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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W28 審判 全部申立て 登録を維持 W28 審判 全部申立て 登録を維持 W28 審判 全部申立て 登録を維持 W28 |
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管理番号 | 1322492 |
異議申立番号 | 異議2016-900115 |
総通号数 | 205 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2017-01-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-05-09 |
確定日 | 2016-11-04 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第5825387号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第5825387号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5825387号商標(以下「本件商標」という。)は,「MD3 Milled」の文字を標準文字で表してなり,平成27年8月4日に登録出願,第28類「運動用具(登山用・サーフィン用・水上スキー用・スキューバダイビング用のものを除く。)」を指定商品として,同28年1月7日に登録査定され,同年2月12日に設定登録されたものである。 第2 登録異議の申立ての理由 登録異議申立人(以下「申立人」という。)は,本件商標は商標法第4条第1項第11号及び同項第19号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により取り消されるべきものであるとして,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第8号証(枝番号を含む。)を提出した。 1 商標法第4条第1項第11号について (1)本件商標 本件商標は,「MD3 Milled」の文字を標準文字で表してなるものであり,その構成文字全体に相応して「エムデイスリーミルド」の称呼を生ずるものである。しかしながら,以下の理由で,本件商標からは,「エムデイ」の称呼も生ずるというのが相当である。 本件商標の構成中の「MD3」と「Milled」の文字は,1字のスペースを空けて表されていることから,視覚上分離して観察される。そして,商標全体として,特定の意味合いを生ずるものではないことから,不可分的に結合しているとはいえない。 商品「ゴルフクラブ」との関係では,構成後半の「Milled」の文字は,フェース面を平らに加工してあることを意味し,ウェッジクラブの特徴を表すものである。ヘッドを仕上げる過程で「ミーリング(milling)」という作業を行い,モデルによっては「ミルドフェース(milled face)」,「スピンミルド(spin-milled)」など,「ミルド(milled)」,つまり精密にミーリング加工してあることを商品名の一部とし,それ自体を売り文句にしている場合も多い(甲3)。後述の引用商標を使用した商品の広告にも,「CNCミルド加工フェース」との記載がある(甲4)。このように,「Milled」の文字は,その指定商品との関係においては自他商品の識別力がないものである。 また,構成前半の「MD3」の文字中,数字「3」は,商取引において,一般に自己の生産又は販売に係る商品の品番,型式等を表示するための記号,符号として類型的に使用されているのが実情であるから,自他商品の識別力がないものである。 そして,本件商標の指定商品を取り扱うゴルフ用品業界においては,申立人のブランドである「MD GOLF」が著名であり,引用商標は,該ブランドを表象したものである。「武田薬品工業」を「タケダ」,「トヨタ自動車」を「トヨタ」のように,ブランド名で商品の一般名称を省略することは通常行われており,申立人のブランドも,現実の取引において,「MDは素晴らしいキットを作り上げた。もうこれは最高水準。」(甲4)のように,「MD」と表記され,「エムデイ」と呼ばれている。 したがって,本件商標の構成中「MD」の欧文字は,申立人のブランドを想起させ,商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与え,該文字部分をもって取引に資されるものである。 以上のことから,本件商標は,「MD」の文字部分に相応して「エムデイ」の称呼を生ずるものである。 (2)引用商標 ア 申立人は,登録第5282682号商標(以下「引用商標」という。)を引用する。 引用商標は,別掲のとおり,図形と「MDGOLF」の文字からなり,平成21年2月13日に登録出願,第28類「ゴルフクラブ,ゴルフ用具,ゴルフ練習用器具」を指定商品として,同年11月20日に設定登録されたものであり,その商標権は現に有効に存続しているものである。 イ 引用商標は,その構成態様から,視覚上,一見して,図形部分と文字部分から構成されているものと直ちに看取されるものである。