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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) X07
管理番号 1325018 
審判番号 無効2015-890078 
総通号数 207 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2017-03-31 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-10-02 
確定日 2017-02-06 
事件の表示 上記当事者間の登録第5432251号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 登録第5432251号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5432251号商標(以下「本件商標」という。)は、「UNLOADCATERPILLAR」の文字を標準文字で表してなり、平成22年6月25日に登録出願、第7類「機械要素(陸上の乗物用のものを除く。)」を指定商品として、平成23年7月8日に登録査定、同年8月12日に設定登録されたものである。

第2 請求人の主張
請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由及び答弁に対する弁駁を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第62号証(枝番を含む。)を提出した。
1 請求の理由
本件商標の登録は、以下の理由により、商標法第4条第1項第15号及び同第8号に違反してされたものであるから、同法第46条第1項第1号により無効とされるべきである。
(1)請求人について
ア 請求人は、1925年に設立された米国イリノイ州に本拠を置く企業であり、1986年にキャタピラー・トラクタ・カンパニーからキャタピラーインコーポレイテッドに社名変更したが、その後も一貫して油圧ショベル、ブルドーザ、ホイールローダー等幅広い範囲で建設機械の製造を行ってきており、現在、世界23か国に110の製造拠点を有し、世界200以上の国で、同社系列の販売会社等を通じて製品の販売やサービスを行っており、ダウ平均株価の銘柄を構成する主要企業30社の一つになっている(甲3?甲5)。
また、請求人は、世界の様々な調査会社やブランド評価機関が行うブランドランキングにおいても継続して高いランキングに位置し続けている(甲6?甲8)。
そして、請求人の全世界における売上高(単位:米ドル)は、2008年が513億2,400万、2009年が323億9,600万、2010年が425億8,800万、2011年が601億3,800万、2012年が658億7,500万であった。請求人の事業業績については、我が国の新聞・雑誌・インターネット等の各種メディアにおいて日常的に記事が掲載されている(甲9?甲17)。
イ 日本における事業
請求人は、日本において、1963年に三菱重工業株式会社(以下「三菱重工業」という。)との合弁会社としてキャタピラー三菱株式会社(以下「キャタピラー三菱」という。)を設立し、1987年には新キャタピラー三菱株式会社(以下「新キャタピラー三菱」という。)を発足した。その後、2008年に社名をキャタピラージャパン株式会社(以下「キャタピラージャパン」という。)に変更して現在に至っている(甲18)。日本における2004年から2007年までの年間売上高(単位:米ドル)は、2004年度が1億2,410万、2005年度が1億3,194万、2006年度が1億4,704万、2007年度が1億4,451万であった。
ウ 以上のように、請求人は、建設機械・鉱山機械等の世界大手として、その業績が業界紙のみならず一般経済紙で絶えず取り上げられていることから見ても、日本の消費者の間で周知著名な企業であることは客観的に明白である。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 請求人の使用に係る商標とその著名性について
(ア)請求人は、「CATERPILLAR」の文字よりなる商標(以下「引用商標1」という。)、「Caterpillar」の文字よりなる商標(以下「引用商標2」という。)、「キャタピラー」の文字よりなる商標(以下「引用商標3」という。)、別掲(1)のとおりの構成よりなる商標(以下「引用商標4」という。)及び別掲(2)のとおりの構成よりなる商標(以下「引用商標5」といい、引用商標1?5をまとめていうときは、単に「引用商標」という。)を請求人の略称又はその一部を表示するマークやハウスマークとして、また、その業務に係る商品・役務を示す商標として、継続的に使用してきた(甲19?甲24)。
(イ)我が国においても、現に販売されているダンプトラック・油圧ショベル・ブルドーザ等の運搬機械・道路機械等の製品、製品を紹介するカタログ、ウェブサイト上に引用商標を付して販売している(甲19、甲21、甲25?甲30)。
また、請求人は、ロゴ「CAT」を用いて、広く一般消費者向けに、ヘルメット・グローブ・ナイフ等の作業用具、パーカ・シャツ・キャップ・靴等のアパレル製品、サングラス・バッグ・アクセサリー類・ゴルフボール・時計・おもちゃ・トランプ・折り畳み椅子・カレンダー・マグカップ・傘など多岐にわたる商品を製造・販売しており、これらの商品にも引用商標を使用し続けている(甲31)。
(ウ)引用商標は、請求人を示すシンボルである「CAT」の文字及びロゴと共に頻繁に使用され、その知名度を高めてきた(甲43)。
(エ)請求人は、引用商標を使用した建設機械や鉱山機械等について、本件商標の出願日前から日本において、キャタピラージャパン及びその前身を通じ、各種書籍、雑誌、新聞、テレビ、交通広告などを媒体にして広告宣伝活動を行ってきた(甲19、甲21、甲25?甲30、甲32?甲42、甲44?甲50)。
日本における宣伝広告活動の年間支出額(単位:円)は、2007年が約20億4,800万、2008年が約24億7,800万、2009年が約9億6,000万、2010年が約7億7,000万、2011年が約6億9,600万であった。
