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審決分類 審判 一部取消 商標の同一性 無効としない X44
審判 一部取消 商50条不使用による取り消し 無効としない X44
管理番号 1321304 
審判番号 取消2015-300904 
総通号数 204 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2016-12-22 
種別 商標取消の審決 
審判請求日 2015-12-11 
確定日 2016-10-12 
事件の表示 上記当事者間の登録第5491818号商標の登録取消審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。
理由 第1 本件商標
本件登録第5491818号商標(以下「本件商標」という。)は、「クリニプロ」の片仮名を標準文字で表してなり、平成23年12月7日に登録出願、第10類、第42類及び「医療情報の提供」を含む第44類に属する商標登録原簿に記載のとおりの商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同24年5月11日に設定登録されたものである。
その後、商標権の一部取消審判により、指定商品及び指定役務中、第10類「全指定商品」、第42類「医薬品の開発」及び第44類「医業,健康診断,医薬研究用試薬の調剤,栄養の指導,医療用機械器具の貸与,ジェネリック医薬品に関する医療情報の提供」については、その登録を取り消すべき旨の審決がされ、同28年1月15日にその確定審決の登録がされたものである。
そして、本件審判の請求の登録は、同28年1月6日である。

第2 請求人の主張
請求人は、商標法第50条第1項の規定により、本件商標の指定役務中、第44類「医療情報の提供」(以下「取消請求役務」という。)について登録を取り消す、審判費用は、被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由として、本件商標は、その指定役務中、上記役務について、継続して3年以上日本国内において、商標権者、専用使用権者又は通常使用権者のいずれも使用した事実が存しないから、商標法第50条第1項の規定により、その登録は取り消されるべきものである旨主張した。
なお、請求人は、被請求人の答弁に対し、何ら意見を述べていない。

第3 被請求人の答弁
被請求人は、結論同旨の審決を求めると答弁し、答弁書において、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第3号証を提出した。
1 乙第1号証について
乙第1号証は、被請求人であるクリニプロ株式会社の履歴事項全部証明書であり、クリニプロ株式会社設立の目的の一つとして、薬局の経営・調剤及び医療機関関連業務の代行を行うことが記載されている。
また、同号証は、被請求人が本件商標を取消請求役務に使用していたという事実を直接的に立証するものではないが、これより、少なくとも被請求人が取消請求役務に関する業務を行うことを目的として登記された会社であることがわかる。
2 乙第2号証について
(1)乙第2号証の説明
乙第2号証は、インターネット・アーカイブ(Internet Archive)という会社が、そのウェブサイト(https://archive.org/index.php)上に記録及び保存している被請求人のウェブページを印刷したものである。インターネット・アーカイブは、インターネット上のウェブページを自動的に電子保存するサービスを行っており、乙第2号証で示したウェブページの右上には、インターネット・アーカイブによって電子保存された年月日が示されている。
同号証は、本審判事件の審判請求書の提出日前の2015年7月11日時点におけるウェブページと、2015年6月20日時点におけるウェブページとをまとめたものである。なお、インターネット・アーカイブのウェブサイトに保存されているウェブページの印刷物に、不使用取消審判において登録商標を使用した日付を立証する能力があることは、例えば取消2009-300510号審判事件においても認められている。
(2)被請求人が本件商標を取消請求役務に使用していたこと
乙第2号証に示された被請求人のウェブページには、被請求人が提供する役務が記載されているとともに、本件商標「クリニプロ」と社会通念上同一である「クリニプロ株式会社」という商標が付されている。
