイッチ」の調理法を掲載したものであり、本来は、請求人もしくはその認定講師が主催する有料の講習会に参加しなければ知ることのできない「ケーキイッチ」の調理法や知識を、わざわざ有料の講習会に参加しなくても、被請求人サイトを閲覧することで、誰でも自由に無料で取得できると誤認混同するおそれがあることは明白である。
さらにいえば、インターネットで「ケーキイッチ」を検索すると、請求人のホームページや、請求人の許可を得て本件商標を使用しているウェブページ等よりも先に、被請求人サイトのイ号標章が上位に表示されることが多いため、「ケーキイッチ」を検索した一般需要者は、最初に被請求人レシピを目にすることになり、実際にも誤認混同を生じさせるおそれが極めて高い状況となっている。
このように、被請求人は、被請求人レシピの内容を説明するために、単なる「ケーキ」や「サンドイッチ」などの用語ではなく、あえて本件商標と同じ「ケーキイッチ」という標章を用いることで、一般需要者を誤認混同させ、被請求人サイトのアクセス数を増やしているのである。
(5)以上のような、被請求人における本件商標の使用は、請求人の工夫や努力により獲得された本件商標の周知性、本件商標に対する信用や顧客吸引力を不正に利用するものであり、到底認められない。
4 上申書の理由(平成29年1月6日付け)
(1)本件において「ケーキイッチ」を商標法上の商品と記載した部分は撤回する。
(2)商標法第26条第1項第6号に該当しないこと
ア 自他役務識別機能を有する態様での使用であること
被請求人は、答弁書4頁において、イ号標章の使用態様は単にレシピの内容を特定する方法としてしか使用されていないと主張する。
しかし、単にレシピの内容を特定する方法として用いるのであれば、「ケーキサンドイッチ」や「サンドイッチケーキ」「デコレーションサンド」など、より一般的な表記を用いるのが自然であるところ、そのような一般的な表記ではなく、あえて本件商標を用いた理由について、イ号標章には「ケーキよりも大人なケーキイッチという存在を知って」と記載されている(甲4の2)。
この点に関して、被請求人サイトには、投稿するレシピにどのような表記を用いるべきかについて、投稿したレシピの閲覧数を上げるためには、テレビや雑誌などの影響で突発的に人気になるものや、旬の食材や料理の名前等を表記することを勧める記載がある(甲9)。
このように、被請求人サイトの投稿者は、多数あるレシピの中から、自分のレシピをより多くの需要者に閲覧してもらうために、投稿するレシピに、例えば「ケーキサンドイッチ」「サンドイッチケーキ」「デコレーションサンド」などありふれた一般的な表記ではなく、テレビや雑誌などですでに話題になっている本件商標のような表記をあえて用いるのであり、また、そうしてより多くの閲覧数を上げることで、被請求人は利益を得ている。
これを、需要者の観点からみれば、需要者が被請求人サイトでレシピを検索して閲覧する際に、ありふれた一般的な表記のレシピと、テレビや雑誌などですでに話題になっている本件商標が記載されたイ号標章とがあった場合に、より多くの需要者が本件商標が記載されたイ号標章に関心を示して、これを選択し閲覧するということである。このことは、まさしく、本件商標がイ号標章のレシピと他のレシピを区別する表示として機能していることを意味している。
以上のように、イ号標章における本件商標は、単にレシピの内容を特定する方法として使用されているものではなく、当該レシピがより多くの需要者の関心を集め、他のレシピと区別されてより多くの需要者に閲覧してもらうための表示として、使用されていることが明らかである。
イ 出所表示機能を有する態様での使用であること
被請求人は、答弁書5頁において、被請求人サイトについては「クックパッド」「cookpad」という表示によって役務の出所を識別するのが通常であると考えられ、本件商標から役務の出所を想起することはないと主張する。
しかし、被請求人も述べるように、被請求人サイトに掲載されているレシピはすべてユーザーが投稿したものであり、被請求人サイトはレシピの投稿・検索サービスにすぎない。かつ、レシピを投稿しているユーザーは匿名であり、ハンドルネームという実名の代わりに用いる愛称のようなものが記載されているだけである。
このような本件の特徴を踏まえれば、被請求人サイトで検索して、イ号標章のレシピを目にした需要者が、当該レシピの出所を判断するために着目するのは、「クックパッド」「cookpad」という表示ではなく、また、ユーザーが実名の代わりに用いる愛称でもなく、レシピに表記された本件商標に他ならない。