(オ)キャタピラージャパンは、一般社団法人日本機械土工協会、一般社団法人日本砕石協会、一般社団法人林業機械化協会、公益社団法人全国解体工事業団体連合会、一般社団法人日本農業機械化協会の賛助会員として(甲51?甲55)、幅広く事業活動を展開している。
(カ)以上のように、引用商標は、日本においても、遅くとも1981年から30年以上にわたり、業界・年齢を問わず幅広い消費者層に向け、請求人及びその業務に係る商品・役務について使用されてきた。かかる実情に鑑みれば、引用商標が、請求人の業務に係る商品・役務を表示するものとして、本件商標の出願日前から我が国の取引者・需要者間において周知・著名であったというべきである。
イ 本件商標と引用商標との同一・類似性
(ア)本件商標は、ローマ字の「UNLOAD」と「CATERPILLAR」を組み合わせてなる。
他方、引用商標は、引用商標3以外は、ローマ字の「CATERPILLAR」を中心とした構成である。
(イ)本件商標と引用商標を対比するに、外観については、引用商標1、4及び5との関係では、ローマ字の大文字「CATERPILLAR」を共通にする。
称呼についても、本件商標は、「UNLOAD」部分が英語で「(車・船などの)荷物を下ろす、積荷を下ろす」などの意味を有するものとして(甲56?甲58)、我が国の取引者・需要者にも比較的なじみがあるから、その指定商品との関係では、取引者・需要者は「UNLOAD」部分が商品の内容又は品質を表示するものと認識するとみるのが自然である。したがって、本件商標中の「UNLOAD」部分は識別力が弱く、「CATERPILLAR」部分が本件商標の要部となる。
また、前記のとおり、「CATERPILLAR」が請求人の商品・役務、社名、事業を示すものとして国内外に広く知られているものであるから、本件商標に接する取引者・需要者は、「CATERPILLAR」部分に注目する。
本件商標中の「CATERPILLAR」部分から生じる称呼と引用商標から生じる称呼は、同一の「キャタピラー」であるから、本件商標は、引用商標と称呼上同一又は類似の商標である。
したがって、本件商標は、請求人の著名商標と他の文字とを結合した商標であるから、これを指定商品に使用すると、その取引者・需要者が本件商標と引用商標を相紛らわしく認識するおそれが極めて高いというべきである。
よって、本件商標は引用商標と称呼上類似する。
ウ 請求人の業務に係る商品・役務との混同を生ずるおそれ
(ア)前記のとおり、引用商標は、請求人の業務に係る商品・役務、特に、建設機械、鉱業設備機器、ディーゼル及び天然ガス・エンジン等の商品、商品のレンタルサービス等を示すものとして、取引者・需要者間に広く知られている。
(イ)引用商標は、請求人が提供する商品・役務との関係において、特段記述的ではないから、その独自性・独創性は極めて高いというべきである。なお、辞書には、「Caterpillar」は、「米国キャタピラー社の通称」であることが記載されている(甲59)。
(ウ)周知・著名な引用商標を含む本件商標を使用するときは、あたかも請求人が提供する商品・役務の如く誤認されるおそれがある。
(エ)引用商標は、請求人の略称又はその中心となる部分を表示するいわゆるハウスマークであり、建設機械等の業界のみならず、他の商品・役務の分野においても広く使用されてきた結果、請求人を指標するものとして、強い出所表示力を発揮するものとなっており、本件商標の指定商品の分野の取引者・需要者にも十分に知られている。したがって、その混同を生じる範囲は広いものとして考慮されるべきである。
(オ)請求人の業務に係る建設機械、鉱業設備機器、ディーゼル及び天然ガス・エンジン等の商品と本件商標の指定商品は関連性の深い商品であるから、両者の取引者層・需要者層は共通する。
(カ)周知・著名な引用商標は、請求人の提供する商品・役務に係る絶大な信用が化体した重要な財産であり、請求人は、日本でも様々な指定商品・役務について「CATERPILLAR」の文字を構成に含む登録商標を多数保有している。
したがって、万が一、本件商標の登録が維持されると、引用商標の希釈化が生じ得るおそれがあることも否定できない。このような事態が生じた場合、請求人が永年にわたり多大な努力を費やして培ってきたブランドイメージは著しく毀損され、請求人が多大な損害を被ることは明白である。かかる見地からも本件商標の登録は維持されるべきではない。
この点に関し、最高裁の判決(最判平13・7・6)において、著名商標と同一の部分を構成の一部に含む結合商標について、「混同を生ずるおそれがある商標」に当たると判断するのが相当である旨判示しており、本件商標の使用は、当該最高裁の判示に従えば、取引者・需要者に対し引用商標を連想させて商品の出所につき誤認を生じさせるものであり、本件商標の登録を維持すると、引用商標の持つ顧客吸引力へのただ乗りやその希釈化を招くという結果を生じ兼ねない。
(キ)以上のとおり、本件商標の登録査定時はもとより出願時において、本件商標がその指定商品について使用された場合には、それがあたかも請求人又はこれと経済的又は組織的・人的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く誤認され、その出所について混同を生じるおそれがあったことは明らかである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(3)商標法第4条第1項第8号該当性について
「CATERPILLAR」は、本件商標の出願日前から現在に至るまで、請求人の略称として、我が国の需要者・取引者の間に広く認識されていたことは客観的に明らかである。本件商標は、かかる請求人の名称の著名な略称を含むものである。しかも、出願にあたり請求人の承諾を得たものではない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。
2 答弁に対する弁駁
(1)被請求人は、請求人の引用商標「CATERPILLAR」は日本において周知・著名ではない旨を主張する。しかしながら、次に述べるとおり、被請求人の主張は当を得ていない。
