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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W43
審判 全部申立て  登録を維持 W43
審判 全部申立て  登録を維持 W43
審判 全部申立て  登録を維持 W43
審判 全部申立て  登録を維持 W43
管理番号 1323722 
異議申立番号 異議2016-900194 
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2017-02-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-07-22 
確定日 2017-01-05 
異議申立件数
事件の表示 登録第5840997号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5840997号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第5840997号商標(以下「本件商標」という。)は、「景徳鎮本店」の文字を標準文字で表してなり、平成27年12月7日に登録出願、第43類「飲食物の提供」を指定役務として、同28年3月29日に登録査定され、同年4月15日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は、「景徳鎮」の文字からなる商標(以下「引用商標1」という。)及び「景徳鎮本店」の文字からなる商標(以下「引用商標2」という。)であり、同人が「四川料理等の中華料理を主とする飲食物の提供」について使用しているとするものである。

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第10号、同第15号、同第7号、同第19号及び同法第3条第1項柱書に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきものであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第34号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)申立人について
申立人は、横浜中華街の市場通りにおいて、「景徳鎮」の屋号で、「四川料理等の中華料理を主とする飲食物の提供」(以下「申立人役務」という。)に係る業務を行う飲食店(横浜市中区山下町190)(以下、この飲食店を「本店」という。)を経営する法人である。
(2)本店について
ア 本店の経営主体について
本店は、株式会社小島食器(以下「小島食器」という。)により、平成7年に同住所にて創業された。小島食器は、創業当時、故小島守氏が代表を務めていたが、その後、同氏の次男である小島勝氏に引き継がれた。本店の事業は、平成27年4月、小島食器から、小島勝氏の娘婿である道脇氏が代表を務める株式会社景徳鎮に譲渡された。その後、平成28年4月に、申立人が株式会社景徳鎮から本店の事業の譲渡を受けて、現在に至る。
したがって、本店の営業主体は、商標権者とは全くの別人格である。
以下、必要に応じて、本店の営業主体を「本店側」という場合がある。
イ 本店における業務及び商標について
本店は、平成7年の創業当時より、申立人役務を行う飲食店として、営業を続けている。本店側は、創業当時より現在に至るまで、営業主体の変更はあるものの、一貫して、屋号である「景徳鎮」(引用商標1)を本店の業務に係る申立人役務に使用している(甲2?甲10)。
本店のホームページ(以下「HP」という。)のドメインは、http://www.keitokuchin.co.jp/である。このドメインネームは、2001年に小島食器により取得され、現在は申立人が所有するものである(甲11)。この点からも、本店の事業が、小島食器から申立人に承継されて、現在は、申立人の業務を表示する商標として本店の屋号である引用商標1が使用されていることがわかる。
本店が、引用商標1を屋号として業務を継続していることを示す証拠を提出する(甲12)。ここで、2003年、2004年、2013年には、本店は、上記の住所において業務を行っていたことがわかる。
ウ 商標権者と「景徳鎮 新館」の経営主体との関連性について
平成21(2009)年10月頃、横浜中華街に「景徳鎮 新館」(以下「新館」という。)(横浜市中区山下町138)が創業されたと思われる。
店の規模を見ても容易に想像できるが、本店は100人以上を収容できるのに対し、新館は2?4人掛けの机が3?4個置かれているだけの小規模な店舗であり、めいっぱいに入っても20人も入らない。これほど小さな店舗がひっそりと始めてしまっていたことから、いつ頃、開始したかは明確には分からない。
なお、横浜中華街の案内地図(横浜中華街街道指南)の2003年版及び2004年版には新館は当然に載っていないが、2013年版では新館も掲載されている(甲12)。
