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審決分類 審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない X25
審判 全部無効 外観類似 無効としない X25
審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない X25
管理番号 1321413 
審判番号 無効2015-890089 
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 無効の審決 
審判請求日 2015-11-04 
確定日 2016-11-04 
事件の表示 上記当事者間の登録第5366427号商標の商標登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は,成り立たない。 審判費用は,請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5366427号商標(以下「本件商標」という。)は,別掲1のとおりの構成からなり,平成22年7月6日に登録出願,第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト,履物,仮装用衣服,運動用特殊衣服,運動用特殊靴」を指定商品として,同年10月15日に登録査定され,同年11月5日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が,本件商標の無効の理由に引用する商標は次のとおりであり,いずれも有効に存続しているものである。
1 登録第1592525号商標(以下「引用商標1」という。)
商標の態様:別掲2のとおり
指定商品(書換後):第20類「クッション,座布団,まくら,マットレス」,第24類「布製身の回り品,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布」及び第25類「被服」
出願日 :昭和46年2月24日
設定登録日:昭和58年5月26日
2 登録第2006244号商標(以下「引用商標2」という。)
商標の態様:別掲3のとおり
指定商品(書換後):第24類「布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布」及び第25類「被服」
出願日 :昭和46年2月24日
設定登録日:昭和62年12月18日
3 登録第4339987号商標(以下「引用商標3」といい,引用商標1ないし引用商標3をまとめて以下「引用商標」という。)
商標の態様:別掲4のとおり
指定商品 :第25類「被服」
出願日 :平成10年6月2日
設定登録日:平成11年12月3日
4 請求人が使用する商標(以下「使用商標」という。)
商標の態様:引用商標のホームベース状の図形部分から,左肩のタブを除いた態様からなる図形(以下「ポケット図形」という。)を2つ組み合わせた商標
使用する商品:ジーンズ製のパンツほか
使用時期 :昭和40年代から現在まで

第3 請求人の主張
請求人は,本件商標の登録を無効とする,審判費用は被請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第85号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第11号について
(1)商標の類似について
ア 本件商標と引用商標は,いずれも上部が下部よりも広がったホームベース形のポケットの外周に沿ってステッチを施されている点で共通している。
また,ポケットの中央下部を中心としてそこから左右に延びる2本のアーチ形状のステッチで構成されている点でも共通している。
このように,本件商標と引用商標は,基本的な構成態様が共通している。
イ 本件商標は,2つのポケットからなり,タブがなく,2本のアーチ形状のステッチが線対称でないのに対し,引用商標は,1つのポケットからなり,タブがあり,2本のアーチ形状のステッチが線対称であるとの差異がある。
しかしながら,本件商標のポケットの数については,単に,同じ形状のポケットが2つ描かれているにすぎない。また,商標全体の構成の中でみれば,タブ部分は,面積的にも,看者に与える印象の点でも,それほど大きい部分を占めるものではなく,商標全体の構成の類似性の判断に占める要素としては強力なものではない。さらに,本件商標が線対称でない点についても,引用商標とは異なった印象を看者に与える程度には至っておらず,全体としての共通点の中における僅差にすぎない。これらの差異は,特に離隔的観察をする場合には共通性に包摂される程度のものと解される。
ウ 本件商標と引用商標の需要者は,専門家ではなく,一般消費者と解されるところ,一般消費者が払う注意力は,専門家が払う注意力より低い。この点からも,本件は,上記差異を重視すべきでなく,基本的な構成態様の共通性を重視すべき事案である。
エ 商標の類似性は,取引の事情として,引用商標の著名性を含めて判断されるべきところ(東京高裁 平成5年3月3日判決(平4(行ケ)82号)),引用商標は,著名性を獲得している。そのため,引用商標とその基本的な構成態様を共通にする本件商標を使用して,同一の指定商品である「被服」が販売されると,時と所を異にして観察した場合,需要者が著名な引用商標を連想し,商品の出所を混同することは明らかであり,本件商標と引用商標は類似するというべきである。
引用商標の著名性については次のとおりである。
引用商標は,ジーンズの元祖ともいえる請求人によるものとして130年以上にわたり基本的に変化がなく使用され続けている(甲5など)。