被請求人の主張によれば、被請求人は、請求人が提出した証拠は、建設、鉱山及び土木関係の需要者・取引者には認識されるものの、一般の需要者・取引者には見られずなじみがないと考えているようである。
しかしながら、請求人が提出した証拠は、必ずしも特定の業種・業界の需要者・取引者に向けたものばかりではない。たとえば、甲第10号証、甲第12号証ないし甲第14号証、甲第16号証及び甲第17号証は、日経新聞の記事であり、甲第32号証及び甲第33号証は、日経新聞の紙上広告であり、甲第35号証は読売新聞の紙上広告であり、甲第42号証の3は日経新聞及び朝日新聞の誌上広告である。このように、日本の全国紙に請求人の商標「キャタピラー」が掲載・記載されている。また、甲第42号証の2はテレビ放映された「CAT」ブランドCM映像の抜粋である。さらに、甲第42号証の4に示すように、関東・関西の鉄道駅構内及び電車内で交通広告も実施されている。これらはいずれも日本国内の一般の取引者・需要者の目に触れる記事、宣伝、広告である。しかも、全国紙、テレビCM、大都市圏の鉄道駅構内及び電車内の広告であるから、かりに短い期間であったとしても幅広い需要者層に対して強く浸透する媒体ばかりである。したがって、請求人が提出した証拠では、我が国の一般人にとって請求人の引用商標はなじみのないものである、との被請求人の主張には理由がない。
また、商標審査基準によれば、他人の標章の周知度の判断に当たっては、周知度が必ずしも全国的であることを要しないものとされている。
そして、出所の混同のおそれは、著名商標を非類似の商品又は役務について使用するときに一般的又は典型的ではあるとしても、商標の類似性が強い場合や非類似商品又は役務であっても、用途、需要者の一致など密接な関係にある場合は、必ずしも著名ではなくとも、地域的又は特定の取引者・需要者の間で周知な商標との関係でも出所の混同のおそれは生ずると考えられている。
したがって、仮に請求人の提出した証拠が建設、鉱山及び土木関係等の特定の取引者・需要者に対するもののみであったとしても、本件の場合、商標の類似性が強く、かつ、商品も用途・需要者の一致など密接な関係にあるのであるから、本件商標は請求人の商標との間で出所混同のおそれが生ずると考えられる。
さらに、被請求人は、「特許庁の特許情報プラットフォームの『日本国周知・著名商標検索』を調べてみても請求人の引用商標『CATERPILLAR』は、周知・著名商標として掲載されていない。」と述べている。
たしかに、特許庁の特許情報プラットフォームには「日本国周知・著名商標検索」システムがあり、防護標章として登録されている商標及び異議決定・審判・判決において周知・著名な商標として認定された登録商標の情報がここに蓄積され、検索できるシステムとなっている。しかしながら、実際に周知・著名な商標のすべてが防護標章として登録されているわけではなく、また、異議申立・審判・訴訟に係るものではないわけであり、周知・著名商標は特許庁の特許情報プラットフォームの「日本国周知・著名商標検索」に情報が掲載されている商標に限られない。すなわち、「日本国周知・著名商標検索」に載っていない商標であっても実際の取引において周知・著名となっている商標は多く存在するのである。
したがって、被請求人の主張には理由がない。
(2)被請求人は、「我が国では、請求人と異なる第三者が『CATERPILLAR』又は『キャタピラ』を含む商標を所有している。」 旨主張する。
しかしながら、被請求人が挙げた登録例は、そもそも案件を異にする上、本件商標とは商標の構成全体が明らかに異なるため、一概に同様と考えることはできない。すなわち、本件商標は、指定商品との関係で識別力が弱く、かつ、既存の言葉である「UNLOAD」の後に請求人の周知・著名な商標「CATERPILLAR」をつなげた構成になっており、これらの2つの言葉から成っていることが明らかにわかる点、「CATERPILLAR」の部分が他の言葉と組み合わされた別の言葉にはなっていない点等において登録例とは異なるものである。
したがって、被請求人の主張は当を得ていない。
(3)被請求人は、「本件商標は一体的な構成である」こと、「『UNLOAD』も『CATERPILLAR』も一般人にはなじみのない言葉である」こと、「従って、本件商標に接した一般人は『UNLOADCATERPILLAR』なる言葉が何を意味する言葉か分からず、同形同大の英文字から成る本件商標に接した第三者は、これを一体なものとして認識し称呼する」こと、「『CATERPILLAR』は本件商標の後半部分を構成する言葉であるため、万一、本件商標を略称する場合は『アンロード』と称呼するもので、『キャタピラ』とは略称しないものである」ことを述べ、「請求人の使用商標『CATERPILLAR』と『UNLOADCATERPILLAR』とは類似しない商標である。それ故、本件商標を見たり、聞いたりした者が、この様な一体性のある商標『UNLOADCATERPILLAR』の『CATERPILLAR』の部分のみを抽出して認識し、その商品の出所を混同するとは思われない。」と主張する。
しかしながら、「UNLOAD」と「CATERPILLAR」が一般人にはなじみのない言葉であるとして両商標が相紛れることがないとする理解は誤りである。
甲第60号証ないし甲第62号証にあるように、「UNLOAD」は「荷物を下ろす」「積荷を下ろす」という意味があることから、本件商標の指定商品、「機械要素(陸上の乗り物用のものを除く。)」との関係では、積荷を下ろすための機械要素といった商品の内容・品質を想起させる。したがって、本件商標中「UNLOAD」の部分は、識別力が弱く、「CATERPILLAR」の部分が本件商標の要部となる。
さらに、「CATERPILLAR」が請求人の商品・役務、社名、事業を示すものとして国内外に広く知られているものであることは前記1(2)アのとおりである。このように周知・著名な商標を含んでいることからみても、本件商標に接する取引者・需要者はとくに本件商標中の「CATERPILLAR」の部分に注目するものである。
したがって、本件商標は一体なものとして認識し称呼するという被請求人の主張には理由がない。
