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審決分類 審判 判定 その他 属さない(申立て成立) W3541
管理番号 1323766 
判定請求番号 判定2016-600039 
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標判定公報 
発行日 2017-02-24 
種別 判定 
判定請求日 2016-08-03 
確定日 2017-01-20 
事件の表示 上記当事者間の登録第5671044号商標の判定請求事件について、次のとおり判定する。 
結論 請求人が、役務「アプリケーションサービスプロバイダーによる電子計算機用プログラムの提供」について使用するイ号標章は、登録第5671044号商標の商標権の効力の範囲に属しない。
理由 第1 本件商標
本件登録第5671044号商標(以下「本件商標」という。)は、「LOCKON」の欧文字を横書きしてなり、平成25年5月16に登録出願、第35類「広告業,広告に関する助言及び指導,商品の販売促進に関する企画」及び第41類「セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供」を指定役務として、同26年5月16日に設定登録されたものである。

第2 イ号標章
請求人が、役務「アプリケーションサービスプロバイダーによる電子計算機用プログラムの提供」について使用するイ号標章は、別掲に示すとおりの構成からなるものである。

第3 請求人の主張(要旨)
請求人は、結論同旨の判定を求め、その理由を次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第38号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 判定請求の要旨
本件商標は、ややロゴ化された「LOCKON」の欧文字からなり、「ロックオン」の称呼が生じるものであり、一方、イ号標章は、デザイン化された赤色の「Lock on」の欧文字とその右下に小さく書された「ロックオン」の片仮名からなるものであり、いずれも「ロックオン」の同一の称呼が生じるものではあるが、イ号標章に係る使用役務である「アプリケーションサービスプロバイダーによる電子計算機用プログラムの提供」は、本件商標に係る指定役務「第35類 広告業」等とは、非類似の役務である。
2 判定請求の必要性
請求人は、商標登録第4839624号(指定役務「第42類 電子計算機用プログラムの提供、他」)の権利者であり(甲1及び甲2)、該商標登録に係る商標権(以下「請求人商標権」という。)の範囲内における正当な使用として、役務「アプリケーションサービスプロバイダーによる電子計算機用プログラムの提供」(以下「請求人使用役務」という場合がある。)について、デザイン化された赤色の「Lock on」の欧文字とその右下に小さく書された「ロックオン」の片仮名からなる標章(以下「イ号標章」という。)の使用をしていたところ、本件商標の権利者である被請求人から、2016年2月29日付書簡で、請求人による請求人使用役務についてのイ号商標の使用が、本件商標の商標権侵害であるとして、イ号標章の使用停止の要請を受けた。
その後、請求人は、請求人商標権の範囲内における正当な使用として、イ号標章の使用を継続していたところ、2016年5月31日付で、本件商標の商標権侵害を理由として、請求人による請求人使用役務についてのイ号商標の使用の差止を求める旨の訴訟が提起された。
そのため、請求人としては、前記商標登録の商標権の効力の範囲について、判定を求めた。
3 イ号標章の説明
請求人は、遅くとも2002年6月から、イ号標章を、アプリケーションサービスプロバイダーサービス(以下「ASPサービス」という場合がある。)に係る役務の商標として、「アプリケーションサービスプロバイダーによる電子計算機用プログラムの提供」(より具体的には、「インターネットを介してホームページの作成を支援するための電子計算機用プログラムの提供」)について使用しているものであり、遅くとも2002年6月には、同サービスが説明紹介されている請求人のインターネット上のホームページにイ号標章の使用を開始、現在、継続して使用している(甲3の1ないし3及び甲4)。
4 請求人使用役務についてのイ号標章の使用が本件商標登録に係る商標権の効力の範囲に属しないことについての説明
(1)商標の対比
