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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W3545
管理番号 1323749 
異議申立番号 異議2015-900098 
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2017-02-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-03-26 
確定日 2016-12-22 
異議申立件数
事件の表示 登録第5727379号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5727379号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第5727379号商標(以下「本件商標」という。)は,「縁の会」の文字を標準文字で書してなり,平成26年2月12日に登録出願,第35類「墓地・納骨堂及び墓の販売に関する事務の代理又は代行,葬祭具の販売に関する事務の代理又は代行」及び第45類「葬儀の執行,永代供養の執行及びこれの媒介又は取次ぎ,墓地又は納骨堂の提供,墓地又は納骨堂の提供の斡旋・媒介又は取次ぎ,墓地又は納骨堂の管理,祭壇の貸与,葬儀用具の貸与」を指定役務として,平成26年12月19日に設定登録されたものである。

第2 登録異議申立ての理由(要旨)
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は,登録異議の申立ての理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第116号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第10号について
「縁の会」(以下「使用標章」という。)は,申立人が永代供養墓の提供及び会員の葬儀の執行の役務について長年継続して使用している商標である(甲3?甲6)。本件商標と使用標章を比較すると,両者は外観,称呼及び観念のいずれについても相紛れるものであって,本件商標と使用標章は類似するものである。申立人が発行する「縁の会」のパンフレット等によると,申立人は,平成8年に「縁の会」を発足し,以降,使用標章を使用して永代供養墓の提供及び会員の葬儀の執行の役務を行っている(甲3?甲6)。
昨今の核家族化・少子化・シングル化の進行やライフスタイルの多様化によって,「先祖代々の墓を守り,いずれは自身も同じ墓に入らなければならない」という従来の「家族墓制度」が必ずしも人々のニーズに沿うものではなくなってきており,そのような時代背景もあって,墓参がしやすい都心の永代供養墓を手頃な価格で提供するという申立人の事業は大変な人気を博し,新聞や雑誌など数多くのメディアで取り上げられ紹介されている(甲7?甲59)。
さらに,平成18年12月12日にNHKにて放送された「生活ほっとモーニング『自分らしいお墓を』」を初めとする複数のテレビ番組においても取り上げられ,紹介されている(甲60?甲64)。
また,日本国内で発行されている数多くの新聞に数年にわたって広告を掲載している(甲65?甲106)。
加えて,申立人の事業は日本国内のみならず海外でも知られており,アメリカで発行されている新聞であるロサンゼルスタイムズでも紹介されている(甲107)。
なお,添付した新聞・雑誌は本件出願時である平成26(2014)年2月12日以前に発行されたものであり,申立人が紹介されたテレビ番組も本件出願前に放送されたものである。
このように,申立人の使用標章は永代供養墓として,本件出願の前から査定時に至るまで広く需要者の間に認識されていることは明らかである。そして,本件商標は第45類「葬儀の執行,永代供養の執行及びこれの媒介又は取次ぎ,墓地又は納骨堂の提供,墓地又は納骨堂の管理」を指定役務としている。
そのため「葬儀の執行,永代供養の執行及びこれの媒介又は取次ぎ,墓地又は納骨堂の提供,墓地又は納骨堂の管理」については,本件商標は,他人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標と類似する商標であって,その役務について使用するものに該当するので,商標法第4条第1項第10号の規定に該当し商標登録を受けることができないものである。
2 商標法第4条第1項第15号について
申立人による使用標章は永代供養墓として,本件出願前から査定時に至るまで広く需要者の間に認識されている。一方,商標権者は申立人とは全く別の法人であり,本件商標について申立人は商標権者に対して出願の承諾を与えてはいない。
したがって,本件商標が,「葬儀の執行,永代供養の執行及びこれの媒介又は取次ぎ,墓地又は納骨堂の提供,墓地又は納骨堂の管理」以外の指定役務について使用された場合,需要者は,申立人の業務に係る役務と出所の混同を生じさせるおそれがあることは明らかであり,そのため「葬儀の執行,永代供養の執行及びこれの媒介又は取次ぎ,墓地又は納骨堂の提供,墓地又は納骨堂の管理」以外の指定役務については,本件商標は他人の業務に係る役務と混同を生ずるおそれがある商標に該当するので,商標法第4条第1項第15号の規定に該当し商標登録を受けることができないものである。
3 商標法第4条第1項第19号について
申立人は,日本国内において周知性を獲得してはいるが,本願出願時には日本国内において使用標章の商標登録出願をしていなかった。ここで申立人と商標権者との関係について述べる。
平成8年に,申立人の開創400年記念事業として,申立人と商標権者は生前個人墓の販売等に関する事業を「縁の会」と名付けて開始した(甲108)。
申立人と商標権者は,当初,契約書上,この事業を「共同事業」と呼称していたが,その実質は申立人の業務を商標権者に委託する趣旨のものであり(甲108),その証左として,当該事業を開始するにあたり,そのほぼ全ての出資は申立人の負担によるもので,広告費の実質的な負担者も申立人であった。
