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審決分類 審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない 125
管理番号 1321373 
審判番号 取消2014-300901 
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2014-11-07 
確定日 2016-10-28 
事件の表示 上記当事者間の登録第971820号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第971820号商標(以下「本件商標」という。)は、「LE MANS」の欧文字を横書きしてなり、昭和42年1月25日に登録出願、第17類に属する商標登録原簿記載の商品を指定商品として同47年7月13日に設定登録され、その後、4回にわたり商標権の存続期間の更新登録がされ、また、平成15年8月27日に指定商品を第24類「布製身の回り品,かや,敷布,布団,布団カバー,布団側,まくらカバー,毛布」及び第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類,寝巻き類,下着,水泳着,水泳帽,エプロン,襟巻き,靴下,ショール,スカーフ,手袋,ネクタイ,ネッカチーフ,バンダナ,保温用サポーター,マフラー,耳覆い,ずきん,すげがさ,ナイトキャップ,ヘルメット,帽子」とする指定商品の書換登録がされているものである。
なお、本件審判の請求の登録は、平成26年11月27日である。

第2 請求人の主張の要点
請求人は、本件商標の指定商品中、第25類「洋服,コート,セーター類,ワイシャツ類」についての登録を取り消す、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由及び被請求人の答弁に対する弁駁の理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第11号証を提出している。
1 請求の理由
本件商標は、その指定商品中、上記の商品について、継続して3年以上日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により、その登録を取り消すべきものである。
2 弁駁の理由
被請求人は、「審判事件答弁書」において、本件商標権者(被請求人)から使用許諾を受けた通常使用権者である「株式会社ヴァンヂャケット」は、請求に係る指定商品中、「ワイシャツ類」について本件商標を使用しているとし、証拠方法として乙第1号証ないし乙第18号証を提出している。
(1)被請求人の提出した上記の乙各号証によっては、本件商標を本件審判請求の予告登録前3年以内に、日本国内において、請求に係る指定商品の何れについても使用していたものとは認められない主な理由は、ア 調査会社を通じて事前に使用状況を調査したが、過去3年間使用の事実を発見できなかった。イ 証拠のほとんどは請求に係る指定商品に含まれない「ネクタイ」に関するものである。ウ 予告登録前3年以内に、本件商標を付した「ワイシャツ類」が実際に商取引の場に供された事実が証明されていない。エ 仮に、要証期間内に使用していたことが認められたとしても、その使用は、商標法第50条第3項駆け込み使用に該当する、の4点である。
(2)以下、上記アないしエについて、詳述する。
ア 本件審判の請求前の事前調査について
請求人は、本件審判を請求するに当たり、調査会社を通じて被請求人(本件商標権者)のケントジャパン株式会社のほか、株式会社ヴァンヂャケット、その他関連会社に対し、過去3年内に本件商標「LE MANS」が、「第25類 洋服、コート、セーター類、ワイシャツ類」に使用されていたか否かについて調査を行った。その調査内容及び結果は、以下のとおりである(甲4)。
(ア)2014年10月9日及び10月22日におけるケントジャパン株式会社(台東区蔵前)の対応者、S氏は、次のとおり見解を述べている。
a 「LE MANS」は、当社が保有するブランドである。
b 以前は、衣服類に使用していたが、今は衣服類では使用していない。
