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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W0619
審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W0619
管理番号 1323703 
異議申立番号 異議2015-900196 
総通号数 206 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2017-02-24 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-06-17 
確定日 2016-12-19 
異議申立件数
事件の表示 登録第5750725号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5750725号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第5750725号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲のとおりの構成からなり、平成26年6月16日に立体商標として登録出願、同27年3月2日に登録査定され、第6類「金属製手すり」及び第19類「陶磁製手すり,合成樹脂製手すり,ゴム製手すり,木製手すり,石製手すり,ガラス製手すり」を指定商品として、同27年3月20日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は、本件商標の登録は取り消されるべきであるとして、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第110号証(枝番を含む。)を提出した。
1 商標法第3条第1項第3号及び同条第2項について
本件商標は、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であり、商標法第3条第1項第3号に該当する。
また、本件商標は、使用された結果、需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識できるものではなく、自他商品識別力の獲得がなされていないものであり、商標法第3条第2項に該当するに至っていない。
2 商標法第4条第1項第18号について
本件商標は、仮に商標法第3条第2項に該当するに至っていたとしても、商品の機能を確保するために不可欠な立体形状のみからなる商標であり、商標法第4条第1項第18号に該当する。

第3 本件商標に対する取消理由
当審において、商標権者に対し、平成28年7月28日付けで通知した取消理由は、要旨次のとおりである。
1 立体商標における商品等の立体的形状について
商標法は、商標登録を受けようとする商標が、立体的形状(文字、図形、記号若しくは色彩又はこれらの結合との結合を含む。)からなる場合についても、所定の要件を満たす限り、登録を受けることができる旨規定する(商標法第2条第1項、同法第5条第2項参照)。
しかしながら、以下の理由により、立体商標における商品等の形状は、通常、自他商品の識別機能を果たし得ず、商標法第3条第1項第3号に該当するものと解される。
(1)商品等の形状は、多くの場合、商品等に期待される機能をより効果的に発揮させたり、商品等の美感をより優れたものとするなどの目的で選択されるものであって、商品・役務の出所を表示し、自他商品・役務を識別する標識として用いられるものは少ないといえる。このように、商品等の製造者、供給者の観点からすれば、商品等の形状は、多くの場合、それ自体において出所表示機能ないし自他商品識別機能を有するもの、すなわち、商標としての機能を有するものとして採用するものではないといえる。また、商品等の形状を見る需要者の観点からしても、商品等の形状は、文字、図形、記号等により平面的に表示される標章とは異なり、商品の機能や美感を際立たせるために選択されたものと認識し、出所表示識別のために選択されたものとは認識しない場合が多いといえる。
そうすると、商品等の形状は、多くの場合に、商品等の機能又は美感に資することを目的として採用されるものであり、客観的に見て、そのような目的のために採用されると認められる形状は、特段の事情のない限り、商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として、同号に該当すると解するのが相当である。
(2)また、商品等の具体的形状は、商品等の機能又は美感に資することを目的として採用されるが、一方で、当該商品の用途、性質等に基づく制約の下で、通常は、ある程度の選択の幅があるといえる。しかし、同種の商品等について、機能又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものであれば、当該形状が特徴を有していたとしても、商品等の機能又は美感に資することを目的とする形状として、同号に該当するものというべきである。