本件商標は、ややロゴ化された「LOCKON」の欧文字からなり、「ロックオン」の称呼が生じるものである。一方、イ号標章は、デザイン化された赤色の「Lock on」の欧文字とその右下に小さく書された「ロックオン」の片仮名からなるものであり、いずれも「ロックオン」の同一の称呼が生じるため、称呼同一の類似商標であると判断され得る点は認める。
(2)役務の対比
イ号標章の使用役務である請求人使用役務は、前記第1に記載の本件商標の指定役務のいずれもとも非類似の役務であり、請求人が、請求人使用役務に使用するイ号標章は、本件商標の効力の範囲に属しないものである。
ア 特許庁における審査においては、商品・役務の類似判断に際して、類似推定の基準として類似群コードが採用され審査実務が運用されているところであるが、第42類「電子計算機用プログラムの提供」である、いわゆる、ASPサービスについては、いずれも、第42類の[42X11]の類似群コードが付されている(甲5ないし甲8)。
ASPサービスで提供される電子計算機用プログラムは、何らかの目的を達成するために使用されるものであることから、その目的に応じた種々の機能・用途を有するものであるが、それらの機能・用途に、例えば、広告等用の機能・用途が含まれるような場合に、第35類の「広告業」等に類似するかの点については、特許庁における、過去の登録採択例によれば、広告の機能・用途を有する電子計算機用プログラムの提供サービスは、いずれも第42類の[42X11]の類似群コードが付されているところであり、第35類の「広告業」に係る類似群コードである[35A01]や、その他の類似群コードが付されているわけではない(甲9ないし甲12)。
また、広告に関連する(広告キャンペーンの業績追跡等)用途・機能を有する電子計算機用プログラムの提供サービスについても、例えば、第35類の「広告効果の調査及び分析」に付される類似群コードである[35B01](甲13)ではなく、やはり、第42類の「電子計算機用プログラムの提供」に付される[42X11]の類似群コードが付されている(甲14ないし甲18)。
以上の登録採択例からも明らかであるが、ASPサービスで提供される電子計算機用プログラムの種々の機能・用途に、例えば、広告等用の機能・用途が含まれるような場合においても、それらのASPサービスは、第35類の「広告業」等に類似しないとの特許庁の判断がうかがえる。
請求人使用役務も、その提供する電子計算機用プログラムの機能・用途の一部に、当該役務利用者が自らの事業の宣伝広告を行なうことが出来る機能・用途も含まれるものではあるが、これも、請求人使用役務の利用者が、請求人によって提供される当該電子計算機用プログラムを利用することにより自動的に享受できる機能・用途であり、請求人が、別個独立した労務・便益として「広告」サービスを提供しているわけではなく、あくまでも提供される電子計算機用プログラムの1つの機能・用途にすぎない。
よって、上記特許庁の過去の登録採択例からも裏付けられているように、請求人使用役務は、第35類の「広告業」に類似するものではない。
イ 上記アについては、ASPサービスで提供される電子計算機用プログラムが、広告等以外の機能・用途を有する場合でも、同様にあてはまるものである(甲19ないし甲28)。
甲第19号証ないし甲第28号証で提供される電子計算機用プログラム等の機能・用途部分が、仮に単独で独立した役務として提供される場合は、それぞれ、甲第29号証ないし甲第38号証に示す区分・類似群コードの役務に該当するものであるが、甲第19号証ないし甲第28号証の役務にはそのような類似群コード(35B01、等)は付されておらず、全て第42類の「電子計算機用プログラムの提供」に係る[42X11]の類似群コードのみが付されている。
これらの例からも明らかなように、第42類の「電子計算機用プログラムの提供」に係る「電子計算機用プログラム」の用途・機能が何であれ、例えば「ホームページ作成用」のようにそれらの用途・機能を有する「電子計算機用プログラムの提供」と、それらの用途・機能自体を提供する「ホームページの作成」とは、異なる類似群に該当する非類似の役務であるとの特許庁の判断がうかがえる。
ウ ASPサービスで提供される電子計算機用プログラムは、何らかの用途・機能を有するものであるが、それらの用途・機能については、利用者がその電子計算機用プログラムを利用することにより、反射自動的に享受できるものであり、そのような用途・機能に係るサービスが別個独立した役務として当該ASPサービスを提供する業者によって提供されているわけではない。よって、ASPサービスで提供される電子計算機用プログラムが有する用途・機能に、たとえ「広告用」のものが含まれるものであったとしても、それらの用途・機能自体を提供するサービスである「広告業」と類似するものではない。
