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審決分類 |
審判 全部無効 商4条1項15号出所の混同 無効としない X03 審判 全部無効 商4条1項10号一般周知商標 無効としない X03 |
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管理番号 | 1320367 |
審判番号 | 無効2012-890026 |
総通号数 | 203 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標審決公報 |
発行日 | 2016-11-25 |
種別 | 無効の審決 |
審判請求日 | 2012-03-01 |
確定日 | 2016-10-20 |
事件の表示 | 上記当事者間の登録第5340634号商標の商標登録無効審判事件について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5340634号商標(以下「本件商標」という。)は、別掲(1)のとおりの構成からなり、2009年7月15日に大韓民国においてした商標登録出願に基づきパリ条約第4条による優先権を主張して、平成21年11月6日に登録出願され、第3類「クレンジングオイル」を指定商品として、同22年7月6日に登録査定、同月23日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 請求人が引用する商標は、以下のとおりである。 なお、これらをまとめて、単に「引用商標」という場合がある。 (1)引用商標1 商願2011-73181号商標(以下「引用商標1」という。)は、別掲(2)のとおりの構成からなり、第3類「クレンジングオイル」を指定商品として、平成23年10月13日に登録出願されたものである。 (2)引用商標2 商願2011-73180号商標(以下「引用商標2」という。)は、別掲(3)のとおりの構成からなり、第3類「クレンジングオイル」を指定商品として、平成23年10月13日に登録出願されたものである。 第3 請求人の主張 請求人は、本件商標の登録を無効とする、審判費用は被請求人の負担とする、との審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、甲第1号証ないし甲第252号証(枝番を含む。)を提出している。 1 商標法第4条第1項第10号について (1)引用商標の周知性について 引用商標1は、横長長方形の枠内に「DEEP」、「CLEANSING」及び「OIL」の各文字を三段に横書きしてなるところ、該商標は、請求人が長年にわたり、商品「クレンジングオイル」に使用した結果、本件商標の登録出願時及び登録査定時には、我が国において周知・著名な商標となっていたものである。 すなわち、請求人は、1995年12月から、「クレンジングオイル」について、引用商標1の態様で、長年にわたり使用してきたものであり、その結果、「DEEP CLEANSING OIL」といえば、請求人の「クレンジングオイル」であると認識するほど、需要者等に広く認識されていたものである。また、引用商標2も上記商品に使用された結果、本件商標の登録出願時及び登録査定時には需要者に広く認識されていた。 (2)本件商標と引用商標との類否について 本件商標は、「DEEP CLEANSING OIL」の欧文字とハングル文字とを上下二段に横書きしてなるところ、下段のハングル文字は我が国においては親しまれた文字ではなく、これよりは特定の称呼、観念を生じないものである。 そうすると、本件商標に接する需要者・取引者は、その構成中、日常親しまれた英語である上段の「DEEP CLEANSING OIL」の文字部分を自他商品の識別標識としてとらえ、該文字部分から生じる称呼をもって取引に当たるとみるのが相当であり、よって、これより「ディープクレンジングオイル」又は「ディープ」の称呼を生じるものである。 他方、請求人の周知・著名商標である引用商標は、上記のとおりの構成からなるところ、その構成からは「ディープクレンジングオイル」又は「ディープ」の称呼を生じることは明らかである。 してみれば、本件商標と引用商標とは、ともに「ディープクレンジングオイル」又は「ディープ」の称呼を共通にするものであり、また、本件商標の構成中の「DEEP CLEANSING OIL」の欧文字と引用商標1の構成中の「DEEP」、「CLEANSING」及び「OIL」の各欧文字又は引用商標2の「DEEP CLEANSING OIL」の欧文字とは、その書体も酷似し、外観上も類似するものである。 