また、被請求人は、「万一、本件商標を略称する場合は『アンロード』と称呼するもので、『キャタピラ』とは略称しないものである」ことを述べている。しかしながら、上記のとおり、本件商標は「UNLOAD」の識別力の弱さと、請求人商標「CATERPILLAR」の周知・著名性からみて、明らかに「CATERPILLAR」が取引者・需要者に注目される部分になることから、この主張も当たらない。ある言葉を省略する際に、必ずしも後半部分が省略されて語頭にある言葉が略語として用いられるとは限らないのである。
以上のとおりであるから、被請求人の主張には理由がない。
このように、本件商標は請求人の周知・著名商標を一部に有しているから、本件商標が、あたかも請求人がその周知・著名商標「CATERPILLAR」を使って提供している商品・役務の関連商品を提供しているのかと誤認されるおそれがある。
したがって、本件商標をその指定商品に使用した場合には、請求人の業務に係る商品・役務との混同が生じるおそれがあるといわざるをえない。
(4)被請求人は、「特許庁の審査及び付与後異議申立においても、本件商標と請求人の引用商標とは類似しないとともに、本件商標を使用しても出所混同を起こすおそれがないとして、登録及び登録が維持された」旨を主張する。
本件商標の審査中に請求人の登録商標を引用して商標法第4条第1項第11号を理由とする拒絶理由通知が出されたこと、被請求人が意見書を提出し、本件商標が登録されたという経緯があることは認める。
しかしながら、どのような経緯があったにせよ、本件商標の登録の有効性に疑義があるからこそ、請求人は当該無効審判請求を行ったのである。審査中に出された拒絶理由通知に対して意見書を提出したことにより登録になった商標であるからといって、無効理由が存在しないとは限らない。
先に申し立てられた異議申立てについては、異議申立てが成り立たなかったからといって、本件無効審判が直ちに棄却されるべきというものではない。無効審判の手続において登録の有効性を審理されるべきであるから、先の異議申立てが成り立たなかったことを理由に、本件商標の使用が請求人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがないとする、被請求人の主張には理由がない。
以上のとおりであるから、被請求人の主張には理由がない。
(5)小結
被請求人は、本件商標を使用した場合に、請求人の引用商標と出所の混同を生じるおそれはないこと、また、請求人の引用商標は周知・著名ではなく、本件商標は一体不可分の構成であるので、本件商標は他人の著名な略称を含むものではないことを主張し、本件商標は商標法第4条第1項第15号及び同項第8号の規定に違反しておらず、その登録は妥当なものであり、無効理由はないと結論づけている。
しかしながら、既述のとおり、被請求人の主張にはいずれも理由がない。すなわち、審判請求書の請求の理由でも述べたとおり、本件商標をその指定商品に使用することにより、取引者・需要者が請求人の業務に係る商品であると誤認し、出所を混同するおそれがある。また、本件商標を使用した商品の提供が、請求人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品の提供であると誤認され、出所混同を生じるおそれがある。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
また、本件商標は、請求人の名称の著名な略称を含む文字よりなり、かつ、出願にあたって請求人の承諾を得たものではない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第8号に該当する。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、本件審判の請求は成り立たない、審判費用は請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第3号証(枝番を含む。)を提出した。
1 引用商標は日本において周知・著名でない
(1)甲第3号証、甲第4号証、甲第18号証、甲第26号証は、いずれもキャタピラージャパンのウェブサイトの抜粋であり、また、甲第19号証、甲第25号証、甲第27号証?甲第30号証、甲第47号証は、それぞれキャタピラージャパンの発行するカタログ等である。また、甲第20号証?甲第24号証、甲第31号証及び甲第43号証は、それぞれ請求人のウェブサイトからの抜粋である。また、甲第38号証?甲第41号証、甲第49号証及び甲第50号証は、それぞれ建設、土木関係の業界雑誌での広告であり、甲第51号証?甲第55号証は、建設、土木関係の協会や連合会のウェブサイトからの会員リスト等の抜粋である。
このようなウェブサイト、カタログ、雑誌等は、建設機械や鉱山設備機器の関係者でなければほぼ見ないものと思われる。また、甲第45号証の「機械要覧」も同様である。
さらに、甲第5号証は、ウェブサイトの請求人のダウ・ジョーンズ平均株価指数であり、甲第9号証?甲第17号証は、それぞれ請求人の売上高の報告記事であり、これらは経済専門家等が見たり、読んだりするものであり、一般人には関心のないウェブサイトや記事である。
(2)一方、我が国の一般人が接する機会のあると思われる証拠は、甲第32号証?甲第37号証(ただし、甲第34号証を除く)及び甲第42号証の3等の一般向け新聞紙上での広告、甲第42号証の2のテレビCM、甲第42号証の4の交通広告、甲第44号証及び甲第46号証の絵本、甲第48号証のキャタピラージャパン主催の日本女子プロゴルフ協会公認の大会の紹介サイト及び広告等である。なお、甲第6号証?甲第8号証は、世界のブランドランキングのウェブサイトであり、「CATERPILLAR」が上位にランキングされていることを示すものであるが、我が国のごく限られた人しかこのようなサイトは見ないものと思われる。
(3)このように、甲号証は、建設、鉱山及び土木関係のものがほとんどであり、一般向けの広告等は極めて少ない。このことから、我が国の一般人にとって、引用商標はなじみのないものであると推測される。
また、引用商標は、特許庁の特許情報プラットフォームの「日本国周知・著名商標検索」によっても、周知・著名商標として掲載されていない(乙1)。
(4)以上のことから、甲号証をもってしても、引用商標が我が国において周知・著名な商標であるとは思われない。
