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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W43
管理番号 1320423 
異議申立番号 異議2016-900060 
総通号数 203 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2016-11-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-03-11 
確定日 2016-10-07 
異議申立件数
事件の表示 登録第5810768号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第5810768号商標の商標登録を維持する。
理由 第1 本件商標
本件登録第5810768号商標(以下「本件商標」という。)は,「ITSU MODERN JAPANESE RESTAURANT」の欧文字を横書きしてなり,平成27年6月17日に登録出願,第43類「日本料理を主とする飲食物の提供」を指定役務として,同年11月6日に登録査定,同年12月4日に設定登録されたものである。

第2 登録異議の申立ての理由
登録異議申立人(以下「申立人」という。)は,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により,その登録は取り消されるべきであると申し立て,その理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第21号証(枝番号を含む。)を提出した。
1 本件商標について
本件商標は,「ITSU MODERN JAPANESE RESTAURANT」の欧文字からなる商標で,第43類の「日本料理を主とする飲食物の提供」を指定役務とするものである(甲1)。
商標権者は,アラブ首長国連邦のドバイに住所を有する個人(オマール アル ファラシ氏)である。
2 引用商標について
申立人の名称に由来する商標「ITSU」(甲2)は,日本料理を含む飲食物の提供等に使用されている(甲3,甲4)。商標「ITSU」は,「itsu」ないし「Itsu」(以下,これらをまとめて「引用商標」という。)とも表示される。
引用商標は,ロンドンを中心とするイギリス国内で需要者に広く知られており,申立人は今現在も海外展開を視野に引用商標に係る事業のエリアを拡大中である(甲2)。
3 引用商標の周知性
(1)申立人について
申立人は,日本料理をベースとする飲食物の提供等を行うイギリスの会社であり,1997年ジュリアン・メトカーフ氏によって設立された(甲3の2)。メトカーフ氏は,「itsu」第1号店を1997年チェルシー(ロンドンの地区)に開店(同)し,2016年4月現在,ロンドンを中心とするイギリス国内の店舗数は67店(甲3の3)で,さらに拡大中である。
(2)クールブランド
引用商標はイギリスの「クールブランド」に選ばれている(甲6)。「クールブランド(Coo1Brands)」とは,「2001年以来,イギリスの最もクールなブランドの年間指標をつくるために専門家や消費者の意見を調査してきた」団体が選ぶブランドである(甲6の5)。
(3)新聞・雑誌等
2013年4月から2016年1月にかけて新聞・雑誌等に掲載された記事(甲7ないし甲16)を見ると,引用商標「ITSU」に係る申立人事業が年々成長し拡大路線をたどっており,頻繁にマスメディアに採り上げられていることがわかる。
(4)世論調査
イギリスの世論調査会社ユーガブ(yougov)による2015年の調査(回答者数は全国で2061名,ロンドンで1028名)(甲17)によれば,引用商標「ITSU」に係るファストフードが,価格面のみならず品質面でも高い評価を受けており,もてなしにも使われていることがわかる。つまり,「ITSU」は手軽でおいしくヘルシー,高品質で他人にも勧められる,というイメージを需要者は持っている。
(5)このように,引用商標「ITSU」は,1997年から日本料理を含む飲食物の提供等に使用され続けてきた結果,クールブランドに選ばれるなどそのブランド力は確固たるものになっており(甲6),新聞・雑誌等の記事(甲7ないし甲16)によれば,引用商標に係る申立人事業の業績は好調で,出店エリアは絶えず拡大し続け,ますます多くの需要者の支持を得ていることは明らかである。そして,人気の理由はファストフードでありながら品質が高い点にあることは世論調査の結果にも表れている(甲17)。