したがって、本件商標と引用商標とは、その称呼及び外観において類似する商標であり、かつ、その指定商品も「クレンジングオイル」であって同一のものであるから、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に違反して登録されたものである。 (3)答弁に対する弁駁 ア 被請求人は、引用商標が、請求人の商品について「商品情報詳細 薬用ディープクレンジングオイル」との記載があることをもって、商品の普通名称として使用されている旨主張している。 しかしながら、請求人が引用商標の周知・著名性を立証する証拠として提出した甲各号証をみれば、引用商標が「普通名称」でないことは明らかである。すなわち、普通名称は、あくまでも「クレンジングオイル」であり、「DEEP\CLEANSING\OIL」などの引用商標が普通名称でないことは、請求人の提出した膨大な上記証拠からもうかがえるし、また、普通名称であれば、指定商品の表示も「ディープクレンジングオイル」の名称で採用されても何ら問題はないはずであるが、そのような表示は一切ない。 よって、請求人の商品広告等の一部に「薬用ディープクレンジングオイル」の記載があることの一事をもって「DEEP\CLEANSING\OIL」などの引用商標が普通名称である、との主張は明らかに誤りである。 なお、請求人が行っているような表示方法は、必ずしもまれなことではない(甲第246号証ないし甲第252号証)。 イ 上述のとおり、引用商標「DEEP\CLEANSING\OIL」及び「DEEP CLEANSING OIL」が普通名称ではないことは明らかである。引用商標の構成中の「DEEP」の文字は、「深い」等の意味を有する親しまれた語であるとしても、指定商品「クレンジングオイル」との関係で、これが被請求人の主張するように、直ちに「毛穴の汚れを落としたり余分な角質を取り除いたりする」の意味合いを表すものとは到底いえない。 また、被請求人は、「ディープクレンジング」の意味を調べたウェブサイトを紙出力したものを提出している(乙第2号証)が、これは「ディープクレンジングオイル」そのものの記載ではなく、公的機関のものでないことはもちろんのこと、その出所すらも明確でないものであるから、上記のようなインターネット情報において、わずか3、4枚のページに説明書きとして掲載されているとしても、これをもって、直ちに指定商品「クレンジングオイル」の品質を表す語として一般に認識され、使用されているものとはいえない。 なお、仮に「DEEP\CLEANSING\OIL」などの引用商標は、識別力がないか、あるいは弱い語であったとしても、1995年12月から長年にわたり、「DEEP\CLEANSING\OIL」などの引用商標を「クレンジングオイル」に使用してきたのであるから、使用により識別力を獲得した商標であることに疑いの余地はない。 2 商標法第4条第1項第15号について 上記1(1)のとおり、引用商標は、請求人が長年にわたり「クレンジングオイル」に使用した結果、本件商標の登録出願時及び登録査定時には周知・著名な商標となっていた。 そうすると、被請求人が、引用商標と称呼上類似し、かつ「DEEP CLEANSING OIL」の欧文字部分も酷似する本件商標をその指定商品「クレンジングオイル」に使用するときは、該商品が請求人の業務に係る商品であるかのように商品の出所について混同を生じるおそれがあることは明らかである。 よって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に違反して登録されたものである。 3 まとめ 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に違反して登録されたものであるから、同法第46条第1項により、その登録は無効とされるべきである。 第4 被請求人の答弁 被請求人は、結論同旨の審決を求め、その理由を要旨次のように述べ、証拠方法として、乙第1号証ないし乙第5号証を提出している。 1 商標法第4条第1項第10号について (1)引用商標の周知性について 引用商標は、証拠方法からして、商品の普通名称として使用されているものであった。このことは、請求人が現在でも「DHC薬用ディープクレンジングオイル」と使用し、請求人の商品について「商品情報詳細 薬用ディープクレンジングオイル、ブランド名 DHC、商品説明 (医薬部外品)薬用ディープレクンジングオイル」との表示がされている(乙第1号証)ことからも明らかである。 