また,請求人は,日本においても昭和40年代から長年にわたって,カタログ・雑誌等を通して広告し(甲5?甲59),テレビを通して広告し(甲60?甲62など),さらには,インターネットや携帯電話を通して情報を発信するなどしている(甲63?甲65など)。その他,キャンペーンやイベントも数多く行っている(甲29,甲62,甲66?甲71など)。
その際,男性では,俳優のジェームズ・ディーン,木村拓哉,中村獅童,ミュージシャンのジミ・ヘンドリックス,女性では,女優の小雪,トップモデルのデヴォン青木などを起用し,さらには,バックポケットの形状に注意を喚起する内容で効果的に広告している(甲5?甲7,甲14,甲21,甲31,甲50,甲51,甲57,甲72?甲74など)。
請求人グループに属するリーバイ・ストラウス・ジャパン株式会社(以下「リーバイスジャパン」という。)は,広告費用として,平成13年11月期ないし平成21年11月期に毎年14.7億円ないし12.5億円(平成18年11月期は19.7億円)という莫大な広告費用を継続的に使用している(甲62?甲64,甲67,甲68,甲73,甲75,甲76)。
また,リーバイスジャパンは日本国内で請求人グループの商品を販売しているところ(甲60),「メンズボトムズ」及び「レディースボトムズ」の売上高は,平成13年11月期ないし平成21年11月期は毎年197.3億円ないし146.6億円(平成17年11月期は238.7億円)であり,日本でもトップレベルの販売実績・シェアを持っている(甲60,甲62?甲64,甲67,甲68,甲73,甲75,甲76)。
実際,リーバイスジャパンは,請求人グループの商品を,理想的な店頭プレゼンテーションにより効果的に消費者に提案していくための店舗である「リーバイスストア」を展開し,平成11年には1店舗であったものが(甲60),平成18年には全国の主要都市を中心に28店舗にまで広がっている(甲61?甲64,甲67,甲73,甲77)。そして,「Levi’s Store DENIM STYLE」と題する平成17年付け雑誌では,「日本がリーバイスにとって特別な国となっていることは数字が証明してくれている。例えば,リーバイスストアは本国アメリカが15店舗であるのに対し,人口も国土も圧倒的に小さい日本には27店舗が存在している。」とされている(甲36)。
さらには,リーバイスジャパンの直営店である「ファクトリー・アウトレット」も,平成19年4月には9店舗,平成20年には15店舗となり,また,同年に直営オンライン・ショッピングサイト「リーバイスE-ショップ」もオープンしている(甲75,甲78?甲80)。
このように引用商標が付された請求人グループの商品は,全国の主要都市で広く広告・販売されており,現在においても,ジーンズブランドとして,常に,1位又は2位にランキングされている(甲81?甲83)。リーバイスに関する本も刊行されている(甲84,甲85)。
そして,知財高裁判決(平成21年5月12日判時2055号133頁)は,請求人が提出した証拠に基づき,平成17年6月8日及び平成18年1月13日の時点で,請求人のバックポケットの形状は,需要者の間で広く知られており,しかもその周知著名性の程度は極めて高いものと認定しているから,引用商標は著名商標である。
オ 以上に照らすと,本件商標と引用商標は類似している。
(2)商品の同一・類似について
本件商標には,指定商品として「被服」が含まれるところ,引用商標にも「被服」が含まれている。
また,本件商標の他の指定商品(「被服」以外)については,引用商標の指定商品の「被服」と強い関連性を有する類似の商品である。すなわち,「ガーター」,「靴下止め」,「ズボンつり」,「バンド」及び「ベルト」などは「被服」に属する「靴下」,「ズボン」などと共に使用されるものであり,また,同一のアパレルメーカーにより製造又は販売されることが多いと考えられる。さらには,ファッション関連商品という点でも共通性を有し,同一の店舗で同一の需要者(一般消費者)に対して販売される性質のものである。
(3)答弁に対する弁駁
ア 被請求人による類否判断の誤り
被請求人は,本件商標と引用商標の類否に関し,タブ,ホームベース形の外周に沿う2本の破線,ホームベース形を上下に分断する2本の湾曲破線及びホームベース形を上下に分断する横一本の直線的な破線などに相違点があると分析した上で,このうちの要部は,ホームベース形を上下に分断する2本の湾曲破線と横一本の直線的な破線であるとして,この要部についての相違を主張する。また,ホームベース形を含むという本件商標と引用商標の共通点については,自他商品識別力がないか,又は極めて弱い部分の共通点にすぎないとして,類否の検討対象から外している。
しかしながら,本件商標と引用商標におけるポケットの図形は,全体として一体不可分の図形であり,当該ポケットの図形の一部(上下に分断する2本の湾曲破線と横一本の直線的な破線)のみを取り出して比較することは取引上不自然である。そして,ポケットの図形は,2つの図形からなる結合商標というわけでもなく,その一部を取り出す理由は見当たらないと解される。
したがって,商標の類似判断にあたり,ホームベース形を自他商品の識別力が極めて弱いなどして無視することはできないというべきであり,被請求人による類否判断には誤りがある。
イ 本件商標と引用商標が類似であること
本件商標と引用商標は,いずれも上部が下部よりも広がったホームベース形のポケット外周に沿って2重のステッチを施し,ポケットの中央下部を中心としてそこから左右に延びる2本のステッチで構成されているという基本的な態様が一致している。
引用商標が著名であることも考え合わせると,本件商標が,引用商標の商品と同一又は類似の商品に使用された場合,商品の出所につき誤認混同を生じるおそれがあるというべきである。