新館も、本店と同様に、四川料理等提供の役務を行っており、四川麻婆豆腐を看板メニューとする飲食店である。新館の経営主体は、山田氏又は山田氏が経営に関与する法人である。
山田氏は、新館の創業以前には、本店の従業員として小島食器に雇用されていた人物である。山田氏は小島食器の経営陣である小島家一族と、中国人料理人・店員との間に入って、店を円滑に動かすことに力を発揮した。しかしながら、山田氏は、新館の創業前に本店を辞めていた。したがって、新館の創業時には、山田氏と小島食器との間に、雇用関係はない。
山田氏は、少なくとも、商標権者及び有限会社聖商事(以下「聖商事」という。)の経営に関与している。具体的には、商標権者は、山田氏の妹が代表を務める法人であることがわかっている。また、山田氏が聖商事に所属すること、及び聖商事が新館のHP(甲13)のドメイン名を有していることがわかっている(甲14)。
したがって、商標権者と新館の経営主体とは、実質的に同一主体であるとみて間違いないものと思われる。
エ 新館における商標の使用態様について
山田氏は、新館において、本店の屋号である引用商標1と同じ「景徳鎮」の商標を用いた。例えば、新館のHPにおいても、引用商標1と同じ「景徳鎮」の商標が使用されている(甲13)。新館のHPは、本店のHPとドメイン名も異なる全く別のHPである。
しかしながら、新館のHPは、本店のHP(甲10)と見間違うほど作りが酷似している。
また、山田氏は、看板等には、その後ろに「新館」の文字を付した「景徳鎮 新館」なる商標を使用した(甲15)。
さらに、山田氏が、新館のHPや新館の看板等に使用した商標は、本店が看板等に使用した引用商標1の書体と同様の書体である(甲2?甲10)。
なお、新館の看板等では、「景徳鎮」の文字が「新館」の文字に比べて大きく記載されている。
上述の新館の商標の使用態様及び本店の周知性により、需要者は、新館の創業当初から、新館を本店の姉妹店か系列店と認識するようになり、本店を新館と区別するために「景徳鎮本店」や「景徳鎮本館」などと称するようになった。このため、新館の創業当時の本店の経営主体である小島食器は、グルメサイト、雑誌等の掲載に際し、本店を表示する際に、屋号である引用商標1に「本店」を付した引用商標2の「景徳鎮本店」の使用を開始した(甲16)。
また、横浜中華街の地図等には、本店を表示するものとして、現在でも、引用商標2が記されている(甲17)。さらに、タウン情報誌「るるぶ」などにも「景徳鎮本店」として掲載がされた(甲18、甲19)。
上述のとおり、新館における商標の使用態様や新館のHPが本店のHPの作りと酷似している点から鑑みても、山田氏が、引用商標1を重要と考えており、引用商標1のブランド力を利用して、新館の業務を行おうとする意図を持っていることは明白である。
オ 商標権者の本件商標取得までの経緯
平成27年4月、本店の事業は、小島食器から株式会社景徳鎮へ譲渡された。
そもそも、小島食器は、平成12年の小田原を皮切りに、以後百貨店に出店し企業規模を拡大していたが、徐々に百貨店店舗を閉鎖し、平成20年頃に横浜中華街の本店のみで営業するようになった。
平成24年頃、メインバンクの東日本銀行に対する債務は、サービサーのアトリウム債権回収株式会社(以下「アトリウム社」という。)に譲渡された。
小島食器は、営業譲渡あるいは不動産を買い取ってくれる業者を探していたが、このとき、聖商事が不動産を買い取り、小島食器が店子となり、経営を続けるという計画が、聖商事と小島食器との間で合意されアトリウム社に提案したが、同社は納得せず、この計画は流れてしまった。
その後、2年以上をかけて、数社が不動産取得や営業譲渡を試みたが、いずれも計画が流れてしまった。
ところが、上述の道脇氏が会社を設立し同社が営業譲渡を受けるのであれば、銀行として融資する、という提案が静岡銀行からなされたことから、道脇氏が新会社「株式会社景徳鎮」を設立し、同社が小島食器から営業譲渡及び不動産の全部の譲渡を受け、その対価をアトリウム社に支払った。アトリウム社も、このときの小島食器の提案を受け入れたのである。
小島食器から株式会社景徳鎮への本店の事業譲渡が行われることを知った山田氏は、再度、小島食器の代表者に対して本店事業の買い取りを求めた。しかしながら、山田氏の提案を受け入れる理由はなくなり、交渉はまとまらなかった。
ところが、株式会社景徳鎮への本店の事業譲渡が行われたのと同年の平成27年12月7日に、商標権者は、本件商標について商標登録出願を行い、平成28年4月15日に登録に至った。
これらの点から、引用商標1の取得及び使用が難しいと考えた山田氏及び商標権者が、小島食器又は(本店事業の譲渡先である)株式会社景徳鎮が本店の業務に引用商標2を使用していることを知りながら、引用商標2と同一の本件商標を商標登録しようとしていたことは、明らかである。
(3)本店の周知性ついて
