• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2014890034 審決 商標

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部無効 商4条1項8号 他人の肖像、氏名、著名な芸名など 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W03
審判 全部無効 観念類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W03
審判 全部無効 称呼類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W03
審判 全部無効 外観類似 無効とする(請求全部成立)取り消す(申し立て全部成立) W03
管理番号 1321329 
審判番号 無効2016-890003 
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 無効の審決 
審判請求日 2016-01-12 
確定日 2016-10-21 
事件の表示 上記当事者間の登録第5631188号商標の商標登録無効審判事件について,次のとおり審決する。 
結論 登録第5631188号の登録を無効とする。 審判費用は被請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5631188号商標(以下「本件商標」という。」は,「紅花王」の漢字と「ルージュ ファ ワン」の片仮名とを上下2段に表してなり,平成24年11月21日に登録出願,同25年9月5日に登録査定,第3類「石鹸,香料,薫料,化粧品,歯磨き」を指定商品として,同年11月22日に設定登録されたものである。

第2 引用商標
請求人が引用する登録商標は,次の6件(以下,これらをまとめていうときは「引用商標」という場合がある。)であり,いずれも現に有効に存続しているものである。
1 登録第297479号商標(以下「引用商標1」という。)は,「花王」の漢字を縦書きに表してなり,昭和12年3月25日に登録出願,第3類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として,同年12月27日に設定登録されたものである。そして,5回にわたり,商標権の存続期間の更新登録がされ,指定商品については,平成20年1月23日に第3類「香料類(薫料・香精・天然じゃ香・芳香油を除く。),人造じゃ香,吸香,におい袋,香水,香水類,フケ取り香水,香油,髪膏」とする指定商品の書換登録がされたものである。
2 登録第304482号の1商標(以下「引用商標2」という。)は,「花王」の漢字を縦書きに表してなり,昭和12年12月27日に登録出願,第2類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として,同13年7月19日に設定登録された登録第304482号商標について,同17年8月12日に商標権の分割移転の登録がされたものである。その後,5回にわたり,商標権の存続期間の更新登録がされ,指定商品については,平成21年1月7日に第3類「化粧用染料,化粧用顔料,靴クリーム,靴墨」とする指定商品の書換登録がされたものである。
3 登録第1522795号商標(以下「引用商標3」という。)は,「KAO」の欧文字と「花王」の漢字とを上下2段に表してなり,昭和53年3月14日に登録出願,第4類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として,同57年6月29日に設定登録されたものである。そして,2回にわたり,商標権の存続期間の更新登録がされ,指定商品については,平成14年2月20日に第3類「せっけん類,香料類,化粧品,歯磨き」とする指定商品の書換登録がされたものであり,さらに,同24年6月19日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
4 登録第2117992号商標(以下「引用商標4」という。)は,別掲のとおりの構成からなり,昭和60年10月3日に登録出願,第4類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品を指定商品として,平成1年2月21日に設定登録されたものである。そして,2回にわたり,商標権の存続期間の更新登録がされ,指定商品については,同21年4月22日に第3類「せっけん類,香料類,化粧品,歯磨き」とする指定商品の書換登録がされたものである。
