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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W43
審判 全部申立て  登録を維持 W43
審判 全部申立て  登録を維持 W43
審判 全部申立て  登録を維持 W43
管理番号 1322490 
異議申立番号 異議2016-900107 
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2017-01-27 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-04-28 
確定日 2016-11-09 
異議申立件数
事件の表示 登録第5822919号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5822919号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5822919号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおりの構成よりなり、平成27年7月31日に登録出願され、第43類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,動物の宿泊施設の提供,会議室の貸与,展示施設の貸与,布団の貸与,まくらの貸与,毛布の貸与,おしぼりの貸与,タオルの貸与」を指定役務として、同年12月25日に登録査定、同28年1月29日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する登録商標は、以下のとおりであり、それぞれ現に有効に存続しているものである。
(1)登録第5205202号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲2のとおりの構成よりなり、2007年9月20日にアメリカ合衆国においてした商標登録出願に基づきパリ条約4条による優先権を主張して、平成19年11月20日に登録出願、第39類「荷物又はメッセージの配達,貨物のこん包,主催旅行の企画及び実施,旅行情報の提供,インターネット又は他の通信ネットワークを介した旅行情報(宿泊に関するものを除く。)の提供,旅行者の案内,旅行に関する契約(宿泊にかんするものを除く。)の代理・媒介・取次ぎ,他人の携帯品の一時預かり,空港における航空機の搭乗手続の代行,航空機の貸与の媒介又は仲介並びにこれらに関する情報の提供,航空会社及び旅行代理店に対するパッケージツアーの企画及び実施」、第41類「カジノゲーム場の提供,ゲームの提供を内容とする娯楽施設の提供,ミュージカル・マジック・ガラス吹き・パントマイム・レヴュー等のエンターテインメントショー及び演芸の上演及びそのチケット予約の代行,音楽の演奏,スポーツイベントの企画及び運営,コメディ・バライティ・音楽パフォーマンス・ダンス・ギャンブル・ゲームに関するテレビ番組の制作及び配給,アミューズメントセンターの提供,アーケード・ゲームセンターの提供,演芸の上演,演劇の演出又は上演,特別式典及びイベントの企画,ウェブサイト又はグローバルコンピュータネットワークを介したカジノ・ゲームの提供」、第43類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約又は取り次ぎ,カクテルラウンジ・バー・レストラン・ルームサービスにおける飲食物の提供,飲食物のケータリング,会議・宴会・その他イベントに使用する施設の貸与,展示施設の貸与」及び第45類「施設の警備,身辺の警備」を指定役務として、同21年2月20日に設定登録されたものである。
(2)登録第5239725号商標(以下「引用商標2」という。)は、「THE VENETIAN」の欧文字を標準文字により表してなり、平成19年11月20日に登録出願、第39類「荷物又はメッセージの配達,貨物のこん包,主催旅行の企画及び実施,旅行情報の提供,インターネット又は他の通信ネットワークを介した旅行情報(宿泊に関するものを除く。)の提供,旅行者の案内,旅行に関する契約(宿泊にかんするものを除く。)