すなわち、イ号標章を目にした需要者は、そこに本件商標が使用されていることで、テレビや雑誌など他のメディアで目にした請求人の役務を想起し、イ号標章のレシピがそれらと同じのものであると認識する。それによって、需要者は、他の多くのレシピの中から、イ号標章のレシピを選択して閲覧するのである。
また、請求人の役務に興味や関心をもつ需要者が、本件商標が使用されているイ号標章を目にすれば、本来は、請求人もしくはその認定講師が主催する有料の講習会に参加しなければ知ることのできない「ケーキイッチ」の調理法や知識を、わざわざ有料の講習会に参加しなくても、被請求人サイトを閲覧することで、誰でも自由に無料で取得できると誤認するおそれも十分にある。
実際にも、請求人の役務にかかる「ケーキイッチ」を紹介しているウェブページ(甲10)では、請求人の役務に関する記載の真ん中にイ号標章が記載されており、あたかも、イ号標章のレシピが、その前後に記載されているレシピ等と並んで、請求人が考案し提供したものであるかのような誤認を生じてしまっている。
このウェブページの作成者が、まさしく、前記の「被請求人サイトで検索して、イ号標章のレシピを目にした需要者」であるところ、当該作成者は、イ号標章に記載された本件商標によって、その出所を請求人と同一と判断し、前記のようなウェブページを作成しているのである。
このように、一般の需要者が、イ号標章に記載された本件商標から役務の出所を想起し、混同を生ずるおそれがあることは明らかである。
以上のように、イ号標章における本件商標が、当該レシピの出所を判断するための表示として使用されていることは明らかである。
(3)商標法第26条第1項第2号に該当しないこと
被請求人は、答弁書6頁において、「cakewich」や「ケーキウイッチ」なる言葉は、「何かを挟んだケーキ」あるいは「サンドイッチ様のケーキ」を指す言葉として一般的に用いられていると主張する。
しかし、そもそも「ケーキイッチ」は、請求人が考案した造語であり、国語辞書等にも掲載されておらず、その言葉が、普通名称のように一般的に用いられているという事実はない。このことは、様々なメディアが請求人の役務にかかる「ケーキイッチ」を紹介する際に、「ケーキイッチ」とは何か、という取り上げ方をしていることからもうかがわれる。
また、「イッチ」「ウィッチ」「wich」についても、単独で存在する言葉ではなく、それ自体で「何かを挟んだ」とか「サンドイッチ様の」等の意味を有するものではない。なお、被請求人が述べる「何かを挟んだ」とか「サンドイッチ様の」の意味で一般的に用いられている言葉は、むしろ「サンドイッチ」の「イッチ」の方ではなく「サンド」の方である。
また、被請求人は、「cakewich」や「ケーキウイッチ」が「何かを挟んだケーキ」とか「サンドイッチ様のケーキ」を指す言葉として用いられている例として、乙第3号証ないし乙第6号証を挙げているが、乙第3号証はビスケット菓子、乙第4号証は中にマシュマロやクリームなどを入れて外側をチョコレートでコーティングした菓子、乙第5号証は調理器具、乙第6号証はサンドイッチと、実際には、「cakewich」や「ケーキイッチ」が指しているものは様々である。
よって、乙第3号証ないし乙第6号証は、「cakewich」や「ケーキイッチ」が、「何かを挟んだケーキ」とか「サンドイッチ様のケーキ」を指す言葉として一般的に用いられていないことを、むしろ裏付けている。
以上のように、イ号標章における本件商標の使用が、単に「何かを挟んだケーキ」とか「サンドイッチ様のケーキ」を指す言葉として「商品の品質を普通に用いられる方法で表示したもの」でないことは明らかである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の判定を求めると答弁し、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第6号証(枝番を含む。)を提出した。
1 商標法第26条第1項第6号に該当すること
被請求人によるイ号標章の使用は、商標法第26条第1項第6号により、本件商標の商標権の効力の範囲に属さない。
(1)イ号標章の使用状況
被請求人が運営するウェブサイト(被請求人サイト)は、被請求人サイトの登録ユーザーが自由に料理レシピを投稿することができるウェブサービスであり、被請求人サイトの利用者は、料理名や食材名、料理の用途などで検索することによりレシピを発見し、自らの料理作りの参考にすることができるというサイトである。被請求人サイトは、そのコンテンツのほとんどをユーザーに依存するという、いわゆる「CGM(コンシューマ・ジェネレイテッド・メディア)」である。
