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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W09 |
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管理番号 | 1322489 |
異議申立番号 | 異議2016-900102 |
総通号数 | 205 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2017-01-27 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-04-25 |
確定日 | 2016-11-18 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第5821159号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第5821159号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5821159号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成からなり,平成27年8月11日に登録出願,第9類「自動車用バッテリー」を指定商品として,同年12月18日に登録査定,同28年1月22日に設定登録されたものである。 第2 登録異議の申立ての理由 登録異議申立人(以下「申立人」という。)は,本件商標は商標法第4条第1項第15号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第19号証(枝番号を含む。)を提出した。 なお,枝番号すべてをいうときは,以下,枝番号を省略して記載する。 1 引用商標 国際登録第793703号商標(以下「引用商標」という。)は,「R&S」の欧文字を書してなり,2002年(平成14年)3月18日にGermanyにおいてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張し,同年7月29日に国際商標登録出願,別掲2に記載のとおりの商品を指定商品として,平成15年12月26日に設定登録,同24年8月22日に商標権の存続期間の更新登録がされ,現に有効に存続しているものである。 2 商標の類似性 (1)本件商標 本件商標は,黒色の隅丸長方形枠内の中央に,黒のデザイン化されたアルファベットの「R」及び「S」と両アルファベット間に配されたやや小ぶりに書された「&」の記号を,まとまりよく横書きしてなるものである。 そして,黒色の隅丸長方形枠はありふれた輪郭であり,デザイン化された「R」及び「S」の装飾程度も容易に元の文字を確認できる程度であるから,本件商標の構成中「R&S」の文字と記号部分が出所識別標識としての機能を果たすものというのが相当である。 そうすると,本件商標は,その構成に相応して「アールアンドエス」の称呼を生じ,R&S部分は,一般的な辞書に掲載が認められず,隅丸長方形からは出所識別標識としての称呼,観念が生じるものとは認められないから,特定の観念を生じないものである。 (2)引用商標 引用商標は,「R&S」のアルファベット及び記号を横書きしてなり,その構成文字及び記号に相応して「アールアンドエス」の称呼を生じるものである。そして,「R&S」は,一般的な辞書に掲載はみられないものの,申立人の長年にわたる積極的な使用により,本件商標の登録出願日前には,申立人の商標として,周知・著名となっている。 (3)商標の類似性 本件商標と引用商標は,その構成全体をもって比較するときには,外観において違いが見られるものの,その要部は,「R&S」が共通するので,その外観は互いに近似する印象を与えるものといえる。また,それぞれの要部である「R&S」から生じる「アールアンドエス」の称呼も共通するものであって,観念は,比較できない。 してみれば,本件商標と引用商標は,観念において比較できないとしても,要部である「R&S」の外観が近似し,「アールアンドエス」の称呼を共通にするから,両者は互いに相紛れるおそれのある類似の商標である。 3 引用商標の周知著名性 (1)申立人は,ドイツで1933年にローデ博士とシュワルツ博士によって創業された会社であり,社名は,この二人の創業者の名前に由来する。 現在,世界70か国以上に拠点を持ち,グループの年商は,18.3億ユーロ(2014/2015)に上り,うち90%をドイツ本国以外で売り上げるインターナショナルな会社である(甲3)。 申立人は,創業以来現在に至るまでの80年以上にわたり,引用商標を自己の業務に係る商品・役務に使用する商標として,一貫して使用し続けている(甲4ないし甲8)。 (2)申立人の事業分野は,試験・測定(無線通信,エレクトロニクス及びマイクロ波分野における試験・測定機器及びシステム),セキュア・コミュニケーションズ(警察,軍隊,政府機関,及び産業分野における暗号化通信を提供する(無線)システム),無線モニタリング及び無線標定(公共及び国家の安全に対応するスペクトラム・モニタリング・システム及び無線モニタリング装置),放送(音声及びTVの放送,及び測定装置)等多岐にわたっており,その取り扱うすべての分野において,申立人の革新的で常に最先端をいく技術力や高度な安全性は高く評価され,信頼を得ている。各国の公共安全及び国家安全に係わる様々な国家的プロジェクトに,申立人の商品が採用されていることが,これを裏付けている。 