したがって,引用商標は,その構成中,図形部分と文字部分が,それぞれ,要部として独立して,取引者,需要者に対し,商品の出所識別標識としての機能を果たし得るものである。 そして,引用商標の構成中の「MDGOLF」の文字部分は,前記のとおり,申立人の著名ブランドを表すもので,構成文字全体に相応して「エムデイゴルフ」の称呼を生ずるほか,「エムデイ」の称呼も生ずるというのが相当である。 したがって,引用商標からは,「エムデイ」の称呼が生ずるものである。 (3)商標の類否 本件商標と引用商標とを比較すると,両商標は,「エムデイ」の称呼を共通にするものである。 外観についてみると,両商標は,その全体の構成態様は相違するものの,文字部分で最も看者の注意を惹く,語頭の2文字「MD」を同じくするものであるから,外観上相当程度近似するものである。 さらに,本件商標と引用商標とは,ともに特定の観念が生じないものであるから,観念上,比較することができない。 以上を総合して考察すると,本件商標と引用商標とは,観念上,比較することができないとしても,外観において相当程度近似し,称呼を共通にする類似の商標である。 また,本件商標の指定商品は,引用商標の指定商品を含むものであるから,これと同一又は類似の商品である。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当するものである。 2 商標法第4条第1項第19号について (1)申立人商標の周知著名性 申立人は,1999年に,ゴルフ発祥の地といわれるアイルランドのダブリン郊外で,工房を立ち上げ,それ以来,20年間めざましい発展を遂げ,現在ではヨーロッパにおける高性能ゴルフ用品を手ごろな価格で提供するナンバーワンメーカの地位を確立した(甲5)。 申立人のブランドである「MD GOLF」(以下「申立人商標」という。)を使用したゴルフ用品は,英国の著名ゴルフ雑誌に頻繁に取り上げられ,製品の優れた機能に対して,高い評価を受け,多数の賞を獲得してきた(甲6)。また,雑誌記事の中では,「MD SUPERSTRONG ST3」,「MD NV DREW」のように,「MD」の欧文字2文字が申立人を表示するものとして使用されている。 このように,申立人商標は,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,英国のゴルフ用品の製造者・取引者・ゴルフ愛好家等の需要者の間において広く認識されていたものである。 (2)本件商標と申立人商標の類似性 前記のとおり,本件商標と申立人商標とは,観念上,比較することができないとしても,外観において語頭の欧文字2文字が同じであって,称呼を共通にする類似の商標である。 また,本件商標の指定商品は,申立人の使用商品である「ゴルフ用品」と同一又は類似のものである。 (3)不正の目的 商標権者は,申立人と同じく,ゴルフ用品の製造販売業者である。英国の雑誌「Today’s Golfer」によると,商標権者のウェッジが1位,申立人の商品が4位にランクされている(甲6)から,当然,申立人商標を,競合メーカーのブランドとして認識していたものである。 商標権者は,本件商標を使用したウェッジを,2015年7月に販売開始したが,それまでは,「MD ウェッジ」といえば,申立人のウェッジと同義語であった。ところが,2016年3月8日にオークションサイト「eBay」及び検索サイト「Google」で,「md wedge」を検索したところ,本件商標を使用したウェッジと,申立人のウェッジが併存していた(甲7)。本件商標が使用された結果,申立人商標との間に,商品の出所の混同が生じ,申立人の利益が不当に損なわれたことは明らかである。 「MD」の語は,申立人の社名の略称であって,商標権者が,欧文字26文字の中から,この2文字をこの順番で並べたのは,偶然の一致であるとは想定しがたく,申立人を認識した上で採択したというのが自然である。実際,商標権者は,本件商標の構成文字から「MD3」のみを取り出し,色を変えて「MD」が目立つような広告をしている(甲8)。 以上によると,商標権者は,外国におけるゴルフ用品の製造者・取引者・ゴルフ愛好家等の需要者の間において,広く認識されていた申立人商標を知ったうえで,申立人商標の周知性と,それに化体した営業上の信用を利用し,本来,申立人に帰属すべき利益を不当に得るため,登録出願し,権利を得たというのが相当であり,本件商標は不正の目的をもって使用するものである。 (4)まとめ 以上を総合勘案すると,本件商標は,申立人の業務に係る商品を表示するものとして外国における需要者に広く認識されている申立人商標と類似の商標であって,不正の目的をもって使用するものであるから,商標法第4条第1項第19号に該当するというべきである。 3 結び 以上述べたとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第11号及び同項第19号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,取り消されるべきものである。 第3 当審の判断 1 引用商標,申立人商標等の周知性について (1)申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば,次の事実を認めることができる。 