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審決分類 審判 全部無効 称呼類似 無効としない W05
審判 全部無効 観念類似 無効としない W05
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない W05
審判 全部無効 外観類似 無効としない W05
管理番号 1322430 
審判番号 無効2015-890096 
総通号数 205 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2017-01-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-11-27 
確定日 2016-11-21 
事件の表示 上記当事者間の登録第5693609号商標の商標登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5693609号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成からなり,平成26年2月18日に登録出願,同年6月17日に登録査定,第5類「サプリメント,ナットウキナーゼを使用したサプリメント,DHAおよびEPAを使用したサプリメント,マリアアザミを使用したサプリメント,スクワランを使用したサプリメント,コラーゲンを使用したサプリメント」を指定商品として,同年8月15日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
1 商標法第4条第1項第11号の無効理由に引用する商標
請求人が,本件商標の登録の無効の理由において,本件商標が商標法第4条第1項第11号に該当するとして引用する商標は,次の2件の登録商標(以下,これらをまとめていうときは「引用商標」という場合がある。)であり,いずれも現に有効に存続しているものである。
(1)登録第5106326商標(以下「引用商標1」という。)は,「BION」の欧文字を標準文字で表してなり,平成17年11月18日に登録出願,第29類「ビタミン・ミネラル・微量元素を主成分とする粉状・顆粒状・錠剤状・カプセル状・液状・粒状・棒状・ジェル状・ゼリー状又はペースト状の加工食品,ビタミン・ミネラル・微量元素を主成分としプロバイオティック物質を添加してなる粉状・顆粒状・錠剤状・カプセル状・液状・粒状・棒状・ジェル状・ゼリー状又はペースト状の加工食品,ビタミン・ミネラル・微量元素を主成分としプロバイオティック物質・人参エキス・ブラックベリーエキス・ルテインを添加してなる粉状・顆粒状・錠剤状・カプセル状・液状・粒状・棒状・ジェル状・ゼリー状又はペースト状の加工食品,ビタミン・ミネラル・プロバイオティック物質を主成分とする粉状・顆粒状・錠剤状・カプセル状・液状・粒状・棒状・ジェル状・ゼリー状又はペースト状の加工食品,ビタミン・ミネラル・プロバイオティック物質を主成分とし微量元素を添加してなる粉状・顆粒状・錠剤状・カプセル状・液状・粒状・棒状・ジェル状・ゼリー状又はペースト状の加工食品,ビタミンを主成分としミネラル・プロバイオティック物質・微量元素を添加してなる粉状・顆粒状・錠剤状・カプセル状・液状・粒状・棒状・ジェル状・ゼリー状又はペースト状の加工食品,ビタミンを主成分としミネラル・プロバイオティック物質・微量元素・人参エキス・ブラックベリーエキス・ルテインを添加してなる粉状・顆粒状・錠剤状・カプセル状・液状・粒状・棒状・ジェル状・ゼリー状又はペースト状の加工食品,ビタミン・ミネラル・微量元素・プロバイオティック物質を主成分とし人参エキス・ブラックベリーエキス・ルテインを添加してなる粉状・顆粒状・錠剤状・カプセル状・液状・粒状・棒状・ジェル状・ゼリー状又はペースト状の加工食品,ビタミン・ミネラル・微量元素及びプロバイオティック物質を主成分とする粉状・顆粒状・錠剤状・カプセル状・液状・粒状・棒状・ジェル状・ゼリー状又はペースト状の加工食品,ビタミン・ミネラル・微量元素及び有用微生物粉末を主成分とする粉状・顆粒状・錠剤状・カプセル状・液状・粒状・棒状・ジェル状・ゼリー状又はペースト状の加工食品,ビタミンを主成分とする粉状・顆粒状・錠剤状・カプセル状・液状・粒状・棒状・ジェル状・ゼリー状又はペースト状の加工食品,ミネラルを主成分とする粉状・顆粒状・錠剤状・カプセル状・液状・粒状・棒状・ジェル状・ゼリー状又はペースト状の加工食品,微量元素を主成分とする粉状・顆粒状・錠剤状・カプセル状・液状・粒状・棒状・ジェル状・ゼリー状又はペースト状の加工食品,有用微生物粉末を主成分とする粉状・顆粒状・錠剤状・カプセル状・液状・粒状・棒状・ジェル状・ゼリー状又はペースト状の加工食品,動物性物質を主成分とする粉状・顆粒状・錠剤状・カプセル状・液状・粒状・棒状・ジェル状・ゼリー状又はペースト状の加工食品,蛋白質を主成分とする粉状・顆粒状・錠剤状・カプセル状・液状・粒状・棒状・ジェル状・ゼリー状又はペースト状の加工食品,ゼラチンを主成分とする粉状・顆粒状・錠剤状・カプセル状・液状・粒状・棒状・ジェル状・ゼリー状又はペースト状の加工食品,食用油脂を主成分とする粉状・顆粒状・錠剤状・カプセル状・液状・粒状・棒状・ジェル状・ゼリー状又はペースト状の加工食品,藻類エキスを主成分とする粉状・顆粒状・錠剤状・カプセル状・液状・粒状・棒状・ジェル状・ゼリー状又はペースト状の加工食品,ミルクを主成分としビタミン・ミネラル・微量元素を添加してなる粉状・顆粒状・錠剤状・カプセル状・液状・粒状・棒状・ジェル状・ゼリー状又はペースト状の加工食品,ミルクを主成分とする粉状・顆粒状・錠剤状・カプセル状・液状・粒状・棒状・ジェル状・ゼリー状又はペースト状の加工食品,動物性蛋白又は植物性蛋白を主成分としビタミン・ミネラル・微量元素を添加してなる粉状・顆