けだし、商品等の機能又は美感に資することを目的とする形状は、同種の商品等に関与する者が当該形状を使用することを欲するものであるから、先に商標出願したことのみを理由として当該形状を特定の者に独占させることは、公益上の観点から適切でないからである。
(3)さらに、需要者において予測し得ないような斬新な形状の商品等であったとしても、当該形状が専ら商品等の機能向上の観点から選択されたものであるときには、商標法第4条第1項第18号の趣旨を勘案すれば、商標法第3条第1項第3号に該当するというべきである。
けだし、商品等が同種の商品等に見られない独特の形状を有する場合に、商品等の機能の観点からは発明ないし考案として、商品等の美感の観点からは意匠として、それぞれ特許法・実用新案法ないし意匠法の定める要件を備えれば、その限りにおいて独占権が付与されることがあり得るが、これらの法の保護の対象になり得る形状について、商標権によって保護を与えることは、商標権は存続期間の更新を繰り返すことにより半永久的に保有することができる点を踏まえると、商品等の形状について、特許法、意匠法等による権利の存続期間を超えて半永久的に特定の者に独占権を認める結果を生じさせることになり、自由競争の不当な制限に当たり公益に反するからである。
(4)他方、商品又は商品の包装の機能を確保するために不可欠とまでは評価されない立体的形状については、それが商品等の機能を効果的に発揮させ、商品等の美感を追求する目的により選択される形状であったとしても、商品等の出所を表示し、自他商品を識別する標識として用いられ、又は使用をされた結果、その形状が自他商品識別力を獲得した場合には、商標登録を受けることができるものとされている(商標法第3条第2項)。
以上、知財高裁平成18年(行ケ)10555号同19年6月27日判決、知財高裁平成19(行ケ)10215号同20年5月29日判決及び知財高裁平成22年(行ケ)10366号同23年4月21日判決を参照のこと。
2 本件商標の商標法第3条第1項第3号該当性について
(1)本件商標の構成
本件商標は、別掲に示すとおり、波形の構成よりなる立体商標であり、本件商標に係る指定商品「手すり」の立体的形状の一形態を表したものと認められ、本件商標の形状は申立人の提出した証拠(甲6「本件商標の審査において提出された意見書」)をも併せみれば、以下の特徴を有している。
ア 全体の構成(形状)
本体の長手方向に沿って等間隔で同一平面上において凸部と凹部による波型の同一形状が交互に出現するように、複数箇所にわたって小間隔で折り曲げを繰り返し、その凸部と凹部を形成する各々の頂部を頂点とした折り曲げ部の角度を同一の鈍角で曲率の小さな湾曲形状で形成し、かつ、該頂部の左右両辺は各々同一長として形成した長尺の手すりの立体的形状である。
イ 波形の形状
波型の同一形状は、交互に出現するように、複数箇所にわたって利用者の歩幅に合うように小間隔で折り曲げを繰り返して構成されている。
また、凸部と凹部を形成する各々の頂部は湾曲形状で構成されている。
ウ 階段や傾斜面への設置
利用者の腰近辺の位置に、その上下方向において「傾斜部」と「略水平部」とを交互に得ることができるように配置されている。
また、該「略水平部」により身体を支えることができ、階段や傾斜面での歩行を腕及び手首に負担のない角度で楽に手すりを把持することができるように配置されている。
(2)判断
本件商標の上記形状について考察すると、波形の部分の形状及び階段や傾斜面への設置は、負担がなく楽に手すりを把持するという手すりの基本的な形状であって、手すりという機能をより効果的に発揮させるものであり、小間隔で折り曲げを繰り返している部分や頂部の湾曲は手すりの輪郭の美観をより優れたものにするためのものであると認められる。
なお、本件商標における立体的形状は、一定の特徴を有するものではあるが、手すりの形状は、曲線、湾曲等他にもあり、手すりの形状において通常採用されている形状の範囲を大きく超えるものとまでは認められない。
そうすると、本件商標の立体的形状は、客観的にみれば、手すりについて、機能又は美観に資することを目的として採用されたものと認められ、また、手すりの形状として、需要者において、機能又は美観に資することを目的とする形状と予測し得る範囲のものであるから、それを超えて、上記形状の特徴をもって、当然に、商品の出所を識別する標識として認識させるものとまではいえない。
(3)小括
以上によれば、本件商標は、その指定商品について使用するときは、その商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標であるといわざるを得ず、商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものである。
