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審決分類 |
審判 全部申立て 登録を維持 W03 審判 全部申立て 登録を維持 W03 審判 全部申立て 登録を維持 W03 |
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管理番号 | 1319368 |
異議申立番号 | 異議2016-900053 |
総通号数 | 202 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 商標決定公報 |
発行日 | 2016-10-28 |
種別 | 異議の決定 |
異議申立日 | 2016-03-02 |
確定日 | 2016-09-08 |
異議申立件数 | 1 |
事件の表示 | 登録第5808840号商標の商標登録に対する登録異議の申立てについて、次のとおり決定する。 |
結論 | 登録第5808840号商標の商標登録を維持する。 |
理由 |
第1 本件商標 本件登録第5808840号商標(以下「本件商標」という。)は、「MARIS」の欧文字を標準文字で表してなり、平成27年6月26日に登録出願され、第3類「シャンプー,コンディショナー,せっけん類,化粧品,香料,薫料」を指定商品として、同年11月12日に登録査定、同月27日に設定登録されたものである。 第2 引用商標 登録異議申立人(以下「申立人」という。)が、登録異議の申立ての理由として引用する登録商標は、以下の3件であり、いずれも現に有効に存続しているものである(以下、これらをまとめていうときは「引用商標」という。)。 1 登録第4882689号商標(以下「引用商標1」という。)は、「NARIS」の欧文字を標準文字により表してなり、平成16年11月26日に登録出願され、第3類「化粧品,せっけん類,香料類」を指定商品として、同17年7月22日に設定登録されたものである。 2 登録第5078607号商標(以下「引用商標2」という。)は、その構成を別掲1に示すものとし、平成19年2月16日に登録出願され、第3類「化粧品,せっけん類,香料類,歯磨き,つけづめ,つけまつ毛,化粧用コットン」のほか、第9類、第16類、第21類、第26類、第29類、第30類、第31類、第32類、第41類、第43類及び第44類に属する、商標登録原簿記載の商品及び役務を指定商品及び指定役務として、同年9月21日に設定登録されたものである。 3 登録第2149103号商標(以下「引用商標3」という。)は、その構成を別掲2に示すものとし、昭和61年11月17日に登録出願され、第4類に属する商標登録原簿記載の商品を指定商品として、平成1年6月23日に設定登録され、その後、同21年9月9日に、指定商品を第3類「せっけん類,歯磨き,化粧品,植物性天然香料,動物性天然香料,合成香料,調合香料,精油からなる食品香料,薫料」及び第30類「食品香料(精油のものを除く。)」とする指定商品の書換登録がされたものである。 第3 登録異議の申立ての理由 申立人は、本件商標は商標法第4条第1項第11号に該当するから、同法第43条の2第1号により、その登録は取り消されるべきであると申立て、その理由を要旨以下のように述べ、証拠方法として甲第1号証ないし甲第6号証を提出した。 1 指定商品 本件商標の指定商品すべてが、引用商標の指定商品と同一である。 2 称呼 (1)本件商標から発生する称呼について 本件商標は、欧米人の苗字「MARIS」として使用されているが、馴染みのある既成語とはいい難く、ローマ字読みをするのが自然であるから、「マリス」の称呼が生じる。 (2)引用商標1から発生する称呼について 引用商標1「NARIS」(標準文字)は、既成語ではないので、ローマ字読みをするのが自然であるから、「ナリス」の称呼が生じる。 (3)引用商標2から発生する称呼について 引用商標2から発生する称呼を説明する前に、まず現代の英語事情について説明する。 昨今の日本の英語教育では、平成10年のいわゆる「ゆとり教育」導入を契機に筆記体を学ばないのが現状である。また、英語圏においてすら筆記体自体を用いることが稀であり、筆記体を解読できないネイティブも多い。加えて、インターネットやパソコンが発達した今日では、英語を筆記体よりも活字体で認識する割合が高くなっている事情がある(甲第6号証)。 引用商標2は、筆記体で「NARIS」と記載したものであるが、(a)その語頭文字は、外観上凸部分が2つあり、かつ、その間も広く開き、更に前方に倒れたような書体になっている点、(b)1文字目と2文字目以降とが繋かっていない点、(c)上述の筆記体認識事情が存在する点から、取引者・需要者は、引用商標の1文字目を直感的に筆記体の「N」ではなく、活字体の「M」であると認識する。 