この点,本件商標のポケットが2つであるのに対し,引用商標のポケットが1つであることから,両者は基本的構成において顕著に相違していると主張する。しかしながら,本件商標における2つのポケットの間には空間があり,2つのポケットが別々の図形であると自然に把握することができるから,本件商標の2つのポケットは,分離して観察することが取引上不自然であると思われるほど不可分的には結合してない。したがって,本件商標のポケットの1つを取り出して引用商標と比較検討することが可能であるため,ポケットの数の違いは,請求人の上記主張に影響を及ぼさない。
ウ 被請求人が指摘する他の相違点について
被請求人は,2本の湾曲破線が左右対称か否かの違い,2本の湾曲破線の中央部分の形状の違い,横一本の直線的な破線の有無の違いをそれぞれ指摘した上で,本件商標と引用商標が非類似と主張する。
しかしながら,本件商標は左右対称でないとしても,それは具体的な構成における微差にすぎない。また,2本の湾曲破線の中央部分の形状及び横一本の直線的な破線の有無の点については,その部分が全体に占める割合は決して大きくなく,看者に与える印象はそれほど強くはない。
したがって,上記の点にそれぞれ違いがあるとしても,その違いはわずかであり,上記の基本的な態様における共通点を凌駕するほどのものとは認められないというべきである。
(4)小括
以上より,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当するものである。
2 商標法第4条第1項第10号について
(1)本件商標と引用商標が,一方は2つのポケットからなり,他方は1つのポケットからなることなどを理由として類似するとはいえないとしても,本件商標は,請求人グループの商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されている商標と類似する。
(2)需要者の間に広く認識されている商標について
請求人は,主として,ジーンズの左右の2つのバックポケットに引用商標を継続的に使用してきたものであり(タブ部分については,左右2つのバックポケットのうち片方のみに付されている。),このことは,上記で挙げた証拠において,その多くが,当該態様で使用されていることから明らかである。
そして,このような引用商標のポケット(タブ部分を除く。)を2つ組み合わせた商標(使用商標)は,上記1(1)エのとおり,ジーンズを主とする請求人グループの商品を表示するものとして需要者の間に極めて広く認識されているものである。
(3)商標の類似について
本件商標と使用商標は,その基本的な構成態様が共通する上に,2つのポケットからなる点においても共通しており,類似することが明らかである。
(4)商品の同一・類似について
使用商標は,ジーンズを主とする請求人グループの商品に使用されている。したがって,上記(1)イのとおり,商品の同一・類似性が認められる。
(5)答弁に対する弁駁
被請求人は,本件商標と引用商標及び使用商標(以下,引用商標と使用商標をまとめて「引用商標等」という。)の類否判断にあたり,ホームベース形の傾斜の違い,2本の湾曲破線の幅の変化及び終端部分の形状の違いを指摘した上で,本件商標と引用商標等は印象を異にする旨主張する。
しかしながら,使用商標には,ホームベース形が内向きに傾斜しているバリエーションも含まれる(甲8,甲9,甲11ない甲15,甲22,甲23,甲29,甲30,甲36,甲38,甲49,甲51,甲58など)。
したがって,被請求人は,使用商標が内向きに傾斜していないことを前提に,本件商標は中央下側あたりが重たく,内向きに傾いた複雑な図形との印象を受ける一方で,使用商標は極めて平坦かつシンプルな印象を受けるなどと主張するが,その前提に誤りがあり失当である。
(6)小括
以上より,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に該当するものである。
3 商標法第4条第1項第15号について
(1)本件商標と引用商標等が類似するものとはいえないとしても,本件商標を当該指定商品に使用した場合,請求人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある。
(2)かかる混同には広義の混同が含まれる。そして,「混同を生ずるおそれ」の有無は,1)当該商標と他人の表示との類似性の程度,2)他人の表示の周知著名性及び独創性の程度,3)当該商標の指定商品等と他人の業務に係る商品等との間の性質,4)用途又は目的における関連性の程度,5)商品等の取引者及び需要者の共通性その他取引の実情などに照らし,当該商標の指定商品等の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として,総合的に判断されるべきと解される。
ア 上記のとおり,本件商標と引用商標等は類似するものであるが,類似しないものとしても,その基本的な態様が共通することに鑑みれば,両者は相当程度近似する形状と解される。
イ 周知著名性の点については,引用商標等は,上記のとおり,ジーンズの元祖ともいえるメーカーによるものとして100年以上にわたり基本的に変化がなく,バックポケットの形状に注意を喚起する旨の多数の宣伝広告がされ,日本においてもトップレベルの販売実績・シェアを持つことなどにより,本件商標の出願時及び登録時において,ファッション関連商品の取引者及び需要者の間で広く知られており,しかもその周知著名性の程度は極めて高いものというべきである。
また,独創性の点についても,機能等の観点から,引用商標等のような形状にならざるを得ないというものではなく,結局,数々とり得るバックポケットの構成から,引用商標等のような構成を採用した点において,相当程度の独創性が認められる。
ウ 本件商標と引用商標等の商品は,上記のとおり,同一あるいは互いに極めて関連性の深い商品といえる。
エ さらに,それぞれファッション関連商品として,用途又は目的の点においても共通する。