上述のように、ASPサービスで提供される電子計算機用プログラムには多種多様な用途・機能を有するものが含まれるが、ASPサービスを提供する者は、当該電子計算機用プログラムが有する用途・機能が何であれ、第42類「電子計算機用プログラムの提供」及び、備考類似商品である「第9類 電子計算機用プログラム」を指定商品・役務として商標登録をしていれば、少なくとも、当該登録商標の正当な権利範囲内の使用として、当該登録商標を使用し得るとの理解の下、事業を行なっているのが通常であり、この電子計算機用プログラムが有する用途、機能自体を指定役務とする他者の同一・類似の登録商標に係る商標権とも抵触するというのであれば、ASPサービス提供業者にとって、不測の不利益をもたらすものであることは想像に難くなく、商標登録制度に係る予測可能性及び法的安定性を損なうものであると思料する。
(3)結び
以上のとおり、仮に、イ号標章が本件商標と類似する標章であるとしても、その使用役務は、本件商標に係る指定役務と類似する役務ではなく、よって、請求人が役務「アプリケーションサービスプロバイダーによる電子計算機用プログラムの提供」に使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属しないものである。

第4 被請求人の答弁(要旨)
被請求人は、請求人が役務「インターネットによる広告」及び「ダイレクトメールによる広告」について使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属する、との判定を求め、その理由を次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第10号証を提出した。
1 請求人は、イ号標章を「アプリケーションサービスプロバイダーによる電子計算機用プログラムの提供」について使用しており、本件商標の指定役務のいずれとも非類似の役務であると主張している。
しかしながら、請求人は、請求人からサービスを受けている需要者がイ号標章を用いたサービスをどのようなものと把握しているかを省みることなく、イ号標章の使用範囲をことさらに「アプリケーションサービスプロバイダーによる電子計算機用プログラムの提供」に限定解釈することにより、該役務が、本件商標に係る指定役務とは非類似の関係にある、といった半ば自明な結論を導こうとしている。
請求人は、イ号標章を単に「アプリケーションサービスプロバイダーによる電子計算機用プログラムの提供」のみに使用しているだけでなく、少なくとも「インターネットによる広告」及び「ダイレクトメールによる広告」においても使用している。
これら役務が、本件商標に係る指定役務に類似することは明らかであるから、請求人が役務「インターネットによる広告」及び「ダイレクトメールによる広告」について使用するイ号標章は、本件商標の商標権の効力の範囲に属する。
2 反論の理由
(1)請求人がイ号標章を使用している役務
請求人がイ号標章を使用していると主張している、請求人のインターネット上のホームページには、「プッシュ通知」とやや大書きして、請求人が需要者に提供するサービスが備えている「プッシュ通知機能」が説明されている(甲3の2)。同機能は、情報通信業界の一般的通念及び上記ホームページの内容からすると、インターネットショッピングサイト運営者がその顧客に対して、インターネットを介して顧客のスマートフォンにメッセージを伝達するためのものである。そして、「プッシュ通知機能」について詳しく説明されたページ(甲3の3)には、プッシュ通知によって顧客に伝達する内容として、例えば、「今月のセールのお知らせ」「イベント情報の更新」「お得なお買い物クーポンもあります!」といったものが具体的に記載されている(乙1)。
商標法第1条及び商標審査基準(乙2)によれば、ある標章がどのようなサービスに対して使用されているかの判断は、当該サービスの需要者がどのように考えるかを基準として判断するべきである。
請求人がイ号標章を用いて提供しているサービスの需要者は、インターネットショッピングサイトを運営している者、あるいは、これからインターネットサイトの運営を始めようとする者がメインであり、インターネットショッピングサイトの運営に関わりなく単に興味本位で請求人からのサービスを受けようとする者は考えにくい。このため、請求人のホームページを訪れる需要者は、請求人から単なる「アプリケーションサービスプロバイダーによる電子計算機用プログラムの提供」のサービスを期待するのではなく、請求人が有するであろう「インターネットショッピングサイトの宣伝広告や運営等におけるノウハウ」が入った「インターネットショッピングサイトの構築ができるようになる」ことを期待するのである。
