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審決分類 審判 査定不服 商4条1項7号 公序、良俗 登録しない W09
管理番号 1322432 
審判番号 不服2015-21319 
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2015-12-01 
確定日 2016-11-25 
事件の表示 商願2015-3360拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、「建築大学」の文字を標準文字で表してなり、第9類「建築施工の見積及び工期設定のための電子計算機用プログラム,その他の電子計算機用プログラム」を指定商品として、平成27年1月16日に商標登録出願されたものである。

2 原査定の拒絶の理由の要点
原査定は、「本願商標は、『建築大学』の文字を書してなるところ、学校教育法(昭和22年法律第26号)第135条は、『専修学校、各種学校その他第1条に掲げるもの以外の教育施設は、同条に掲げる学校の名称又は大学院の名称を用いてはならない。』と規定している。そうすると、『学校法人』でない出願人が、『大学』の文字を有する本願商標を自己の商標として採択・使用することは、商取引の秩序を乱すものであり、公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある。したがって、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審においてした証拠調べ通知
当審において、本願商標が商標法第4条第1項第7号に該当するか否かについて、職権に基づく証拠調べを実施し、同法第56条第1項で準用する特許法第150条第5項の規定に基づき、請求人に対し、平成28年5月19日付けの証拠調べ通知書(別掲参照)によってこれを開示し、期間を指定して、意見を述べる機会を与えたが、請求人は、何ら意見を述べていない。

4 当審の判断
(1)本願商標の商標法第4条第1項第7号該当性について
ア 本願商標は、前記1のとおり、「建築大学」の文字を標準文字で表してなるところ、別掲1のとおり、学校教育法に基づいて設置された大学において「建築」に関する学術の研究がなされ、教授の対象となっていること、また、別掲2のとおり、「建築大学」の文字が、「建築に関する学術の研究及び教育を行う最高機関の総称」の意を表示する語として使用されている事実があること、さらに、別掲3のとおり、学校教育法により設立された大学の名称として、「研究又は教育の内容を想起させる語+『大学』」という組み合わせのみからなる名称の大学が少なからず存在することからすれば、本願商標を構成する「建築大学」の文字は、学校教育法に基づいて設置された大学の名称を表示したものであるかのように看取され観念される可能性が高いというべきである。
イ また、学校教育法は第83条第2項で「大学は、その目的の実現をするための教育研究を行い、その成果を広く社会に提供することにより、社会の発展に寄与するものとする。」と規定している。そして、本願の指定商品は「建築施工の見積及び工期設定のための電子計算機用プログラム,その他の電子計算機用プログラム」であるところ、別掲4のとおり、学校教育法により設立された大学が単独で又は他大学や企業等と共同して本願商標に係る指定商品の分野における商品を研究開発し、一般に提供又は販売している事実があること、また、別掲5のとおり、学校教育法により設立された大学発のベンチャー(大学における教育研究に基づき、新たな技術やビジネス手法をもとにして設立した企業)が本願商標に係る指定商品の分野における商品を研究開発し、販売している事実があることを踏まえると、本願商標をその指定商品に使用するときには、これに接する一般需要者に対し、当該商品が、あたかも学校教育法に基づいて設置された大学における研究開発により生産されたものであるかのような誤認を生じさせるおそれがあるというべきである。
ウ さらに、学校教育法は、第1条で「この法律で、学校とは、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校とする。」、第3条で「学校を設置しようとする者は、学校の種類に応じ、文部科学大臣の定める設備、編制その他に関する設置基準に従い、これを設置しなければならない。」及び第135条第1項で「専修学校、各種学校その他第1条に掲げるもの以外の教育施設は、同条に掲げる学校の名称又は大学院の名称を用いてはならない。」と規定しているところ、これは、一定の教育又は研究上の設置目的を有し、法令に定める設置基準等の条件を具備する同法第1条に定める学校の教育を公認するとともに、第1条に掲げる学校以外の教育施設が第1条掲記の「学校の名称」を用いることによって、これに接した者が当該教育施設の基本的性格について誤った認識を持ち、不利益を被らないようにするためのものと解される。
このような学校教育法の規定からすると、「大学」との名称を用いる教育施設は、学校教育法所定の最高学府であると一般に認識されるものであるから、前記アのような観念が生ずる可能性が高い本願商標は、それが使用される商品次第では、「建築」という学術の研究分野についての、学校教育法所定の最高学府である大学に関連する商標との認識が持たれることになりかねない。
エ そうすると、学校教育法に基づいて設置された大学を表示するものと誤認されるおそれのある本願商標を、学校教育法により設立された大学や大学発のベンチャー等により研究開発され一般に提供又は販売されることも多いものと認められる本願商標の指定商品に使用する場合は、これに接した需要者に対し、その商品があたかも学校教育法に基づいて設置された大学における研究開発により生産されたものであるかのように誤認を生じさせることになり、教育施設である「学校」の設置基準を法定した上で、この基準を満たした教育施設にのみその基本的性格を表示する学校の名称を使用させることによって、学校教育制度についての信頼を維持しようとする学校教育法第135条第1項の趣旨ないし公的要請に反し、学校教育制度に対する社会的信頼を害することになるというべきである。
したがって、本願商標は、公の秩序を害するおそれがある商標というべきである。
(2)まとめ
以上のとおり、本願商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものであるから、登録することができない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲 平成28年5月19日付けの証拠調べ通知により開示した事実
1 「建築」に関する大学における学術研究等の存在について
「株式会社リクルートホールディングス」が運営する「大学・短期大学・専門学校の進学情報サイト/リクナビ進学」のウェブサイトにおいて、「建築学を学べる大学・短期大学(短大)の一覧[関東]」の頁には、建築について学ぶことのできる大学として、「国士舘大学」、「工学院大学」、「関東学院大学」、「共立女子大学」、「首都大学東京」、「千葉工業大学」、「足利工業大学」、「日本工業大学」、「武蔵野美術大学」、「東京工芸大学」、「東京大学」、「武蔵野大学」、「日本大学」、「東京電機大学」、「東海大学」、「東洋大学」、「文化学園大学」、「東京都市大学」、「ものつくり大学」、「明星大学」、「法政大学」など多数の大学の名称が記載されている。
(http://shingakunet.com/gakumon-search/shiko_ld010/gakumon_l1090/?areaCd=03&koshuL=daitan)