ア 申立人は,1999年頃にアイルランドで工房を立ち上げ,それ以来ゴルフクラブを製造販売していること(甲4,甲5),申立人の製造販売に係るゴルフクラブ(以下「申立人ゴルフクラブ」という。)は我が国では2009年頃から販売されていること(甲5),申立人ゴルフクラブは少なくとも2008年から2012年頃まで英国の雑誌に数回掲載されたこと(甲6),及び時期は未定であるが英国において賞を受賞したこと(甲6)がうかがえる。 イ 申立人ゴルフクラブ及びその広告には,引用商標及び申立人商標が使用されていること,及び申立人を「MD」と記載した記事が我が国のウェブページに掲載されていることが認められる(甲4)。 ウ しかしながら,申立人ゴルフクラブの英国をはじめとする外国における販売数量,販売額など販売実績を示す証左は見いだせない。 (2)上記(1)の事実からすれば,申立人は我が国において,ゴルフクラブについて引用商標及び申立人商標を使用していることが認められるものの,我が国における申立人ゴルフクラブの販売実績等を客観的に示す証左はないから,引用商標及び申立人商標は,本件商標の登録出願の日前ないし登録査定時において,他人(申立人)の業務に係る商品であることを表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。 また,申立人は英国において,ゴルフクラブについて引用商標及び申立人商標を使用していることがうかがえるものの,英国をはじめとする外国における申立人ゴルフクラブの販売実績を示す証左はないから,引用商標及び申立人商標は,本件商標の登録出願の日前ないし登録査定時において,他人(申立人)の業務に係る商品であることを表示するものとして外国における需要者の間に広く認識されているものと認めることもできない。 さらに,「MD」の文字が申立人の略称として用いられていることがあるものの,申立人の略称として又は申立人のブランドとして需要者の間に広く認識されているものと認めるに足りる証左は見いだせないから,該文字は申立人の略称として需要者の間に広く認識されているものといえない。 なお,申立人が提出する平成28年10月5日付けの上申書における参考資料1ないし4によれば,申立人は2014年(平成26年)には世界32か国に販売を拡大し,我が国には2008年に参入したこと(参考資料1),平成21年4月21日付の日刊スポーツに引用商標を使用した申立人ゴルフクラブの全面広告を掲載したこと(参考資料2),申立人の我が国における取引先であるワールドゴルフが引用商標(引用商標の図形部分のみの表示を含む。)を付した申立人ゴルフクラブ等を広告したこと(参考資料3),及び平成26年2月14日から16日に開催された「ジャパンゴルフフェア2014」に引用商標を用いた申立人ゴルフクラブが展示されたことが認められる(参考資料4)。さらに,申立人は,日本のワールドゴルフと独占契約を結び毎年100万ドルの取引をしており(参考資料1),また,申立人が日本で販売しているゴルフ商品の売上げは,直近7年間で,卸価格で約210万ドル,小売価格で約600万ドルである旨主張している。 しかしながら,これらの参考資料によっても,申立人の申立人ゴルフクラブが我が国において,広告及び販売されていることは認め得るとしても,新聞広告がわずかに1回及び3日間開催された見本市に申立人ゴルフクラブが展示されたにすぎず,また,申立人と日本のワールドゴルフとの取引額が毎年100万ドルであるとしても,その取引がどのような内容のものであるか明かでないし,さらに,申立人の直近7年間の売上げについても,主張がなされるのみで,それらを裏付ける客観的な証左の提出はないから,引用商標が,申立人の業務に係る商品であることを表示するものとして,我が国の需要者の間に広く認識されているものといえない。 2 商標法第4条第1項第11号について (1)本件商標は,上記1のとおり,「MD3 Milled」の文字を標準文字で表してなり,その構成文字は,同書,同大でまとまりよく一体的に表され,これから生じる「エムディースリーミルド」の称呼も,格別冗長というべきものでなく,よどみなく一連に称呼し得るものである。 そして,本件商標は中間にスペースを有することから,「MD3」と「Milled」の文字を結合してなるものと認識できるものであって,前半の「MD3」の文字は一般に商品の品番等を表示するための記号,符号として使用される欧文字2字と数字の一類型といえるものであり,また後半の「Milled」の文字は,該文字及びその片仮名表記である「ミルド」の文字がゴルフクラブとの関係において「ミルドフェース(milled face)」,「スピンミルド(spin-milled)」,「ミルド加工フェース」などのように用いられている(甲3,甲4)ことから,いずれの文字も自他商品識別機能が強いものとはいえないものである。 そうすると,本件商標は,その構成中「MD3」又は「Milled」の文字部分のいずれかが取引者,需要者に対し商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものではなく,その構成文字全体をもって,「エムディースリーミルド」の称呼を生じ,特定の観念を生じない一体不可分のものとして認識,把握されるものと判断するのが相当である。 