このような期待を持った需要者が、上述した「プッシュ通知機能」についての記載に触れたとき、この「プッシュ通知機能」がインターネットショッピングサイトの宣伝広告に用いられるものであり、同機能は、請求人が提供している、インターネットショッピングサイトの運営者が広告を行うための電子的メッセージを配信するサービスであると直ちに感得する。
すなわち、請求人のホームページを見た需要者は、イ号標章を用いた請求人のサービスを受けることにより、「インターネットによる広告」及び「ダイレクトメールによる広告」が可能になり、イ号標章を用いた請求人のサービスには、上記役務が含まれていると理解するといえる。
したがって、請求人がイ号標章を使用して需要者に提供するサービスには、少なくとも「インターネットによる広告」及び「ダイレクトメールによる広告」といった役務が含まれている。
(2)過去の登録商標における指定役務に対して特許庁が付した類似群コードについて
判定請求書において、請求人は、過去の登録商標における指定役務に対して特許庁がどのような類似群コードを付与しているかについて、多数の例を挙げて説明している。
特許庁は、商標法第6条第1項における「商標登録出願は、商標の使用をする一又は二以上の商品又は役務を指定して、・・・」の規定に基づいて、商標登録出願人が自己の責任において指定した商品や役務の記載に対し、一定の基準で類似群コードを付与している。
一定の基準とは、「複数の商品や役務が含まれる態様で商品や役務が指定された場合、最後に記載された商品や役務に対応する類似群コードを付与する」というものである。これは、日本語の構造が重要な語を最後に配置するようになっているからであると考えられる。
例えば、指定商品「ラジオ付き時計」には、「ラジオ」(第9類、類似群コード「11B01」)、及び「時計」(第14類、類似群コード「23A01」)が含まれているところ、この「ラジオ付き時計」に対して、特許庁は、最後に記載された商品「時計」に準じて、第14類、類似群コード「23A01」を付与している(乙3)。
逆に、指定商品「時計付きラジオ」に対して、特許庁は、最後に記載された商品「ラジオ」に準じて、第9類、類似群コード「11B01」を付与している(乙4)。
さらに、指定役務「時計付きラジオの修理」に対して、特許庁は、最後に記載された役務「修理」(=ラジオ受信機の修理)に準じて、第37類、類似群コード「37D09」を付与している(乙5)。
上述した請求人による説明で指摘すべきは、請求人が挙げている例がすべて「広告等の機能・用途を有する電子計算機用プログラムの提供」の例、つまり、指定役務の記載が「○○用の電子計算機用プログラムの提供」又はこれと同趣旨の例のみという点である。
「○○用の電子計算機用プログラムの提供」と記載された指定役務であれば、そのような指定役務に対して特許庁は、「電子計算機用プログラムの提供」に準じて、第42類、類似群コード「42X11」を付与する。
なぜならば、商標登録願に記載された指定役務は、出願人が自己の責任において記載したものであり、当該出願人が提供する真の役務(=需要者自身が価値を感じて金銭を支払おうとする役務)が、例えば、「広告用コンピュータプログラムの提供」なのか、それとも、「コンピュータを用いた広告」なのかを判断する責任は特許庁側にないからである。
請求人が判定請求書において説明した過去の登録商標の指定役務の例は、「電子計算機用プログラムの提供」に準じて第42類、類似群コード「42X11」が当然に付与されるべき例のみであり、請求人がイ号標章を使用して需要者に提供している真の役務が「アプリケーションサービスプロバイダーによる電子計算機用プログラムの提供」のみといえるかどうかが本筋である本件判定を行うにあたって特段の意味はない。
(3)第42類「電子計算機用プログラムの提供」を指定役務として商標登録すれば、プログラムが有する用途・機能自体を提供するサービスにまで商標権が及ぶかについて
判定請求書において、請求人は、第42類「アプリケーションサービスプロバイダーによる電子計算機用プログラムの提供」を指定役務として商標登録すれば、プログラムが有する用途・機能自体を提供するサービスにまで商標権が及ぶ旨を主張している。