c 衣服類には使用していないが、雑貨類等で例えば、イトーヨーカ堂の店舗で「LE MANS」のものを販売している。
d ライセンシーは言えない。
e 先行き、「雑貨類」やその他の商品も復活させる用意がある。
(イ)2014年10月23日におけるKentイトーヨーカドー木場店(東京都江東区木場)の対応者、E氏は、「過去3年間の仕入れ台帳、販売台帳を精査した結果、『LE MANS』の文字を使用したブランド、名称として使用した商品の取り扱いはない。」と見解を述べている。
(ウ)2014年10月23日におけるKentイトーヨーカドー湘南台店(神奈川県藤沢市石川)の対応者、S氏は、E氏と同様に「過去3年間の仕入れ台帳、販売台帳を精査した結果、『LE MANS』の文字を使用したブランド、名称として使用した商品の取り扱いはない。」と見解を述べている。
(エ)2014年10月15日における株式会社ヴァンヂャケット(台東区蔵前4-11-3蔵前イシイビル)(以下「ヴァンヂャケット」という場合がある。)の対応者、K氏は、「確かに何十年も前に『ルマン』、『LE MANS』ブランドの衣服類を取り扱っていたが、当社のラインアップからはずれ、何十年も前から、このブランドは取り扱っていない。」との見解であった。
なお、K氏は、(旧)株式会社ヴァンヂャケットの取締役であった人物であり、現在は、(新)株式会社ヴァンヂャケットの取締役からは外れているが、隆盛を極めたヴァンヂャケット及びヴァンヂャケットが保有していたブランドに精通している人物であり、現在のVANオンラインストアの責任者ともなっていて、昔からのヴァンヂャケットが保有していたブランドに詳しい人物である。
(オ)過去に「LE MANS」ブランドの商品を取り扱ったことのある企業4社についても調査を行ったところ、何れも過去3年内に使用したことはない、と述べている。
(カ)その他、株式会社ケントジャパンの公式ホームページ、株式会社ヴァンヂャケットのホームページ、オンラインストア、及び一般サイト検索によっても、本件商標の使用は認められなかった。
(キ)以上のとおり、本件審判請求前の使用状況調査によれば、本件商標「LE MANS」商標は、本件審判の取消しに係る指定商品の何れについても過去3年内に使用されていた事実は、発見できなかった。
イ 被請求人が要証期間に本件商標を使用したとして提出した証拠は、ほとんど「ネクタイ」に関するものであることについて
被請求人は、「ワイシャツ類について本件商標を使用している事実を立証する前提として、ネクタイについて本件商標を使用している事実を立証する。」と述べ、乙第1号証ないし乙第11号証を提出している。
しかしながら、上記乙第1号証ないし乙第11号証は、「ネクタイ」についてのものであり、「ワイシャツ類」についてのものでないから、「ワイシャツ類」の使用の立証にはならない。
よって、上記乙各号証については、何ら証拠価値はなく、「ワイシャツ類」について提出された証拠のうち、検討に値するのは乙第12号証ないし乙第18号証のみである。
ウ 乙第12号証ないし乙第18号証によっては、本件商標を付した商品「ワイシャツ類」が実際に商取引の場に供された事実が証明されていないことについて
被請求人の提出した乙第12号証ないし乙第18号証によっては、本件商標「LE MANS」を要証期間内に「洋服、コート、セーター類、ワイシャツ類」の何れの商品にも使用した事実は認められない。
まず、「商標法第50条の適用上、『商品』というためには、市場において独立して商取引の対象として流通に供される物でなければならず、また、『商品についての登録商標の使用』があったというためには、当該商品の識別表示として、商標法第2条3項、4項所定の行為がなされることを要するものというべきである(東京高裁 平成12年(行ケ)109号)。」(甲5)
したがって、単に商品の販売の準備を行っていたことを窺わせる証拠等を提出したとしても、これらが登録商標を使用したことの証明にならないことはいうまでもない。(取消2007-301475号審決)(甲6)
すなわち、被請求人の提出した上記の乙各号証は、商品の販売の準備のために商品を発注したこと、納品したこと及び代金請求があったこと等を窺わせるだけのものであり、当該商品が実際に市場において独立して商取引の対象として流通に供され、かつ、商標法第2条3項、第4項所定の行為がなされていたことを、以下のとおり、何ら立証したものではない。