また,精密・安全,かつ,効率的な申立人の製造・販売する商品は,毎年世界各国で様々な賞を受賞している。さらに,申立人及び世界中の申立人の子会社・関連会社は,多くの展示会に出展するだけでなく,積極的にセミナーやワークショップを主催し,様々なプロジェクトを支援している。これらのプロジェクトの中には,国の垣根を越えたワールドワイドなものも少なくない。申立人は,自社の技術・製品に関する定期刊行物「R&S NEWS」を日本語を含む5か国語でそれぞれ発行(年約3回)し,需要者に提供している。この定期刊行物は,無料で配布(紙媒体)又は電子的にダウンロードすることが可能である。申立人の技術・製品及び上記のような積極的な活動により,「R&S」ブランドは,世界中に周知・著名である(甲4ないし甲8)。 (3)申立人は,引用商標以外にも「R&S」商標及び「R&S」を含む商標を世界各国・機関に出願し,登録を得ている(甲9)。 (4)申立人は,我が国に,2003年(平成15年)4月1日にローデ・シュワルツ・サポート・センター・ジャパン株式会社(申立人が100%株式出資)を設立し,同社は,同年5月に現在のローデ・シュワルツ・ジャパン株式会社(以下「ローデシュワルツジャパン社」という。)へと商号を変更した(甲5)。ローデシュワルツジャパン社は,2005年(平成17年)8月には,「対日投資貢献企業」として,経済産業大臣より表彰を受け(甲10),様々な展示会に出展し(甲11),セミナー(ウェブセミナーを含む)を主催し(甲12及び甲13),あるいはワークショップのスポンサーとなっている(甲14)。 また,社会貢献として人材育成を応援するために,申立人製品を寄贈するプロジェクトや申立人製品を使った研究レポート・コンテストを主催するなどの活動を積極的に行っている(甲15)。加えて,一般社団法人日本電気計測器工業会の賛助会員企業としても活動している(甲16)。申立人及びローデシュワルツジャパン社の代表者へのインタビュー記事が雑誌に掲載されたり(甲17),申立人の雑誌広告が,日経BP広告賞で優秀広告賞を受賞(甲18)したことは,申立人に関する関心を広く一般に集めることにもつながった。 (5)昨今話題となっている自動走行車(オートノマスカー)の例をあげるまでもなく,近年,自動車の多くの部品が電子化され,コンピュータ制御されていることはよく知られている。例えば,コネクテッドカー(ICT端末としての機能を有する自動車)では,車両の状態や周囲の道路状況などの様々なデータをセンサーにより取得し,ネットワークを介して集積・分析する。具体的には,事故時に自動的に緊急通報を行うシステムや走行実績に応じて保険料が変動するテレマティクス保険,盗難時に車両の位置を追跡するシステム等がある(甲19の1及び2)。申立人の製造・販売する商品は,自動車業界においても,様々な場面で使用されている(甲8の4及び6,甲19の3ないし5)。 (6)以上の事実からすれば,引用商標は,少なくとも本件商標の登録出願日前には,申立人及びその諸製品を表す商標として,日本のみならず世界各国で,取引者,需要者の間において広く認識され,周知著名なものとなっており,その著名性は現在においても継続している。 4 商品の関連性 本件商標と引用商標の指定商品は,同一又は類似の関係にあるとはいえない。しかしながら,申立人は,前述したように引用商標を,自動車に搭載あるいは評価・試験するための多岐にわたる機器に使用しており,一方で本件商標も自動車に搭載するバッテリーを指定商品としている。それ故に,本件商標が指定商品に使用された場合であっても,看者をして商品の出所について混同するおそれがある。 5 商標法第4条第1項第15号該当性 商標法第4条第1項第15号について,最高裁平成10年(行ヒ)第85号同12年7月11日第三小法廷判決で判示されている。そこで,本件商標について検討すると,本件商標は,指定商品「自動車用バッテリー」に使用した場合,申立人の商品を示すものとして周知・著名な引用商標と類似するものであること,引用商標は,自動車の分野を含む申立人の商品を示すものとして周知・著名であることに照らせば,商標権者が本件商標をその指定商品に使用した場合,これに接する取引者・需要者は,周知・著名な「R&S」ブランドを容易に想起するというべきであるから,当該商品が申立人の子会社,関係会社若しくは系列会社等営業上密接な関係にある者,又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品であると誤信し,商品の出所について誤認する可能性が高いというものである。 また,本件商標は,申立人の表示の持つ顧客吸引力の希釈化(ダイリューション)を招く結果を生じかねない。 したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号の「混同を生ずるおそれがある商標」にあたるといえる。 第3 当審の判断 1 引用商標の周知著名性について (1)引用商標が周知著名であるとして申立人の提出した証拠によれば,以下の事実が認められる。 申立人は,1933年に設立され,70か国以上を拠点とし,エレクトロニクス,電子計測,IT,無線通信分野における製品の開発,製造,販売,保守サービスを行うドイツの会社であって(甲4及び甲5),グループの年商は,18.3億ユーロ(2014/2015)に上り,うち90%をドイツ本国以外で売り上げる(甲3)。 また,申立人は,我が国に,2003(平成15)年4月1日にローデ・シュワルツ・サポート・センター・ジャパン株式会社(申立人が100%株式出資)を設立し,同社は,同年5月に現在のローデシュワルツジャパン社へと商号を変更した(甲5)。