2 「CATERPILLAR」又は「キャタピラ」を含む登録例
我が国では、請求人と異なる第三者が「CATERPILLAR」又は「キャタピラ」を含む商標を所有している(乙2)。これら商標は、引用商標が周知・著名であれば、登録されなかったであろう商標と思われる。にもかかわらず登録されており、かつ、現在までに、異議申立てや無効審判が請求されていないということは、これらの商標は、商標法第4条第1項第15号及び同第8号の規定に違反して登録されているものではない。
以上のことから、本件商標もこれらと同様に、上記規定に違反しているものとは思われない。
3 本件商標の一体性
本件商標は、欧文字で一行に書かれた一体な構成である。
請求人は、「UNLOAD」部分は「荷を下ろす、積荷を下ろす」等の意味であり、我が国の取引者・需要者に比較的なじみがあり、その意味が理解されている旨主張するが、「UNLOAD」は、我が国の一般の人は、辞書を引かないとその意味を理解できる言葉ではない。
また、「CATERPILLAR」は、英語で「イモムシ、毛虫、無限軌道」等の意味を有する言葉である。一部の人は、「無限軌道」の意味を認識するかもしれないが、大多数の一般人にはなじみのない言葉であり、辞書を引いて初めて上記意味を理解するものである。
したがって、本件商標に接した一般人は、その意味を分からず、同形同大の英文字からなる一体なものとして認識し、称呼するものである。しかも、「CATERPILLAR」は、本件商標の後半部分を構成する言葉であるため、万一、本件商標を略称する場合は「アンロード」と称呼するもので、「キャタピラ」とは略称しない。
したがって、引用商標と本件商標とは類似しない商標である。
それ故、本件商標に接する者が、一体性のある商標中の「CATERPILLAR」の部分のみを抽出して認識し、その商品の出所を混同するとは思われない。
4 本件商標の登録前後の経緯
(1)本件商標は、出願後に、「CATERPILLAR」の文字よりなる商標(登録第244746号、同第435471号、同第2360663号及び商願2007-088792)を引用した商標法第4条第1項第11号該当を理由とする拒絶理由通知書を受けたが、意見書を提出したことにより、本件商標は、上記引用に係る商標とは類似しないとして登録となった。
(2)また、本件商標は、本件審判の請求人より、登録異議の申立てを受けた。申立ての理由は、「CATERPILLAR」(登録第435471号及び同第2360663号)を引用商標とし、本件商標は商標法第4条第1項第7号、同第8号、同第11号、同第15号及び同第19号に違反して登録された、とするものである。
これに対し、特許庁は、異議の申立てにおける引用商標の使用に係る商品は土木機械や運搬機械などであり、これらの商品の需要者が限られている者であり、「CATERPILLAR」の語が「イモムシ、毛虫」などの意味を有する英語の成語であることを考慮すれば、引用商標は、申立人の業務に係る商品を表示するものとして一般の需要者にまで広く認識されているものとはいえないとし、また、同様に、「CATERPILLAR」が、一般の需要者の間で申立人の著名な略称として認識されているものということはできないと判断した。そして、一体不可分のものとして認識される本件商標と引用商標とは非類似の商標であるから、本件商標は、これをその指定商品に使用しても、当該商品について、申立人又は同人と何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかの如く商品の出所の混同を生ずるおそれはないとし、さらに、本件商標が、不正の目的をもって使用するものであるとする証拠もなく、引用商標の顧客吸引力にただ乗りし、その顧客吸引力を不当に利用するものであるなど取引秩序を乱すものと認め得る証拠はないと判断して、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第11号、同第15号、同第19号、同第8号及び同第7号のいずれの規定にも違反してされたものではないから、維持するとの決定をした(乙3)。
(3)以上のように、特許庁の審査及び登録異議の申立てにおいても、本件商標は引用商標とは類似しないとともに、本件商標を使用しても出所混同を起こすおそれがないと判断されたものである。
5 むすび
したがって、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号及び同第8号の規定に違反してされたものではないから、同法第46条第1項第1号の規定により無効とすべきではない。

第4 当審の判断
1 引用商標の著名性について
(1)請求人の提出に係る証拠によれば、以下の事実を認めることができる。
ア 請求人について
請求人は、1925年にキャタピラー・トラクタ社として設立され、その後、1986年にキャタピラーインコーポレイテッドに社名変更した。請求人は、設立以来約90年にわたって、ブルドーザー、油圧ショベル等の建設・土木・荷役機械器具、ディーゼル及び天然ガス・エンジンなどの製造・販売に携わってきた(甲3?甲5)。
また、本件商標の登録査定時(平成23年7月8日)頃までの、請求人の全世界における売上高(単位:米ドル)は、2008年(平成20年)が513億2,400万であり、2009年(平成21年)が約324億、2010年(平成22年)が425億8,800万、2011年(平成23年)が601億3,800万であった(甲9?甲12)。
イ 請求人の我が国における事業展開
請求人は、我が国において、1963年(昭和38年)に、三菱重工業との合弁会社としてキャタピラー三菱を設立し、1965年(昭和40年)に、「CAT D4D」ブルドーザー国産第1号機を完成した。請求人は、1987年(昭和62年)には新キャタピラー三菱を設立し、当時、我が国で第二の建設及び鉱業用機械メーカーとなった。そして、新キャタピラー三菱は、同年に、オリジナル開発の油圧ショベル「CAT E200B」を新発売し、当該油圧ショベルは、1989年(平成元年)に生産台数が10万台に達した。その後、請求人は、新キャタピラー三菱を通じて、我が国において、2005年(平成17年)までに油圧ショベルの新製品を次々に発売し、2008年(平成20年)には、油圧ショベルの生産台数が30万台に達した。なお、トラクタの生産台数は、2007年(平成19年)に30万台に達した。2008年(平成20年)、請求人は、新キャタピラー三菱をキャタピラージャパンに社名変更して現在に至るまで、我が国において営業活動を展開している(甲3、甲18)。
