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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X03
管理番号 1325034 
審判番号 取消2016-300227 
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2016-04-04 
確定日 2017-02-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第5141494号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5141494号商標の指定商品中、第3類「せっけん類,化粧品」については、その登録は取り消す。 審判費用は、被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5141494号商標(以下「本件商標」という。)は、「毛力」及び「モウリョク」の文字を2段に横書きしてなり、平成19年12月7日に登録出願、第3類「せっけん類,化粧品,香料類」を指定商品として、平成20年6月13日に設定登録されたものである。
そして、本件審判の請求の登録は、平成28年4月18日である。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証及び甲第2号証を提出した。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中の「せっけん類、化粧品」について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存在しないので、商標法第50条第1項の規定により取消されるべきものである。
2 答弁に対する弁駁
(1)乙第1号証の1葉目は、全体的に広告文が記載されており、本件商標の漢字部分の「毛力」が、「ヘアチューンで“毛力”UP」という文章中にその一部として記載され、2葉目の上方に「4e毛力UPコース」と記載されていることは認める。
しかしながら、1葉目における「毛力」の表示態様は、「毛の力をアップさせる」という、2葉目及び3葉目に所載の商品である「シャンプー」、「トリートメント」及び「リンス」の広告文中において、前記商品の機能又は効能あるいは効果を単に表しているにすぎず、「毛力」が指定商品に使用されたという証明はされておらず、1葉目における「毛力」の使用は、商標法第2条第3項でいう「商品に使用する」ということができず、したがって、自他商品を識別するために使用するものであるとはいえないものである。すなわち、乙第1号証における「毛力」は、「商標としては全く使用されていない」というべきである。
さらに、乙第1号証の2葉目に記載された「4e毛力UPコース」についても前記と全く同一で、この「毛力」も「商標として全く使用されていない」というべきである。
(2)被請求人は、乙第1号証は、「商品の宣伝広告として販売代理店や美容院等に配布されるものであり、商標法第2条第3項第8号にいう標章の使用である。」と主張しているが、この乙第1号証では、本件商標を指定商品に使用しているという事実を確認することができず、どうみても乙第1号証に記載された「毛力」は、「毛の力をアップさせる」という商品の広告であって、本件商標が「商標」として乙第1号証に記載された事実は全くないものである。そして、乙第1号証において、敢えて商標ということができるものは、乙第1号証の1葉目の左上の「4eマーク」であると考える。これは後述するように、乙第2号証及び乙第3号証の記載から、本件商標権者及び取引業者も前記「4eマーク」を商標として捉えているからである。
(3)乙第2号証及び乙第3号証の「注文書」及び「納品書」には、前記「4eマーク」を商標として捉え、「4eトリートメント」や「4eシャンプー」のように記載されているが、本件商標は全く記載されていない。このことは、取引業者である販売代理店や美容院等はもちろんのこと、本件商標権者までもが、乙第1号証に表示された「毛力」を、商標として認識しておらず、単に商品の機能又は効能あるいは効果を表しているにすぎないものであると認識していることになる。
したがって、乙第1号証に表示された「毛力」は、少なくとも本件指定商品を頻繁に取り扱う販売代理店や美容院等の「注文書」にも記載されていないことは、当然商品の小売等の流通過程においても、商標として使用された事実がないと考えられ、乙第1号証ないし乙第3号証の記載からは、本件商標を指定商品に使用した事実は全く存在しない。
(4)本件商標は、漢字の「毛力」と、片仮名の「モウリョク」とを2段併記して構成されている。本件商標は、被請求人も認めているように造語であるが、商標の構成が一般に漢字と片仮名の2段併記の場合、片仮名部分が漢字部分の「唯一の称呼(読み)」であると社会通念上認められるものであれば、「毛力」のみの使用でも本件商標の使用になるが、本件商標の漢字部分の「毛力」は造語であるから、社会通念上、画一的な「唯一の称呼(読み)」は生じない。具体的には、「毛力」は本件商標のように「モウリョク」という称呼も生じるが、「モウリキ」という称呼も生じ、さらに、乙第1号証の広告内容から判断すると、「ケジカラ」という称呼を生じるものであると解するのが自然である。
したがって、本件商標は、「毛力」と、複数の称呼のうちの「モウリョク」を選択採用し、両者を2段併記して商標権を取得したものであるから、「毛力」と「モウリョク」の両者を一体にして使用しない限り、「本件商標の使用」にはならないというべきである。