被請求人サイトがレシピ投稿・検索サービスであることは、検索画面におけるサイト名称に「料理レシピ載せるなら」との記載がある(乙1)ことから、被請求人サイトを利用するユーザーにとって顕著である。
そして、イ号商標が使用されているのは、甲第4号証の1及び2で摘示されているレシピの名称として、「フルーツサンド☆ケーキイッチ」「ケーキみたいな新感覚サンド ケーキイッチ」と表示されている点、及び「このレシピの生い立ち」として、「ケーキよりも大人なケーキイッチという存在を知って、無性に作りたくなって作りました!」と表示されている点のみである。
これらは、いずれもユーザーが投稿する欄であり、それぞれのレシピについて、ハンドルネーム「めろんぱんママ」「お料理写真館」なるユーザーが自ら記入し、アップロードしたものである。そのことは、レシピを表示するページの冒頭のレシピ概要部分に、各ユーザーのハンドルネームが記載されていることからも、これらを目にする一般ユーザーにとっても明らかである。
(2)被請求人サイトにおいては、レシピを特定するものとしてしかイ号標章が使用されていないこと
イ号標章の使用態様は前述のとおりであり、単にレシピの内容を特定する方法としてしか使用されていない。
ユーザーにおいては、被請求人サイトにおいて、何らかの方法で検索等し、甲第4号証の1及び2に特定されるレシピを表示した場合に「ケーキイッチ」なるイ号標章を目にすることになるが、当該レシピがユーザーによって投稿されたものであることは被請求人サイトを利用するユーザーにとって自明であるし、通常ユーザーは、当該レシピについて単に「ケーキイッチ」なる料理を作成するためのレシピであると認識することは明らかである。すなわち、需要者が、当該表示について当該レシピによって作成される料理の出所を示すものと理解することはないことも自明である。需要者がレシピに依拠して作成する料理は当然需要者にとって自ら調理したものであることは明らかであり、その出所を請求人であると誤認しようがないからである。
また、請求人は「ケーキイッチ」が商品であると主張しているが、飲食店で供給される料理が流通性を欠き、商標法上の商品ではないことと同様に、講習会や料理教室で調理される「ケーキイッチ」も、そして、レシピを参考に家庭内で調理される「ケーキイッチ」も、商標法第2条第1項第1号における商品ではない(大阪地判昭和61年12月25日判時1223号130頁、東京地判昭和62年4月27日判時1229号138頁、東京高判昭和63年3月29日無体集20巻1号98頁)。
(3)被請求人サイトの需要者であるユーザーが誤認するおそれがないこと
被請求人サイトにおいては、レシピが表示されるいかなるページにおいても、左上に「クックパッド」の文字とロゴが大きく表示されており(甲4の1及び2)、レシピベージにアクセスしたユーザーは真っ先にこれらの表示を目にすることになる。したがって、被請求人サイトについては「クックパッド」「cookpad」という表示によって役務の出所を識別するのが通常であると考えられ、本件商標から役務の出所を想起することはないといえる。
このように、被請求人サイトの需要者であるユーザーにおいては、被請求人サイト内に表示された「ケーキイッチ」の文字から役務の出所を識別したり、想起することはないものと認められるから、被請求人サイトにおけるイ号標章の使用は、商標的使用に当たらないことは明らかである。
(4)イ号標章の表示はレシピ内容の表示であり、商品・役務の出所を識別したり、想起することはないこと
前述のとおり、イ号標章が使用されているのは、被請求人サイトの検索等の結果として表示されるレシピにおいてである。
被請求人サイトは、ユーザー投稿型のレシピ検索サービスであることから、当該検索結果を見たユーザーは、あるユーザーが「ケーキイッチ」なる料理のレシピを掲載していることを認識するのが通常であり、レシピ検索サイトという被請求人サイトの目的からすれば、レシピが何の料理を作るためのレシピであるかを表示することは必要不可欠なものであるといえる。このようなイ号商標の表示は、ごく通常の表記態様であると解されることから、被請求人が被請求人サイトにおいてイ号標章を用いた行為は、本件商標を、被請求人サイトの自他商品識別機能ないし出所表示機能を有する態様で使用する行為、すなわち商標としての使用行為でないことは明らかである。