また、同号証には、被請求人が、医療機関の代わりに、治験情報・医療情報の伝達や、服薬指導補助を行うこと、並びに、治験実施中の医療機関の補助業務として、被験者へ治験薬やプロトコルの概要説明補助、インフォームドコンセント補助、診察前面談、同意説明補助、診察の同席及び服薬指導補助を行うことが記載されている。
そして、同号証に記載された治験情報・医療情報の伝達や、服薬指導補助、被験者へ治験薬やプロトコルの概要説明補助、インフォームドコンセント補助などの被請求人が行う業務は、薬剤やその服用方法に関する情報を患者・被検者に提供する行為や、患者・被検者に対して治療方法に関する情報を提供する行為を含むものであるため、取消請求役務の「医療情報の提供」に相当するといえる。
また、被請求人が同号証に示されたウェブページに「クリニプロ株式会社」という標章を付する行為は、役務に関する広告を内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する使用行為に該当する(商標法第2条第3項第8号)。
よって、同号証は、本件審判の請求日前の3年以内に日本国内において、商標権者たる被請求人が、本件商標「クリニプロ」と社会通念上同一の商標である「クリニプロ株式会社」を、取消請求役務の「医療情報の提供」について使用(商標法第2条第3項第8号)していた事実を示すものである。
3 乙第3号証について
(1)乙第3号証の説明
乙第3号証は、2015年4月1日付けにて、治験施設支援機関である被請求人(クリニプロ株式会社)と治験実施医療機関のクリニックとの間で締結された治験管理基本契約書の写しである。この契約書では、クリニックが治験の実施に係る業務の管理、代行及び支援を被請求人に委託することが定められており、被請求人に委託された業務の細目は別紙に詳細に記載されている。
(2)被請求人が本件商標を取消請求役務に使用していたこと
乙第3号証に示された治験管理基本契約書の表紙には、本件商標「クリニプロ」と社会通念上同一の商標である「クリニプロ株式会社」が付されており、最終ページにも、契約書の記名として、本件商標「クリニプロ」と社会通念上同一の商標である「クリニプロ株式会社」が付されている。
また、同号証の別紙の委託業務細目には、被請求人が行う治験責任医師の補助する支援業務として、「被験者に対する治験内容の説明及び文書による同意の取得」が記載されている。これは、いわゆるインフォームドコンセントを補助する支援業務であり、治験の被験者に対して、例えば、治験で使用する薬剤や、その服用方法、あるいはその薬剤が持つ副作用やリスクに関する情報を伝えて、その被検者から治験に同意する旨を文書で取得する業務である。そして、この業務は、薬剤やその服薬方法に関する情報を治験の被検者に提供する行為を含むものであるため、取消請求役務の「医療情報の提供」に相当するといえる。
また、被請求人が同号証に示された治験管理基本契約書に「クリニプロ株式会社」という標章を付する行為は、役務の提供に当たりその提供を受ける物の利用に供する物に標章を付する使用行為に該当する(商標法第2条第3項第3号)。
よって、同号証は、本件審判の請求日前の3年以内に日本国内において、商標権者たる被請求人が、本件商標「クリニプロ」と社会通念上同一の商標である「クリニプロ株式会社」を、取消請求役務の「医療情報の提供」について使用(商標法第2条第3項第3号)していた事実を示すものである。
4 結語
以上のとおり、商標権者たる被請求人は、本件審判の請求日前の3年以内に日本国内において、本件商標「クリニプロ」と社会通念上同一の商標である「クリニプロ株式会社」を、取消請求役務について使用していたといえる。
よって、本件商標は、商標法第50条第1項の規定により、取消請求役務についての登録が取り消されるものではない。

第4 当審の判断
1 被請求人が提出した証拠について
(1)乙第1号証について
乙第1号証は、被請求人の履歴事項全部証明書であるところ、「目的」の欄には、設立の目的に関し、「7.医療機関関連業務の代行」、「8.次の物品に関する研究開発、臨床・非臨床試験、調査および試験の企画、立案、支援、情報の収集、処理および情報提供ならびにコンサルティング業務」の記載があり、さらに、物品として「(1)医薬品」の記載がある。
(2)乙第2号証について
乙第2号証は、インターネットアーカイブ(waybackmachine)のウェブサイトに保存されている被請求人のウェブページの写しである。
