• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W1425
審判 全部申立て  登録を維持 W1425
審判 全部申立て  登録を維持 W1425
審判 全部申立て  登録を維持 W1425
審判 全部申立て  登録を維持 W1425
審判 全部申立て  登録を維持 W1425
管理番号 1321439 
異議申立番号 異議2016-900175 
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2016-12-22 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-07-08 
確定日 2016-10-21 
異議申立件数
事件の表示 登録第5837163号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 
結論 登録第5837163号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第5837163号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲1のとおり、黒色の人形の図形とその下に「B.QP」の文字を表してなり、平成27年12月9日に登録出願、第14類「キーホルダー,根付」及び第25類「被服」を指定商品として、同28年2月24日に登録査定され、同年4月1日に設定登録されたものである。

2 引用商標
登録異議申立人(以下「申立人」という。)が引用する商標は次のとおり(以下、それらをまとめて「引用商標」という。)であり、いずれの商標権も現に有効に存続しているものである。
なお、防護標章登録に基づく権利については、下記(5)の防護標章登録第11号については平成28年4月6日に抹消登録され、他はいずれも現に有効に存続している。
(1)登録第4240001号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様 別掲2のとおり(立体商標)
指定商品 第14類に属する商標登録原簿に記載の商品
出願日 平成9年4月1日
設定登録日 平成11年2月12日
(2)登録第4240003号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様 別掲2のとおり(立体商標)
指定商品 第25類に属する商標登録原簿に記載の商品
出願日 平成9年4月1日
設定登録日 平成11年2月12日
(3)登録第4005325号商標(以下「引用商標3」という。)
商標の態様 別掲3のとおり
指定商品 第25類に属する商標登録原簿に記載の商品
出願日 平成7年7月28日
設定登録日 平成9年5月30日
(4)登録第5767918号商標(以下「引用商標4」という。)
商標の態様 別掲4のとおり
指定商品 第25類に属する商標登録原簿に記載の商品
出願日 平成26年3月20日
設定登録日 平成27年5月29日
(5)登録第595694号商標(以下「引用商標5」という。)及びその防護標章登録
商標の態様 別掲5のとおり
指定商品 第30類に属する商標登録原簿に記載の商品
出願日 昭和35年5月31日
設定登録日 昭和37年8月24日
防護標章登録 第11号、第14号、第15号、第17号、第21号ないし第23号、第34号、第35号、第37号ないし第48号(各防護標章登録の指定商品及び指定役務、登録日等については省略する。)
(6)登録第832283号商標(以下「引用商標6」という。)及びその防護標章登録
商標の態様 別掲6のとおり
指定商品 第30類に属する商標登録原簿に記載の商品
出願日 昭和41年8月11日
設定登録日 昭和44年9月24日
防護標章登録 第1号ないし第7号、第21号ないし第38号(各防護標章登録の指定商品及び指定役務、登録日等については省略する。)

3 登録異議の申立ての理由
申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号、同第15号、同第19号又は同第7号に該当するものであるから、その登録は同法第43条の2第1号により取り消されるべきであるとして、その理由を次のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第22号証(枝番号を含む。)を提出した。
(1)商標法第4条第1項第11号該当性について
ア 本件商標と引用商標の対比