5 登録第3027308号商標(以下「引用商標5」という。)は,「花王」の漢字を表してなり,平成4年9月28日に登録出願,第3類「せっけん類,植物性天然香料,動物性天然香料,合成香料,調合香料,精油からなる食品香料,薫料,化粧品,つけづめ,つけまつ毛,かつら装着用接着剤,つけまつ毛用接着剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,歯磨き,家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用漂白剤,つや出し剤,研磨紙,研磨布,研磨用砂,人造軽石,つや出し紙,つや出し布,靴クリ?ム,靴墨,塗料用剥離剤」を指定商品として,同7年2月28日に設定登録されたものであり,2回にわたり,商標権の存続期間の更新登録がされたものである。
6 登録第4313952号商標(以下「引用商標6」という。)は,別掲のとおりの構成からなり,平成10年1月30日に登録出願,第3類「せっけん類,植物性天然香料,動物性天然香料,合成香料,調合香料,精油からなる食品香料,薫料,化粧品,つけづめ,つけまつ毛,かつら装着用接着剤,つけまつ毛用接着剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,歯磨き,家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用柔軟剤,洗濯用漂白剤,つや出し剤,研磨紙,研磨布,研磨用砂,人造軽石,つや出し紙,つや出し布,靴クリ?ム,靴墨,塗料用剥離剤」並びに第1類,第2類,第4類ないし第42類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として,同11年9月10日に設定登録されたものであり,同21年8月4日に商標権の存続期間の更新登録がされたものである。

第3 請求人の主張
請求人は,結論同旨の審決を求め,審判請求書において,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第203号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 請求人の名称の略称「花王」の著名性について
(1)請求人について
請求人は,1940(昭和15)年5月に設立された石けん,洗剤,シャンプーなど家庭用品製品,化粧品,産業用化学製品の製造・販売と,これらに付帯するサービス業務を行う株式会社であり,2014(平成26)年12月31日の時点で,従業員数6,172名(連結対象会社合計33,054人),資本金854億円,日本国内に事業場4箇所,工場9箇所,研究所4箇所,国内グループ会社11社を有し,アジア,アメリカ,ヨーロッパ等海外にも海外子会社・関連会社を多数有する大企業である(甲15及び甲16)。
なお,請求人の前身である洋小間物商「長瀬商店」が創業されたのは,1887(明治20)年6月であり,その後,1890(明治23)年以降現在に至るまでの120年以上もの間,「花王」の文字を使用し続けた歴史がある。
(2)引用商標の独創性及び請求人の継続使用
請求人が自己の営業表示及び自己の業務にかかる商品・役務に使用する商標「花王」は,請求人が1890(明治23)年に発売を開始した石鹸に付した名称である(甲16ないし甲18)。
請求人の商標「花王」は,請求人の創業者の独創によるものであり,それ以降,「花王」という言葉が請求人以外の何者かを意味する名称として一般的に使用されることはなく,「花王」商標の独創性の高さは現在でも維持されている。
また,請求人は,花王石鹸の発売後,大量生産,大量販売を指向し,経営の近代化に着手し,1925(大正14)年に,「花王石鹸株式会社長瀬商会」を設立し,その後,1985(昭和60)年に,関連会社等の合併を経て,当時の請求人の名称であった「花王石鹸株式会社」から,請求人の現在の名称である「花王株式会社」に名称を変更して,商号登録を行い,以後現在に至るまでの間,かかる商号で営業を継続して行っている。
(3)請求人の引用商標の周知・著名性
ア 請求人は,創業時より広告宣伝を非常に重視してきた企業であり(甲19),莫大な広告宣伝費をかけて,全国紙やテレビ・ラジオ等による積極的な広告宣伝活動を行い(甲20ないし甲51),「花王」ブランドの認知度やイメージのアップに長期間努めてきている。
イ 請求人の広告宣伝費は,1967(昭和42)年度においては約56億8800万円(売上高比率12.5%)で日本の有名60社中第8位(甲51),1975(昭和50)年においては約139億1000万円で日本の企業の中で2位(甲35),1985(昭和60)年度においては約420億円(売上高比率8.57%)(甲36)で日本の企業の中でトップとなっている。
近年である2000年度から2014年度においても,莫大な広告宣伝費を投じており,2014年の広告宣伝費は第1位である(甲36の2,甲37ないし甲49の2)。