そのため,当該事業の運営において商標権者の名称が入会希望者及び入会者への印刷物・告知物及び一般広告物について表示されたことはない。したがって,需要者は,本事業に商標権者が関与していることを知ることはできず,このことは,本事業に関する新聞広告やテレビ番組にも商標権者の名称が一切表示されていないことからも明らかである(甲3?甲107)。
また,当該事業の性質上,需要者は申立人であり宗教法人である「東長寺」による供養を受けられることを期待して当該事業に関する個人墓を購入するものであって,役務の提供者が「東長寺」であることが,需要者が選択する上での重要な要素になることは間違いない。
そして,平成18年11月1日,これまでの募集で会員用に用意していた納骨堂が定員となったことを機に新たに作成された契約書の上でも,申立人が商標権者に業務を委託する関係であることが明確にされた(甲109)。
しかし,平成24年には,商標権者が法人税法違反の強制捜査を受け,その説明も不十分であったことから両者の関係は悪化した。それにも関わらず商標権者は,平成25年には何ら申立人の了承を得ることなく,当該事業にて取得した個人情報を用いて,他宗派寺院の納骨堂販売の目的で,「縁の会」及び「東長寺」の名称の入ったダイレクトメール(甲110,甲111)を,当該他宗派寺院の納骨堂事業の不振を解消する意図で発送するに至り,さらに本件商標を出願するという背信行為を行ったため,両者の関係はもはや回復不可能な状況となり,平成26年12月末日をもって,両者の業務委託契約は終了した(甲112?甲115)。
また,商標権者は,契約終了の合意をしながらも当該事業の需要者からの問い合わせデータの所有権を主張するなど不誠実な対応を続け,契約書の規定どおり業務委託関係が終了した後の現在に至っても,その対応に変化はない(甲113,甲114)。このように,商標権者は,日本国内において周知性を獲得している使用標章が我が国において商標登録されていないことを奇貨として,著名表示へのただ乗りだけでなく,顧客吸引力のある使用標章及びこれに類似する商標を第三者の寺院による会員制個人墓事業に使用する不正の目的を持って出願したと考える。
そのため,本件商標は他人の業務に係る役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と類似の商標であって,不正の目的をもって使用をするものに該当するので,商標法第4条第1項第19号の規定に該当し商標登録を受けることができないものである。
4 商標法第4条第1項第7号について
申立人は,「縁の会」の標準文字により構成される商標について第45類「葬儀の執行,永代供養の執行及びこれの媒介又は取次ぎ,墓地又は納骨堂の提供,墓地又は納骨堂の提供の斡旋・媒介又は取次ぎ,墓地又は納骨堂の管理,祭壇の貸与,葬儀用具の貸与」を指定役務として,平成26(2014)年4月4日付で出願をしているが,商標権者は,そのわずか約2ヶ月前である平成26(2014)年2月12日付で本件商標を出願している(甲116)。
上述のとおり,本件商標について出願された平成26(2014)年2月時点では,商標権者の法人税法違反にかかる摘発に際しての不誠実な対応や個人情報の不正使用という背信行為により,申立人と商標権者の関係は悪化していたものの,業務委託関係は続いていたので,商標権者には,申立人が使用標章の商標登録出願を検討していることを察知することが容易であったといえる。仮に商標権者が,日本国内において周知性を獲得している使用標章が日本において商標登録を受けていないことにより当該事業に悪影響を及ぼすことを危惧して,当該事業を守るために本件商標の出願をしたとすると,申立人に対して出願を促すか,少なくとも申立人と共同で出願するか,又は当該事業の主体である申立人の了承を得た上で出願するはずである。しかしながら,商標権者は申立人に無断で本件商標を出願している。
よって,商標権者は,善管注意義務を負いつつ申立人のために業務を行うべき受託者の立場(民法第656条,民法第644条)にありながら,「縁の会」が申立人の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標であることを知りつつ,それが出願されていないことを奇貨として,類似の商標を剽窃的に先取りするために出願したものである。
そのため,本件商標は公序良俗を害するおそれがあり,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれかある商標に該当するので,商標法第4条第1項第7号の規定に該当し商標登録を受けることができないものである。
5 むすび
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号,同第10号,同第15号及び同第19号に該当し商標登録を受けることができないものであるから,同法第43条の2第1号の規定により取り消されるべきものである。

第3 本件商標の取消理由
当審において,平成28年2月2日付けで商標権者に対し通知した取消理由通知書の取消理由(要旨)は,次のとおりである。なお,取消理由通知書に記載の「引用商標」は,「使用標章」と表示した。
1 使用標章の周知性について
申立人の提出に係る証拠(各項の括弧内に掲記)によれば,以下の事実を認めることができる。
(1)申立人について
申立人は,東京都新宿区四谷に所在する,曹洞宗の寺院である宗教法人東長寺であり,平成8年に,申立人の開創400年記念行事として,会員一人ひとりに永代供養を約束する「緑の会」(以下「使用標章」という場合がある。)を発足。生前個人墓の販売等に関する事業を開始した。
当該事業は,上記のとおり,生前個人墓の販売等に関する事業であって,生前個人墓の販売に基づき,これを購入した個人が入会する組織の名称を「緑の会」といい,入会した会員を対象に,主として,戒名が与えられ,会員の死後における葬儀(生前予約),納骨法要,永代供養,納骨堂等の維持・管理などが行われるものである(甲3?甲6)。
(2)新聞記事情報等について