本件商標は、上部に黒塗の二頭身のキューピーと思しき人形を表し、その下部に当該人形の名前を書したものと見て取れる「B.QP」の文字が配されてなるものである。これに対して引用商標1ないし4は、キューピーの図形若しくは立体的形状からなるものである。
上記のように本件商標は、その構成中、キューピーと思しき図形を独立して認識することができるものであり、両図形部分は、以下のとおり外観、観念及び称呼において共通するものである。また、引用商標4の構成にみられるように、図形の下に文字が表された場合には、その文字は図形の名称を示すものと看るのが通常であるところ、本件商標中の「B.QP」の文字は、図形部分の特徴と相まって本件商標中の図形が「キューピー」であることを強く認識させるものであり、本件商標全体として引用商標と類似するものである。以下にその点について述べる。
イ 本件商標及び引用商標の外観について
引用商標1ないし4は、立位の裸の「キューピー」を表したもの若しくはこれを含むものである。これに対して、本件商標の図形部分は、黒塗りされた二頭身の人形であり、その姿態から一見して「キューピー」と認識できるものである。すなわち、本件商標の図形部分は、二頭身のキューピーと思しき人形からなる上、引用商標1ないし4に係る「キューピー」の特徴である両腕を左右に広げている点、ぱっちりとした丸い目が白抜きにて表されている点、頭頂部だけに小さい山状に盛り上がった毛髪を有する点、耳の部分について三角形を縦に配置したような構成をとっている点など引用商標1ないし4に係るキューピーの特徴の多くを備えている。
したがって、本件商標の図形部分は、黒塗りされているとはいうものの、一見して引用商標に係るキューピーを想起させるような構成態様となっており、この点に照らしたときには、本件商標の図形部分は引用商標と外観上互いに相紛れる商標というべきものである。
ウ 本件商標と引用商標との観念及び称呼についての対比
引用商標においては、後述のとおり、申立人に係る商品を表示するものとして広く認識されている商標であり、この点とも相まって、引用商標1ないし4に係る図形からは「キューピー」の観念及び称呼が生じるものである。
一方、本件商標中の図形部分からは、黒塗りされているものの、その構成態様に相応して、「キューピー」が認識されることは上記のとおりである。また、前記のとおり、本件商標の文字部分「B.QP」は、その上部に表されている図形(キューピー)の名前を書したものと看るのが自然であり、黒塗りされたキューピーの態様からすれば、冒頭の「B」は「Black(黒色の)」を示し、「QP」は 「キューピー」を示すものであると容易に推察できる。したがって、本件商標は、その図形部分において黒塗りにアレンジされているものの、黒塗りは色彩を示す一態様であるという点に照らすと、本件商標からも「キューピー」の観念、及びそれに相応する「キューピー」の称呼が生じるものである。
エ 本件商標と引用商標との類否
以上により、本件商標と引用商標1ないし4は、商標全体として外観、観念及び称呼において類似するものであり、また、本件商標は、引用商標と同一又は類似の商品を指定商品とするものであるから、本件商標は、引用商標との関係において商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
(2)商標法第4条第1項第15号該当性について
前述のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する商標であると確信するものであるが、仮に本件商標と引用商標が類似しないと判断される場合であっても、本件商標は、引用商標との関係で、商標法第4条第1項第15号に該当する商標である。
ア 引用商標の著名性について
引用商標1ないし5は、「キューピー」人形の図形からなるものであり、立位で両腕を左右に広げた裸のキューピーを表したものである。その輪郭は、大きめの頭部と胴体の二頭身からなり、全体的に少し丸みを帯びた態様にて表されている。その顔はぱっちりとした丸い目ににっこりほほ笑む口元を有し、頭頂部だけに小さい山状に盛り上がった毛髪を有する愛らしい図形となっている。
申立人は、1922年(大正11年)10月27日に同図形を含む商標登録(登録第147269号)を受けて以来、その主力商品であるマヨネーズの包装に同図形を付して販売をしている。
そして、商品の品質の良好さや活発な宣伝広告の成果に加えて、この愛らしいキューピーの図形が人気をよび、申立人の主力製品であるマヨネーズは、発売以来、競合他社に比べて極めて高いシェアを誇っている。このような状況と相まって、キューピーの図形及びハウスマークの「キユーピー」は、申立人が所有する商標として、更には、申立人を指称し、象徴する図形及び名称として、我が国の需要者に広く一般に認識されているものであり、引用商標1ないし4と同様の構成を採るキューピーの図形からなる引用商標5並びにハウスマークの「キユーピー」(引用商標6)は、ともに第30類において特許庁の日本国周知・著名商標に掲載されている(甲5の3、甲6の3)。