ウ テレビを利用した広告宣伝活動の一例として,2014年度上期に請求人が関東地区で提供しているテレビ番組の数は194番組(甲49の3)である。2014年の関東地区における請求人のテレビCMの出稿量は75万5850秒で第1位(甲49の4)であり,この結果,2014年に請求人が関東地区において提供した番組のGRP(延視聴率)は,一月あたり約2万3800GRP(甲49の5)となっており,これは99%以上の世帯が月あたり平均238回請求人のテレビコマーシャルに接することを計算上は意味している。
また,関西地区,名古屋地区においても,請求人のテレビCMの出稿量は2001年度以降,常に第1位又は第2位であり,特に2009年以降は,東日本大震災の影響を受けた2011年を除き,関東地区,関西地区ともに第1位を続けている(甲49の6の1ないし甲49の6の11)。
(4)請求人の名称及びその略称である「花王」の著名性
このような請求人の活動の結果,日経新聞等様々なメディアが行うブランドランキング等で,請求人は,常に上位の位置を占めており,請求人の企業価値が高いことは,多くの雑誌記事でも紹介されている(甲52ないし甲102)。
請求人は,様々な活動の結果,数多くの賞を受賞し(甲103ないし甲111),新製品の開発,発売も絶えず行っている。請求人の新製品発売や,株価の情報は,常に新聞・雑誌の記事に取り上げられ,請求人の動向が常に注目を浴びている(甲112ないし甲125)。
(5)引用商標の著名性
請求人は,1887(明治20)年に創業されて以来,日本各地はもちろんのこと,世界各地に支店や支社,関連会社等を数多く有し,全世界的に活動を行ってきており,多角化経営を行なう代表的な企業として知られている(甲15)。
具体的には,請求人は,「家庭品」,「化粧品」,「食品」などの消費者用の製品のみならず,業務用に様々な「化学品」をも製造・販売し,様々な分野に進出してきた。
しかしながら,請求人が最も長く,かつ精力的に扱う商品は,「せっけん,化粧品」であり,現在でも,これら商品が日本国内外を問わず,「花王の製品」として,最も著名であることはいうまでもない。
請求人は絶えず,最良の「化粧品,せっけん」を追求すべく,新製品を開発し,発売している(甲126ないし甲129)。また,請求人は,急速に拡大する歯磨き市場に向けて1967年に「歯磨き」の製造・販売を開始し,現在では国内最上位のシェアを占めるに至っている(甲129の2)。
このことからしても,「せっけん類,化粧品,歯磨き」等を指定商品に含む引用商標は,請求人の商品を表示する商標として,著名であるといえる。
(6)請求人の登録商標
請求人は,創設以来,経営の多角化に伴い,広い区分にわたって,数多くの「花王」及び「KAO」についての商標登録を行った(甲130及び甲131)。
また,引用商標2ないし4は「日本国周知・著名商標検索」(審決注:特許情報プラットホーム)に掲載され,さらに,請求人の所有する,商標「花王」の商標登録は,「Famous Trademarks in Japan(日本有名商標集)第3版」においても掲載されており,その著名性については明白である(甲132)。
(7)請求人による過去の異議決定・審決例
引用商標の著名性については,異議決定・審決例において,「花王」及びその英文表記である「KAO」が請求人に係る商標として著名であることについて認められている(甲133ないし甲137)。
(8)請求人による「花王」ブランド名の保護努力
「花王」及び「KAO」商標が請求人の商標として著名であることは上述のとおりであるが,これら商標のブランドカを維持するために請求人は,他人による類似商標の使用に対して,訴訟提起や警告書の送付等の努力を継続的に尽くしている(甲138ないし甲141)。
2 本件商標と引用商標の類否及び商品の類否について
(1)本件商標について
ア 本件商標は,「紅花王」の漢字及び「ルージュ ファ ワン」の片仮名が上下二段に書される構成からなる。
このような本件商標の構成においては,「ルージュ ファ ワン」部分は上段の漢字部分の読み方を記載した,いわば付記的な部分にすぎず,「紅花王」部分がより出所表示機能を発揮する部分というべきである。
当該「紅花王」部分においては,上述したとおり「花王」部分の独創性に加え,その周知性・著名性が高い事実にかんがみれば,該「花王」部分が,取引者,需要者に対し,商品又は役務の出所識別標識として強く支配的な印象を与える要部となることは明白である。
また,「紅」の語は,紅色の彩色を施す化粧用の色素を表す語として一般に使用されていることなどから,「化粧品」について自他商品識別力が弱い語であり,さらに,「口紅(化粧品)」を意味する「ルージュ」の片仮名が併記されていることからも,指定商品中「化粧品」に含まれる「口紅」の一般名称としても用いられるものである。
