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審決分類 審判 全部申立て  登録を取消(申立全部取消) W30
管理番号 1322504 
異議申立番号 異議2015-900066 
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2017-01-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2015-02-24 
確定日 2016-11-07 
異議申立件数
事件の表示 登録第5719767号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5719767号商標の商標登録を取り消す。
理由 第1 本件商標
本件登録第5719767号商標(以下「本件商標」という。)は、「コロンビアのエメラルド」の文字を標準文字で表してなり、平成26年6月12日に登録出願、第30類「コロンビア共和国産のコーヒー,コロンビア共和国に由来するココア,コロンビア共和国産のコーヒー豆」を指定商品として、同年10月10日に登録査定、同年11月21日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録商標(以下、これらをまとめて「引用商標」という場合がある。)は以下のとおりであり、いずれも現に有効に存続しているものである。
1 登録第1795139号商標は、「COLOMBIA」の欧文字と、「EMERALD MOUNTAIN COFFEE」の欧文字を2段に横書きしてなり、昭和46年12月10日に登録出願、第29類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として、同60年7月29日に設定登録され、その後、指定商品については、平成19年3月14日に、第30類「コロンビア産のコーヒー」及び第32類「コロンビア産のコーヒーシロップ」とする指定商品の書換登録がされたものである。
2 登録第5302830号商標は、別掲に示したとおりの構成からなり、平成21年7月7日に登録出願、第30類「代用コーヒー,焙煎して挽いたコーヒー,コーヒー飲料,その他のコーヒー,コーヒー豆,コーヒーを使用してなるペストリー,コーヒーを使用してなるその他の菓子及びパン,コーヒーを使用してなる穀物調整品,コーヒーを使用してなるその他の穀物の加工品,コーヒー香味料(精油のものを除く。)」を指定商品として、同22年2月19日に設定登録されたものである。
3 登録第4473885号商標は、「EMERALD MOUNTAIN」の欧文字を標準文字で表してなり、平成12年1月25日に登録出願、第30類「焙煎したコーヒー豆,コーヒー豆をひいて液体状にしたものを濃縮して凍らせたコーヒー,その他のコーヒー及びココア,コーヒー豆,コーヒーゼリー,その他の菓子及びパン,コーヒーゼリーのもと,コーヒーを使用した即席菓子のもと,コーヒーシュガー」及び第32類「コーヒーシロップ,その他の清涼飲料,果実飲料,コーヒー入り乳清飲料」を指定商品として、同13年5月11日に設定登録されたものである。

第3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第7号、同項第10号、同項第11号、同項第15号及び同項第19号に該当するものであるから、本件商標について、同法第43条の2第1号により取り消されるべきものである旨申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第14号証を提出した。なお、申立人が、平成27年6月18日付けの上申書において、申立人の最高執行責任者による英文の陳述書及びその翻訳文を提出しているが、これらには書類番号が付されていないことから、これらを甲第14号証として扱うこととする。
1 商標法第4条第1項第11号について
引用商標は、「EMERALD MOUNTAIN」の英文字からなる商標であり、その指定商品には、「焙煎して挽いたコーヒー(豆),コーヒー飲料,その他のコーヒー,コーヒー豆」を含むものである。特に、引用商標が使用されるコーヒー豆は、コロンビア産の最高級の豆であることから、同国の宝石である「エメラルド」と命名されたものである。
よって、引用商標中、とくに、語頭の「EMERALD」(エメラルド)の文字及び観念は、強い識別力を発揮しているというべきである。
他方、引用商標の後半部の「MOUNTAIN」は、コーヒー豆等コーヒーの商標には多数使用され、識別力が弱いものであるから、引用商標の要部は、前半部の「EMERALD」の文字にある。