の代理・媒介・取次ぎ,他人の携帯品の一時預かり,空港における航空機の搭乗手続の代行,航空機の貸与の媒介又は仲介並びにこれらに関する情報の提供,航空会社及び旅行代理店に対するパッケージツアーの企画及び実施」、第41類「カジノゲーム場の提供,ゲームの提供を内容とする娯楽施設の提供,ミュージカル・マジック・ガラス吹き・パントマイム・レヴュー等のエンターテインメントショー及び演芸の上演及びそのチケット予約の手配,音楽の演奏,スポーツの興行の企画及び運営,コメディ・バライティ・音楽パフォーマンス・ダンス・ギャンブル・ゲームに関するテレビ番組の制作及び配給,アミューズメント施設の提供,ゲームセンターの提供,演芸の上演,演劇の演出又は上演,特別式典その他興行の企画(映画・演芸・演劇・音楽の演奏の興行の企画及びスポーツ・競馬・競輪・競艇・小型自動車競走の興行の企画に関するものを除く。),ウェブサイト又はグローバルコンピュータネットワークを介したカジノゲームの提供」、第43類「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取り次ぎ,カクテルラウンジ・バー・レストラン・ルームサービスにおける飲食物の提供,飲食物のケータリング,会議室の貸与,多目的ホールの提供,展示施設の貸与」及び第45類「施設の警備,身辺の警備,宴会のための施設の提供」を指定役務として、同21年6月19日に設定登録されたものである。
(3)登録第5439464号商標(以下「引用商標3」という。)は、「ベネチアン」の片仮名を標準文字により表してなり、平成22年7月5日に登録出願、第9類「電子計算機用ゲームプログラム及びゲームソフトウェア,家庭用テレビゲームおもちゃ用ゲームプログラム及びゲームソフトウェア,携帯用液晶画面ゲームおもちゃ用のプログラムを記憶させた電子回路及びCD-ROM,ダウンロード可能な文字データ・画像・音声・音楽及び映像,ダウンロード可能な電子出版物,電子応用機械器具及びその部品,電気通信機械器具」、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」、第35類「被服の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,履物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,かばん類及び袋物の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,身の回り品の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,織物及び寝具類の小売又は卸売の業務において行われる顧客に対する便益の提供,商品の販売に関する情報の提供,ホテルの事業の管理,競売の運営」、第39類「輸送,輸送情報の提供,輸送の予約,旅行の予約,旅行に関する契約(宿泊に関するものを除く。)の代理・媒介及び取次ぎ,主催旅行の実施,旅行者の案内,係留施設の提供,船舶の保管,旅行の手配,貨物の積卸し」、第41類「カジノゲーム施設の提供,ゲームセンターの提供,オンラインによるゲームの提供,娯楽の提供,演芸又はコンサートの演出又は上演,映画・演芸・演劇・音楽又は教育研修のための施設の提供,美術品の展示,公開・展示を行う美術館の提供,会議の手配及び運営,運動施設の提供,興行場の座席の手配,写真の撮影」及び第43類「ホテルにおける宿泊施設の提供,宿泊施設の提供,レストラン及びバーにおける飲食物の提供,飲食物の提供,ケータリング,宿泊の予約の取次ぎ,飲食店の予約の取次ぎ,会議室・展示施設・集会場及び多目的ホールの提供,商品展示会場の提供」を指定商品及び指定役務として、同23年9月16日に設定登録されたものである。
以下、上記の引用する登録商標をまとめていうときは「引用商標」という。

第3 登録異議の申立ての理由(要旨)
申立人は、本件商標は、商標法第4条第1項第11号及び同第15号に違反して登録されたものであり、同法第43条の2第1号により取り消されるべきであると申し立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第127号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 引用商標の周知・著名性について
引用商標は、申立人が、「宿泊施設の提供」その他の役務について、約20年にわたって使用されてきた周知・著名商標である(甲3?甲127)。
(1)ラスベガス・サンズの歴史
ラスベガス・サンズは、起業家 シェルドン・G.アデルソン氏が1979年にCOMDEXというコンピュータ関連の展示会をラスベガスで初めて開催したのが始まりである。この展示会は、コンベンションタイプのデスティネーションリゾート(あるエリアのなかに、宿泊施設と各種レジャー施設を囲い込んだ滞在型の総合レジャー施設)という構想で開催され、アデルソン氏がラスベガス地区における初めての物件を所有するための資金作りの足掛かりとなった。そして、1989年にサンズ・ホテルを、その1年後の1990年にはサンズ・エキスポ&コンベンションセンターを設立した。
(2)米国・ラスベガスの「ザ・ベネチアン」ホテル開業