創業当初より、本店で提供される料理は、辛い・美味しい等と評判となり、本店は、「横浜中華街の四川料理の名店」と評された。特に、本店の四川麻婆豆腐は、美味しいと大変な評判になった。評判が口コミで広がるにつれて、雑誌の記事などの各種メディアで採り上げられることも多くなり、現在も継続的に多くのメディアに登場している。これにより、本店は、四川麻婆豆腐を名物料理とする四川料理の名店として、需要者の間に広く認知されるものとなった。特に、本店のある横浜中華街は、全国から数多くの観光客が訪れる観光スポットである。このため、本店は、横浜中華街の近隣のみならず全国的に周知・著名な店舗となり、これは現在でも継続している。
本店のメディアでの紹介は、少なくとも2006年?2008年頃には数多く行われていた(甲20?甲24)。また、本店のメディアでの紹介は、テレビ番組だけでなく、タウン誌をはじめとする雑誌等でも行われた。
したがって、遅くとも、新館が創業された平成21(2009)年10月までには、引用商標1が、本店側(その当時の本店の経営主体である小島食器)の業務に係る四川料理等提供の役務を行う本店の屋号として、全国的に周知・著名であったことは明らかである。
また、新館の創業後も、本店のメディアへの紹介は継続して行われている。例えば、テレビ東京 モヤモヤさまぁ?ず2(2011年10月9日放送)や、テレビ東京 出没!アド街ック天国の「横浜中華街」特集(2013年3月31日)において本店が紹介された。出没!アド街ック天国では、「麻婆豆腐の名店」として本店が紹介された(甲25)。また、これらの番組に出演している大江アナウンサーが本店の麻婆豆腐を絶賛したことも有名である(甲26)。このことは、2016年7月24日放送のモヤモヤさまぁ?ず2でも、改めて紹介された(甲27)。また、「横浜ウォーカー」等のタウン情報誌に幾度も掲載されている(甲18、甲19、甲28)。
上述の事実は、遅くとも新館の創業前より現在まで、本店が、需要者に広く認識されていたことを示すものであるが、この他にも本店が周知である事実はある。例えば、インターネットの飲食店紹介サイトの「食ベログ」において、本店のアクセス数は非常に多く(アクセス数2,072,955)、評価もとても高く(3.56)、口コミ数も多い(324件)(甲29、平成28年8月20日調べ)。また、同じく食ベログにて、「全国の中華料理のお店」として検索すると、登録数34,922件のうち、本店は総合ランキングで194位、口コミ数ランキングで22位を獲得している(甲30、平成28年8月20日調べ)。
つまり、本店は、食ベログに登録されている日本全国の中華料理店34,922件のうち、総合ランキングにおいては上位0.556%、口コミ数に至っては上位0.003%に位置している。需要者の口コミによる同サイトにおいて、この成績を収めるということは、誰の目から見ても明らかに、本店が全国的に周知・著名な飲食店であることを意味する。
なお、同じく食ベログにて、「全国の四川料理のお店」として、提供される料理を絞って検索すれば、本店は、登録数1,464件のうち、総合ランキングで43位、口コミ数ランキングでは堂々の3位を取得している(甲31、平成28年8月20日、22日調べ)。さらに、地域を限定し、元町・中華街周辺の四川料理のお店として検索すると、登録数33件のうち、本店は総合ランキング・口コミ数ランキングともに堂々の1位を取得している(甲32、平成28年8月20日調べ)。前述のとおり、横浜中華街は、全国でも有名な観光スポットである。これは、横浜中華街が、中華料理店が密集するエリアであるからであり、このエリアにおいて、四川料理のお店で1位を取得するというのは、他の地域で1位を取得するのとは比べものにならないほど、需要者に好まれているお店であることを意味する。
ちなみに、同じく食ベログにおける、新館のアクセス数は420,987件、評価は3.52、口コミ数は83件である(甲33、平成28年8月22日調べ)。新館は、本店に比べて圧倒的にアクセス数及び口コミ数は少ないが、本店と新館を姉妹店や同系列店等と認識した需要者が、新館にアクセスしている可能性も高い。
さらに、本店は、インターネットの飲食店紹介サイトの「ヒトサラ」では、「即時予約ができるプレミアム店」に掲載されることが決まっており、掲載は2016年8月中旬以降の予定である(甲34)。なお、このサイトにおいてプレミアム店として掲載されるのは、サイトの運営者による一定の審査基準を満たした飲食店のみであるとのことである。このことからも、本店が飲食業界において周知・著名であり、業界内で高く評価されていることは明らかである。
多くの飲食店が乱立する今日の飲食業界において、本店が、上述したような評価を得ることは、一朝一タに取得できるものではなく、本店側が創業以来地道に営業活動を行ってきた、真の実績と評価すべきものである。
(4)商標法第4条第1項第10号について
ア 引用商標1の周知性について
上述のとおり、本店が、遅くとも新館の創業時である平成21(2009)年10月頃より現在に至るまで、全国的な周知な四川料理を主とする中華料理店であることは明らかである。これは、いい換えれば、本店の屋号である引用商標1が、遅くとも新館の創業時より現在に至るまで、本店側の業務に係る役務(申立人役務)を表示するものとして需要者に広く認識されていたことを意味する。したがって、本店の屋号である引用商標1は、本件商標の出願日及び登録日の両時点においては、明らかに、申立人役務を提供する本店の屋号として、全国の需要者に広く認識されていた。