しかしながら、旧来は紙や電磁的メディアを介して提供されていた様々な役務が、今日、インターネットを介して提供されるようになっており、様々なサービスがインターネット化されている今日において、仮に、請求人が主張するように「ASPサービスで提供される電子計算機用プログラムには多種多様な用途・機能を有するものが含まれるが、ASPサービスを提供する者は、当該電子計算機用プログラムが有する用途・機能が何であれ、『第42類 電子計算機用プログラム』及び、備考類似商品である『第9類 電子計算機用プログラム』を指定商品及び指定役務として商標登録をしていれば、少なくとも、当該登録商標の正当な権利範囲内の使用として、当該登録商標を使用し得る。」とした場合、あらゆるサービスが、第42類「アプリケーションサービスプロバイダーによる電子計算機用プログラム」に該当することになってしまう。
換言すれば、ある標章を、第42類「アプリケーションサービスプロバイダーによる電子計算機用プログラム」で商標登録しておけば、インターネットを介したあらゆるサービスの使用が一時的であっても一の権利者によって独占できるといった、およそ役務の区分制度の理念に反する結果を招くことになる。
請求人は、さらに、「提供している電子計算機用プログラムが有する用途・機能自体を提供するサービスを指定役務とする他社の同一・類似の登録商標に係る商標権とも抵触するというのであれば、ASPサービス提供業者にとって、不測の不利益をもたらすものであることは想像に難くなく、商標登録制度に係る予測可能性及び法的安定性を損なうものである」と主張する。
しかし、自身が需要者に提供している真のサービスを把握し、その内容に応じて指定役務を記載するのは出願人の責任であり、サービスの一側面のみを単純に捉えて、広く解釈できそうな「電子計算機用プログラムの提供」で商標登録を受け、用途・機能自体の提供が真のサービスであるような場合であっても、当該真のサービスに電子計算機用プログラムが使用されているというだけで当該商標登録に係る商標権が及ぶとする解釈の方が商標登録制度に係る予測可能性及び法的安定性を損なうおそれがある。
(4)まとめ
上述のとおり、請求人がイ号標章を用いて需要者に提供する真のサービスには、「インターネットによる広告」及び「ダイレクトメールによる広告」といった役務が含まれており、これらは共に第35類、類似群コード「35A01」が付与されている役務であることから(乙6及び乙7)、同じ類似群コード「35A01」が付与されている「広告業,広告に関する助言及び指導,商品の販売促進に関する企画」(乙8ないし乙10)に類似する役務である。
したがって、イ号標章が本件商標と類似する標章であるとき、請求人によるイ号標章の使用は、本件商標に係る商標権の効力の範囲に属するものである。

第5 当審の判断
1 本件商標とイ号標章の類似性について
本件商標は、「LOCKON」の欧文字を横書きしてなるものであるところ、その構成文字に相応し、「ロックオン」の称呼を生じ、「(ミサイルなどが攻撃目標)をレーダーで自動的に探知・追跡する」(グランドセンチュリー英和辞典第2版(株式会社三省堂))の意味を有する平易な英語であるから、「レーダーで自動的に探知・追跡する」の観念を生じるものである。
他方、イ号標章は、別掲に示したとおり、デザイン化された赤字の「Lockon」の欧文字の下部に小さく「ロックオン」の片仮名を配した構成からなるものであるから、その構成全体から「ロックオン」の称呼を生じ、上記と同様に「レーダーで自動的に探知・追跡する」の観念を生じるものである。
そこで、本件商標とイ号標章の類否について検討してみれば、両者はその外観においては,異なるものであるとしても、「ロックオン」の称呼及び「レーダーで自動的に探知・追跡する」の観念を同じくする類似の商標というべきものである。
2 本件商標の指定役務とイ号標章の使用役務の類似性について
(1)本件商標の指定役務について
本件商標の指定役務は、前記第1に記載のとおり、第35類「広告業,広告に関する助言及び指導,商品の販売促進に関する企画」及び第41類「セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供」である。
(2)イ号標章の使用役務について
請求人が提出した証拠によれば、イ号標章を使用している役務は以下のとおりである。
ア 甲第3号証の1は、「製品・サービス|ビジネスラリアート株式会社|システム開発・スマホ/モバイル開発」の表題の請求人のホームページであるところ、その1頁には「製品・サービス」の見出しの下、「ロックオン」の項には、「スマートフォン対応のケータイサイト作成ASP。SEOにも効果的。華やかなケータイサイトが専門知識なしで簡単に作成できる!」の記載があり、その右側には、イ号標章が表示されている。