2 「建築大学」の文字が、「建築に関する学術の研究及び教育を行う最高機関の総称」の意を表示する語として使用されているものと認められる例(下線は、当合議体が付加。)
(1)2012年8月15日付け「毎日新聞」(地方版23頁)において、「行政ファイル:大和高田市来年度採用の職員募集 /奈良」の見出しの下、「一般事務職大学4人▽同高校2人▽土木大学2人▽建築大学1人▽電気高校1人▽保健師1人▽保育士・幼稚園教諭13人▽(医療)社会福祉士1人▽(同)情報処理技術者1人▽薬剤師1人を募集。受験申し込み受け付けは17日まで。」の記載がある。
(2)「株式会社学究社」が運営する「新宿美術学院」のウェブサイトにおいて、「合格実績」に関する頁に、「芸大、美大、工学系AO・推薦入試に確かな実績!」の見出しの下、「新宿美術学院では芸大・美大の建築学科実技対策のみならず、理工学系の大学入試の実技対策も行っております。・芸大を中心とした美術系建築大学への対応。」の記載がある。
(http://www.art-shinbi.com/result-sp/arc.html)
(3)「READYFOR株式会社」のウェブサイトにおいて、「Japanese Junction」という名称のプロジェクトに関する頁に、「私は、3年前にイーストロンドン大学修士過程を修了しました。大学時代は、建築学を学んでいました。イギリスの建築大学の多くは、卓上での研究以上に工房での制作活動に赴きが置かれています。・・・木を切り、コンクリートを打ちながらアイデアの練っていく過程を体験し、十分な工房設備もない日本の建築大学の大きな欠点をかんじています。」の記載がある。
(https://readyfor.jp/projects/Japan_Junction)