ローデシュワルツジャパン社は,2005(平成17)年8月には,「対日投資貢献企業」として,経済産業大臣より表彰を受けているところ,該受賞企業一覧の「企業名(企業規模)」欄には,「ローデ・シュワルツ・ジャパン(株)[ドイツからの投資](資本金3.3億円(うち外資100%),従業員数35人/東京都)」と記載,「評価される点」の欄には,「・・・大手計測器メーカーであり,操作性に優れた測定器を開発(例えば携帯電話の性能をチェックする無線機テスタは機能及び操作性に優れており,世界市場でトップレベルのシェアを獲得)。・・・日本における事業を急速に拡大。」の記載がある(甲10)。 そして,申立人のホームページ(甲3)の最初の頁には,「ROHDE&SCHWARZ」の表示があり,申立人の業績等が英語表記で紹介されている。 また,ローデシュワルツジャパン社が発行する「Test&Measurement総合カタログ2010/2011」(甲4)には,該カタログ表紙に,シグナル及びスペクトラム・アナライザ並びにハンドヘルド・スペクトラム・アナライザの写真とともに「R&S○FSV」(「○」の表記は,小さい○の中に「R」が表示されている。以下同じ。)及び「R&S○FSH4/8」と表示され,20頁の「スペクトラム・アナライザ」の頁には,型番の欄に「R&S○FSH4/8」及び「R&S○FSV」の記載がある。 そして,ローデシュワルツジャパン社が2006年3月に発行する「Products Guide Vol.7」(甲5)の表紙には,「ROHDE&SCHWARZ」及び「ローデ・シュワルツ・ジャパン株式会社」の表示があり,スペクトラム・アナライザのラインアップとして,「R&S○FSH」,「R&S○FS300」,「R&S○FSL」等の記載があり,申立人がローデシュワルツジャパン社に2011年8月24日に発行したインボイス(甲6の1)に「Material Description」の欄に「Pulse modulator for R&S○SMB-B101/102/103/106」等と記載され,2008年9月1日更新のローデシュワルツジャパン社の各種商品の価格表(甲7)には,「R&S DV-HDTV」,「R&S DVG」等の記載がある。 さらに,申立人又はローデシュワルツジャパン社が2013年から2016年に発行の「NEWS」(甲8の1ないし7)には,「ROHDE&SCHWARZ」の表示があり,無線技術,汎用測定器,放送機器等の商品が掲載され,それらの商品が写真とともに,例えば,「放送機器/信号発生器/アナライザ」に「R&S○BTC」(甲8の2),「コンフォーマンス試験システム」に「R&S○TS8980」(甲8の4)等の記載がある。 (2)以上からすると,申立人は,エレクトロニクス,電子計測,無線通信等多岐にわたる事業を展開し,グループとして相当程度の年商があり,特に計測器メーカーとして知られているものである。そして,我が国において,遅くとも2006年には,例えば,スペクトラム・アナライザ等の商品に「R&S○FSH」,「R&S○FS300」,「R&S○FSL」等と付している。 しかしながら,多岐にわたる申立人グループの業務全体の年商が示され,引用商標が申立人の取り扱う商品に上記のように使用されているとしても,引用商標を使用した商品に関する市場占有率,販売数量,販売高,広告の範囲,回数等の事実を示す証拠はない。 してみれば,引用商標は,これを本件商標の登録出願時及び登録査定時において,申立人の取り扱う商品を表示する商標として,我が国の取引者及び需要者の間に広く認識されていたものとは認めるに足りない。 なお,ローデシュワルツジャパン社は,様々な展示会に出展,セミナー(ウェブセミナーを含む)を主催,ワークショップのスポンサーとなっており,申立人の雑誌広告が日経BP広告賞で優秀広告賞を受賞及び各種活動をしている(甲11ないし甲18)と主張しているところ,これらには,「ROHDE&SCHWARZ」の表示又は「ローデ・シュワルツ・ジャパン」との表示が使用されているものの,引用商標の表示が見いだせない。 以上を総合すると,引用商標は,申立人の業務に係る商品を表示するものとして,本件商標の登録出願時及び登録査定時に,その取引者及び需要者の間に広く認識されていたものと認めることはできない。 2 本件商標と引用商標の類否 本件商標は,別掲1のとおり,隅丸長方形枠内の中央にややデザイン化された「R&S」(「&」は,両側の文字より小さく表示されている。)の文字を表してなるところ,隅丸長方形は,ありふれた輪郭図形というべきものであるから,ややデザイン化された「R&S」の文字が自他商品の識別標識としての機能を有するものといえるものであり,他方,引用商標も「R&S」の文字を書してなるものである。 本件商標及び引用商標は,その構成文字から,「アールアンドエス」の称呼を生じるというのが相当であり,該文字は,辞書に掲載が認められず,また,略称,略号として広く知られているというような事情も見いだせないから,特定の観念を生じないものといえる。 そうすると,本件商標と引用商標とは,観念において比較することができないとしても,両者共「R&S」の文字を表してなると認識されるから,外観において近似し,「アールアンドエス」の称呼を共通にするものといえる。 したがって,本件商標と引用商標とは,類似する商標といえる。 3 出所の混同のおそれについて 引用商標は,前記1のとおり,本件商標の登録出願時及び登録査定時に,我が国において申立人の業務に係る商品を表すものとして広く認識されていたということはできない。 