オ 加えるに,ファッション関連商品の取引者及び需要者(一般消費者)が共通性を有していることが明らかである。
(3)答弁に対する弁駁
ア 被請求人の主張の誤り
被請求人は,乙第2号証を挙げて,請求人商品と被請求人商品がアメカジの専門雑誌に同時に掲載・紹介されているにもかかわらず,何ら出所の混同が生じていないことは,出所の混同が生じるおそれがないことの証左と主張する。
しかしながら,専門雑誌に同時に掲載・紹介されていることと出所の混同が生じるおそれがないことは関係が無く,また,出所の混同が生じるおそれがないことを裏付ける証拠は存在しないことから,被請求人の主張には理由がない。
イ 商標法第4条第1項第15号に該当すること
請求人が訴訟当事者となり,商標法第4条第1項第15号の該当性が問題となった裁判例として,知財高判平成21年5月12日判時2055号133頁(以下「裁判例1」という。)及び東京高判平成16年10月20日(平成16年(行ケ)85号)(以下「裁判例2」という。)があるため,これらの裁判例に基づき,本件商標と引用商標等との類似性の程度について主張する。
これらの裁判例では,いずれも商標法第4条第1項第15号に該当する旨の判断がなされたものである。裁判例1における無効審判請求の対象商標を「登録商標1」といい,裁判例2における無効審判請求の対象商標を「登録商標2」という。
裁判例1は,登録商標1と引用商標1との類似性の程度について,「両者は,いずれも上部が下部よりも広がったホームベース形のポケットの外周に沿って2重のステッチを施し,ポケットの中央下部を中心としてそこから左右に延びる2本のステッチで構成される基本的な態様が共通することから,両者は相当程度近似する形状である」と判示する。
この基本的な態様の共通性は,本件商標と引用商標等にもあてはまるものと解されるから,本件商標と引用商標等も相当程度近似する形状ということができる。
この点,被請求人は,ホームベース形等よりも,むしろそれらの内部に表された形状が重要な要素を占めるなどとした上で出所の混同が生じるおそれはない旨主張するが,裁判例に基づかない独自の主張を展開しているにすぎない。
登録商標1は,2本の湾曲破線が左右対称でなく,2本の湾曲破線の中央部分にダイヤモンドポイントもなく,さらには2本の湾曲破線が全体として左下方向に傾斜しているように見える。これらの点は,被請求人が本件商標と引用商標等の類似性の程度が低いことを裏付ける理由としてそれぞれ指摘している点と共通するが,裁判例1では,いずれの相違点についても,登録商標1と引用商標1が相当程度近似する形状であるとの結論を左右する理由とはならないとされている。
したがって,これと同様に,被請求人の指摘する相違点によっては,本件商標と引用商標等が相当程度近似する形状であるとの結論は左右されない。
裁判例2は,登録商標2と引用商標1との類似性の程度に関し,登録商標2にダイヤモンドポイントがない点について,「『ダイヤモンドポイント』は,被告の使用するバックポケットのステッチにおける特徴的な形状の一部ではあるが,その部分は決して大きくはないことも考えれば,上記『S』との差異は,看者に与える印象としてもそれほど強くはない」と判示する。
本件においても,2本の湾曲破線の中央部分の形状に相違があるものの,この相違が看者に与える印象は強くないといえる。
さらに論じるならば,本件商標は,登録商標2のように中央部分が全く交わっておらず,新たに欧文字「S」が挿入されているというほどのものではなく,よくよく観察すると,本件商標には引用商標等とは異なりダイヤモンドポイントが形成されていないという程度の違いにすぎない。
してみれば,本件商標と引用商標等における2本の湾曲破線の中央部分の形状についての相違点は,登録商標2と引用商標1の場合よりさらに看者に当たる印象は強くなく,むしろ弱いものと解される。
したがって,裁判例1及び2に照らし,本件商標と引用商標等は相当程度近似する形状ということができる。
(4)小括
以上より,本件商標をその指定商品について使用したときには,引用商標等が強く連想され,本件で想定される取引者ないし需要者(一般消費者)において普通に支払われる注意力を基準とした場合,請求人又は請求人と関係のある営業主の業務に係る商品であると誤認させ請求人の商品との混同を生じさせるおそれがある。
よって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当するものである。
4 結語
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。また,仮に同項第11号に該当しないとしても,同項第10号に該当する。さらに,同項第10号及び同項第11号に該当しないとしても,同項第15号に該当する。
したがって,本件商標は,商標法第46条第1項第1号により,無効とすべきものである。

第4 被請求人の答弁
被請求人は,結論同旨の審決を求め,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として乙第1号証及び乙第2号証を提出した。
1 本件商標について
本件商標は,ジーンズパンツの左右バックポケットに付されたステッチを表したものと認められるところ,その構成は,各々野球のホームベース状をした五角形を実線で描き,上辺の内側には平行な一本の破線を配し,その他の四辺の内側には二本の破線を配して,この五角形図形を上下に分断するように,中央から左右方向に各々が山なりに伸びる二本の湾曲した破線と,その下側にあって左右に続く横一本の直線的な破線を配してなるものである。そして,これら左右の図形部分は,各々がやや内向きに傾斜した左右対称形をなしており,各内側の辺に沿って伸びる二本の破線の上端は,五角形図形の上辺よりも突出した位置において上辺と並行をなす破線で連結されている。また,五角形図形内に配された二本の湾曲した破線は,外向きの二本破線は略平行で,かつ,山なりに湾曲した終端部分のみが上昇しかけているが,内向きの二本破線はともに終端部分まで下降しながら,その間隔は徐々に離隔している。