イ 引用商標1と本件商標との類似性について
本件商標の指定役務は、引用商標1に係る役務である四川料理等提供と同一の役務を含むものである。
引用商標1は、「景徳鎮」の文字商標であり、本件商標は、引用商標1である「景徳鎮」の文字と「本店」の文字との結合商標である。飲食業界においては、同じ系列の他の店舗と区別するために、「本店」、「本館」、「○号店」等の文字を、屋号の後ろに付して用いることは慣例とされている。このため、「本店」の用語は、他人が行う役務と自らが行う役務を識別する用語ではなく、単に自らの業務にかかる役務を行う複数の店舗のうちのいずれの店舗かを示す用語と解するのが通常である。つまり、本件商標のうち、「本店」の部分には識別性はなく、要部は「景徳鎮」の部分であることは明らかである。
したがって、本件商標の要部である「景徳鎮」の部分は引用商標1と同一であるため、本件商標は引用商標1に類似する。
ウ 引用商標2の周知性
上述のとおり、雑誌やインターネットにおける本店の紹介記事(甲17)や、中華街の地図等(甲18)には、本店はその屋号に「本店」を付して引用商標2のように表示することが多くなり、引用商標2は、本店の屋号と同意のものとして、本店側の業務に係る役務(申立人役務)を表示するものとして需要者に広く認識されるに至った。
したがって、引用商標2は、引用商標1と同様に、本件商標の出願日及び登録日の両時点において、当然に全国的に需要者に広く認識されていたと解するのが相当である。
エ 引用商標2と本件商標との類似性
上述のとおり、本件商標の指定役務は、引用商標2に係る役務である四川料理等提供と同一の役務を含むものである。また、本件商標と引用商標2とは同一である。
オ 小括
上述のとおり、本件商標は引用商標1に類似し、かつ引用商標2と同一の商標である。加えて、本件商標の出願時及び登録時の両時点において、引用商標1及び2は、本店側の業務に係る役務を表示するものとして需要者の間に広く認識されており、本件商標の指定役務「飲食物の提供」に含まれる四川料理等の提供の役務について使用されるものである。
したがって、本件商標は商標法第4条第1項第10号に該当する。
(5)商標法第4条第1項第15号について
上述のとおり、本件商標は引用商標1に類似し、かつ引用商標2と同一の商標である。また、引用商標1は、本店の屋号を表示するものとして、遅くとも新館の創業までに全国の需要者に広く認識された商標である。引用商標2は、新館の創業を知った本店側が、本店を新館と区別するために用いた商標であり、本店の屋号に等しい商標である。
このため、商標権者が、本件商標を指定役務「飲食物の提供」に使用した場合、需要者は、申立人の業務に係る役務を表示するものと誤認し、役務の出所について混同することは容易に想像し得るものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当する。
(6)商標法第4条第1項19号について
上述のとおり、山田氏が小島食器に対する本店事業の買い取りの交渉が、債権者であるアトリウム社が受け入れなかったことにより、決裂した後であって、かつ、小島食器から株式会社景徳鎮への本店の事業の譲渡が行われた平成27年4月以降である、平成27年の12月に、商標権者が本件商標を出願し、登録に至っている。また、商標権者は、本店と同じ横浜中華街にて新館の業務を行っている山田氏と実質的には同一主体である。
したがって、商標権者は、他人である本店側の業務を表示する引用商標1及び2が周知性を獲得した後、本店側が使用する引用商標1と本件商標との類似性を認識した上で、本店側が新館との区別のために使用した引用商標2と同一の商標である本件商標を出願し、商標登録をしたものである。
これは、本店側の引用商標1及び2が商標登録されていないのを奇貨として、先んじて商標登録をし、自身のために何らかの不当な利益を得ようとする等の不正の目的が色濃く推認される。こうした商標権者による、本店のブランド力及び営業活動に係る地道な努力による成果を、不正に自己の利益のために利用しようとする行為は、公正な競争秩序を逸脱するものであり、著しく商標法の目的に反する「不正の目的」に該当すると考えるのが相当である。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当する。
(7)商標法第4条第1項第7号について
本号については、「特定の商標の使用者と一定の取引関係その他特別の関係にある者が、その関係を通じ知り得た相手方使用の当該商標を剽窃したと認めるべき事情があるなど、当該商標の登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあり、その商標登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認しえない場合も、この規定に該当するのが相当である」と判示されている(東京高裁平成16年(行ケ)第7号)。
上述のとおり、「不正の目的」で他人の標章を剽窃し本件商標を出願した商標権者の行為は、公正な取引秩序を乱すものである。
