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審決分類 審判 全部申立て  登録を維持 W05
審判 全部申立て  登録を維持 W05
審判 全部申立て  登録を維持 W05
管理番号 1320406 
異議申立番号 異議2016-900024 
総通号数 203 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標決定公報 
発行日 2016-11-25 
種別 異議の決定 
異議申立日 2016-02-01 
確定日 2016-09-27 
異議申立件数
事件の表示 登録第5802594号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて,次のとおり決定する。 
結論 登録第5802594号商標の商標登録を維持する。
理由 1 本件商標
本件登録第5802594号商標(以下「本件商標」という。)は,「ねむる前に」の文字を標準文字で表してなり,平成26年6月16日に登録出願,同27年9月3日に登録審決,第5類「ビタミン剤,アミノ酸剤,滋養強壮変質剤,サプリメント,食餌療法用飲料,食餌療法用食品」を指定商品として,同年10月30日に設定登録されたものである。

2 登録異議申立人「江崎グリコ株式会社」(以下「申立人A」という。)の申立て理由
申立人Aは,本件商標について,商標法第3条第1項第3号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により取り消されるべきものであるとして,登録異議の申立ての理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第31号証(以下,申立人Aが提出した証拠については,「A甲第○号証」と記載し,これを略すときは「A甲○」のように記載する。)を提出した。
(1)「ねむる前に」の文字は,その指定商品に使用したときは,「寝る前に摂取すること」の意味であり,商品の使用時期(A甲2)を示すものであるとするのが妥当である。商品の使用時期を示すにすぎない以上,一般に使用されているかどうかを論じるまでもなく,独占適応性はないものである。
(2)サプリメントと形状が類似していて,服用方法も似ている薬品についてみると,「眠前薬」というカテゴリーが存在する(A甲4)。
これは,文字どおり「眠る前の薬」ということになり,この薬をどのようなシーンで服用するかというと,当然横になって眠りに入る直前に自発的に服用することなどできないわけであるから,「床につく前」すなわち「寝る前に」服用する。
つまり,「眠る前の薬」と「寝る前の薬」は,辞書的に違っていても,実際にはほぼ同義に使われている。
A甲第4号証では,「寝る直前,または就寝の30分?1時間前に服用する薬を『眠前薬』といいます」,A甲第5号証では,「眠前」を「就寝前約30分」と説明している。
A甲第6号証では,「就寝前=眠前=寝る前いろいろ言うけど,『ねる前』です」と説明している。
してみると,「寝る前」と「ねむる前」の概念は,実際の服用シ-ンにおいては実質的に同義である。形状や服用シーンがきわめてよく似ている「薬品」における判断が「サプリメント」に援用されるべきでないとする明確な理由もない。実際,睡眠障害がひどい人は睡眠薬を服用するが,そこまでひどくない人は睡眠改善サプリメントを服用し,服用シーンに差はない。かかるサプリメントは,昨今のストレス社会において多数販売されており,形状もカプセル,タブレット等,薬品に類似したものである(A甲7ないしA甲11)。
そして,実際に需要者がどう認識しているかについては,「眠る前」と「サプリメント」をキーワードで検索すれば,多くの個人ホームページにおいて「寝る前に」という意味合いで「眠る前に」という表現が使われていることがわかる(A甲12ないしA甲23)。
(3)「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(略称:薬機法。かつての「薬事法」)においては,食品において,薬品と紛らわしい表現をすることが認められていない。
それは,「がんの治療」,「血圧を下げる」,「疲労回復」などの「効果,効能」を示す表現だけではなく,「服用する量」,「服用する時期」にまで及んでいる。