2 引用商標について
引用商標1は,ジーンズパンツのバックポケット,特に右臀部に付されたステッチを表したものと認められるところ,その構成は,野球のホームベース状をした五角形を実線で描き,その各辺の内側に沿って二重の平行な破線を配し,この五角形図形を上下に分断するように,中央から左右方向に各々が山なりに伸びる二本の湾曲した破線を配してなるものである。そして,五角形図形内に配された前記二本の湾曲した破線は,常に同じ間隔で,かつ,中央より左右対称なアーチ状をなしている。また,五角形図形の左辺の左外側部分には,衣服のポケットであればピスネームやタグと称される縦長の四角形図形が配されており,同図形内に「LEVI’S」の英文字が縦書きされている。
引用商標2もまた,ジーンズパンツの右バックポケットに付されたステッチを表したものと認められるところ,その構成は,タグ部分が赤く着色されている点と,同タグ部分の図形内に文字が書されていない点とを除けば,引用商標1と同一である。
引用商標3もまた,ジーンズパンツの右バックポケットに付されたステッチを表したものと認められるところ,その構成は,タグ部分の図形内に英文字が書されていない点のみを除いて,引用商標1と同一である。
そして,請求人提出の書証のほか各種文献によると,これら引用商標の中心図形が弓を引く形に似ていることから,引用商標を用いたジーンズパンツのバックポケットの縫製仕様は,歴史的にアーキュエット(arcuate)ステッチと称されている旨が紹介されている。
3 本件商標と引用商標の対比
本件商標と引用商標の具体的構成は,別掲1ないし別掲4のとおりである。
しかるに,本件商標と引用商標は,まずは左右対称に配された2つ1組の五角形図形か,単独の五角形図形か,という基本的構成において顕著に相違している。
請求人は,本件商標につき「単に,同じ形状のポケットが2つ描かれているにすぎない」と説明しているが,本件商標は,左右図形間の仮想垂線を対称軸とする線対称図形であるから,「同じ形状」ではない。
しかるに,両商標は,実線とその内側に沿うように二本の破線を配してなる五角形の外形と,その外形を上下に分断するように,中央から左右方向に各々が山なりに伸びる二本の湾曲した破線を配してなる点において共通している。
他方,両商標の相違点としては,次の点を挙げることができる。
(1)全体的に左下がりに傾斜しているか,水平か
(2)タブ部分の有無
(3)外形内に沿う二本の破線が,外形実線と平行かつ等間隔をなしているか否か
(4)外形内に沿う二本の破線が,実線外枠の左上から突出しているか否か
(5)外形内に沿う二本の破線が,下端で交差結合しているか否か
(6)外形を上下に分断する二本の湾曲破線が,左右非対称か,完全に左右対称か
(7)外形を上下に分断する二本の湾曲破線が,中央も離隔しているか,中央で交差結合しているか
(8)外形を上下に分断する横一本の直線的な破線の有無
4 商標法第4条第1項第11号の該当性について
そもそも「商標の類否は,対比される両商標が同一または類似の商品に使用された場合に,商品の出所につき誤認混同を生ずるおそれがあるか否かによって決すべきであるが,それには,そのような商品に使用された商標がその外観,観念,称呼等によって取引者に与える印象,記憶,連想等を総合して全体的に考察すべく,しかもその商品の取引の実情を明らかにしうるかぎり,その具体的な取引状況に基づいて判断するのを相当とする」(最高裁昭和43年2月27日判決(昭和39年(行ツ)110))ところ,ジーンズパンツなる商品においては,そのバックポケットを五角形又はこれに近似した形状に形成し,二重のステッチで左右後身頃に縫い付けたパッチドポケットとすることが必須ないし定番の構成となっており,各メーカーにおいては,その五角形状をしたポケットの内側のステッチのデザインを工夫することによって他社商品との差別化の一助としている。
してみれば,ジーンズパンツを取り扱う業界においては,そのバックポケットが,実線とその内側にあって実線に沿って二重の破線を配した五角形の外形をしているものであって,その内側のステッチデザインが各メーカーにより異なるものであることまで明確に認識され理解されているといえるし,こうした五角形の図形に接する取引者・需要者は,仮にそれがジーンズパンツ以外の被服に使用されたとしても,やはりそれはジーンズパンツのバックポケットの形状を表した図形であると認識し理解するというのが相当である。
実際,ジーンズパンツなど被服を指定商品とする商標登録例を概観すると,単独の五角形,又は2つを1組として左右に並べた五角形や,これらに近似した形状を,実線又は破線にて表した図形商標が多数の企業等により登録されている事実がある(乙1)。
そうすると,この種ジーンズパンツ等の業界においては,前記五角形の外形そのものはありふれたものであり,自他商品の識別力がないか,又は極めて弱いものであって,その外形の内側に表された形状が自他商品識別の際の重要な要素となるといえる。
しかして,本件商標と引用商標は,いずれも前記五角形の外形を基調とするものであるが,特に両商標の要部といい得る,その五角形の外形を上下に分断する二本の破線等を配置した形状において,両商標には次のような差異が認められるのである。
(1)本件商標のものは左右対称ではないのに対して,引用商標では完全に左右対称である点
すなわち,本件商標では,外向きの二本破線は略平行で,かつ,山なりに湾曲した終端部分のみが上昇しかけており,内向きの二本破線はともに終端部分まで下降しているものの,その間隔は徐々に離隔してなるもので,左右非対称形をなしている。他方,引用商標は,二本の湾曲した破線が常に同じ間隔を維持しながら,中央から左右外方に向けて同じ曲率で山なりに湾曲したアーチ状をなすもので,完全に左右対称である。