これに対して、本件商標は、「コロンビアのエメラルド」の文字からなり、「コロンビア共和国産のコーヒー,コロンビア共和国産のコーヒー豆」等を指定商品とするものであり、「エメラルド」(宝石)の観念を共通にし、かつ、両商標は、その指定商品についても抵触する。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する。
2 商標法第4条第1項第10号及び同項第15号について
引用商標「EMERALD MOUNTAIN」(エメラルドマウンテン)とは、申立人の厳しい品質検査により、コロンビア産コーヒーの全生産量のトップ1パーセントの豆だけに使用される商標である。
我が国では、1970年の万国博覧会において初めて紹介され、その後、1989年より、最高品質のコロンビア産コーヒー(豆)として、販売されてきたものである。
また、1994年より、同コーヒー豆を使用した「GEORGIA EMERALD MOUNTAIN BLEND」が、販売され、当該商品は、缶コーヒーの市場で、トップクラスの売上高を維持している。このような、販売開始から、25年以上にも及ぶ、商品の販売、販売促進活動及び引用商標の使用によって、本件商標の登録出願日前より、引用商標は、コロンビア産のコーヒー豆及びコーヒーについて、我が国において、周知・著名なものとなっている。
引用商標は、コロンビアの最高級のコーヒー豆として、宝石でいえば、同国の「エメラルド」に該当するものとして(一種の比喩として)、命名されたものである。当該事実は、我が国においても広く紹介されており、引用商標の要部は、その語頭部の「EMERALD」(エメラルド)にあることは明らかというべきである。
これに対して、本件商標は、「コロンビアのエメラルド」の標準文字からなる商標であり、その指定商品に使用されれば、本件商標の要部も、後半部の「エメラルド」にあると容易に認識できるものである。
よって、本件商標は、引用商標と、誤認混同を生じさせるおそれがあり、商標法第4条第1項第10号ないし同項第15号に該当する。
3 商標法第4条第1項第7号及び同項第19号について
引用商標は、販売開始から、25年以上にも及ぶ、商品の販売、販売促進活動及び同商標の使用によって、その指定商品である「コーヒー豆(特にコロンビア産のもの)」の商標として、本件商標の登録出願日前より、我が国において、周知・著名なものとなっている。これに対して、本件商標は、このような引用商標の語頭の要部、「エメラルド」からなるものであり、共に宝石エメラルドを観念させるものである。
引用商標は、申立人の厳しい品質検査により、コロンビアコーヒーの全生産量のトップ1パーセントの豆だけに使用される商標であって、これと実質同一の「エメラルド」の文字からなる本件商標を、申立人に無断で、登録し使用しようとする行為は、引用商標の信用を不当にフリーライドしようとするものであることは明らかである。また、品質の劣ったコーヒー豆に本件商標が使用されれば、引用商標に化体した業務上の信用を害されるおそれがあり、商品の国際的取引秩序を害し、国際信義、ひいては公序良俗に反するものである。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第7号及び同項第19号に該当する。

第4 当審における取消理由
当審において、平成28年3月31日付けで、本件商標権者に対し通知した取消理由の内容は、要旨以下のとおりである。
1 申立人の使用に係る商標について
この取消理由通知において引用する商標は、申立人が、「コロンビア共和国(以下「コロンビア」という。)産のコーヒー豆」に使用する商標であって、「EMERALD MOUNTAIN」の欧文字を横書きしてなる商標及び「エメラルドマウンテン」の片仮名を横書きしてなる商標(以下、これらをまとめて「使用商標」という場合がある。)である。
2 本件商標の取消理由
(1)申立人の主張及び提出された証拠及び職権調査によれば、以下の事実が認められる。
ア コロンビア及び申立人について
(ア)申立人の東京事務局が作成した「ありがとう50周年」の表題の記念誌には、「1927年に設立されたコロンビアコーヒー生産者連合会(FNC)は民主的で活動的な組織として、世界で有数の規模を誇る農業関連NGOであり、コーヒー輸出団体でもあります。」の記載がある(甲5)。
(イ)美味しい珈琲BOOK」には、「コーヒー生産地ガイド」として、「Colombia コロンビア」の見出しのもと、「生産量は世界第三位小規模農園がつくる良質なコーヒー」及び「ブラジル、ベトナムに次いで世界第三位の生産量を誇るコロンビア。...コロンビア国立コーヒー生産者連合会(FNC)がコーヒーの生産や流通を管理し、品質や生産環境の向上に努めていて、スペシャリティコーヒーへの取り組みも積極的に行われています。」の記載がある(甲7)。