3 商標法第3条第2項について
(1)本件商標は、商標法第3条第2項の要件を具備するものとして登録査定されたものではないが、上記2のとおり、本件商標が商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものであると判断するのが相当であるので、念のため、本件商標がその登録査定時において商標法第3条第2項の要件を具備するに至っていたか否かについて、以下検討する。
(2)そこで、申立人の提出した証拠(甲5,6,8,11?84,87?90,94?110)によれば、以下のことがいえる。
ア 本件の商標登録出願段階における平成26年11月7日付け意見書(出願人:(株)クネットイースト)において、【意見の内容】中、「2.本願商標が登録されるべき理由」中に、以下の記載がある。
=====
4)本願商標の周知性
本願商標は、2.1)の構成となる独特の形状をもった手すりとして長年に亘って継続的、且つ、独占的に使用してきた結果、取引者・需要者間に本願商標出願人の商品である手すりとして周知され、著名なものとなっている。「クネット」、「QUNETTO」といえば本願商標に係る特異な立体形状の手すりを想起する程に周知・著名なものとなっている。
本願商標に係る手すりは、九州から北海道に至るまで日本国全域にわたって出荷され、設置されている。その事実は、公共工事関連だけでも一覧表(甲第8号証)に示す通りである。
また、上記公共工事関連以外の個人に係る戸建住宅や集合住宅においても多数採用されているところである。
それらの一部は、本願商標登録出願人に係る2013年3月1日付パンフレット(甲第9号証)及び2014年3月1日付パンフレット(甲第10号証)にも表現されているところである。
更に、ネット情報においても「クネット」、「QUNETTO」を検索すれば本願商標出願人に係る手すり商品が多数紹介されており、また、本願商標に係る手すりの模倣品も多く見受けられるところである。
===============
同じく、「3.結論」中に、以下の記載がある。
=====
更に、本願商標に係る立体商標は、本願商標出願人に係る手すりとして長期間にわたり継続的に製造され、設置され、使用されており、広告・宣伝等により他の手すりの形状とは明確に区別し得る程度に周知となり、取引者・需要者が何人かの業務に係る手すりであることを認識することができる識別力を有するものである。
===============
イ 甲第8号証は、上記アにおける、「本願商標に係る手すりは、九州から北海道に至るまで日本国全域にわたって出荷され、設置されている。その事実は、公共工事関連だけでも一覧表(甲第8号証)に示す通りである。」の主張の証拠として提出された「主要設置一覧表【設置実績2005年?】」と題するリストであるが、その大部分は「株式会社クネット・ジャパン」による設置実績であること等から、「使用をされた結果、その形状が自他商品識別力を獲得した場合には、商標登録を受けることができる」(以下「3条2項要件」という。)ことを何ら示すものとはいえない。
ウ 本件の商標登録出願段階における平成27年1月19日付け上申書(出願人:(株)クネット)において、本願商標の周知性を示す証拠として添付された甲第11号証ないし甲第84号証は、2005年8月16日付けから2010年7月15日付けまで(甲11?83)及び2014年4月23日付け(甲84)の新聞・雑誌であり、「波形手すり」に関する記事が掲載されていることは認められるが、その大部分は「株式会社クネット・ジャパン」による設置実績であり、また、「波形手すり」は、「クネット」又は「QUNETT」の文字と共に使用されているから、本件商標(立体商標)に係る3条2項要件を具備していたことを何ら示すものとはいえない。
エ 「波形手すり」に関する申立人が所有する(共有を含む。)意匠登録が複数存在する(甲5:意匠登録第1465718号,意匠登録第1466028号,意匠登録第1479536号,意匠登録第1508359号,意匠登録第1508360号,意匠登録第1508552号,意匠登録第1518734号)。
オ 「波形手すり」は、「本件商標権者及びその商標登録出願人」以外の者において販売されていた事実がある(甲87?90,94?110)。
カ その他、本件商標がその登録査定時において商標法第3条第2項の要件を具備するに至っていたとする事実は見いだせない。
(3)以上によれば、本件の商標登録出願段階における平成26年11月7日付け意見書及び同27年1月19日付け上申書において、「本願商標は、本願商標出願人に係る手すりとして長期間にわたり継続的に製造され、設置され、使用されており、他の手すりの形状とは明確に区別し得る程度に周知となり、取引者・需要者が何人かの業務に係る手すりであることを認識することができる識別力を有するものである。」旨述べ、証拠を提出していたが、その大部分は「株式会社クネット・ジャパン」に係る証拠であって、「波形手すり」といわれる手すりの全てが商標権者及びその出願人に係るものであるとは認められないものである。また、「クネット」、「QUNETTO」と称する手すりが「波形手すり」を想起することがあるとしても、逆に「波形手すり」の形状のみから特定の者(商標権者及びその出願人)を想起し、3条2項要件を具備していたことを認定し得る証拠は見いだせない。