(ア)乙第12号証(商標使用権契約書)
乙第12号証は、2014年9月30日付けで締結された本件商標権者と株式会社ヴァンヂャケットとの「商標使用権契約書」であり、上記契約の期間は、2014年10月1日?2015年9月30日となっている。
契約締結日は、請求人が調査を開始した2014年10月9日の約10日前であり、いかにも急いで作成した感があり、このような契約書自体、信憑性に欠けるものである。
(イ)乙第13号証(発注書)
乙第13号証は、2014年10月10日付けのヴァンヂャケットが有限会社レクサスにワイシャツ類を発注した「発注書」であるが、単に発注しただけでは、本件商標の使用にはならない。
また、上記発注書には担当者としてのK氏の印が押してあるが、K氏は、請求人が2014年10月15日に事前調査をした際に、「何十年も前から、このブランドは取り扱っていない。」と述べているものである。
仮に10月10日付けで本件商標を付したワイシャツ類の発注をしているならば、上記発言には疑問があり、そうすると、上記発注書自体の信憑性は極めて疑わしいものである。
(ウ)乙第14号証(納品伝票)
乙第14号証は、有限会社レクサスがヴァンヂャケットと思われるVANへ2014年11月15日付けで納品した伝票である。
上記伝票は、単に受注者が商品を納品したことを証明するにすぎず、本件商標を使用したことの証明にはならない。
(エ)乙第15号証の1(受入伝票)
乙第15号証の1は、VAN(ヴァンヂャケット)が有限会社レクサスから商品を受け入れた伝票である。これも、単に発注者が商品を受け入れたことを証明するにすぎず、本件商標の使用証明にはならない。
(オ)乙第15号証の2(移動伝票(控))
乙第15号証の2は、ヴァンヂャケットが自社の販売店であるVANBaseへ2014年11月18日に移動した伝票(控)である。
移動したといっても、ヴァンヂャケットとVANBaseとは、同じビル内のそれぞれ6階と4階で業務を行っているのであるから、単に場所を移動したとする書類にすぎない。
よって、これをもって本件商標が使用されたとはいえない。また、上記伝票(控)に記載された商標も「LENLeMans」であって本件商標の使用ではない。
(カ)乙第16号証(請求書)
乙第16号証は、有限会社レクサスからヴァンヂャケット宛の平成26年11月20日付け「請求書」である。
上記請求書は、受注者が発注者であるヴァンヂャケット宛に代金の支払いを請求したことを示すに止まり、何ら、本件商標を使用したことを証明する証拠とはならない。
(キ)乙第17号証(店舗及び商品の写真)
乙第17号証は、被請求人がワイシャツ類を販売したとする店舗の写真及びワイシャツ類の写真である。
撮影者は、K氏で、撮影年月日は2015年1月8日であり、要証期間を1か月以上経過した後の日付であるから、要証期間内の使用の証明とはならない。
(ク)乙第18号証(棚卸差異表)
本件商標を付したワイシャツ類が2014年11月末までに3枚売れたとして上記「棚卸差異表」を提出している。
しかしながら、上記表の作成日は2015年1月9日であるばかりでなく、このような表は自らがパソコンを使用して簡単に作成することができるものであるから、極めて客観性に乏しく、信憑性に欠けるものである。
したがって、上記のような表をもって、2014年11月末までに本件商標を付したワイシャツ類が店舗において販売された事実を証明する客観的な証拠とはなり得ないものである。
また、仮に乙第18号証に基づき、2014年11月末までに本件商標を付したワイシャツ類が販売されたとしても、要証期間内に販売されたことを立証したものとはいえない。
すなわち、本件審判請求の予告登録日は2014年11月27日であるから、それ以前に本件商標が付されたワイシャツ類が販売のために取引の場におかれ、販売されたことを立証しなければならないからである。
単に「2014年11月」の日付では、要証期間内にワイシャツが販売のために取引の場におかれ、販売されたことの証明にはならない。