したがって、本件商標は、「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」であり、商標法第4条第1項第7号に該当する。
(8)商標法第3条第1項柱書について
商標法第3条第1項柱書は、「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標については、次に掲げる商標を除き、商標登録を受けることができる」旨規定するが、本件商標は、商標権者にとって、「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」に該当するものではない。
上述のとおり、商標権者は、本店側が新館との区別のために使用をした引用商標2を、本店側(具体的には、交渉当時の本店の経営主体である小島食器)との交渉が決裂した後に、本店側に無断で商標登録したものである。
このことからすれば、本件商標が、商標法第3条第1項柱書に規定する自己の業務に係る商品又は役務について使用する商標にあたらないことは明白であり、本件商標は、商標法第3条第1項柱書に違反して登録されたものである。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
ア 申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、以下のとおりである。
(ア)申立人は、横浜中華街で「景徳鎮」という名称の店舗(本店)において「四川料理等の中華料理を主とする飲食物の提供」(申立人役務)を行っており、本店は、遅くとも2003年(平成15年)頃から現在まで継続している(甲2?甲10、甲12)。
(イ)本店の事業は、平成27年4月に、創業者の小島食器から株式会社景徳鎮に譲渡され、さらに、同28年4月に申立人に譲渡された(以下、申立人、小島食器及び株式会社景徳鎮を合わせて「申立人等」という。)。
(ウ)本店は、少なくとも2004年ないし2008年、2013年にテレビ番組で数回紹介された(甲10、甲25、甲27)。
(エ)本店は、本件商標の登録査定日以降となる2016年8月時点の調査であるが、インターネットの飲食店紹介サイト「食べログ」において、アクセス数は約207万であり、「全国の中華料理のお店」としては登録数約3.5万件のうち、総合ランキングで194位、口コミ数ランキングで22位であった(甲29、甲30)。また、「全国の四川料理のお店」としては登録数約1,500件のうち、総合ランキングで43位、口コミ数ランキングで3位であり(甲31)、「元町・中華街周辺の四川料理のお店」としては登録数33件のうち、総合ランキング、口コミ数ランキングともに1位であった(甲32)。
(オ)雑誌やインターネットの紹介記事において、本店は2010年頃から「景徳鎮本店」として数回紹介された(甲16、甲18、甲19)。
イ 上記アの事実からすれば、本店(景徳鎮)においては、遅くとも2003年(平成15年)頃から現在まで継続して、横浜中華街において「四川料理等の中華料理を主とする飲食物の提供」(申立人役務)が行なわれていること、及び本店は横浜中華街において相当程度知られた店舗であることが認められる。
しかしながら、テレビ番組での紹介は数回にすぎず、「横浜中華街街道指南」(甲12)や雑誌での紹介(甲18、甲19、甲28)は、多数の店舗のうちの一つとして、他の店舗とともに紹介されているにすぎないものであるし、加えて、本店の売上高、来客数などの営業実績を示す証左は、提出された証拠から見いだすことはできないから、たとえ、「食べログ」等の口コミサイトにおいて、掲載され、そのランキングが上位であったとしても、本店及びその名称「景徳鎮」は我が国の需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
そうすると、引用商標1「景徳鎮」は、本件商標の登録出願時ないし登録査定時において、他人(申立人等)の業務に係る役務であることを表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
また、引用商標2「景徳鎮本店」も、本店が雑誌等でそのような名称で紹介されたことがあるとしても、その数は数回であって、かつ、これが本店のホームページ、看板及びメニュー等で使用されている事実は確認できないから、本件商標の登録出願時ないし登録査定時において、他人(申立人等)の業務に係る役務であることを表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
(2)本件商標と引用商標の類否について
ア まず、本件商標と引用商標1を比較すると、本件商標はその構成中「本店」の文字が飲食業界において一般に自己が行う複数の店舗を区別するために用いられている語であって自他役務識別標識としての機能がないか、極めて弱いものであるから、「景徳鎮」の文字が独立して自他役務識別標識としての機能を果たし得るものといえる。