粒状・錠剤状・カプセル状・液状・粒状・棒状・ジェル状・ゼリー状又はペースト状の加工食品」及び第30類「酵母を主成分とする粉状・顆粒状・錠剤状・カプセル状・液状・粒状・棒状・ジェル状・ゼリー状又はペースト状の加工食品,酵母を主成分としビタミン・ミネラル・微量元素を添加してなる粉状・顆粒状・錠剤状・カプセル状・液状・粒状・棒状・ジェル状・ゼリー状又はペースト状の加工食品,こうじを主成分とする粉状・顆粒状・錠剤状・カプセル状・液状・粒状・棒状・ジェル状・ゼリー状又はペースト状の加工食品,こうじを主成分としビタミン・ミネラル・微量元素を添加してなる粉状・顆粒状・錠剤状・カプセル状・液状・粒状・棒状・ジェル状・ゼリー状又はペースト状の加工食品,小麦粉・その他の穀物・その他の炭水化物を主成分とする粉状・顆粒状・錠剤状・カプセル状・液状・粒状・棒状・ジェル状・ゼリー状又はペースト状の加工食品,コーヒーを主成分とする粉状・顆粒状・錠剤状・カプセル状・液状・粒状・棒状・ジェル状・ゼリー状又はペースト状の加工食品,茶を主成分とする粉状・顆粒状・錠剤状・カプセル状・液状・粒状・棒状・ジェル状・ゼリー状又はペースト状の加工食品,糖類を主成分とする粉状・顆粒状・錠剤状・カプセル状・液状・粒状・棒状・ジェル状・ゼリー状又はペースト状の加工食品,はちみつ・ローヤルゼリー又はプロポリスを主成分とする粉状・顆粒状・錠剤状・カプセル状・液状・粒状・棒状・ジェル状・ゼリー状又はペースト状の加工食品」を指定商品として,同20年1月25日に設定登録されたものである。
(2)国際登録第1082480商標(以下「引用商標2」という。)は,別掲2のとおりの構成からなり,2010年9月4日にGermanyにした商標の登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張し,2010年(平成22年)年10月25日に国際商標登録出願,第29類「Processed food for non-medical purposes consisting of fish, fish oils, meat, milk products, vegetables, fruits and oils in tablet.」及び第30類「Processed food for non-medical purposes consisting of cereals, minerals and spices in tablet; processed food for non-medical purposes consisting of cereals, minerals and spices in bars and powders.」を指定商品として,平成25年5月31日に設定登録されたものである。
2 商標法第4条第1項第15号の無効理由に引用する標章
請求人が,本件商標の登録の無効の理由において,本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当するとして引用する標章「BION」(以下「引用標章」という。)は,請求人のサプリメント商品を示すものとして,わが国において,周知であるというものである。

第3 請求人の主張
請求人は,本件商標の登録は,これを無効とする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,審判請求書において,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第99号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求の理由
(1)請求人について
請求人「Merck KGaA」は,ドイツに本拠をおく世界的な医薬・化学品企業であり,「Merck」商標が,「J-Plat Pat『日本周知・著名商標検索』」に掲載されていることからも明らかなように(甲7),わが国の医薬・医療品,試薬,化学製品,液晶・顔料等の工業製品,栄養補助食品などの分野において,周知かつ著名な存在である。
メルク・グループの起源は,フリードリヒ・ヤコブ・メルク氏が,ドイツのダルムシュタットに「エングルアポテク(天使薬局)」を創業した1668年にまで遡り,同グループは,世界に現存する医療・化学を扱う企業の中で,最も古い歴史を持つ企業であるとともに,特に医薬品・化学品・工業品の分野においては,世界指折りの規模と実績を誇っている。請求人は,1995年に,メルク・グループ組織再編の一環として,ドイツのダルムシュタットに設立された法人で,メルク・グループ全事業を統括する役割を担っている(甲8)。
現在,メルク・グループは,世界66カ国において約39,000人の従業員を抱える巨大規模の製薬及び化学薬品グループに成長している(甲10)。
メルク・グループ全体の売上高は,2013年の総売上高は111億ユーロ(およそ1兆5,540億円)という巨額なものであり(甲9),翌2014年には過去最高の115億ユーロ(およそ1兆6,100億円)の売上高を記録し(甲10),その業績は伸長し続けている。
(2)利害関係について
請求人は,そのコンシューマー・ヘルスケア事業部において,サプリメントやビタミン剤などの一般消費者向けの製品を取り扱っており(甲11),同事業部が展開する「BION」ブランド(「バイオン」の称呼で取引されている)に係るサプリメントは,世界60カ国で販売されている(日本ほか複数の国においては「BION3」の名称で承認・販売)主力製品である(甲11ないし甲14)。また,請求人は,「BION」からなる又はこれを含む登録商標を日本国内において保有している。
そして,本件商標の使用は,これら請求人の登録商標との間で出所の混同を生じさせるおそれが極めて高いものであるから,請求人が当該混同のおそれを防除すべく,本件審判を請求することにつき利害関係を有していることは明らかである。