(ウ)「珈琲の教科書」(2010年4月25日 初版発行)には、「コーヒーの産地」として、「世界第3位の生産量は高地の小規模農家が担う コロンビア」の見出しのもと、「コロンビアはブラジル、ベトナムに次いで世界で3番目にコーヒーの生産量の多い国で...コーヒーはコロンビアにおける重要な産業である。」の記載がある(甲7)。
(エ)「カラーブックス コーヒー事典」(平成6年12月31日 発行)には、「FNC」の項に「Federacion Nacional de Cafeteros de Colombia(S)の略。コロンビア国立コーヒー生産者連合。...コロンビア・コーヒーに関する生産、研究、価格と市場確保、生産者保護などを目的とする半官半民の機関」の記載がある(甲7)。
(オ)「珈琲の大事典」(2011年9月20日発行)には、「コロンビア」の見出しのもと、「FNCが管理する高品質のコーヒー...ブラジル、ベトナムに次ぐ、世界第3位の生産量を誇っています。コロンビアのコーヒー生産を支えるのがコロンビア国立コーヒー生産者連合会(FNC)です。コーヒーの生産から流通までを管理し、スペシャリティコーヒーへの取り組みも積極的に行っています。」の記載がある(甲7)。
(カ)「知れば知るほどおいしく飲めるコーヒー事典」には、「コロンビア Colombia」の見出しのもと、「コロンビアは、ブラジル、ベトナムに次いで世界3位のコーヒー生産国として知られています」の記載がある(甲8)。
(キ)小括
上記(ア)ないし(カ)によれば、コロンビアは、世界第3位の生産量を誇るコーヒー豆の生産地であり、申立人は、1927年にコーヒー生産者を代表する組織として設立された、コロンビアにおいて、コーヒー豆の生産や流通を管理し、品質や生産環境の向上に努めている農業関連の非政府組織(NGO)であるということができる。
イ 商品「コロンビア産コーヒー豆」及び「コロンビア産のコーヒー」についての使用商標の周知・著名性について
(ア)申立人の東京事務局が作成した「ありがとう50周年」の表題の記念誌の内容は、以下のとおりである。
a 「1970’s コロンビアが初めて万博博覧会に参加しエメラルドマウンテンを紹介。」の見出しのもと、「1970年にはFNCの支援と働きかけにより、コロンビアは初めて大阪で開催された万国博覧会に参加しました。万博の期間中にFNCはエメラルドマウンテンコーヒーの販売を始めました。」の記載がある。
b 「プレミアムエメラルドマウンテンコーヒーのキャンペーン開始。」の見出しのもと、「1989年の夏、FNC東京事務局は美家古食品株式会社(現キャピタル株式会社)の協力によって、プレミアムエメラルドマウンテンコーヒー(Premium Emerald Mountain coffee)を発売しました。...エメラルドマウンテンは高品質なコロンビアコーヒーとして急速に認識されるようになりました。」の記載とともに、「EMERALD MOUNTAIN」の文字が表示された商品の写真が掲載されている。
c 「1990年代のコロンビアコーヒー製品」の見出しのもと、「キャピタル株式会社」として「EMERALD MOUNTAIN」の文字が表示された商品の写真が掲載されている。
d 「1994年 GEORGIA エメラルドマウンテンブレンド登場。」の見出しのもと、「プレミアムローストコーヒーとしてのエメラルドマウンテンの商品化の成功後、1994年に日本コカ・コーラ株式会社と三菱商事株式会社の協力のもと、『GEORGIAエメラルドマウンテンブレンド』缶コーヒーが発売されました。本商品の主要な原料としてFNCのエメラルドマウンテンが使用されており、FNCはライセンス契約を通して同商標の利用を許可しています。」の記載とともに、「EMERALD MOUNTAIN BLEND」の文字が表示されたコーヒー飲料の写真が掲載されている(甲5)。
(イ)「GEORGIA」の表示がある缶コーヒーの缶には、「EMERALD MOUNTAIN」の文字が表示されている。
また、「CAPITAL」の表示がある缶入りのコーヒーの缶には、「EMERALD MOUNTAIN」の文字が表示され、その裏面には「原材料名;コーヒー豆(生豆生産国名:コロンビア)」と表示されている(甲10)。
(ウ)知れば知るほどおいしく飲めるコーヒー事典」には、「コロンビア Colombia」の見出しのもと、「標高約1600メートルで栽培され、アンデスの清水で精製されたのち、カップテイスティングによって厳選されたエメラルドマウンテンは、最高品質とされています。」の記載がある。