(2)本件商標のものは中央でも上下に離隔しているのに対して,引用商標では中央で交差結合している点
すなわち,本件商標の二本の破線は,各々の中央に正三角形状の図形を伴いながらも上下に離隔しているのに対して,引用商標の二本の破線は中央で交差結合し,正三角形を上下対称に組み合わせた菱形をなしている(なお,この中央菱形形状は一般に「ダイヤモンドポイント」と称されている)。
(3)本件商標のものは下側の破線に接する横一本の直線的な破線を伴っているのに対して,引用商標にはそのような直線的な破線は一切見られない点
そして,以上の差異が全体に与える影響は決して少なくなく,前述した外形内に沿う二本の破線の具体的形状の差異とも相まって,両商標は全体として看者に別異の印象を与えるものである上に,ともに既成の称呼及び観念を生ずるものとはいえないから,本件商標は,引用商標とは外観,称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標である。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものではない。
5 商標法第4条第1項第10号の該当性について
本件商標と使用商標における左右各図形は,いずれも前記五角形の外形を基調とするものであるところ,特に両商標の要部といい得る,それら五角形の外形を上下に分断する二本の破線等を配置した具体的形状においては,前述したとおりの顕著な差異が認められることに何ら変わりはない。
そればかりか,本件商標では,
(1)左右の五角形図形が各々内向きに傾斜していること
(2)各五角形図形の内側の辺に沿って伸びる二本の破線の上端が,外形の上辺よりも突出した位置にまで延伸しており,上辺と並行をなす破線で連結されていること
(3)各五角形図形を上下に分断する二本の破線が,外向きには終端部分のみが上向きに昇りかけ,内向きにはともに終端部分まで下向きに降りていること
(4)各五角形図形を上下に分断する二本の破線は,外向きには略平行をなしているが,内向きにはその間隔が徐々に離隔していること
という形態的な特徴があるために,本件商標全体として観察した場合においても,中央下側あたりが重たく,内向きに傾いた複雑な図形である印象を受ける。
これに対して,使用商標では,そもそも左右の五角形図形自体が左右対称形をなしているために,全体として観察した場合においても極めて平坦かつ軽快でシンプルな印象を受けるのである。
よって,使用商標が請求人の業務に係るジーンズパンツを表示するものとして需要者の間に広く知られているか否かはさておき,本件商標と使用商標とは,全体として看者に別異の印象を与えるものである上に,共に既成の称呼及び観念を生ずるものとはいえないから,本件商標は,使用商標とは外観,称呼及び観念のいずれの点からみても相紛れるおそれのない非類似の商標である。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものではない。
6 商標法第4条第1項第15号の該当性について
請求人が古くからジーンズパンツについて引用商標等を使用しており,また本号にいう「混同」が狭義の混同のみならず広義の混同をも含む概念であるとしても,そもそも本件商標と引用商標等とは相紛れるおそれのない別異のものである。
すなわち,前述したように自他商品の識別においては五角形の外形やその外形内に沿った二本の破線の存在よりも,むしろそれらの内部に表された形状が重要な要素を占めるというこの種業界の実情からして,本件商標をその指定商品,特に引用商標等の使用商品と同じジーンズパンツについて使用しても,これに接する取引者・需要者が,請求人又は同人と経済的・組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのごとくその出所について混同をするおそれはない。
特にジーンズパンツは,俗に「アメカジ」と略称される「アメリカンカジュアル(American Casual):アメリカ風の衣料品のこと」の必須アイテムであるところ,そうしたアメカジの専門雑誌において,請求人商品とともに被請求人の商品が掲載紹介されても(乙2),何ら出所の混同が生じていないことはその証左であるといえる。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものではない。
7 むすび
以上のとおり,本件商標は,引用商標及び使用商標には類似していないのみならず,他人の業務に係る商品と混同を生ずるおそれがある商標にも該当しないことから,商標法第4条第1項第10号,同項第11号又は同項第15号のいずれにも違反して登録されたものではない。

第5 当審の判断
1 引用商標及び使用商標の周知性について
(1)引用商標は,それぞれ別掲2ないし別掲4のとおりの構成からなり,ポケットの形状を表したものと容易に認識されるものであって,上部が下部よりも広がったホームベース形の外周に沿った2本のほぼ平行する破線と,ポケットの中央下部を中心として,そこから弓状に左右対象に延びる2本の破線で構成されるものであり,ポケットの左側上部のタブの色の有無,及び「LEVI’S」の文字の有無に差異を有するものの,タブ部分以外の基本的構成は,いずれも外観上同一視できるものである。
使用商標は,前記第2の4のとおり,引用商標のポケット図形を2つ組み合わせた構成からなるものである。
(2)請求人提出の甲各号証及び同人の主張によれば,次の事実を認めることができる。