よって,本件商標の構成中「紅」部分は,その指定商品である「石鹸,香料,薫料,化粧品,歯磨き」との関係において,自他商品識別力が無いか,又は極めて低い語といえる(甲152ないし甲156)。
したがって,本件商標においては,「花王」部分が他の商標との類否判断の対象となる要部というべきである(甲143ないし甲151)から,要部たる「花王」部分と引用商標との類否判断を行うべきである。
イ 本件商標は,「紅花王」の漢字及び「ルージュ ファ ワン」の片仮名を二段に書した構成よりなるが,その漢字部分においては,その構成に応じて「クレナイカオウ」又は「ベニカオウ」の称呼,及び「紅の花王」の意味が生ずる。
そして,「紅花王」においては「花王」部分が出所表示標識として強い印象を生ずる部分であり,「紅」部分が出所識別標識としての称呼,観念が生じない部分であることから,「花王」部分より「カオウ」の称呼をも生じ,請求人の略称として著名な,かつ,請求人の業務に係る化粧品・せっけん類等の商標として著名な「花王」の観念をも生ずる。
また,本件商標の片仮名部分からは,「ルージュファワン」の称呼を生ずるが,「ルージュ」は,漢字部分の「紅」のフランス語「Rouge」の片仮名表記であるのに対し,「ファワン」は漢字部分「花王」を中国語の発音を片仮名で表記したものである(甲157)。
したがって,本件商標の「ルージュファワン」部分からは,「紅の花王」の意味が生じ,さらに「ルージュ」の部分は上述のとおり化粧品に関しては自他商品識別力を発揮しない語であり,「ファワン」部分が「花王」部分の中国語の発音を表記したものであることに照らせば,「ファワン」との片仮名部分からは,請求人の略称として著名な,かつ,請求人の業務に係る化粧品・せっけん類等の商標として著名な「花王」の観念を生ずる(甲157の2)。
(2)引用商標について
引用商標1,2及び5は,「花王」の文字から構成され,引用商標3は,「KAO」の欧文字及び「花王」の文字を上下二段に書した構成よりなる。
引用商標4及び6は,「花王」の文字及び請求人のハウスマークとして広く知られる「月のマーク」から構成される。
引用商標は,いずれも「花王」の文字を含むものであり,その構成から「カオウ」の称呼を生じ,かつ,請求人である「花王株式会社」,あるいは周知・著名なブランドである「花王」の観念が生じる。
(3)本件商標と引用商標の称呼・観念・外観の類否
本件商標においては,「花王」部分が要部となり,そこから「カオウ」の称呼を生じる。
さらに,「花王」及びその中国語の発音を表記した「ファワン」部分からは,請求人の略称として,かつ,請求人が「化粧品,せっけん等」に使用して周知・著名となった「花王」との観念が生じる。
したがって,本件商標と引用商標とは,称呼・観念において類似するものである。
また,本件商標に係る指定商品中の「石鹸,香料,薫料,化粧品,歯磨き」は,引用商標の指定商品中の「せっけん類,香料類,薫料,化粧品,歯磨き」と同一又は類似である。
3 商標法第4条第1項第10号該当性について
本件商標は,請求人が使用する著名な商標「花王」と類似する商標であり,かつ,その指定商品は,かかる著名な商標「花王」が使用される商品である「化粧品,せっけん類」と類似するものであるから,商標法第4条第1項第10号に該当する。
4 商標法第4条第1項第11号該当性について
上述のとおり本件商標は,本件商標の登録出願日前の商標登録出願にかかる請求人の先行登録商標である引用商標と,類似する商標である。
さらに,上記のとおり,本件商標は,引用商標に係る指定商品と同一又は類似の商品について使用する商標である。
よって,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。
5 商標法第4条第1項第15号該当性について
上述のとおり,引用商標は,請求人の略称として,かつ,請求人が「化粧品,せっけん類」に使用する商標として長年継続して使用され,遅くとも,本件商標の登録出願時である2012(平成24)年11月21日までには,我が国の取引者・需要者の間で,周知・著名となっている。
また,「花王」商標は,請求人の創業者の独創によるものであって,請求人以外の第三者により商標として採択される可能性の低い創造標章であることは明白であり,「混同のおそれ」の判断においては,かかる引用商標の独創性の高さは,十分に考慮されるべきである。
よって,本件商標は,請求人の著名な略称及び請求人が化粧品等に使用して周知・著名な引用商標と類似することは明らかである。
本件商標の指定商品と請求人の業務に係る商品等との間の性質,用途又は目的は同一であり,商品の取引者及び需要者の共通性の程度は極めて高いことは明らかである。
なお,過去の異議決定・審決例からも,「KAO」及び「花王」の文字を含む本件商標が使用された場合,引用商標との間で商品の出所混同のおそれが高いことは明らかである(甲133ないし甲136)。