(5)以上述べたように、乙第1号証ないし乙第3号証の記載では、「毛力」は商標として機能していないので、商標として使用されている事実がなく、また、乙第1号証の「毛力」のみの使用では、本件商標の使用ではない。
したがって、本件商標は、商標法第50条第1項に該当し、取り消されるべきものである。

第3 被請求人の主張
被請求人は、「本件審判の請求は成り立たない。審判費用は請求人の負担とする。」との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。
答弁の理由
本件商標権者は、本件商標の指定商品中の「せっけん類,化粧品」について、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において本件商標を使用している。
1 本件商標は、標準的な書体の漢字及び片仮名で「毛力/モウリョク」と左横書きしてなるものである。
2 本件商標権者は、主にシャンプー、トリートメント等の美容関連商材を開発、販売する会社であり、美容室、サロン等に商品を販売している。
本件商標は、髪の生体から生み出される、髪本来の総合的な力という意味合いを暗示するものとして、本件商標権者により考案された造語である。
本件商標権者は、本件商標が登録となって以後、本件商標権者の開発したシャンプー及びトリートメントを販売するに際し、本件商標を継続して使用している。
3 乙第1号証は、本件商標権者が商品「シャンプー、リンス、トリートメント」を販売代理店に販売する際に配布しているパンフレットの写しである。パンフレットの表紙には白抜きで大きく目立つ態様で「“毛力”UP」と記載されており、左下に小さく「“毛力”とは...生体が作り出す複合体の力」と記載されている。このように本件商標を引用符号で囲み、他の文字や文章から独立したものとして表示し、商標として本件商標を使用している。このパンフレットは、本件商標権者の開発したシャンプー等の特性を説明するとともに、使用方法、効果、効能をわかり易く図示したものであり、商品「シャンプー、リンス、トリートメント」等を販売する際に、商品の宣伝広告として販売代理店や美容院等に配布されるものである。このように、商品に関する広告に標章を付して展示し、又は頒布する行為は、商標法第2条第3項第8号にいう標章の「使用」に該当する。また、商品「シャンプー」は、第3類「せっけん類」に属するものであり、商品「リンス、トリートメント」は、第3類「化粧品」に属するものであるから、本件商標権者は、上記指定商品について本件商標を使用しているといえる。
4 乙第2号証及び乙第3号証は、本件商標権者が商品「シャンプー、トリートメント」を販売していることを示す資料であり、具体的には、取引先から本件商標権者に宛てた商品の注文書の写し及び本件商標権者が発行した納品書の控えである。これらの資料が示すように、本件商標権者は、現在まで継続して本件商標の指定商品である「シャンプー、トリートメント」等を販売しており、また、上述のように、当該商品を販売する際に、商品の広告として、乙第1号証に示すパンフレットを配布している。
5 以上のとおり、本件商標権者は、本件商標を指定商品について継続して使用しているから、本件商標は、商標法第50条第1項に該当するものではない。

第4 手続の経緯
審判長は、口頭審理を行うべく、被請求人及び請求人に対し、要旨「被請求人が提出した証拠によっては、商標法第50条第2項の証明をしたものとは認められない。」旨の暫定的見解や審理事項を示した審理事項通知書の案を平成28年9月30日付けでファクシミリで送付し、口頭審理の期日の調整を行ったところ、被請求人からは、平成28年10月18日付けで「答弁書において主張・立証を尽くしたと考えるから、書面審理を希望する。」と述べる上申書が提出され、請求人からは、平成28年10月24日付けで「弁駁書において主張・立証を尽くしたと考えるから、書面審理を希望する。」と述べる上申書が提出されたため、口頭審理に代えて書面審理を行った。

第5 当審の判断
被請求人は、取消請求に係る指定商品中の化粧品に属する「シャンプー、リンス、トリートメント」に関する広告に本件商標を付して展示又は頒布している旨主張し、その証拠として乙第1号証ないし乙第3号証を提出しているので、以下、検討する。
1 被請求人の主張及び証拠によれば、次の事実が認められる。
(1)乙第1号証について
ア 1葉目(表紙)には、左上部に、「SHAMPOO」の文字と「TREATMENT」の文字の間に、灰色の円内に、外周に沿って円形に文字を配し、その中に「4e」の文字を記載した表示(以下「『4e』マーク」という。)があり、右下部に、「FR△SCO」(「△」の部分は三角状の図形、以下同じ。)の表示がある。
そして、中央に「毛力主義」の文字が掠れたように表示され、その右側に、「ヘアチューンで“毛力”UP↑」、「どんなに良いカットをしても毛髪に“力”が無ければ良いデザインにはなりません。髪の自己修復を促す4eシャンプー&トリートメントでヘアチューンを行えば髪の“毛力”もUPし、デザインも決まります!」の記載がある。また、左下部には、左から右に弧状に伸びた矢印と右から左に弧状に伸びた矢印の間に「MO」と「RYOKU」の文字を2段に表したマーク(以下「矢印マーク」という。)が表示され、その下に、「“毛力”とは...生体が作り出す複合体の力」の記載がある。