1996年、アデルソン氏はCOMDEXが8億USドルで売却し、その資金を元手に、サンズ・ホテルの跡地に新しいホテル「ザ・ベネチアン」を建設することを決めた。当該ホテルは、自身のハネムーンで訪れたイタリア、ベニスにインスピレーションを受けて設計され、水路を進むゴンドラや立ち並ぶブランドショップ、有名シェフによるレストランなど、特徴的なリゾートとして、今や世界中で知られていることとなった。テーマ型リゾートホテル「ザ・ベネチアン」は、わずか2年という短い期間で完成、1999年に開業し、フォーチュン誌にも取り上げられた「ラスベガスの全面的な再生」の象徴となった。ラスベガスがテーマパーク化によって急成長を遂げ、その中で「ザ・ベネチアン(ベネチアン)」が開業し、「巨大リゾートホテルとしてラスベガスで確固たる地位を築いたことは各種の新聞・雑誌で取り上げられることとなった(甲3?甲18)。
(3)中国・マカオの「ザ・ベネチアン・マカオ・リゾート」ホテル開業
サンズ・マカオはマカオで始めてとなる、外国人経営者によるカジノリゾートとして開業した。きらびやかなシャンデリア、豪奢な絨毯、290室のスイートルームを備えた設備施設からなるアメリカンスタイルのカジノを初めて体験する人々に熱狂的に迎えられた。
2007年には、世界最多の収容人数を誇り、ボーイング747型機を90機も駐機できる世界最大のリゾート施設、ザ・ベネチアン・マカオを開発開始からわずか3年で開業した。世界最大級のカジノリゾートとして「ベネチアン・マカオ」がマカオを世界一のカジノ都市として繁栄に導いたといっても過言ではなく、数多くの新聞・雑誌メディアで紹介された(甲22?甲69)。来客数が、開業からわずか17日で100万人、1か月で250万人に到達するほどの人気ぶりであった(甲56及び甲66)。
マカオでの「ベネチアン・マカオ」の成功例をモデルとして、日本を含む周辺アジア諸国でカジノの誘致が議論され、台湾をはじめ、日本においては沖縄県がカジノの誘致を検討し、「ベネチアン・マカオ」を現地視察などしていたことがニュースとして取り上げられた(甲70?甲76)。
(4)我が国における「ザ・ベネチアン」「ザ・ベネチアン・マカオ・リゾート」の人気の高さについて
我が国においてはカジノが法律で禁止されている関係で、ラスベガス・サンズをはじめとするカジノリゾートは存在しないが、将来的なカジノ解禁の日に備えて、アデルソン氏は日本におけるカジノビジネスへの高い意欲を見せていることも話題となっている(甲87)。
「ベネチアン・マカオ」は、マカオにおけるカジノリゾートの象徴として各方面で話題となっている。
例えば、米国の建築家であるブライアン・バーグ氏が「ベネチアン・マカオ・リゾート」を模した建物の模型を約22万枚のトランプで作成したことが、数々の新聞で紹介された(甲88?甲94)。
また、「ベネチアン・マカオ・リゾート」内のイベントスペースにおいて、有名歌手によるエンターテインメントショー、ゲーム機器の見本市、ボクシングの試合などが数多く開催され、我が国においても紹介されている(甲95?甲104)。
さらに、「ベネチアン・マカオ・リゾート」内の日本食レストランに関する記事や、ホテル内のテーマパークに関する記事が紹介されたり、我が国の旅行者にとっても人気の高い目的地として紹介されている(甲105?甲117)。
本件出願人の所有・運営に係るホテルが存在する米国・ラスベガスや中国・マカオは我が国の一般消費者にとって人気の高い渡航先であるところ、我が国の大手旅行代理店が企画・販売している数多くの旅行ツアーにおいて「ザ・ベネチアン(ヴェネチアン)」や「ベネチアン(ヴェネチアン)・マカオ・リゾート」が宿泊先として、指定されていることからしても(甲118?甲127)、その人気の高さを窺い知ることができる。
(5)まとめ
このように、人気ホテル「ベネチアン(ヴェネチアン)」は2007年ころから、申立人が開発・運営している、巨大カジノリゾートホテルの名称として世界的に広く知られてきた事実は疑いようがないのであり、その事実は我が国においても新聞や雑誌を通じて周知されてきたものであり、現在においても継続してその周知・著名性を維持していると優に推認できるものである。
以上より、引用商標1及び2は、本件商標の出願時である平成27年(2015)7月31日時はもちろんのこと、登録査定時である平成28年(2016)1月8日(決定注:本件商標の登録査定日は平成27年12月25日)当時においても、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、既に日本国内において周知・著名であったものと確信する。
2 本件商標と引用商標の類似性について
(1)称呼について