以上のとおり,本件商標と引用商標との外観及び称呼上の類似性,請求人の引用商標が周知・著名性を獲得していること,「花王」標章の独創性の高さ,請求人が最も高く著名性を獲得している化粧品分野の商品を,本件商標が指定商品としている点などの取引の実情などに照らし,当該商標の指定商品の取引者及び需要者において普通に払われる注意力を基準として総合的に判断した場合,本件商標に接した取引者・需要者は,恰も請求人若しくは請求人と何等かの関係がある者の業務に係る商品であるかの如く,商品の出所について混同を生ずるおそれがあることは明白である。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第15号に該当する。
6 商標法第4条第1項第8号該当性について
請求人の略称「花王」の著名性は,上述したとおりであり,本件商標は,その登録出願時である2012(平成24)年11月21日及び登録査定時である2013(平成25)年9月5日において日本国内の需要者の間に広く知られていた請求人の略称「花王」と同一の外観であり,同一の称呼を生じる文字「花王」を含み,請求人の承諾を得ることなく出願,登録されたものであるから,被請求人が本件商標を採択,使用することは,請求人の略称が有する著名性及びその顧客吸引力に便乗するものであって請求人の人格権を侵害する。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第8号に該当する。

第4 被請求人の主張
被請求人は,本件の審判請求は成り立たない,審判費用は請求人の負担とする,との審決を求め,その理由を審判事件答弁書及び「請求人提出に係る甲各号証に関する暫定的な見解」について記載した平成28年5月31日付けの審尋に対する回答書において要旨次のように述べ,証拠方法として,乙第1号証ないし乙第4号証を提出した。
1 答弁の理由
(1)商標登録証(登録第5631188号),平成25年11月22日商標登録確定(注:「商標登録確定」は,「設定登録」の意と思料する。),商標原簿に登録済み。
(2)「紅花王(ルージュ ファ ワン)」と「花王」とは全く異なる意味,語源で商標権の侵害に当たらない。
(3)平成25年11月22日付商標権確定原簿に登録された件を日本化粧品工業連合会の商標公報,「第三類」抜粋速報に発表,記載,平成25年11月末に花王(株)も確認済みである。
2 審尋に対する回答書
請求人「花王」は「著名な略称」といって,商標登録権を「タテ」に主張しているが,以下の理由から,被請求人は請求人とは全く異なるので,認められない。
著名な略称」観念も中国固有名詞「花王」の語源の事実観念と不一致,被請求人は致底許認出来ない。
(1)元来「花王」の語源ルーツは中国3000年史の古書,文献,物語(漢文詩集)に「花王」が数多く紹介,表記記載されている。
宋,明時代から現代まで,日常用語漢文「花王」花言葉「牡丹花」中国の国花(牡丹の花)を意味,総称して,現在日常用語として使用されている。
「花王」とは中国宮廷史で固有名詞「花王」を「牡丹花」と表記して,中国国家の国花「牡丹花」を「花王」という。中国文化の象徴を意味し,中国の主権,「他人の著名な名称」「花王」を請求人は,盗用引用,無断で商標に使用した,特許商標登録は国際及び立法趣旨に反し,中国の国権,主権を侵害している。
(2)「花王」とは中国語事典に現在日常用語録集「漢文」表記,記載(中国語事典の「花王」抜粋,乙4)。
中文名 花王
外文名 KAO
併 音 hua wang (ファ ウン)
意 味 中国の国花(国家の象徴)
牡丹の花(花言葉)
原生地 中国
古来中国の宮廷史で皇帝,皇后が愛した牡丹の花を「花王」といった。現在,中国では数多くの人々が「花王」牡丹の花(国花)を総称して愛され,親しまれている,常用語(中国語漢文),花言葉,固有名詞「花王」と表記。
(3)請求人が中国固有名詞「花王」,中国国家の国花(牡丹花),中国文化の象徴,主権「他人の著名な名称」「花王」を盗用,引用して,無断で社名に法人登記,商標登録して,無断で使用している。
中国3000年史上,中国人社会,文化の象徴「花王」,主権を無視して商標登録した。商標登録違反に該当,立法趣旨にも反する。
これ以上請求人は権利を主張すれば,中国の国権,主権の根幹を脅かし,侵害に当たり,被請求人及び利害関係人は,請求人自身の「花王」商標権を逆に無効取消し,使用禁止処分を国際法及び国内立法趣旨違反で無効取消しを請求する。
(4)日本の歴史上,漢字は全て外来語。中国語漢文が語源で言葉の意味も中国賢人学者のルーツを悟らず,無知蒙昧。請求人が中国固有「花王」無断盗用引用して,商標権を「タテ」に主張して使用している。無恥事実を忘れている。
今回の事件は中国文化の象徴,主権,中国人社会に挑戦し,国際社会問題に発展する。