(3)本件商標の登録が無効とされるべき理由
本件商標は,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当するにもかかわらず登録されたものであるから,その登録は,同法第46条第1項の規定により無効とされるべきものである。
ア 商標法第4条第1項第11号の該当性
(ア)引用する商標について
請求人は,その使用に係る周知商標(引用標章)について,商標登録を有している。
本件商標は,引用商標と類似するものであって,引用商標に係る指定商品と同一又は類似の商品について使用するものであるから,商標法第4条第1項第11号に該当する。
(イ)引用標章の使用状況及び周知性
引用標章の使用に係る商品は,1粒中にプロバイオティクス乳酸菌,ビタミン,ミネラルの3つを配合したタブレット状のサプリメント(以下「請求人商品」という。)であり,2001年に請求人の所在国であるドイツにおいて販売が開始され(甲19),現在,世界60カ国以上で販売されている(甲11,なお,日本ほか複数の国においては「BION 3」の名称で承認,販売されている(甲12ないし甲14)。)。
請求人商品は,乳酸菌・ビタミン・ミネラルを別の3層にすることにより,乳酸菌がミネラルなどの他の成分の影響を受けにくいようにし,乳酸菌を死滅させずに生きたまま腸に届け,効率よく身体に補給させることができるという特許製法を利用したもので,人の健康を大きく左右する「腸内健康」の重要性が見直され,かつ,世界的に健康ブームとなってきている昨今,同商品は「腸内健康」に大きく寄与するものとして高い注目を浴びている。
そして,10年以上に及ぶ継続的な請求人商品の販売・営業活動の結果,昨今の請求人商品の世界的な売り上げは,2011年に38,516,000ユーロ(現レートでおよそ,51億2262万円),2012年に35,715,000ユーロ(現レートでおよそ,47億5009万円),2013年に38,387,000ユーロ(現レートでおよそ,51億0547万円)という額にのぼっており(甲19),「BION」は,請求人の主力の世界ブランドとして,世界中で使用されているものである。
(ウ)日本国内における使用
請求人は,2007年に,請求人商品の日本での独占的販売権を,我が国のOTC医薬品市場の有力企業である佐藤製薬株式会社(以下「佐藤製薬」という。)に供与することで,日本国内における請求人商品の販売を開始した。佐藤製薬は,2007年の発売以降,2014年末までに合計で26万1,496個を売り上げ,2014年末までの売上総額は4億3,603万円にのぼる(甲15ないし甲18)。当該販売実績をあげるにあたって,佐藤製薬は,2007年の発売以降,現在に至るまで,請求人商品の大規模な宣伝広告活動を継続して行っている。
請求人商品は,2007年の発売から,佐藤製薬の販売網を利用し,日本全国の薬局やドラッグストア等において販売されているところ,薬局やドラッグストア等において,POP広告材,製品パンフレット,その他の広告用具を利用し,店頭での請求人商品の訴求を行っているほか,発売時から今日現在まで,同店舗を来訪した客や各種イベントや街頭の一般消費者に対し「3日分(3粒)サンプル」を6万3千個以上,「1日分(1粒)サンプル」を7万5千個以上配布してきた(甲13,甲14,甲20及び甲21)。
また,佐藤製薬は,人気タレントを採用してのテレビコマーシャル,街頭ポスター,車内広告,雑誌広告出稿,冊子その他の販促品配布を実施したのをはじめ,例えば,「Gainer(光文社)2014年8月号」(88,034部発行),「Gainer(光文社)2014年4月号」(88,034部),「女性自身(光文社)2014年7月29日発売」(400,599部),「anan(マガジンハウス)No.1899/2014年3月26日発売」(194,124部),「Tarzan(マガジンハウス)No.661/2014年11月6日発売」(201,848部),「クロワッサンNo.890(2014年11月25日)発売」(249,000部)など人気雑誌や一般紙・専門紙への特集記事掲載による広告などを積極的に行ってきた(甲22ないし甲46)。
そのほか,佐藤製薬は,展示会においても製品の宣伝広告を行っており,直近では例えば,2014年5月24?25日に開催された「WOMAN EXPO」(主催:日本経済新聞社,日経BP社/後援:経済産業省/来場者:約10,000人)において専用ブースを設け,請求人商品を展示したり,4,000個のサンプル品を配布したりして,請求人商品の訴求を図っている(甲47)。
さらに,佐藤製薬は,公式ウェブサイトによる広告,インターネットによるキャンペーンの定期的な実施,第三者のメディア・サイトへの特集記事掲載による広告などの一般的なインターネット広告に加え,ユニークな広告方法として,一般需要者からサンプリングモニターを募集し,モニターに自己のブログ等で,引用標章(審決注:「本願商標」と記載されているが,「引用標章」と思料する。)に係る製品の効果や感想を綴ってもらうことにより,インターネットユーザー間の口コミによる宣伝効果を利用するなど,インターネットによる宣伝広告を積極的に活用し力を入れてきた(甲12,甲48ないし甲85)。
しかして,佐藤製薬が,2007年以降,上記宣伝広告活動に費やした費用は1億7千万円以上に上っており(甲18及び甲86),当該費用額は,その広告規模の大きさを示している。
(エ)日本国外における使用及び登録状況
請求人は,2001年にドイツにおいて引用標章に係るサプリメントの販売を開始し,その後,2001年にチェコ,2002年にフランス,2005年にロシア,2014年にブラジル,2015年にコロンビアというように,各国で続々と販売を開始し(甲19),現在,60カ国以上において販売している。