なお,申立人は,本件商標はその構成中「MD」の文字が申立人のブランドを想起させ,商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与え,該文字部分をもって取引に資されるものである旨主張しているが,上記1のとおり「MD」の文字は申立人の略称又はブランドとして需要者の間に広く認識されているものといえないものであるし,他に本件商標が「MD」の文字をもって取引に資されるというべき事情は見いだせないから,申立人のかかる主張は採用できない。 (2)他方,引用商標は,別掲のとおり図形と「MDGOLF」の文字からなり,該文字に相応し「エムディーゴルフ」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものというのが相当である。 そして,引用商標は,その構成態様から,図形部分と文字部分がそれぞれ独立して自他商品識別標識としての機能を果たし得るものであって,図形部分は特定の称呼,観念を生じず,文字部分は「エムディーゴルフ」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものと判断するのが相当である。 なお,申立人は,引用商標は「エムディー」の称呼も生じる旨主張しているが,上記1のとおり「MD」の文字は申立人の略称又はブランドとして需要者の間に広く認識されているものといえないものであるし,他に引用商標が「エムディー」の称呼を生じるというべき事情は見いだせないから,申立人のかかる主張は採用できない。 (3)そこで,本件商標と引用商標の類否を検討すると,まず本件商標と引用商標の文字部分とを比較すると,両者は,外観において語頭の「MD」の文字を共通にするものの,他の構成文字及び文字数が明らかに相違するから,容易に区別し得るものである。また,「エムディースリーミルド」と「エムディーゴルフ」の称呼は,語頭の「エムディー」を共通にするものの,他の構成音及び音数に明らかな差異を有するから,容易に聴別し得るものである。さらに,観念においては,両者は共に特定の観念を生じないものであるから,相紛れるおそれのないものである。 そうすると,両者は,外観,称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似のものといわなければならない。 そして,上述のとおり,本件商標と引用商標の文字部分が非類似のものであることから,本件商標と引用商標の構成全体とは,非類似の商標ということができる。また,本件商標と引用商標の図形部分とは,両者の上記のとおり外観,称呼及び観念からして,両者が非類似のものであること明らかである。 その他,本件商標と引用商標が類似するというべき事情も見いだせない。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当するものといえない。 3 商標法第4条第1項第19号について 上記1のとおり,申立人商標は,本件商標の登録出願の日前ないし登録査定時において,他人(申立人)の業務に係る商品であることを表示するものとして我が国又は外国における需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないものであり,また,上記2と同様の理由により本件商標と申立人商標とは相紛れるおそれのない非類似の商標であって別異のものといえるものである。 そうすると,本件商標は,これに接する取引者,需要者が申立人商標を連想又は想起するものということはできない。 してみれば,本件商標は,申立人商標の周知性,それに化体した営業上の信用を利用し,申立人の利益を不当に得るなど不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当するものといえない。 4 むすび 以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第11号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものとはいえないから,同法第43条の3第4項の規定により,維持すべきである。 よって,結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲(引用商標) |
異議決定日 | 2016-10-26 |
出願番号 | 商願2015-78344(T2015-78344) |
審決分類 |
T
1
651・
261-
Y
(W28)
T 1 651・ 263- Y (W28) T 1 651・ 262- Y (W28) T 1 651・ 222- Y (W28) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 高橋 謙司 |
特許庁審判長 |
堀内 仁子 |
特許庁審判官 |
田村 正明 早川 文宏 |
登録日 | 2016-02-12 |
登録番号 | 商標登録第5825387号(T5825387) |
権利者 | キャラウエイ・ゴルフ・カンパニー |
商標の称呼 | エムデイスリーミルド、エムデイサンミルド、ミルド |
代理人 | 鈴木 昇 |
代理人 | 岡田 稔 |
代理人 | 坂上 正明 |
代理人 | 中川 康生 |
代理人 | 曾我 道治 |