したがって、乙第18号証の書類によっても、本件商標が予告登録前3年以内にワイシャツ類に使用されていたことを証明することはできないものである。
ところで、被請求人はワイシャツ類を「VANBase」にて販売したと述べているが、請求人が本年2月12日に同店舗を確認したところ、店員によれば、「VANBase」では、いわゆる「VAN」ブランドのみを販売しており、他のブランドは置いていない、とのことであった。
たしかに、店内には、ネクタイ、ジャケット、靴下、シャツ類のほか、ハンカチなどが展示されてあったが、全て「VAN」ブランドであり、他のブランドは見当たらなかった。
すなわち、「VANBase」では「VAN」ブランドの商品しか展示しておらず、本件商標「LE MANS」などのブランドは置いていないとすれば、被請求人は、単に本件審判請求による登録の取消しを免れるために一時的にネクタイ、及びワイシャツ類を店頭に置いて写真撮影を行った可能性が高い。
仮にそうであるとするならば、単に登録の取消しを免れるためのみに、恰も店頭販売されているかの如くの形をとっただけであり、このような使用は本件商標の使用とはいえない。
以上のとおり、被請求人の提出した乙第12号証ないし乙第18号証によっては、要証期間内に本件商標を付したワイシャツ類を販売するために展示或いは実際に販売するなどを行った事実は認められない。
よって、被請求人は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品について、本件商標を使用していることを証明したものと認めることはできない。
駆け込み使用であること。
本件商標「LE MANS」は、フランス国在の請求人「オートモビル クラブド ル’ウエスト(アー.セー.オ.)」が1923年からフランスで開催している24時間耐久自動車レースの名称として、広く世界的に知られている著名な商標である。
「LE MANS」は、フランス本国のみならず我が国においても広く知られている著名商標であることは、以下の審決及び判決でも認められている。
(ア)商標登録第5092920号「LE MANS」無効審判事件
(イ)商標登録第5092921号号「LE MANS」無効審判事件
(ウ)商標登録第4855986号「チームルマン」無効審判事件
(エ)知財高裁 平成21年(行ケ)第10313号判決
昭和42年1月25日、当時のヴァンヂャケット株式会社は、請求人が日本において本件商標「LE MANS」を商標出願していなかったことを奇貨として、これを商標出願し、商標登録を受けたものである。
そのため請求人は、特に第25類「被服」等については、[LE MANS」商標の登録を受けることができず、以下のとおり、これまで3回にわたって取消審判請求を行ってきた。(なお、請求人以外にも取消審判を1回請求している。)
つまり、本件の商標権者は、これまで4回にわたって取消審判の請求を受けているのであるが、当時の商標権者(ヴァンヂャケット、又はビーエムプランニング)は、何れも自らは使用することなく、他人にライセンスを与え、当該使用権者の使用証明をもって本件商標の取消しを何回も免れてきた事実がある。
(ア)平成1年取消第20377号(甲7)
(イ)平成1年取消第20378号(甲8)
(ウ)平成11年取消第30286号(甲9)
(エ)取消2002-30122号(甲10)
したがって、被請求人は本件商標の保持意欲は極めて強く、上記のとおり4回も取消審判を請求されれば、仮に取消審判請求の動きを察知すれば、当然、対応策をとることは想像に難くない。
今回、請求人は、被請求人に対して、本件審判請求前の2014年10月9日及び22日の2回にわたり使用調査を行い、また、ヴァンヂャケットに対しては同10月15日に使用調査を行っている。
そうすると、これまでの経験から、被請求人は一連の調査活動に対して、当然、取消審判の請求がなされることを知ったということができる。
また、被請求人が「取消審判を請求されることを知った」ことを証明する具体的な事実として、被請求人は10月22日の2回目の調査を受けた後、10月24日付けで、商標「Le Mans」について、第25類「被服,ガーター,靴下止め,ズボンつり,バンド,ベルト」を指定商品とする商標出願を行っている。(商願2014-94060号)(甲11)