ウ 宣伝広告
(ア)キャタピラージャパン及びその前身は、1997年(平成9年)3月から2011年(平成23年)3月にかけて、その業務に係る商品のカタログを継続して発行してきた。例えば、2011年(平成23年)3月に発行されたカタログの表紙には、引用商標4が表示されている(甲19)。
また、1981年(昭和56年)に、キャタピラー三菱が発行したカタログには、その表紙等に引用商標5が表示され、また、同カタログに掲載されているブルドーザーの前面にも引用商標5が表示された(甲27)。なお、同カタログの8頁及び9頁には、「サービスを容易に、迅速にする はめ込み式動力伝達機構/現場での交換や修理、各装置単独での試験と調整を可能にし、修理コストを低減。」の見出しの下、例えば、「トランスファおよびベベルギア」の項目には、「・・トランスファおよびベベルギアは独立したユニット構造のため、ワークベンチで修理とバックラッシュのシム調整ができ、正確なテストもできるので確実な修理を容易に実施できます。」と記載され、また、同カタログの裏表紙には、「部品供給体制」として「10万余点の部品を常時在庫する本社部品センターと各地の部品庫をコンピュータで連絡。必要とされる部品をスピーディーにお届け・・」と記載されている。
(イ)キャタピラージャパンは、本件商標の登録出願日(平成22年6月25日)前である2008年(平成20年)及び2009年(平成21年)に、その業務に係るブルドーザーについて、「キャタピラージャパン」などの文字とともに、引用商標4を表示して、テレビで広告をした(甲42の2)。2008年(平成20年)におけるテレビコマーシャルは、8月1日から7日、22日から31日であり、日本テレビ系列、TBSテレビ系列、フジテレビ系列、テレビ朝日系列、テレビ東京系列において全国放映され、例えば、関東エリアでは、1日に約15回程度であった。また、2009年(平成21年)におけるテレビコマーシャルは、キャタピラージャパン主催の社団法人日本女子プロゴルフ協会公認の大会「Cat Ladies 2009」がテレビ放映された際にしたものであった(甲42の1)。
さらに、本件商標の登録査定日(平成23年7月8日)前の2010年(平成22年)10月から12月にかけて、フジテレビ系列で月に2?3回程度、同年10月に、テレビ朝日系列で3回の広告をした(甲42の1)。
(ウ)キャタピラージャパンは、2008年(平成20年)8月1日付け日本経済新聞及び2009年(平成21年)8月3日付け朝日新聞に、その業務に係るブルドーザーについて、「キャタピラージャパン株式会社」などの文字とともに、引用商標4を表示して広告をした(甲42の3)。
(エ)1987年(昭和62年)に、新キャタピラー三菱が発行した「CATくらぶ/CATメンバーズ・マガジン」には、「CATERPILLAR」の表示のもと、油圧ショベルやブルドーザー等、その業務に係る商品の写真が多数掲載され、また、新キャタピラー三菱が発足した記念に全国60箇所で油圧ショベルを展示した旨の記載がある。さらに、「充実したフルラインとサポート体制」として全国に張りめぐらされた支店や販売店が掲載されている(甲47の1)。
(オ)本件商標の登録査定日(平成23年7月8日)前の2010年(平成22年)8月に、キャタピラージャパンは、同社主催の社団法人日本女子プロゴルフ協会公認の大会(8月20日?22日)において、そのパンフレットに引用商標4を表示した。なお、当該大会は、同年8月21日及び22日にテレビ放映がされた(甲48)。
エ 書籍による紹介
(ア)絵本「ブルドーザー大ずかん」(昭和59年8月17日、株式会社講談社発行)には、車体の前面に「CATERPILLAR」の文字が表示されているブルドーザーの写真が多数掲載された(甲44)。
(イ)「日本建設機械要覧」(平成元年2月25日、社団法人日本建設機械化協会発行)には、「トラクターおよびブルドーザー」の項目(12?18頁)に「D3Cは、世界のキャタピラー社の工場の中で、新キャタピラー三菱のみが製造している。生産性、操作性、居住性、外観の向上が図られている。運転しやすく、機動性に優れ、多用途に使える小型ブルドーザである。」などと記載され、その他、「モータスクレーパ」の項目(33頁)、「ショベル系掘削機」の項目(95?103頁)、「履帯式トラクタショベル」の項目(166?168頁)、「車輪式トラクタショベル」の項目(180?185頁)、「ずり積み機」の項目(228頁)、「重ダンプトラック」の項目(240、241頁)、「アーティキュレートダンプトラック」の項目(242頁)において、「キャタピラー製」、「新キャタピラー三菱の」、「キャタピラー社の」、「CATERPILLAR製」などの文字が表示されている(甲45)。
(ウ)絵本「ブルドーザー」(平成元年5月19日株式会社講談社発行)には、車体の前面に「CATERPILLAR」の文字が表示されているブルドーザーの写真が多数掲載された(甲46)。
オ その他
「小学館ランダムハウスス英和大辞典」の「caterpillar」の項目には、「1芋虫、毛虫、青虫、チョウ、ガの幼虫、かいこ 2米国Caterpillar社の通称、《商標》同社で開発した無限軌道式トラクター」などと記載されている(甲59)。