また、「キャピタルコーヒー」の見出しのもと、「エメラルドマウンテンコーヒー 1989年にキャピタルが日本で初めて輸入を開始したコロンビア産高品質豆エメラルドマウンテン。ブランド名を同国が誇る宝石にちなんだこの豆は、総生産量の1%しか認定されない希少品です。」の記載とともに、「EMERALD MOUNTAIN」の文字が表示された商品の写真が掲載されている(甲8)。
(エ)「この一冊ですべてがわかる珈琲事典」(2009年4月15日 発行)には、「エメラルドマウンテン/Emerald Mountain」の見出しのもと、「平均的なクォリティの高さで知られるコロンビアのコーヒーの中でも、厳選された豆のみを使用したプレミアムコーヒー。標高約1600mのアンデス高地で栽培され、実は一粒ずつ手摘みされる。...幾度ものカップテストで認められたものだけが、コロンビア名産の宝石にちなんだエメラルドマウンテンの名を冠される。出荷も特別な麻袋に収められ、リーファーコンテナで輸出される。」の記載がある(甲9)。
(オ)「珈琲の事典」(発行 1995年12月20日)には、「エメラルドマウンテンブレンド」の見出しのもと、「コロンビア生産者連合会公認豆使用」の記載とともに、「EMERALD MOUNTAIN」の文字が表示された商品の写真が掲載されている。
また、「エメラルドマウンテンピュアテイスト」の見出しのもと、「コロンビア国立コーヒー生産者連合会お墨付き」の記載とともに、「EMERALD MOUNTAIN」の文字が表示された商品の写真が掲載されている(甲12)。
(カ)朝日新聞、読売新聞等の全国紙において、「エメラルドマウンテン」が紹介されており、例えば、朝日新聞(2012年9月30日)には、「まずは一杯のコーヒー」の見出しのもと、朝日新聞一部の会員に「味わいたいコーヒーの銘柄」をアンケートした結果(回答数2211名)、「エメラルドマウンテン」は、「ブルーマウンテンNo.1」、「キリマンジャロAA」に続き、第3位として記載され、また、読売新聞(1991年10月31日)には、「[選ぶなら]プレミアム・コーヒー 希少価値で値がきまる」の見出しのもと、「日本ほどたくさん高級銘柄のコーヒー(プレミアム・コーヒー)が飲まれている国はないようだ。...『コロンビア』でも、高級種に『エメラルドマウンテン』『クリストバル』という名を付け、日本向けだけに輸出している。」の記載がある(甲12)。
(キ)インターネットにおいては、以下のような記載がある(下記aないしiは、全て甲13)。
a 「コーヒー豆の銘柄一覧 産地や香味の特徴|コーヒー豆のおすすめと選び方」のウェブサイトにおいて、2013年10月8日の日付とともに、「コーヒー豆のおすすめと選び方 コーヒー豆の銘柄一覧 産地や香味の特徴」の見出しのもと、「・コロンビア エメラルドマウンテン 標高1600mのアンデス高地で栽培され、厳しいテストで認められたものだけしかこの名はつけられない。全てのクオリティが高く、バランスのとれたコーヒー豆。」の記載がある。
b 「珈琲豆知識?産地銘柄のいろいろ?|コーヒー豆(生豆)の秒速焙煎機CRR」のウェブサイトにおいて、「産地、銘柄いろいろ」の見出しのもと、「コロンビア」の項に「エメラルドマウンテン:標高1,600mのアンデス高地で栽培、手摘みされた選りすぐりのプレミアムコーヒー。甘い香りと深いコク、酸味、苦味のバランスがよく、コロンビア名産の宝石エメラルドにちなみ、この名が冠された。」の記載がある。
c 「【コーヒー豆の種類と銘柄】ーコーヒー気分」のウェブサイトにおいて、「高級品とされる銘柄」の見出しのもと、「エメラルドマウンテン エメラルドマウンテンは、コロンビアのアンデス山脈で作られるコーヒーです。甘い香りと深いコク、さらに甘さを兼ね備えた最高級品とされています。」の記載がある。
d 「コーヒー豆の銘柄」のウェブサイトにおいて、「【エメラルドマウンテン】原産地:コロンビア コロンビア特有の甘い香りと深いコクと確かな甘味を兼ね備えた最高級ウォッシュドアラビカコーヒー。」の記載がある。
e 「コーヒー豆の種類」のウェブサイトにおいて、「コーヒー豆の種類」の見出しのもと「○コロンビア エメラルドマウンテン(原産地:コロンビア)酸味と甘味が中心も味わい。...農園が異なっても上級品になれば、どれも素晴らしい味わいを持っています。なのにそれらの上に君臨する。それがエメラルドマウンテン。...比類なき深い味わいと香りを送り出すため、加工は厳格に管理され、コロンビア国立コーヒー生産者連合会の鑑定士による品質検査に合格したものだけが初めてエメラルドマウンテンとして認定され、低温コンテナ船で出荷されます。」の記載がある。
