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審決分類 審判 査定不服 商3条1項3号 産地、販売地、品質、原材料など 登録しない W0620
管理番号 1320398 
審判番号 不服2016-928 
総通号数 203 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 商標審決公報 
発行日 2016-11-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2016-01-04 
確定日 2016-10-05 
事件の表示 商願2014-109343拒絶査定不服審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。
理由 1 本願商標
本願商標は、別掲1のとおりの構成からなり、第6類及び第20類に属する願書に記載のとおりの商品を指定商品として、平成26年12月25日に登録出願されたものである。その後、指定商品については、原審における平成27年5月19日付け及び同年7月28日付けの手続補正書により補正された結果、最終的に、第6類「金属製郵便受けの投入ブロック用器具,金属製郵便受け用投函拒否具」及び第20類「郵便受け(金属製又は石製のものを除く。)の投入ブロック用器具,郵便受け(金属製又は石製のものを除く。)用投函拒否具」となったものである。

2 原査定における拒絶の理由の要旨
原査定は、「本願商標を構成する立体的形状は、郵便受けの蓋部分を押さえるために前後にスライドする可動部分やそれを郵便受けに取り付けて固定するための摘まみの付いた部分などを有する構造であることが容易に把握できることから、指定商品の形状を表示しているものと容易に認識、理解することができるものであり、本願商標は単に商品の形状を普通に用いられる方法で表示したものである。したがって、本願商標は、商標法第3条第1項第3号に該当する。」旨認定、判断し、本願を拒絶したものである。

