• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W09
審判 全部申立て  登録を維持 W09
管理番号 1320425 
異議申立番号 異議2016-900074 
総通号数 203 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2016-11-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-03-24 
確定日 2016-10-14 
異議申立件数
事件の表示 登録第5814078号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第5814078号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5814078商標(以下「本件商標」という。)は,「iSmart」の欧文字を標準文字で表してなり,平成27年4月28日に登録出願,第9類「充電器,携帯型充電器」を指定商品として,同年11月26日に登録査定,同年12月18日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は,本件商標について,商標法第4条第1項第7号及び同項第19号に該当するものであるから,その登録は取り消されるべきであるとして,その理由を要旨次のように述べ,証拠方法として甲第1号証ないし甲第28号証を提出した。
1 商標法第4条第1項第7号について
商標権者と申立人は,競合関係にあり,ヨーロッパにおいて抗争中の関係にある中,本件商標は,申立人の業務を妨害するために登録されたものである。
申立人は,2014年からバッテリー等に「iSmart」の商標を使用し(以下「申立人使用商標」という。甲2),申立人子会社「HooToo.com」(甲3)が米国で2014年7月14日に登録出願し,2015年2月24日に商標登録している(甲4)。
日本においても,2015年9月29日に 別掲のとおりの構成からなる商標(以下「申立人使用ロゴ」という。)を登録出願(甲5),同年10月13日に「iSmart」の標準文字による商標を登録出願している(甲6)。
この間に商標権者は,申立人の商標が我が国で登録されていない隙をねらって,申立人の業務を妨害するという不正の目的で,先取り的に本件商標を登録したものといえる。
以下,商標権者が業務妨害目的で登録したことの根拠について述べる。
(1)商標権者と申立人の関係
商標権者のCEOである陽萌氏は,申立人の競合会社「Anker Technology Co.Limited」(以下「Anker社」という。)の創設者である(甲7)。「Anker社」は,申立人と同じく,バッテリー等の商品を取り扱う会社であり,申立人とAnker社の本部は,同じ時期に中国の深セン市に設立され,業務内容や営業手法が酷似し,お互いによく知っている競合会社である(甲9)。
Anker社は,「POWERIQ」というブランドのバッテリーをAmazonで販売しており(甲10),申立人は,「iSmart」のバッテリーをAmazonで,2014年8月頃から販売していた(甲11)。双方共に,Amazonを最大のマーケットとしており,インターネットによる通信販売で商品を提供しているところ,Anker社は,競合会社として申立人を認識していたと考えることは不自然ではなく,その動向だけでなく商標についても常に高い注意力を払っているものと考えられる。
したがって,Anker社は,申立人のバッテリーの商標が「iSmart」であることを本件商標の登録出願前から知っていたといえ,また,Anker社及び商標権者は,陽萌氏がCEOを務めるので当然ながら,申立人のバッテリーの商標が「iSmart」であることを知っていたと考えられる。
よって,商標権者は,申立人の販売しているバッテリーの商標が「iSmart」だと知った後に,申立人の業務を妨害する不正の目的をもって本件商標の登録出願をしたものと考えられる。
(2)商標権者とのトラブル
本件商標の登録出願日前の2014年11月4日,Amazonから申立人に,申立人販売商品が意匠権の侵害に該当するとして商品の販売中止を求めるメールが届いた(甲12)。相手先のメールアドレスを確認すると,@以下が「oceanwing.com」となっており,この「Oceanwing E commerce Co.,Ltd」(以下「Oceanwing社」という。)は,Anker社が運営する会社であって(甲13),Anker社と商標権者のCEOの陽萌氏が運営者の一人として名を連ね(甲14),Anker社の商品を販売するために設立された会社である(甲15)。
この通知に対して,申立人の子会社である「ZBTインターナショナル貿易社」(甲16)は,Oceanwing社の所有する意匠登録について,2015年1月16日にドイツで無効審判を請求し,2015年6月9日に放棄された(甲17)。