ア 請求人は,遅くとも1986年(昭和61年)頃から,我が国において,そのグループ会社であるリーバイスジャパンを通じ,主としてジーンズ製のパンツ(以下「請求人商品」という。)の販売・広告等を行い,現在も継続している(甲5ほか)。
イ 請求人商品のバックポケットの形状は,左右のいずれも,上部が下部よりも広がったホームベース形の外周に沿った2本のほぼ平行するステッチと,ポケットの中央下部を中心として,そこから弓状に左右対象に延びる2本のステッチで構成されるものであり,その形状は昭和61年頃から変化のないものである(甲5ほか)。
ウ リーバイスジャパンの平成13年11月期ないし平成21年11月期における「メンズボトムス」及び「レディースボトムス」の売上高は,毎年197.3億円ないし146.6億円であり,請求人商品の総売上げは,平成14年11月期ないし平成20年11月期はいずれも200億円超であった(甲60,甲62?甲64ほか)。
エ リーバイスジャパンは,平成8年ないし平成20年にはほぼ毎年,請求人商品の商品カタログを作成した。そして,同カタログには請求人商品のポケット図形が表された写真が多数用いられている(甲10?甲15ほか)。
また,請求人商品の商品カタログは,昭和61年頃から平成20年まで継続して作成されている(甲5?甲7ほか)。
オ 平成4年,平成7年,平成12年ないし平成15年に,新聞,雑誌に掲載された請求人商品の広告には,請求人商品のポケット図形が表された写真が用いられている(甲8,甲9,甲16?甲20ほか)。
(3)上記(2)の事実によれば,請求人商品のバックポケットの形状は,昭和61年頃から現在までその形状に変化がないこと,請求人商品の売上げが平成14年ないし平成20年頃は毎年200億円を超えていると推認できること,請求人商品のカタログや広告で該商品のポケットの形状が表された写真が多数用いられていることなどから,本件商標の登録出願の日(平成22年7月6日)前ないし登録査定の日(平成22年10月15日)において,取引者及び需要者の間に広く認識されているものと判断するのが相当である。
(4)そして,請求人商品のバックポケットの形状は左右が同じ形状であり,同ポケットの片方の形状と引用商標の形状が外観上同一視できるものであることからすれば,引用商標は,本件商標の登録出願の日前ないし登録査定の日において,請求人等の業務に係る商品(ジーンズ製のパンツなど)を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと判断するのが相当である。
さらに,使用商標は,引用商標のポケット図形を2つ組み合わせた構成からなるものであって,請求人商品のバックポケットの形状と外観上同一視できるものであることからすれば,使用商標も本件商標の登録出願の日前ないし登録査定の日において,請求人等の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものと判断するのが相当である。
なお,被請求人は,引用商標及び使用商標の周知性について争っていない。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標
本件商標は,別掲1のとおり,左右二つのポケットの形状を表したものと容易に認識されるものであって,右のポケットは,その構成中に上部が下部よりも広がったホームベース形を実線で表し,その外周に沿って1本(上辺)又は2本(その余)の破線を,左右の2本の破線は下部よりも上部が明らかに広く,左の2本の破線は外周を上方に突出するように表し,さらに,ポケットの中央下部を中心として,そこから右に波状に延びる2本の破線,左に弓状に次第に広がりながら延びる2本の破線,及びその下の横1本の直線状の破線を表してなり,左ポケットは右ポケットと左右対称に表してなるものである。
また,本件商標からは,特定の称呼及び観念を生じないものである。
(2)引用商標
引用商標は,上記1(1)のとおり,ポケットの形状を表したものと容易に認識されるものであって,その構成中に上部が下部よりも広がったホームベース形を実線で表し,その外周に沿った2本のほぼ平行する破線と,ポケットの形状の中央下部を中心として,そこから弓状に左右対象に延びる2本の破線で構成される部分を有するものである。
そして,引用商標は,それぞれ,ポケットの形状の左側上部のタブの色の有無,及び「LEVI’S」の文字の有無に差異を有するものの,タブ部分以外の部分は,いずれも外観上同一視できるものである。
また,引用商標は,引用商標1において,タブ部分に表された「LEVI’S」の文字に相応した「リーバイス」の称呼を生じる以外,特定の称呼及び観念が生じるものではない。
(3)本件商標と引用商標の類否
ア 本件商標と引用商標を比較すると,本件商標が左右2つのポケットの形状からなるのに対し,引用商標が一つのポケットの形状からなるものであるから,両者は時と所を異にして観察しても,外観上容易に区別し得るものである。
また,本件商標と引用商標は,引用商標1において,タブ部分に表された文字に相応した「リーバイス」の称呼及びジーンズの「LEVI’S」の観念が生じる以外,特定の称呼及び観念は生じないものであるから,両商標は,称呼及び観念において,相紛れるおそれはないものである。
したがって,本件商標と引用商標とは,全体構成の比較において,外観,称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標であって,別異の商標というべきものである。
イ 本件商標の構成中,右のポケットの形状(以下「本件商標右ポケット形状」という。)と引用商標を比較してみると,両者は,ポケットの形状を表したものと容易に認識されるものであって,上部が下部よりも広がったホームベース形の外周に沿った1本又は2本の破線と,ポケット中央から左右に延びる2本の破線を構成要素としている点を共通にするといえる。