ア 2015年7月11日の被請求人のウェブページの1枚目には、そのページの最上段に、「クリニプロ株式会社」「『たゆまない信頼』それがクリニプロの理念です。」の記載、及び、3枚目には、会社概要の「事業内容」に「臨床試験支援事業」の記載がある。
イ 2015年6月20日の被請求人のウェブページの5枚目には、「治験の普及活動」の見出しの下、「『より良いお薬を、1日でも早く患者さんのもとへ』を目標に、一人でも多くの人々へ治験の意義を普及するために、以下のような治験の啓発活動を提携医療機関の協力のもと実施しています。下記の活動で毎月100件以上のお問い合わせがあり、私たちは誠意をもってお応えしています。」、「治験説明会/ご興味を持っていただいた方を対象として、随時、治験についての説明会を行っています。1都3県内では出向対応もしています。」、「提携医療機関の医師による医療セミナーの実施/提携医療機関の協力のもと毎回テーマを変えて医療セミナーを実施し、健康や疾患により関心を持っていただくくとともに、新薬開発の必要性を啓発しています。」、「医療機関受診者への普及/治験についての簡単な説明が記載されているパンフレットなどを使い、提携医療機関へ受診される方々に対し説明しています。」及び「提携医療機関への紹介/治験参加をご希望される方々を適切な提携医療機関へ紹介しています。」の記載がある。
また、7枚目には、「臨床試験を行うメリットとは」の見出しの下、「◆新薬開発を通じて最先端の医療情報が入手できます。」の記載がある。
そして、9枚目には、「支援業務」の見出しの下、「概要」の項には、「治験情報・医療情報の伝達、被験者選定支援から診察補助、外注検体処理、服薬指導補助、スケジュール管理支援、依頼者対応まで責任を持って支援いたします。」の記載がある。
(3)乙3号証について
乙第3号証は、被請求人と治験実施医療機関名が不詳のクリニック(名称の一部が黒塗りされている。)との2015年4月1日付け「治験管理基本契約書」の写しである。
第10条(直接閲覧)には、「甲及び乙(審決注:被請求人)は、治験依頼者によるモニタリング及び監査並びに治験審査委員会及び国内外の規制当局による調査を受け入れ、協力するものとする。これらの場合には、モニター、監査担当者、治験審査員会又は国内外の規制当局の求めに応じ、全ての治験関連記録を直接閲覧に供するものとする。」の記載がある。
第15条(契約期間)には、「本契約の契約機関は、西暦2015年4月1日から西暦2016年3月31日までの1年間とする。」の記載がある。
ウ 別紙の「治験管理基本契約書 第2条第2項に基づく委託業務の細目」には、「治験実施前」の項に「2.治験依頼問い合わせ等への対応(治験事務局業務補助)」として、「1)治験実施医療機関及び責任医師選定のための資料の提示/2)治験受託の可能性検討及び資料の提示(協議)」の記載がある。
エ 上記ウの「治験終了時」の項に、「1.治験責任医師(治験分担医師)の以下の業務の補助」として、「1)治験終了報告書の作成」、「2)治験依頼者からのフィードバックへの対応」、「4)治験終了時の医療機関の長への報告」及び「5)治験終了後の必須文書の管理・保管」の記載がある。
2 以上、上記1によれば、以下の事実が認められる。
(1)乙2号証について
上記1のとおり、乙第2号証のウェブページの記載内容と、乙第3号証の「治験管理基本契約書」に記載の内容とは、密接に関連し、同一の業務内容であるといえ、乙第1号証の被請求人の履歴事項全部証明書に記載された「7.医療機関関連業務の代行」及び「8.次の物品に関する研究開発、臨床・非臨床試験、調査および試験の企画、立案、支援、情報の収集、処理および情報提供ならびにコンサルティング業務」を内容とする設立目的にも合致するものである。
そうすると、該ウェブページは、2015年7月11日及び6月20日に被請求人が提供(公開)していたものと無理なく理解することができ、かつ、そのウェブページの公開時期と契約書の契約期間は同じであることからすれば、該ウェブページがインターネットアーカイブ(waybackmachine)が保存しているものであるとしても、該ウェブページが、上記日時にウェブ上に存在していたことは、優に推認できるものである。
(2)使用役務について