また,請求人は,その公式ウェブサイトにおいて引用標章を英語でグローバルに紹介しているほか(甲11),請求人商品の日本専用のウェブサイトが存在するように,他の国でも「BION」ブランドの専用公式ウェブサイトが開設されている(甲87及び甲88)。
そして,欧州連合(ベルギー,ブルガリア,チェコ,デンマーク,ドイツ,エストニア,アイルランド,ギリシャ,スペイン,フランス等)など132カ国において,391の「BION」関連の登録・出願商標を保有している(甲89)。
(オ)商品及び役務の類似性
本件商標の指定商品は,いずれも第5類「サプリメント」に該当するものである(甲90及び甲91)。
一方の引用商標の指定商品は,平成24年1月1日施行の商標法施行規則別表の一部改正前に,「いわゆる健康食品」として第29類に分類されたものである(甲92)。従前,「いわゆる健康食品」は,市場におけるサプリメント等に相当する商品として,「○○を主成分とする○○状の加工食品」という表示をもって,商品の主原料により第29類又は第30類に分類されていたが,前記一部改正によって,「サプリメント」という表示に改められ,一律第5類に分類されることとなったものである(甲93)。
したがって,引用商標の指定商品は,実質的には「サプリメント」に相当するものであり,類似商品・役務審査基準に照らしても,本件商標の指定商品と類似関係にあることは明らかである。
より具体的には,本件商標の指定商品は「ナットウキナーゼ」,「DHA」,「EPA」といった栄養素を含む一般的な栄養補給用のサプリメントであるところ,これら商品は,一般的にプラスチック製ボトルや袋パッケージ等に包装され,薬局やドラッグストアの店内に陳列され,一般消費者向けに販売されるものである(甲94及び甲95)。
一方の請求人商品も,一般消費者向けの栄養補給用のサプリメントとして,日本全国多くの薬局やドラッグストアの店内に陳列され,販売されているものである。
したがって,請求人商品が実際に日本全国の薬局やドラッグストアにおいて販売されているという状況下において,それら商品が現に「ナットウキナーゼ」,「DHA」,「EPA」等の栄養素を含む一般的なサプリメントと同じ店舗又は棚に陳列され,販売されていることは明白であり,請求人商品と本件商標の使用に係るサプリメントが同一店舗の同一棚に陳列されて,同一の需要者の目に触れ,また,購入される可能性は非常に高いのである。このことは,両商標の混同蓋然性を肯定するにあたって斟酌されるべき重要な取引の実情の一つというべきである。
そして,引用標章が実際にサプリメントの商標として使用され高い周知性を獲得していること,及び,後記する両商標の酷似性の程度を総じてみれば,本件商標がその指定商品について使用される場合に,引用標章との間で出所の混同が生じるおそれが高いことは明白といわざるを得ない。
(カ)商標の類似性
本件商標は,商標の識別の際に最も注意の払われる冒頭部分において,引用商標の「BION」をそのまま全部含んでいるものであり,さらに言えば,アルファベット1文字「y」を,単に引用商標の「BION」の語尾に付加しただけのものである。
しかして,一般需要者は,その日常の取引の中では,あいまいな記憶や印象だけにたよって商標を特定する場合も少なくないところ,そのような場面において,周知性と独創性の高い引用商標の「BION」を語頭にそのまま包含する本件商標に接すれば,本件商標中の「BION」部分が特に需要者の注意を惹き,請求人商品を想起・連想させるおそれは非常に高く,需要者がこれを請求人商品として誤認混同してしまうおそれは大である。
また,一般的に,ある英単語(名詞や形容詞)に「y」が付加されることにより同義の派生語が形成されることは広く知られており,日常的な外来語としても我が国において使用されているところである。
表2の単語同士は,外観において単に「y」の有無しか違わず,また,意味においてもほぼ同義であることから,一般的にはかなり高い共通性・近似性をもった単語同士として捉えられているものである。
しかして,「BION」と「Biony」は,両語の外観はもとよりそこから生じる印象や観念が,相当似通ったものになるといわざるを得ない。
また,本件商標からは「バイオニー」という称呼が生じ得るところ,引用商標から生ずる称呼「バイオン」とは,「ニー」と「ン」で異なるが,これらの差異は,明瞭に発音・聴取されにくい末尾に位置しているから,両者は称呼においても相当程度近似した印象を与えるものである。
上記主張に関連し,本件商標と引用商標の類似性を考察するにあたって,判決・審決を参照する(昭和51年7月13日東京高裁判決(昭和50年(行ケ)第74号)。
本件についてみると,サプリメントの分野において周知性を獲得している引用商標を,「名詞として意味を構成・伝達する言語の機能上一般的に最も重要な基幹部分としてみられる」語頭においてそのまま含んでいる本件商標に,同じ商品分野の需要者及び取引者が接すれば,引用商標を想起し,時としてこれを誤認混同してしまうおそれがあるのは明白といえる。
以上のとおり,本件商標と引用商標とは,全体として相紛らわしいものであり,類似するものであることが明らかである。また,引用商標の長期間の継続的使用及びそれに伴う著名性,並びに,前記した両商品の販売場所,流通経路,需要者・取引者層,用途その他の取引実情の共通性(同じ店舗,同じ陳列棚において,同じ需要者の目に触れるものである)を考慮すれば,本件商標と引用商標とは,混同が生じるおそれの高い類似商標といわねばならない。
(キ)小括
以上のとおり,本件商標は,引用商標と類似する商標であり,かつ,本件商標に係る指定商品は,引用商標に係る指定商品と類似するものであるから,商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
イ 商標法第4条第1項第15号の該当性
(ア)「混同を生ずるおそれ」には広義の混同を含むこと及び「混同を生ずるおそれ」の判断基準について