3 学校教育法により設立された大学の名称として、「研究又は教育の内容を想起させる語+『大学』」という組み合わせのみからなる名称の大学が、以下のとおり存在する。
(1)「健康科学大学」
(http://www.kenkoudai.ac.jp/)
(2)「産業医科大学」
(http://www.uoeh-u.ac.jp/)
(3)「電気通信大学」
(http://www.uec.ac.jp/)
(4)「人間環境大学」
(http://www.uhe.ac.jp/)
(5)「人間総合科学大学」
(http://www.human.ac.jp/)
(6)「佛教大学」
(http://www.bukkyo-u.ac.jp/)
(7)「流通科学大学」
(http://www.umds.ac.jp/)
(8)「流通経済大学」
(http://www.rku.ac.jp/)

4 学校教育法により設立された大学が単独で又は他大学や企業等と共同して本願商標に係る指定商品の分野における商品を研究開発し、一般に提供又は販売している事例
(1)「東京大学」のウェブサイトにおいて、「広報」に関する頁に、「東京大学情報基盤センターは日本ユニシス・ソフトウェアと共同開発したeラーニングシステムCFIVE(R)をオープンソースとして公開」との記載がある。
(http://www.u-tokyo.ac.jp/public/public01_160506_j.html)
(2)「名古屋大学 並列分散システム研究室」のウェブサイトにおいて、「自動運転ソフトウェアのオープンソース公開」の項目の下の「Download」をクリックすると表示されるプレスリリースの書面には、「自動運転ソフトウェアのオープンソース公開」の見出しの下、「名古屋大学は,長崎大学,産業技術総合研究所らと共同開発した自動運転ソフトウェア 『Autoware』をオープンソース公開しました 。」の記載がある。
(http://www.pdsl.jp/fot/autoware/)
(3)「早稲田大学メディアネットワークセンター」のウェブサイトにおいて、「早稲田大学発のオープンソース学習管理システム『Japrico』」の見出しの下、「早稲田大学オープンソースソフトウェア研究所では、オープンソースの学習管理システムである『Japrico』を開発し、Webサイトにて一般に公開しています。」の記載がある。
(http://www.waseda.jp/mnc/letter/2007aug/development.html)
(4)「岩手大学 地域連携推進センター」のウェブサイトにおいて、「附属インキュベーションラボ」の「研究開発内容」に関する頁に、代表者を「工学部附属金型技術研究センター 清水 友治 助教授」とし、研究員を「(有)イグノス 大和田 功」とする研究グループが、「1.画像処理システム・画像処理アプリケーションソフトウェアの製造・販売及び受託開発 2.コンピューターによる工業製品の検査装置、検査用ソフトウェアの製造、販売及び受託開発 3.ネットワークシステム、ネットワークアプリケーションソフトウェアの製造、販売及び受託開発」を行っている旨の記載がある。
(http://www.ccrd.iwate-u.ac.jp/incubationlab/labo/lab06.html)
(5)「東京工業大学 産学連携推進本部」のウェブサイトにおいて、「東工大発技術の活用事例?エーアンドエー株式会社?」の見出しの下、「本学 梅干野(ほやの)晃名誉教授と総合理工学研究科環境理工学専攻の浅輪貴史准教授は、永年、熱環境シミュレーションの研究に取り組んでいましたが、コンピュータソフトウエアを開発販売するエーアンドエー株式会社と、共同研究を行った結果、熱環境シュミレーションソフト『サーモレンダー』が、同社より2006年に商品化されました。」との記載がある。
(http://www.sangaku.titech.ac.jp/document/2014/news_0203.html)
(6)「名古屋大学 大学院情報科学研究科附属組込みシステム研究センター」のウェブサイトにおいて、「プレスリリース」の頁の「2014年3月26日」の項には、「NCESはAUTOSAR仕様ベースの次世代車載システム向けソフトウェアプラットフォームの本日よりTOPPERSプロジェクトから無償配布することになりました。『AUTOSAR仕様をベースとした車載システム向けソフトウェアプラットフォームの一般公開について』はこちらをごらんください。」の記載がある。
(https://www.nces.is.nagoya-u.ac.jp/press/)