ア 1996年(平成8年)5月28日付け読売新聞には,「維持費高い『都会の寺』生き残りかけ知恵」の見出しの下,「お寺の地下にギャラリーを造るなどユニークな文化活動で知られる東京都新宿区四谷四の曹洞宗『東長寺』が,檀家ならぬ『会員』を募集して,境内に『お墓』を提供することになった。・・会員は7月1日から募集する予定で,現在,詳細を検討しているが,会員の会となる『縁の会』事務局では,『会員は若い人にも負担にならない程度の価格にして,可能な限り多くの人に参加してもらいたい』としている。」の記載がある(甲7)。
イ 1996年(平成8年)9月17日付け朝日新聞には,「『家の墓』より共同納骨で『自分の墓』求め」の見出しの下,「周囲をマンションに囲まれた都心の新宿区四谷にある曹洞宗の東長寺は,今年7月,共同形式の永代供養墓『縁の碑(いしぶみ)』を始めた。・・・墓を60万円で購入すると,『縁の会』に登録され戒名をもらう。会員は毎月1日に寺が主催する文化講座や法要に参加できる。生前から寺や会員同士と付き合いをしてもらおうという狙いだ。」の記載がある。(甲12)
ウ 1997年(平成9年)3月10日号の週刊朝日増刊 「‘97老後の設計」において,「60万円で買える会員制生前墓」の見出しの下,「東京・四谷にある東長寺(滝沢和夫住職)には,数十人の中高年が集まっていた。・・・そうした互いのニーズによって生まれたのが『縁の会』なのだ。1式60万円の費用を払って会員になると,さまざまな特典が受けられる。・・・お骨は本堂地下の『開山堂』にある納骨堂に納められる。60万円の中には戒名代,納骨式費用,永代供養費も含まれる。」の記載がある(甲34)。
エ 1997年(平成9年)7月16日付け読売新聞には,「血縁なくても墓参会員制の永代供養」の見出しの下,「新宿区四谷の曹洞宗『東長寺』。夜8寺過ぎ,その池で毎月1日に開かれる『万燈供養』が始まった。・・・たとえ,家族がいなくても,残された会員たちが毎月1日の夜,こうして供養を続けてくれる。見知らぬ者同士が,血縁を越えて結ばれることを願い,寺では会の名前を『縁の会』と名付けたという。」の記載がある(甲15)。
オ 1998年(平成10年)3月15日号の「フォト」には,「自分らしく永眠るための最期の選択」の見出しの下,「東長寺『縁の会』事務局(東京・新宿)の小山城史さんは『「家制度」の崩壊による価値観の変化』と分析する。縁の会では,過去の宗派や国籍を問わず本人の意思さえあれば誰でも入会でき,生前に戒名や個人墓地をもつことができる。」の記載や,「私のお墓は誰が守る?」の項に,「東京都新宿区の東長寺では,そのような人々のために,『縁の会』と名付けられた会員制の個人墓地を提供。」の記載がある(甲45)。
カ 1998年(平成10年)3月26日付け日本経済新聞朝刊には,「女たちの静かな革命」の見出しの下,「96年7月,東長寺は『縁の会』という生前個人墓のシステムをつくった。毎月1日には会員が人工池の墓苑に集い,その月に亡くなった会員のめい福を祈る。」の記載がある(甲16)。
キ 2001年(平成13年)3月17日付け毎日新聞朝刊には,「[当世『あの世』指南・お彼岸新事情]/4 無縁の縁--賛同女性たちが共同墓」の見出しの下,「東京都新宿区にある曹洞宗東長寺。96年7月に生前個人墓の募集を始め,現在,3875人が登録している。・・・檀家(だんか)ではなく,『縁の会』を作り,寺は『地縁,血縁を超えて新しい縁を結び,互いの冥福を祈ろう』と文化講座やイベントを開いている。」の記載がある(甲26)。
ク 2004年(平成16年)10月1日付け 東京新聞朝刊には,「Trend Focus/トレンド/ビジネス編/増加する永代供養墓/自ら選ぶ 安らぎの形」の見出しの下,「新宿区四谷四丁目の東長寺(曹洞宗)は成功例の一つ。本堂建て替えをきっかけに,1996年に募集を始め,契約者の会員組織『縁の会』もつくった。契約料は八十万円。年四回の会報を送り,座禅や写経といった行事をするなど,寺と会員,会員同士のつながりを深めている。・・・『縁の会』事務局の小山城史さんは『売ったら終わりではなく,生前のケアこそ必要』と話している。」の記載がある(甲31)。
ケ 2008年(平成20年)1月12日号の週間ダイヤモンドには,「永代供養墓」の見出しの下,「費用はかなり安め 永代供養墓の一例」の項に,「縁(えん)の会 東長寺(東京都新宿区)」の記載がある(甲58)。
その他,申立人の事業について,「縁の会」の文字とともに紹介した全国紙や雑誌等の記事は,平成8年頃から平成20年にかけて多数に上る(甲8?甲59)。
(3)新聞等の広告について
ア 1997年(平成9年)2月12日付け朝日新聞には,「がんばった人生に自分ひとりの生前墓がちょうどよい。」の見出しの下,「東京四谷 曹洞宗東長寺。縁の会では新しいお墓を提案します。」の項において,「永代供養他一式60万円[墓碑・戒名・納骨式・納骨堂使用・御位牌・法要・永代供養・管理費一式]」の広告の記載がある(甲93)。
イ 1997年(平成9年)3月1日発行の「文藝春秋 三月特別号」には,「都心の寺が提案する『生前個人墓』会員制度」の見出しの下,「曹洞宗・東長寺では,近年の核家族化やライフスタイルの多様化に合わせ,個人の意志を尊重して生前に墓を設ける画期的な会員制度『縁の会』を設立しました。『縁の会』会員になると,戒名とともに,各人の名前を刻んで記念品などを納める小さな墓石『縁の碑』,そして死後にお骨を納める『納骨壇』,このふたつがセットで『生前個人墓』として用意されます。」の広告の記載がある(甲67)。
ウ 2000年(平成12年)7月12日付け読売新聞夕刊には,「永代供養墓・生前個人墓」の見出しの下,「縁の会 会員の声から 『家』のお墓。『私』のお墓。自分らしく選べる時代なんですね。」の項において,「東京・四谷,曹洞宗 東長寺縁の会が提案する生前個人墓『水の苑』は,お一人おひとりに永代供養をお約束するあなた自身のお墓」の記載,及び「永代供養他一式80万円[墓碑・戒名・納骨式・納骨堂使用・御位牌・永代供養・管理費]」の広告の記載がある(甲102)。