f 「コーヒー豆の味や特徴を銘柄別に比較|コーヒー豆 比較&解説レビュー」のウェブサイトにおいて、2013年12月14日の日付とともに、「コーヒー豆の味や特徴を銘柄別に比較」の見出しのもと「コロンビア エメラルドマウンテン 標高1600mのアンデス高地で栽培された高品質コーヒー豆で、香味のバランスが素晴らしい。」の記載がある。
g 「コーヒー豆のご紹介」のウェブサイトにおいて、「苦味、酸味、甘味、バランスのとれた味わい」の見出しのもと、「銘柄」の項目に「コロンビア/エメラルドマウンテン」、その「コメント」として「コーヒーの『コク』を体験したいという方、まずはこの銘柄の味を基準にしてください」の記載がある。
h 「ストレート|coffeeリスト|千葉・幕張コーヒー豆通販・豆問屋|エトナコーヒー」のウェブサイトにおいて、「◆エメラルドマウンテン コロンビア、アンデス高原(1700?2000m)で育まれ、アンデスの清らかな水で洗われ地域限定で栽培されています。」の記載がある。
i 「自家焙煎珈琲豆蔵 コーヒー価格一覧表 長野佐久軽井沢」のウェブサイトにおいて、「珈琲の銘柄」の項目に「コロンビア エメラルドマウンテン」、その「特徴」の項目に「豊かな香りと酸味と苦味の絶妙なバランスが特徴。コロンビアコーヒーの最高峰。ハイローストからフルシティローストまでローストを選ばず最高のコーヒーです。」の記載がある。
(ク)職権調査によれば、以下の新聞記事情報がある。
a 「コーヒー・紅茶・クリーム特集:コーヒー各社の動向=アートコーヒー」の見出しのもと、「●FNC東京事務局50周年に連動しキャンペーン アートコーヒーは、徹底した鮮度管理によるカップクオリティーを追求した“こだわり”のコーヒー製品を提供することで、競合とは違った家庭用での独自路線を歩んでいる。...同社が展開する今秋冬の施策として目玉なのが、コロンビアコーヒー生産者連合会(FNC)東京事務局設立50周年記念『コロンビアコーヒーフェア・Wプレゼントキャンペーン』だ。これは、FNC東京事務局の設立50周年を記念して実施する。同社が良質のコロンビアコーヒーの中からFNCによって認定されたコーヒー『エメラルドマウンテン』など、コロンビア産コーヒーを取り扱ってきた歴史があることから実現した。」の記載がある(日本食糧新聞/2012年9月3日)。
b 「コロンビア国立コーヒー生産者連合、16日から『バカップ展』開催」の見出しのもと、「コロンビア国立コーヒー生産者連合会(FNC、東京事務局=東京都品川区)は3月16日から4月1日の間、FNC創立80周年・東京事務局設立45周年を記念して『バカップ展』(VA Cap展)を開催する。カフェ全16店舗で、エメラルドマウンテン(EM)を注文した消費者にオリジナルグッズをプレゼントする。イベントを通じて、100%コロンビア産コーヒーの中でも最高品質のEMを訴求していく。」の記載がある(日本食糧新聞/2007年3月5日)。
c 「コーヒー・紅茶・クリーム・ココア特集:コロンビア国立コーヒー生産者連合会」の見出しのもと、「外食産業コーヒー市場からの流れで、家庭用コーヒー市場にも『産地』ブランドコーヒーが人気となっている。『エメラルドマウンテン』ブランドを日本で展開しているコロンビア国立コーヒー生産者連合会(FNC、東京事務局=東京都品川区)は今年度、日本市場だけのプロモーション予算300万ドルを計画し『エメラルドマウンテンコーヒー』に加え、コロンビアコーヒーの認知向上に努めている。ルイス・ゴメス東京事務局長によると、今年度は『エメラルドマウンテンコーヒーの年』と位置付け、積極的な活動を行っている。3月に開催されたフーデックスへの出展を皮切りに、帝国ホテルでの販促策、日本スペシャルティコーヒー協会主催の展示会へ参加してきた。」の記載がある(日本食糧新聞/2006年9月1日)。
d 「コロンビア国立コーヒー生産者連合会、07年対日輸出180万袋へ」の見出しのもと、「コロンビア国立コーヒー生産者連合会(FNC、東京事務局=東京都品川区)のガブリエル・シルバCEOはコロンビアコーヒーの普及・啓蒙活動として来日し、7日に東京・帝国ホテル『将来性の高い日本市場に向けて販促費300万ドルを費やし、輸出量180万袋を目指す』と業界に関係強化を要望した。...今年度は日本市場だけのプロモーション予算300万ドルを計画し、エメラルドマウンテンブランドなどコロンビアコーヒーの認知向上に努める。」の記載がある(日本食糧新聞/2006年4月17日)。
e 「国際食品・飲料展見のどころ コロンビア=トロピカルフルーツのジュースも」の見出しのもと、「コロンビアは、日本へのコーヒー輸出ではブラジルに次ぐ輸出国。...コーヒー生豆輸出国として知られており、日本へのコーヒー輸出はブラジルに次ぐ輸出国で、エメラルドマウンテン・ブランドは消費者にも浸透している。」の記載がある(日本食糧新聞/1997年3月7日)。