以上によれば,引用商標「ITSU」が,本件商標の出願時(平成27年6月17日)及び登録査定時(平成27年11月6日)において申立人の業務に係る役務を表示するものとしてイギリス国内で需要者の間に広く認識されていたことは明らかである。
4 商標の類否について
本件商標と引用商標とは,その構成中に,独立して自他役務の識別標識として機能を果たす「ITSU」の文字を有するものであるから,両商標は,外観上互いに近似し,「イツ」の称呼を同一にするものである。また,「ITSU」は造語と認識されるから観念上比較することはできない。
これらのことを総合勘案すれば,両商標は,互いに紛れるおそれのある類似の商標である。
5 不正の目的について
(1)本件商標権者(以下「商標権者」という。)は,アラブ主張国連邦(以下「UAE」ともいう。),ドバイのドバイ・マリーナ地区に住所を有するところ,同地区には「ITSU/MODERN JAPANESE RESTAURANT」なる名称の日本食レストランが存在し,「ITSU」を要部とする商標が使用されている(甲18ないし甲20)(甲18は,当該日本食レストランのウェブサイトである。甲19は,同レストランのフェイスブックで,「Itsu,Modern Japanese Restaurant」の表示とともに鳥居や寿司など日本を強調する写真が掲載されている。甲20は,中東最大級のオンライン・フードデリバリー・ポータルサイトとも称されるTalabat.comのサイトで,「Itsu Modern Japanese Restaurant Dubai」の表示がある。)。
(2)すなわち,当該日本食レストランのホームページには,大きく目立つ態様で描かれた「ITSU」の装飾文字とその下に小さく描かれた「MODERN JAPANESE RESTAURANT」の文字とそれらの右部に縦書きで描かれた「何時」の文字からなる商標が表示されている(甲18の1)。かかる構成において,出所表示機能を果たすのは明らかに「ITSU」の文字部分であり,欧文字部分に着目すれば本件商標「ITSU MODERN JAPANESE RESTAURANT」と全く同じ綴りである。
(3)当該日本食レストランがドバイ・マリーナ地区にあることは連絡先ページ(Our locations及びContact us)(甲18の4)から明らかであり,同レストランが日本食を提供していることは商標中に「JAPANESE RESTAURANT」の文字を含むことに加え,紹介ページ(About us)の記載(serving Japanese food)(甲18の2)や寿司の写真(甲18の1,2,3,5)等から明らかである。
(4)ここで注目すべきは,当該日本食レストランは,自国(UAE)で「ITSU」を要部とする商標(ITSU MODERN RESTAURANT)の登録を企てたが失敗に終わっているという事実である。当該商標に係るUAE商標出願(出願番号204808)は,引用商標「ITSU」の名声に便乗したものであることが明白であったため,申立人は,2014年に当該商標出願に対し異議を申し立てた。もし当該日本食レストランに不正の目的がなければ自己の商標を守るべく当然に答弁したはずであるが,同レストランは何らの答弁もせず,申立人による異議申立ては認められた(甲21)。
(5)上記のとおり,ドバイ・マリーナ地区には本件商標と同じ綴りの「ITSU/MODERN JAPANESE RESTAURANT」なる名称の日本食レストランが存在するのであり(甲18ないし甲20),同地区に住所を有する商標権者が,我が国で使用する日本食レストランの名称として,偶然に「ITSU」の文字を採択することなどあり得ない。UAEで商標登録に失敗した前記日本食レストランが商標権者(個人)名義で,我が国で先取り的に「ITSU」商標を出願・登録したと見るほかない。
(6)すなわち,申立人と同業者といい得る商標権者は,引用商標「ITSU」の存在を熟知していたのであり,引用商標の名声に便乗する不正の目的をもって自国(アラブ主張国連邦)で商標登録を試みたもののかなわず,引用商標が我が国で登録されていないことを奇貨として申立人に無断で剽窃的に引用商標に類似する本件商標を出願したのである。本件商標は,引用商標の名声に便乗する不正の目的をもって,もしくは申立人の日本市場への参入を阻止し又は申立人との交渉を優位に進める等,不正な利益を得る目的,他に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用するものである。