3 当審の判断
(1)立体商標における商品等の立体的形状
商標法は、商標登録を受けようとする商標が、立体的形状(文字、図形、記号若しくは色彩又はこれらの結合との結合を含む。)からなる場合についても、所定の要件を満たす限り、登録を受けることができる旨規定する(商標法第2条第1項、同法第5条第2項参照)。
しかしながら、以下の理由により、立体商標における商品又は商品の包装(以下「商品等」という。)の形状は、通常、自他商品の識別機能を果たし得ず、商標法第3条第1項第3号に該当するものと解される。
ア 商品等の形状は、多くの場合、商品等に期待される機能をより効果的に発揮させたり、商品等の美感をより優れたものとするなどの目的で選択されるものであって、商品の出所を表示し、自他商品を識別する標識として用いられるものは少ないといえる。このように、商品等の製造者、供給者の観点からすれば、商品等の形状は、多くの場合、それ自体において出所表示機能ないし自他商品識別機能を有するもの、すなわち、商標としての機能を有するものとして採用するものではないといえる。また、商品等の形状を見る需要者の観点からしても、商品等の形状は、文字、図形、記号等により平面的に表示される標章とは異なり、商品の機能や美感を際立たせるために選択されたものと認識し、出所表示識別のために選択されたものとは認識しない場合が多いといえる。
そうすると、商品等の形状は、多くの場合に、商品等の機能又は美感に資することを目的として採用されるものであり、客観的に見て、そのような目的のために採用されると認められる形状は、特段の事情のない限り、商品等の形状を普通に用いられる方法で使用する標章のみからなる商標として、同号に該当すると解するのが相当である。
イ また、商品等の具体的形状は、商品等の機能又は美感に資することを目的として採用されるが、一方で、当該商品の用途、性質等に基づく制約の下で、通常は、ある程度の選択の幅があるといえる。しかし、同種の商品等について、機能又は美感上の理由による形状の選択と予測し得る範囲のものであれば、当該形状が特徴を有していたとしても、商品等の機能又は美感に資することを目的とする形状として、同号に該当するものというべきである。
その理由は、商品等の機能又は美感に資することを目的とする形状は、同種の商品等に関与する者が当該形状を使用することを欲するものであるから、先に商標出願したことのみを理由として当該形状を特定の者に独占させることは、公益上の観点から適切でないからである。
ウ さらに、需要者において予測し得ないような斬新な形状の商品等であったとしても、当該形状が専ら商品等の機能向上の観点から選択されたものであるときには、商標法第4条第1項第18号の趣旨を勘案すれば、商標法第3条第1項第3号に該当するというべきである。
その理由は、商品等が同種の商品等に見られない独特の形状を有する場合に、商品等の機能の観点からは発明ないし考案として、商品等の美感の観点からは意匠として、それぞれ特許法・実用新案法ないし意匠法の定める要件を備えれば、その限りにおいて独占権が付与されることがあり得るが、これらの法の保護の対象になり得る形状について、商標権によって保護を与えることは、商標権は存続期間の更新を繰り返すことにより半永久的に保有することができる点を踏まえると、商品等の形状について、特許法、意匠法等による権利の存続期間を超えて半永久的に特定の者に独占権を認める結果を生じさせることになり、自由競争の不当な制限に当たり公益に反するからである。
エ 他方、商品等の機能を確保するために不可欠とまでは評価されない立体的形状については、それが商品等の機能を効果的に発揮させ、商品等の美感を追求する目的により選択される形状であったとしても、商品等の出所を表示し、自他商品を識別する標識として用いられ、又は使用をされた結果、その形状が自他商品識別力を獲得した場合には、商標登録を受けることができるものとされている(商標法第3条第2項)。
以上、アないしエについて、知財高裁平成18年(行ケ)第10555号平成19年6月27日判決、知財高裁平成19年(行ケ)第10215号平成20年5月29日判決及び知財高裁平成22年(行ケ)第10366号平成23年4月21日判決を参照のこと。
(2)本願商標の商標法第3条第1項第3号該当性について
ア 本願商標は、別掲1のとおり、L字の短辺にあたる先端面に2孔を有し、L字の長辺にあたる面の中央に細長い孔を有するL字形状のもの(以下「孔を有するL字形状体」という。)、「孔を有するL字形状体」の一部が接する略直方体状のもの(以下「略直方体」という。)及び大きなつまみを有するねじ形状のもの(以下「つまみねじ形状体」という。)からなるものである。
また、本願商標は、その指定商品を第6類「金属製郵便受けの投入ブロック用器具,金属製郵便受け用投函拒否具」及び第20類「郵便受け(金属製又は石製のものを除く。)の投入ブロック用器具,郵便受け(金属製又は石製のものを除く。)用投函拒否具」とするものであるところ、原審における請求人による指定商品の説明によれば、該商品は、集合住宅等において住人等が未入居や長期不在時に郵便受けにチラシ等が投函されるのを防止することを目的として一時的に郵便受けに取り付ける器具であり、郵便受けの天井内壁面に着脱自在に設置され、その先端部分が郵便受けの投函口を内側から閉鎖することで、投函口からのチラシ等の投入を防止する機能を有するものである。
イ ところで、請求人の提出した証拠によれば、投函を防止する等の目的により郵便受けの投函口を閉鎖する商品は、その大きさや構造が多様な郵便受けの投函口に対応するため、様々なタイプのものがあり、それぞれに異なる形状からなるものが取引されているところ、それらの商品のいずれもが、郵便受けへの着脱が自在であり、また、郵便受けの投函口の形状に対応して商品の位置又は大きさを調整できる機能を有することが認められる。
そして、本願の指定商品については、前記のとおり、原審において請求人による商品の機能や設置方法の説明がされているところ、たとえば、本願の指定商品と同様に、郵便受けの内部に設置して投函口の内側から投函口のフラップ(蓋)が開くのを阻止するタイプの商品(甲第1号証及び甲第2号証)や郵便受けの天井内壁面に装着して内側から投函口を閉鎖するタイプの商品(別掲2参照)が販売されている実情がある。
ウ 以上を踏まえて、本願商標に係る形状についてみると、その構成中の「孔を有するL字形状体」は、その先端面が郵便受けの投函口のフラップ(蓋)を内側から押し当てることにより投函口を閉鎖するためのものであり、該形状体がそのL字の長辺にあたる面の中央に有する細長い孔は、前記の先端面が郵便受けの投函口のフラップ(蓋)の位置に合わせて前後に動けるように、スライド孔として機能するために採択されたものである。また、「略直方体」は、郵便受けに設置する際に郵便受けの天井内壁面への装着部材となるものであり、さらに、「つまみねじ形状体」は、「孔を有するL字形状体」と「略直方体」とを接続するためのものといえる。
エ これらによれば、本願商標は、その指定商品との関係において、商品の機能上要求される形状からなるものであって、商品の機能に資することを目的として採択されたものとみるのが相当であり、また、たとえ、実際に本願商標に係る形状と同一の形状の商品が他者により製造、販売されている事実がないとしても、機能面や設置方法を共通にする商品が取引されている前記の実情をも踏まえれば、取引者、需要者において、機能上の理由による形状の選択として予測し得る範囲のものである。
してみれば、本願商標は、商品の形状を普通に用いられる方法で表示する標章のみからなる商標を表示するにすぎないから、商標法第3条第1項第3号に該当する。
オ なお、請求人において、本願商標が商標法第3条第2項の要件を具備するものである旨の主張、立証はない。また、該要件を具備するといえる事実は見いだせない。
(3)まとめ
以上のとおり、本願商標が商標法第3条第1項第3号に該当するとして、本願を拒絶した原査定は妥当であって、取り消すことはできず、また、本願商標は、同法第3条第2項の要件を具備するものとも認められないから、登録することはできない。
よって、結論のとおり審決する。
別掲 別掲1(本願商標)


別掲2
「楽天株式会社」が運営する「楽天市場」のウェブサイトにおいて、「グットライフショップ」が販売する防犯グッズに関する頁に、「ワンタッチ。カットして貼るだけ。/ポスト用 ポストを目隠しガード/プライべートガード」の見出しの下、「迷惑行為を抑制します!/盗難防止 迷惑チラシ・DM のぞき見防止 雨ぬれ防止」及び「外に設置するポストは常に迷惑行為や盗難の危険にさらされています。そんな不安を解消するためのアイテムです。ポストの開け口部分に貼り付けて盗難やのぞき見などを抑制。」の記載とともに、商品の幅や高さを郵便受けに合わせて調整し、郵便受けの天井内壁面に貼り付けて、内側から投函口を塞ぐ使用方法を表す図が掲載されている。
(http://item.rakuten.co.jp/goodlifeshop/tkr01277/)


審理終結日 2016-07-21 
結審通知日 2016-07-29 
審決日 2016-08-16 
出願番号 商願2014-109343(T2014-109343) 
審決分類 T 1 8・ 13- Z (W0620)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴木 斎 
特許庁審判長 酒井 福造
特許庁審判官 渡邉 あおい
小松 里美
代理人 久保田 耕平 

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