混同を生ずるおそれ」がいわゆる「狭義の混同を生ずるおそれ」のみならず,広く「広義の混同を生ずるおそれ」まで含むことについて,「商標法第4条第1項第15号にいう『他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標』には,当該商標をその指定商品又は指定役務・・・に使用したときに,当該商品等が他人の商品又は役務・・・に係るものであると誤信されるおそれがある商標のみならず,当該商品等が右他人との間にいわゆる親子会社や系列会社等の緊密な営業上の関係又は同一の表示による商品化事業を営むグループに属する関係にある営業主の業務に係る商品等であると誤信されるおそれ・・・がある商標を含むものと解するのが相当である」と判示し,「広義の混同のおそれ」の有無の具体的判断基準として,「『混同を生ずるおそれ』の有無は,当該商標と他人の表示との類似性の程度,他人の表示の周知著名性及び独創性の程度や,当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質,用途又は目的における関連性の程度並びに商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし,当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として,総合的に判断されるべきである」と判示している。
(イ)本件商標と他人の表示との類似性
本件商標と請求人の使用に係る引用標章との類似性については,商標法第4条第1項第11号で考察したとおり,全体として相紛らわしく,明らかに類似するものである。
(ウ)他人の表示の周知著名性
引用標章は,請求人のサプリメント商品を示すものとして,わが国において,周知である。
(エ)他人の表示の独創性
「BION」は,請求人の創作に係る造語であって,わが国において,その表示の独創性は高いものというべきである。
以上の点に鑑みて,当該「BION」を語頭でそっくりそのまま包含する本件商標に接した需要者は,周知な引用標章を想起し連想するというべきである。
(オ)本件商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質,用途又は目的における関連性について
前記のとおり,本件商標に係る指定商品は,いずれも,引用標章に係る指定商品との間で,販売場所,流通経路,需要者・取引者層,用途その他の取引実情について高い共通性をもっており,類似関係にあることが明らであり,また,前記のとおり,引用標章は実際にサプリメントについて使用されているから,両者の商品が類似関係にあることは明白である。
(カ)小括
以上を総合的に考慮してみると,本件商標がその指定商品について使用された場合には,引用標章との関係において,あたかもその系列(シリーズ)商品や,同一企業又はグループ企業から販売されている商品であるかのように誤認され,請求人と組織的又は経済的に関連性を有するかのような誤った認識や出所の混同を需要者又は取引者に与えてしまう可能性が大である。 とりわけ,本件商標の如き,商標も使用商品も,引用標章と酷似するものが使用されれば,引用標章(審決注:「本件商標」と記載されているが,「引用標章」と思料する。)の顕著性や指標力は弱化・希釈化のおそれにさらされ,ひいては,請求人の営業努力及び資本投下により蓄積した信用が減殺されてしまうおそれすらある。
したがって,かかる誤認混同・商標希釈化のおそれの大きさを考えれば,本件商標が,商標法第4条第1項第15号にいう「他人の業務に係る商品又は役務と混同を生ずるおそれがある商標」に該当することは明らかというべきである。
(4)結語
以上詳述したとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に該当する。

第4 被請求人の主張
被請求人は,結論同旨の審決を求めると答弁し,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第11号証を提出した。
1 無効理由について
(1)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標と引用商標1について
(ア)外観
引用商標1は,「BION」のアルファベットを標準文字で,かつ,全て大文字で表してなる商標である。
一方,本件商標は,「Biony」のアルファベットをBroadwayフォントで表し,また,「B」を大文字とし,「iony」の部分を小文字で表してなる商標である。
このように,本件商標は,Broadwayフォントにより,「B」を大文字とし「iony」の部分を小文字で表してなる商標であるが,引用商標1は,「BION」という4文字を標準文字で,かつ,全て大文字で表してなる商標にすぎず,本件商標と引用商標1の構成は明らかに相違し,外観上明確に区別し得るものである。
請求人は,「一般的に,ある英単語(名詞や形容詞)に「y」が付加されることにより同義の派生語が形成されることは広く知られており・・・」と述べ,「Cloud」と「Cloudy」の例などを挙げている。
しかしながら,「BION」は,人名や独立した個体を意味する名詞である。例えば,「DION」とういう人名に「Y」を付けて,「DIONY」としたからといって同義の派生語となるわけではない。同様に,「LION」という動物を意味する名詞に「Y」を付けて,「LIONY」としたからといって同義の派生語となるわけではない。
(イ)観念
本件商標は,辞書などに記載された言葉ではなく,特定の観念を有するものではない。被請求人が考えた造語である。
一方,「BION」なる言葉は,辞書(乙1)によると,「ビオーン(前2世紀のギリシアの詩人)」の意味であり,古来より人の名として用いられてきたものである。
また,「BION」(バイオン)なる言葉は,辞書(乙2)によると,「独立した個体」の意味である。