本件商標は,このような抗争中に行われたものであって,商標権者は,自己の関連会社の意匠登録に無効審判が請求されたことを知り,その相手方の親会社である申立人の商標を先回り的に登録し,その業務を妨害しようとしていたと考えられる。少なくとも,この経緯から確実にわかることは,本件商標の登録出願日前の2014年11月4日時点において,商標権者は申立人について知っていたという事実である。
商標権者側は,Amazonにおける競合会社の製品を調査して,申立人のバッテリーのデザインに関して警告書を送っている。このようにバッテリーのデザインにまで注視して他社の動向を調査している会社が,その相手方の使用している商標を知らないはずがない。
商標権者側は,申立人の取扱製品やその商標についても熟知しており,競合会社の業務を妨害する目的で,本件商標の登録を行ったものと考えられるから,悪意のある登録出願をしたものと判断できる。
商標権者は,日本だけでなくEUにおいても「iSmart」を剽窃的に登録している。EUにおいては,2015年9月8日に登録され(甲18),その後,商標権者に譲渡されている(甲7,甲19)。現在,申立人は,このEUの登録に対しても,その登録商標の取消しを求めている(甲20)。
(3)商標権者の悪意について
商標権者が本件商標を業務妨害目的で登録したことの根拠は,他にもAnker社の競合会社の商標が,勝手に商標登録されているという事例からもうかがえる。
同じく深セン市に本部をおいていた「EC Technology LLC.」(以下「EC Technology社」という。)も,申立人やAnker社と同じようなビジネス手法で急速に業務を拡大している競合会社であり(甲8,甲22),この会社もまた,自社の名称でもあり,バッテリーのブランド名である「EC Technology」をEU及び日本において,勝手に商標登録されており,これに対してEC Technology社は,EUにおいて商標登録の異議申立てをしている(甲24)。
このEC Technology社もまた,申立人と同じく,登録出願日前にOceanwing社からバッテリーのデザインについての警告書を受けている(甲25)。
そして,警告書を受けてトラブルが生じた後に,EU及び日本において勝手に商標登録され,その後に商標権者に譲渡されているという流れも,本件商標と経緯が同じである。
商標権者は,申立人の商標「iSmart」だけでなく,他の競合会社であるEC Technology社の名称であり,バッテリーの商標である「EC Technology」までも商標登録している。「iSmart」や「EC Technology」は,一般的な言葉ではなく創造的な造語であり,単なる偶然で,競合会社のバッテリーの商標と同一の商標を登録したとは考えられない。明らかに,競合会社の業務を妨害するという不正の目的で商標登録したものと考えられる。
2015年1月3日に公開されたyoutubeの動画によると,Anker社とEC Technology社と申立人の各バッテリーを比較する内容の動画が公開されている(甲26)。このような比較動画からみても,それぞれの会社は,競合関係にあることは明らかである。需要者もまた,競合会社であるとの認識の上で,三社の商品を比較して購入しているにもかかわらず,本件商標のように,競合会社の商標を勝手に取得することは,その商標の使用をする者の業務上の信用を破壊するだけでなく,産業の発達をも阻害し,あわせて需要者の利益を害するものであり,商標法の法目的に反し,社会的相当性を欠くものである。
したがって,本件商標の登録は,「国際商道徳に反するものであって公正な取引秩序を乱すおそれ」があり(東京高裁平成11年12月22日判決(平10(行ケ)185号)),公正な取引秩序の維持を目的とする商標法の趣旨に反するものとして登録を認めるべきではない。
(4)まとめ
Anker社の創立者である陽萌氏がCEOを務める商標権者は,本件商標が日本国内において商標登録されていないことをいいことに,先取り的に商標登録をして,競合会社の業務を妨害しようとする目的で商標登録したものと考えられ,本件商標の登録は,社会の一般道徳観念に反しており,登録出願の経緯に社会的妥当性を欠くものがある。
本件商標のように,不正の目的をもって剽窃的に出願した登録については,「商標登録出願について先願主義を採用し,また,現に使用していることを要件としていない我が国の法制度を前提としても,そのような出願は,健全な法感情に照らし条理上許されないというべきであり,また,商標法の目的にも反し,公正な商標秩序を乱すものというべきである」(知財高裁平成22年8月19日判決(平21(行ケ)10297号))と考えられ,公正な取引秩序を乱すおそれがあり,「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」に該当するものとして到底登録を認めるべきでない。