「服用する時期」に関してみれば,「食前に」,「食後に」,「空腹時に」はもちろん,「ねむる前に」も服用時期を示すものであるから,薬機法抵触の疑いがある(A甲24)。
「サプリメント」は,薬品と形状は類似しているが,「食品」範疇であるゆえ,一部例外的に使える場合もあるものの,基本的に「ねむる前に」は使えないので,直接の使用事例がほとんど見つからないのは自然のことである。
「薬機法のために表示できない表現であれば,出願人が登録を受けたとしても需要者に不利益は生じない」ことを理由に出願人は本件商標の登録を正当化するかもしれないが,誤りである。薬機法の基準は未来永劫ではなく,食品にも薬品に近い表現を求めるニーズはあり,薬機法の厳しい基準を補う制度が設けられつつある。「睡眠」に関する表現も表示できるようになることがすでにアナウンスされており,摂取時期についても極めて近い将来,普通に表現できるようになる可能性が高いと見られている(A甲28)。
製品には表記されていないとしても,「眠る前に」と「サプリメント」をキーワードで検索すれば多数のヒットがあり,「サプリメント」において「ねむる前に」は摂取時期を示していることは明らかである(A甲12ないしA甲23)。
(4)よって,本件商標は,商標法第3条第1項第3号に該当する。

3 登録異議申立人「岸本誠二」(以下「申立人B」という。)の申立て理由
申立人Bは,本件商標について,商標法第4条第1項第7号,同法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当するものであるから,同法第43条の2第1号により取り消されるべきものであるとして,登録異議の申立ての理由を要旨以下のように述べ,証拠方法として,甲第1号証ないし甲第32号証(以下,申立人Bが提出した証拠については,「B甲第○号証」と記載し,これを略すときは「B甲○」のように記載する。)を提出した。
(1)本件商標は,「ねむる前に」の構成文字全体として「寝る前に,休息前に」程の意味合いを容易に認識,理解するものである。
(2)商標法第4条第1項第7号
ア 薬事法は,医薬品等の品質,有効性及び安全性の確保のために必要な規制を行う法律であり,規制対象は,医薬品,医薬部外品,化粧品及び医療機器である。
一方,サプリメント等「食品」に分類される,いわゆる機能性食品は,薬事法の規制対象ではないが,医薬品的な表示をした場合には,無承認無許可医薬品として同法の規制の対象となる。
医薬品的な表示とみなされる場合とは,例えば,用法用量が医薬品的である場合であり,ある物に使用方法として服用時期,服用間隔,服用量等の記載(例:「お休み前に1?2粒」)がある場合には,原則として医薬品的な用法用量とみなすものとされている(B甲3及びB甲4)。
イ 本件商標からは,「寝る前に」という意味合いが生じることから,これを機能性食品に表示した場合には,「寝る前に摂取,服用する」という服用時期の記載,すなわち,医薬品的な用法用量とみなされる。
したがって,本件商標をその指定商品中,機能性食品に分類される「サプリメント,食餌療法用飲料,食餌療法用食品」に使用した場合には,医薬品的な用法用量の表示をした無承認無許可医薬品として,薬事法の規制対象となる。
よって,本件商標は,公序良俗に反するといわざるを得ず,商標法第4条第1項第7号に該当する。
(3)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号
ア 指定商品「ビタミン剤,アミノ酸剤,滋養強壮変質剤」について
「薬剤」を取り扱う業界においては,商品の使用時期,使用量等の情報は,一般的に,商品のパッケージや説明書等の「用法・用量」や「商品説明」の項目に明確に表示されているところ,「ビタミン剤,アミノ酸剤,滋養強壮変質剤」に該当する商品の商品説明,宣伝,広告等において,「ねむる前に」と同様の意味合いを表す「おやすみ前に」や「寝る前」等の語が普通に使用されている事実が見受けられた(B甲5ないしB甲12)。
これらの実情から勘案すると,薬剤等を取り扱う業界において,「ねむる前に」の文字は,その商品との関係において「寝る(就寝)前に」の意味合いを容易に理解させるものであり,その商品の使用時期を表したものと認識させるといえる。