エ 2001年8月号の「よみがえる」には,「”終の住み処”は自分で選ぶ 家制度に縛られない生前個人墓 東長寺『縁の会』」の見出しの下,「この寺が平成8年,境内にととのえた生前個人墓『水の苑』は,会員組織『縁の会』会員のための墓苑である。」の記載及び,「東長寺『縁の会』とは」の項において,「永代供養他一式80万円 葬儀・戒名・御位牌・納骨式・納骨堂使用・管理費含む」の広告の記載がある(甲79)。
オ 2004年(平成14年)7月28日付けサンケイスポーツ日曜特別版には,「自分のお墓は自分で決める。個人のための生前墓 東長寺 縁の会」の見出しの下,「新宿区四谷の東長寺は,400年の歴史を持つ曹洞宗の寺。時代の流れに着目し,現代の都市生活に合ったお墓を提供しようと,平成8年に『縁の会』を発足させた。」の記載,及び「永代供養他一式80万円 墓碑・戒名・位牌・納骨法要・納骨堂使用・永代供養・管理費含む」の広告の記載がある(甲105)。
(4)以上のとおり,申立人は,生前個人墓の販売に関し,多くの新聞や雑誌に,「東長寺『縁の会』」(甲65?甲106)などの文字とともに,「自分で選べる自分のお墓」(甲101),「個人のための生前墓」(甲91,甲92,甲94,甲98,甲105),「永代供養墓・生前個人墓」(甲102),「生前個人墓」(甲67?甲69,甲71,甲72,甲79,甲83,甲85,甲88,甲95,甲99)などと表示して,主として平成8年から平成16年頃まで盛んに広告を掲載した(甲65?甲106)。
2 商標法第4条第1項第19号該当性について
(1)使用標章の周知性
上記1で認定した事実によれば,使用標章は,申立人の業務に係る役務「葬儀の執行,永代供養の執行及びこれの媒介又は取次ぎ,墓地又は納骨堂の提供,墓地又は納骨堂の管理」を表示するものとして,長年にわたり継続して使用されてきたものであり,本件商標の登録出願日(平成26年2月12日)には既に,需要者の間に広く認識されていたものと認めることができる。そして,その周知性は,本件商標の登録査定日(平成26年12月9日)においても継続していたものということができる。
(2)本件商標と使用標章の類似性
本件商標は,上記1のとおり,「縁の会」の文字を標準文字で書してなるものである。
これに対して,使用標章は,「縁の会」の文字よりなるものである。
してみると,本件商標と使用標章は,「縁の会」の文字を同じくするものであり,これより,いずれも「エンノカイ」の称呼及び「縁の会(縁があって集まることなど)」の観念を生ずるものである。
したがって,本件商標と使用標章は,外観,称呼及び観念のいずれの点についても互いに紛れるおそれのある類似の商標と認められる。
(3)不正の目的
ア 申立人の主張及び提出された甲第108号証,甲第109号証及び甲第112号によれば,以下の記載が認められる。
(ア)平成8年に,申立人の開創400年記念事業として,申立人と商標権者は生前個人墓の販売等に関する事業を「縁の会」と名付けて開始した。申立人と商標権者は,当初,契約書上,この事業を「共同事業」と呼称した。
そして,平成10年4月1日の「東長寺開創400年記念事業 生前個人墓に関する共同事業第二回変更契約書」には,第1条として,申立人と商標権者が共同で遂行すべき業務を,「a 事業計画の作成,b 事業計画の監理」とし,申立人が遂行すべき業務を,「a 納骨堂の整備及び運営管理,b 縁の碑及び銘板の設置区域(以下,水の苑とする)の環境整備及び運営管理,c 曹洞宗の教義による法要と永代供養,d 個人墓の購入者の教化,e 販売事務所の提供」とし,商標権者が遂行すべき業務を,「a 個人墓の広報及び広告,b 個人墓の販売及び販売の委託,c 縁の会事務局の設置,運営,管理」とする旨が,記載されている(甲108)。
(イ)平成18年11月1日の「縁の会会員募集に関する委託契約書」には,申立人が商標権者に「縁の会」の会員募集に関する業務を委託する旨が,記載されており,また,その契約書の第5条には,「募集期間中における縁の会事務局の運営・維持管理費用は主に商標権者の負担とする。ただし,募集が終了し本契約が終了した場合,縁の会事務局の運営業務は申立人に引き渡すこととする。」旨が,記載されている(甲109)。
(ウ)平成25年2月14日の「契約内容の変更に関する覚書」には,遅くとも平成26年12月末日をもって業務委託契約を終了すること,上記期日までに申立人の自主運営が円滑に行えるよう,商標権者から申立人へ業務を引き継ぐことが記載されている(甲112)。
(エ)商標権者は,上記1のとおり,「縁の会」の文字を平成26年2月12日に登録出願し,同年12月19日に設定登録をしたものである(甲1)。
イ 商標出願の経緯等の事実認定について
上記(ア)及び(イ)によれば,申立人及び商標権者は,共同事業として,事業を始め,両者において業務分担は,明確にされており,申立人は,主に,寺の管理や曹洞宗の教義による法要と永代供養などを行い,商標権者は,主に,墓の広報や広告,墓の販売及び販売の委託,縁の会事務局の設置,運営,管理等を行っていたことが推認できる。
そして,申立人及び商標権者は,平成26年12月末日までに業務委託契約を終了することとし,上記期日までに申立人の自主運営が円滑に行えるよう,商標権者から申立人へ業務を引き継ぐことについて合意していると認められる。
してみれば,商標権者は,共同事業として事業を開始し,契約期間中であるにも関わらず,商標権者のみで,上記(エ)のとおり,単独で商標権を取得したものである。
さらに,共同事業は,業務分担が明確になっていたにも関わらず,申立人の業務の範囲である「葬儀の執行,永代供養の執行,墓地又は納骨堂の提供,墓地又は納骨堂の管理」についても,申立人の承諾等もなしに商標権を取得したものと認められる。
(4)小活