したがって、本件商標がその登録査定時において商標法第3条第2項の要件を具備するものであったということはできない。

第4 本件商標権者の意見
商標権者は、前記第3の取消理由に対して意見を要旨次のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第9号証を提出した。
1 商標法第3条第1項第3号について
(1)本件商標が商標法第3条第1項第3号に該当する具体的な理由として、(a)商品等の形状は、多くの場合、商品等の機能又は美感に資することを目的として採用されるものであり、そのような場合、商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標にすぎない、(b)同種の商品等について、機能又は美感上の理由により形状の選択として予測し得る範囲の商標であってはならない、(c)需要者において予測し得ないような斬新な形状の商品等であったとしても、その形状が専ら商品等の機能向上の観点から選択された商標であってはならない、と要約することのできる内容を指摘された。
しかしながら、商標法第3条第1項第3号には「商品等において、機能又は美感上の理由のみによって決定された形状」を排除するとする具体的な規定はなく、上記指摘事項は当該条文の「商品の用途あるいは形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標である」に該当するものの一つの解釈を示されたものと考える。
本件商標の特徴は、波形を小間隔で上下方向に繰り返すことによる波形手すりとなる所定の形状を有するものであり、従来の手すりは直線のものが一般的で、曲線状のものは審査の段階で示されたような大きな曲率をもって手すり全体が湾曲形状を有するものである。本件商標のような波形を繰り返す曲線形状とした波形手すりは存在しなかった。
本件の商標登録出願人は、この形状を持つ波形手すりについて商標権、特許権及び意匠権の権利者であり、多くの地域で広告し、製造・販売し、設置している。それら波形手すりは、商標登録第4572231号「クネット」(乙1)、商標登録第4802562号「QUNETTO」(乙2)、商標登録第4997460号「クネットユービック/QUNETTO UBIQ」(乙3)、商標登録第5646118号「図+QUNETTO」(乙4)等の商標登録に係る商品として取引者、需要者に広く知られているものである。
したがって、本件商標の形状は、従来の手すりとは一線を画し、上記登録商標及び他の知財の権利を得ることによって本件商標と手すりとが結び付き、自他商品識別力を十分に発揮しているものである。
上記登録商標及び下記する特許権及び意匠権は、株式会社クネット・ジャパン及び国税局から正式な手続により譲り受け又は収得(本件の商標登録出願人の出願に係る権利もある)した権利である。
(2)登録第4210761号(指定商品:おもちゃ)、登録第4454125号(指定商品:香水、その他の化粧品)、登録第4460057号(指定商品:貴金属、記念カップ、その他)、登録第4560548号(指定商品:ギター用調子笛)、登録第4639603号(指定商品:コンクリートブロック)、登録第4667483号(指定商品:医療用器械器具)、登録第4664175号(指定商品:身体用防臭剤、空気清浄剤、芳香剤、その他)、登録第4925446号(指定商品:調味料又は香辛料用挽き器(電気式のものを除く))、登録第5103270号(指定商品:スポーツカー)、登録第5225619号(指定商品:コーラ飲料)、登録第5384525号(指定商品:乳酸菌飲料)、登録第5674666号(指定商品:二輪自動車)に係る立体商標は、いずれもその指定商品の形状を表わしており、当該形状が、その商品が通常有する形状とは異なって特殊な形状を有している(又は/及び周知性による)ところから自他商品識別力が認められ立体商標として商標登録されている。
したがって、本件商標も、一般的な手すりにはない自他商品識別力のある形態的な特徴を有しているのであり、当該理由をもって拒絶することは不当である。