上記出願商標は、本件商標「LE MANS」とほぼ同じ態様であり、かつ、その指定商品も本件取消審判に係る指定商品とほぼ同じである。
そうすると、被請求人は、本件商標の使用調査を受けた後、取消審判が請求されることを知って、直ちにほぼ同一の商標を取消しに係る商品を指定商品として商標出願を行ったことは、明白である。
すなわち、本件審判の請求がなされることを知らなければ、ほぼ同一の商標「Le Mans」を本件審判請求に係る商品を指定して、商標出願するはずがないからである。
また、出願の時期(タイミング)、商標の態様、指定商品の何れから考えても、上記の商標出願が偶然になされたものとは到底考えられず、取消審判が請求されることを知ったからこそ、あらたに「Le Mans」商標を第25類の取消しに係る商品を指定して出願したとしか考えられない。
そうすると、乙第18号証によって、本件審判請求(平成26年11月7日)前3月からその審判の請求の登録の日(平成26年11月27日)までの間に、日本国内において、本件商標をワイシャツ類について使用したことが、万が一、認められたとしても、被請求人は本件審判請求がなされることを知り、上記の使用を行ったものであるから、商標法第50条第3項のいわゆる駆け込み使用に該当するものである。
したがって、被請求人の提出した乙各号証によっては、そもそも要証期間内に本件商標がワイシャツ類に使用されたものとは認められないし、万が一、使用が認められたとしても、その使用は商標法第50条第3項駆け込み使用に該当する。
オ まとめ
以上のとおり、被請求人の提出した乙第1号証ないし乙第18号証によっては、要証期間内に本件商標を付したワイシャツ類が商取引の対象として流通に供され、かつ、商標法第2条3項、第4項所定の行為がなされていたことを立証したものとはいえない。
よって、本件商標権者、専用使用権者又は使用権者は、本件審判請求の登録前3年以内に日本国内において、本件商標を本件審判請求の取消しに係る何れの指定商品についても使用していたものと認めることはできない。
なお、万が一、本件商標権者又は使用権者が、要証期間内に本件商標をワイシャツ類について使用したことが認められたとしても、その使用は商標法第50条第3項駆け込み使用に該当する。

第3 被請求人の答弁の要点
被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として乙第1号証ないし乙第18号証(枝番を含む。)を提出した。
本審判請求の登録(予告登録日:平成26年11月27日)前3年以内に日本国内において商標権者である被請求人から許諾を受けた通常使用権者である株式会社ヴァンヂャケットが、その請求に係る指定商品のうち、ワイシャツ類についての本件商標を使用している事実を以下のとおり立証する。なお、ワイシャツ類について本件商標を使用している事実を立証する前提として、ネクタイについて本件商標を使用している事実を立証する。
1 ネクタイについて本件商標を使用していることについて
2013年11月頃に、株式会社イトーヨーカ堂から株式会社フィールドハウス対し「LE MANS」ブランドのネクタイ5,000本について委託生産の依頼があった。(乙1及び乙2)。
株式会社フィールドハウスは、被請求人であるケントジャパン株式会社から2013年12月1日に本登録商標の指定商品中「ネクタイ」について通常使用権の許諾を受けた(乙3)。
そして株式会社フィールドハウスは、株式会社テスートに対し「LE MANS」ブランドのネクタイ5,000本についての生産を依頼し、株式会社テスートは、「LE MANS」ブランドのネクタイ5,140本を生産し、2014年2月5日に納品した(乙4ないし乙6)。
株式会社フィールドハウスは、2014年2月20日に株式会社イトーヨーカ堂の各店舗に対して「LE MANS」ブランドのネクタイ約3,700本を納品し、株式会社イトーヨーカ堂川越店には、18本納品した(乙9)。
そして株式会社フィールドハウスは、2013年12月?2014年11月までの間に、株式会社イトーヨーカ堂に対し、「LE MANS」ブランドのネクタイ2,667本を販売した(乙10及び乙11)。
2 ワイシャツ類について本件商標を使用していることについて