しかしながら,両者は,ア)ポケット中央から左右に延びる2本の破線が,本件商標右ポケット形状は,右には波状に,左には弓状に次第に広がりながら延びているのに対し,引用商標は左右対称に弓状にほぼ平行して延びている点,イ)ホームベース外周に沿った左右の2本の破線が,本件商標右ポケット形状は,上部が明らかに広く表されているのに対し,引用商標は,ほぼ平行に表されている点,ウ)ホームベース外周に沿った左の2本の破線が,本件商標右ポケット形状は,実線で表された外周を突出しているのに対し,引用商標は突出していない点,エ)本件商標右ポケット形状は,中央やや下の横1本の直線状の破線があるのに対し,引用商標はないものであって,それらの差異が両者の外観の印象に与える影響が大きいから,両者は,外観上,相紛れるおそれのないものと判断するのが相当である。
さらに両者は,タブの有無の差異をあわせみれば,より別異の印象を与えるものといえる。
また,本件商標右ポケット形状からは,特定の称呼及び観念を生じないものであるのに対し,引用商標1からは,「リーバイス」の称呼を生じ,特定の観念を生じないものである。さらに,引用商標2及び3からは,特定の称呼及び観念を生じないものである。
したがって,本件商標右ポケット形状と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似のものであって,別異のものというべきものである。
ウ 請求人は,本件商標と引用商標は,いずれも上部が下部よりも広がったホームベース形のポケットの外周に沿ってステッチが施されている点,及びポケットの中央下部を中心としてそこから左右に延びる2本のアーチ形状のステッチで構成されている点といった基本的な構成態様が共通し,ポケットの数,タブ部分の有無及び2本のアーチ形状のステッチが線対称か否かの差異は,商標全体の構成の類似性の判断に占める要素としては強力なものではなく,両商標は類似する旨主張する。
しかしながら,本件商標と引用商標は,いずれもポケットの形状を表したものと容易に認識されるものであって,ジーンズパンツを取扱う業界においては,上部が下部よりも広がったホームベース形で,その外周に沿ってステッチが施されているポケットの形状は一般的なものであるし,また上記イのとおり,本件商標右ポケット形状と引用商標は,タブ部分の有無に係わらず相紛れるおそれのないものであるから,請求人のかかる主張は採用できない。
エ そうとすれば,本件商標と引用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第10号及び同項第15号該当性について
本件商標と引用商標は,上記2(3)のとおり,外観,称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標であって,別異の商標である。
そして,本件商標の左右のポケットは線対称の形状であり,使用商標が前記第2の4のとおり,引用商標を2つ組み合わせた構成からなるものであることからすれば,本件商標と使用商標とは,それらの片方のポケットの形状を比較したといえる,上記2(3)イと同様の理由(タブの有無については除く。)により,外観上相紛れるおそれのないものということができる。
また,本件商標と使用商標は,いずれも特定の称呼及び観念を生じないものであるから,これらの点において相紛れるおそれがない。
そうすると,本件商標と使用商標とは,外観,称呼及び観念のいずれの点においても相紛れるおそれのない非類似の商標というべきものである。
さらに,引用商標及び使用商標は,上記1のとおり,本件商標の登録出願の日前ないし登録査定の日において,請求人等の業務に係る商品を表示するものとして需要者の間に広く認識されているものであるが,上記のとおり,本件商標と引用商標及び使用商標は非類似の商標であって,別異の商標というべきものであるから,本件商標は,引用商標等を連想又は想起させるものでもない。
してみれば,本件商標は,商標権者がこれをその指定商品について使用しても,取引者,需要者をして引用商標又は使用商標を連想又は想起させることはなく,その商品が請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように,その商品の出所について混同を生ずるおそれはないものというべきである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当しない。
4 まとめ
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第10号,同項第11号及び同項第15号のいずれにも違反してされたものではないから,同法第46条第1項の規定に基づき,その登録を無効にすべきでない。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲1 本件商標

別掲2 引用商標1

別掲3 引用商標2(色彩は原本参照。)

別掲4 引用商標3


審理終結日 2016-06-07 
結審通知日 2016-06-14 
審決日 2016-06-29 
出願番号 商願2010-53231(T2010-53231) 
審決分類 T 1 11・ 261- Y (X25)
T 1 11・ 271- Y (X25)
T 1 11・ 25- Y (X25)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 庄司 美和岩本 和雄 
特許庁審判長 酒井 福造
特許庁審判官 平澤 芳行
中束 としえ
登録日 2010-11-05 
登録番号 商標登録第5366427号(T5366427) 
代理人 森 寿夫 
代理人 森下 夏樹 
代理人 山本 秀策 

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