以上によれば,使用標章は,本件商標とは極めて類似する商標であること,本件商標の登録出願時において,使用標章が申立人の役務を表示するものとして,墓を購入しようとする需要者の間において広く認識されていたこと,また,「縁の会」の語について,商標権者が申立人の共同事業者として知悉していたものであること,などを併せて考慮すると,商標権者は,使用標章が未だ商標登録されていないことを奇貨として,それに化体された業務上の信用と顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)し,不正の利益を得る目的など,不正の目的のために使用標章と類似する本件商標を先に登録出願し,設定登録をうけたものと推認せざるを得ないものである。
そうすれば,本件商標は,申立人の業務に係る役務を表示するものとして,需要者の間に広く認識されている使用標章と極めて類似する商標であって,不正の目的をもって使用する商標といわなければならない。
3 むすび
以上によれば,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものと認められる。

第4 商標権者の意見の要旨
商標権者は,前記第3の取消理由に対して,平成28年3月14日付けの意見書(平成27年10月6日付け意見書を引用している。)において,要旨以下のように意見を述べ,証拠方法として乙第1号証ないし乙第9号証(乙第4号証の1は提出されていない。枝番号を含む。)を提出した。
1 意見の理由
本件商標が商標法第4条第1項第19号にいう「他人の業務に係る商品又は役務を表示するもの」に該当しないこと
平成27年10月6日提出の意見書(以下「意見書(1)」という。)に述べたとおり,本件商標は,商標権者が自己の業務に係る役務について使用する商標である。すなわち,本件商標である「縁の会」の標章は商標権者が創案したものであり,本件商標にかかる事業を商標権者が自らの事業として遂行してきたこと,甲号証として提出されている新聞記事情報等は,商標権者と申立人間の業務分担に基づき,商標権者が広報を行ったものであることはこれまで提出された証拠から明らかである(甲12ないし甲14,甲18,甲23,甲24,甲28,甲29,甲30,甲31ないし甲34,甲42,甲45,甲47,甲51,甲53,甲55,甲57,乙7ないし乙9)。
さらに,甲号証として提出されている広告等について,これが商標権者の負担において商標権者が広告掲載を依頼したものであることも,証拠上認めることができる(乙1の1ないし乙1の3)。この点,商標法第4条第1項第19号の趣旨は,「多年にわたって企業が努力を積み重ね,多大な宣伝広告費を掛けることにより,需要者間において広く知られ,高い名声,信用,評判を獲得するに至った周知,著名商標は,十分に顧客吸引力を具備し,それ自体が貴重な財産的価値を有するものといえる」(特許庁「商標審査便覧42.119.03」)ことから,かかる商標を保護すべきであるという点に求められる。
上述したように,そもそも本件商標は,商標権者が発案し,商標権者が自己の業務に係る役務について使用する商標として使用してきたものであり,かつ,その宣伝広告等も商標権者の負担において行ってきたことが証拠上認められる以上,本件商標が,商標法第4条第1項第19号にいう「他人の業務に係る商品又は役務を表示するもの」に該当しないことは明らかである。
2 前提となる事実の誤認について
(1)申立人と「縁の会」の会員組織が別主体と認められること
本件通知書は,使用標章が申立人の業務に係る役務を表示するものとして使用されていた旨認定している。
しかしながら,引用されている新聞記事から明らかなとおり,申立人とは明らかに別な「会員組織」が提供する役務を表示するものであって,申立人の業務に係る役務を表示しているものではない。
その意味では,そもそも申立人が本件異議申立の主体となり得るのかにも疑問がある。「縁の会」という会員組織は,法人格のない任意団体ではあるが,当該任意団体が使用していた名称・呼称というべきであり,申立人自身が使用していたものではない。
(2)本件通知書の認定事実について
ア 「縁の会」事業の主体について
本件通知書によれば,申立人が,「縁の会」を発足し,生前個人墓の販売等の事業を開始した旨認定している。
しかしながら,その一方において,本件通知書においては,「申立人と商標権者は,生前個人墓の販売等に関する事業を『縁の会』と名付けて開始した」と認定しており,上記認定の間には明らかな矛盾が存在している。
上記の前者については,具体的な根拠がない認定であるのに対し,後者は,具体的な契約書の規定に基づく認定であるから,後者の認定が証拠に基づく判断として合理性を有している。
イ 「縁の会」の「共同事業」における業務分担について
「縁の会」事業について,共同事業とされた当初の契約書によれば,本件通知書認定のとおり,共同で遂行すべき業務として,事業計画の作成,事業計画の監理が示され,申立人が遂行すべき業務として,納骨堂の整備・運営管理,縁の碑・銘板の設置区域の環境整備・運営管理,曹洞宗の教義による法要・永代供養,個人墓購入者の教化,販売事務所の提供が示され,商標権者が遂行すべき業務として,個人墓の広報及び広告,個人墓の販売・販売委託,縁の会事務局の設置・運営・管理が示されている(本件通知書2(3)ア(ア))。
上記契約内容によれば,「縁の会」事務局の設置・運営・管理は,専ら商標権者が行うものとされており,申立人が行う業務とはされておらず,また,個人墓の広報等や販売等も商標権者の行う業務とされていることが明らかである。本件通知書が指摘するその後の契約においても,この業務分担は変更されていない(本件通知書が指摘する契約条項は,契約終了時の引継措置を定めたものに過ぎず,契約終了前の業務分担の変更を意味する内容はない)。
以上によれば,申立人自体が,「縁の会」事業を行っていたと認められる証拠は存在しておらず,「縁の会」を運営・管理等をしていたのが,商標権者であることは,契約上明らかである。
ウ 新聞記事の解釈について
本件通知書が引用する新聞記事に,「東長寺縁の会」に関する記事が掲載されていることは事実である。
しかしながら,これが「東長寺」自体に関する記事ではなく,「東長寺縁の会」に関する記事であることに留意すべきである。
(ア)各記事内容から明らかなとおり,「縁の会」は「会員組織」であることが明示されている。当該「会員組織」が東長寺それ自体ではないことは明らかである。