(3)上記登録第4925446号に関する審判2003-8222の審決では、「商品の形状自体は、その商品の目的とする機能をよりよく発揮させ、あるいは、その美感を高める等の見地から選択されるものであって、本来、商品の出所表示を目的とするものではないけれども、二次的に商品の出所表示の機能を備えることもあり得べく、この場合には、商品の形状自体が、特定人の商品たることを示す表示に該当すると解すべきである。」と判断され、平成19年(行ケ)10293号事件の判決においても「商品の形状は、取引者・需要者の視覚に直接訴えるものであり、需要者は、多くの場合、まず当該商品の形状を見て商品の選択・選別を開始することは経験則上明らかであるところ、商品の製造・販売業者においては、当該商品の機能等から生ずる制約の中で、美感等の向上を図ると同時に、その採用した形状を手掛かりとして当該商品の次回以降の購入等に結び付ける自他商品識別力を有するものとするべく商品形態に創意工夫を凝らしていることもまた周知のところであるから、一概に商品の形態であるがゆえに自他商品識別力がないと断ずることは相当とはいえないものである。」と判示されている。
本件商標も、手すりとしての独特の形状から、商標登録出願人の登録商標となる「クネット」、「QUNETTO」、「クネットユービック/QUNETTOUBIQ」及び「図+QUNETTO」を付した波形手すりとして取引者、需要者の間でよく知られることにより、その形状の特徴が購入の目印となっている。
本件商標を構成する手すりの形状は、それ自体が特定の出所を表示するものとして取引者、需要者の間で広く認識されている。つまり、本件商標は、他の手すりの形状とは異なるものとして商標登録出願人たる特定の者の業務に係る商品であると認識され、取引者、需要者が手すりを購入する際の目印となっているのである。
よって、本件商標は、それ自体で取引者、需要者が手すりを購入ないしは非購入を決定する上での標識とするに十分なる特徴を有し、自他商品識別力を有するものであり、商標法第3条第1項第3号に該当するものではない。
2 商標法第3条第2項について
(1)商標法第3条第2項に関連し、その要件を具備するに至っていない具体的な理由として挙げた、前記第3の3(2)イ及び同ウの取消理由は不当である。
本件の商標登録出願人である株式会社クネット(平成26年12月18日、社名を株式会社クネットイーストから変更)は、株式会社クネット・ジャパンが所有していた商標権を含めた知財の権利を譲渡により及び国税局により差押えられていた知財の残りの権利を入札手続きにより得ることにより全ての知財の権利を得た者であり、また、株式会社クネット・ジャパンより従業員を引き継いでおり、商標登録出願人の設置実績でないとする理由にはならない。
譲渡された商標は、それが営業とともに譲渡されたものであると否とを問わず、譲渡人によってその商品を通じ蓄積された信用を化体しつつ譲受人の財産となるものであり、また譲渡以後においては譲受人の製造・販売する商品を通じ譲受人自身の信用を蓄積していくものである。
商品の品質が維持されるか否かは、営業の同一性いかんによるものではなく、商標権者の営業努力いかんによるものであるとすれば、品質保証という面よりして商標権を営業と分離して移転することを認めない理由は存在しない。
さらに、その性格の点よりしても、今日における取引社会の下においては、商標権は出所表示機能を中心とし営業と密接に結合した人格権的なものから、商品の品質保証機能を中心とし商品に対する一般消費者の信用を化体した財産権的な性格のものへと転化し、その他の財産権と同様、営業を離れて取引の対象となっている。したがって、商標権を営業と分離して自由に移転することを認めないのは、その担保価値を否定することともなり、商標権の財産権としての価値を著しく低下させるものであって、今日における経済取引の要請に逆行するものであるといえるからである。
商標権を継承した者が、その商標に伴う商品の営業権を継承することになるのは商標法旧法に規定されていたように明確なことであり、譲渡前の実績が商標権の移転とともに商標登録出願人である譲受人に引き継がれていることは明白な事実である。そして、それら登録商標と一体となった手すりとして各種知財を取得して多くの設置実績を積み重ねることにより自他識別機能を有して周知となった本件商標を他者によって周知性を得たとする判断は間違いである。
(2)前記第3の3(2)エにおいて、「波形手すり」に関して申立人が所有する(共有を含む)意匠登録が複数存在する(甲5:意匠登録第1465718号、意匠登録第1466028号、意匠登録第1479536号、意匠登録第1508359号、意匠登録第1508360号、意匠登録第1508552号、意匠登録第1518734号)。」としているが、申立人の会社設立が平成23年9月であることからも明らかなとおり、上記意匠に係る出願日は全て平成24年1月以降に係る権利であり、譲渡人及び商標登録出願人が長年の努力により本件商標を取引者、需要者に対して周知とした以降となる上記時期に至って、商標登録出願人の長年にわたって培ってきた信用力及びそれによって確立されている自他商品識別力を利用し、更に、申立人及びその関係者は波形手すりに対して「QUNETTO INTERNATIONAL CO.,LTD」「株式会社クネット・インターナショナル」なる商号を称し(甲4)、「ネオラクネット」(甲87,88)、「ラクラククネット」、「ヒカリクネット」(甲89)、「KICQUNETTO」(甲90)、「NASクネット」(甲94)、「らくらくクネット」(甲96?99)、「クネット/QUNETTO」(甲100)等の商号及び標章を使用して取引者、需要者に対し混同を生じさせる行為により本件商標と同じ又は類似した波形手すりを広告し、製造・販売し、設置しているのであり、申立人及びその関係者が不正行為を行っているにすぎない。上記意匠権は、不正行為を行うための一つの手段として利用しているにすぎない。