したがって,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第7号に該当する。
2 商標法第4条第1項第19号について
「iSmart」は,申立人が2014年8月頃から使用しており,日本国内においても,また海外においても広く認識されている。宣伝広告費をおさえて,Amazonのレビューや個人ブロガーの口コミにより宣伝広告する手法により,世界的に広く知られている(甲28)。
また,商標権者は,申立人使用商標について,我が国で登録されていないことを奇貨として,競合会社である申立人の業務を妨害する等の不正の目的で登録出願したものと考えられる。
したがって,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第19号に該当する。

第3 当審の判断
1 申立人使用商標の周知性について
申立人の提出に係る証拠によれば,「Amazon.com」(以下「Amazon」という。)において,「Portable Charger-RAVPower」の記載とともに,バッテリーの側面に「iSmart」の文字が表示された写真が掲載されており,該商品の写真の下に申立人使用ロゴの表示があり,該商品についての2014年8月31日のレビューがある(甲2)。また,2016年5月27日打ち出しのAmazonには,「RAVPower」に関して,7,691件のレビューがあり,該商品の拡大写真が掲載され,その拡大写真には,商品の表面に申立人使用ロゴ及び「2.4A」の取り付け口に「iSmart」の文字が表示されている(甲28)。
さらに,「Amazon.co.jp」には,RAVPowerモバイルバッテリーについて,日本での販売開始は,2014年10月23日と記載があり,該商品の表面及び同写真の下には,申立人使用ロゴが表示され,「iSmart技術」及び「iSmart機能搭載」と記載,該商品の説明文には,「iSmart技術の搭載により,接続された機器を自動的に検知し,各機器に最大2.4Aで最適な電流を送ります。」の記載がある(甲11)。
以上からすると,申立人は,本件商標の登録出願日前である2014年8月31日には申立人使用商標をバッテリーに使用し,日本においては,2014年10月23日に販売開始したと認められる。
しかしながら,Amazonのインターネット販売は,英語版で世界に向けたサイトであって,そのレビュー件数のみをもって,我が国及び海外において広く知られているとはいい難く,申立人使用商標を使用した申立人の業務にかかる商品の売上高,販売数量,販売シェア等も明らかにされていない。
その他,本件商標の登録出願日及び登録査定日において,申立人使用商標が周知であったことを認めるに足りる証拠の提出はない。
してみると,提出された証拠をもってしては,申立人使用商標が申立人の業務に係る商品「バッテリー」を表示するものとして,本件商標の登録出願日及び登録査定日の時点において,我が国及び海外の需要者の間に広く知られていたと認めることができない。
2 商標法第4条第1項第7号該当性について
(1)商標法第4条第1項第7号は,「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標」は商標登録をすることができないとしているところ,同号は,商標自体の性質に着目したものとなっていること,商標法の目的に反すると考えられる商標の登録については,同法第4条第1項各号に個別に不登録事由が定められていること,商標法においては,商標選択の自由を前提として最先の出願人に登録を認める先願主義の原則が採用されていることを考慮するならば,商標自体に公序良俗違反のない商標が商標法第4条第1項第7号に該当するのは,その登録出願の経緯に著しく社会的相当性を欠くものがあり,登録を認めることが商標法の予定する秩序に反するものとして到底容認し得ないような場合に限られるものというべきである。そして,同号の「公の秩序又は善良の風俗を害するおそれ」を私的領域にまで拡大解釈することによって商標登録出願を排除することは,商標登録の適格性に関する予測可能性及び法的安定性を著しく損なうことになるので,特段の事情のある例外的な場合を除くほか,許されないというべきである。そして,特段の事情があるか否かの判断に当たっても,出願人と,本来商標登録を受けるべきと主張する者との関係を検討して,例えば,本来商標登録を受けるべきであると主張する者が,自らすみやかに出願することが可能であったにもかかわらず,出願を怠っていたような場合や,契約等によって他者からの登録出願について適切な措置を採ることができたにもかかわらず,適切な措置を怠っていたような場合は,出願人と本来商標登録を受けるべきと主張する者との間の商標権の帰属等をめぐる問題は,あくまでも,当事者同士の私的な問題として解決すべきであるから,そのような場合にまで,「公の秩序や善良な風俗を害する」特段の事情がある例外的な場合と解するのは妥当でない(平成14年(行ケ)第616号,平成19年(行ケ)第10391号)。