よって,特定の観念を有さない本件商標と,前2世紀のギリシアの詩人や独立した個体を意味する引用商標1とでは,観念上明らかに相違し,明確に区別し得るものである。
(ウ)称呼
本件商標からは,「ビオニー」又は「バイオニー」なる称呼が生じる。
一方,引用商標1からは,「バイオン」又は「ビオン」なる称呼が生じる。
「バイオニー」という5音からなる本件商標の称呼の場合,「オニー」という発音の部分は比較的強く発音されるが,「バイオン」という4音からなる引用商標1の場合,末尾の「ン」は弱い発音となる。
このように,両称呼は,称呼全体の語感が異なっている。
よって,本件商標と引用商標1とでは,称呼の点においても明らかに相違し,明確に区別し発音,聴取されるものである。
(エ)商品の類似性について
引用商標1の指定商品である29類「ビタミン・ミネラル・微量元素を主成分とする粉状・顆粒状・錠剤状・カプセル状・液状・粒状・棒状・ジェル状・ゼリー状又はペースト状の加工食品」(類似群コード:32F15)は,現在の類似商品・役務審査基準では,本件商標の指定商品である第5類の「サプリメント」(類似群コード:32F15)に類似する(乙7)。
一方,平成24年1月1日施行の商標法施行規則別表の一部改正前から,サプリメントと薬剤は類似であることが判決において判断されている(平成14年(行ケ)第555号審決取消請求事件(東京高裁判決),平成15年(ワ)第11661号商標権侵害差止等請求事件(大阪地裁判決),平成17年(行ケ)第10763号審決取消請求事件(知財高裁判決))。
このため,平成24年1月1日施行の商標法施行規則別表の一部改正後は,第5類の薬剤(類似群コード:01B01)の備考類似として,サプリメント(類似群コード:32F15)が記載されている(乙7,甲90)。
つまり,「ビタミン剤 アミノ酸剤 滋養強壮変質剤」を含む第5類の薬剤(類似群コード:01B01)は,「サプリメント」(類似群コード:32F15)とは類似の関係にある。
イ 本件商標と引用商標2について
(ア)外観
上述した引用商標1と同様であることに加え,引用商標2の場合には,「BION」の白抜き文字の背景に特徴的な図形を付加していることから,文字の部分とは別に,図形からも外観上の自他商品等識別力を生ずる。
本件商標と引用商標2の構成は明らかに相違し,外観上明確に区別し得るものである。
(イ)観念
上述した引用商標1と同様であることに加え,引用商標2の場合には,「BION」の白抜き文字の背景に特徴的な図形を付加していることから,文字の部分とは別に,図形からも観念上の自他商品等識別力を生ずる。
よって,本件商標と引用商標2とでは,観念上明らかに相違し,明確に区別し得るものである。
(ウ)称呼
上述した引用商標1と同様であり,よって,本件商標と引用商標2とでは,称呼の点においても明らかに相違し,明確に区別し発音,聴取されるものである。
(エ)商品の類似性について
引用商標2の指定商品である第29類「Processed food for non-medical purposes consisting of fish, fish oils, meat, milk products, vegetables, fruits and oils in tablet」(類似群コード:32F15)は,現在の類似商品・役務審査基準では,本件商標の指定商品である第5類の「サプリメント」(類似群コード:32F15)に類似する(乙7)。
一方,平成24年1月1日施行の商標法施行規則別表の一部改正前から,サプリメントと薬剤は類似であることが判決において判断されていることは上述したとおりである。
ウ 引用商標の周知性並びに権利の濫用について
上述したように,本件商標は,造語であるが,より詳しくは,被請求人がビオニー株式会社を設立当時に考えた造語である。
ビオニー株式会社は,被請求人の創業者によって昭和48年4月23日に設立された会社法人であり,本店の所在地も同一である(乙3及び乙4)。
そして,ビオニー株式会社は,少なくとも1997年?2003年当時,「BIONY」なる商標が包装容器に付されたサプリメントを販売していた(乙5及び乙6)。
このように,そもそも,本件商標を日本国内において先に使用していたのは被請求人の方であり,また,サプリメントの業界において相当程度知られていたとみるべきである。
してみると,もし,本件商標の「BIONY」が引用商標と類似するというのであれば,引用商標は,サプリメントの業界において相当程度知られていた「BIONY」の存在にも関わらず,商標法第4条第1項第10号を看過されて登録されたにすぎない。
そして,このように商標登録に無効理由が存在し,それが本来登録されるべきでないものであったにも関わらず,過誤により登録された場合には,仮に無効審判請求により無効とされることがなくとも,そのような無効理由が存在することが明らかな商標権に基づく審判請求は,衡平に反し,権利の濫用として許されないというべきである。
そして,請求人は,日本では「BION3」という販売名でしか販売していないことを陳述している。いくら日本国内における「BION3」の販売実績を主張したところで,日本国内における「BION」という商標の使用を立証するものではない。
エ 指定商品の類似性並びに権利の濫用について
第5類「薬剤」(類似群コード:01B01)には,「BION」及び「ビオン」なる商標(登録第329043号,乙8及び乙9),図形+「BION」及び「ビオン」なる商標が引用商標の出願日よりも前に既に登録されている(登録第2003206号,乙10及び乙11)。