被請求人は株式会社フィールドハウスからネクタイの返品についての報告を受け、返品されたネクタイについて、ネクタイだけでは売り場を作る上で弱い、と考えた。そこで、ワイシャツ類と一緒に販売することで購入を促すことを思いつき、まずは少ないロットで生産し、試験的に販売してみることとした。
そして、被請求人は株式会社ヴァンヂャケットに「LE MANS」ブランドのワイシャツを生産・販売させることとし、本件商標の指定商品中「ワイシャツ類」について通常使用権の許諾をした(乙12)。なお、株式会社ヴァンヂャケットは、株式会社フィールドハウスと同様にケントジャパン株式会社の関連会社である。
株式会社ヴァンヂャケットは、有限会社レクサスに対し「LE MANS」ブランドのワイシャツ類30枚についての生産を依頼した。詳しくは、株式会社ヴァンヂャケットの熊王氏は、有限会社レクサスに対し2014年10月10日付で発注書を送付した(乙13)。
有限会社レクサスは、「LE MANS」ブランドのワイシャツ類30枚を2014年11月15日に株式会社ヴァンヂャケットに対して納品した(乙14)。そして株式会社ヴァンヂャケットの熊王氏は、2014年11月18日に検収すると共に(乙15の1)、直営店舗「VAN Base」に移動した(乙15の2)。有限会社レクサスは、2014年11月20日付で株式会社ヴァンヂヤケットに対し請求書を発行した(乙16)。
株式会社ヴァンヂャケットは、2014年11月20日以後「LE MANS」ブランドのワイシャツ類を前記株式会社フィールドハウスの「ネクタイ」と伴に直営店舗「VAN Base」で販売している(乙17)。そして、2014年11月末日時点で、30枚中3枚が販売済みである(乙18)。
以上のとおり、本件商標の商標権者である被請求人から許諾を受けた通常使用権者である株式会社ヴァンヂャケットは、本審判請求の登録前3年以内に日本国内において、その請求に係る指定商品のうち、ワイシャツ類について本件商標を使用している。

第4 当審の判断
1 被請求人の提出に係る乙各号証及び同人の主張によれば、以下の事実を認めることができる。
(1)乙第12号証は、「商標使用権契約書」とされるものであり、2014年9月30日付けで、ケントジャパン株式会社(本件商標権者)を甲、株式会社ヴァンヂャケット(以下「使用者」という。)を乙とし、甲より乙に対し本件商標について通常使用権を許諾するとの記載があり、期間(第1条)として2014年10月1日?2015年9月30日、本件商標として「LE MANS」、指定商品 第25類「ワイシャツ類」について、本件通常使用権の範囲として日本国とするものである。
(2)乙第13号証は、商品の発注書と認められるところ、最上段に「VAN JACKET INC.」、作成日を2014年10月10日、宛先を「有)レクサス 殿」とし、チョップ名「LeMans」、品目「LEN」、品番「94802」、商品名「B.D」、生地名「オックスフォード」とし、その下にSIZE欄のM、L及びLLの各項目下に各10とあり、TOTALとして30と記載されている。
また、その下段に、製品納期として「11月15日」、取扱表示としてブランドネーム欄及び下げ札欄に「LeMans」の記載、右側の四角枠内に「オックス」の文字と共に、ワイシャツの形状を表した図が表示されている。
右下には、本発注の担当者欄に「VAN」、「2014/10/10」及び「熊王」の文字を含む丸判があり、欄外に「株式会社ヴァンヂャケット」と記載されていることから、株式会社ヴァンヂャケット(VAN JACKET INC.)が、2014年10月10日に有限会社レクサスに対し、チョップ名を「LeMans」、品番「94802」とするワイシャツを発注したことが認められる。
(3)乙第14号証は、納品伝票であり、「VAN殿」、「平成26年11月15日」及び「有限会社レクサス」の文字、表中の品番に「LEN」、品名「94802」、数量「10」が3段に記載され、それぞれのサイズ欄に「M」、「L」及び「LL」の記載があることから、有限会社レクサスが株式会社ヴァンヂャケットに対し平成26年11月15日に品名を「94802」とする商品を各サイズ10点づつ納品したことが認められる。