また、申立人の最も主要な製品であるマヨネーズ類、液状ドレッシング類、ソース缶類について、申立人は、生産量シェアや販売金額シェアにおいて競合企業中第1位を取得しており、それ以外のレトルトパスタソース類等についても第2位や第3位を取得していることからもわかるように(甲7)、引用商標は、申立人の主業務である食品の分野において最も著名性を発揮しているものである。
加えて、本件商標に係る指定商品が属する第14類及び第25類を始めとする全45区分を網羅する産業分野においてキューピーの図形及び文字について防護標章登録がされており、このことも、引用商標の著名性を裏付けるものでもある(甲5の1・2、甲6の1・2)。
イ 申立人の「キューピー」ブランドについて
申立人は、愛らしいキューピーを起用して品質の高い商品の製造販売を継続してきた結果、引用商標の著名性とも相まって、「キューピー」ブランドは、その商品の品質について消費者の高い信頼を得るブランドとしてのイメージをも築きあげたものである。実際に、第三者機関による企業ブランド調査において、申立人の「キューピー」ブランドは、常に上位を占めており、例えば、日経BP社による食の安心安全ブランド調査において、申立人は、2004年に1位を獲得しており、その後も2008年及び2011年の2位を始めとし、継続して上位を保っている(甲8)。
また、日経リサーチ社による企業ブランド調査においても、「キューピー」ブランドについては、消費者からの評価が高く、2005年の1位から近年に至るまでほぼ一貫して1位を保っている(甲9)。
ウ 出所の混同について
前記のとおり、引用商標は、いずれも申立人に係るブランドを指称するものとして周知・著名であるが、本件指定商品に係る第14類及び第25類の指定商品の分野においても著名に至っていることは、これらの分野において防護標章登録がされていることからも明らかであるし(引用商標5及び6)、書籍「キューピー物語」の中でも記述されているところである(甲10)。
前述のとおり、引用商標の著名性は、食品分野におけるその使用に基礎を置くものであるが、食品は一般消費者を対象とし、全ての人に利用されるものであるから、全産業分野において需要者の範囲が最も広いと考えられる。そうすると、申立人の製造販売する食品の需要者が、本件商標に係る指定商品の需要者になるという高い蓋然性が存在しているものである。
さらには、前記したように申立人のキューピーは、その愛らしい姿が人気を博していることから、申立人はキューピーのキャラクターグッズとして実際に第14類に属するキーホルダーや第25類に属するエプロン等の販売を盛んに行っている(甲11、甲12)。特に、第14類に属するキーホルダーには、卵の殻を破ってその中からキューピーが現れた態様等、アレンジを施したキューピー人形のキーホルダーも販売されている(甲11)。
一方、本件商標に係るキューピーは、前記のとおり、キューピー人形を黒塗りして装飾を施したものであると容易に看取し得るものであるし、商標権者の商品を取り上げたウェブサイト上において、「デビルブラックキューピー」や「ハイハイブラックキューピー」等の商品名が記載されていること(甲13)からしても、本件商標より「(黒塗した)キューピー」の認識が生ずるというべきであるし、商標権者もこの点は否定し得ないはずである。
かかる状況において、黒塗りして装飾を施したものと容易に認識し得るキューピーの図形と、その図形の下に引用商標6をアルファベットに置き換えた「Q.P」を含む文字からなる本件商標の下、その指定商品に係る第14類及び第25類の商品の提供がなされたときには、需要者・取引者をして、申立人と経済的・組織的に何らかの関連を有するものであるかのごとく商品の出所について誤認混同を生じるおそれがある。
したがって、本件商標は、申立人の引用商標との関係で、商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
(3)商標法第4条第1項第19号該当性について
仮に本件商標が商標法第4条第1項第15号に該当しないと判断される場合であっても、本件商標は、同第19号に該当する商標である。
前記のとおり、引用商標と輪郭や細部の特徴の多くを共通にし、引用商標を容易に想起させる本件商標中の図形(キューピー)の構成を鑑みると、申立人のキューピーの図形の存在を知らないで、本件商標に係るキューピーの図形が採択されたとは考え難い。