引用商標は、自他商品の識別機能を有せず、本件商標の登録出願時に周知・著名でなかった。 (2)本件商標と引用商標との非類似について 本件商標の構成中の「DEEP CLEANSING(ディープクレンジング)」の文字部分は、当該商標の指定商品の分野では「主に毛穴の汚れを落としたり余分な角質を取り除いたりすること」を意味する(乙第2号証)。本件商標の「DEEP CLEANSING OIL」の文字部分は、その指定商品である「クレンジングオイル」との関係において「毛穴の汚れを落としたり余分な角質を取り除いたりするクレンジングオイル」を意味するものとなる(乙第3号証ないし乙第5号証)。 したがって、上記「DEEP CLEANSING OIL」の文字部分は、指定商品との関係では、商品の品質を表示するものであって自他商品識別標識として機能しないものである。それゆえ、本件商標は、当該文字部分をもって称呼、観念されることはない。その結果、本件商標は、称呼、観念上、引用商標とは相紛れることはない。 本件商標が、外観上、引用商標と相紛れることがないことは、多言を要しない。 したがって、本件商標は、引用商標と非類似のものである。 (3)以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。 2 商標法第4条第1項第15号について 上述したように、引用商標が自他商品識別標識として著名ではなく、本件商標が引用商標に類似しない以上、本件商標がその指定商品に使用されたとしても、商品の出所の混同を生じることはなかったといえる。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 3 まとめ 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に該当しないから、その登録は、商標法第46条第1項によって無効とされるべきものではない。 第5 当審の判断 1 「DEEP CLEANSING OIL」及び「ディープクレンジングオイル」の文字からなる標章の識別性について (1)「DEEP」の文字は、我が国において一般に「深い」の意味を有し、「ディープ」と発音される英語として広く知られている。また、「CLEANSING OIL」及び「クレンジングオイル」の各文字は、本件商標並びに引用商標1及び2に係る指定商品を表す英語及びその発音の片仮名表記である。 (2)被請求人が提出した乙第3号証(本件商標の登録出願(商願2009-84213号)について平成22年2月15日に提出された刊行物等提出書に添付の資料)並びに乙第4号証及び乙第5号証(引用商標1及び2の各登録出願(商願2011-73181号及び商願2011-73180号)について平成24年1月18日に提出された刊行物等提出書に添付の資料)によれば、本件商標及び引用商標に係る指定商品を取り扱う業界における「ディープクレンジングオイル」の語の使用状況について、以下の事実が認められる。 ア 乙第3号証は、「Yahoo!JAPAN BEAUTY×@cosme」のサイトを2010年1月5日に紙出力したものであって、製品情報などとして、「製品名」、「メーカー名」、「ブランド名」、「カテゴリ」、「発売日」などの記載とともに、製品に関する簡単な説明などが記載されているところ、その要旨は以下のとおりである。 (ア)製品名 :ディープクレンジングオイル メーカー名:資生堂 ブランド名:リバイタル カテゴリ :クレンジング 発売日 :2004年8月21日 簡単な説明:肌のうるおいを守りながら、落ちにくいメークや毛穴の奥の汚れまでしっかり取り除くアミノ酸系保湿オイル配合のクレンジングオイル。 (イ)製品名 :ディープクレンジングオイル メーカー名:トニーズコレクション ブランド名:TT TONY TANAKA (ティーティートニータナカ) カテゴリ :クレンジング 発売日 :2009年4月30日 簡単な説明:粒子が細かいサラサラのオイルなので、軽くなじませるだけで毛穴の奥深くまで浸透して、メイクや皮脂汚れを包み込みます。 (ウ)製品名 :ディープクレンジングオイル メーカー名:エルベ・ブランズ ブランド名:エルベナ カテゴリ :クレンジング 発売日 :-年-月-日 簡単な説明:天然のオリーブ・オレンジオイルで、落ちにくい汚れ、黒ずみ、角質までしっかり落とし、清潔な素肌を導きます。 (エ)製品名 :ディープクレンジングオイル メーカー名:ヤクルト ビューティエンス ブランド名:リベシィ カテゴリ :クレンジング 発売日 :2004年9月1日 簡単な説明:オイルが毛穴の奥までゆきわたり、メイクやお肌の汚れをすばやく浮き上がらせてオフする、さらりとした洗い流しタイプのクレンジングオイル。 (オ)製品名 :ディープクレンジングオイル メーカー名:コーセー ブランド名:ルティーナ カテゴリ :クレンジング 発売日 :2001年2月16日 簡単な説明:米ヌカオイルを主体とする4種類のオイルをバランスよく配合した、オイルタイプのクレンジング。サッパリとした感触で、ハードなメイクもすばやく溶かし出ししっかりと落とします。酸化した皮脂や古い角質によるくすみ、小鼻のざらつきもしっかりとオフ。 (カ)製品名 :ディープクレンジングオイル メーカー名:コーセー ブランド名:コスメデコルテ マキエクスペール カテゴリ :クレンジング 発売日 :2009年10月16日 簡単な説明:オイルベースながら水性成分の配合、洗浄力の高さと、しなやかなあと肌を両立したクレンジングオイル。ハードなメイクアップもしっかり落とせます。 (キ)製品名 :ホワイト ディープクレンジングオイル メーカー名:コーセーコスメポート ブランド名:ソフティモ カテゴリ :クレンジング 発売日 :-年-月-日 簡単な説明:手からこぼれ落ちずに肌でとろけてしっかりなじみ、メイク・マスカラ・残存メラニンも落とし、透明感のある肌にみちびきます。 (ク)製品名 :ミッション ディープクレンジングオイル メーカー名:エイボン ブランド名:エイボン ミッション カテゴリ :クレンジング 発売日 :2005年12月16日 簡単な説明:必要な皮脂は残し、落とすべき皮脂は落とす「年齢皮脂キャッチ処方」により、不要な皮脂や毛穴の汚れ、落ちにくいメイクまで、肌に負担をかけることなく浮かせて除去。ベタつき感がなく、すっきりとした洗い上がりで、毛穴の目立ちにくい肌に整えます。 イ 乙第4号証及び乙第5号証は、いずれも「Yahoo!JAPAN BEAUTY×@cosme」のサイトを2011年12月27日に紙出力したものであって、製品情報などとして、「製品名」、「メーカー名」、「ブランド名」、「カテゴリ」、「発売日」などの記載とともに、製品に関する簡単な説明などが記載されているところ、その要旨は以下のとおりである。 (ア)製品名 :ディープクレンジングオイル メーカー名:ジャパンナチュラルラボラトリーズ/日本天然物研究所 ブランド名:ラメンテ カテゴリ :クレンジング 発売日 :2007年2月1日 簡単な説明:濡れた手でも使え、肌に負担をかけずに落ちにくいメイクや汚れた皮脂、古い角質、毛穴汚れも浮き上がらせてすっきりと落とします。機能の異なるダブルオイル処方で、クレンジング効果とエモリエント効果を両立。洗浄力と肌への優しさを兼ね備えたオイルです。 (イ)製品名 :スポーツビューティ ファシオ ディープクレンジングオイル メーカー名:コーセーコスメニエンス ブランド名:ファシオ カテゴリ :乳液・クリーム・オイル 発売日 :2009年7月16日 簡単な説明:濡れた手でも使え、しっかりメイクもすっきり落ちるクレンジングオイル。 (ウ)製品名 :ディープクレンジングオイル メーカー名:資生堂フィティット ブランド名:セルフィット カテゴリ :クレンジング 発売日 :2001年6月21日 簡単な説明:ハードなメイクも一度でスッキリ落とせるダブル洗顔不要のクレンジングオイル。水にすばやくなじみ、余分な皮脂や毛穴に詰まった汚れ・角栓を溶かしだし透明感のある素肌に導きます。 (エ)製品名 :ディープクレンジングオイル メーカー名:ジュジュ化粧品 ブランド名:セポレア カテゴリ :クレンジング 発売日 :2002年8月21日 簡単な説明:メイク汚れを浮かせてしっかりと落とす、洗い流すタイプのクレンジングオイル。 (オ)製品名 :ディープクレンジングオイル メーカー名:コーセー ブランド名:雪肌粋 カテゴリ :クレンジング 発売日 :2004年4月14日 簡単な説明:ハードなメイクも毛穴の角栓もすっきり落として、さっぱり、なめらかな肌に洗い上げるクレンジングオイルです。 (3)上記(2)の事実によれば、化粧品業界において、「ディープクレンジングオイル」の語は、遅くとも平成13年(2001年)2月頃から現在に至るまでの間に、多くのメーカーにより、「主に毛穴の汚れを落としたり余分な角質を取り除いたりするクレンジングオイル」の製品名又は製品名に含まれる語として使用されていることが認められる。 