(2)申立人は,「商標権者と申立人は,競合関係にあり,ヨーロッパにおいて抗争中の関係にある中,本件商標は,申立人の業務を妨害するという不正の目的で先取り的に登録されたものである。」旨主張している。
しかしながら,上記1のとおり,申立人使用商標は,我が国及び海外において広く認識されているということはできないものであり,申立人の主張も,商標権者のCEOが申立人の競合会社のAnker社の創設者であって,申立人とAnker社は同じ時期に深セン市に設立され,申立人と同じバッテリーを取り扱う会社で営業手法が酷似し,お互いを知っている競合会社であることをもって,申立人の業務を妨害するという不正の目的で先取り的に登録したものと主張するものであって,申立人の提出した証拠からは,具体的に商標権者が申立人の事業を妨害し不正の目的があることを裏付ける証拠は見いだすことができない。
また,申立人は,「商標権者は,自己の関連会社の意匠登録に無効審判が請求されたことを知り,その相手方(ZBTインターナショナル貿易社)の親会社である申立人の商標を先回り的に登録し,その業務を妨害しようとしていた。」旨主張しているが,商標権者の関連会社と申立人の子会社との間にそれぞれ意匠権に関する抗争があったとしても,これをもって,商標権者が申立人の業務を妨害しその商標を先回り的に登録したとまではいうことができない。
しかも,申立人は,申立人使用商標の使用開始にあたって,その商標を自ら登録出願をする機会は十分にあったというべきであって,自ら登録出願しなかった責めを商標権者に求めるべき事情を見いだすこともできない。
(3)申立人は,商標権者の悪意について「申立人以外にもAnker社の競合会社の商標が,勝手に商標登録されているという事例からもうかがえる。」旨主張しているが,競合会社についてその内容や商標について知っていて,その商標と類似のものが登録されているとしても,該主張を裏付ける証拠は見いだせないから,それをもって,悪意や不正の目的があったとまではいうことができない。
(4)まとめ
以上からすると,本件商標について,商標法の先願登録主義を上回るような,その登録出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠くものがあるということはできないし,そのような場合には,あくまでも,当事者間の私的な問題として解決すべきであるから,公の秩序又は善良の風俗を害するというような事情があるということはできない。
してみると,商標権者が,申立人使用商標と類似する本件商標の登録出願をし,登録を受ける行為が「公の秩序や善良な風俗を害する」という公益に反する事情に該当するものということはできない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第7号に該当しない。
3 商標法第4条第1項第19号該当性について
本件商標は,上記1のとおり,申立人の業務に係る商品であることを表示するものとして我が国及び海外における需要者の間に広く認識されているものと認めることはできないものである。
また,申立人の提出に係る甲各号証をもってしても,商標権者が申立人使用商標に化体した業務上の信用を利用して不正の利益を得る目的,他人に損害を加える目的その他の不正の目的をもって本件商標を使用するものであるとは認められない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当しない。
4 むすび
以上のとおり,本件商標の登録は,商標法第4条第1項第7号及び同項第19号のいずれにも違反してされたものではないから,同法第43条の3第4項の規定に基づき,維持すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
別掲 別掲
「申立人使用ロゴ」(色彩については,甲2を参照。)


異議決定日 2016-10-05 
出願番号 商願2015-41432(T2015-41432) 
審決分類 T 1 651・ 222- Y (W09)
T 1 651・ 22- Y (W09)
最終処分 維持 
前審関与審査官 新井 裕子 
特許庁審判長 酒井 福造
特許庁審判官 平澤 芳行
中束 としえ
登録日 2015-12-18 
登録番号 商標登録第5814078号(T5814078) 
権利者 インフォーシステム テクノロジー エルエルシー
商標の称呼 アイスマート、スマート 
代理人 水村 香穂里 
代理人 富樫 竜一 
  • この表をプリントする

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社   サービスに関しての問い合わせ