本件商標は、「ベネシアン」の片仮名を上段に、その下段に「VENEZIAN」の欧文字(決定注:本件商標の下段は「venezian」の欧文字、以下同様)を配した二段書きの構成よりなる。ここで、上段の片仮名部分から「ベネシアン」の称呼が生ずること明らかなものであるが、下段の「VENEZIAN」からは英語読み風またはローマ字読み風に「ベネツィアン(ヴェネツィアン)」または「ベネジアン(ヴェネジアン)」の称呼が生ずるものである。つまり、本件商標にあっては、構成する上段と下段ではそれぞれ別異の音構成からなっているものである。
そうしてみると、上段に位置する「ベネシアン」の文字は、その音構成からして、下段に位置する「VENEZIAN」の読み(称呼)を特定するものとはいい得ず、また、これらの文字が常に一体不可分のものとしてのみ看取、把握されるとみるべき特段の事情も見出し得ないものである。
よって、本件商標からは、「ベネシアン」のほか、「ベネツィアン(ヴェネツィアン)」または「ベネジアン(ヴェネジアン)」の称呼が生ずる。
これに対して、引用商標1及び2は、それぞれ「THE VENETIAN」の欧文字を横書きしてなるところ、構成文字に相応して、ローマ字読み風の「ザベネチアン(ザヴェネチアン)」が生じる。また「TIAN」が英語読み風に「スィアン」とも発音できることに鑑みて「ザベネスィアン(ザヴェネスィアン)」の称呼が生ずる場合もある。さらに、「THE」が英語の定冠詞であって、称呼の際に省略される場合も少なくないので、「ベネチアン(ヴェネチアン)」または「ベネスィアン(ヴェネスィアン)」の称呼をも生じるものといえる。そして、引用商標3からは、「ベネチアン」の称呼が生じるものである。
そこで、本件商標より生ずる「ベネツィアン(ヴェネツィアン)」と引用商標より生ずる「ベネチアン(ヴェネチアン)」の称呼とを比較するに、両者の差異は、わずかに中間音における「ツィ」と「チ」の違いにすぎない。このような中間語は他の音に比べて明確さを欠く発声をもって発音されるのが通例であり、しかも「ツィ」と「チ」の音は、同じタ行に属し、母音も(i)であるという極めて近似した音であり、両者をそれぞれ一連に称呼するときは、その語調、語感が酷似したものとなり、互いに聴き誤るおそれがある。
次に、本件商標より生ずる「ベネシアン」と引用商標より生ずる「ベネスィアン(ヴェネスィアン)の称呼とを比較するに、両者の差異は、わずかに中間音における「シ」と「スィ」の違いにすぎない。このような中間語は他の音に比べて明確さを欠く発声をもって発音されるのが通例であり、しかも「シ」と「スィ」の音は、同じサ行に属し、母音も(i)であるという極めて近似した音であり、両者をそれぞれ一連に称呼するときは、その語調、語感が酷似したものとなり、互いに聴き誤るおそれがある。
(2)観念について
引用商標に係る「(THE)VENETIAN」または「ベネチアン」は、「イタリア北東部、アドリア海に面する港湾都市。市街は潟湖(せきこ)にある一二二の島とそれを結ぶ四○○以上の橋からなる「水の都」。英語名ベニス」(小学館「大辞林」)として知られるベニス(Venice)の形容詞形を表すものであり、株式会社三省堂発行のコンサイスカタカナ語辞典(第3版)によれば「ベネチアに関するさま」「ベネチアン人・ベネチア風の意で複合語をつくる」と記載されている。
そうすると、引用商標からは、「イタリア北東部に位置する通称水の都、ベネチア(英語名ベニス)の形容詞形」または「ベネチアに関するさま」程の観念が生じる。
これに対して、本件商標を構成する「ベネシアン」「VENEZIAN」の各文字は、既成語とはいえないものではあるが、特に欧文字部分の「VENEZIAN」については、上記イタリア北東部に位置する通称水の都、ベネチア(英語名ベニス)がイタリア語で「VENEZIA」との綴り字であることからして、『「VENEZIA」の形容詞形が「VENEZIAN」である』として理解されることも、我が国における英語・イタリア語の理解度が必ずしも高くないことからすれば、容易に想定されるところである。
そうすると、本件商標にあっては、造語としての観念のほか、「イタリア北東部に位置する通称水の都、ベネチア(英語名ベニス)の形容詞形」または「ベネチアに関するさま」程の観念をもって理解、把握される場合も少なくないものといえる。
(3)外観について
特に、「VENETIAN」の文字を構成中に大書きしてなる引用商標1との関係において、本件商標に係る欧文字部分「VENEZIAN」は、その構成する文字の大部分である「V」「E」「N」「E」「I」「A」「N」において共通しており、外観構成上の差異はわずかに中間部における「T」と「Z」の違いにすぎず、近似したものとなっている。
また、「ベネチアン」の文字からなる引用商標3との関係において、本件商標に係る片仮名部分「ベネシアン」は、その構成する文字の大部分である「ベ」「ネ」「ア」「ン」において共通しており、外観構成上の差異はわずかに中間部における「チ」と「シ」の違いにすぎず、近似したものとなっている。