そうすると、本件商標の構成中「景徳鎮」の文字は引用商標1と同一であるから、本件商標と引用商標1とは同一又は類似の商標というべきものである。
イ 次に、本件商標と引用商標2を比較すると、両者は、前記1及び2のとおり、いずれも「景徳鎮本店」の文字からなるものであるから、同一又は類似の商標であること明らかである。
(3)商標法第4条第1項第10号及び同第15号について
前記(1)のとおり、引用商標は、申立人等の業務に係る役務であることを表示するものとして需要者の間に広く認識されているとは認められないものである。
そうすると、本件商標と引用商標が同一又は類似の商標であるとしても、本件商標は、これに接する取引者、需要者が、申立人等の業務に係る引用商標を連想又は想起するものということはできない。
してみれば、本件商標は、商標権者がこれをその指定役務について使用しても、取引者、需要者をして引用商標を連想又は想起させることはなく、その役務が他人(申立人等)あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その役務の出所について混同を生ずるおそれはないものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同第15号に該当するものといえない。
(4)商標法第4条第1項第7号及び同第19号について
前記(1)のとおり、引用商標は、申立人等の業務に係る役務であることを表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められないものである。
そうすると、本件商標は、引用商標の周知著名性にただ乗りする等、不正の目的をもって使用をするものということはできない。
また、仮に、申立人の主張のとおり、商標権者は、申立人が経営する「景徳鎮」の元従業員が経営に関与する法人であり、かつ、商標権者が「景徳鎮 新館」の経営主体と実質的に同一であるとしても、商標権者に係る当該店舗名に関しては、「景徳鎮」の名称を要部として、本件商標の登録出願前である平成21年10月頃から使用しており、同店は、申立人の店舗の近隣において、これまで継続して併存していること、及び、申立人が経営する「景徳鎮」は、一部情報誌には「景徳鎮本店」と紹介されているとしても、申立人自身が、店舗名として「景徳鎮本店」の名称を使用している事実を確認できないこと等からすれば、両者が、近隣で飲食店を営む関係であったとしても、商標権者による本件商標の登録出願の経緯が、著しく社会的妥当性を欠くものということはできない。
その他、本件商標が公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある、又は、商標権者が不正の目的を持って本件商標を使用するものであると認めるに足りる証拠は見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同第19号に該当するものといえない。
(5)商標法第3条第1項柱書きについて
商標法第3条第1項柱書の「自己の業務に係る商品又は役務について使用をする商標」とは、少なくとも登録査定時において、現に自己の業務に係る商品又は役務に使用をしている商標、あるいは将来自己の業務に係る商品又は役務に使用する意思のある商標と解される(知財高裁 平成24(行ケ)第10019号)。
そして、商標権者は、申立人が主張するように、平成21年頃から本件商標の指定役務に含まれる「四川料理等の中華料理の提供」を行っているのであるから、商標権者が本件商標を将来使用する意思があることを否定することはできない。
したがって、本件商標は、商標法第3条第1項柱書の要件を具備しないものといえない。
(6)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法3条第1項柱書、同法第4条第1項第7号、同第10号、同第15号及び同第19号のいずれにも違反してされたものとはいえないから、同法第43条の3第4項の規定により、その登録を維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
異議決定日 2016-12-22 
出願番号 商願2015-120156(T2015-120156) 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W43)
T 1 651・ 25- Y (W43)
T 1 651・ 271- Y (W43)
T 1 651・ 222- Y (W43)
T 1 651・ 18- Y (W43)
最終処分 維持 
前審関与審査官 吉田 聡一 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 山田 正樹
中束 としえ
登録日 2016-04-15 
登録番号 商標登録第5840997号(T5840997) 
権利者 株式会社輝翔
商標の称呼 ケートクチンホンテン、ケートクチン 
代理人 特許業務法人ウィルフォート国際特許事務所 
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