イ 2葉目には、上部に「FR△SCO」の表示と「4e毛力UPコース」の記載があり、左側には、大きく「Hair Restoration System」の表示があり、「【ツヤ・しなやかコース】」として、シャンプー及びトリートメントについて一連の使用方法が記載されており、右側には、大きく「Hair Care System」の表示があり、「【ハリ・コシ コース】」として、シャンプー及びトリートメントの一連の使用方法が記載されている。シャンプー及びヘアートリートメントの使用方法の横には、それぞれ「4e」マークが表示された商品が掲載されている。
ウ 3葉目には、上部に「4e」マーク、「ヘアー チューン」、「hair tune」、「CREATIVE TECHNIQE of 4-ELEMENT」の記載があり、その下部に、「Electron Induction System」、「【育毛コース】」として、シャンプー及びトリートメントについて一連の使用方法が記載されており、右下部には、「FRASCO.inc」及び「FRASCO 2016.1」の記載がある。
(2)乙第2号証及び乙第3号証について
乙第2号証は、平成27年11月18日付け、同年12月15日付け、2015年12月24日付け及び2016年1月7日付けの取引先から本件商標権者宛ての注文書又は発注書であり、乙第3号証は、乙第2号証の注文又は発注に対応した2015年11月18日付け、同年12月21日付け、同月24日付け及び2016年1月8日付けの本件商標権者から取引先宛ての納品書である。
これらには、「商品名」又は「商品名称」欄に「4eトリートメント」、「4element トリートメント」、「4?エレメントシャンプー」、「4elementシャンプー」、「4エレメント トリートメント」、「4eヘアチューン」、「4eトリートメント資料」、「4?エレメントヘアチューン」、「梱包資料:4elementヘアチューン」「4エレメント 資料」などの記載がある。
2 判断
(1)乙第1号証について
上記1(1)及び(2)からすると、乙第1号証は、本件商標権者の取り扱うシャンプー及びトリートメントの使用方法などを説明するパンフレットであって、当該パンフレットは、本件審判の請求の登録前3年以内である平成27年(2015年)11月、同年12月及び平成28年(2016年)1月に、取引先からの「4?エレメントシャンプー」、「4elementシャンプー」、「4eトリートメント」又は「4element トリートメント」などと商品名欄に記載されたシャンプー及びトリートメントの注文(発注)に対して、商品と共に取引先に納品されたと認められる(乙2、乙3)。
(2)本件商標の使用について
被請求人は、乙第1号証の表紙において、「“毛力”UP」や「“毛力”とは、・・・」のように本件商標を引用符で囲んで使用していることから、本件商標が使用されている旨主張している。
しかしながら、乙第1号証の1葉目(表紙)において、「ヘアチューンで“毛力”UP↑」、「どんなに良いカットをしても毛髪に“力”が無ければ良いデザインにはなりません。髪の自己修復を促す4eシャンプー&トリートメントでヘアチューンを行えば髪の“毛力”もUPし、デザインも決まります。」、「“毛力”とは...生体が作り出す複合体の力」の記載があるが、これらの記載中の「毛力」の文字は、他の文字や文章ととともにいずれもシャンプー等の広告文章や一連の広告フレーズ中に記載されたものであって、「毛髪の力」程の意味を説明したものと理解させるにすぎないから、当該「毛力」の文字部分をもって、シャンプー等の商品の広告に本件商標が付されているということができない。
また、乙第1号証の1葉目(表紙)には、「毛力主義」の記載や矢印マークの表示があるので、これらについてみると、本件商標は、「毛力」及び「モウリョク」の文字を2段に横書きしてなり、「モウリョク」の称呼が生じ、「毛の力」ほどの観念を生じるものである。
他方、「毛力主義」の文字は、本件商標とは構成文字が相違するから、本件商標と社会通念上同一の商標といえないものである。
また、矢印マークは、矢印と「MO」及び「RYOKU」の文字がまとまりよく表されて一体のものと理解されるものであり、文字部分からは、特定の観念を生じないものである。そうすると、矢印マークは、本件商標とは、構成や観念が相違するから、社会通念上同一の商標といえないものである。
(3)小括
以上のとおり、被請求人の提出に係る証拠によっては、本件審判の請求の登録前3年以内に、本件商標権者が本件商標(社会通念上同一のものを含む。)を「シャンプー、リンス、トリートメント」の広告に使用したということができない。
3 むすび
以上のとおりであるから、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品について、本件商標(社会通念上同一のものを含む。)の使用をしたことを証明したということはできない。
また、被請求人は、本件商標の使用をしていないことについて正当な理由があることを明らかにしていない。
したがって、本件商標の登録は、その指定商品中、第3類「せっけん類,化粧品」について、商標法第50条の規定により、取り消すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2016-11-25 
結審通知日 2016-11-29 
審決日 2016-12-19 
出願番号 商願2007-121978(T2007-121978) 
審決分類 T 1 32・ 1- Z (X03)
最終処分 成立  
特許庁審判長 大森 健司
特許庁審判官 田中 亨子
土井 敬子
登録日 2008-06-13 
登録番号 商標登録第5141494号(T5141494) 
商標の称呼 モウリョク、モーリョク、ケジカラ、モーリキ 
代理人 特許業務法人岡田国際特許事務所 
代理人 後田 春紀 

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