さらには、前記(2)ア、イにおいて述べたように、引用商標の著名性をも考慮すると、引用商標1ないし5に係るキューピーの図形に黒塗りして装飾を施したものと容易に認識し得る図形をその一部に含む本件商標について出願し、また使用をすることは、引用商標の著名性にただ乗りする意図があったといわざるを得ない。
そして、本件商標が使用されることにより、申立人の著名商標が有する出所識別機能が稀釈化されるだけでなく、それに化体した名声や業務上の信用が毀損されることになる。
さらに、前記したように、商標権者の商品を取り上げたウェブサイト上において、商品の名称として「デビルブラックキューピー」や「ハイハイブラックキューピー」等の記載がされていることからすると(甲13)、引用商標に係るキューピーの人気や著名性にあやかって冷笑的なブラックキューピーを販売しようとするものであり、引用商標に係る愛らしいキューピーとは対極に位置するキューピーを自己の業務として展開することによって需要者の注目を喚起しようとする意図がうかがい知れるものである。
上記の諸点を総合すると、本件商標が引用商標と無関係に採択されたとは考えられず、引用商標に化体した信用、名声及び顧客吸引力にただ乗りしようとする意思があることは明らかであるとともに、引用商標とは対極のイメージを有する本件商標が使用されることにより、引用商標に化体した出所識別機能を稀釈化するばかりか、引用商標に化体した名声や業務上の信用をも毀損するものである。
以上により、本件商標の使用は、客観的に不正の利益を得、若しくは申立人に損害を与える目的をもつものというべきものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第19号に該当するものである。
(4)商標法第4条第1項第7号該当性について
商標法第4条第1項第7号における「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある商標」とは、商標審査基準によれば、その構成自体がきょう激、卑猥、差別的若しくは他人に不快な印象を与えるような文字又は図形である場合及び商標の構成自体がそうでなくても、指定商品又は指定役務について使用することが社会公共の利益に反し、又は社会の一般的道徳観念に反するような場合をいうとされている。
申立人の創始者がキューピーを選択した理由は、「キューピーは人気も去ることながら、愛と幸せを運ぶと言われ、マヨネーズを売り出すのにイメージ的にぴったりである」というものである(甲10)。それ以来、申立人は、引用商標に係るキューピーを広告塔として、マヨネーズを始めとする品質の高い調味料等の製造販売を長きに渡り継続してきた。申立人は、愛らしい姿のキューピーを営業活動に存分に活かし、広告等においてもキューピーに提供する商品やサービスの状況に即した衣装を着せたり(甲14?甲18)、キューピーをアレンジしたキーホルダー等のキャラクターグッズを販売したりするなど(甲11、甲19、甲20)、愛らしく幸せなイメージを有するキューピーの力を借りて知名度を獲得してきた。これにより、愛らしいキューピーが付された申立人の商品に接した需要者が、同製品は品質が高く、信頼できるとの印象を直ちに抱くほど、高い信用と名声を築きあげたものであることは、前記(2)イで述べたとおりである。
このように申立人の営業努力とキューピー人形の人気が相まって引用商標に高い名声・信用・評判が化体しているのであり、引用商標からは明るく、健康的で幸せなイメージが醸し出されている。
その一方で、本件商標は、キューピーを黒塗りし、首元や腹部に装飾を施したものであるが、本件商標をもとに商標権者が製造販売等している実際の商品を見ると(甲21、甲22)、キューピーの丸く可愛らしいはずの目には、ビーズが埋め込まれ、ふっくらとした頭部や腹部には、縦に大きなピアスが貫かれているものや、頭部に長い2本の角を付してデビル(悪魔)の様相を表したものなど、痛々しく不気味なキューピーが見て取れるものである。
以上からすれば、商標権者が引用商標と類似する本件商標を申立人の業務に係る商品に使用した場合には、明るく健康的で幸せなイメージを確立した引用商標の名声・信用・評判を稀釈化させ著しく毀損するおそれがある。
したがって、本件商標の登録は、商取引の秩序を乱し、ひいては公序良俗を害するものであることは明らかであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第7号に該当するものである。
(5)むすび