してみれば,本件商標と引用商標とが類似し,また,仮に申立人がいうように,両商標に係る指定商品において,関連性が多少あるとしても,引用商標は,需要者の間に広く認識されていたものではないから,商標権者が本件商標をその指定商品に使用しても,取引者,需要者をして引用商標を連想し,又は想起させることはなく,その商品が申立人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように誤認し,商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。 4 むすび 以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第15号に違反してされたものではないから,商標法第43条の3第4項の規定に基づき,維持すべきものである。 よって,結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1(本件商標) 別掲2(引用商標の指定商品) 第9類「Electric and electronic measuring and testing apparatus and instruments; luminous or mechanical signals; electric installations for the remote control of industrial operations; electric and electronic communications technology equipment; measuring and testing apparatus for sound, image and net communications engineering; high frequency transmitting and receiving apparatus; communication apparatus and instruments for radio network base stations; aerials; automatic sets for testing electromagnetic compatibility; automatic testing devices for the manufacture of mobile communications equipment; radio receivers, telephones; data processing equipment and computers; computer peripherals, equipment for data entry, equipment for data output, equipment for data storage and data transmission equipment; computer programs and computer data bases; computer hardware and software, including computer software for application in the field of the network and system management as well as for the development of further software; computer hardware and software, including computer software for entering and calling up information in the Internet and the worldwide web; computer software downloadable from a global computer network; computer programs for using the Internet and the wordlwide web; computer programs retrievable from the Internet and worldwide web; computer hardware and software, in particular for access to Internet systems and for using these systems.」 |
異議決定日 | 2016-11-10 |
出願番号 | 商願2015-77176(T2015-77176) |
審決分類 |
T
1
651・
271-
Y
(W09)
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最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 豊田 純一 |
特許庁審判長 |
酒井 福造 |
特許庁審判官 |
中束 としえ 平澤 芳行 |
登録日 | 2016-01-22 |
登録番号 | 商標登録第5821159号(T5821159) |
権利者 | 昭和シェル石油株式会社 |
商標の称呼 | アアルアンドエス、アアルエス |
代理人 | 藤倉 大作 |
代理人 | 辻居 幸一 |
代理人 | 江崎 光史 |
代理人 | 松尾 和子 |
代理人 | 苫米地 正啓 |
代理人 | 中村 稔 |
代理人 | 熊倉 禎男 |
代理人 | 佐久間 洋子 |
代理人 | 田崎 恵美子 |
代理人 | 田中 伸一郎 |
代理人 | 井滝 裕敬 |