乙第2号証の被請求人のウェブページには、「治験の普及活動・・・一人でも多くの人々へ治験の意義を普及するために、以下のような治験の啓発活動を提携医療機関の協力のもと実施しています・・・治験説明会/ご興味を持っていただいた方を対象として、随時、治験についての説明会を行っています・・・医療セミナーを実施し、健康や疾患により関心を持っていただくくとともに、新薬開発の必要性を啓発しています・・・治験についての簡単な説明が記載されているパンフレットなどを使い、提携医療機関へ受診される方々に対し説明しています・・・治験参加をご希望される方々を適切な提携医療機関へ紹介しています。」、「◆新薬開発を通じて最先端の医療情報が入手できます。」及び「治験情報・医療情報の伝達」と記載されており、これらにおいて提供されるサービスは、被請求人が提供する役務としての「治験医療の普及、啓発及び医療機関の紹介にともなう医療情報の提供」であって、これは、本件審判の取消請求に係る「医療情報の提供」の範ちゅうに属するものである。
(3)使用商標について
乙第2号証の被請求人のウェブページにおける商標の使用についてみるに、該ウェブページ情報の最上段に「クリニプロ株式会社」の文字が表示されており、これは、該ウェブページにおける情報の提供元と認識されるとともに、自他役務の識別標識としての機能を果たしているものといえるから、商標としても認識されるものであるということができる。
そして、この商標は、「クリニプロ」の文字からなる本件商標と相違するが、「株式会社」の文字は、法人の種類を示すものであって、識別標識としての機能を果たし得ないものであり、同機能を果たすのは「クリニプロ」の文字部分にあるとみるのが相当であるから、自他役務を識別する商標としての「クリニプロ」の文字からなる本件商標の本質的機能は損なわれていないというべきである。
してみれば、該ウェブページに表示された「クリニプロ株式会社」の文字からなる商標は、取引社会の通念に照らして本件商標と同一性を有するものと判断するのが相当である。
また、該ウェブページに記載の「『たゆまない信頼』それがクリニプロの理念です。」の文字中、その文脈から判断して、「クリニプロ」の文字は、該ウェブページ情報の提供元と認められる「クリニプロ株式会社(被請求人)」の略称であると極自然に理解することができ、商標としての機能を果たし得るものといえる。
したがって、該ウェブページにおける「クリニプロ株式会社」及び「クリニプロ」の文字の使用は、本件商標と社会通念上同一の商標の使用であると認めることができる。
(4)使用時期について
前記1(2)のとおり、被請求人のウェブページが公開されている時期は、2015年6月20日及び同年7月11日であり、いずれも、本件審判の請求の登録(平成28年(2016年)1月6日)前3年以内である。
(5)小括
以上のとおり、被請求人(商標権者)は、本件審判の請求の登録前3年以内に、取消請求役務に係る役務を提供しており、該役務を含む被請求人の業務内容を掲載した自身のウェブページには、本件商標と社会通念上同一と認められる商標を使用していたと認められる。
そうすると、被請求人(商標権者)による上記行為は、商標法第2条第3項第8号にいう「商品若しくは役務に関する広告・・・これらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為」に該当するものである。
3 むすび
以上のとおり、被請求人は、本件審判の請求の登録前3年以内に日本国内において、その請求に係る指定役務について、本件商標と社会通念上同一と認められる商標の使用をしていたことを証明したものと認められる。
したがって、本件商標の登録は、その請求に係る指定役務について、商標法第50条の規定により、取り消すことができない。
よって、結論のとおり審決する。
審理終結日 2016-08-09 
結審通知日 2016-08-15 
審決日 2016-09-02 
出願番号 商願2011-88115(T2011-88115) 
審決分類 T 1 32・ 11- Y (X44)
T 1 32・ 1- Y (X44)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清棲 保美 
特許庁審判長 山田 正樹
特許庁審判官 大井手 正雄
中束 としえ
登録日 2012-05-11 
登録番号 商標登録第5491818号(T5491818) 
商標の称呼 クリニプロ 
代理人 関 大祐 
代理人 廣瀬 隆行 

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