上記申立人に係る意匠権は、商標登録出願人の意匠権の一部を変え、また、商標登録出願人の作成したカタログに掲載したものと同一のもの或いは既に施工済となったものを権利として取得して広告に利用し、取引者、需要者を欺く手段としているにすぎない。このように本来なら権利を得ることのできない意匠権等を根拠に、他者も同じような波形手すりを販売している事実があるからとして本件商標は登録とならないとする理由は失当である。
(3)他の甲各号証について
ア 甲第1号証ないし甲第3号証は、商標登録出願人に係るものである。
イ 甲第4号証は、申立人が商標登録出願人の登録商標である「QUNETTO」、「クネット」を商号の一部に取り入れて「QUNETTO INTERNATIONAL CO.,LTD」「クネットインターナショナル」を設立した(申立人によれば平成23年9月に会社設立した)ものであり、他者たる商標登録出願人の商標等表示として需要者の間に広く認識されているものと類似のものを商号として使用して同一若しくは類似の商品等表示をし、商標登録出願人の商品又は営業と混同を生じさせる不正競争防止法に規定する不正行為を行っている事実を示しているにすぎない。
ウ 甲第6号証ないし甲第10号証は、商標登録出願人が提出した意見書及び上申書に係るものである。
エ 甲第11号証ないし甲第83号証は、株式会社クネット・ジャパンに関する記事であるとし、申立人は「需要者や取引者が『波形手すり』から想起するのは株式会社クネット・ジャパンであり」、それらの設置実績は株式会社クネット・ジャパンが広めたものであるとし、本件商標の周知性については容認している。商標登録出願人が株式会社クネット・ジャパンを継承し継続して本件商標の広告、製造・販売、設置している。なお、本件商標を周知とした者として申立人に係る特定の者の名を挙げているが、株式会社クネット・ジャパンの役員として業務に関わっていた者にすぎず、その実績を特定の個人が享受できる性質のものではない。
オ 甲第84号証は、株式会社クネット・ジャパンが以前に設置した波形手すりの記事である。
カ 甲第85号証及び甲第86号証は、株式会社クネット・ジャパンとOEM契約をした会社のカタログである。
キ 甲第87号証ないし甲第100号証(商標登録出願人に関係するものを除き)は、商標登録出願人の登録商標第4572231号「クネット」、同第4802562号「QUNETTO」そのものを使用し、あるいはそれら「クネット」、「QUNETTO」に他の文字を付加して商標登録出願人に係る登録商標を利用してその指定商品と同一又は類似となる波形手すりを広告しているものであり、甲第101号証ないし甲第110号証は本件商標の波形手すりを設置している不正行為の事実を明らかにしているにすぎない。
(4)上記のとおり、「波形手すり」に関して不正行為を行っているのは申立人及びその関係者のみであり、それ以外の他者が関与している事実はなく、そのような者達が広告し、製造・販売し、設置している商品は、その商品名に全て商標登録出願人の登録商標である「クネット」、「QUNETTO」なる商標そのもの又はその文言に他の文言を付加した標章をもって販売している事実がある。上記事実は、取引者、需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、商標登録出願人の商品又は営業と混同を生じさせる不正競争行為を行っていることを明確に示している。不正競争防止法は、商標登録の有無や商標法上の登録要件を満足するか否かも問わず不正の対象を目的としていることはいうまでもない。
このような不正行為によって本件商標が使用されている申立人及びその関係者のみに係る不正の事実をもって他者も使用している根拠として「本件商標に係る『波形手すり』の形状のみから特定のものを想起し得ない」とするのであれば、侵害者が存在してその行為を排除しきれずに同一あるいは類似した商品を広告し、製造・販売し、設置した行為が行われたことをもって当該商標には自他商品識別力がないということになり、有り得ない理由により本件商標を否定することになり違法である。
本件商標は、取消理由通知書(前記第3の1(4))で指摘のあるように「商品等の出所を表示し、自他商品を識別する標識として用いられ、又は使用をされた結果、その形状が自他商品識別力を獲得した場合には、商標登録を受けることができるものとされている」に該当するものであり、不正競争防止法の不正行為を行っている譲渡人の法人の役員として周知性に関与した者(及びその関係者)のみの行為が昨今において生じているからということを理由とし、既にそれ以前において自他商品を識別する標識としての機能を十分に得、その機能を絶えることなく継続して継承している商標登録出願人の本件商標に対する自他商品識別機能が喪失されているとすることは有り得ない。