6 むすび
以上のとおり,引用商標は,本件商標の登録出願時(平成27年6月17日)及び登録査定時(平成27年11月6日)において申立人の業務に係る役務を表示するものとして,イギリス国内の需要者の間に広く認識されていたものであり,本件商標は,引用商標と類似の商標であって,かつ,引用商標の名声に便乗する不正の目的をもって使用をするものである。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものである。

第3 当審の判断
1 商標法第4条第1項第19号該当性について
申立人の提出に係る証拠及びその主張によれば,以下の事実を認めることができる。
(1)引用商標のイギリスにおける周知性について
ア 申立人は,「日本料理を主とする飲食物の提供」を行うイギリスの会社であり,1997年に設立され,申立人の店舗である「itsu」第1号店は,同年チェルシー(ロンドンの地区)に開店(甲3の2),2016年4月現在,ロンドンを中心とするイギリス国内の店舗数は67店であること(甲3の3)。
イ 引用商標は,イギリスの最もクールなブランドの年間指標をつくるために専門家や消費者の意見を調査してきた団体が選ぶ「クールブランド」に選ばれていること(甲6)。
ウ 2013年4月から2016年1月にかけて新聞・雑誌等に掲載された記事において引用商標を使用した申立人の事業である,寿司チェーン店などが紹介されていること(甲7ないし甲16)。
エ イギリスの世論調査会社ユーガブ(yougov)による2015年の調査によれば,引用商標を使用したファストフードが,品質,価格面において一定の評価を得ていること(甲17)。
以上によれば,引用商標は,本件商標の出願時(平成27年6月17日)及び登録査定時(平成27年11月6日)において,申立人の提供する役務である「日本料理を主とする飲食物の提供」を表示するものとして,ロンドンを中心とするイギリス国内の需要者の間において,ある程度の周知性を獲得していたということができるものである。
(2)本件商標と引用商標の類似性について
ア 本件商標は,前記第1のとおり,「ITSU MODERN JAPANESE RESTAURANT」の欧文字を横書きしてなるところ,その構成中の「MODERN JAPANESE RESTAURANT」の文字は,「現代的な日本のレストラン」ほどの意味合いを容易に認識させる英語であるから,その指定役務との関係においては,自他役務の識別機能を果たすとはいえないものである。
また,「ITSU」の文字は,辞書等に載録されていない語であることから,特定の意味を有しない一種の造語といえるものである。
そうすると,本件商標は,その構成文字全体に相応して「イツモダンジャパニーズレストラン」の称呼が生じるほか,「ITSU」の文字部分より「イツ」の称呼をも生じ,いずれも特定の観念を生じないものである。
イ 引用商標は,「ITSU,(itsu),(Itsu)」の欧文字よりなるものであるから,「イツ」の称呼が生じ,特定の観念を生じないものである。
してみれば,本件商標と引用商標とは,観念においては比較することができないとしても,外観においては,その構成文字の綴りを同じくするものであり,また,称呼においても「イツ」の称呼を同じくするものであるから,両商標は,類似の商標と認められる。
(3)不正の目的について
ア 商標法第4条第1項第19号には,「他人の業務に係る商品又は役務を表示するものとして日本国内又は外国における需要者の間に広く認識されている商標と同一又は類似の商標であつて,不正の目的(不正の利益を得る目的,他人に損害を加える目的その他の不正の目的をいう。以下同じ。)をもつて使用をするもの(前各号に掲げるものを除く。)」との規定がされているところ,ここでいう「不正の目的」とは,図利目的・加害目的をはじめとして取引上の信義則に反するような目的のことをいい,本号が適用される例は,具体的には,外国において周知な他人の商標と同一又は類似の商標について,我が国において登録されていないことを奇貨として,高額で買い取らせたり,外国の権利者の国内参入を阻止したり,国内代理店契約を強制したりする等の目的で,先取り的に出願した場合,当該周知商標の出所表示機能を希釈化させたり,その名声を毀損させる目的をもって出願した場合,あるいは,当該周知商標に関して信義則に反して出願した場合などをいうものと解するするのが相当である。