イ 甲第3号証の2は、「スマートフォン対応のケータイサイトを簡単に作るならLockon|ビジネスラリアート株式会社」の表題の請求人のホームページであるところ、その1頁には「Lockonとは」の見出しの下、「スマートフォンアプリ(iOS・Android)が標準対応!/スマホ&ガラケーのサイト制作・編集システム。」、「華やかなサイトが専門知識なしで作成でき、専用管理画面&エディタで更新も簡単です。また、スマートフォンアプリが標準対応。クーポン機能やアプリ特有のプッシュ通知など、アプリだからできる様々な機能も満載。プッシュ通知を使えば、ユーザーのスマートフォンに、確実&簡単にクーポンやお知らせを通知できます。」の記載があり、該頁の左上部、上部写真の右下部及び携帯電話機の写真の画面上には、イ号標章が表示されている。
また、2頁には、「プッシュ通知」の見出しの下、「管理画面からボタン一つで簡単に、iOS・Androidのスマートフォンにプッシュ通知ができます。」、「プッシュ通知を送信するには、管理画面の『アプリ通知』から、プッシュ通知で発信したい情報を登録し、ボタン一つで送信することができます。ユーザーのスマートフォンにリアルタイムに通知することができるため、タイムセールス等の告知にも有効的です。」の記載がある。
さらに、その下部には、「Lockonの主な機能/多彩な機能を標準装備。」の見出しがあり、2頁の下部から3頁おいて、「専用アプリ」、「専用管理画面」等の項目と並び「プッシュ通知」の項目があり、その説明として「プッシュ通知を送信するには、管理画面のお知らせ機能から、お知らせしたい情報を登録し、ボタン一つで送信することができます。」の記載がある。
そして、4頁には、「プラン別サービスご利用料金」の見出しの下、「アプリプラン」、「スタンダードエディション」、「PCセットプラン」及び「ビジネスエディション」の記載があり、それぞれのプランについて、「初期費用」として「9,800円」、「7,800円」、「15,000円」及び「150,000円」並びに「月額費用」として「9,800円?/月」、「5,500円?/月」、15,000円/月」及び「50,000円?/月」の表示がある。
ウ 甲第3号証の3は、「機能一覧|スマートフォン対応のケータイサイトを簡単に作るならLockon|ビジネスラリアート株式会社」の表題の請求人のホームページであるところ、1葉目には、「機能一覧」の見出しの下、「Lockonの特長的な機能」として、「Lockonアプリ」、「SEO対策」、「クイック切り替え」、「ページ作成」等の17種類の機能が簡略な説明と共に表示されている。
そして、3葉目から22葉目において、各機能の説明が記載されており、3葉目には「Lockonアプリ」の説明として、「アプリのプッシュ通知で簡単情報発信!」の見出しの下、「アプリと連動することで、ユーザーがリアルタイムに最新のニュース(更新情報)を知る手だて(アイキャッチ効果)が増え、アクセス数の増加が見込めます。また、メルマガを配信してもユーザーがメールアドレスを変更等をして届かない場合もありますが、アプリをダウンロードしていただければアプリダウンロードユーザーに更新情報を届けることが出来ます。」の記載があり、アプリに通知される例として、携帯電話機の表示とともに、「今月のセールのお知らせ!」及び「イベントの情報を更新しました!」の文字が吹き出しに表示されている。
また、1葉目及び各機能説明の頁の左上部には、イ号標章が表示されている。
エ 上記アないしウの内容、例えば「スマートフォン対応のケータイサイト作成ASP」、「華やかなサイトが専門知識なしで作成でき、専用管理画面&エディタで更新も簡単です。」等の記載によれば、請求人がイ号標章を使用しているのは、携帯電話機用に使用するアプリケーションサービスプロバイダーによって提供される電子計算機用プログラムと認められるものであり、上記イに、その利用料金が月額である旨の記載があることから、請求人は、該プログラムの提供を行っているというのが相当である。
したがって、請求人がイ号標章を使用している役務は、「アプリケーションサービスプロバイダーによる電子計算機用プログラムの提供」であると認められる。
(3)本件商標の指定役務とイ号標章の使用役務の類否
本件商標の指定役務は、前記(1)の記載のとおり、第35類「広告業,広告に関する助言及び指導,商品の販売促進に関する企画」及び第41類「セミナーの企画・運営又は開催,電子出版物の提供」であるところ、イ号標章の使用に係る役務は、「アプリケーションサービスプロバイダーによる電子計算機用プログラムの提供」であるから、取引者、需要者の範囲が異なり、さらに、業種、業務や事業者を規制する法令及び同一の事業者が提供する役務であるか否か等を総合的に考慮しても、類似するものということはできないものである。