(4)まとめ
そこで、異なる時間・場所を想定した離隔観察を行った場合、本件商標と引用商標は、称呼上・観念上のみならず、外観上も近似する場合があり、需要者等の通常の注意力のみをもってしては、本件商標と引用商標とを区別することは必ずしも容易ではない。
以上を総合すると、本件商標と引用商標とは、彼此紛れるおそれの高い類似の商標である。
3 商標法第4条第1項第11号について
前記詳述したとおり、本件商標は、申立人の業務を表す商標として周知・著名な引用商標と類似する商標である。
また、本件商標の指定役務のうち、「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,会議室の貸与,展示施設の貸与」は、引用商標1ないし3の指定役務「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約又は取り次ぎ,カクテルラウンジ・バー・レストラン・ルームサービスにおける飲食物の提供,飲食物のケータリング,会議・宴会・その他イベントに使用する施設の貸与,展示施設の貸与」又は「ホテルにおける宿泊施設の提供,宿泊施設の提供,レストラン及びバーにおける飲食物の提供,飲食物の提供,ケータリング,宿泊の予約の取次ぎ,飲食店の予約の取次ぎ,会議室・展示施設・集会場及び多目的ホールの提供,商品展示会場の提供」と同一又は類似のものである。
よって、本件商標は、引用商標1ないし3との関係において、その指定役務中「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,会議室の貸与,展示施設の貸与」について商標法第4条第1項第11号に該当する。
4 商標法第4条第1項第15号について
(1)本件商標と引用商標との類似性について
前記2で詳述したように、本件商標と引用商標の類似性は高いといわなければならない。
(2)引用商標の著名性及び独創性
引用に係る「(THE)VENETIAN」又は「ベネチアン」の文字が、申立人の商標として日本を含む世界中で周知・著名である事実は前述したとおりである(甲3?甲127)。
もっとも、造語商標ほどの独創性があるとまではいえないとしても、申立人の運営するユニークなホテルリゾートの名称として広く知られるに至っている点において高い顕著性を有しているのであり、十分に独創的であるといえる。
(3)本件商標と引用商標の指定役務の関連性の程度
ア 「宿泊施設の提供,宿泊施設の提供の契約の媒介又は取次ぎ,飲食物の提供,会議室の貸与,展示施設の貸与」について
上記指定役務は、特許庁審査基準(「類似商品・役務審査基準」)において、引用商標1ないし3の指定役務との関係で「同一又は類似の役務」として取扱われており、非常に関連性の高いものであることは疑いのないところである。
イ 「動物の宿泊施設の提供,布団の貸与,まくらの貸与,毛布の貸与,おしぼりの貸与,タオルの貸与」について
上記指定役務は、上記審査基準において、相互に類似しないものとして取扱われている。しかし、上記審査基準は、特許庁内部における、商標審査実務を円滑に遂行するための「推定」といっても過言ではないところ、「動物の宿泊施設の提供」との関係においては、近年、宿泊施設において、「ペットと泊まれる宿」などと称して愛玩動物の宿泊に関する役務を提供しているという、顕著な事実が存在することからすれば、役務の提供の場所、提供の目的等の役務の質において共通しており、密接な関連性がある。そして、「布団の貸与,まくらの貸与,毛布の貸与,おしぼりの貸与,タオルの貸与」に関しては、いずれも、宿泊施設、レストランや会議室を提供しているホテルサービスにおいて、付随的に提供され得る役務であって、ここでも役務の提供場所・用途、目的等の質において共通しており、密接な関連性がある。
(4)需要者、取引者の共通性、事業の多角化の可能性
本件商標と引用商標はいずれもホテルなどの宿泊施設の提供や飲食物の提供、会議室の提供そしてそれらに付随する各役務に関するものであり、需要者、取引者において共通し、事業の多角化の一環として両役務を一つの会社の事業として行う可能性は十分に想定される。
(5)まとめ
以上の事情を総合的に勘案すれば、本件商標は、これに接する需要者、取引者に対して、引用商標を連想させて役務の出所について誤認を生じさせるおそれがあり、その登録を認めた場合には、引用商標の持つ顧客吸引力へのただ乗り(いわゆるフリーライド)や、その希釈化(いわゆるダイリューション)を招くという結果を生じかねない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号にいう「混同を生ずるおそれがある商標」にあたるというべきである。

第4 当審の判断
1 引用商標の周知・著名性