(ケ)上記(ア)ないし(ク)によれば、「EMERALD MOUNTAIN」(エメラルドマウンテン)は、コロンビアの高地で栽培され、厳選された最高品質のコーヒー豆に使用されている商標であり、コロンビアの名産品である宝石の「エメラルド」に由来するものである。
そして、「EMERALD MOUNTAIN」(エメラルドマウンテン)を付したコーヒー豆、及びこれを原料とするコーヒーは、我が国において、1970年に大阪で開催された万国博覧会で初めて販売され、その後、1989年に輸入が開始され、申立人の東京事務局によるプロモーション活動等によって広く知られるようになり、遅くとも、本件商標の登録出願時には、我が国において、周知・著名といえるに至っており、その周知性は、登録査定時にも継続していたものといえる。
ウ 小括
上記ア及びイの事実を総合すると、コロンビアは、世界的なコーヒー豆の生産地として広く知られているところ、使用商標は、コロンビア産のコーヒー豆の生産から流通までを管理する農業関連NGOである申立人の業務に係る商品「コロンビア産のコーヒー豆」を表す商標として、本件商標の登録出願時及び登録査定時には既に我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたということができる。
そして、使用商標の周知性は、「コロンビア産のコーヒー豆」にとどまらず、「コーヒー」の一般消費者をも含む取引者、需要者にも及んでいるといえる。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性について
ア 本件商標と使用商標の混同のおそれ
(ア)本件商標は、前記第1のとおり「コロンビアのエメラルド」の片仮名からなるところ、その構成中の前半部の「コロンビアの」の文字部分は、その指定商品の産地である国名を表すものであり、本件商標をその指定商品について使用するときは、「コロンビア産のエメラルドというコーヒー」と認識されるといえるものである。
(イ)他方、使用商標は、「EMERALD MOUNTAIN」及び「エメラルドマウンテン」の文字からなるものであるところ、上記1のとおり、「コロンビア産のコーヒー豆及びコーヒー」を表示するものとして、周知・著名といえるものであるから、取引者、需要者をして、申立人の業務に係る「コロンビア産のコーヒー豆及びコーヒーのブランドであるエメラルドマウンテンというコーヒー」と認識されるものである。
そして、その産地が山合いの高地であって、それが「MOUNTAIN」(マウンテン)に通じるものであるから、看者に強い印象を与えるのは、「EMERALD MOUNTAIN」の中でも、「EMERALD」の部分といえる。
(ウ)そうとすれば、本件商標と使用商標とは、コーヒー豆の産地として周知・著名な「コロンビア」に係る点で共通するもので、しかも、看者に強い印象を与える「EMERALD(エメラルド)」の文字部分も共通にするものであるから、いずれも、コロンビア産の「EMERALD(エメラルド)」の文字を有するコーヒーであると認識されるものである。
したがって、本件商標は、観念において、使用商標を想起させ得るものであり、かつ、本件商標と使用商標中の「エメラルドマウンテン」とは、その外観においても近似した印象を与えるものである。
イ 本件の指定商品と使用商標に係る商品の類似性
本件の指定商品「コロンビア共和国産のコーヒー,コロンビア共和国に由来するココア,コロンビア共和国産のコーヒー豆」は、使用商標に係る商品「コロンビア産のコーヒー豆及びコーヒー」とは、その生産者、販売場所、原材料、需要者等を共通にする類似性が極めて高い商品である。
ウ まとめ
上記ア及びイのとおり、使用商標は、「コロンビア産のコーヒー豆及びコーヒー」に使用され、周知・著名であると認められるものであって、本件商標は、観念において、使用商標を想起させ得るものであり、かつ、本件商標と使用商標中の「エメラルドマウンテン」とは、その外観においても近似した印象を与えるものである。
そして、本件の指定商品と使用商品に係る商品との類似性は極めて高いものであるから、本件商標をその指定商品に使用するときは、申立人の業務に係るコロンビア産のコーヒー豆に使用して広く知られている使用商標を想起させ得るものである。
そうとすれば、本件商標は、その指定商品に使用された場合、取引者、需要者をして、使用商標を連想、想起するものであり、その商品が申立人又は申立人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように誤認し、その出所について混同を生じるおそれがあるというべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。