(イ)上記契約内容によれば,縁の会事業の広報・広告は,商標権者が行うこととされていたことであり,上記記事が掲載されたこと自体,商標権者が関係先に働きかけを行って自らの費用・負担において実現したことである(乙1の1ないし乙1の3,乙8)。特に,新聞等の全面広告等の掲載のためには多額の広告費用を要することは明らかであり,その費用は全額を商標権者が支出していたのである。「フリーライド」しようとしている者が誰であるかを的確に判断すべきである。
(ウ)以上によれば,「縁の会」の新聞記事掲載を行った主体が,商標権者であって,申立人ではないことが明らかであり,かつ,その記事内容は,「東長寺縁の会」との表記から申立人に関連するように見えるものの,申立人とは別の会員組織の提供する役務であることは明らかというべきである。
(エ)上記記事が新聞等で取り上げられたのは,申立人が著名な宗教法人であったからではない。申立人は,世間一般にはほとんど知られていない。新聞記事等になった理由は,「縁の会」という会員組織を利用した生前個人墓の販売等を行う形態が新規のものであったためであり,このことは記事内容等から明らかである。これを創案して,縁の会の会員組織を運営・管理等していたのが,商標権者であることは,上記のとおりである。
エ 小括
以上によれば,本件通知書記載の事実は,事実を誤認して取消理由があるものと判断したことが明らかである。
3 使用標章の周知性及び類似性について
(1)本件通知書による認定
本件通知書は,申立人の提出にかかる甲7ないし甲106を引用しつつ,使用標章は,申立人の業務に係る役務を表示するものとして,長年にわたり継続して使用されてきたものであり,本件商標の登録出願日(平成26年2月12日)には既に,需要者の間に広く認識されていたものと認めることができ,その周知性は本件商標の登録査定日(平成26年12月9日)においても継続していたものということができる旨認定している。
また,本件通知書は,本件商標と使用標章は,外観,呼称及び観念のいずれの点についても互いに紛れるおそれのある類似の商標である旨認定している。
しかしながら,上記2において述べたとおり,「縁の会」という会員組織を通じて生前個人墓の販売等を行っていたのは,商標権者であって,申立人は,申立人とは別主体である当該会員組織の会員に対して宗教的行為行っていたことは明らかであるから,本件商標が申立人の業務に係る役務を表示するとの認定は,前提に誤認がある。
また,需要者の間に広く認識されていたのは,「縁の会」という会員組織を通じた生前個人墓の販売形態というべきであって,「東長寺縁の会」という特定の名称自体が広く認識されていたと認めることも困難である。
(2)本件商標は,申立人以外の宗教法人に係る事業にも使用していたこと
以上から明らかなとおり,「縁の会」という会員組織を通じた生前個人墓の販売形態は,申立人固有のものではあり得ず,墓地等を所有・管理する宗教法人において利用が可能なものであり,同ビジネスモデルを開発した商標権者において現に使用していた。
そして,意見書(1)に述べたとおり,商標権者は,本件商標登録以前より,千葉県袖ヶ浦市川原井634所在の宗教法人曹洞宗瓦谷山真光寺及び東京都世田谷区弦巻1-34-17所在の宗教法人日蓮宗賓樹山常在寺においても,本件商標を使用して広告・宣伝等を行ってきており(乙2の1ないし3の3,乙5,甲111),特に真光寺については,平成18年以降,新聞等極めて多数の媒体に掲載されていることは証拠上明らかである(乙4の1ないし乙4の35)。
このことから,本件商標たる「縁の会」自体が,その登録出願日(平成26年2月12日)に,広く需要者に周知されていたことが認められる。
すなわち,「縁の会」というのは,商標権者が創案し自ら使用してきた生前個人墓の販売事業を表す商標であり,これは申立人のみに係る役務を表示するものではない。上記のとおり新聞記事や広告等において,他の宗教法人の名称を冠した「縁の会」として表示しているのであり,「縁の会」という商標が,このことを見ても申立人の業務に係る役務を表示するものでないことは明らかであり,本件申立に関して,本件商標との類似性が認められるとして,商標法第4条第1項第19号の要件を充たすものとはいえない。
(3)小括
以上より,本件において,使用標章は商標法第4条第1項第19号の要件たる周知性及び類似性を充たすものではない。
4 不正の目的の不存在
(1)本件通知書による認定
本件通知書は,ア 使用標章が本件商標と極めて類似する商標であること イ 本件商標の登録出願時において,使用標章が申立人の役務を表示するものとして,墓を購入しようとする需要者の間において広く認識されていたこと ウ 「縁の会」の語について,商標権者が申立人の共同事業者として知悉していたものであること などを併せて考慮し,商標権者が,使用標章が未だ商標登録されていないことを奇貨として,それに化体された業務上の信用と顧客吸引力にただ乗り(フリーライド)し,不正の利益を得る目的など,不正の目的のために使用標章と類似する本件商標を先に登録出願し,設定登録をうけたものと推認している。
(2)上記認定に理由がないこと
しかしながら,上記ア及びイについては,上記2及び3に詳述したとおり,そもそも使用標章は申立人の役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたとはいえず,したがって本件商標と使用標章が類似しているものとして商標法第4条第1項第19号の要件を充たすものではないから,理由がない。
また,上記ウについても,上記2から明らかなとおり,申立人との共同事業の中において,「縁の会」という会員組織の運営・管理等は,専ら商標権者が行っていたものであり,申立人が関わっていたことではないから,不正の目的を推認させるものではあり得ない。