イ この点,申立人は,商標権者はアラブ主張国連邦(UAE)ドバイのマリーナ地区に住所を有するところ,同地区には「ITSU/MODERN JAPANESE RESTAURANT」なる名称の日本食レストランが存在し,「ITSU」を要部とする商標が使用されており(甲18ないし甲20),同地区に住所を有する商標権者が,我が国で使用する日本食レストランの名称として,偶然に「ITSU」の文字を採択することなどあり得ない。UAEで商標登録に失敗した前記日本食レストランが商標権者(個人)名義で,我が国で先取り的に「ITSU」商標を出願・登録したと見るほかないと主張している。
しかして,甲第18号証(枝番号を含む。)ないし甲第20号証によれば,ドバイのマリーナ地区には「ITSU MODERN JAPANESE RESTAURANT」との名称の日本食レストランが存在するといえるところ,これらの甲各号証からは,同日本食レストランの経営者の氏名や名称は把握することはできない。
そうすると,上記ドバイの日本食レストランが商標権者(個人)名義で,我が国で先取り的に「ITSU」商標を出願・登録したと見るほかないとの申立人の主張は,具体的事実に基づかない主張であって,採用することはできない。
ウ また,申立人は,上記ドバイの日本食レストランは,UAEで「ITSU」を要部とする商標の登録出願をしたが,申立人が異議を申し立てたところ,同レストランは何らの答弁もせず,異議申立てが認められたとして,甲第21号証を提出している。
しかしながら,甲第21号証に記載されている,同商標登録出願の出願人は,「ITSU Restaurant」であり,本件商標権者ではない。
したがって,ドバイにおける「ITSU MODERN JAPANESE RESTAURANT」との名称の日本食レストランの経営者と本件商標権者が同一人ないし関係を有する者であることは,提出された証拠からは明らかとはいえないものである。
エ 申立人は,本件商標は,引用商標の名声に便乗する不正の目的をもって,もしくは申立人の日本市場への参入を阻止し又は申立人との交渉を優位に進める等,不正な利益を得る目的,他に損害を加える目的その他の不正の目的をもって使用するものであると主張している。
しかしながら,申立人は,商標権者が本件商標を申立人に買い取るよう要求したり,商標権者が申立人の我が国への出願を妨害したり,商標権者が引用商標のイギリスにおける出所表示機能を希釈化し,その名声を毀損させる目的をもって本件商標を出願したものであること,あるいは,商標権者が引用商標との関係で申立人との間における信義則に反する行為を行ったことなどを示す事実など,その主張を立証する証拠を提出していない。
そうすると,この点に関する申立人の主張も,具体的事実に基づかないものといわざるを得ず,これを採用することはできない。
してみれば,本件商標は,引用商標の名声に便乗するなど不正の目的をもって使用をするものということはできない。
したがって,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に該当しない。
2 むすび
以上のとおり,本件商標は,商標法第4条第1項第19号に違反して登録されたものでないから,同法第43条の3第4項の規定により,その登録を維持すべきものである。
よって,結論のとおり決定する。
異議決定日 2016-09-29 
出願番号 商願2015-57303(T2015-57303) 
審決分類 T 1 651・ 222- Y (W43)
最終処分 維持 
前審関与審査官 綾 郁奈子 
特許庁審判長 酒井 福造
特許庁審判官 平澤 芳行
中束 としえ
登録日 2015-12-04 
登録番号 商標登録第5810768号(T5810768) 
権利者 オマール アル ファラシ
商標の称呼 イツモダンジャパニーズレストラン、イツ、モダンジャパニーズレストラン、モダン、ジャパニーズレストラン 
代理人 安達 友和 
代理人 特許業務法人SSINPAT 
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