第5 本件商標権者の意見
1 本件商標の使用について
本件商標権者は、京都市に本社を置きコーヒーの小売及びコーヒー喫茶などを行うチェーン店であり、創業は、古く1940年に現本店所在地において海外産コーヒーの卸売を開始したことに始まり、1946年にはコーヒーショップを開業し、ファッション雑誌やグルメ雑誌などにも数多く紹介されている京都屈指のコーヒー店であるところ、「コロンビアのエメラルド」の販売は1979年3月から開始している(乙2)。
一方、申立人の使用商標は、本件取消理由通知書にも記載されたとおり、1970年の万国博覧会において我が国に初めて紹介されたものであるとしても、実際に販売が開始されたのは1990年代であり、本件商標の使用開始より遥か後日のことである。さらに、使用商標が広く使用されるに至ったのは1994年に缶コーヒー「GEORGIAエメラルドマウンテンブレンド」が発売されて以後である。
いずれにしても、両商標は、30年近くの長きに亘って、併存し続けており、少なくとも本件商標権者は本件商標と使用商標とが誤認混同を生じたという例を知らず、このような事情であるにも拘わらず、両商標の間に誤認混同のおそれがあるとは到底理解し難いものである。
2 両商標の使用の事実について
前述のとおり、使用商標は、過去から現在に至るまで、広く使用されているのは液体状である缶コーヒー「GEORGIAエメラルドマウンテンブレンド」であるが、当該商品は自動販売機やコンビニエンスストアーなどで120円前後の価格で手軽に販売されているものである。
一方、本件商標は、店舗や百貨店、インターネットなどを通じて豆や挽きの形状で2500円(400g入り)程度の価格で販売される中で認知されたものであり、両商標は、全く異なる使用事情の下にある(乙3)。
また、使用商標のコーヒーはエメラルドマウンテンと呼ばれるコーヒー豆の一品種のみからなるもの(シングルコーヒー)であるのに対し、本件商標が付されたコーヒーは主にコロンビアのコーヒー豆を使用しているが、これに本件商標権者が独自に開発した配合で他の産地のコーヒー豆をブレンドしたもの(ブレンドコーヒー)であり、当該ブレンドコーヒーである「コロンビアのエメラルド」は、長年、需要者、取引者の間で高い評価を得て、「エメラルドマウンテン」とは明確に区別されて流通しているものである。
3 看者の理解について
使用商標について、当該コーヒー豆の産地が山合いの高地であって「MOUNTAIN」(マウンテン)に通じるものであるから、看者に強い印象を与えるのは「EMERALD」の部分といえるとした理解は無理がある。
そして、このような理解が現実であるとすれば、使用商標は「EMERALD」と略称されることもあるはずだが、そのような例は聞いたことが無く、「GEORGIAエメラルドマウンテンブレンド」の略称として、「エメマン」や「エメマン豆」が使用されている(乙17)。
さらに、本件商標の理解についても、原則は本件商標自体である「コロンビアのエメラルド」として理解すべきであって、「南米北西部の共和国にあるエメラルド」や「当該共和国産のエメラルド」を意味し、これらは宝石であって本件指定商品のコーヒーなどとは何の関係も無い。
かかる理解は単に審査の類否判断におけるものだけではなく、仮に前記のような使用商標の事情があるとしても、本件指定商品の需要者、取引者にとっても同様であり、「コロンビアのエメラルド」を「コロンビア産のエメラルドというコーヒー」とする理解には余りに無理がある。
加えて、コロンビアがコーヒー豆の産地として有名であることに異論はないが、それだけにコロンビア産のコーヒーには申立人のものを含め多数の品種が存在する中で、単に「コロンビア」及び「エメラルド」の文字部分が共通にするというだけで、観念において使用商標を想起させ、外観においても近似した印象を与えるというのは現実の取引を超越した判断といわざるを得ない。
4 本件商標権者と申立人との関係について
申立人であるFNCと本件商標権者とは従前より、また現在においても取引関係にあり、本件商標権者は使用商標の商品「エメラルドマウンテン」についてもその内容を熟知しており、さらに本件商標権者自身もFNCから商社・問屋を通じて供給される「エメラルドマウンテンブレンド」を近時発売したこともある(乙4)。
このように、本件商標権者は、両商標が誤認混同を起こすことは無いという認識の下にこれら商品を販売し、さらに現実にそのような事態が発生したことも無い。
両商標の誤認混同のおそれについては、単に机上の理屈ではなく、このような現実の取引事実を基に、認定されなければならないものである。