3 イ号標章が本件商標の商標権の範囲に属するかについて
前記1のとおり、本件商標とイ号標章とは類似する商標というべきものである。
しかしながら、イ号標章の使用に係る役務と本件商標の指定役務とは、上記2(3)に記載のとおり、類似しない役務であるから、イ号標章と本件商標とが、類似する商標であるとしても、イ号標章の使用に係る役務と本件商標の指定役務とが、同一又は類似するものではないから、イ号標章が本件商標の商標権の効力の範囲に属するものということはできない。
4 被請求人の主張について
(1)被請求人は、請求人のホームページを訪れる需要者が、「プッシュ通知機能」についての記載に触れたとき、この「プッシュ通知機能」がインターネットショッピングサイトの宣伝広告に用いられるものであり、同機能は、請求人が提供している、インターネットショッピングサイトの運営者が広告を行うための電子的メッセージを配信するサービスであると直ちに感得することから、請求人は、イ号標章を「インターネットによる広告」及び「ダイレクトメールによる広告」に使用している旨主張している。
しかしながら、被請求人の主張する「プッシュ通知機能」とは、イ号標章の使用に係る「アプリケーションサービスプロバイダーによる電子計算機用プログラムの提供」において提供される電子計算機用プログラムの機能及び用途の一つにすぎないものであるから、請求人自身が「プッシュ通知機能」を用いて、他人のために「インターネットによる広告」又は「ダイレクトメールによる広告」を独立した商取引の対象として行っているものということはできないものであり、かつ、被請求人も上記主張に係る証拠を提出していない。
したがって、被請求人の上記主張は採用することができない。
(2)被請求人は、「様々なサービスがインターネット化されている今日において、ASPサービスで提供される電子計算機用プログラムには多種多様な用途、機能を有するものが含まれるが、ASPサービスを提供する者は、当該電子計算機用プログラムが有する用途、機能が何であれ、『第42類 電子計算機用プログラム』及び備考類似商品である『第9類 電子計算機用プログラム』を指定商品及び指定役務として商標登録をしていれば、少なくとも、当該登録商標の正当な権利範囲内の使用として、当該登録商標を使用しうる。」とした場合、あらゆるサービスが「第42類 アプリケーションサービスプロバイダーによる電子計算機用プログラム」に該当することになってしまう旨主張している。
しかしながら、第42類の「電子計算機用プログラムの提供」とは、役務の提供者が、役務の需要者に対して「特定の効果、機能等を実行するための電子計算機用プログラムを利用させるサービス」であって、当該特定の効果、機能を実行する者は、当該電子計算機用プログラムを利用する者、すなわち、役務の需要者である。
これを本件に当てはめて考えてみれば、請求人が提供している「電子計算機用プログラム」が、広告等に関係する機能を有しているとしても、これを利用して「広告」等の役務を実行するのは、「電子計算機用プログラムの提供」の役務ではない。
してみれば、たとえ、請求人が提供する「電子計算機用プログラム」に,宣伝広告に用いられる「プッシュ通知機能」があるとしても、請求人がイ号標章を使用している役務は、「アプリケーションサービスプロバイダーによる電子計算機用プログラムの提供」であって、請求人自身が、他人のために「広告」の役務を提供しているものとはいえない。
したがって、被請求人の上記主張は採用することができない。
5 むすび
以上のとおりであるから、請求人が役務「アプリケーションサービスプロバイダーによる電子計算機用プログラムの提供」に使用するイ号標章は、本件商標権の効力の範囲に属しないものである。
よって、結論のとおり判定する
別掲 別掲(イ号標章)(色彩については、甲第3号証を参照)


判定日 2017-01-12 
出願番号 商願2013-86357(T2013-86357) 
審決分類 T 1 2・ 9- ZA (W3541)
最終処分 成立 
前審関与審査官 矢澤 一幸 
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 中束 としえ
榎本 政実
登録日 2014-05-16 
登録番号 商標登録第5671044号(T5671044) 
商標の称呼 ロックオン、ロッコン 
代理人 柳野 隆生 
代理人 大西 裕人 
代理人 松井 亮行 
代理人 木村 圭二郎 
代理人 多田 裕司 
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