上記のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号、同第15号、同第19号又は同第7号に該当し、商標登録を受けることができないものであるから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきものである。

4 当審の判断
(1)引用商標の周知性について
ア 申立人提出の甲各号証及び同人の主張によれば、申立人の製造販売に係るソース類缶詰の販売量シェアが平成17年度ないし平成22年度において毎年第1位であったこと、同じくマヨネーズ類及びドレッシングの販売額シェアが平成20年度ないし平成22年度においていずれも毎年第1位であったことが認められ(甲7)、かつ、申立人のブランド「キユーピー」が、日経BP社の食の安全・安心ブランド調査において平成20年ないし平成25年においてほぼ毎年第3位以内であったこと(甲8)、日経リサーチの企業ブランド調査の消費者の評価において平成19年、平成20年、平成25年及び平成26年に第1位であったこと(甲9)が認められる。
イ 上記アの事実からすれば、申立人の製造販売に係る商品に使用されている(職権調査:申立人のホームページ ほか)引用商標5及び6は、いずれも本件商標の登録出願の日前から、登録査定日はもとより現在においても継続して、申立人の業務に係る商品(マヨネーズ等)を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認められる。
しかしながら、引用商標1ないし4は、いずれも本件商標の登録査定の日以前にそれらの指定商品ついて使用されている事実を示す証左は見いだせないから、本件商標の登録出願の日前ないし登録査定時において、申立人の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと認めることはできない。
(2)商標法第4条第1項第11号について
ア 本件商標
本件商標は、上記1のとおり、黒色の人形の図形と「B.QP」の文字からなるものであるところ、その構成態様から黒色の人形の図形部分と「B.QP」の文字部分がそれぞれ独立して自他商品識別標識としての機能を果たし得るものであって、黒色の人形の図形部分は、特定の称呼、観念を生じず、「B.QP」の文字部分は、「ビーキューピー」の称呼を生じ、特定の観念を生じないものというのが相当である。
イ 引用商標1ないし4
引用商標1ないし4は、別掲2ないし4のとおりの構成からなり、いずれもそれらの構成態様から「キューピー」の称呼及び観念を生じるものである。
ウ 本件商標と引用商標1ないし4の類否
(ア)本件商標と引用商標1ないし4の類否を検討すると、まず、本件商標の図形部分と引用商標1及び2、引用商標3及び4の図形部分(以下、これらをまとめて「引用商標の図形部分」という。)との比較において、本件商標の図形部分は、白色の首飾り及び腹部に白色の星形図形を配した白色の丸い目の黒色人形を表したものであって、引用商標の図形部分は、それらの描き方は異なるものの、いずれも一般的な「キューピー(人形)」を表したものとして認識されることから、両者は、構成態様が明らかに異なるものであって、それらの視覚的印象が相違することにより、見誤るおそれのないものである。
また、前者は特定の称呼、観念を生じないものであり、後者は「キューピー」の称呼、観念を生じるものであるから、両者は、称呼、観念において相紛れるおそれのないものである。
(イ)次に、本件商標の文字部分「B.QP」と引用商標4の文字部分「KEWPIE\キューピー」とを比較すると、両者は、その外観において、構成文字が明らかに異なるものである。そして、称呼においては、前者の称呼「ビーキューピー」と後者の称呼「キューピー」とは語頭音「ビー」の有無という明らかな差異を有するものであり、観念においては、前者は特定の観念を生じないものであり、後者は「キューピー(人形)」の観念を生じるものであるから、両者は、外観、称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのないものである。
(ウ)したがって、本件商標と引用商標1ないし4とは、相紛れるおそれのない非類似の商標であると認められる。
(エ)なお、申立人は、本件商標の図形部分は引用商標に係るキューピーを想起させる、及び本件商標は「キューピー」の称呼、観念を生じるなどとして、本件商標と引用商標は類似する旨主張しているが、上記のとおり、本件商標の図形部分は、首飾り及び白色の星形図形を配した白い丸い目の黒色人形として看取されるものであって、「ぱっちりとした丸い目ににっこりほほ笑む口元を有し、頭頂部だけに小さい山状に盛り上がった毛髪を有する愛らしい」キューピー人形を表した引用商標の図形部分とは、明らかに異なる印象を与えるものと認められる。そして、本件商標の図形部分からは、特定の称呼、観念を生じないものである。また、本件商標の「B.QP」の文字部分は、同書、同大、同間隔でまとまりよく一体に表され、それから生じる「ビーキューピー」の称呼もよどみなく一連に称呼し得るものであるから、「ビーキューピー」の称呼のみを生じるものであり、特定の観念を生じないと判断するのが相当である。