前述のように,引用商標1の指定商品である第29類「ビタミン・ミネラル・微量元素を主成分とする粉状・顆粒状・錠剤状・カプセル状・液状・粒状・棒状・ジェル状・ゼリー状又はペースト状の加工食品」,及び引用商標2の指定商品である第29類「Processed food for non-medical purposes consisting of fish, fish oils, meat, milk products, vegetables, fruits and oils in tablet」は,現在の類似商品・役務審査基準では,本件商標の指定商品である第5類の「サプリメント」に類似し,第5類「薬剤」と「サプリメント」は類似するのであるから,商標登録第329043号及び商標登録第2003206号と引用商標とは,類似の指定商品を指定するものである。
そして,「BION」及び「ビオン」なる商標登録第329043号及び商標登録第2003206号と引用商標とは,外観,観念,称呼において同一又は類似であるから,両商標が類似することは明らかである。
つまり,引用商標は,これらの登録商標と商標が類似し,指定商品も類似するのであって,引用商標はこれらの登録商標の存在にも関わらず,商標法第4条第1項第11号を看過されて登録されたにすぎない。
(2)商標法第4条第1項第15号について
ア 本件商標と,引用商標とは,商標が類似しないことは,上述のとおりである。
イ 周知著名性について
我が国では,「BION」は商標として使用されておらず,国内で周知とはいえない。
請求人は,「Merck KGaA」という企業名の著名性を述べているが,かかる企業名が本件商標に含まれているわけではない。
ウ 上述したように,ビオニー株式会社は,少なくとも1997年?2003年当時,「BIONY」なる商標を包装容器に付したサプリメントを販売していたものであり,サプリメントの業界において,相当程度知られていたとみるべきである。
したがって,我が国では全く使用されていない「BION」という商標を付した「ビタミン・ミネラル・微量元素を主成分とする粉状・顆粒状・錠剤状・カプセル状・液状・粒状・棒状・ジェル状・ゼリー状又はペースト状の加工食品」などに接した需要者は,「BIONY」なる商標と混同することはあり得るとしても,「BIONY」という商標を付したサプリメントに接した需要者が,我が国では全く使用されていない「BION」という商標を連想することはあり得ない。
よって,「BIONY」という商標を付したサプリメントに接した需要者が,我が国では全く使用されていない「BION」という商標を連想することにより,出所の混同が生じるおそれも皆無である。

第5 当審の判断
1 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は,別掲1のとおり,「Biony」の欧文字をややデザイン化して表してなるところ,構成文字に相応して「バイオニー」又は「ビオニー」の称呼を生じるものであり,また,該文字は,特定の語義を有しない一種の造語といえるものであるから,特定の観念を生じないものである。
(2)引用商標について
引用商標1は,「BION」の欧文字を標準文字で表してなるものであり,また,引用商標2は,別掲2のとおり,「Bion」の欧文字と図形を組み合わせた構成よりなるものである。
そして,引用商標は,その構成文字である「BION」又は「Bion」の欧文字から,「バイオン」又は「ビオン」の称呼を生じるものであり,また,該文字は,特定の語義を有しない一種の造語といえるものであるから,特定の観念を生じないものである。
(3)本件商標と引用商標との類否について
本件商標は,「Biony」の欧文字をややデザイン化して表してなるのに対し,引用商標1は,「BION」の欧文字を標準文字で表してなるものであるから,「y」の文字の有無及びその構成態様において相違するものであり,引用商標2は,「Bion」の欧文字を影文字様に表し,その背景には,切り込みがある楕円図形が掠れたように表わされているものであるから,構成全体の外観,その構成文字及びデザイン化の程度において相違し,本件商標と引用商標は,外観上,相紛れるおそれはない。
そして,本件商標から生じる「バイオニー」又は「ビオニー」の称呼と,引用商標から生じる「バイオン」又は「ビオン」の称呼とは,「バイ」又は「ビ」に続く「オニー」と「オン」の音の差異を有するものであるから,5音又は4音構成という比較的短い称呼において係る差異が称呼全体に与える影響は決して小さいとはいえず,両称呼は,語調,語感が異なり,十分に聴別できるものである。
また,本件商標と引用商標は,いずれも特定の観念を生じないものであるから,観念上,これらを比較することができない。
そうとすれば,本件商標と引用商標とは,観念において比較することができないとしても,外観及び称呼において相紛れるおそれのない非類似の商標というべきである。
したがって,本件商標と引用商標とは非類似の商標であるから,たとえ,本件商標の指定商品と引用商標の指定商品とが同一又は類似のものであるとしても,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
2 引用標章の周知・著名性について
(1)請求人の主張及び同人が提出した証拠によれば,以下のとおりである。
ア 請求人は,ドイツに本拠をおく医薬・化学品企業であり,メルク・グループは,世界66カ国において事業を展開し,同人の主張によれば,グループ全体の総売上高は,2013年は111億ユーロ(およそ1兆5,540億円),2014年は,115億ユーロ(およそ1兆6,100億円)である(甲8ないし甲10)。
イ 2007年6月18日付けのメルク株式会社のニュースリリースには,「ドイツメルク 日本におけるBION3の独占的販売権を佐藤製薬(株)に供与」の記載(甲15),平成19年6月付けの佐藤製薬のニュースリリースには,「『BION3(バイオンスリー)〈栄養機能食品〉』新発売」,「今回,新発売するBION3は,世界各国でBION3のブランド名と統一したパッケージで販売を行っているサプリメントです。」と記載され,「BION3」の商標を付した商品画像が掲載された(甲16)。