してみれば,本件商標は,その指定商品中,商品の使用時期が重要な品質となる商品「ビタミン剤,アミノ酸剤,滋養強壮変質剤」に使用しても,これに接する取引者,需要者は,「寝る(就寝)前に服用する商品」という,商品の品質を表示した語と認識するに止まるから,自他商品の識別標識としての機能を果たし得ないものである。
イ 指定商品「サプリメント,食餌療法用飲料,食餌療法用食品」について
サプリメント等についても,使用時期は需要者の大きな関心事の一つであり(B甲15ないしB甲20),商品紹介のホームページ等において使用時期等の情報を表示している実情がある。
その表示の一例として,「ねむる前に」と同様の意味合いを表す「おやすみ前に」や「一日の終わりに」の語が,「サプリメント,食餌療法用飲料,食餌療法用食品」に該当する商品の宣伝,広告等において,普通に使用されている事実が見受けられる(B甲21ないしB甲32)。
これらの実情からすると,サプリメント等の健康食品を取り扱う業界においても,「ねむる前に」の文字は,その商品の使用時期を表したものと認識させるといえる。
してみれば,本件商標をその指定商品中,「サプリメント,食餌療法用飲料,食餌療法用食品」に使用しても,これに接する取引者,需要者は,「寝る(就寝)前に服用する商品」という,商品の品質を表示した語と認識するに止まるから,該文字は自他商品識別標識としての機能を果たし得ないものというべきである。
ウ さらに,本件商標の指定商品を取り扱う業界においては,「ねむる前に」から生じる意味合いである「寝る(就寝)前に使用することができる」という特長は,セールスポイントの一つでもあることが窺い知れる。
したがって,たとえ「ねむる前に」の語自体が使用されている例が多くない場合であっても,本件商標は,寝る前に使用することができるという「商品の品質・効能等を表示するために,取引において必要適切な標章として何人もその使用を欲するもの」といえることから,特定人によるその独占使用を認めるのは適当でないというべきである。
エ 上述のとおり,本件商標は,「寝る(就寝)前に服用する商品」という,商品の品質を表示した語にすぎないことから,それ以外の商品について使用をするときは,商品の品質の誤認を生じさせるおそれがある。
したがって,本件商標は,商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当する。

4 当審の判断
(1)申立人A及びBが提出した証拠によれば,以下のとおりである。
ア 「薬剤」に含まれる「ビタミン剤,アミノ酸剤,滋養強壮変質剤」について
(ア)本件商標の登録審決日(平成27年9月3日)前である,2009年(平成21年)10月発行の「桑野協立病院 Information」において,「薬の飲み方,エト・セトラ」の表示の下,服用方法について「就寝前=眠前=寝る前 いろいろ言いますが『ねる前』です。『横になる前』『床につく前』と解釈してください。」の記載がある(A甲6)。
(イ)印刷日は不明であるが,「めでぃかるガイド くすりとからだの豆知識」には,薬の服用時間について「食前」,「食直前」,「食直後」,「食後」,「食間」,「眠前」及び「頓用薬」の記載があり,「眠前」には「就寝前約30分」の記載がある(A甲5)。
(ウ)小括
前記(ア)及び(イ)によれば,本件の審決時において,薬の服用方法を表すものとして,「就寝前」,「眠前」及び「寝る前」の文字が使用されているが,本件商標の「ねむる前に」の文字自体が,本件指定商品中,「薬剤」に含まれる「ビタミン剤,アミノ酸剤,滋養強壮変質剤」の服用時期(使用時期)を特定したものとして使用されていることを認めるべき証左はない。
イ 「サプリメント,食餌療法用飲料,食餌療法用食品」について
(ア)本件商標の登録審決日(平成27年9月3日)前である,2003年(平成15年)2月6日付けの「日清製粉グループ」のニュースリリースにおいて,「昼と夜に飲む美容サプリメント『ビューティバランス』を新発売」に,「『ビューティバランス』には,昼に飲む“デイリーサプリ”と,おやすみ前に飲む“ナイトサプリ”の2種類のサプリメントのデイリーパックがそれぞれセットされています。」,「“ナイトサプリ”に含まれる・・・眠っている間の美容ケアに役立ちます。」の記載と,<製品概要>の「製品特長」には「1箱に美容のための,昼とおやすみ前に飲む2つのサプリメントパック・・・」の記載がある(B甲22)。