(5)引用商標について,請求人は中国史の固有名詞「花王」牡丹花(中国の国花),中国の文化象徴,主権を根幹から揺るがし,「他人の著名な名称」,「花王」を無断盗用引用して,自社に引用商標登録して,商標権を「タテ」に被請求人及び利害関係人に「紅花王」無効,侵害だと言えない立場で請求人自身に無断盗用引用商標登録したことに問題があり,国際法,立法趣旨に違反している。
世界中の数多くの中国人,中国系及びアジア人が今日,日常用語「花王」(牡丹花)を使用中の言葉「花王」を請求人自身の独自の商標権を「タテ」に主張しているが,「他人の著名な名称」「花王」を盗用,引用して,商標登録した事実を被請求人及び利害関係人は致底許認出来ない。
盗用引用商標登録の倫理性に反し,商標登録権の根幹を揺るがし,違反している事態。国際法及び立法趣旨にも違反該当している。
(6)被請求人の「紅花王」商標登録は中国語「ホン ファ ワン」と全文表記しない理由は,中国語漢文言葉を日本で同文表記の特許商標登録に使用することを避けるため「紅花王」の紅,ホンをルージュにして,「ルージュ ファ ワン」「紅花王」(乙1)として商標登録した言葉の意味は「紅牡丹の花」を総称して使用することで,中国の主権侵害に当たらないように配慮して商標登録した。なお,「紅花王」と請求人の「花王」とは趣旨の根幹,言葉の語源も異なり,商標権の侵害に当たらないので,商標登録が受理された。
(7)日本国内では被請求人と請求人は「法の下の平等」で同等人(両者特許商標登録済者)の立場であり,「何人もみだりに法を乱用してはならない」立法趣旨を順守すべき立場。双方は共存共栄の立場であり,請求人独自の商標権を「タテ」に主張,大きな中国人社会及び国際社会問題化し,請求人の「花王」の商標権盗用引用事態,無効取消,使用禁止に当たり,国際法,立法趣旨観点から見直しすべき。
被請求人は中国企業と連携企業体で,業務提携している会社で,グループ企業に中国人社長を起用している。これ以上問題を大きくすれば,中国系日本企業(利害関係人)から請求人自身に直接中国固有「他人の著名な名称」「花王」を盗用,引用,中国の国権,主権,象徴侵害で商標権の無効,取消,使用禁止処分の申請。

第5 当審の判断
1 「花王」の文字(語)について
(1)請求人提出の甲各号証及び同人の主張によれば,次の事実が認められる。
ア 請求人は,1887年(明治20年)に創業,1940年(昭和15年)に設立,1985年(昭和60年)に「花王株式会社」に改称された法人であり,化粧品,健康機能飲料,洗剤,各種おむつなどの各種商品の製造,販売を行っている。
なお,同社の2009年(平成21年)度ないし2013年(平成25年)度の連結売上高は,決算月を12月に変更した2012年度を除き,1.1兆円超ないし1.3兆円超であった(甲15)。
イ 請求人は,2003年(平成15年)ないし2013年(平成25年)に日本経済新聞社などが行った「日経『企業イメージ調査』」において,「花王」と表記され,「企業認知度<一般個人>」では28位ないし72位に毎年ランクインしている(甲62ないし甲72)。
ウ 2012年(平成24年)1月23日ないし2013年(平成25年)12月29日付けの雑誌,新聞には,請求人に係る記事が多数掲載され,いずれも請求人は「花王」と表記されている(甲102ないし甲129)。
(2)上記(1)の事実からすれば,「花王」の文字(語)は,本件商標の登録出願の日前から,請求人の著名な略称として,我が国の取引者,需要者の間に認識されているものであって,その状況は,本件商標の登録査定日はもとより現在においても継続しているものと認められる。
2 商標法第4条第1項第11号該当性について
(1)本件商標について
本件商標は,上段に「紅花王」の漢字を大きく表し,その下段に「ルージュ ファ ワン」の片仮名を表してなり,該構成文字に相応し「ベニカオウ」及び「ルージュファワン」の称呼を生じるものである。
そして,本件商標の構成中の「紅」の文字は,広辞苑第6版の「べに【紅】」の項によれば,「ルージュ」の意味をも有するものであり,該文字部分の下に表された「ルージュ」の片仮名とも相まって,本件商標の指定商品中の「化粧品」に含まれる「紅(口紅,ルージュ)」を表すものと容易に理解させるものである。
そうすると,本件商標は,その構成中の「花王」及び「ファ ワン」の文字部分が独立して着目されるということができる。
また,「花王」の文字は,前記1のとおり,本件商標の登録査定時において,請求人の著名な略称として,我が国の取引者,需要者の間に認識されているものであること,本件商標を構成する「紅花王」及び「ルージュ ファ ワン」の各文字が既成の親しまれた語を表したものでなく,特定の意味を認識させるものといえないことをあわせ考慮すれば,本件商標は,その構成中「花王」の文字部分が,取引者,需要者に対し,商品の出所識別標識として強く支配的な印象を与えるものであって,該「花王」の文字部分を要部として抽出し,この部分のみを他人の商標と比較して商標の類否を判断することが許されるものということができる。