したがって、引用商標2は、筆記体を認識できない世代(昨今では多数派である)においては「MARIS」と認識され、筆記体を認識できる世代(昨今では少数派である)においては「NARIS」と認識されることになり、引用商標2からは、「マリス」又は「ナリス」の称呼が生じる。 (4)引用商標3から発生する称呼について 引用商標3は、図形と文字から構成されるので、分離観察されるのが自然である。そして、文字部分は、引用商標2と同じである。 したがって、図形からは「ハナ」の称呼が生じ、文字からは、上記引用商標2で記載した理由により、「マリス」又は「ナリス」の称呼が生じる。 (5)称呼の比較 ア 「マリス」と「マリス」との比較 本件商標から生じる称呼「マリス」と、引用商標2及び3から生じる称呼「マリス」は、同一である。 イ 「マリス」と「ナリス」との比較 「マリス」と「ナリス」は、3音と比較的短い音数で構成され、語頭が「マ」と「ナ」で相違し、語中・語尾の「リス」が共通し、構成音中3分の2が共通している。 さらに、当該差異音である「マ(MA)」と「ナ(NA)」は共に母音を共通にする有声通鼻音で、調音位置も「マ」が上下の唇であるのに対し、「ナ」は上歯のつけ根の歯茎で発せられるため、該「マ」と「ナ」は、近似音といえる。「マ」と「ナ」が近似音であることは、不服2000-13529号でも言及されている。 したがって、本件商標から生じる称呼「マリス」と引用商標から生じる称呼「ナリス」が類似することは、明白である。 3 外観 (1)本件商標は、標準文字にて「MARIS」と一連に表示されている。 (2)引用商標1は、標準文字にて「NARIS」と一連に表示されている。 (3)引用商標2は、一連に表示されている。 (4)引用商標3は、図形と文字から構成され一連一体に表示されている。 (5)その構成から、本件商標と引用商標2及び引用商標3は外観上類似するものではないが、印象を全く異にするという程の差異はない。 (6)ここでは、本件商標と引用商標1との外観について検討する。 本件商標と引用商標1は共に標準文字であり、特許庁長官が指定する文字にて表示されている点で共通する。 また、その文字構成は、本件商標は「MARIS」であるのに対し、引用商標1は「NARIS」であり、両商標とも5文字から構成され、その内の4文字「ARIS」が共通し、両商標の相違文字は語頭が「M」か「N」かであるにすぎない。 加えて、「M」と「N」は、単独で表示された際には容易にその違いを見分けられることができるものの、英語を母国語としない日本人にとって「M」と「N」の区別は容易ではない。 したがって、「M」と「N」は近似する文字であり、「MARIS」と「NARIS」は外観上近似する。 4 観念 (1)本件商標「MARIS」は、欧米人の苗字として知られている「MARIS」と同一綴りであるが、馴染みのある苗字ではないことから、造語と認識されるのが自然であり、特段の観念は生じない。 (2)引用商標1の「NARIS」は、前述のとおり既成語ではなく造語であるから、特段の観念は生じない。 (3)引用商標2は、前述のとおりその外観から「MARIS」又は「NARIS」と認識されるが、いずれに認識されたとしても特段の観念は生じない。 (4)引用商標3は、図形部分からは、「花」の観念が生じ、文字部分からは、引用商標2と同じ理由により特段の観念が生じないかのいずれかである。 したがって、本件商標と引用商標3とは観念が相違するが、本件商標と引用商標1及び2との関係において、特段の観念が生じないという点で共通する。 5 全体的比較 前述のとおり、本件商標と引用商標1は、称呼、外観は類似し、観念は一致する。 本件商標と引用商標2は、称呼は同一又は類似し、外観は相違するが印象を全く異にするという程ではなく、観念は一致する。 本件商標と引用商標3は、称呼は同?又は類似し、外観は相違するが、観念は一致する。 したがって、本件商標と引用商標は、指定商品が完全同一であり、商標は称呼、外観、観念のいずれかにおいて同一又は類似するので、本件商標と引用商標は互いに類似する商標であるから、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当する商標である。 第4 当審の判断 1 本件商標について 本件商標は、「MARIS」の欧文字を標準文字で表してなるものであり、「MARIS」の文字に相応して「マリス」の称呼が生じ、また、該文字は、特定の意味を有しない造語といえるから、特定の観念は生じないものである。 2 引用商標について (1)引用商標1について 引用商標1は、「NARIS」の欧文字を標準文字で表してなるものであり、「NARIS」の文字に相応して「ナリス」の称呼が生じ、また、該文字は、特定の意味を有しない造語といえるから、特定の観念は生じないものである。 (2)引用商標2について 引用商標2は、別掲1のとおりの構成からなるものであるところ、2文字目以降は、欧文字「aris」をやや変形させた筆記体で表してなるものであるから、引用商標2の1文字目も筆記体で表してなり、かつ、これが1文字目であることから大文字で表されているとみるのが自然である。そして、引用商標2の1文字目は、起筆部が短く表され、山が2つでやや右下がりに表されているところ、筆記体の大文字の「N」は、起筆部が短く、山が2つで表されるのに対し、筆記体の大文字の「M」は、起筆部が短く、山が3つで表されるものであるから、引用商標2の1文字目は、欧文字の「N」をやや変形させた筆記体で表してなるものとみるのが相当である。 したがって、引用商標2は、欧文字「Naris」をやや変形させた筆記体で表したものであり、これより「ナリス」の称呼が生じ、特定の観念は生じないものである。 (3)引用商標3について 引用商標3は、別掲2のとおりの構成からなるものであるところ、左側には黒色の矩形図形内に白抜きで花と思しき図形をシルエットで描いてなり、右側は、引用商標2と同一の構成からなる文字を表示したものである。 そして、引用商標3の構成中、図形部分についてみると、その構成が抽象的であって、特定の花を想起させるとはいえないから、この部分からは称呼及び観念は生じないとみるのが相当である。また、引用商標3は、その文字部分から、引用商標2と同様に、「ナリス」の称呼が生じ、特定の観念は生じないものである。 3 本件商標と引用商標との類否について (1)本件商標と引用商標1との類否 本件商標は、「MARIS」の欧文字を標準文字で表してなるものであり、引用商標1は、「NARIS」の欧文字を標準文字で表してなるものであるところ、両者は、視覚上注意が注がれる語頭における「M」と「N」との相違により、外観において相紛れるおそれはないというべきである。 次に、本件商標から生じる「マリス」の称呼と、引用商標1から生じる「ナリス」の称呼とを比較すると、両称呼は、語頭において「マ」と「ナ」の音に差異を有するものであり、該差異音がともに通鼻音であるとしても、これらの音は語頭部に位置することから、比較的強く発音され、両称呼の音構成が3音という短い音構成であることともあいまって、両者をそれぞれ一連に称呼するときには互いに聞き分けることができるというのが相当であるから、本件商標と引用商標1は、称呼において相紛れるおそれはない。 さらに、本件商標と引用商標1は、ともに特定の観念を生じないから、観念において相紛れるおそれはない。 そうすると、本件商標と引用商標1とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても、相紛れるおそれのない非類似の商標といえる。 (2)本件商標と引用商標2及び3との類否 本件商標が「MARIS」の欧文字(すべて大文字)を標準文字で表してなるのに対し、引用商標2及び3は、上記2(2)及び(3)のとおり、欧文字「Naris」をやや変形させた筆記体で表したもの又はそれを含むものであるところ、両者は、表記法の相違に加え、語頭の文字も相違するから、外観において相紛れるおそれはない。 そして、本件商標の「マリス」の称呼と引用商標2及び3の「ナリス」の称呼は、上記3(1)のとおり、相紛れるおそれはない。 また、本件商標と引用商標2及び3は、ともに特定の観念は生じないから、観念において相紛れるおそれはない。 そうすると、本件商標と引用商標2及び3とは、外観、称呼及び観念のいずれにおいても、相紛れるおそれのない非類似の商標といえる。 (3)小括 上記(1)及び(2)のとおり、本件商標と引用商標とは、類似する商標ということはできないものである。 したがって、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に該当しない。 4 むすび 以上のとおり、本件商標は、商標法第4条第1項第11号に違反して登録されたものとは認められないから、同法第43条の3第4項に基づき、その登録を維持すべきである。 よって、結論のとおり決定する。 |
別掲 |
別掲1(引用商標2) 別掲2(引用商標3) |
異議決定日 | 2016-08-31 |
出願番号 | 商願2015-60969(T2015-60969) |
審決分類 |
T
1
651・
263-
Y
(W03)
T 1 651・ 261- Y (W03) T 1 651・ 262- Y (W03) |
最終処分 | 維持 |
前審関与審査官 | 小川 敏 |
特許庁審判長 |
土井 敬子 |
特許庁審判官 |
原田 信彦 大森 健司 |
登録日 | 2015-11-27 |
登録番号 | 商標登録第5808840号(T5808840) |
権利者 | 株式会社MARIS R&SPA |
商標の称呼 | マリス |