なお、イ号標章として判定を求める部分につき、自他商品の識別標章としての機能を果たすための商標としての使用に当たらない場合について、商標権の効力の範囲に属さないと判断する過去の判定(H06-60006)がある。
2 商標法第26条第1項第2号に該当すること
被請求人によるイ号標章の使用は、商標法第26条第1項第2号により、本件商標の商標権の効力の範囲に属さない。
本件商標は「ケーキイッチ」であるが、英文表記は「cakewich」である(乙2)。当該英文表記からは、「ケーキウイッチ」なる称呼が生じる。
「cakewich」や「ケーキウイッチ」なる言葉は、「何かを挟んだケーキ」あるいは「サンドイッチ様のケーキ」を指す語として一般的に用いられている。「何かを挟んだケーキ」としては、乙第3号証や乙第4号証に示される菓子商品に付されている例があるほか、サンドイッチ型のケーキを作成するためのケーキの型枠の商品名としての使用(乙5)や、「ケーキ風サンドイッチ」として、レシピにおいて紹介されているウェブサイトも存在している(乙6の1及び2)。
そうすると、イ号標章は、単に「何かを挟んだケーキ」あるいは「サンドイッチ様のケーキ」のレシピの内容を端的に表すものとして付されたものであると認められ、商標法第26条第1項第2号所定の商品の品質を、普通に用いられる方法で表示しているにすぎず、本件商標の効力が及ばないことは明らかである。
3 請求人の主張に対する反論
請求人は、「世間に数多あるサンドイッチやケーキの中で、『ケーキイッチ』と呼べるのは、請求人が独自に考案し請求人がその調理法や知識を教授しているものだけ」であると主張し、誤認混同のおそれがあるなどと主張するが、それは単なる請求人の主観的な問題にすぎない。
請求人自ら、「ケーキイッチ」について、「デコレーションしたサンドイッチを協会独自のレシピでアレンジして『ケーキイッチ』と名付けました」と説明しているとおり、ある特定の商品ではなく、単にデコレーションしたサンドイッチを指す概念として自らも本件商標を利用していることからしても、需要者にとっても、「デコレーションしたサンドイッチ」以上の意味を持たないことは明らかである。需要者が、「ケーキイッチ」が、「請求人が独自に考案し請求人がその調理法や知識を教授しているものだけ」という認識を持たず、通常は単なる料理名との認識しか持たない以上、被請求人サイトにおいて表示されているレシピによって作成される料理との誤認混同のおそれなど生じようがない。
以上のとおり、被請求人が被請求人サイトにおいてイ号標章を用いた行為が、本件商標を被請求人サイトの自他商品識別機能ないし出所表示機能を有する態様で使用する行為、すなわち商標としての使用行為に該当しないことは明らかである。

第5 当審の判断
1 本件商標とイ号標章の類否について
前記第1及び第2のとおり、本件商標とイ号標章は、共に「ケーキイッチ」の片仮名を横書きしたものであるから、その構成文字において同一であり、両者は、同一又は類似の商標と認められる。
2 イ号標章の使用商品又は使用役務について
(1)被請求人サイトについて
ア 請求人が、「イ号標章が記載された被請求人サイト」として提出した甲第4号証の1及び2には、共に、ページの左上に「毎日の料理を楽しみに/cookpad」と記載され、その右横には、四角枠内に「ケーキイッチ」の文字、「×」の記号、四角枠内に薄く「目的・用途」の文字、四角枠内に「レシピ検索」の文字がそれぞれ表示されている。
そして、甲第4号証の1には「フルーツサンド☆ケーキイッチ」のタイトルと、当該料理に対するコメントと「めろんぱんママ」の文字、及びその料理方法(レシピ)が掲載され、甲第4号証の2には「ケーキみたいな新感覚サンド ケーキイッチ」のタイトルと、当該料理に対するコメントと「お料理写真館」の文字、及びその料理方法(レシピ)が掲載されている。
イ 乙第1号証は、「クックパッド」の文字列による「Google検索」の検索結果であるが、その検索結果の一番上に「レシピ検索No.1/料理レシピ載せるなら クックパッド」の見出しに続き、「cookpad.com/」、「日本最大の料理レシピサービス。252万品を超えるレシピ、作り方を検索できる。家庭の主婦が実際につくった簡単実用レシピが多い。利用者は5000万人。自分のレシピを公開することもできる。」と記載されている。
ウ 被請求人の答弁によれば、被請求人サイトは、「サイトの登録ユーザーが自由に料理レシピを投稿することができるウェブサービスであり、本サイトの利用者は、料理名や食材名、料理の用途などで検索することによりレシピを発見し、自らの料理作りの参考にすることができるというサイトである。」と説明されている。