そうすると,本件商標は,その構成中の「花王」の文字に相応し,「カオウ」の称呼,及び「(請求人の著名な略称としての)花王」の観念を生じるものと認められる。
(2)引用商標について
ア 登録第297479号商標(引用商標1),登録第304482号の1商標(引用商標2)及び登録第3027308号商標(引用商標5)は,「花王」の文字を縦書き又は横書きしてなり,該文字に相応して「カオウ」の称呼を生じるものである。
そして,該「花王」の文字は,前記1のとおり,本件商標の登録査定時において請求人の著名な略称として,我が国の取引者,需要者の間に認識されているものであるから,「(請求人の著名な略称としての)花王」の観念を生じるものである。
イ 登録第1522795号商標(引用商標3)は,「KAO」と「花王」の文字を2段に書してなり,登録第2117992号商標(引用商標4)及び登録第4313952号商標(引用商標6)は,別掲のとおり,「花王」の文字と月の図形からなり,いずれも構成中の「KAO」,「花王」の文字に相応し「カオウ」の称呼を生じるものである。
そして,引用商標3,4及び6は,前記1のとおり,「花王」の文字が本件商標の登録査定時において請求人の著名な略称として,我が国の取引者,需要者の間に認識されているものであるから,いずれも「(請求人の著名な略称としての)花王」の観念を生じるものである。
(3)本件商標と引用商標の類否について
そこで,本件商標と引用商標とを比較すると,両商標は,構成全体の外観において相違するとしても,本件商標の要部として看者の注意を惹く「花王」の文字部分において,引用商標と構成文字を共通にするものであり,「カオウ」の称呼及び「(請求人の著名な略称としての)花王」の観念を共通にするものであるから,本件商標と引用商標とは,互いに相紛れるおそれのある類似の商標と認められる。
(4)本件商標の指定商品と引用商標の指定商品の類否について
ア 本件商標の指定商品は,第3類「石鹸,香料,薫料,化粧品,歯磨き」である。
イ 引用商標1の指定商品は,第3類「香料類(薫料・香精・天然じゃ香・芳香油を除く。),人造じゃ香,吸香,におい袋,香水,香水類,フケ取り香水,香油,髪膏」,引用商標2の指定商品は,第3類「化粧用染料,化粧用顔料,靴クリーム,靴墨」,引用商標3及び4の指定商品は,第3類「せっけん類,香料類,化粧品,歯磨き」,引用商標5の指定商品は,第3類「せっけん類,植物性天然香料,動物性天然香料,合成香料,調合香料,精油からなる食品香料,薫料,化粧品,つけづめ,つけまつ毛,かつら装着用接着剤,つけまつ毛用接着剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,歯磨き,家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用漂白剤,つや出し剤,研磨紙,研磨布,研磨用砂,人造軽石,つや出し紙,つや出し布,靴クリ?ム,靴墨,塗料用剥離剤」である。
そして,引用商標6の指定商品は,第3類「せっけん類,植物性天然香料,動物性天然香料,合成香料,調合香料,精油からなる食品香料,薫料,化粧品,つけづめ,つけまつ毛,かつら装着用接着剤,つけまつ毛用接着剤,洗濯用でん粉のり,洗濯用ふのり,歯磨き,家庭用帯電防止剤,家庭用脱脂剤,さび除去剤,染み抜きベンジン,洗濯用柔軟剤,洗濯用漂白剤,つや出し剤,研磨紙,研磨布,研磨用砂,人造軽石,つや出し紙,つや出し布,靴クリーム,靴墨,塗料用剥離剤」を含む,第1類ないし第42類に属する商標登録原簿記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務とするものである。
ウ 本件商標の指定商品と引用商標の指定商品の類否について検討するに,本件商標の指定商品中,第3類「香料,薫料,化粧品」は,引用商標1の指定商品と,本件商標の指定商品中,第3類「化粧品」は,引用商標2の指定商品中,第3類「化粧用染料,化粧用顔料」と,本件商標の指定商品は,引用商標3及び4の指定商品,引用商標5の指定商品中,第3類「せっけん類,植物性天然香料,動物性天然香料,合成香料,調合香料,精油からなる食品香料,薫料,化粧品,歯磨き」,並びに,引用商標6の指定商品中,第3類「せっけん類,植物性天然香料,動物性天然香料,合成香料,調合香料,精油からなる食品香料,薫料,化粧品,歯磨き」及び第30類「食品香料(精油のものを除く。)」と,それぞれ同一又は類似の商品と認められる。
(5)小括
上記のとおり,本件商標は,引用商標と類似する商標であり,本件商標の指定商品と引用商標の指定商品は,同一又は類似の商品であるから,本件商標は,商標法第4条第1項第11号に該当する。
3 商標法第4条第1項第8号該当性について