したがって、申立人のかかる主張は、その前提において理由がなく、採用することはできない。
エ 小括
上記のとおり、本件商標と引用商標1ないし4は、非類似の商標であって、他に本件商標と引用商標1ないし4が類似するというべき事情も見いだせない。
よって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。
(3)商標法第4条第1項第15号について
本件商標と引用商標5及び6とは、上記(2)と同様の理由により、非類似の商標であるということができるものであって、別異の商標というべきである。
そうすると、引用商標5及び6が、申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願の日前から、需要者の間に広く認識されているとしても、本件商標は、これに接する取引者、需要者が引用商標5及び6を連想又は想起するものということはできない。
してみれば、本件商標は、商標権者がこれをその指定商品について使用しても、取引者、需要者をして引用商標5及び6を連想又は想起させることはなく、その商品が申立人あるいは同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係るものであるかのように、その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものといわなければならない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当するものといえない。
(4)商標法第4条第1項第19号及び同第7号について
上記(1)のとおり、引用商標5及び6は申立人の業務に係る商品を表示するものとして、本件商標の登録出願の日前から、需要者の間に広く認識されているものの、上記(3)のとおり、本件商標と引用商標5及び6は非類似の商標であって別異の商標であり、かつ、本件商標は引用商標5及び6を連想又は想起させるものでもない。
そうとすれば、本件商標は、引用商標5及び6の信用、名声などにただ乗りするとか、毀損するとか、あるいは出所識別機能を希釈化するなど不正の目的をもって使用をするものと認めることはできない。
さらに、本件商標が、その出願及び登録の経緯に社会的相当性を欠くなど、公序良俗に反するものというべき事情も見いだせない。
したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第19号及び同第7号のいずれにも該当するものといえない。
(5)むすび
以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第7号、同第11号、同第15号及び同第19号のいずれにも違反してされたものとはいえないから、同法第43条の3第4項の規定により、維持すべきである。
よって、結論のとおり決定する。
別掲 別掲1(本件商標)



別掲2(引用商標1及び引用商標2)







別掲3(引用商標3)(色彩は原本参照。)


別掲4(引用商標4)



別掲5(引用商標5)


別掲6(引用商標6)


異議決定日 2016-10-13 
出願番号 商願2015-121176(T2015-121176) 
審決分類 T 1 651・ 263- Y (W1425)
T 1 651・ 261- Y (W1425)
T 1 651・ 262- Y (W1425)
T 1 651・ 22- Y (W1425)
T 1 651・ 271- Y (W1425)
T 1 651・ 222- Y (W1425)
最終処分 維持  
前審関与審査官 吉野 晃弘 
特許庁審判長 早川 文宏
特許庁審判官 堀内 仁子
田村 正明
登録日 2016-04-01 
登録番号 商標登録第5837163号(T5837163) 
権利者 株式会社6sicks
商標の称呼 ビイキュウピイ 
代理人 高田 泰彦 
代理人 佐藤 泰和 
代理人 宮嶋 学 
代理人 朝倉 悟 
代理人 本宮 照久 
代理人 永井 浩之 
代理人 矢崎 和彦 
代理人 中村 行孝 
代理人 柏 延之 

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