エ 以上からすれば、甲第4号証の1及び2に表示されている「×」の記号の前後の四角枠は、検索する文字列を入力する枠(若しくは、入力した検索条件を表示したもの)であり、その下の領域に、検索結果である料理の名称、写真、コメント等及びレシピが表示されたものと認められるものであって、上記アのとおり、甲第4号証の1及び2は、「ケーキイッチ」の文字を入力して検索した結果表示された画面であるとみることができる。
してみれば、被請求人サイトは、登録ユーザーが投稿した料理レシピをウェブページ上に表示し、また、ウェブサイトの利用者が検索できる機能を有するものであり、「検索機能を有する料理レシピの投稿サイト」であるといえる。
そして、被請求人は、被請求人サイトである「料理レシピの投稿サイト」を管理運営している。
(2)被請求人サイトにおけるイ号標章の表示について
上記(1)によれば、被請求人サイトにおけるイ号標章(甲4の1及び2)の表示は、同サイトに投稿した者が、紹介するレシピにより作ることができる料理名として採択した名称であって、被請求人は当該料理名も含めて、投稿者が投稿した料理レシピを、被請求人サイトにおいて公開しているものである。
してみれば、被請求人サイトにおいて表示されているイ号標章は、同サイトを運営する被請求人が、その業務について使用する商標ということはできない。
3 請求人の主張について
請求人は、「イ号標章は、本件商標の指定商品である『デコレーションされたサンドイッチ』、並びに、本件商標の指定役務である『サンドイッチの作り方の知識の教授』及び『通信を用いて行う映像又は画像の提供』について、本件商標と同一の『ケーキイッチ』たる標章を使用するものである」旨を主張している。
さらに、請求人は、上申書において、イ号標章が、被請求人サイトに掲載の料理レシピの出所を判断するための表示として使用されている旨も主張している。
しかしながら、上記の2つの主張については、前記1のとおり、本件商標とイ号標章が、同一又は類似の商標であり、また、被請求人サイトにおいて、「デコレーションされたサンドイッチ」の料理レシピとともにイ号標章が表示されているとしても、前記2のとおり、被請求人は、「料理レシピの投稿サイト」といえる被請求人サイトを管理運営しているものであり、同サイトに表示されたイ号標章は、同サイトに投稿した者が、料理名として採択した名称として表示されているにすぎず、被請求人が、その業務について使用する商標ということはできないものである。
また、被請求人サイトにおいて紹介されている料理が「デコレーションされたサンドイッチ」であるとしても、これは、当該サイトに投稿した者による「デコレーションされたサンドイッチ」の料理方法(レシピ)を紹介しているものであって、市場で流通する商品を紹介するものではない。
加えて、請求人は、被請求人が、「サンドイッチの作り方の知識の教授」及び「通信を用いて行う映像又は画像の提供」の役務を提供していることを具体的に主張、立証しておらず、かつ、被請求人サイトにおける料理レシピの表示を、被請求人による「サンドイッチの作り方の知識の教授」及び「通信を用いて行う映像又は画像の提供」の役務とみることもできない。
したがって、請求人の主張は、いずれも採用できない。
その他、被請求人がイ号標章を本件商標に係る指定商品又は指定役務について使用している事実は見いだせない。
4 まとめ
以上のとおり、本件商標とイ号標章とが、同一又は類似であるとしても、イ号標章は、本件商標の指定商品及び指定役務について使用されるものではないから、被請求人サイトに表示されるイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属しない。
よって、結論のとおり判定する。
判定日 2017-02-02 
出願番号 商願2015-90357(T2015-90357) 
審決分類 T 1 2・ 9- ZB (W3041)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 守屋 友宏 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 山田 正樹
中束 としえ
登録日 2016-02-12 
登録番号 商標登録第5826244号(T5826244) 
商標の称呼 ケーキイッチ、イッチ 
代理人 鎌田 真理雄 
代理人 加藤 春恵 
代理人 東條 岳 
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