5 むすび
以上のとおり、本件商標と使用商標とは、経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように誤認し、その出所について混同を生ずるおそれはないものであって、商標法第4条第1項第15号に該当するものではない。

第6 当審の判断
1 商標法第4条第1項第15号該当性について
本件商標についてした前記第4の取消理由は、妥当なものであって、本件商標は、その指定商品について、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものというのが相当である。
2 本件商標権者の意見について
本件商標権者は、「本件商標は、本件商標自体である『コロンビアのエメラルド』として理解すべきであって、『南米北西部の共和国にあるエメラルド』や『当該共和国産のエメラルド』を意味し、これらは宝石であり、本件指定商品のコーヒーなどとは何の関係も無く、本件商標『コロンビアのエメラルド』を『コロンビア産のエメラルドというコーヒー』とするには無理がある。また、コロンビア産のコーヒーに多数の品種が存在する中で、単に『コロンビア』及び『エメラルド』の文字部分を共通にするというだけで、観念において使用商標を想起させ、外観においても近似した印象を与えるというのは現実の取引を超越した判断といわざるを得ない」旨主張する。
しかしながら、上記第4に記載のとおり、コロンビアは、世界的なコーヒー豆の生産地として広く知られており、コーヒー豆は、コロンビアにおける重要な産業といえるところ、使用商標は、1927年にコーヒー生産者を代表する組織として設立された、コロンビアにおいて、コーヒー豆の生産や流通を管理し、品質や生産環境の向上に努めている農業関連の非政府組織(NGO)である申立人の業務に係る商品「コロンビア産のコーヒー豆」を表す商標として、本件商標の登録出願時及び登録査定時に、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたということができるものである。そして、使用商標の周知性は、「コロンビア産のコーヒー豆」にとどまらず、「コーヒー」を含む飲料の一般消費者にも及んでいるといえる。
そうすると、コーヒー豆及びコーヒー等の飲料において、「コロンビア」及び「エメラルド」といえば、取引者、需要者をして、申立人の業務に係る「EMERALD MOUNTAIN」(エメラルドマウンテン)が容易に想起されるというべきである。
他方、本件商標は、「コロンビアのエメラルド」の文字からなり、「コロンビア共和国産のコーヒー,コロンビア共和国に由来するココア,コロンビア共和国産のコーヒー豆」を指定商品とするものであるから、本件商標をその指定商品に使用するときは、これに接する取引者、需要者をして、「コロンビア産のエメラルドというコーヒー、ココア及びコーヒー豆」と認識されるといえるものである。
してみれば、本件商標は、その指定商品に使用された場合、取引者、需要
者をして、「EMERALD MOUNTAIN」(エメラルドマウンテン)を連想、想起させるものであり、その商品が申立人又は申立人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように誤認し、その出所について混同を生じるおそれがあるというべきである。
よって、本件商標権者の主張は、採用することができない。
3 まとめ
以上のとおり、本件商標は、その指定商品について、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものであるから、商標法第43条の3第2項により、その登録を取り消すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲(登録第5302830号商標)



(色彩については原本参照)

異議決定日 2016-09-29 
出願番号 商願2014-48323(T2014-48323) 
審決分類 T 1 651・ 271- Z (W30)
最終処分 取消  
前審関与審査官 早川 真規子 
特許庁審判長 青木 博文
特許庁審判官 田中 亨子
中束 としえ
登録日 2014-11-21 
登録番号 商標登録第5719767号(T5719767) 
権利者 株式会社イノダコーヒ
商標の称呼 コロンビアノエメラルド、エメラルド 
代理人 正林 真之 
代理人 東谷 幸浩 
代理人 特許業務法人みのり特許事務所 

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