申立人は、引用商標は、申立人が、「宿泊施設の提供」その他の役務について、約20年にわたって使用されてきた周知・著名商標である旨主張し、その証拠方法として甲第3号証ないし甲第127号証を提出している。
そこで申立人提出の証拠をみると、その多くは新聞等の記事情報であり、マカオにカジノやホテルを兼ね備えた申立人の大型複合施設開業に関する2006年、2007年頃のやや古い記事が多く(半分近くを占める。)、近年の記事は僅かである。しかも、近年(2011年?2015年)の記事では、上記施設の名称として、引用商標3自体が単独で記載されている例もあるが、「ベネチアン・マカオ」、「ベネチアン・マカオ・リゾート」のように他の語と結合して記載されているものが相当数ある。
また、引用商標が使用された宿泊施設の提供等の役務について、日本人観光客の利用数や売上高、市場シェアなどの事業規模、宣伝広告の程度など、本件商標の登録出願時及び登録査定時における引用商標の周知性の程度を推測できる証拠の提出はない。
さらに、引用商標1及び2の構成中「VENETIAN」の語は、「ベニスの、ベニス風の、ベニス式の」の意味を有するものであって、該語に高い独創性があるものとは認められないこと等を総合し勘案すると、申立人の提出した証拠をもってしては、引用商標の周知・著名性を認めるには不十分といわざるを得ないものであり、引用商標が、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、本件商標の登録出願時及び登録査定時において、我が国の取引者、需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできないものである。
2 商標法第4条第1項第11号について
(1)本件商標
本件商標は、別掲1のとおり、「ベネシアン」の片仮名と「venezian」の欧文字を二段に横書きにした構成よりなるところ、その構成中、上段の片仮名「ベネシアン」に相応して「ベネシアン」の称呼を生ずるほか、この片仮名は下段の欧文字「venezian」の読みを特定したものとも認めることができないから、下段の「venezian」の欧文字部分から「ベネジアン」の称呼をも生ずるものである。また、該文字は、一般的に使用される辞書にはその記載を認めることができない語であることから、特定の意味合いを生じることのない一種の造語として看取されるとみるのが相当であり、特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標
ア 引用商標1は、別掲2のとおり、「V」の欧文字を表示した盾に右前足を掛けた翼を有するライオンと思しき図形とその左に小さく「THE」の文字を配し、その下に、大きく「VENETIAN」の文字を配した構成よりなるところ、該図形部分は、我が国において一般に親しまれた図形ともみられないものであるから、これよりは特定の称呼及び観念は生じないものというのが相当である。
また、引用商標1の構成中「THE VENETIAN」の文字部分は、バランスよく一体に表されているものであり、かつ、「VENETIAN」の文字部分は、「ベニスの、ベニス風の、ベニス式の」等を意味する語であって、本件商標の指定役務との関係では、役務の質を表示した部分として理解され得るから、その文字部分からは出所識別標識としての称呼、観念が生じず、「THE VENETIAN」の文字部分全体をもって、「ザベネチアン」の称呼のみを生ずるものであり、特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標2は、「THE VENETIAN」の欧文字を標準文字により表してなるものであるところ、その構成は、同書、同大にまとまりよく一連一体に表されているものであり、かつ、「VENETIAN」の文字部分は、「ベニスの、ベニス風の、ベニス式の」等を意味する語であって、本件商標の指定役務との関係では、役務の質を表示した部分として理解され得るから、その文字部分からは出所識別標識としての称呼、観念が生じず、該構成文字全体に相応して、「ザベネチアン」の称呼のみを生ずるものであり、特定の観念を生じないものである。
ウ 引用商標3は、「ベネチアン」の片仮名を標準文字により表してなるものであるところ、これは、片仮名として辞書に掲載されている語ではないことから、直ちに特定の意味合いを認識させるものではなく、一種の造語として理解されるものであるから、これよりは「ベネチアン」の称呼を生ずるものであり、特定の観念を生じさせないものである。
(3)本件商標と引用商標との対比
ア 外観
本件商標と引用商標は、それぞれ前記のとおりの構成よりなるものであるから、それぞれ全体の構成に照らし、外観上、判然と区別し得る差異を有するものである。
イ 称呼