上記侵害行為に対し、商標登録出願人は申立人及びその関係者に多くの通知書を送達し、当該侵害行為を止めるように警告している事実があるのでその一部を提出する(乙8,乙9)。これら警告書に対して一部の関係者においては侵害行為を止めているところも見受けられるが、状況の推移を確認している現状がある。
3 結論
本件商標は、上記した多くの立体商標が登録され、それらと時代背景に差異はなく、かつ、裁判所での判示を十分に考慮しても、本件商標の登録の可否を認定判断するとき、上記登録となった他の登録商標と同様の結論が導き出されるべきである。そうでなければ一つの商標法の法体系での法解釈を誤ることになり、法の下の平等を崩壊し、安定性を失うことは疑いのないところである。
また、同様案件に対しては法に基づく同一の審査基準が求められるところ、上記具体的な立体商標に係る登録商標を他の案件であるとして一蹴してしまうことは、行政庁たる特許庁としては違法である。取消理由を維持するのであれば、商標登録出願人に対して、少なくとも上記で示した登録商標との相違点を、理由を示して説明する責務がある。
本件商標は、独自に創造した立体商標で、対象とする商品において格別な特徴があり、本件の商標登録出願人に係る商品である自他識別機能を十分に具備しているものであり、商標としての機能を果たす登録要件を有している。本件商標に対しての商標法第3条第1項第3号及び同法同条第2項の規定による取消理由は、違法であり、撤回されるべきである。

第5 当審の判断
1 本件商標の商標法第3条第1項第3号該当性及び同条第2項適用の可否について
本件商標の取消理由は、前記第3のとおりであり、本件商標が商標法第3条第1項第3号に違反して登録されたものであり、かつ、同条第2項の規定の要件も具備しているものではなかったとした認定、判断は、妥当なものである。
2 商標権者の意見について
本件商標権者は、前記第3の取消理由に対して、前記第4のとおり、意見を述べているが、以下の理由により採用することができない。
(1)商標権者は、「本件商標の形状は、波形を繰り返す曲線形状を特徴とする波形手すりであって、従来の手すりとは一線を画するものであり、この形状を持つ波形手すりに係る商標権、特許権及び意匠権を得ることによって本件商標と手すりとが結び付き、自他商品識別力を十分に発揮しているものである。」旨主張している。
しかしながら、本件商標は、商品「手すり」について、その形状が従来の手すりとは一線を画するものであったとしても、商品の機能又は美観に資することを目的として採用されたものと認められるものであり、その形状の特徴をもって、当然に、商品の出所を識別する標識として認識させるものとまではいえないこと、前記第3の2認定のとおりである。
また、商標権者が2011年(平成23年)10月に一部移転により得たとする、当該形状を持つ波形手すりに係る権利として挙げる商標権、特許権及び意匠権は、(a)商標登録第4572231号、同第4802562号及び同第4997460号、(b)特許第3660292号、並びに(c)意匠登録第1112232号、同第1112778号、同第1150873号、同第1150872号、同第1150871号、同第1150870号、同第1150869号及び同第1172402号であるところ、本件商標に係る商品の形状そのものは、上記の意匠権において、また、その技術的思想は特許権において、それぞれ保護され得るべきものである。そして、上記の商標権は、その構成を、順に「クネット」の片仮名を書したもの、「QUNETTO」の欧文字を書したもの、「クネットユービック」の片仮名と「QUNETTO UBIQ」の欧文字の二段併記からなるものであるところ、その権利の範囲は、それぞれ、その商標及び指定商品により定められるものであって、該商標が使用される商品そのものの形状は包含されるものではなく、直接、意匠権又は特許権と結び付くものでもないことから、上記商標権、特許権及び意匠権との関係を理由とする本件商標の自他商品識別力があるとの主張を認めることはできない。
(2)商標権者は、立体商標として商標登録されている過去例を挙げ、「本件商標も、一般的な手すりにはない自他商品識別力のある形態的な特徴を有しているのであり、商標法第3条第1項第3号に該当するとして拒絶することは不当である。」旨主張する。
しかし、登録出願に係る商標が商標法第3条第1項第3号や同条第2項に該当するものであるか否かは、当該登録出願の査定時又は審決時において、その商標が使用される商品の取引の実情等に基づいて、個別具体的に判断されるべきものである。
したがって、商標権者がいう本件商標と同様の事例の商標が登録されているとしても、このことは本件商標の商標法第3条第1項第3号該当性の判断を左右するものではない。