本件商標は,上段に「紅花王」の漢字を大きく,下段に「ルージュ ファ ワン」の片仮名を小さく表してなるものである。
商標法第4条第1項第8号は,他人の「著名な略称を含む商標」は商標登録を受けることができないとしているところ,前記1のとおり,「花王」の文字は,本件商標の登録出願の日前及び登録査定日において,請求人の著名な略称として,我が国の取引者,需要者の間に認識されていることからすれば,本件商標は,「紅花王」の文字が上段に大きく表されていることと相まって,これに接する者に,該文字中の上記著名な略称と同一の文字である「花王」の文字部分に着目し,請求人を連想,想起させるものといえる。
そうすると,本件商標は,他人(請求人)の著名な略称を含む商標といえるものであり,かつ,商標登録を受けることについて,その他人の承諾を得ているものということができない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第8号に該当する。
4 被請求人の主張について
被請求人は,上記第4の「2 審尋に対する回答書」において,「『花王』は,中国の国花『牡丹の花』を意味する」及び「被請求人の『紅花王』商標登録は中国語『ホン ファ ワン』と全文表記しない理由は中国語漢文言葉を日本で同文表記の特許商標登録に使用することを避けるため『紅花王』の紅,ホンをルージュにして,『ルージュ ファ ワン』『紅花王』として商標登録した言葉の意味は『紅牡丹の花』を総称して使用することで,中国の主権侵害に当たらないように配慮して商標登録した」旨を主張している。
しかしながら,本件商標に接する者が,その商標権者の商標採択の意図のとおりに,その商標の意義を理解,認識するとは限らないものであって,本件商標が,どのように理解,認識されるかは,これに接する我が国の取引者,需要者の認識に基づいて,その商品の取引等の実情を考慮し,判断されるべきである。
そして,本件商標は,その構成中,上段の「紅」の文字は,前記2(1)に記載のとおり,その指定商品中の「化粧品」に含まれる「紅(口紅,ルージュ)」を表すものと容易に理解させるものであるから,本件商標がその指定商品である「化粧品」に使用された場合には,「花王」及び「ファ ワン」の部分が,商品の出所識別標識としての機能を果たすものというべきである。
また,「花王」の文字は,本件商標の登録査定時において請求人の著名な略称として,我が国の取引者,需要者の間に広く認識されているものである。
そうすると,本件商標については,独立して着目され,出所の識別標識として強く支配的な印象を与える「花王」の文字部分をもって,他人の商標との類否等を検討することが許されるものである。
他方,我が国において,「紅花王」の文字が,これに接する者に「紅牡丹の花」を総称していることを直ちに理解,認識させるものとすべき特段の理由を見いだすことができず,また,被請求人も,本件商標が,「紅花王」及び「ルージュ ファ ワン」の一体のものとしてのみ,その取引者,需要者に認識されるという事情を立証していない。
本件審判の請求については,「花王」の文字が請求人の商標及び略称として著名であること,そして,本件商標が商標法第4条第1項第10号,同項第11号,同項第15号及び同項第8号に該当する旨の請求人の主張に対し,被請求人は,審判事件答弁書及び審尋に対する回答書においても,何ら具体的な反論をしていないものであるから,本件審判の請求については,請求人及び被請求人の主張,立証に照らし,前記のとおりに判断するものである。
5 まとめ
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第11号及び同項第8号に違反してされたものであるから,請求人のその余の主張について判断するまでもなく,同法第46条第1項により,無効とすべきである。
よって,結論のとおり審決する。
別掲 別掲 (引用商標4及び6)





審理終結日 2016-08-10 
結審通知日 2016-08-16 
審決日 2016-09-06 
出願番号 商願2012-98286(T2012-98286) 
審決分類 T 1 11・ 263- Z (W03)
T 1 11・ 261- Z (W03)
T 1 11・ 262- Z (W03)
T 1 11・ 23- Z (W03)
最終処分 成立 
特許庁審判長 青木 博文
特許庁審判官 田中 亨子
板谷 玲子
登録日 2013-11-22 
登録番号 商標登録第5631188号(T5631188) 
商標の称呼 ベニバナオー、ベニハナオー、ルージュファワン、ファワン、カオー、ベニカオー、クレナイカオー、ホンホアワン 
代理人 田中 克郎 
復代理人 山口 現 
代理人 中村 勝彦 
代理人 佐藤 俊司 
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社   サービスに関しての問い合わせ