5 学校教育法により設立された大学発のベンチャー(大学における教育研究に基づき、新たな技術やビジネス手法をもとにして設立した企業)が本願商標に係る指定商品の分野における商品を研究開発し、販売している事例
(1)「筑波大学 国際産学連携本部」のウェブサイトにおいて、「筑波大学発ベンチャーが1件設立されました-(合)MathDesign」の見出しの下、「【概要】」の項に、「振動解析、医療画像解析、ビッグデータ解析などを対象として、筑波大学における研究成果をもとに開発された解析ソフトウェアz-Paresの開発・販売・保守、および解析技術に関するコンサルティングを行う。」の記載がある。
(http://www.sanrenhonbu.tsukuba.ac.jp/%E7%AD%91%E6%B3%A2%E5%A4%A7%E5%AD%A6%E7%99%BA%E3%83%99%E3%83%B3%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%BC%E3%81%8C%EF%BC%91%E4%BB%B6%E8%A8%AD%E7%AB%8B%E3%81%95%E3%82%8C%E3%81%BE%E3%81%97%E3%81%9F-%E5%90%88-mathdes/)
(2)「株式会社東京大学エッジキャピタル」のウェブサイトにおいて、「プロメテック・ソフトウエア株式会社」の頁には、「プロメテック・ソフトウェア(株)は、次世代のデジタルコンテンツのための基盤ソフトウェアの研究開発と販売を行っている大学発ベンチャーです。エンジニアリング、産業用VR、映像・エンターテインメントの3分野を対象として、コンピュータ上で高度なリアリティを実現するライブラリ・ソフトウェアやパッケージ・ソフトウェアをご提供しております。東京大学工学系研究科・越塚誠一研究室のシミュレーション技術と新領域創成科学研究科・西田友是研究室のCG技術を中心とする国内外の先端的な計算科学技術をベースとして、世界に通用する技術力と製品力を有したソフトウェア企業を目指して、グローバルに事業を展開して参ります。」の記載がある。
(https://www.ut-ec.co.jp/portfolio/prometech_software)
(3)「徳島大学研究支援・産官学連携センター」のウェブサイトにおいて、「各種支援」の頁の、「徳島大学発ベンチャー企業一覧」には、「企業名」、「設立年月日」、「大学関係者」、「主な製品サービス」の順に、「有限会社アイ・テイ・ラボ」、「2002年8月6日」、「工学部 久保 清(学生)(寺田賢治)」、「画像ソフトウェアの開発・販売」の記載がある。
(http://www.tokushima-u.ac.jp/ccr/inside/shien.html)
(4)「名古屋大学 大学院情報科学研究科附属組込みシステム研究センター」のウェブサイトにおいて、「プレスリリース」の頁の「2015年10月1日」の項には、「名古屋大学の研究開発成果を活用して車載システム向けのソフトウェアプラットフォームを開発・販売する大学発ベンチャーとしてAPTJ株式会社を設立しました。 詳しくはこちらをご覧下さい。」の記載がある。
(https://www.nces.is.nagoya-u.ac.jp/press/)

審理終結日 2016-08-03 
結審通知日 2016-08-26 
審決日 2016-09-09 
出願番号 商願2015-3360(T2015-3360) 
審決分類 T 1 8・ 22- Z (W09)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 大渕 敏雄 
特許庁審判長 酒井 福造
特許庁審判官 渡邉 あおい
小松 里美
商標の称呼 ケンチクダイガク 
代理人 高橋 洋平 

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