(2)前記(1)で認定した事実によれば、「CATERPILLAR」の文字よりなる引用商標1及び5並びに「キャタピラー」の文字よりなる引用商標3は、請求人又はキャタピラージャパン若しくはその前身(これらをまとめていうときは、以下「請求人ら」という。)の業務に係るブルドーザー、油圧ショベル等の建設・土木・荷役機械器具などの商品(以下「請求人ら商品」という場合がある。)を表示するものとして、我が国においても1965年(昭和40年)頃から使用されてきたこと、請求人が新キャタピラー三菱を設立した1987年(昭和62年)当時、新キャタピラー三菱は、我が国で第二の建設及び鉱業用機械メーカーであったこと、請求人は、新キャタピラー三菱を通じて、我が国において、2005年(平成17年)までに油圧ショベルの新製品を次々に発売し、2008年(平成20年)には、油圧ショベルの生産台数が30万台に達したこと、トラクターの生産台数は、2007年(平成19年)に30万台に達していたこと、新キャタピラー三菱は、請求人ら商品の販売等に関し、複数の支店や販売会社からなる販売体制を敷き全国的な営業展開をしていたこと、請求人ら商品に関し、請求人らが本件商標の登録出願日(平成22年6月25日)前に行った宣伝広告は、必ずしも多いものとはいえないが、請求人ら商品は、建設工事や土木工事等の現場において使用される比較的規模の大きい機械器具であって、その取引者・需要者も建設・土木・荷役関連に従事する専門的知識を有する者といえるから、日常的に消費する商品や流行性が重要視されるファッション関連商品のように一般の消費者を対象に頻繁に宣伝広告するという性質のものではないこと、請求人ら商品は、「日本建設機械要覧」といった専門書に、「キャタピラー製」、「CATERPILLAR製」等の表示とともに、多数掲載されていたこと、また、「caterpillar」の語は、英語の辞書によれば、一義的には、「芋虫、毛虫、チョウやガの幼虫」を意味する英単語であるとしても、「米国Caterpillar社の通称、《商標》同社で開発した無限軌道式トラクター」を意味するとの記載もあり、我が国の建設・土木・荷役関連分野の取引者・需要者は、「CATERPILLAR」や「キャタピラー」の文字、あるいは、「キャタピラー」の音から、直ちに請求人や請求人ら商品を想起・連想するとみるのが相当であること、などを総合勘案すると、引用商標は、請求人ら商品を表示するものとして、本件商標の登録出願日前には、ブルドーザー、油圧ショベル等の建設・土木・荷役機械器具などの商品を取り扱う分野の取引者・需要者の間に広く認識されていたものと認めることができ、その著名性は、本件商標の登録査定日(平成23年7月8日)の時点においても継続していたものといえる。
2 本件商標の指定商品と請求人ら商品との関連性及びその需要者等について
(1)本件商標の指定商品は、前記第1のとおり、第7類「機械要素(陸上の乗物用のものを除く。)」であり、商標法施行規則別表によれば、当該区分に属する商品として、以下のとおり例示されており、これらの商品は、機械器具の部品としても取引されているものである。
(一) 軸 軸受 軸継ぎ手 ベアリング
(二) 動力伝導装置
遊車 滑車 カム 逆転機 減速機 水力だめ 増圧器 調車 動力伝導用ベルト 歯車 変速機 流体継ぎ手 流体トルクコンバーター リンク ローラーチェーン
(三) 緩衝器
空気ばね ばね緩衝器 ばね油圧緩衝器
(四) 制動装置
円すいブレーキ 円板ブレーキ 帯ブレーキ ブロックブレーキ
(五) ばね
うず巻きばね 重ね板ばね つる巻きばね
(六) バルブ
アングルバルブ 球バルブ コック 自動調整弁 ちょう形バルブ
(2)一方、請求人ら商品は、ブルドーザー、油圧ショベル等の建設・土木・荷役機械器具などであり、その中には、前記1(1)ウ(ア)のとおり、その部品について、「はめ込み式動力伝達機構」を採用し、例えば、「トランスファおよびベベルギア」についても「現場での交換や修理、各装置単独での試験と調整を可能にし、修理コストを低減」したものが存在する。
(3)そうすると、本件商標の指定商品と請求人ら商品とは、部品と完成品との関係にあるということができ、その取引者・需要者も共通する場合があるというべきである。
3 本件商標と引用商標との類否
(1)本件商標
本件商標は、前記第1のとおり、「UNLOADCATERPILLAR」の文字を標準文字で表してなるものであるところ、該文字は、同一の書体をもって、同一の大きさ、同一の間隔で表されているとしても、17文字よりなり、冗長な構成よりなるばかりでなく、これより生ずると認められる「アンロードキャタピラー」の称呼も10音と冗長にわたるものである。加えて、本件商標は、その構成中の「UNLOAD」の文字部分は、我が国において知られていない英単語であるのに対し、「CATERPILLAR」の文字部分は、前記1認定のとおり、請求人ら商品を表示するものとして、本件商標の登録出願日及び登録査定日の時点において、ブルドーザー、油圧ショベル等の建設・土木・荷役機械器具などを取り扱う分野の取引者・需要者の間に広く認識されていた引用商標1、4及び5とその構成文字を同一にするものである(引用商標4は、その語頭部分においてやや図案化されているが、全体として「CATERPILLAR」の文字を表したと優に理解され得る。)。
そうすると、本件商標に接する取引者・需要者は、請求人ら商品の取引者・需要者と共通にする場合があることからすると、その構成中の「CATERPILLAR」の文字部分に強く注意を引き付けられ、該文字部分より生ずる称呼、観念をもって商品の取引に当たる場合も少なくないとみるのが相当である。
してみれば、本件商標は、構成文字全体より生ずる称呼のほか、その構成中の「CATERPILLAR」の文字部分が、自他商品の識別標識として、取引者・需要者に強く支配的な印象を与えるものであるから、これより「キャタピラー」の称呼及び「芋虫、毛虫、チョウやガの幼虫」又は「請求人の通称」の観念を生ずるということができる。
(2)引用商標
引用商標1及び5は、「CATERPILLAR」の文字よりなるものであり、引用商標2は、「Caterpillar」の文字よりなるものであり、引用商標3は、「キャタピラー」の文字よりなるものであり、引用商標4は、別掲(1)のとおり、語頭の「CAT」の部分をやや図案化した「CATERPILLAR」の文字よりなるものであるから、引用商標は、その構成文字に相応して、いずれも「キャタピラー」の称呼を生ずるものであって、「芋虫、毛虫、チョウやガの幼虫」又は「請求人の通称」の観念を生ずるものである。
(3)以上によれば、本件商標は、引用商標とは、「キャタピラー」の称呼及び「芋虫、毛虫、チョウやガの幼虫」又は「請求人の通称」の観念を同じくするものであり、かつ、引用商標1、4及び5とはその外観においても相紛らわしい類似の商標といわなければならない。