(3)さらに、商標権者は、商標法第3条第2項に係る取消理由に関連し、(a)本件の商標登録出願人である株式会社クネット(平成26年12月18日、社名を株式会社クネットイーストから変更)は、株式会社クネット・ジャパンが所有していた商標権を含めた知財の権利を譲渡により及び国税局により差押えられていた知財の残りの権利を入札手続きにより得ることにより全ての知財の権利を得た者であり、譲渡前の実績が商標権の移転とともに商標登録出願人である譲受人に引き継がれていることは明白な事実であって、それら登録商標と一体となった手すりとして各種知財を取得して多くの設置実績を積み重ねることにより自他識別機能を有して周知となった本件商標を他者によって周知性を得たとする判断は間違いであり、前記第3の3(2)イ及び同ウの取消理由は不当である、また、(b)前記第3の3(2)エにおいて、「波形手すり」に関して申立人が所有する(共有を含む)意匠登録が複数存在するとしているが、申立人の会社設立が平成23年9月であることからも明らかなとおり、上記意匠に係る出願日は全て平成24年1月以降に係る権利であり、申立人及びその関係者が不正行為を行っているにすぎず、上記意匠権は、不正行為を行うための一つの手段として利用しているにすぎないから、このように本来なら権利を得ることのできない意匠権等を根拠に、他者も同じような波形手すりを販売している事実があるからとして本件商標は登録とならないとする理由は失当である、(c)甲各号証に関して、「波形手すり」に関して不正行為を行っているのは申立人及びその関係者のみであり、それ以外の他者が関与している事実はなく、そのような者達が広告し、製造・販売し、設置している商品は、その商品名に全て商標登録出願人の登録商標である「クネット」、「QUNETTO」なる商標そのもの又はその文言に他の文言を付加した標章をもって販売している事実があり、この事実は、取引者、需要者の間に広く認識されているものと同一若しくは類似の商品等表示を使用し、商標登録出願人の商品又は営業と混同を生じさせる不正競争行為を行っていることを明確に示しているものであって、このような不正行為によって本件商標が使用されている申立人及びその関係者のみに係る不正の事実をもって他者も使用している根拠として「本件商標に係る『波形手すり』の形状のみから特定のものを想起し得ない」とするのであれば、侵害者が存在してその行為を排除しきれずに同一あるいは類似した商品を広告し、製造・販売し、設置した行為が行われたことをもって当該商標には自他商品識別力がないということになり、有り得ない理由により本件商標を否定することになり違法である、(d)本件商標は、前記第3の1(4)で指摘のあるように「商品等の出所を表示し、自他商品を識別する標識として用いられ、又は使用をされた結果、その形状が自他商品識別力を獲得した場合には、商標登録を受けることができるものとされている」に該当するものであり、不正競争防止法の不正行為を行っている譲渡人の法人の役員として周知性に関与した者(及びその関係者)のみの行為が昨今において生じているからということを理由とし、既にそれ以前において自他商品を識別する標識としての機能を十分に得、その機能を絶えることなく継続して継承している商標登録出願人の本件商標に対する自他商品識別機能が喪失されているとすることは有り得ない、旨主張している。
しかしながら、本件商標が商標法第3条第2項の要件を具備するものでなかったことは前記第3の3のとおりであるところ、商標権者は、上記主張のとおり、株式会社クネット・ジャパンが所有していた全ての知財の権利を商標権者が得たこと、並びに「波形手すり」を使用している申立人及びその関係者が不正行為を行っていることを主張するのみであり、本件商標に係る登録出願の登録査定時において、本件商標が、使用をされた結果、その形状そのもの自体について需要者が何人かの業務に係る商品であることを認識することができるものになっていたことを何ら立証していない。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第3条第1項第3号に違反してされたものであり、かつ、同条第2項の要件を具備するものであったということはできないから、同法第43条の3第2項の規定に基づき、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲
本件商標







異議決定日 2016-11-07 
出願番号 商願2014-49605(T2014-49605) 
審決分類 T 1 651・ 17- Z (W0619)
T 1 651・ 13- Z (W0619)
最終処分 取消 
前審関与審査官 鈴木 斎 
特許庁審判長 今田 三男
特許庁審判官 酒井 福造
藤田 和美
登録日 2015-03-20 
登録番号 商標登録第5750725号(T5750725) 
権利者 株式会社クネット
代理人 伊藤 哲夫 
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