また,本件通知書は,商標権者が,共同事業として事業を開始し,契約期間中であるにもかかわらず,商標権者のみで単独で商標権を取得したことも不正の目的を推認させる事情としていることも考えられるが,この点も上記同様,縁の会という会員組織の運営・管理等は,専ら商標権者が行っていたことを踏まえれば,これが不正の目的を推認させる事情にあたらないことは明白である(むしろ,申立人が本件申立を行ったこと自体が,自らが一切の費用負担をしていなかったにもかかわらず,商標権を取得しようとしている点において,まさに「フリーライド」と認められ,「不正の目的」が推認されるべきである)。
さらに,本件通知書は,申立人の業務の範囲である「葬儀の執行,永代供養の執行,墓地又は納骨堂の提供,墓地又は納骨堂の管理」について,申立人の承諾なしに商標権を取得したことも,不正の目的を推認させる事情としていることも想定される。しかしながら,上述したように,商標権者は,商標登録出願時以前から,申立人以外の宗教法人についても本件商標を使用して事業を行っていたのであり,申立人は当然にこれを知悉していたのである。
そして,「縁の会」がそれのみで申立人の役務に係る表示といえないことも併せ考えれば,申立人が,本件商標権が表示する役務として,上記内容を含むものとしたことについても,不正の目的があったと推認させる事情たりえないことは明らかである。
(3)不正の目的の不存在
不正の目的の認定に係る要素
特許庁による前掲「商標審査便覧42.119.03」によれば,「『不正の目的』の有無の認定は内心の事項であり,審査官が直接窺い知ることは困難であることから,外部に現れた客観的事項から判断する必要がある」として,以下のような資料が存する場合には,当該資料を十分勘案するものとしている(なお,特許庁による『商標審査基準[改訂第11版]』第3の17にも同様の要素が挙げられている)。
(ア)その他人の商標が需要者の間に広く知られている事実(使用時期,使用範囲,使用頻度等)を示す資料
(イ)その周知商標が造語よりなるものであるか若しくは構成上顕著な特徴を有するものであることを示す資料
(ウ)その周知商標の所有者が,我が国に進出する具体的計画(例えば,我が国への輸出,国内での販売等)を有している事実を示す資料
(エ)その周知商標の所有者が近い将来,事業規模の拡大の計画(例えば,新規事業,新たな地域での事業の実施等)を有している事実を示す資料
(オ)出願人より,商標の買取り,代理店契約締結等の要求を受けている事実を示す資料
(カ)出願人がその商標を使用した場合,その周知商標に化体した信用,名声,顧客吸引力等を毀損させるおそれがあることを示す資料
イ 本件商標についての検討
本件商標について,上記アの諸要素を検討する。
まず,(ア)については,「縁の会」という名称が,本件商標登録出願時に需要者に周知されていたとしても,それが申立人の役務自体の表示であると認める余地はなく,他の宗教法人に関しても同一の名称が使用されて周知されていたことが明らかである。
また,(イ)については,「縁の会」という名称は,そもそも商標権者が創案したものであることは,既に主張したとおりであり,これを申立人が創案したと認める余地はない。(ウ)については,外国における周知商標に係る要素であり,本件とは関係がない。(エ)については,申立人は,既に使用標章を使用した生前個人墓の販売事業を行っておらず,現在では新たに「結の会」との標章を使用して事業を行っており(乙6の1ないし乙6の3),使用標章を用いた事業規模の拡大を行う可能性は全くない。(オ)については,そこに挙げられるような事情は全くない。(カ)についても,これまで述べてきたとおり,商標権者は申立人以外の宗教法人に関しても本件商標を用いて事業を行っていたのであり,それにより申立人の信用,名声,顧客吸引力等を毀損させた事実はなく,そのおそれも認められない。
以上のとおり,上記(ア)ないし(カ)のいずれの点からも,商標権者に不正の目的があったと推認させるに足る事実がまったく認められないのは明らかというべきである。
ウ 知財高判平成18年10月26日について
使用標章に表象される異議申立人の信用にただ乗りしようとするものであるという理由で,商標登録の異議を認めた特許庁の決定を取り消すべき理由はないとした裁判例(知財高判平成18・10・26平成18年(行ケ)10178号[鈴屋事件])は,異議申立人が同族会社であること,創業者が,その死去まで異議申立人の代表取締役であったこと,原告(商標権者)が創業者の妻であり,創業者とともに異議申立人の事業に深く関与した者であるが,創業者の死後異議申立人の監査役を辞任したことなどを認定し,これらの事実によれば,「原告は,異議申立人の事業に深く関与した者であり,引用商標が異議申立人の商品を表すものとして需要者,取引者の間に相当程度知られるに至ったことについても,相応の貢献をしたことがうかがわれないではない」とした上で,しかしながら,「原告の貢献は,異議申立人の監査役,あるいは,同族会社である異議申立人の創業者であり,代表者であった者の妻という立場での貢献であって,原告自らの事業において本件標章を使用したものでもなく,ましてこれを使用する権限を有していたものではない」として,原告に「不正の目的がない」ということにならないと判断した。
上記裁判例との対比でいえば,本件において,商標権者は自ら本件商標を創案し,自らの事業において本件商標を使用してきたものであり,申立人以外の宗教法人においてもこれを使用し,それについて申立人から何らの異議がなかったことからも明らかなとおり,本件商標を自ら使用する権利を有していたものである。したがって,上記裁判例の趣旨に鑑みても,本件において,自らの出捐で本件商標の宣伝・広告を行い,本件商標を使用してきた商標権者に「不正の目的」があったと認める余地はないことは明らかである。
以上述べてきたように,「不正の目的」についての本通知書の認定に理由がないことは明らかであり,上述した各要素及び裁判例を検討したとき,本件において,商標権者に「不正の目的」が認められないことは明らかである。
5 結語
よって,本件において商標法第4条第1項第19号の要件を充たさないことは明らかである。

第5 当審の判断
1 本件商標についてした前記第3の取消理由は,妥当なものと認められるものである。