4 出所の混同
以上を総合すると、請求人ら商品を表示するものとして、建設・土木・荷役機械器具などの商品を取り扱う分野の取引者・需要者の間に広く認識されている引用商標をその構成中に含む本件商標は、これをその指定商品について使用するときは、該商品が請求人ら又はこれらと営業上何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について誤認、混同を生ずるおそれがあるというべきである。
5 被請求人の主張について
(1)被請求人は、甲各号証は、建設、鉱山及び土木関係のものがほとんどであり、一般向けの広告等は極めて少ないから、我が国の一般人にとって、引用商標は馴染みのないものであると推測され、引用商標が「日本国周知・著名商標検索」によっても、周知・著名商標として掲載されていないことも合わせれば、引用商標は、我が国において周知・著名な商標であるとは思われない旨を主張する。
しかし、「商標法4条1項15号にいう『他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標』の解釈適用において、『他人』の商品又は役務の性質上、取引者、需要者が一定分野の関係者に限定されている場合であっても、そのような分野の取引者、需要者の間に広く認識されている限り、当該分野に属する商品又は役務について周知の商標が使用されたときは、商品又は役務相互の関連性や取引者、需要者の共通性などとあいまって、広義の混同を生ずるおそれのあることは否定し得ないのであり、その意味において、『他人』の商標が消費者一般に周知著名であることを要しないし、非類似の商品又は役務の間であっても、広義の混同を生ずるおそれが否定し得ない」(東京高裁 平成14年(行ケ)第285号)。そして、請求人ら商品は、一般の消費者をその需要者とするものではないから、引用商標が必ずしも一般の消費者の間に広く認識されていることを要しないといえるし、また、本件商標の指定商品とは、密接な関連性を有し、かつ、その取引者・需要者を共通にする場合があることは前記認定のとおりである。
また、被請求人は、「日本国周知・著名商標検索」に掲載されていないことをもって、引用商標が我が国において周知・著名でない旨を主張するが、前記認定のとおり、引用商標は、建設・土木・荷役機械器具などの商品を取り扱う分野の取引者・需要者の間に広く認識されている商標であり、その事実を認定するについて、「日本国周知・著名商標検索」に掲載されているか否かに左右されるものではない。
したがって、被請求人の主張は、いずれも理由がなく採用することができない。
(2)被請求人は、「CATERPILLAR」又は「キャタピラ」を含む登録商標を示し、これらは、引用商標が周知・著名であれば登録されなかったであろうと思われるが、現在までに、異議申立てや無効審判が請求されておらず、商標法第4条第1項第15号及び同第8号の規定に違反して登録されたものではないから、本件商標もこれらと同様に、上記規定に違反しているものとは思われない旨主張する。
しかしながら、被請求人の掲げる登録例は、本件とは商標の構成態様等が相違し事案を異にするものであるほか、商標の類否は、対比する商標について個別具体的に判断されるべきであるし、また、商品の出所の混同を生ずるおそれがあるか否かについては、商標の周知著名性の程度、商標・商品の類似性、使用状況、需要者層等の具体的な事情を総合的に考察して判断されるべきであるから、上記登録例をもって本件の判断が左右されるものでもない。
したがって、上記に関する被請求人の主張は採用することができない。
(3)被請求人は、本件商標の構成上の一体性を縷々述べるが、本件商標については、前記3(1)認定のとおり、その構成中の「CATERPILLAR」の文字部分が自他商品の識別標識として、その指定商品を取り扱う分野の取引者・需要者に、強く支配的な印象を与える部分であるから、上記に関する被請求人の主張は採用することができない。
(4)被請求人は、本件商標の登録前後の経緯を述べ、本件商標と引用商標とは、非類似の商標であり、本件商標をその指定商品について使用しても、引用商標を使用した商品との間に、商品の出所について混同を生ずるおそれはない旨主張する。
しかし、前記認定のとおり、引用商標の建設・土木・荷役機械器具などの商品分野における著名性、本件商標の構成態様、本件商標の指定商品と引用商標を使用した商品との関連性及びその取引者・需要者の共通性、取引者・需要者が認識する本件商標と引用商標との類似性等を総合して勘案すると、本件商標をその指定商品について使用するときは、引用商標を使用した商品との間に、商品の出所について混同を生ずるおそれがあるというべきである。
したがって、上記に関する被請求人の主張は採用することができない。
6 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第15号に違反してされたものと認められるから、その余の請求の理由について検討するまでもなく、同法第46条第1項第1項の規定により、無効とされるべきである。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲(1)(引用商標4)(色彩は原本参照)


別掲(2)(引用商標5)



審理終結日 2016-12-06 
結審通知日 2016-12-08 
審決日 2016-12-22 
出願番号 商願2010-50507(T2010-50507) 
審決分類 T 1 11・ 271- Z (X07)
最終処分 成立 
前審関与審査官 西田 芳子田中 敬規渡辺 悦子 
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官 小松 里美
酒井 福造
登録日 2011-08-12 
登録番号 商標登録第5432251号(T5432251) 
商標の称呼 アンロードキャタピラー、アンロード、キャタピラー 
代理人 達野 大輔 
代理人 中山 真理子 
代理人 竹中 陽輔 
代理人 藤沢 則昭 
代理人 藤沢 昭太郎 
代理人 栃木 順子 
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