(イ)同じく2013年(平成25年)4月26日の日付がある「TOPICS FARO」のウェブページにおいて,「不眠に効くサプリの成分GABA(ギャバ)の睡眠効果がすごい!」には「GABA(ギャバ)は寝る30分前に飲むのが効果的」の記載がある(B甲15)。
(ウ)同じく2013年(平成25年)12月12日の日付がある「プラセンタサプリの利用方法」について掲載されたウェブページにおいて,「・・・一番良いのは眠る前にサプリメントを飲み・・・」の記載がある(A甲18)。
(エ)同じく2015年(平成27年)6月18日の日付がある「全研本社株式会社」ウェブページにおいて,「“グリシン”の効果を実感するには睡眠前のサプリがいい」に「・・・眠る前に3g程度摂取する必要があるとされています。」の記載がある(A甲21)。
(オ)小括
上記(ア)ないし(エ)によれば,本件商標の登録審決時において,効果的な「サプリメント」の摂取を表すものとして,「一番良いのは眠る前にサプリメントを飲み」(A甲18),「効果を実感するには睡眠前のサプリがいい」及び「眠る前に3g程度摂取する必要がある」(A甲21)のように表現されているものであるから,これらの表現が直ちに「サプリメント」の摂取時期(使用時期)を特定したものということができないし,また,これらは,いずれも商品の説明文中に用いられているものである。
そうすると,これらの事実からは,「○○前に(の)」の表示のみが,本件指定商品中の「サプリメント,食餌療法用飲料,食餌療法用食品」の「使用時期」又は「摂取時期」を表すものと認識させるということはできない。
(2)商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号該当性について
ア 本件商標は,「ねむる前に」の文字からなるところ,これからは,「眠る前に」を表すものと理解させるものであって,いわゆる「睡眠状態になる前に」程の意味合いを認識させるものである。
しかしながら,上記(1)のとおり,申立人が提出した証拠からは,「ねむる前に(眠る前に)」の文字が,「ビタミン剤,アミノ酸剤,滋養強壮変質剤,サプリメント,食餌療法用飲料,食餌療法用食品」の摂取時期(使用時期)を表したものということはできない。
また,職権調査によっても,「ねむる前に(眠る前に)」の文字が,上記商品の摂取時期(使用時期)等を表すものとすべき事実を発見できなかった。
そうすると,本件商標は,その指定商品である,第5類「ビタミン剤,アミノ酸剤,滋養強壮変質剤,サプリメント,食餌療法用飲料,食餌療法用食品」について使用をしても,その商品の品質(用法)を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標ということができず,かつ,その商品の品質を表示するものでない以上,商品の品質について誤認を生じさせるおそれもないものである。
したがって,本件商標は,商標法第3条第1項第3号及び同法第4条第1項第16号に該当しない。
イ 申立人Aは,「『ねむる前に』の文字は,『寝る前に摂取すること』の意味であり,商品の使用時期を示すにすぎない以上,独占適応性はない。」,及び「『サプリメント』において『ねむる前に』は摂取時期を示していることは明らかである。」旨主張している。
しかしながら,「ねむる前に」の文字のみからなる本件商標が,直ちに「寝る前に摂取すること」の意味合いを表すものと認識させるとまではいうことができないものであり,商品の使用時期を直接的かつ具体的に表示したものということもできない。
そして,提出に係る証拠(本件商標の登録審決(平成27年9月3日)より後のもの又は日付が不明なもの)をみても,「眠る前に飲むとより効果的でしょう。」(A甲12),「毎日眠る前に飲むだけ」(A甲15),「眠る前に摂取すれば」(A甲20)等の表示や,「寝る前の服用もOK」(B甲5),「お休み前にも服用できる」又は「おやすみ前でもお飲みいただけます」等(B甲6ないしB甲11),「睡眠前が成分の吸収が良いと言われています」(B甲23),「就寝前の30分前?1時間前に」(B甲24)のほか,「1日の終わり」(B甲25,B甲26,B甲28),「おやすみ前に食べて,」(B甲29),「おやすみ前の新習慣!」(B甲30)等のように表示され,また,「グリナ(睡眠アミノ酸グリシン)」について「就寝前,水などと一緒にそのままお召し上がりください」(A甲7),「入眠前のマグネシウム摂取により」及び「就寝前にトリプトファンを摂取したところ」(A甲9),「プラセンタは眠る前に飲むことがお勧め」(A甲16),「眠る前に酵素を含んだドリンクやサプリを体に取り入れることで・・・」(A甲22),「高麗人参は,夜眠る前がオススメ!」(B甲16),「にんにく卵黄」について「おすすめの摂取タイミングは,就寝前。眠る前に・・・」(B甲17),「生酵素」について「寝る前に(おやすみ前に)」(B甲21,B甲27),「寝る前にアミノ酸を飲むのも疲労回復に効果的」(B甲18),「ビタミンC」について「寝る前に飲む」(B甲20)のように,表現されているものである。