そうすれば,本件商標は,申立人の業務に係る商品及び役務を表示するものとして,需要者の間に広く認識されている使用標章と極めて類似する商標であって,不正の目的をもって使用する商標といわなければならないから,商標法第4条第1項第19号に該当するものである。
2 申立人の主張について
(1)本件商標が商標法第4条第1項第19号にいう「他人の業務に係る商品又は役務を表示するもの」に該当しないとの主張について
商標権者は,「本件商標は,商標権者が自己の業務に係る役務について使用する商標である。本件商標『縁の会』の標章は商標権者が創案したものであり,本件商標にかかる事業を商標権者が,自らの事業として遂行してきたこと,甲号証として提出されている新聞記事情報等は,商標権者と申立人間の業務分担に基づき,商標権者が行ったものであることはこれまで提出された証拠から明らかである。したがって,本件商標が,商標法第4条第1項第19号にいう『他人の業務に係る商品又は役務を表示するもの』に該当しないことは明らかである。」旨を主張している。
しかしながら,申立人と商標権者は,平成10年4月1日の「生前個人墓に関する共同事業第二回変更契約書」(甲108)において,「宗教法人東長寺を甲,株式会社アネックスを乙と定め,甲・乙共同して生前個人墓(以下個人墓とし,その墓標を縁の碑及び回廊銘板,購入者の組織を縁の会とする)の企画,建立,販売,維持管理費等の事業を遂行するため,本件契約を締結する。」と記載されていることから,例え,「縁の会」の名称は,商標権者が創案したとしても,共同事業として始めた際に,会の名称を「縁の会」とし契約したことは明らかであるから,本件商標に係る事業は,商標権者が単独で事業を行ってきたものではなく,逆に,本件商標の使用は,例えば,新聞記事の広告の証拠を見ると商標権者の名称の記載はなく,「宗教法人 東長寺 縁の会」(甲91)又は「事業主体宗教法人 東長寺縁の会」(甲92?102,甲104)の文字が表示されており,また,雑誌の広告などには「事業主体宗教法人 東長寺 縁の会」と記載されている(甲73?甲89)ものであって,これらには,申立人の名称(略称)が必ずといっていいほど付されており,その周知性は,申立人が有するといい得るものである。
してみると,これに接した需要者,取引者は,宗教法人である東長寺が,事業主体であると認識するものであり,商標権者が,事業主体であると認識し得ないものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号にいう「他人の業務に係る商品又は役務を表示するもの」に該当するものといわざるを得ない。
よって,申立人の主張を採用することはできない。
(2)不正目的の不存在について
商標権者は,前記「第4 4」のとおり,使用標章は申立人の役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されていたとはいえず,申立人との共同事業の中において,「縁の会」という会員組織の運営・管理等は,専ら商標権者が行っていたものであり,申立人が関わっていたことではないから,不正の目的を推認させるものではない。さらに,申立人の業務の範囲である「葬儀の執行,永代供養の執行,墓地又は納骨堂の提供,墓地又は納骨堂の管理」について,申立人の承諾なしに商標権を取得したことも,商標権者は,商標登録出願時以前から,申立人以外の宗教法人についても本件商標を使用して事業を行っていたのであり,申立人は当然にこれを知悉していたのである。そして,「縁の会」がそれのみで申立人の役務に係る表示といえないことも併せ考えれば,申立人が,本件商標権が表示する役務として,上記内容を含むものとしたことについても,不正の目的があったと推認させる事情たりえないことは明らかである。」旨を主張している。
しかしながら,前記「第3 2(3)」のとおりの経緯があったものであり,本来,申立人と商標権者は,共同事業として始めたものでありながら(甲108,甲109,甲112),商標権者のみで本件商標を出願したのは,使用標章が未だ商標登録されていないことを奇貨として,それに化体された業務上の信用と顧客吸引力を商標権者のみのものとし,不正の利益を得る目的など,不正の目的のために使用標章と類似する本件商標を先に登録出願し,設定登録をうけたものと推認せざるを得ないものである。
また,商標権者が他の宗教法人で「縁の会」を使用している事実があり,申立人がそれを知悉していたとしても,申立人と商標権者が,共同事業者として事業を行ってきたことは上記のとおりであるから,そのことが,直ちに,本件の判断を左右するものではない。
そうすれば,本件商標は,申立人の業務に係る役務を表示するものとして,需要者の間に広く認識されている使用標章と極めて類似する商標であって,不正の目的をもって使用する商標といわなければならない。
さらに,商標権者は,他に不正の目的をもって使用していないことを証明する証拠の提出もない。
よって,上記商標権者の主張は,いずれも採用することができない。
3 まとめ
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものであるから,同法第43条の3第2項により,その登録を取り消すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
異議決定日 2016-05-11 
出願番号 商願2014-9767(T2014-9767) 
審決分類 T 1 651・ 222- Z (W3545)
最終処分 取消 
前審関与審査官 飯田 亜紀 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 榎本 政実
山田 正樹
登録日 2014-12-19 
登録番号 商標登録第5727379号(T5727379) 
権利者 株式会社アネックス
商標の称呼 エンノカイ、エニシノカイ、ユカリノカイ、ヘリノカイ、フチノカイ 
代理人 平野 泰弘 
代理人 村上 泰 
代理人 川島 基則 
代理人 杉本 明子 
代理人 金子 宏 
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