(4)乙第15号証の1は、発行を26年11月17日とする「受入伝票2(検収元控)」であり、右上に「No068717」、「VAN」及び「・JAC・」の文字と右下に「VAN JACKET INC.」の表示があり、枠内には、仕入れ先「有限会社レクサス」、品目「LEN」及び品番「94802」とし、表中のSAIZ欄の「M」、「L」及び「LL」の項目下にそれぞれ10、計として「30」の記載がある。また、入庫検収の欄には「11/18」及び「熊王」の署名があることから、株式会社ヴァンヂャケットが有限会社レクサスから平成26年11月17日に品番「94802」とする商品を各サイズ10点づつ受け入れ、11月18日に検収が行われたことを示す受入伝票と認められる。
(5)乙第15号証の2は、伝票日付を「2014年11月18日」とする(株)ヴァンヂャケットから「VAN Base」あての「移動伝票(控)」であり、「商品/カラー/サイズコード」欄に3行で「94802」、「10」及び「2」ないし「4」、商品名欄に「LENLeMans OX BD」の記載、数量欄に各「10」の記載があることから、株式会社ヴァンヂャケットにおいてVAN Baseに対して商品コード「91802」、商品名を「LENLeMans OX BD」とする商品が移動されたことを示すものである。
(6)乙第17号証は、撮影者を株式会社ヴァンヂャケットの熊王健司、撮影日2015年1月8日とする写真であり、「VAN Base」店舗の外観と「LE MANS」を表示した下げ札及び織りネームを付したワイシャツの写真である。
(7)乙第18号証は、処理日を2015年1月9日とする使用者の棚卸差異表とされるものであり、対象年月「2014年11月」、「倉庫コード/名称、アイテムコード/名称、商品コード/名称、カラー」の欄に「000060 VAN Base」、「0590 LEN」、「94802 LEN LeMans OX BD」及び「10」の記載があり、「サイズ」の欄に「2 M」、「3 L」及び「4 LL」が3段に記載され、それぞれに対応した「帳簿在庫/数量」、「実施棚卸/数量」及び「棚卸後/数量」の欄には、それぞれ「10」、「8」及び「9」と記載されていることから、VAN Baseにおける商品コード「94802」商品名「LEN LeMans OX BD」とされる商品が、2014年11月の時点において、各サイズ毎に数量「10」、「8」及び「9」となっていたことを示す資料となっている。
3 上記2及び被請求人の主張を総合すれば、次のとおり認めることができる。
(1)本件商標の通常使用権者について
2014年9月30日付けで、本件商標権者は、使用者に対し、商品「ワイシャツ類」について、期間を2014年10月1日?2015年9月30日とする本件商標の通常使用権を許諾したことが認められるから、2014年10月1日以降の本件審判の要証期間において、使用者は、本件商標の通常使用権者であるということができる(乙12)。
(2)使用商標、使用商品及び使用時期について
ア 使用者は、2014年10月10日に、有限会社レクサスに対し、品目「LEN」、品番「94802」並びにブランドネーム及び下げ札を「LeMans」とするワイシャツ30着の製造を発注(乙13)し、有限会社レクサスは、同年11月15日に、同じく品目「LEN」、品番「94802」とする商品を納品し(乙14)、使用者において同11月18日に担当者により受入商品の検収が行われた(乙15の1)こと及び同月20日付けで有限会社レクサスから使用者に請求書が送付されていること(乙16)が認められる。
イ また、同日に、使用者の直営店と認められる「VAN Base」に、該納品された商品が移動された(乙15の2)と認められる。
そして、使用者の店舗「VAN Base」の2014年11月の棚卸差異表によると、11月18日に使用者から移動された30着のワイシャツが、27着となっていることからすれば、2014年11月中に3着販売されたことが推認できる。