しかしながら,これらの表現において使用されている「○○前」,「○○前に」の文字は,いずれも「サプリメント」や内服液等の商品について,例えば,「眠る前」等に飲むと,効果的であること,成分の吸収がよいこと,お勧めであること等を説明する文中において使用をされているものであるから,これらの事実をもって,本件商標である「ねむる前に」の文字自体が,商品の摂取時期を特定するとまではいうことはできない。
(3)商標法第4条第1項第7号該当性について
申立人Bは,本件商標をその指定商品中,機能性食品に分類される「サプリメント,食餌療法用飲料,食餌療法用食品」に使用した場合には,医薬品的な用法用量の表示をした無承認無許可医薬品として,薬事法の規制対象となる,旨主張している。
そして,「薬事法広告研究所」のウェブサイトには,薬事法で規制される商品は,医薬品,医薬部外品,化粧品及び医療機器の4種であること,健康食品は・・・「薬事法の世界に入り込むこと」をすると薬事法違反になることの記載があり,「薬事法違反となる判断基準」に,「医薬品的な用法用量の解釈」として「ある物の使用方法として服用時間,服用間隔,服用量等の記載がある場合には,原則として医薬品的な用法用量とみなすものと」され,その例として「お休み前に1?2粒」の記載がある(B甲3)。
また,「機能性表示食品の届出等に関するガイドライン」の「(8)摂取の方法」に「摂取時期の表現については,総合的に判断して医薬品的な表現にならないように注意する。」の記載がある(B甲4)。
しかしながら,「ねむる前に」の文字は,「睡眠状態になる前に」程の意味合いを認識させるに止まるものであって,当該表示をもって,「医薬品」の摂取時期を表すものということはできず,また,本件商標の指定商品中,第5類「サプリメント,食餌療法用飲料,食餌療法用食品」の商品の摂取時期(使用時期)を表示したものということもできない。
また,申立人B提出の証拠からは,「ねむる前に」の文字が,医薬品の使用方法として「服用時間」,「服用間隔」,「服用量」等を表すものといえる記載は見あたらない。
そうすると,「ねむる前に」の文字を本件商標の指定商品に使用する場合,無承認無許可医薬品として,薬事法の規制対象となるとまではいうことはできない。
その他,本件商標は,その構成自体がきょう激,卑わい,差別的又は他人に不快な印象を与えるような文字からなるものではないし,申立人B提出の証拠からは,本件商標の出願の経緯に著しく社会的妥当性を欠く等の事実,本件商標をその指定商品について使用することが,公正な取引秩序を乱すものとすべき事情も見当たらない。
したがって,本件商標は,公の秩序又は善良の風俗を害するおそれがある商標ということはできないから,商標法第4条第1項第7号に該当しない。
(4)まとめ
以上のとおり,本件商標は,商標法第3条第1項第3号,同法第4条第1項第16号及び同項第7号のいずれにも違反して登録されたものではないから,その登録は,同法第43条の3第4項の規定により維持すべきである。
よって,結論のとおり決定する。
異議決定日 2016-09-16 
出願番号 商願2014-49417(T2014-49417) 
審決分類 T 1 651・ 22- Y (W05)
T 1 651・ 13- Y (W05)
T 1 651・ 272- Y (W05)
最終処分 維持  
前審関与審査官 海老名 友子 
特許庁審判長 青木 博文
特許庁審判官 板谷 玲子
田中 亨子
登録日 2015-10-30 
登録番号 商標登録第5802594号(T5802594) 
権利者 三栄源エフ・エフ・アイ株式会社
商標の称呼 ネムルマエニ 

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