そうすると、本件商標について、識別性の判断基準時となる登録査定がなされた平成22年7月6日当時、「ディープクレンジングオイル」及び「DEEP CLEANSING OIL」の語は、商品「クレンジングオイル」の取引者・需要者間において、「主に毛穴の汚れを落としたり余分な角質を取り除いたりするクレンジングオイル」を意味するものとして認識され、使用されていたと認められるものであるから、商品「クレンジングオイル」について、商品の品質を表すものであって、自他商品の識別標識としての機能を有しないというべきものである。 2 引用商標の周知性について 請求人は、引用商標1及び2の周知性を立証するものとして、新聞広告(甲第4号証ないし甲第44号証)、雑誌広告(甲第45号証ないし甲第150号証)、DHC会員誌広告(甲第151号証ないし甲第185号証)、チラシ広告(甲第188号証ないし甲第197号証)、通販カタログ(甲第198号証ないし甲第208号証)、人気ランキング・各種賞の受賞を掲載した雑誌・ウェブサイト(甲第209号証ないし甲第232号証)、その他テレビCM(甲第235号証)・電車内ステッカー広告(甲第236号証)・駅構内におけるパネル広告(甲第237号証)などを提出している。 これらの広告などによれば、請求人は、「オリーブ倶楽部1995年12月号」に「DHC新商品キャンペーンのお知らせ 期間限定12/1?1/31 /しっかりメイクする人のためのクレンジングキャンペーン」と銘打って、ほかの2商品とともに、包装容器上部に引用商標1を付した商品写真及び「DHCディープクレンジングオイル」との表示並びに「新発売のディープクレンジングオイルは落ちにくいメイクをすばやく落とし、肌に負担をかけません。」などの製品説明をした広告を掲載して、平成7(1995)年12月頃から引用商標の使用を開始したことが認められる(甲第153号証)。上記製品の包装容器には、当初引用商標1以外の表示はなかったが、遅くとも平成11(1999)年5月頃からは同容器の下部に「DHC」の表示がされている(甲第58号証)。これ以後、引用商標1に係る広告は、「DHC」の表示とともに、製品の包装容器に表示された態様の写真によってされており、また、製品の包装容器の表示以外においても、「DHC」の表示単独での使用のほか、製品説明文中などで「DHC」の表示とともに使用されている。 引用商標1は、別掲2のとおり、横長長方形の枠内に「DEEP」、「CLEANSING」及び「OIL」の各文字を三段に横書きしてなるが、その構成中の横長長方形の図形部分はありふれた図形であって、自他商品の識別力がないか、あるとしても極めて弱いものであり、「DEEP」、「CLEANSING」及び「OIL」の各文字を三段に横書きした文字部分は、上述したとおり、「クレンジングオイル」の取引者・需要者間において、「主に毛穴の汚れを落としたり余分な角質を取り除いたりするクレンジングオイル」を意味する「DEEP CLEANSING OIL」を表す一連の語として認識されるものであるから、商品「クレンジングオイル」については、商品の品質を表すものであって、自他商品の識別機能を有しないというべきものである。 また、引用商標2は、同一構成の使用は認められず、「DHCディープクレンジングオイル」、「DHC薬用ディープクレンジングオイル」、「DHC薬用ディープクレンジングオイル(医薬部外品)」又は「DHC薬用ディープクレンジングオイル(医薬部外品)200ml」などの構成(以下「引用商標2の使用標章」という。)で、製品写真の下又は脇などに製品名を表すものとして使用されていることが認められる。また、引用商標2の使用標章に係る広告は、「DHC」の表示とともに使用されていることが認められる。そして、引用商標2の使用標章の構成中の「ディープクレンジングオイル」の文字部分は、上述したとおり、「DEEP CLEANSING OIL」の読みを表すものであり、自他商品の識別機能を有しないというべきものである。 なお、上述のとおり、化粧品業界において、「ディープクレンジングオイル」の語が、遅くとも平成13(2001)年2月頃から現在に至るまでの間に、「主に毛穴の汚れを落としたり余分な角質を取り除いたりするクレンジングオイル」の製品名を表す標章として多くのメーカーにより使用されているが、請求人は、これらのメーカーに対して、自己の権利を侵害するものとしてその使用の中止を求めたり、権利侵害なる旨の警告状を送付したような事実は全く立証していない。 