ウ そして、「VAN Base」の店舗において展示されていたと推認できる商品「ワイシャツ」は、その発注書(乙13)によると、ブランドネーム及び下げ札が付されて納品されたものであって、撮影日時は要証期間外ではあるが、ワイシャツの下げ札及び織りネームに「LE MANS」の商標が付された商品が撮影されていること(乙17)からすれば、発注書(乙13)により製造したブランドネーム及び下げ札には、「LE MANS」の商標(使用商標)が表示されていたものと推認でき、この下げ札等に表示された商標は、本件商標と同一綴りの欧文字からなるものであるから、同一(社会通念上の同一を含む。)の商標と認められる。
エ 以上によれば、本件商標の通常使用権者は、本件審判の請求の登録前3年以内である平成26年11月18日から11月26日までの間に、日本
国内において、商品「ワイシャツ」に本件商標を付していたものである。そして、上記行為は、商標法第2条第3項第1号にある「商品又は商品の包装に標章を付する行為」に該当するものである。
(3)「駆け込み使用」に該当するかについて
商標法第50条第3項は、「第一項の審判の請求前三月からその審判の請求の登録の日までの間に、日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品又は指定役務についての登録商標の使用をした場合であつて、その登録商標の使用がその審判の請求がされることを知つた後であることを請求人が証明したときは、その登録商標の使用は第一項に規定する登録商標の使用に該当しないものとする。」として、いわゆる「駆け込み使用」を規制している。
請求人は、本件審判に関し、被請求人が不使用取消審判を受けることを察知して、その指定商品への本件商標の使用を行ったと主張し、その根拠として、1)過去に複数回の不使用取消審判の存在、2)2014年10月9日及び22日に請求人が本件商標の使用状況の調査を行ったこと、及び、3)請求人が本件商標の使用状況の調査を行った直後の2014年10月24日付けで被請求人がほぼ同じ商標、同じ商品を指定商品とする商標登録出願を行ったこと、を上げている。
しかし、過去に不使用取消審判を複数請求されている事実、請求人により使用調査が行われたことや被請求人がこの時期に商標登録出願を行ったことのみをもって、本件審判の請求が行われること、又は、行われたことを被請求人が具体的に知ったとまでは認められないし、他に、商標権者が本件審判を請求されることを知った後に、駆け込み的に使用商標を使用したと認めるに足りる具体的事実を明らかにする証拠の提出はない。
したがって、本件商標の使用は、商標法第50条第3項に規定する、いわゆる駆け込み使用とは認めることはできない。
(4)請求人の主張について
請求人は、調査会社を通じて本件商標の使用について調査を行ったが、過去3年間使用の事実が発見できなかったから、被請求人の提出する乙号証は信憑性に欠ける旨の主張をしている。
しかし、本件商標の通常使用権者の使用については、被請求人提出の乙各号証により、上記2の事実が認められ、上記3のとおり判断できるものであり、請求人が主張する乙号証が信憑性に欠けるとの主張を裏付ける具体的な証拠の提出はされていないものであるから、請求人が行った調査の報告書をもって、これを採用することはできない。
4 まとめ
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれかがその請求に係る指定商品の範ちゅうに含まれる「ワイシャツ類」について本件商標の使用をしていることを証明したものというべきである。
したがって、本件商標の登録は、その請求に係る指定商品について、商標法第50条の規定により、取り消すことはできない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2015-11-13 
結審通知日 2015-11-18 
審決日 2015-12-03 
出願番号 商願昭42-4237 
審決分類 T 1 32・ 1- Y (125)
最終処分 不成立 
特許庁審判長 酒井 福造
特許庁審判官 今田 三男
堀内 仁子
登録日 1972-07-13 
登録番号 商標登録第971820号(T971820) 
商標の称呼 ルマン、レマンス、マン 
代理人 萼 経夫 
代理人 藤沢 昭太郎 
代理人 藤沢 則昭 
代理人 山田 清治 
代理人 特許業務法人はなぶさ特許商標事務所 
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