ウ 佐藤製薬は,公式ウェブサイトに,「BION3」(「バイオンスリー」のフリガナがある。)の見出しで請求人商品を紹介し,「バイオン3」及び「BION3」の文字を付した商品画像を掲載した(甲12)。
そして,該社のお得意様向資料(公式パンフレット)に,請求人商品を掲載して紹介等し(甲13,甲14等),量販店薬局等の店頭においてPOP広告,その他,街頭ポスター,車内広告,雑誌広告の出稿,冊子等の配布(甲21ないし甲26)を行い,また,インターネットによるキャンペーン,及び試供品の配布等した(甲48ないし甲50)。
また,請求人商品は,本件商標の登録出願前に発行された各種の雑誌(甲27ないし甲30),及び各種の新聞に掲載された(甲37ないし甲46)。
これらに紹介等された請求人商品には,いずれも「BION3」(「バイオンスリー」のフリガナがある。)と表示され,請求人商品の広告には,「BION3(バイオンスリー)」,「BION3」,「バイオンスリー」,「バイオン3」等と記載された。
エ 佐藤製薬営業推進部の「陳述書」によれば,該社は,Merck KgaAとのライセンス契約に基づき,日本国内において「BION3」を2007年(平成19年)6月20日より販売していること,該商品の2007年ないし2014年(平成26年)12月末日までの売上個数は合計26万1,498個であり,売上金額は合計4億3,603万円である(甲18)。
(2)上記(1)によれば,請求人は,請求人商品を2001年にドイツにおいて販売を開始し,現在は,世界60カ国以上で販売しており,日本市場については,佐藤製薬と独占販売契約を締結し,2007年(平成19年)6月20日から販売を開始した。
そして,請求人商品は,佐藤製薬により広告,宣伝され,各種雑誌,新聞等において紹介等された。
しかしながら,請求人商品は,「BION3」の商標が使用され,さらにそれらは,「バイオンスリー」や「バイオン3」の文字と共に使用され,又は宣伝広告等されたものであるから,「BION」の文字からなる引用標章の使用ということができない。
また,日本国内における請求人商品の売上高について,2007年ないし2014年(平成26年)12月末日迄の売上個数は合計26万1,498個であり,売上金額は合計4億3,603万である旨主張しているが,該金額は,約8年間の売上であって決して高いものということができず,また,請求人商品の市場シェアを把握できる証拠は提出されていない。
なお,職権調査によれば,2015年11月11日付け朝日新聞には,「健康食品・サプリメント市場実態」について,「2014年度の市場規模は1兆5341億円,利用者数5665万人と推計された」の記載,2015年11月25日付け日経プレスリリースには,「日本の健康食品・サプリメント推定市場規模は1兆5,785億円」の記載があり,これらと比較しても,請求人商品の売上が多いということはできない。
以上からすれば,請求人商品には,我が国においては一貫して「BION3」の文字からなる商標が使用されていることから,引用標章が使用されているものとはいえず,また,請求人商品の売上高は,当該業界において高い位置を占めるものということができないから,引用標章が,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,請求人商品を表示するものとして我が国の需要者に広く知られていたものということはできない。
3 商標法第4条第1項第15号該当性について
本件商標と引用商標とは,前記1のとおり,相紛れるおそれのない非類似の商標であって,本件商標と引用標章とは,本件商標と引用商標との類否と同様の理由により,相紛れるおそれのない非類似の商標というべきであるから,本件商標は,引用標章とは,別異の商標と認められる。
また,引用標章は,前記2のとおり,本件商標の登録出願時及び登録査定時において,我が国の需要者の間に広く認識されていたものと認めることができない。
そうすると,本件商標は,これを本件商標権者がその指定商品に使用しても,これに接する需要者が引用標章を連想又は想起するものとはいえず,該商品が,請求人又は同人と経済的又は組織的に何等かの関係がある者の業務に係る商品であるかのように,その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当しない。
4 むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第11号及び同項第15号に違反してされたものとは認められないから,同法第46条第1項の規定により無効とすることができない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(本件商標)





別掲2(引用商標2)





審理終結日 2016-06-21 
結審通知日 2016-06-23 
審決日 2016-07-13 
出願番号 商願2014-15422(T2014-15422) 
審決分類 T 1 11・ 261- Y (W05)
T 1 11・ 263- Y (W05)
T 1 11・ 262- Y (W05)
T 1 11・ 271- Y (W05)
最終処分 不成立 
前審関与審査官 津金 純子 
特許庁審判長 土井 敬子
特許庁審判官 田中 亨子
平澤 芳行
登録日 2014-08-15 
登録番号 商標登録第5693609号(T5693609) 
商標の称呼 バイオニー、ビオニー 
代理人 熊倉 禎男 
代理人 苫米地 正啓 
代理人 中村 稔 
代理人 松尾 和子 
代理人 田中 伸一郎 
代理人 藤倉 大作 
代理人 辻居 幸一 
代理人 石原 詔二 
代理人 井滝 裕敬 
代理人 石原 進介 
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