以上を総合して考察すると、引用商標1及び2は、いずれも自他商品の識別力を有しない文字又は図形をもって構成されていること、引用商標1又は2が自他商品の識別力を有する「DHC」の文字とともに使用されており、引用商標1又は2が単独で商品の出所を表示するものとして使用されている事実は認められないこと、「ディープクレンジングオイル」の語が、遅くとも平成13年(2001年)2月頃から現在に至るまでの間、「クレンジングオイル」の製品名を表す標章として多くのメーカーにより使用されていることなどが認められるから、甲各号証のみによっては、本件商標の登録出願当時(平成21年11月6日)及び登録査定当時(平成22年7月6日)、引用商標が、商品「クレンジングオイル」について、周知性を獲得していたと認めるに足りない。 3 本件商標の商標法第4条第1項第10号該当性について 本件商標は、別掲(1)のとおりの構成からなるところ、その構成中の「DEEP CLEANSING OIL」の語は、上述したとおり、商品「クレンジングオイル」の取引者・需要者間において、「主に毛穴の汚れを落としたり余分な角質を取り除いたりするクレンジングオイル」を意味するものとして認識され、使用されていると認められるものであるから、商品「クレンジングオイル」については、商品の品質を表すものであって、自他商品の識別機能を有しないというべきものであり、また、その構成中のハングル文字部分は、我が国においていまだ一般にはその読み及び意味を知られていないものであるから、その構成全体として、特定の称呼及び観念を生じないものである。 他方、引用商標1は、別掲(2)のとおりの構成からなるところ、上述したとおり、その構成中の図形部分及び文字部分のいずれも自他商品の識別標識としての機能を有しないものであり、該識別標識としての称呼及び観念を生じないものである。 また、引用商標2は、別掲(3)のとおり、「DEEP CLEANSING OIL」の欧文字と「ディープクレンジングオイル」の片仮名を上下二段に横書きした構成からなるところ、上述したとおり、「DEEP CLEANSING OIL」及び「ディープクレンジングオイル」の各語は、いずれも自他商品の識別標識としての機能を有しないものであるから、該識別標識としての称呼及び観念を生じないものである。 そうすると、本件商標と引用商標1及び2とは、外観、称呼及び観念のいずれの点からしても、相紛れるおそれのないものである。 加えて、引用商標1及び2は、上記2のとおり、いずれも使用により自他商品の識別標識としての機能及び周知性を獲得したとは認められないものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第10号に該当しない。 4 本件商標の商標法第4条第1項第15号該当性について 引用商標1及び2は、上述したとおり、いずれも自他商品の識別標識としての機能及び周知性を有しないものである。 そうすると、本件商標は、これをその指定商品「クレンジングオイル」に使用しても、取引者・需要者をして、その使用商品が請求人又は同人と経済的若しくは組織的に何らかの関係を有する者の業務に係る商品であるかのように、商品の出所について混同を生じさせるおそれはないものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第15号に該当しない。 5 結論 以上のとおり、本件商標の登録は、商標法第4条第1項第10号及び同項第15号に違反してされたものではないから、同法第46条第1項の規定により、無効とすべきものではない。 よって、結論のとおり審決する。 |
別掲 |
別掲 (1)本件商標 (2)引用商標1(商願2011-73181号商標) (3)引用商標2(商願2011-73180号商標) |
審理終結日 | 2012-11-20 |
結審通知日 | 2012-11-22 |
審決日 | 2012-12-05 |
出願番号 | 商願2009-84213(T2009-84213) |
審決分類 |
T
1
11・
25-
Y
(X03)
T 1 11・ 271- Y (X03) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 堀内 真一、蛭川 一治、目黒 潤、竹内 耕平 |
特許庁審判長 |
寺光 幸子 |
特許庁審判官 |
酒井 福造 田中 敬規 |
登録日 | 2010-07-23 |
登録番号 | 商標登録第5340634号(T5340634) |
商標の称呼 | ディープクレンジングオイルスネンクルレンジンオイル、ディープクレンジングオイル、スネンクルレンジンオイル、ディープ、スネン |
代理人 | 笠松 直紀 |
代理人 | 新樹グローバル・アイピー特許業務法人 |
代理人 | 青木 篤 |
代理人 | 田島 壽 |
代理人 | 山田 清治 |
代理人 | 萼 経夫 |