本件商標より生ずる「ベネシアン」及び「ベネジアン」の称呼と引用商標1及び2より生ずる「ザベネチアン」の称呼とを比較すると、両称呼は、最も聴取しやすい語頭音における「ザ」の音の有無及び中間音において「シ」、「ジ」と「チ」の差異を有するものであり、これらの差異音が両称呼に与える影響は決して小さなものとはいえないから、それぞれを一連に称呼した場合には、語調、語感を異にし、判然と区別し得るものである。
次に、本件商標より生ずる「ベネシアン」の称呼と引用商標3より生ずる「ベネチアン」の称呼とを比較すると、両者は共に5音からなるものであって、「ベ」、「ネ」、「ア」、「ン」を同じくするものであるが、中間音において「シ」と「チ」との差異を有するものである。
しかして、相違する「シ」と「チ」の音は、いずれの音も母音(i)を伴うものであるが、前者が舌尖を前硬口蓋によせ、前歯との間に空洞を作って発する無声摩擦子音であるのに対し、後者が舌尖と上前歯との間で形成される無声破擦音であって、それぞれの音は発声方法を異にする異質の音であるから、5音という比較的短い音構成よりなる両称呼間にあっては、これらの差異が全体に及ぼす影響は極めて大きく、両者をそれぞれ全体的に称呼する場合には、互いに区別し得る程度の差異を有するものである。
また、本件商標より生ずる「ベネジアン」の称呼と引用商標3より生ずる「ベネチアン」の称呼とを比較すると、両者は共に5音からなるものであって、「ベ」、「ネ」、「ア」、「ン」を同じくするものであるが、中間音において「ジ」と「チ」との差異を有するものである。
しかして、両者は中間における濁音「ジ」と清音「チ」に差異を有するものであるところ、いずれの音も母音(i)を伴うものであるが、前者は、有声摩擦子音であり、後者は無声破擦音であって、それぞれの調音方法が異なるものであるから、この差異が両称呼全体に与える影響は決して小さいものとはいえず、両者をそれぞれ一連に称呼するも、全体の語調・語感を異にし、互いに聞き誤るおそれはないものといわなければならない。
ウ 観念
本件商標は、構成全体として、特定の観念を生じないものであり、また、引用商標1及び2の構成中の「VENETIAN」の文字が「ベニスの、ベニス風の、ベニス式の」等の意味を有するとしても、構成文字全体としては、特定の意味を有しない造語というべきものであり、引用商標3も特定の観念を生じないものであるから、本件商標と引用商標は観念において比較することはできず、観念上、類似するものともいえない。
(4)以上のとおり、本件商標と引用商標とは、観念は比較することができないとしても、外観及び称呼の点については、互いに紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第15号について
前記1のとおり、引用商標は、申立人の業務に係る役務を表示するものとして、本件商標の登録出願日前より、我が国の需要者の間に広く認識されていた商標と認めることはできないものである。
また、前記2のとおり、本件商標は、引用商標とは類似せず、別異の商標というべきものである。
してみると、本件商標に接する取引者、需要者が、引用商標を連想又は想起することはないというべきであるから、本件商標は、これをその指定役務について使用しても、その取引者、需要者をして、該役務が申立人又はこれと業務上何らかの関係を有する者の提供に係る役務であるかのように、役務の出所について混同を生じさせるおそれはないものである。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、登録異議の申立てに係る指定役務について、商標法第4条第1項第11号及び同第15号のいずれにも違反してされたものではないから、同法第43条の3第4項の規定に基づき、その登録を維持すべきものである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲1(本件商標)

別掲2(引用商標1)


異議決定日 2016-10-28 
出願番号 商願2015-73597(T2015-73597) 
審決分類 T 1 651・ 262- Y (W43)
T 1 651・ 271- Y (W43)
T 1 651・ 263- Y (W43)
T 1 651・ 261- Y (W43)
最終処分 維持 
前審関与審査官 豊瀬 京太郎 
特許庁審判長 井出 英一郎
特許庁審判官 榎本 政実
山田 正樹
登録日 2016-01-29 
登録番号 商標登録第5822919号(T5822919) 
権利者 丸山観光株式会社
商標の称呼 ベネシアン、ベネジアン 
代理人 稲葉 良幸 
代理人 石田 昌彦 
復代理人 右馬埜 大地 
代理人 丸岡 裕作 
代理人 田中 克郎 
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